メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー

第123回 ゲンさんの新聞業界裏話

発行日  2010.15


■検察審査会制度の是非について


2010年10月4日。

この日、「東京第5検察審査会」で2度目の「起訴相当議決」が出され、それにより民主党の有力議員小沢一郎氏が強制起訴されるということに決まった。

もっとも、その議決自体は9月14日に出されたということで、発表されたのが、その日やったというだけことのようやがな。

この結果については、ある程度は予想されたことではあったが、実際そう決まったと聞かされると、どうしても「何でや」という思いになる。

そんなバカなことが、どうして起こるのかと。

それには、過去のメルマガ『第100回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞の実像 その3  新聞業界、それぞれの使命とは』や『第101回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■報道のあり方……検察審査会の「起訴相当」決定の是非について』、

および『第118回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■民主党代表選挙報道のあり方について』、『第120回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■暴かれた「自白調書」のカラクリと検察への信用失墜について』(注1.巻末参考ページ参照)などで、散々、話してきたということがあるからや。

それらを一言で言えば、罪なき罪で一人の有力な政治家が社会的に抹殺されようとしとるということになる。

汚職にまみれた悪徳政治家が起訴されたというのは、それこそ枚挙に暇がないほど多いが、ワシらのような一般人にさえ明らかな「無実」、「無罪」と分かるほどの単純な事案で強制的に政治家が起訴されるというのは前代未聞の出来事やし、信じられんことやと思う。

それにはマスメディアの一方的な報道を盲信して、間違った情報を刷り込まれた、あるいは信じ込まされたということもあったはずや。

ワシらは、そのマスメディアの一つ、「新聞」を売って生計を立てとる拡張員やさかい、本来なら新聞報道にケチをつけるようなことは言いたくはない。

しかし、ワシには、その新聞拡張員である前に一人の人間やという思いの方が強い。

また、そのマスメディアに苦言を呈することで、一時でも早く、その間違いに気づいてほしいという願いもある。

これも、過去のメルマガで何度も言うたことやが、そうせんと、ワシらが長年、このメルマガで「新聞は他のどの媒体よりも信用できる」と言うてきたことが根底から揺らいでしまいかねんさかいな。

ワシら自身が「新聞」を信用できんようになったんでは話にならんわな。

このままやと、そうなりかねん。

この問題は、過去、新聞が冒したどの過ちよりも大きな過ち、失態になると。

新聞が世論を誘導したという分かりやすい事例として、この問題が長く語り継がれることになるかも知れんと。

以上のような理由から、事、この問題に関する限り、現在の新聞報道の見解とは真っ向から、ぶつかる、対峙するしかないと腹を決めたわけや。

もっとも、マスメディアの多くも、深層のところでは今回の事には無理がありすぎると分かっとるはずやと思うがな。

それにしても、これは、まさしく前時代的な中世の魔女狩り裁判に匹敵する暴挙に等しいことやと言うしかない。

「あいつが怪しい」と、誰かが言うただけで投獄され、処罰、処刑されていた頃の時代に逆戻りしたと。

本当に日本は法治国家なのかと思う。

ただ、今回の事案は起訴されて裁判が行われたとしても、ほぼ100%に近い確率で「無罪放免」になるのは分かりきっとるから、それ以上は何も言わず、その結果が出るまでは静観、傍観するつもりでいた。

しかし、この問題は、それまで待っていたんでは遅いと知った。

それは、何も小沢氏の復権が遠のくという理由からやない。

ワシらは常に言うてるが、別に小沢氏の支援者でも何でもないさかい、復権ががどうのというような事にはあまり興味はない。

単に、この事を見過ごせば、日本は法治国家としての体をなくしてしまうのやないか。言うべき時を逸するのやないか。

それを憂うがためのことで、それ以外に他意はない。

一つの事が既成事実としてまかり通るようになると、それは際限なく拡がり、歪んだ権力として成長していく。

それが、引いては今回のように、罪にならんような事で人を罰する、罰しろという事態までになる。

その被害は、いずれはワシら一般市民にまで及ぶ。

そんなことは絶対に許してはならん。当たり前のことや。

その当たり前の事が、このままやと危うい状態になりかねん。

そうならんようにするためには、一人でも多く「間違いは間違い」と、はっきり主張する人間が増えるべきやということに思い当たったわけや。

国民の多くが、その検察審査会の「起訴相当議決」に賛成しとるというマスコミの報道がある。

それが民意やという。

本当にそうなのかという疑問がある。

それには、ワシらは、この問題に関してかなり辛辣に、新聞や「検察審査会」に対して批判的なコメントを多くしとる。

また、それらの大半はヤフージャパンなどの大手検索サイトで検索すれば容易にヒットするから、それが多くの人に知られていないというのは考え辛い。

例えば、『「起訴相当」決定の是非』というキーワードなら、ヤフージャパンで約6万件ヒット中、第1位で、当メルマガ『第101回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■報道のあり方……検察審査会の「起訴相当」決定の是非について』(注1.巻末参考ページ参照)のページが表示される。

グーグルジャパンでは、同じページが約1万件ヒット中、第1位になっとる。

他にも類似のキーワードで検索すれば、そういったものはいくらでも出てくると思う。

ワシらは、このメルマガで言うたことには、それなりの責任があると常に考えとる。

書けばメルマガの読者以外からの反響が大きいということも覚悟していた。

多くの人が、小沢氏の「起訴相当」には賛成という報道があるから、ワシらのような意見、論調には当然のように、辛辣な意見が多く届けられるものと考えていたわけや。

しかし、その予想に反して否定的な意見は、それらのメルマガの最初の号を発行してから5ヶ月以上経つが、今のところまだ1件も届けられていない。

むしろ、その記述に賛同するような意見ばかりが数多く届いている。

これを、どう評価したらええのかとなる。

また、ワシが日頃、勧誘する際、その雑談で聞く話にも小沢氏への批判的なものも、あまりない。

もちろん、ワシは、このメルマガで言うてるようなことは客には何も言わん。

営業員の常として、なるべく聞き役に徹しとるつもりや。営業で、こういった問題について自らの意見を積極的に言うのはまずい。

同意見なら成約に持って行ける可能性は高いが、違えばそれまでになる公算が大きいさかいな。

営業員は、そんなリスクを負うようなことをしたらあかん。

例え、自分とは違う意見であっても、営業の場では、むしろ、その相手に同調するくらいの臨機応変さが必要になると、そう常に心掛けとるということもある。

最近やと、「検察審査会の強制起訴というのは、おかしくないですか」というのが、この問題に興味を示す人の大方の反応や。

この問題についてよく分からないという人はマスコミの論調を信じ、それについて僅かでも調べたという人は疑問を呈するケースが多い。

それが本当のところやないかと思う。

さらに言えば、ここで「検察審査会の決定は間違っている」と言うてるワシらも、日本国民なわけやから、民意の一つには違いないと言える。

そして、こちらの民意の方も、その事実が多くの人々に知られ始めたということもあり、今は徐々に大きくなりつつある。

早晩、その民意が逆転する日も近いのやないかと思う。

また、そうならな、おかしい。どんなことがあっても、間違いは間違いでなかったらあかん。間違いをそのままにはできんさかいな。

そのための主張、発言は、今までのいきかがかり上、続けていくべきやということで、ワシらの意見が一致した。

傍観者でいるのは止めようと。

ワシらは5年ほど前、『第48回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■共謀罪について』、『第49回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■共謀罪についてPart2』、『第55回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■共謀罪について Part3』(注2.巻末参考ページ参照)に関して、ちょっとしたキャンペーン的な記事を掲載したことがあった。

結果、その「共謀罪」の法案自体が立ち消えになったということもあり、それ以降、それについての言及も記述もあまりしとらんが、今回の一連の「検察審査会」問題は、その「共謀罪」に匹敵するくらいの大きな闇、陰謀が内在しているという気がする。

「検察審査会」そのものの問題というのもあるが、それ以上に、そのシステムを自らの陰謀に利用しようとする輩がいて、それが比較的簡単に行われる状態にあるということが、今回のことで良う分かったさかいな。

つまり、個人の思惑次第で「それはおかしい」と言ってその手続きさえすれば、誰でも有力政治家の力を削ぐことが可能になると、今回のことで実証されたわけや。

これは、まさに、かの「共謀罪」に匹敵するくらい、国民にとっての大きな脅威になる可能性を秘めとる問題やと言える。

日本では、起訴された=犯罪者といったニュアンスで受け取る人が、あまりにも多いように思う。

裁判の結果を待つまでに、先にそういった結論を下すようなところがある。

本来、犯罪は「推定無罪」、「疑わしきは罰せず」が法の精神、司法の大原則のはずやが、今回のことは、明らかに「推定有罪」、「疑わしきは罰せよ」という、その法の精神、司法の大原則から大きく逸脱しとるものや。

それを許せば、日本の裁判システムそのものを根幹から崩れてしまう危惧すらある。

何で、そんなことになったのか。

今回は、それを検証してみようと思う。

それには、まず「検察審査会」という組織そのものの説明から始める必要がある。

簡単にそれを説明する。

「検察審査会」というのは、その名のとおり、検察の決定を審査する会、集まりということになる。言えば、外部の目による検察のお目付役やな。

これは、裁判員制度と同じく、有権者から、ランダムにくじ引きで選ばれることになっとる。

これも、裁判員制度同様、正当な理由なく辞退できんということになっとる。それに応じない場合は、10万円以下の罰金が科せられるとある。

ただ、こちらの方は、裁判員制度と違い、その歴史は古く、1948年7月から62年以上も続けられとるものや。

最近になって脚光を浴びとるさかい、比較的新しいシステムやと勘違いされとる人も多いようやが、そうではないということや。

もっとも、去年、2009年5月に、検察審査会法に第41条が追加され、


「起訴相当」と議決した事件については、再度捜査をした検察官から、再び不起訴とした旨の通知を受けた時(3ヶ月以内(検察官が延長を要するとして期間を延長した場合は指定した期間)に検察官からの対応の通知がない場合も含む)は、検察審査会は、再び審査を実施する。


という制度が導入されたから、その意味では新しいと言えるかも知れんがな。

そして、この法律の改正が今回の問題になっとるものや。

検察委員会は日本全国に165ヶ所あり、地方裁判所、およびその支部に事務局が設置されている。

毎年、2千件を超す検察への意義申し立てがあるという。

不起訴になった事件、事故について「それはおかしい」と思えば、誰でもできるとされている。

その多くは事件、事故による被害者、またはその身内、遺族やという。

そのため、たった一人でも異議申し立てができることになっとる。

不起訴というのは、その事件、事故に関して誰にも責任がないというのと同じやから、それに納得できん被害者、またはその身内、遺族がそうするというのは分かる。

そういうシステム自体は必要やし、これからも続けるべきやと思う。

問題は、それを悪用する者をどう排除するかという点にある。

そのためには、たった一人でも可能という点については、「事件、事故による被害者、またはその身内、遺族」に限定するべきやろうと思う。

公の捜査機関で「不起訴」としたものを、市民を代表してとか、国民の総意でいう口実で、ひっくり返そうとするのなら、今回のように、たった一人でそれを可能にしたらあかん。

しかも、そのたった一人ということを隠し、それを「市民団体」と、すり替えるマスコミの論調は、以ての外やと思う。

その当の本人ですら、自身のブログ(注3.巻末参考ページ参照)でその素姓を明かし、その目的と理由もはっきり、


不起訴決定後、極力早く審査申し立てを行いたかったため、今回の申し立ては桜井一人だけで行いました。

小沢一郎という巨悪を眠らせてはいけないこともありますが、外国人参政権実現のために誰よりも積極的なこの民主党大物政治家の動きを止めなければならないからです。

一連の小沢ショックとも呼べる政局の中で、外国人参政権問題は一時期に比べてかなり下火になってきた感があります。

しかし、同問題の中心にいる政治家が不起訴になったことで、またぞろ外国人参政権法案の国会上程を目指した動きが加速する可能性があるのです。


と言及しとる。

なぜ、このことを新聞やテレビなどのマスコミは隠す必要があるのか。公表しようとしないのか。

それだけでも、今回の小沢氏への一連の報道が恣意的なものやというのが見て取れると思う。

そういったことをなくすためにも、せめて、リコール運動並の一定の署名を集めて、はじめてそれができる仕組みを作るべきやろうと考える。

それなら、多くの市民の総意、告発やというのも分かるさかいな。

いずれにしても、その犯罪被害者でもない人間が、不起訴になった事案に異議を申し立てるのなら、それなりのハードルを高くする必要があるということや。

誰もが気軽に、そうできるようにしとるのは拙い。それがある限りは、こういった問題は、これからも続くと思う。

審査員に選ばれるのは11人。任期は6ヶ月。日当8千円+交通費が支給される。平均で月に1、2回程度招集されるという。

その審査会に出席すると、検察の調書や警察から、平均で千ページを超すという分厚い資料が渡される。

しかも、それらに書かれている内容は、お世辞にも分かりやすいと言えるものやない。もちろん、読んで面白いものでもない。

難解な言葉と法律用語でぎっしりと書かれている。正直、ほとんどの人は読む気すらせんやろうと思う。実際、そういった声を上げる参加経験者も多い。

人によっては、ある種の拷問に近いと感じると。

ここで、補助員弁護士がアドバイザーとして登場し、その説明をして、その苦痛を和らげる。

漏れ聞こえてくる参加者の話やと、そのアドバイザーの意見に引っ張られ気味になるという。

まあ、それも無理もない話で、裁判員と同じで、ほとんどは法律に関する知識など何もない素人やさかい、どうしてもそうなる。

それで、その膨大な資料の読み込みもあまりせんでもええとなると、よけいやわな。

問題は、このアドバイザーの弁護士の資質と姿勢にあると思う。

つまり、そういった状況であれば、そのアドバイザーの弁護士次第では、その審査員たちをどうとでもコントロールできるということになるさかいな。

また、今回のように報道で周知になっとるような事案やと、その論調に左右されるということも十分考えられる。

「小沢一郎という人物は悪い奴や。裏で絶対に何か悪さしとるはずや」というマスコミの論調しか知らん素人はどうしても、それを信じてしまう。

それにアドバイザー弁護士の意見が同調すれば、それが審議結果になる可能性が高いということや。

審議結果には、やはり検察の判断が正しかったという「不起訴相当」、検察の判断には疑問があるという「不起訴不当」、裁判にするべきだという「起訴相当」の3種類がある。

「不起訴不当」の議決がされると、再度、検察がその事案を調べ直して、「起訴」にするか「不起訴にするか」の判断を下す。

小沢氏の場合、2007年分の政治資金規正法違反とされた事案は、これになり、結局、検察が再度、不起訴処分としたため、この件は終了となった。

しかし、「起訴相当」になると、検察が再度、不起訴処分の決定を下した後、再審査が行われ、11人中8人の賛成があれば、2回目の「起訴相当」ということになって、検察には関係なく、強制起訴、裁判ということになる。

それが実際に行われたのが、今回問題になっとる、2004、5年分の政治資金規正法の虚偽記載違反の疑いということや。

最近になって、今回の2度目の「起訴相当」決定はおかしいという声が、新聞、テレビ以外のマスメディアから上がり始めた。

大手週刊誌がそれや。現在、確認できたのは2紙だけやが、これからもっと拡がりそうな勢いにある。

一つは、先週発売された小学館発行の2010年10月22日号の「週間ポスト」誌。

それには大見出しに、『検察審査会に申し立てた「真実を求める会」の驚くべき正体「たった1人」に殺された小沢一郎』とある。

その内容の全文は、著作権などの問題もあるので、すべてを引用するわけにはいかんさかい、それを知りたい方は購入、もしくは実際に手に取って読んで貰うしかないが、大部分は、ワシらが以前メルマガで話していたものと大差ないものやったと言うとく。

ただ、その中の『「100万分の7」の奇跡』という小見出しに、興味を惹かれるものがあった。

その部分を抜粋して紹介する。


今回の小沢起訴を議決した審査員は11人いるが、その平均年齢は30.9歳だったとされる。

有権者から「くじ」で選ばれることになっているが、有権者の平均年齢は約52歳。

この大きな差から、「本当にくじで選ばれている」のかという疑問が湧いている。

本誌はそのような偏りが生じる確率を求めた。

東京都の年齢層別の人口をもとに、多摩大学経済情報学部・統計分析グループの助力を得て、「くじで選んだ11人の平均年齢が、30.9歳以下になる確率」を計算したのである。

結果は、「0.005%」。70歳以上は審査員を断れる制度があるから、70歳未満の都民だけを母数にしても「0.075%」。

さらに驚くべきは、1回目の議決をした審査員の平均年齢も34.3歳(2回目とは全員が別人)。

平均年齢がこれ以下になる確率(母数70歳未満限定)は、「0.89%」で、両方が続けて起きる確率になると、「0.00067%」、つまり「100万回くじを実施すれば7回起きる」という“奇跡”だったことになる。

これは本当に偶然なのだろうか。


というものや。

後に、


<検察審査会>小沢氏議決の委員年齢訂正 平均33.91歳

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101012-00000093-mai-soci より引用


 東京第5検察審査会の事務局は12日、政治資金規正法違反(虚偽記載)で小沢一郎・民主党元代表を強制起訴することを決めた「起訴議決」(4日公表)にかかわった審査員11人の平均年齢を「30.9歳」から「33.91歳」に訂正すると発表した。事務局の担当者の計算ミスが原因で、事務局は「誠に申し訳ない」と謝罪した。

 事務局によると、平均年齢を計算する際、担当職員が37歳の審査員の年齢を足し忘れ、10人の合計年齢を11で割るなどしていた。議決公表後に一般市民らから「平均年齢が若すぎて不自然ではないか」などと問い合わせがあり、再計算したところミスが判明した。


ということで訂正はされたが、それをもとに計算し直したとしても、数字的には、それほど大差ないものになると思われる。

この不自然な数字をどう見るか。偶然か、意図されたものか。

意図的なものというのは、最初から、その議決が出ると決まりきった者ばかりを選んだのやないか、誘導しやすい対象ばかりを恣意的に選んだのやないかという疑惑になる。

その疑惑には根拠がある。

10月22日号の「週間ポスト」誌の記事は、そのことにも言及している。


また、今回の審査は2000ページといわれる膨大な捜査資料を読み込む必要があったにもかかわらず、「8月時点で補助員弁護士が決まっていなかった」。

1ヶ月程度で、平均30歳余りの審査員が資料を読破し、あの独創的な結論をまとめたというのは無理がある。

補助員弁護士の正確な就任時期にも疑問がある。検審法は「2回目の議決には必ず補助員弁護士をつけること」と定めている。

ところが、今回の弁護士が就任した時期は明らかにされていない。

9月はじめに「就任情報」が流れ、メディアは確認に動いたが、検察事務局も裁判所も明らかにしなかった。

当人は、議決を終えていた9月20日になっても、記者に対し、「(自分が補助員になるという報道は)事実と違う」と就任を否定していた。

もし議決当初に正式に就任していなかったとすれば、議決そのものが法的に無効になる重大事だが、それすら国民も小沢氏側も確認する方法がないのである。

その一方で、弁護士も検察関係者も「1回目の議決は11人全員が起訴相当だった」とか、審査の様子などをリークしている。

これは、検審法が禁じる「情報漏洩」に当たるが、こちらは問題にもされていない。

しかも、小沢氏が総理大臣に決まるかも知れない民主党代表選の直前に議決したのである。

補助員弁護士や事務局に、「小沢をクロにする」というバイアスがなかったか検証が必要だ。


と。

この中にある『検審法が禁じる「情報漏洩」に当たる』というのは、

検察審査法第43条、および第44条により、検察審査会を正当な理由なく欠席することは禁止され、守秘義務を負い、審査された事件から得られた情報を、他に漏らすことは終生禁止されている。

招集に応じない場合は10万円以下の過料、職務上の秘密を漏洩した場合は6年以下の懲役または50万円以下の罰金を科す旨の罰則規定がある。

というものや。

それからすれば、その補助員弁護士や検察関係者が「1回目の議決は11人全員が起訴相当だった」と審査の様子などをリークしているのは、立派な「情報漏洩」に当たると考えられる。

こちらの方が、小沢氏の虚偽記載問題なんかより、よっぽど大きな事件やし、重罪やと思う。

この「週間ポスト」誌が指摘するように、これについてはどのマスコミからも問題にすらされていない。

これを良しとして、小沢氏程度の問題を大疑獄事件かの如く扱うというのは、そこに何らかの陰謀、思惑があると疑われても仕方ないやろうと個人的には思う。

二つ目の大手週刊誌は、2010年10月22日号の「週刊朝日」や。

こちらは発行元が新聞社やから、少し奇異に思わんでもないが、新聞の良心としては、むしろ、こちらの記事にあるのやないかと感じた。

もっとも、同じ発行元で完全子会社やとは言うても、今は独立した出版社やから、新聞本社の意向とはあまり関係ないのかも知れんがな。

新聞社内部であっても、編集部と販売部というのは仲も悪く敵対することも多いと言うさかい、必ずしも新聞社の組織が一枚岩とも言えんのやないかなという気もする。

そう思いたくなるほど、新聞紙面との乖離が大きい。そう感じた記事やった。

その記事のタイトルはずばり『捏造された「政治とカネ」小沢起訴は無効である』、『無効! 議決は問題だらけ』というものや。

こちらも、著作権などの問題で全文の引用は差し控えるので、興味のある方は購入するなり何なりして読んで頂きたいと思う。

大半は、先の「週刊ポスト」誌と同じように当メルマガで言及してきた事柄と重複する部分が多い。

もっとも、その視点は幾分違うがな。

ただ、その中で、元検事の郷原信郎氏の意見には特筆するものがあったので、それを紹介したいと思う。

その部分を引用させて貰う。


今回の議決書に「別紙」として添付された「犯罪事実」を見ると、

〈被疑者(小沢氏)から合計4億円の借り入れをしたのに、平成16年分の収支報告書にこれを収入として記載せず、同収支報告書の「本年の収入」欄に、過小の5億8002万4645円であった旨の虚偽を記入し―〉

とある。つまり、小沢氏から現金4億円が提供されたという、不動産所得の原資となった収入も含めて虚偽記載の犯罪事実として書かれていたのです。

私の理解では、検審の「強制起訴」という制度は、あくまでも検察の不起訴処分の不当性を審査するために設けられたものです。

検察が不起訴とした事実について検審が、「起訴相当」の判断を2回すれば、裁判所が指定した弁護士による起訴(強制起訴)手続きをとることになります。

そう考えると、1回目の議決で「起訴相当」とされた事実について、検察が再捜査をして再び「不起訴」とした事実の範囲を超えた事実を、2回目の議決で「起訴すべき事実」にするのは、検審の強制起訴手続きの趣旨から言っても、明らかにおかしいと思います。

検察が再捜査の対象にせず、当然、再聴取を受けた小沢氏にも弁解の機会を与えていない「犯罪事実」が、突然現れて、それで起訴されるなんてことがあっていいわけはありません。

ですから、私は今回のような場合、強制起訴はできないのではないかと考えています。

もっとも、1回目の議決の範囲を超えた事実が2回目の議決に入る事態など想定していませんから、検察審査会法上で「無効な議決が行われた場合の手続き」は定められていない。

しかし、起訴議決が無効であれば、それに基づいて「検察官の職務を行う弁護士」を指定するのは許されないはずです。

もし、それを許してしまうと、指定弁護士が検察官の権限を行使することになり、被疑者の逮捕や家宅捜査を行うことも可能になるのです。

それはあまりにも不当だと思います。

なぜ、こんな議決になってしまったのか理解できません。

ただ、おもしろいことに、この議決書の「犯罪事実」を見ると、石川議員の起訴状の犯罪事実と非常によく似ている。

石川議員の起訴状に、一部加えて、一部削除していますが、それ以外はほとんど同じ表現です。

起訴状を切り張りしている課程で、間違って「4億円の収入の不記載」の記載が残ったのかも知れません。

そうだとすると、この犯罪事実は、審査会で議決した犯罪事実とは異なっているということになります。


というものや。

「検察審査会」というのは、その名のとおり、検察の仕事を審査する会であって、それ以外のことには触れたらあかんはずや。

あくまでも、検察が結論を下した「不起訴処分」が適正かどうかを審査するためだけにある組織、制度やさかいな。

それを「検察審査会」だけの独断で、検察が調べもしていない事案を持ち出して、勝手な憶測だけで「強制起訴」をしろと言うてるわけや。

これでは法律もへったくれもあったもんやない。

こんなバカなことが、まかり通れば郷原氏の言うとおり「検察審査会」は恐怖の組織になってしまう。

それを許してしまうと、指定弁護士が検察官の権限を行使することになり、被疑者の逮捕や家宅捜査を行うことも可能になるという。

つまり、罪な気罪を、最後の段階でいきなり持ち出しさえすれば、どんな人間でも罪に陥れることが可能になるということや。

こんな議決が法律の素人集団にできるとは到底思えん。

しかも、9月はじめには法律で絶対つけなあかんとされる補助員弁護士すら決まっていなかったということからすれば、2回目の「起訴相当」議決は数日程度のごく短い期間で決定されたことになる。

一般人には仕事もあり、集まる日も限られとるから、その間、ええとこ1、2回程度しか審議されてないと見るのが妥当や。

それで決められたとするよりも、誰かが事前にその決議書を準備していて、「2回目だから」ということで、大して審議などせずに、言うことを聞きやすい、あるいはごまかしやすい比較的若い審査員ばかりを集めてサインを迫った結果やと考えた方が、よほど辻褄が合う。

もっとも、それのできる条件には、それなりの組織と権力者が荷担してないと難しいやろうがな。

今回のことは調べれば調べるほど多くの謎が出てくる。

なぜ、そんなことになるのか。

幾多の謎については、それぞれの証拠を掴まん限りワシらには分からんが、そこに行き着く課程なら分かる気がする。

それは、最初から無理なものを無理矢理、是が非でもその型に嵌め込もうとするからや。

『最初から無理なもの』というのは、検察のこじつけに近い罪状のことで、「検察審査会」およびそれを利用しよういう勢力は、それに飛びついた。

しかし、検察は、やはり無理は無理と承知しとるから「不起訴処分」とし、あたかも小沢氏はグレーであるかのような印象だけを残して一応の体裁を保って退いた。

それでは、小沢氏が自由になってまずいという勢力は、飛びついた事案に固執しすぎたあまり、今回のように、それこそ「馬脚をあらわす」というお粗末な事態になったのやと思う。

同時に、「検察審査会」の脆弱性、危険性も世間に露呈する結果になった。

「検察審査会」は秘密のベールに、あまりにも包まれすぎとる。それが、利用される一因になっとるのは、ほぼ間違いない。

それが、裏には大きな闇、陰謀が潜んでいるという推論の根拠でもある。

今回のような「検察審査会」の暴走とも言える行為を防止するためには、公開の場でチェックするシステムが早急に必要になるのやないかと思う。

というか、裁判員制度と同じく、公開の場で「検察審査会」の議論をすればええだけの話と違うやろうか。隠すのは審査員の個人情報だけで十分やと思う。

裁判員制度も、それでやっとるわけやから、やってやれんはずはない。

それなら、誰にもごまかしようがなくなり、今回のような稚拙な議決書が出回らんで済むと思うがな。

この他にも、まだまだ、今回の「検察審査会」の議決書の不備を示す事柄が数多く存在するが、以前のメルマガでも言及しとることも多いので、ここで一々論(あげつら)うのは止めとく。

そういった疑問、質問があれば、いくらでも答えるつもりはあるがな。

ただ、興味のある方は、『小沢一郎が「起訴相当」となった理由』、『【存在感増す検察審査会】「これでいいのか」尽きぬ悩み 経験者インタビュー』、『冤罪を生みやすい検察の体質』、『郷原信郎:小沢氏に対する検察審査会の起訴相当議決は無効だ!』(注3.巻末参考ページ参照)というページがあるので、それに目を通して貰えば分かることも多いはずや。

最後に、今回の「検察審査会」による強制起訴まではええとしても、裁判所がこれだけの不備を承知でそのまま起訴を容認するかなと思う。

今回のようなケースは法律に照らせば、裁判所は「公訴棄却」と判断するのが妥当やと思う。

それに、例え裁判が開かれたとしても、起訴理由、条項に整合性がないということが明らかやさかい、公判の維持、そのものができんはずや。必ず頓挫する。

もっとも、これを仕掛けた連中の思惑は、小沢氏をその裁判にかけて罪に問うためやなく、単に足止めをして、その力を削ぎたいというだけのようやから、その意味では、すでに目的を果たしたとも言えるがな。

実際、この件があったために、僅かの差で「総理大臣」になり損ね、今や「刑事被告人」というレッテルまで貼られとるわけやさかいな。

仕掛けた人間にすれば、万々歳の成果やったと言える。

しかし、彼らにも見誤ったことがある。

それは、これだけ多くの反証が出てくる、暴かれるとは考えんかったことやと思う。

そして、ワシらのような者が、その反証を並べ立て、それを声高にネットで主張しようなどとは計算の埒外やったはずや。

この問題を突き詰めていけば、必ず裏に潜む巨大な闇、陰謀に突き当たるはずや。仕掛けた人間が白日のもとに晒される日も近い。

それがあってはじめて、今回の件が終わり、「検察審査会」という組織、システムもあるべき姿になると思う。

その日まで、ワシらは、この件に関わり続けるつもりや。



参考ページ

注1.第100回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞の実像 その3  新聞業界、それぞれの使命とは

第101回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■報道のあり方……検察審査会の「起訴相当」決定の是非について

第118回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■民主党代表選挙報道のあり方について

第120回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■暴かれた「自白調書」のカラクリと検察への信用失墜について

注2.第48回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■共謀罪について

第49回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■共謀罪についてPart2

第55回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■共謀罪について Part3

注3.Doronpaの独り言#main
2010年02月05日(金) 17時02分41秒掲載記事

注4.小沢一郎が「起訴相当」となった理由

【存在感増す検察審査会】「これでいいのか」尽きぬ悩み 経験者インタビュー

冤罪を生みやすい検察の体質

郷原信郎:小沢氏に対する検察審査会の起訴相当議決は無効だ!


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