メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー

第126回 ゲンさんの新聞業界裏話

発行日 2010.11. 5


■電子書籍化時代の本格的な到来について


今年、2010年は電子書籍元年ということらしい。

しかし、電子化された書籍、読み物ということなら、かなり前から、パソコンや携帯などでコミックや小説を読むことができるようになってたさかい、今更やないかと思わんでもないがな。

ワシなんか、3年前の2007年1018日に発売された任天堂の『DS文学全集』を買うて、それ以来、暇な時に読んどるということがあるしな。

これには、子供の頃に読んでいた、夏目漱石や芥川龍之介、宮沢賢治といった文豪の小説などが100冊分収録されとる。

それが小さなDSソフト一枚に収納されとるから、本の持ち運びのことを考えれば、それなりに手軽で便利や。

これなんかも立派な電子書籍やと思う。

それにしても、ええ歳した、おっさんがDSみたいなもん何で持ってんねんやてか?

古い読者の方なら、よくご存知やと思うが、ワシは昔からポケモン・ゲームに嵌っとるということがある。ワシが、唯一できる子供用のゲームや。

まあ、これができるという裏には聞くも涙、語るも涙の哀しい事情があるんやけどな。

もっとも、所詮は自業自得の果てにそうなっただけやから、その話を知ったとしても同情なんか誰もせんやろうとは思うがな。

その事情を聞きたいという人のために簡単に話す。

今から16年ほど前、ワシの経営していた住宅リフォーム会社が倒産し、15年間住み慣れた家は競売により二束三文で買い叩かれて無一文になり、妻子とも別れるということがあった。

さして珍しくもない破産による家庭崩壊の末路が、そこにあったわけや。

そのとき、ワシだけが人類滅亡の瞬間に立ち会うたような気分になり、世間を恨み、運命を呪うてたもんや。

一番悪いのは会社を倒産に追いやった無能な己自身なんやけど、哀しいかな、それに気づくまでにはかなりの時間を要した。

人は、なかなか己の非を認めるようにはできてないということなんやろうな。

今のワシが、その当時のワシに出会ったら、「アホか」の一言で済ますやろうがな。

その当時、ワシにはユウキという小学3年生の一人息子がおった。

ユウキとは妻と別れた後も、年に、2、3回ほど会うことができた。

そのユウキに買って与えたのが、ゲームボーイのポケモンゲームやった。

ユウキはワシと会うときには必ず、そのポケモンゲームを持って来ていた。ワシもその相手をするために、必死でそのゲームを覚えた。

単にポケモン・ゲームと言うても、ゲームボーイで7種類、ゲームボーイアドバンスで5種類やから、かなりあった。

それを、ええ歳をした、おっさんが覚えるのやから大変やで。しかも、ワシは根っからの機械音痴ときとるやさい、よけいや。

今はハカセのおかげで、パソコンを多少扱えるようにはなったが、その当時、使える電子器機はテレビやラジオを除けば携帯電話だけやったさかいな。

それも話すだけしかできんかった。

まあ、そんなおっさんでも子供のためやから、できたのやとは思うがな。

人は、どんなに苦手なものでも必要に迫られて、やる気になれば、たいていのことはできるということや。

その息子も今年で25歳になる。さすがに今は、その息子とポケモン・ゲームをすることはない。

そのままやったら、DSに触れることはなかったんやが、7年ほど前にハカセと知り合い、彼の2番目の子供、コウ君と仲良くなったことで、結果として、そのDSを扱えるようになったわけや。

コウ君は、当時、小学3年生で、それが別れた息子、ユウキと重なったというのも大きかった。

その頃の子供は誰もがポケモン・ゲームをしていたということもあり、コウ君とはすぐに、それで盛り上がり意気投合した。

その後、DSで発売されたポケモン・ゲーム7種類もすべて覚えた。

つい最近の2010年9月18日に発売された『ポケットモンスター、ブラック・ホワイト』も2種類とも完全に攻略して、今はポケモン集めに精を出しとるところや。

小学生の低学年と思える子供たちが、DSを持ち寄り、

「ボロトロスという伝説のポケモン、出てきてもすぐに逃げて捕まえられへん」

「ホンマや。『黒いまなざし』を使うても、何しても最初の攻撃ですぐに逃げるから、どうしようもないで」

という会話を交わしているのを聞くと、その横から、

「ボロトロスやトルネロスはPPを減らしたり、状態異常にしたりせんでも、出てきたら、そのまますぐにハイパーボールを投げたら簡単に捕まるよ」

と教える。

普通は、そんなに簡単に捕まるポケモンはおらんから、たいてい誰でも戦って弱めてから捕獲にかかろうとする。

しかし、それでは絶対に捕まらんポケモンということや。

何事においても、そうやが、物事は一通りの考え方だけではあかん。常識を破るくらいの幅広い思考回路が必要になることも多い。

それで、その子供たちから「ありがとう」と言うて貰えると、心の中で小さくガッツポーズをし、自己満足に浸る。

もっとも、その結論に到達するまでは、かなり試行錯誤して苦労しとるわけやが、知っていて当然という態度をとる。

すると、「このオッちゃんはできる」と子供たちから尊敬の眼差しで見られる。

子供好きのワシにとっては、それが大きな喜びでもある。

ワシは例え、それが子供の遊びであれ、何であれ、やり出した事は常に全力で取り組み、研究するというクセが昔から身に染みついとる。

ポケモン・ゲームに関して言えば、その道、14、5年のキャリアを誇るから、その知識も半端やないと密かに自負しとる。

まあ、そんなことを自慢しても変に思われるだけやから、このメルマガ以外では誰にも言うてないがな。

それに、ええ大人がDSを持ってポケモン・ゲームだけをしとるというのも体裁が悪いさかい、そのカモフラージュのために読み始めたのが、例の『DS文学全集』やったということや。

最初から、電子書籍やからということで買うたわけやない。

ただ、これはこれで昔のことを思い出しながら読めるので懐かしい気分に浸れる分、それなりに値打ちはあるがな。

また、大人になり、それなりに人生経験を踏んだことで、それらの小説に込められた意味が当時とは別の角度から理解できたということもあり、子供の頃に読んだのとは、また違った感動、感慨が得られたというのもある。

図書館や本屋で、そういった昔の文学全集を見かけても、手に取ってまで読む気にはあまりなれんが、こういった電子書籍という珍しい形態になると、読んでみようという意欲が湧くから不思議や。

携帯小説も2007年頃から話題になってたし、パソコンでコミック本が読めるというのも多くの人が知っとると思う。

それやのに何で、今年の2010年になって、今更のように「電子書籍元年」と言うのか、疑問に感じとるところや。

その大きな要因の一つとして、今年の3月24日、大手出版社31社による『日本電子書籍出版社協会(電書協)』の設立が挙げられるという。

それに加えて、アマゾンの「Kindle」、バーンズ&ノーブルの「nook」、アップルの「iPad」、ソニーの「リーダー」、シャープの「ガラパゴス」といった端末がぞくぞくと発売、また発売予定で、その重要が大幅に見込める環境が整ったということも大きく影響しとると。

まさに一大ブームが巻き起ころうとしとるわけや。

その意味での「電子書籍元年」やと言われると、そうかと納得するしかない。

日本人は昔から、ブームというのに弱い。

煽られると、皆がその方向に向かうという国民性があるから、ある程度、その流れが起きるのは確かやろうという気はする。

実際、出版関係業界では、その波に乗り遅れまいとそれぞれが鎬を削っとると言うしな。

一見、書店などはその『電子書籍化』という流れになると、さらに本の売れ行きが悪くなってマイナスになるのやないかと思われがちやが、どうやらそうでもないらしい。

むしろ、現在の状況を打破することができるかも知れんという期待感の方が大きいという。

書店の現状とは一体どんなものなのか。それをここで少し探ってみたいと思う。

日本の書店は、ここ10年で約3割も減少しとるという。

ここのところ毎年のように400店弱が出店し、1200店ほどが閉店しとるということやから、差し引き800店舗ほどの本屋が1年間に減っとる計算になる。

現在、日本全国1万5千店ほどあると言われている書店の内、毎年5%強がそうやと。

新聞業界、とりわけ新聞販売店は厳しいと言われ続けとるが、そこまでの減少幅はない。

新聞販売店は、全国でここ10年ほどの間に約2500店舗減少しとるから、1年で約250店。数字的には約2.5%減という計算になり、本屋のそれと比べる半分程度になる。

もっとも、ジリ貧状態やというのは共通して言えることかも知れんがな。

本の売り上げはピーク時とされる1996年の約2兆7千億円から、去年の2009年は約2兆円になり、7千億円も減少しとるという。

このままやと、さらなる減少は避けられず、深刻な事態になっていくのは、ほぼ間違いないと言われている。

新聞の場合は、少子化、高齢者の死去による人口減、若い世代の新聞離れなど様々な要素により、部数の減少が顕著やから、それも仕方ない面もあるが、本屋の場合は、それとは少し様子が違う。

本屋の場合は、本そのものが回ってこないために、売り上げ減になっているケースが多いという。

本の出版数が減ったのかというと、そうでもない。逆に、ピーク時、1996年の約6万3千点から、去年、2009年は7万8千点強と大幅に増えとる。

普通、本が売れるから出版点数が増えていると考えるのが自然やと思うが、実際はその逆で、売れんから増え続けとるのやと言う。

何で、そんなアホなことになるのか。

それは、本が委託販売で売れ残った分は返品できるシステムになっとるからやという。その返品率は、実に40%超に及ぶと。

出版社が作った本は「取次」という卸業者が買い取る。その時点で、出版社にその代金が入る。

その後、その本は書店に並ぶが、その内40%超は「取次」に返品されるわけやから、その分の請求が出版社に回される。

当たり前やが、その返品があることを見越して本を作る出版社は少ない。大半は売れるものと想定する。

しかし、現実は40%超が返品されとる。想定してない出費を準備することはまずない。その時点で資金不足に陥る出版社も多いという。

そのために出版社は新たな本を作り、「取次」に納入して、取り敢えず急場の資金を確保しようとする。

その得た代金で、その返品分の返済に充てる。

つまり、返品代金の支払いのために、新たな本を作っとるというのが出版社の実情なのやと。

自転車操業。極端なことを言えば、それが出版業界の実態なのやという。

それが、本が売れないことにより、本が増え続けとるという矛盾が生まれとる最大の理由なのやと。

多くの新刊本は売れないリスクを少しでも回避するために初版本を減らす傾向にある。

話題作とか有名な著者などの作品で確実に売れると見込める本は1万部以上刷ることもあるが、その他は2千部から3千部程度の初版本が一般的やという。

乱発というのは少し言い過ぎかも知れんが、それに近い状況になっとると考えられる。

何でもええから、とにかく本を作れという風にしか見えんさかいな。

そんな状態では程度の悪い、質の落ちる本、もしくは模倣に近いような本が出回る率が高くなる。

実際、そういう本をよく目にする。

読者というのは実にシビアで、面白くて役に立つ、有意義と思える本以外は手にすることすらない。

例え手に取ったとしても、その中身を数ページめくるだけで簡単に見分け、判断する。

多くの読者が、そんな程度の悪い本を買うケースは少ないから、売れ行きが悪くなり、返品が多くなるのは当然やと思う。

一般読者を舐めたらあかんということや。本を売りたければ、読者が読みたい本を作れと言いたい。

それが本来の出版社の誇りで信念やったはずや。ええ本を作るためには一切の妥協はせんと。

もちろん、そういう姿勢の出版社、編集者が存在するというのは百も承知やが、出版業界のそうした実情を見せられると、最早、それは少数派になってしもうたのやないかとさえ考えてしまう。

返品分の支払いに追われて本を作って、どうにかしようというのでは救いはない。

当事者にとっては仕方のないことやと言うかも知れんが、それでは出版社や書店に未来はないで、ホンマ。ドツボに嵌るだけや。

また、初版本が2千部から3千部程度では、当然やが、日本全国1万5千店ほどあると言われている書店のすべてに、その本が行き届くことはない。

但し、出版本は増えとるから、その質の善し悪しを別にすれば、本の点数自体は確保できる。

書店の棚を賑わせることは可能になるということや。

ただ、いくら棚を賑わせても、そのスペースには限りがある。

新たな本がどんどん送られてくるわけやさかい、そこに並べられる本の期間は当然のことながら短くなる。

それでは客がその本を手にする機会も減るから、売れ行きは期待できんし、実際に売れんということになる。

売れんと返品するしかない。返品率が多くなれば、出版社は、また短いサイクルで次の本を作って送り込む。

さらに、売れると見込まれる本は優先的に一部の大型店に回され、地方の小さな書店まで回ってこないというケースもある。

それでは地方の小さな書店はやっていけんということで閉店を余儀なくされる。

そのために書店が減っているのが実情なのやという。

悪循環としか言いようのない状況がそこにあるわけや。

そんなアホなことを繰り返しとったら、出版業界に先はないというのは誰にでも分かるわな。

この状況を電子書籍が救う可能性があると出版業界では期待しとるという。

電子書籍によって、現在の自転車操業的なサイクルが大きく改善される可能性があると。

まず電子書籍はデジタルやから、在庫を抱える必要はないし、紙代、印刷代といったものも必要ないから製造コストも安い。本の配送、物流システムにも金をかけずに済む。

本の紹介や販売は主にネット、および専用の媒体でするから広告費も削減できる。

ただ、それやと出版社だけが助かって、書店はどうなるんやという声が聞こえてきそうや。

今のままやと、出版社がその電子書籍化に移行してしもうたら、紙の本が激減するのは目に見えとるさかいな。

当たり前やが、本屋に本がなかったら商売にはならん。

そのままやと本屋が生き残るのは厳しい。

しかし、どんなことでもそうやが、やり方次第で道はある。

本屋自体をハイブリッド化するという方法が、その一つや。分かりやすく言うと、本屋でその電子書籍も一緒に売るということやな。

具体的には、パソコンなどの端末を数多く置いて、その場でネットの通販サイトから本来の本の注文とその電子書籍が購入できるようにするといったようなことや。

書店には、その案内をするために書籍の知識に長けた店員を配置し、客にその情報を教え、営業もする。電気量販店の店員のようなものやな。

今まで、書店で本の販売営業を店員が直接、客にするというケースは少なかったが、これからはそういった書店も現れると思う。

どんな商売も、今までのように「待ち」の営業だけでやっていくのは難しい時代になったということや。

すでに「リアル書店をIT武装化」すると宣言しとる書店グループもある。

そこでは、プリント・オン・デマンドというもので、その場で例え品切れの書籍であっても、僅か10分ほど待てば一冊の本が出来上がるという。

もちろん、その本の値段は定価のままや。そのための割り増し料金も必要ない。

これがあれば、どんな書籍でも出版してさえいれば、即座に入手でき、品切れの心配とか返品する必要もなくなる。

客にしても書店にしても夢のような話やが、現実に、その製本マシンが近い将来、その書店グループに設置される予定やという。

そのときになったら、それなりに話題になるやろうがな。

但し、その製本マシンは1台約1千万円と高い。

しかも、それで製本したから言うても、その書籍の値段は定価のままやから、その導入で、元が取れるとはとても思えん。

ただ、コストはかかるが、その製本マシンを置けば、今やったら確実に客を呼べる。

また、電子書籍そのものも、その製本マシンで紙の本にすることも可能やということやから、紙の本に親しんだ読者からも支持されるはずや。

そこに活路を見出せると。

ただ、すべてにおいて、ええことずくめのように見える電子書籍化やが、不安視する向きもある。

この電子書籍化の流れはアメリカからきたものや。アメリカではすでに一般化され普及している。

昔から、アメリカで流行ったものは数年後には日本でも流行ると言われていて、実際にもそうなっているケースが多い。

せやから、この電子書籍化のブームは必ずやってくるやろうと言われている。

しかし、日本とアメリカでは書店事情が大きく違う。

2006年のデータでは、アメリカにある書店は約6千店舗やという。

国土は日本の約25倍で人口は約2.5倍でありながら、書店数は3分の1程度しかない。

しかも、その書店の多くは大都市、およびその近郊に集中しているという。

それは、アメリカでは簡単に本を買うことができんということを意味する。

日本の場合、どんな辺鄙な地域でも本屋くらいはたいていあるし、すぐ見つけられる。

少なくとも本屋にも行けなくて困るという話は、あまり聞くことがない。

まあ、それがあるとすれば、本屋のない離島くらいなものやと思うが、それにしても日々の連絡船で本は届けられる。

しかし、アメリカの場合、本屋に行くには車で数10キロほど走らなあかんのが普通やという。

一冊の本を手に入れるのに半日費やしたという笑うに笑えん話はざらにあると。

しかも、アメリカは全般的に本の値段が高い。安くても2千円はする。書店には数千円する本が普通に並べられとるという。

そんな状況下やからこそ、コストが低くて安い電子書籍が売れ、ブームになったと言える。

日本の場合はどうか。

減ったとはいえ、書店に行くのは比較的簡単で、本もアメリカに比べ安い。

また、日本は古本屋も昔から充実しとるさかい、探す手間さえ惜しまんかったら望みの本を比較的簡単に安く手に入れることも可能や。

電子書籍は検索で探すのが一般的とされとる。狙いをつけた本を探すのなら、それでええ。

しかし、本屋によく行く人は、ぶらりと立ち寄り、何気なく目にした本を手に取り、買うというケースが結構あるように思う。

偶然による本との出会いを期待するということで言えば、本屋の方が電子書籍より、はるかに勝るということになる。

それら、いろいろなことを考え合わせると、果たして日本で電子書籍が根付くのかと疑問を呈する人もいとるということや。

ただ、個人的なことで言えば、電子書籍には魅力はあるように思える。

「私も、その電子書籍での出版を考えてみようかと思うのですが」と、ハカセ。

ご存知のように、サイトでは、3年前に『新聞拡張員ゲンさんの新聞勧誘問題なんでもQ&A選集』を自費出版で作って売り出したことがある。

それを買って頂いた読者のおかげもあり、現在までの販売部数は1千部を超えた。

これが多いのか少ないのかは意見の分かれるところやとは思うが、自費出版でサイトのみでしか告知、販売していない書籍にすれば多い方ということらしい。

有り難いことに、多くの読者から次の本をいつ出すのかという問い合わせを頂いとるが、その期待に応えられず二の足を踏んどるのが実情や。

ワシらの気持ちとしては次作の本を出したいのは山々なんやけどな。

ここからは、恥を晒すことになるさかい、今まで何も言わんかったんやが、この際、先の展望も少し見えてきたので思い切って話すことにする。

正直言うて、自費出版のネット販売では、売れれば売れるほど赤字になるというジレンマがあるんや。

当初から、それで儲けが出るとは考えてなかったが、まさか赤字になるとは予想してなかった。

第1作目は初期投資ということで、ある程度の損は仕方ないとしても、その売り上げで次の本くらいは出せると踏んでいたのやが、どう計算しても、それは難しいということが分かった。

それも、間違って大売れでもしたら大変なことになるという怖さがあるから、迂闊に手が出し辛い。

その内訳を詳しく言うといろいろと差し障りもあるので簡単に説明する。

まず、本の原価、製本代に価格の6割、ネット販売の委託費用に価格の4割が必要になり、この時点でほぼトントンになる。

代金引換郵便の場合は、代金引換手数料、買い物かご設置代で3割強かかる。

これに加えて、送料やクッション封筒代などの諸経費が必要になる。

そんなことぐらい最初に分かってなかったのかと言われると何も反論できんが、それらの経費は、当初の予想をそれぞれ少しずつやが、オーバーする結果になってしもうたわけや。

また、すべてが同時進行していて途中で止めるというわけにはいかんかったという事情もある。

それなら、次回の本は値段を上げたらどうやという意見もあるが、そんなことをして売れる自信はない。

正直、今の価格でも、これほど売れるとは思うてなかったさかいな。

完全に読み間違えた、甘い見通しやったということになる。

どこかの出版社から依頼されて出した本が1万部売れたとすると、普通は印税などで100万円程度は手にすることができる。

しかし、ワシらのように自費出版で委託販売をする場合やと、1万部売れた場合、逆に100万円以上の大赤字になる。

そんな気持ちで、次回作に取りかかったとしても、ロクなものは書けんと、ハカセは言う。

現状でベストなのは、残りの本を売り切って、少しでも赤字を少なくすることくらいや。

そんなわけで、次回作を期待して頂いていた読者の方々には申し訳ないが、今まではそれであきらめていたわけや。

しかし、この電子書籍を利用できれば、あるいは出版も可能やないかという希望が見えてきたことで、その考えが変わりつつある。

委託販売費用というのは電子書籍の場合でも必要やろうが、「本の原価、製本代に価格の6割」というのはいらんようになるはずや。

もちろん、先の轍を踏まんためにも研究の余地はあるがな。

現在、そのための原稿はすでに数種類できとるさかい、その目途さえ立てば、すぐにでも実行に移せる。

乞うご期待というところやな。

まあ、そんなわけで、個人的には、この電子書籍化は歓迎できるが、その将来性ということに関しては、正直、まだ未知数な部分が多いと思う。

既存の出版社も工夫次第で、まだまだ本を売ることは可能やと考えるしな。

そういうヒントも、こういったメルマガをやっとると、時折、知ることができる。

青月社という出版社がある。(注1.巻末参考ページ参照)

そこの販促を担当されておられるという方から、先日、一通のメールが届いた。


白塚博士様

いかがお過ごしでしょうか?

青月社で販促を担当しております黒澤です。

本メールは、これまで弊社の本のご紹介をお願いした方に、お送りさせていただいております。

この度も、弊社の新刊のリリースでご連絡をさせていただきました。

■「インターネットに就職しよう!」
著・守屋 信一郎 発行:青月社
発売予定日:11/1(月)

本書は、読者30,000人を持つメルマガ「守屋塾」の発行者である守屋さんが
初めて、その具体的なノウハウをまとめた一冊になります。

守屋さんの特徴は、なんといっても本当に一度も就職することなく、インターネットに就職してしまった、という点です。

ですので本書は、「ネットで年収1000万円稼ごう!」とか「ラクして大儲けできる!」などといった煽り系の本では全くありません。

インターネットを使って、堅実に、継続して稼ぎ続けるための手法を事細かに記した一冊になります。

そしてこの度、本書の発売直後のきたる11/5(金)〜11/6(土)にアマゾンキャンペーンを実施することになりました。

つきましては、是非本書(およびキャンペーン)の紹介を貴媒体にお願いいたしたくご連絡を差し上げた次第です。

お忙しい中大変恐縮ですが、是非このサイトで、本書をご一読いただきご紹介をご検討していただければ幸いです。


というものやった。

このメルマガでは、時折、書籍の紹介をしとるが、何でもしとるわけやない。

いくら頼まれても、しょうもないと判断したら相手にせず無視する。

その本の内容を読んで、これならと思える作品しか、このメルマガ誌上で紹介することはない。

それで、読んだ感想は……なかなかのものやった。

ハカセはネットでの儲け話は、ほとんど乗らんタイプの人間やが、「私もチャレンジしてみようかな」と言うてたくらいやさかいな。

知ってのとおり、サイトには、例の『新聞拡張員ゲンさんの新聞勧誘問題なんでもQ&A選集』の自費出版本以外、広告バナーのようなものは一切ない。

時折、広告バナーの設置依頼が舞い込むが、それも一切無視しとる。

理由は一つ。そういったものに、読者の役に立つ、ためになると思えるようなものがないからや。

ハカセが惹かれた理由として、著者の守屋信一郎氏が、その本の中で、


私がインターネットビジネスをはじめて、最初の報酬は90円でした。

普通の人は「90円稼げたって仕方ないよ。全然食べていけないじゃないか」とがっかりする。

成功する人は「90円稼げたってことは工夫すればもっとうまくいくんじゃないか?」と考えて喜ぶ。
 
あなたも、開始していきなり大きな結果が出ることを期待してはいけません。

でも、たとえ1円でも稼げたときは大喜びして、あなたがしたことに自信を持っていただきたい。
 
0を1にするということは、そのくらい大変なことなのです。 


と言うてるくだりがあったからやと言う。

90円でも稼げたら喜べというのはインパクトがある。実際、筆者自身がそうやったからこそ言える言葉やと思うしな。

つまり、その記述があるだけで、その本の内容は信用に足ると判断できるということや。

ワシらは、そのインターネットビジネスというものには詳しくはないが、一見の価値があるのは確かやと言える。

もちろん、それを読んでどうされるか、どう考えられるかは、それぞれで判断して頂くしかないけどな。

ワシらも、長くメルマガをやっとるが、今までに、こういったアピールをされた出版社は、この青月社さんだけやった。

これも、工夫の一つやと思う。

例え、その本が興味のない分野のものであっても、こういった勧められ方をされると、一度読んでみようかという気になるさかいな。

読んで貰えさえすれば、それが、ええ本なら売れる確率は高くなる。

当たり前やが、本は読んで貰えんかったら何の値打ちもないさかいな。

電子書籍に依存するか、従来の書籍発行に拘るか、出版業界は今、大揺れに揺れとる。

これからも、この問題について、しばらく注目していきたいと思う。

日本で電子書籍が根付くかどうか、あるいは既存の出版システムで生き残りを図れるのかどうかという答は、いずれ出るやろうが、どちらを重視するにしても、これだけは言える。

創意工夫。それしかないと。



参考ページ

注1.株式会社 清月社


書籍販売コーナー 『新聞拡張員ゲンさんの新聞勧誘問題なんでも選集』好評販売


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