メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー
第131回 ゲンさんの新聞業界裏話
発行日 2010.12.10
■ハカセの決断……書籍『インターネットに就職しよう!』に触発されて
「ゲンさんは、どう思われます?」
「どうて、ハカセが決めたことなら、それでええと思うがな」
以前、これとよく似た会話をハカセと交わした記憶がある。(注1.巻末参考ページ参照)
あれは確か、3年数ヶ月前のことやった。
東海の新聞拡張団にいた頃、ある昔なじみの新聞販売店の店主から、専拡(新聞販売店専属拡張員)として来てくれんかという誘いがあった。
そのときは、ワシが「ハカセは、どう思う?」と聞き、
「どうと言われても、ゲンさんが決められたことなら、それでいいと私は思いますけど」と、ハカセが答えた。
今回とは逆のパターンや。
1ヶ月前の11月5日に発行した、『第126回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■電子書籍化時代の本格的な到来について』(注2.巻末参考ページ参照)の中で、ある書籍を紹介した。
『インターネットに就職しよう!』(注3.巻末参考ページ参照)というのが、それや。
その本の紹介をすることにしたのは、ハカセが定期的に購読しとるというメルマガ『青月社の「知りたい事は本に聞け!」』(注4.巻末参考ページ参照)の発行者、黒澤氏に依頼されたからやった。
ハカセは、その第1号の中にあった【特殊編集者Kの送る「作家になりたきゃ俺に聞け!」】を見て共感したという。
それには、一般の方から出版社へ頻繁に原稿持ち込みはあるが、そのほとんどは本にはならないと書かれていた。
「読者の視点」が抜けているからだと。
「こういう内容の本は今まで無いんじゃないですか?」と得意気になる前に、
「読者にとって」本当に必要な内容なのかをじっくり考えて欲しいと。
「有名作家の○○なんかより売れるとは思いますけど…」とのたまう前に、「読者にとって」あなたはどれだけの存在なのかを考えて欲しいと。
しかし、そのことの分からない人間が多すぎるために、それを「誰かが伝えていかなくてはならない」と考えたと。
正論やが、これは腹が据わってないと、なかなかできることやないと思う。
一つ間違うと、そのメルマガ自体が最初の段階で頓挫しかねんさかいな。読者が集まらんということも十分考えられた。
出版社がメルマガを発行するのは、それにより少しでも多くの読者を確保、開拓したいということが狙いとしてあったはずや。
そのためには読者に迎合するのもやむを得ない。読者の気分を害するような記述はなるべく避けようと。
普通はそう考える。
出版社が発行するメルマガを読むのは、「自身で本を出したい」、「そのための情報が知りたい」といった動機の人間が多いというのは容易に想像できることや。
中には、「出版社へ原稿持ち込みたい」、「読んでほしい」という人もいるやろうと。
それをのっけから、「しょうもない原稿は持って来るな」と冷や水をぶっかけるような話をしとるわけや。
分かってくれる人だけに、そのメルマガを見て貰えたらええと考えたにしても、危険な賭けやったと思う。
もっとも、それが狙いやったのか、あるいはストレスの溜まりやすいと言われる編集者自身の鬱憤(うっぷん)を晴らすためのハケ口にしたかったのかは窺い知れんがな。
ともあれ、ハカセはそのリスキーな姿勢に共感したという。
ワシらは、お互い歳も食っていて、それなりに人生経験がある。騙されたり、危険な目に遭うたりしたことも多い。
せやから、物事を簡単に信じるということが少ない。どんなに良さそうな話でも裏に何かあるのやないかと常に考える因果な性分がある。
まあ、早い話が、それだけひねくれとるわけや。
それらの経験の中には、絶体絶命の窮地、死地と呼べるような状況に追い込まれたことも幾度となくある。
特にハカセなどは現実的な死と直面したことがある。
ハカセは心筋梗塞を引き起こし担ぎ込まれた病院のICU(集中治療室)で一度は心臓が止まり、奇跡的に回復した後も、その担当医者から、心臓移植をしなければ余命1年しかないと宣告された。
もっとも、結果的にはそれから10年以上も生き伸びとるさかい、そう宣告した医者がヤブやったのか、単にその当時、心臓移植手術というのが流行っていて、その経験が積みたくてハカセを実験台にしたかったのかは定かやないがな。
ただ、当時の医師の名誉のために言えば、後日、循環器系の医療に関して最先端技術を誇る、ある大学付属病院での再検査の結果、「けいれん性狭心症」だったと分かったさかい、そう勘違いしたという事情もある。
また、心筋梗塞を発症した際、すでに心臓の4分の1が壊死していたから、心臓移植手術も、その選択肢として間違ってなかったというのもある。
緊急を要する判断がそこにあったと、今では好意的にそう受け取っているという。
もっとも、最初に担ぎ込まれた、その病院からは早々に転院したということやがな。
「けいれん性狭心症」というのは突如心臓発作の起こる病気で、それほど珍しいタイプのものやないが、たまたまそれが発症しているときに診察すると危険な状態と錯覚するという。
その後、何度か入退院を繰り返し、カテーテル手術を二度ほど行った程度で現在は、毎日相当数の薬を服用せなあかんし、未だに通院も欠かせんということはあるが、外見上は一般人とほとんど変わらんまでに回復しとる。
ワシはと言うと、トラブルの方から勝手にすり寄ってくるという因果な運命を背負って生まれたようなところがある。
そのトラブルの例を挙げるとキリがないさかい、過去のメルマガのバックナンバー(注5.巻末参考ページ参照)に、その類の話が幾つかあるので、それを見て貰えればある程度分かって頂けるものと思う。
もっとも、ワシらの性格がひねくれとるのは、何もそういった体験、経験のせいばかりでもないがな。
それよりも、持って生まれた性質、性格の悪さに起因することの方が大きいと思う。
いずれにしても、ワシらは、すべての事がまともに受け取れん因果な性分があるのだけは確かや。
常に、その裏には何かあるのやないかと考える。
ええことばかり論(あげつら)ったものは怪しいと疑い、そんなものが世の中にあるはずはないと。
どんなものにでもプラス面とマイナス面は必ずあると。
それらをどの程度まで晒すかという問題はあるが、そのマイナスの部分に一切触れんようなものは信用せんし、相手にしたくもないと。
説得力は、ええ面も悪い面もさらけ出して初めて生まれるものやと考えとるさかいな。
清月社の黒澤氏やないが、ワシらもサイトのQ&Aに寄せられる相談について、その相談者に心得違いがあると判断すれば、忌憚なくというか、ズケズケとその部分を突くことも多い。
拡張員で営業に行き詰まったという相談を受けた場合、その考えの甘さを指摘することもあれば、その人間が拡張の仕事に不向きと感じると、「あんたにはこの仕事は向いてないから早めに辞めた方がええ」と平気で言うとるさかいな。
非情なようやが、その方が結果的に、その人のためになると信じとるわけや。
望みのない世界で頑張るよりも、他に向く仕事を探す方が賢いと。
それと似た思いが、守屋信一郎氏の『インターネットに就職しよう!』からも感じられたと、ハカセは言う。
普通、こういった情報本は、いかにして成功したかという点ばかりを強調するものが多いが、氏は、まずそのマイナス面をさらけ出すことから始めておられる。
自身の体験に伴う、ふがいなさも赤裸々に語りながら。
氏は最初の1年ほどは、インターネットビジネスで稼げる可能性があると知っても、具体的な行動は何もできなかったと告白している。
その理由はシンプルで、「そもそも具体的に何をやったらいいのか分からなかった」からやと。
その当時でも本屋には、インターネットを使ったビジネス本はいくらでもあったし、ネット上では稼ぐ方法と銘打った情報も数多く販売されていた。
それらのビジネスをしていた人の多くはホームページを運営していたが、氏はそのホームページすら作れなかったという。
チャレンジはしてみたものの上手くいかなかったと。
そこで氏はホームページを持たずに、稼ぐことのできる情報を探すことにしたという。
それで行き着いた答えが、そういった情報を発信しているメルマガを読んで勉強することやったと。
その中で本物の情報を発信している人たちと出会えたのは幸運やったと。
しかし、氏は同時に「中には、詐欺的な情報を売って稼いでいる人たちもたくさんいましたし、現在でもその種の人たちは存在します」と迂闊に信じ込む危険についても警告している。
「情報が溢れかえっている中で、みなさんも何を信じれば良いのか分からなくなっているはずです」と。
そして、その本では「大丈夫です。あなたにもできます。私がそうであったように」と呼びかけている。
上手い。
結果として、「私を信じてください」と言いたいわけやが、自身を一度、その初心者の立場に置くことで、何も知らないであろうと思われる素人読者と同じ目線で語りかけとるわけや。
こうすれば、「自分にもできるのやないか」と誰でも錯覚、いや考えやすくなる。
こういった本は、まず読者をその気にさせるということが重要になる。やる気を起こさせん限り、先を読ませることすらできんさかいな。
そうした上で、氏は「やれどもやれども結果が出なかった」と言い、その理由を「単純に行動の量が足りないことが原因」とした。
では、どのくらい行動すればいいのか。
その答えとして、「目安として1000時間くらいの作業量」で、その分野で一人前の技術を身につけ稼げるようになれるとある。
1日3時間取り組んで1年。
これを長いと感じる人間、すぐに結果を望む人間には、このやり方は不向きということになる。
ワシがいつも「拡張の仕事に即効性のある便利な方法はない」と言うてることと相通じるものがある。
何事に限らず、地道に取り組む者だけが報われるということや。
しかし、それの分からん人間が世の中にはあまりにも多すぎる。
まあ、せやからこそ、成功する者もごく一部しかおらんということになるのやろうがな。
それについて氏は、
一般的に、本を読んで、その内容を実践しはじめる人は1〜2割くらいでしょう。
そのうち、実践し続けるのは、さらにその中の1〜2割くらい。
だから結果を出せる人は1〜4%くらいだと思います。
と、その厳しさについて触れとる。
成功者は100人中、ええとこ1人〜4人程度やと。それが、現在のインターネット・ビジネスとやらの実態なのやと。
端的に言えば、「努力したごく一部の者だけが報われ、努力しない大多数の者には結果がついてこない」ということになる。
ただ、そうは言うても、結果が出ないということは稼げない、つまりメシが食えないということを意味するわけやから、単に頑張る者だけが報われるというのも酷な話ではあるがな。
現実は、それだけ厳しいということが言いたかったのやと思う。
甘い考えでは、あかんと。
『インターネットに就職しよう!』というタイトルは、ハカセにとってカルチャーショックやったという。
そんな考え方もあるのかと。そういうことなら、やれそうやと。
ハカセは、今の状況に少なからず危機感を抱いていた。
それは仕事が激減しとるということにある。
ハカセの本職は、ゴーストライター。と言うても、世間一般の認識とは少し違う。
一般的なゴーストライターは、著名人、有名人の代筆を生業としとるが、ハカセへの執筆依頼者たちには特別な著名人、有名人というのはあまりいない。
大半は中小企業などの経営者や個人事業者たちで、その自伝を自費出版する際の原稿の代筆をするというものや。
人はある程度の成功を成し遂げると、それを人に誇示したくなるようや。
また、ある個人事業者などは、その自費出版本を取引先との営業時に、名刺代わりとして使うというケースもあるという。
仕事により、何らかの本を出版しとるという事実は結構有利に働くらしい。
文章を書くのが得意な人は自分で書くが、そうでない人はハカセのようなゴーストライターに依頼するわけや。
それについての具体的な作品の中身を明かすことはできんが、ハカセの書くものは面白く、物語として読んでも秀逸なものが多い。
まあ、それについてはメルマガを見て貰えれば、おおよその見当はつくやろうがな。
メルマガには、ワシの情報や読者からの投稿をもとにした話が相当数ある。
ワシだけやなく、投稿文をもとに作られた話の完成度に驚かれる投稿者も多い。
それらの話を挙げればキリがないほどあるが、その中でもワシの個人的な好みで言うと、旧メルマガ『新聞拡張員ゲンさんの裏話』の『店長はつらいよ』シリーズ(注6.巻末参考ページ参照)なんかが、その代表的なものやないかと思う。
その投稿者から寄せられた情報の面白さというのもあるが、それを娯楽的な読み物にまで昇華する手腕は秀逸と言うしかない。
そのシリーズは3年ほど前のものやが、未だにアクセス数も多く、人気も高い。
もっとも、ハカセは若い頃、小説家になるために本格的な文章修業を積んだ経験があるから、それを知っているワシにすれば、取り立てて驚くほどのことでもないがな。
これについては身内としての欲目、ひいき目だけやなく、実際、ある大手出版社の編集者でさえ興味を示して触手を伸ばしたというほどやさかい、その実力は相当なレベルにあると言うてもええ。
現在、その出版社では出版の企画候補に挙がっとるとのことや。
つまり、それだけの筆力があって書く自叙伝の代筆やから、それなりに評価も高かく、口コミでの人気もあったわけや。
今年になって、その依頼が極端に減ってきた。
その確かな理由は分からんが、この長引く不況で需要が減ったという以上に、ハカセのほとんど宣伝せんという姿勢にも、その原因の一端があるように思う。
このメルマガやサイトもそうやが、出版した本に至っても、ほとんど宣伝らしき行為はしてないしな。当然、そのための金も一切かけてない。
ワシはこれでも営業マンやさかい、「それでは売れる物も売れんで」と言い続けてきとるのやが、やっこさんは今までそれについて、まったく耳を貸そうとはせんかった。
それが、ここにきて危機感を抱き始めたということや。
仕事が減ってきたからと言うて、今更、普通の仕事に就くのも難しい。
その気持ちはあっても、心臓病のため通常の仕事先が見つけにくいさかいな。
最近でこそ、入院することはなくなったが、「けいれん性狭心症」という厄介な病気のため、いつ突発的な発作が起こるかも知れんという不安が常につきまとうという。
この就職難のご時世、いくら数多くの資格や優秀な技術を持っているとはいえ、それと知ってそんな人間を雇うような企業はまずない。
しかも、50過ぎのおっさんときてはとても無理や。救いがない。
それもあり、現在、自宅でできる仕事をしとるわけで、活路はそこにしかないて考えていた。
その仕事が減ってきたのは、いかにも辛い。
どうにかせんとまずいと考えていたときにタイミングよく『インターネットに就職しよう!』という本の存在を知ったのやという。
「私自身、なぜかは知りませんが、昔からこれ以上、もうどうしようもないという事態になると、不思議とすぐに希望というか、進むべき道が見えてくるんですよ」と、ハカセは言う。
そのすべてが偶然の出来事やと。
あまり自身のことには触れないハカセが珍しく、『第28回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■クリスマスソングが歌いたい』(注7.巻末参考ページ参照)の中で、11歳のとき自殺を決意して家出したと話したことがあった。
その年、ハカセの唯一の庇護者だった祖父が他界したということで、叔父たちの家に、順番にたらい回しにされることになった。
そこでの仕打ちに耐えられず、自殺を決意したのやという。
それがクリスマスの夜やった。
その夜、エリコという聾唖(ろうあ)の少女と知り合ったことで、その考えが変わって自殺を思い止まった。
ハカセが過酷やと思うてた生活は、エリコのそれと比べれば取るに足らんものに思えたからやと。
大人になり、小説家を志して、その修業のため職を転々とする日々が7、8年続いた後、自身の才能と運のなさに痛感して方向を見失い絶望の淵にいたとき、今の奥さん、チエさんと知り合って結婚した。
結局、生活のため小説家になるという夢を捨てることになったが、その後、二人の子供に恵まれ幸せを手に入れることができた。
それから15年。
大手企業の化学工場専門のメンテナンス会社に就職していたハカセは、そこで日本有数の技術者、現場監督者として、その方面では、そこそこ名の売れた存在になっていた。
そんなある日、心筋梗塞を引き起こして生死の境を彷徨い、奇跡的に生還したわけや。
それ以降、身体的に普通の仕事ができんようになって道が閉ざされようとしたとき、またしても、幸運が訪れる。
ひょんなことから、ある知人にゴーストライターにならんかと誘われたのが、それや。
ゴーストライターというのは、その名のとおり幽霊作家で、実在したらあかん存在やさかい、どんなにええ作品を書こうが、それはあくまでも依頼者の作品であって、ハカセのモノにはならん。
某かの金と引き換えに、墓場までその秘密を持っていかなあかん宿命を背負った仕事やと言える。
食うに困ることはなかったが、作家としての誇りを持つことはできんかった。
こんなことをするために、あれほど頑張って修業してきたのかと思うと泣けてくることも、しばしばあったとハカセは言う。
その仕事を得てからしばらくして、これも偶然にワシと知り合うことになる。
そして、メルマガやサイトを始めたことで、その心のバランスが取れるようになったとハカセは話す。
サイトやメルマガはオリジナルなものやさかい、それを書き続けることで、作家としての誇りと夢をつなぎ止めることができたと。
加えて、それにより読者に感謝されるという予想外の出来事も経験することができたと。
ワシもそうやが、ハカセもそれまでの人生において、人の役に立って喜ばれ、感謝のメールを貰うというような経験は皆無やった。
そして、そのことを素直に喜べる幸せというのも初めて知った。
現在、6年半に渡って続けられとるのも、それがあるからやと言うても過言やない。
そのゴーストライターの仕事が先行き怪しくなりそうなとき、今回またもや、その助け船になりそうな書籍に出会ったということや。
それが、「昔からこれ以上、もうどうしようもないという事態になると、不思議とすぐに希望というか、進むべき道が見えてくるんです」というハカセの言葉の背景にある。
それについては、ハカセは単に運が良かったと感じとるようやが、それだけやないと思う。
運とか道というものは、その本人が何とかしたいと強く念じるからこそ、それと分かり見えてくる事であって、棚ぼた式に現れるものやない。
また、例え現れていたとしても、棚ぼたを期待する人間がそれと気づくことはまずない。
つまり、それに気づくことのできる僅かな人間こそが運を持っていると言えるということやと思う。
それにしても『インターネットに就職しよう!』というタイトルは、なかなかのネーミング、発想やと思う。
こういったタイトルの命名は編集者のアイデアが多いというのは知っとるが、実に上手い。
ハカセのように、一般の企業に勤めにくい人間にとって、魅力的に感じるフレーズやと思う。
書店に何の予備知識もない状態で、その本を見かけても、おそらくそういった人たちのほとんどで手が伸びていたはずやと。
ハカセはその本の存在を知ったことをチャンスと受け取った。
しかし、いくらそう考えたとしても、その適性があるのかどうかという問題がある。
やりたいというのと、それに向いているというのは、また別や。
成功者がほんの一握りしかおらんというのは、そういうことやさかいな。
ハカセは、自身にその適性があるかどうかを判断する上で、その書籍『インターネットに就職しよう!』の記述を参考にしようと考えたという。
ただ、その適性についての判断は自分でするものええが、できれば信頼できる第三者に委ねた方が確かや。
人は、能力のあるなしについての適正な自己判断は、なかなかできにくいもんやさかいな。
どうしても自身に対しての欲目というのが働く。できんことでも、やればなんとかなると考え自身を過大評価しがちになる。
それでは適性を見極めるのは難しい。
その意味もあって、ハカセは、ワシに「どう思われます?」と聞いてきたわけや。
ワシなら、冷徹に、いや冷静にその判定を下すやろうと信じてな。
親しい友人同士で、そんなことができるのかと危惧される方がおられるかも知れんが、ワシらに関しては、その心配はいらん。
あかんことはあかん、間違っていることは間違っていると、日頃から遠慮せず言い合うとる仲でもあるしな。
少なくとも、安易に迎合することもなければ、持ち上げることもない。そこまで言うかということも度々ある。
もちろん、それでお互いが気まずくなることはない。
苦言や提言が自然に言い合え、お互いそれが受け入れられる関係でないと、本当の親友とは呼べんのやないかと思う。
また、そうでなければ、このメルマガやサイト自体が6年半近くも続けられるわけがない。ワシらが分裂して喧嘩別れでもしたら、それまでやさかいな。
『インターネットに就職しよう!』の中に『第3章自己分析で適性を知る』という項目がある。
そこに示されている記述で検証してみることにする。
★志望動機はなんですか?
この場合、インターネットで仕事をしようと思った動機、理由付けが「何か?」ということになる。
ハカセの動機と理由は先に言うたように幾つかある。
「心臓病のため通常の仕事先が見つけにくい」というのもそうやし、「執筆依頼の減少」による仕事量が少なくなったのも、そうや。
せやから、志望動機としては、それなりにあると言える。
★それは本当にやりたいことですか?
多くの人は自分が望んでもいない目標を立ててしまっているという。
「1億円稼ぎたい」、「豪邸に住みたい」、「世界一周旅行をしたい」など、とくにやりたくもないことを、何となく周りに流されて、そうなることが、世間一般から見て幸せだと勝手に思い込んで目標を立ててしまうのやと。
それが行動に起こせない、続けられない最大の要因やないかと。
その点、ハカセの目標、目的は明快や。
電子書籍を利用して自身の作品を売りたい、発表したい。そのためにインターネット・ビジネスの仕組みや方法を知りたいということに尽きるさかいな。
好きなことをしたいということやから、その条件は満たしていると言える。
ただ、ハカセには金儲けをするという意識がほとんどない、欲がないというのが、難点になるのやないかとは思う。
単に依頼された仕事をこなすだけなら、無欲というのでもええが、まがりなりにもビジネスと名がつけば、それを売り込むための営業が必要になる。
そのときにモノを言うのが、「儲けたい」、「稼ぎたい」という欲求であり、願望やと思う。
それがエネルギーとなるのやが、ハカセにはそれが欠ける。
本人曰く、「ここ10年余りは、いつ死が訪れるか分からないという状況で生きてきましたので、将来を見据える余裕などありませんでしたし、死に行く身に金など必要ないと考えてましたので」というのが、金銭欲に固執しない理由らしい。
金は生活できる程度稼げれば、それでええと考えていると。
そのせいもあるのか、サイトには広告バナーはまったくないし、企業からの広告依頼もすべて断っているという。
当然、アフィリエイトといった、現在ではインターネット・ビジネスの根幹をなす類のものも一切設置していない。
メルマガやサイト、出版本の宣伝というのも外に向かっては、ほとんど何もしていない。
自然に集まってくる人たちだけで十分という考えやが、それではビジネスとしては心許ないし、成り立たん。
それは趣味の領域にしかすぎんことやさかいな。
ただ、それでいながら、これだけの人気サイトになって世に知られ、760名以上ものメルマガ読者を確保し、ネットだけで1千部を超える自費出版本を売り上げているというのは驚嘆に値することやと思う。
それを活かそうとせんというのは、いかにも勿体ないと言うしかない。
ワシは、インターネット・ビジネスとやらについてはド素人やが、これでも拡張だけやなく、大手建設会社の営業を含めると営業一筋40年のキャリアがあるさかい、事、「営業」に関してはそれなりに自信もあるから、およばずながら、力になりたいと考えとる。
それで、ハカセの欲のなさを補えればと思う。
★自分にできないことはできる人にやってもらう
これについては、ハカセには天賦の才があるように思う。
ハカセは人に頼み事をするのが実に上手い。
ワシなども、ホームページなんかにはまったく興味はなかったんやが、ハカセに上手いこと乗せられて、気がつけば全面的に協力させられとったさかいな。
他にも、法律家の先生や元新聞記者、ジャーナリスト、新聞販売店、新聞拡張団の関係者の方たちへも、いろいろと無理難題なことを半ば強引に頼んどるようやが、ほとんどの人はワシと同じように快く、それに応じて協力してくれとる。
しかも、それに対しての対価はゼロにも関わらずや。
ハカセに頼まれると断りにくい。何とかしてやりたい。そんな雰囲気がある。
これについては、「私は長く現場監督をしていたことがありまして、多くの作業者の方たちを使っていた関係で自然に人への頼み事が上手くなったのではないでしょうか」と自己分析してたが、どうやらそれだけではなさそうや。
古くは選挙事務所のきりもりや、ある大手NPO環境保護団体の支部長までしてたというから、人に仕事を任せる、依頼するというのはお手の物やったのやないかと思う。
せやから、これについては、それほど心配はしていない。
もっとも、本格的にハカセが始動することになって、その被害を被ることになる人が増えるかも知れんが。
★時間がなくても結果を出せた理由
何かをする場合、時間がないというのは単なる言い訳にしかならんと思う。
時間というのは、すべての人に平等に与えられとるもので、その使い方はそれぞれや。
何に時間を使い、かけるのかというのは、その人の優先順位で決めるしかない。
インターネット・ビジネスが大切やと思えば、誰でもそれに時間をかけられるはずやし、反対に、その人にとって、それ以上に時間をかけるべきものがあれば、インターネット・ビジネスに費やす時間がないと感じる。
それだけのことや。
ハカセの口から今まで「時間がないからできん」という言い訳を聞いたことがない。
それが必要なことなら、どんなことをしてもその時間を取る。そんな男や。
氏も「作業をする時間を無理矢理作りだして、仕事をしていたのです」と言うておられる。
それを当たり前の事として捉えられんと、その仕事をするのは難しいということになる。
★自分がどんな人間であるかを明確にする
これだけを聞くと何となく難しそうな感じを受けるが、氏の「実際にビジネスを立ち上げる際に大切なのは、あなた自身がどんな人間で何ができるを知ることです」ということなら、すでに今までの話の中で答は出ているものと思う。
もっとも、「ただし、好きなことをやっていれば成功してお金を稼げるのかというと、それは違うのです」という氏の弁にはドキリとさせるものがあるがな。
「世の中から求められている価値を提供できなければビジネスとしての成功はありません」という点において、ハカセも熟考するべきやと考えとるようや。
ただ、もともと、ハカセは「残りの人生を人の役に立てたい」という意識が強いから、その点は大丈夫やと思う。
★あなたの当たり前は他人にとって珍しいこと
どこかで聞いたようなフレーズやと思うたら、ワシが普段から言うてることとよく似ていた。
サイトのQ&Aの相談などで、「タチの悪い拡張員に仕返しされないか心配です」というのがあると、たいていは、「その拡張員は、あんたのことなど覚えておらんから大丈夫や」と言うとる。
「たいていの拡張員は同じような営業トークをするのが普通さかい、それによりあんたのように揉めるというケースはいくらでもあると考えられる。
あんたにとっては滅多にない珍しいことでも、その拡張員にとっては多くの客の中の一つの出来事にすぎんから、一々そんな事例を覚えていて仕返しなどすることなどあり得ない」というのが、その理由やと。
人は、自分の置かれた立場を中心にして考える習性があるが、冷静になって考えれば、自分の日常や常識は他人にとっては非日常、非常識というのはいくらでもあることやと分かるはずや。
氏は、この言葉で、人には誰でも特筆できるものがあるはずやから、「自分には価値はない」、「人に誇れるものは何もない」と考えて落ち込む必要はないと言うてるのやと思う。
つまり、売り込めるものを探せば必ず何かあるはずやと。
ワシもその考えには同感や。
この点において、ハカセもそのことは十分承知やから何の問題もないと思う。
★自分に向いているビジネスの仕方を把握する
これが現在のハカセにとって一番の課題やろうと思う。今まさに、それについて学ぼうとしとるわけやさかいな。
これについては、この本の中で様々な事例を挙げて説明しているので大いに役立つと思う。
以上やが、これらから客観的に見て、ハカセのインターネット・ビジネスへの適性はある方やと言える。
何より、ハカセがその気になっているというのが大きい。
ハカセは、サイトを立ち上げるとき、その準備期間として半年ほどを費やしとるので、今回もそれなりに慎重にするものと思う。
走り出したら止まらんが、それまでは結構慎重な男やしな。
その際の教本として『インターネットに就職しよう!』が頼りになるのは間違いないと思う。
今まで話してきたこと以外にも、数多くのインターネット・ビジネスについての考え方や具体的な方法が、それに示されとるさかいな。
ここまでの話を聞いて、その気になったという人がおられるかも知れんが、どうされるかは、それぞれが自己責任の上でやって頂きたいと思う。
ただ、そのために、巷に氾濫している数万円単位の高額なインターネット・ビジネス情報とやらを買うのなら、定価1,500円なりの『インターネットに就職しよう!』をお勧めする。
安い上に、それらの巷に氾濫している高額なものより、はるかに情報量も多く値打ちがあると思うさかいな。
但し、何度も言うが自己責任でお願いする。間違っても、その本の苦情をワシらには持ち込まんように。
電子書籍化と併せて、今後どうなるか分からんが、何か進展があれば、その都度、このメルマガで知らせるつもりや。
参考ページ
注1.第153回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■ゲンさんの決断 前編
注2.第126回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■電子書籍化時代の本格的な到来について
注3.書籍「インターネットに就職しよう!」
著・守屋 信一郎 発行:青月社
注4.知りたい事は本に聞け!
注5.メールマガジン・新聞拡張員ゲンさんの裏話・バックナンバー
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