メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー

第135回 ゲンさんの新聞業界裏話

発行日  2011.1. 7


■伊勢神宮初詣に見られるパワースポットの影響とは


1月2日。

久しぶりにハカセとその家族とで初詣に行った。

目的地は、三重県の伊勢神宮。

この伊勢神宮というのは通称で正式名称は「神宮」となっている。

別宮、摂社、末社、所管社といった俗に「神宮125社」と呼ばれている、すべての社宮の総称とされている。

古くから「お伊勢さん」とも呼ばれ一般からも広く親しまれている神社でもある。

「神宮125社」は正確には、伊勢市だけでなく、度会郡大紀町、玉城町、度会町、志摩市磯部町、松阪市、鳥羽市、多気郡多気町の4市2郡にもおよぶ広大な範囲に点在する。

そのうち、太陽を神格化した天照大御神を祀(まつ)る皇大神宮(内宮)と、衣食住の守り神である豊受大御神を祀る豊受大神宮(外宮)の二つの正宮が伊勢市にあるところから、「伊勢神宮」と俗称されとるわけや。

日本最大で最も由緒ある神社とされとるが、その創始については謎も多い。

「日本書紀」では、当初、天照大御神は大和朝廷の宮中に祀られていたが、垂仁天皇の時代、それに相応しい地を探すためという名目で滋賀、三重北部、東海の各地を巡り、最後に伊勢に辿り着いて、そこに祀られたとされている。

その当時、その伊勢は交通の要所でもなく、力のある豪族が近くにいたわけでもない。

住んでいる者も少ない、何もないさびれた辺鄙(へんぴ)な土地やった。

何のためにそんな場所に神宮を設置したのかについては、いろいろな説があるが、これといった決定的なものはない。

その中にあって、現在では「方位説」というのが最も有力と言われている。

それは伊勢が大和朝廷から見て、太陽が昇る東に位置していて、天照大御神という太陽神を祀るのに相応しかったという理由からやと。

ただ、「日本書紀」の記述、記録自体に疑わしいものが多いということで、どこまで、それが正しいのかという問題はあるがな。

しかし、その経緯はどうあれ結果的に伊勢が日本神道の聖地になったのだけは確かやと言える。

そして、不便で辺鄙(へんぴ)な地域にあるが故に、そこへの道程(みちのり)が困難であればあるほど、辿り着いたときの聖地としての「ありがたみ」が増すのやという。

もっとも、最初からそれを狙ってそうしたとは、とても考えられんがな。

単に方位という以外にも実際的な理由が、その当時として何かあったと考えた方が自然やと思う。

滋賀、三重北部、東海の各地にまで足を伸ばし、最後に辿り着いた場所が、たまたま大和朝廷から見て東に位置していたというのでは説得力にも乏しいしな。

それなら、最初から大和朝廷の近場にある「東」を探しておけば良かったわけや。

いずれにしても現代人の常識、思考では、その理由を推し量ることができんさかい、謎になっとるのやろうがな。

「今年の伊勢神宮はいつもの年より、参拝客が多いらしいですよ」と、ハカセ。

それと言うのも、ここ1、2年のパワースポット・ブームというのが大きく影響しとるのやという。

パワースポットとは、霊魂や神などの超自然的存在との見えないつながりを信じる、または感じるスピリチュアリティ(霊性)なものと、風水や気功などにより、人を元気、健康にする力があると信じられている場所のことを指す。

その案内本が幾種類も発刊され、それらが売れに売れ、日本全国の神社仏閣を訪れる人が近年急激に増えているらしい。

特に伊勢神宮がその代表格とされていて、2、3年前までは年間参拝者数が500〜600万人程度やったのが、ブームの影響で2009年には約800万人にまで達したという。

それは、これからもさらに増える傾向にあると。

当然のように、今年の初詣の参拝客もその影響で多いと予想される。

ちなみに後で分かったことやが、今年、正月三が日の伊勢神宮へ参拝客は50万人を超え、やはり近年では多い方ということやった。

伊勢神宮は、最初に外宮(下宮)の豊受大神宮に参拝してから、内宮の天照大御神を祀(まつ)る皇大神宮に行くのがセオリーとされている。

しかし、ワシらはそれほど神仏を尊ぶということもないから、いつも伊勢神宮に初詣に行くときは内宮だけにしとるがな。

ワシらに限らず、そういう人も多いと思う。

ワシは大阪方面の名阪国道から伊勢自動車道に乗って津インターで降り、津市でハカセと合流した。

津市から国道23号線で南西に向かう。その終点が伊勢神宮の内宮前になっているさかい、道は比較的分かりやすい。

今は日本書紀の昔と違い、交通の便もええ。

その分、苦労して辿り着いたときの聖地としての「ありがたみ」はあまり感じることはないかも知れんがな。

普通なら高速道路に乗った方が早いのやが、昨年からその高速道路、伊勢自動車道が試験的に無料化になっているため、却って混んでいると判断して一般道の国道23号線で向かうことにしたわけや。

正月ということもあり、市内を走る車は極端に少なく津市から伊勢市までは40分ほどで到着した。通常やと小1時間はかかる。

問題は、ここからや。

予想どおり内宮手前約300メートルから駐車場待ちで列ぶことになった。

ここからやと1時間ほどかかるものと覚悟していたが、意外にも40分ほどで駐車場に停めることができた。

まあ、毎年ということもあるのやろうが、地元警察による交通整理の手際良さのおかげやと思う。

五十鈴川の護岸に設けられた臨時の駐車スペースに1000円を支払って停める。

正月以外は無料やが、それを言うても仕方ない。

まあ、その代わり、初詣記念としての洒落た駐車シールが貰えるので、それで良しとする。

そこから内宮入り口まで800メートルほど参道を歩く。

参道には石畳が続き、その道中には屋台はもちろん、土産物店や飲食店、商家などが数多くの古い家々が軒を連ねている。

江戸時代の門前町を彷彿させる木造建築物ばかりで、ビルなどはまったくない。

ここでは銀行や郵便局ですら、歴史を感じさせる木造家屋になっている。

この参道に沿った両側を、おはらい町という。

その先を少し進むと、おかげ横丁というのがある。

江戸時代に庶民の間で流行した「ええじゃないか、ええじゃないか」と囃(はやし)し立て踊りながら、日本全国から「お伊勢参り」したという「おかげ参り」の名残りで、そう名付けられたという。

2700坪の広さに所狭しと無数の食べ物屋や土産物屋が建ち並ぶ。

また、神恩太鼓の演奏などもあり、正月に限らず毎日がお祭りのように賑わっている。

そこからすぐに内宮の入り口に着く。

内宮の入り口には、高さ7.44メートルの大鳥居が立っている。これを「一の鳥居」という。

その「一の鳥居」をくぐり、橋脚の部分は欅(けやき)で、他は檜(ひのき)で作られているという全長101.8メートル、幅8.42メートルの純日本風反り橋の「宇治橋」を渡る。

この五十鈴川に架けられている宇治橋は、日常から脱して神聖な世界へ入るための「かけ橋」やという。

宇治橋を渡り、境内を進むと右手に「御手洗場(みたらし)」としての「手水舎」というのがあり、ここで手を洗い、口をすすぐことが参拝のための禊(みそぎ)、作法やとされている。

一般の神社にある「御手洗場(みたらし)」よりかは、はるかに大きな建物になっとるが、いかんせん正月ということで恐ろしく混んでいて、鈴なりに人が群がっとるさかい、順番待ちする気にはとてもなれんかった。

その少し先に、五十鈴川の河原があり、そこに行って手だけを申し訳ない程度に、さっと洗う。

そこにも人は多いが、河原で横に拡がっとるから、その場所に困るというほどでもなかった。

そこからしばらく歩くと、「一の鳥居」と同じ高さの大鳥居、「二の鳥居」が立っているので、それをくぐる。

その先は樹齢数百年と言われる古木の森が続き、滅多に感じることのない雄壮で幻想的な雰囲気に包まれる。

ここが、話題のパワースポットの一つということやが、ワシらは鈍いのか、それ以上のものは特に感じることはなかった。

もっとも、人が少なければ、もっと違った感慨、感動でそれと感じられたのかも知れんがな。

しかし、これだけ人の流れが多いと、後ろから「天突き」で押された心太(ところてん)のように先へ先へと押し流されてしまい、立ち止まってその情緒をゆっくり味合う余裕などなかった。

神楽殿の前を通ると御礼御守りの授与所(売り場)が見えた。ここにも、大勢の人が群がっている。

「子供たちに頼まれているので、後で御守りを買って帰りますから」と、ハカセ。

ワシもハカセも列んで何か買うというのが好きやないから、いつもはこの状況を見たらあきらめる。

いくら由緒ある神社の御守りやと言うても、ぼったくりとまでは言わんが所詮は利益を得るための商品にすぎんから、そんなものに特別な御利益があるとはとても思えんしな。

ご利益があるのは神社の方だけやと。

いつもは、そんなバチ当たりなことを考えて通りすぎる。

しかし、去年から車を乗り始めた長男のシン君は、「せっかく伊勢神宮に来たんやから、交通安全の御守りがほしい」と言い、次男のコウ君は今年高校受験ということで、「学業成就の御守りを買ってやりたいので」とハカセが言うさかい仕方がない。

その御利益のあるなしについての議論はおいといて、それを持つことで精神的な安心感を得られるのなら、それはそれで効果があると言える。

その混雑の中、それを買い求めたとなれば、その苦労に比するご利益が得られる可能性もあると。

何でもモノは考えようや。

突然、心太(ところてん)の行列が止まった。

初詣の終点でもある、内宮の正宮、皇大神宮の手前、約100メートルほどの地点やった。

この先を左に曲がると、石段があり、それを昇り切ったところに賽銭投げ入れ場所でもある正殿玄関がある。

それから4重の御垣に囲まれた一番奥の正殿に、天照大御神が鎮座しとるという。

普通は、それに向かって遅いながらもぞろぞろと進むのやが、今日はなぜか微動だにしない。

ピタリと止まったままや。

「それだけ参拝客が多いのやろうな」と、半ばあきらめていたが、よく見ると右端の3列分くらいの間隔だけは遅々とではあるが、人の流れがある。

ワシらは、その流れに乗ることにした。

正殿に向かう石段に辿り着いても、それは同じやった。相変わらず中央付近の人の流れは止まったままや。

ワシも過去、何度も伊勢神宮に初詣に来たことがあるが、こういうのはあまり経験がない。

単に人が多いにしても、これだけ動きがないというのは異様な感じすらする。

「そうか! 理由が分かりましたよ」と、ハカセ。

内宮のパワースポットで一番強力な場所は、この正殿前から石段にかけての一帯やと、その手の案内本に書かれているという。

そこに長時間いればいるほど、そのパワーを浴び健康になれるのやと。

しかも、ここは日本全国でもトップクラスのパワースポット地点やと紹介されている。

ここにいる多くの人は、それを真に受けているのやと。あるいは、それと知らず、その塊の一団に呑み込まれているのやと。

まあ、それを信じてそうするのは別に構わんが、先を急ぎたい人にとっては迷惑な話でもある。

ハカセがそう声に出して説明しながら、右端の石段を登り始めると、中央付近にいた人たち数人が移動を始め、ワシらの後ろに並び変え出した。

「それにしても……」

ここの石段は奥行き60センチほどもあり比較的広いからまだええが、これが普通の石段の場合、間違って誰かが、つまづいたり倒れたりしたら大惨事になるのやないかという気がする。

その危険と隣合わせになることで健康を得られるとは、とても思えんのやけどな。

もっとも、そのパワースポットの案内本の著者たちも、これほどの状況を予想してたわけでも、立ち止まってそうしろと書いとるわけでもないから、その最悪の事態になっても責任を問われるいわれはないやろうがな。

正殿に賽銭を投げ入れ適当な願い事をしての帰路、荒祭宮(あらまつりのみや)の前を通ると、そこにも大勢の人たちが群がっているのが見えた。

ちなみに、ここも案内本で紹介されているパワースポットの要所の一つやった。

そういう目で見ると、あちこちの古木や社殿の周りに不自然なくらい人が集まっているのに気づく。

すべてが、そうやないにしても、今更ながらにブームの生み出す力というのは凄いものやなと感心する。

その後、御守りを求めて並び、おかげ横丁で伊勢うどんを食い、おはらい町で土産物を買って、ワシらの初詣の全行程が終わった。

所要時間、2時間余り。

ワシは、毎日、最低でもこの程度の距離と時間は歩いとるから、さほど疲れることはないが、ハカセは完全に音を上げとった。

帰りの車中で、「今年は?」と、ワシ。

まだ、肝心の「今年の抱負」を聞いてなかったさかい、そう水を向けたわけや。

「去年のメルマガでも言いましたけど、電子書籍化に向けた取り組みをすることが当面の目標ですね」と、ハカセ。

それについては、『第126回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■電子書籍化時代の本格的な到来について』(注1.巻末参考ページ)で詳しく話した。

要するに、電子書籍やとそれほど金をかけずに出版できそうやさかい、それにチャレンジしようということや。

「ただ、それには電子書籍の媒体をどこにするか、ネット販売の仕組みをどうするかということを、もう少し研究する必要がありそうですけどね」

「そうか」

「ゲンさんは?」

「ワシは、ハカセさえ良ければ、その電子書籍とやらで営業の集大成のような本を出して貰いたいと考えとるのやけどな」

サイトやメルマガには、相当量の営業に関しての記述が多いが、一つにまとまったものは少ない。

敢えて言えば、サイトの『ゲンさんの勧誘・拡張営業講座』(注2.巻末参考ページ)が、それになるが、それにしても初心者用のもので、すべての人の役に立って参考になるとまでは言い切れんさかいな。

できれば、携帯とかそれに近い媒体から、営業中に迷うようなことがあるときなどに、いつでも手軽にその部分を取り出すことができて参考になるようなものにしたいと思うとる。

「それはいいですね。是非、それをやりましょう」と、ハカセ。

そんなわけで、今年はいつもの年よりかは忙しくなるような予感がする。

もっとも、ワシもハカセもあまり焦って、それをするつもりはないがな。

急(せ)いては事をし損じる。

焦るとロクな事はないさかいな。

もっとも、若者と違い歳を食うた者に残された時間は少ないから、そうのんびりと構えるわけにもいかんがな。

それでは、今年も精一杯頑張っていきたいので、今後ともこのメルマガを暖かく見守って頂きたいと思う。



参考ページ

注1.第126回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■電子書籍化時代の本格的な到来について

注2.ゲンさんの勧誘・拡張営業講座


書籍販売コーナー 『新聞拡張員ゲンさんの新聞勧誘問題なんでも選集』好評販売


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