メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー

第138回 ゲンさんの新聞業界裏話


発行日 2011.1.28


■秘密保全法制を進める民主党政府……共謀罪、国家機密法の悪夢再び


政権交代をしてから1年半になる。

与党慣れしていないとか、前自民党政権の尻ぬぐいのためだとかという言い訳をする時期はすぎたと思う。

脱官僚を掲げた民主党に期待していたが、結果は、逆にその官僚に上手く操られているという印象でしかない。

1月14日に管内閣の改造人事が発表され、一部から「財務省内閣」と揶揄されとると聞くが、言い得て妙やと思う。

本腰を入れてやってるのは脱官僚を脱小沢にすり代えたくらいな事やが、そんなもの洒落にもならんで、ホンマ。

政府が身内の権力争い、内紛に奔走するようになったら終いや。

過去の歴史にもあるとおり、そんな政権は悉(ことごと)く滅んでいる。

何でその愚に気づかんのかというのが不思議でならん。

他にも「マニフェスト詐欺内閣」だとか「第2自民党内閣」などと酷評されとるが、政権交代時、民主党に期待した国民の多くが裏切られたという気持ちになっているのは、ほぼ間違いないものと思う。

まあ、理想と現実が乖離するというのは、まま起きることやから、それらについてはある程度は仕方ないと理解を示せても、どうにも看過できんニュースが1月24日に飛び込んできた。

驚くと同時に、「何ちゅうこっちゃ!!」という憤りと深い失望を覚えた。

政権交代は一体何やったのか。

これやったら、以前の自民党政権下と何ら変わりがないやないかと。いや、考えようによれば、もっと酷いと言えるかも知れんと。

そう嘆きたくもなる。

その記事や。


講演会で自衛隊員監視、防衛相直轄部隊が「不当調査」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110124-00000502-san-pol より引用


 北沢俊美防衛相直轄の防諜部隊「自衛隊情報保全隊」が、陸上自衛隊OBの佐藤正久自民党参院議員や田母神俊雄元航空幕僚長の講演に潜入し、現職自衛官の参加状況を監視していることが23日、分かった。

 複数の防衛省・自衛隊幹部が明らかにした。本来任務とは乖離(かいり)した不当調査の疑いがあり、憲法で保障された思想・信条の自由を侵害する監視活動との指摘も出ている。

 自民党は24日召集の通常国会で、自衛隊行事での民間人による政権批判を封じる昨年11月の「事務次官通達」問題と合わせ、保全隊の監視活動についても政府を追及する方針。

 保全隊は佐藤、田母神両氏の講演のほか、田母神氏が会長を務める保守系民間団体「頑張れ日本! 全国行動委員会」の集会にも隊員を派遣。

 また、陸上自衛隊唯一の特殊部隊「特殊作戦群」の初代群長を務めた陸自OBの会合なども監視対象にしている。

 監視目的は現職自衛官の参加の有無を確認し、参加している場合は氏名も特定する。佐藤、田母神両氏の発言内容もチェックし、報告書の形でまとめ、提出させている。

 陸自朝霞駐屯地(東京都など)に本部を置く東部情報保全隊の隊員が投入されるケースが多いとされる。保全隊は陸海空3自衛隊の統合部隊で、監視実態が発覚しないよう、空自隊員の参加が想定される田母神氏の講演には隊員同士の面識がない陸自の保全隊員を派遣することもあるという。

 保全隊は外国情報機関によるスパイ活動などから自衛隊の保有情報を防護するのが主任務。自民党政権時代には「日本赤軍」や「オウム真理教」のほか、「暴力革命の方針」(警察庁公表文書)を掲げた共産党が自衛隊を侵食するのを防ぐため、それらの監視活動も行っていた。ただ、保守系の議員や自衛隊OBを監視対象にしたことはない。

 防衛相経験者の石破茂自民党政調会長は「保全隊は自衛隊の安全を守る組織で在任中は恣意(しい)的に運用しないよう徹底させていた。何を目的にした監視活動か追及する」と話している。

 監視対象とされていた佐藤氏は「自衛隊への破壊活動とそれを目的とした浸透活動をはかる団体の情報収集は必要だが、対象を際限なく拡大するのは問題だ。自衛隊員は国家に忠誠を尽くすことは求められるが、政党や政治家の私兵ではない」と指摘している。

 自衛隊情報保全隊。平成21年8月、陸海空3自衛隊の情報保全隊を統合し、大臣直轄部隊として新編。

 ネット上での情報流出やイージス艦情報漏洩事件を受け、機密保全強化と自衛隊へのスパイ活動に関する情報収集の効率化のための措置。

 実動部隊は中央情報保全隊と北部、東北、東部、中部、西部の地域ごとの保全隊で構成する。駐屯地や基地ごとに派遣隊も置き、隊員は約1千人。


というものや。

1月26日にも『【自由が危ない!!】防衛省、部外行事に介入 谷垣氏に遅刻要請』(注1.巻末参考ページ参照)というその続編ともいうべき報道があった。

これは一言で言えば、昨年の通達を根拠として、防衛省が部外行事の内容にも介入していることが具体的に明らかになったというものや。

これらのニュースは、どう贔屓目(ひいきめ)に見ても政府批判をしていることへの監視を目的として命令したとしか考えられん。

民主主義国家においては、時の政府が、意見、考え方の違う人たちから批判されるのは仕方のないことやと思う。

どんなことにでも賛否両論は必ずある。

政治というものは、すべての人に都合良く行うことなどできんし、100%の支持を得るというのも不可能やさかいな。

いろいろな意見、考えがあって当たり前や。

政府はそれを真摯に受け止めなあかん。

それをせず、国家権力を使って監視させ、その言論を封じ込めようとするのは、一体どういうことやねんと思う。

それは独裁国家のすることで、民主主義国家のすることやないで。

国家公務員である自衛隊員について、度を超した行為、言動というのがあれば、その事を慎むようにと諭すのなら、まだ分かる。

しかし、元自衛隊の関係者というだけで、すでに民間人になった人の言動を国家がその権力、組織を使って監視するというのは民主主義そのものを否定する行為やと言われても仕方のないことやと思う。

憲法で保障された思想、信条および言論の自由を大きく脅かす行為やと。

しかも、「保全隊は外国情報機関によるスパイ活動などから自衛隊の保有情報を防護するのが主任務」ということからすると、その任務とは大きく逸脱しとるというのは明らかや。

その理由が、単に民主党政権を批判しとるだけというのなら、尚更や。

「自衛隊員は国家に忠誠を尽くすことは求められるが、政党や政治家の私兵ではない」と、監視対象とされていた佐藤氏が言われるのは、もっともなことで、そのとおりやと思う。

何度も言うが、それは独裁国家のすることで、民主主義国家のすることやない。

それを、民主党内閣の防衛大臣がやった。

もちろん、それは防衛相の独断ではなく、現内閣の方針に従ってしたことなのには間違いないと思う。

この記事の中にある『昨年11月の「事務次官通達」問題』というのは、2010年の11月10日に、「隊員の政治的中立性の確保について」と題する防衛省事務次官名による通達のことや。

これが額面どおり「政治的中立性の確保」にあるのならええが、実情はかなり違う。

そもそも、この通達が出されることになったきっかけは、その年の11月3日、埼玉県狭山市にある航空自衛隊入間基地で開かれた航空祭にあったという。

自衛隊の後援民間団体「航友会」の会長が、招待客約3千人を前に尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件での政府の対応を挙げ、「民主党政権は早くつぶれてほしい。皆さんも心の中でそう思っているのではないでしょうか」と批判したことからやと。

これを伝え聞いた北沢俊美防衛相が激怒し、事務次官通達を指示したという。

これは、以前野党だった頃の民主党員なら誰もが同じようなことを言い、同じように願ったはずや。

単に立場が変わっただけのことにしかすぎんのに、それを言われて怒る必要がどこにあるというのか。

その自衛隊の後援民間団体「航友会」の会長という人は昔からの自民党支持者やさかいな。

野党支持者が与党内閣を批判するのは、民主主義国家では、むしろ自然な事と言える。

それからすれば、何も問題にされ、監視対象にされるような発言やないと思う。

ここは言論の自由が保障された日本やねんからな。

今回のことは、それを理解しようとせず国家の組織を使って監視させたということや。

そうさせたものは、権力を握った者の奢りでしかないと思う。

奢る者は久しからず。古来から言い古された言葉や。

それだけなら、まだアホやなと言うくらいで終わるが、その後がどうにも頂けん。

今年の1月5日。

首相官邸において、当時の仙谷由人官房長官の指導のもと「秘密保全法制の在り方有識者会議」というのが開かれた。

同会議では、尖閣諸島沖の中国漁船衝突に関する映像流出事件などを例に挙げ、対象となる「秘密」の範囲や、漏えいに対する罰則強化などを検討するとしている。

昨年の11月8日の衆院予算委員会で、当時の仙谷由人官房長官は映像流出問題について「国家公務員法の守秘義務違反の罰則は軽く、抑止力が十分ではない。秘密保全に関する法制の在り方について早急に検討したい」と述べ、検討委員会を早急に立ち上げる考えを示していた。

それを本気で実行に移した。

政府は、尖閣諸島沖での海上保安庁の巡視船と中国漁船の接触事故問題の根本的な是非に言及することなく、衝突事件のビデオ映像が、インターネットの動画サイト「ユーチューブ」に投稿されたことで、その犯人捜しのみに終始した観がある。

つまり、実際に事を起こした側を責めるのではなく、その事実の証拠を公開した人間を処罰しようと躍起になっとるわけや。

結局、それをした海上保安官が自首したことで、検察当局と警視庁が捜査した結果、国家公務員法(守秘義務)違反容疑での逮捕、起訴はしない方針を決めた。

つまり、法律的には無罪放免となったわけや。海上保安庁でも停職処分が下され、一往の決着を見た。

本人も、その責任を取り自ら退職もしとる。

本来なら、これ以上、何も言うことはないはずや。

それにも関わらず、当時の仙谷由人官房長官は守秘義務違反に当たると、その後も強調し続けて譲らんかったという。

法律の素人なら、まだそういった駄々を捏(こ)ねるというのも分からんではないが、氏は弁護士資格を有しているその道のプロや。

それでありながら、無罪放免になった者を責め続けるというのは理解に苦しむ。

もっとも、それには、本来、情報開示しておくべきやった衝突事件のビデオ映像を頑なに隠蔽し続けた事で国民の多くから批判されている対応の矛先を躱(かわ)す、あるいは正当化するためのポーズということがあるのかも知れんがな。

映像内容は周知の事実となり、すでに秘匿性すらなくなった今も頑なにその公開を拒み続けとる理由も、そうやと。

しかし、それがために「秘密保全法」を制定する必要があるという論理は到底納得できるもんやない。

いかなる理由があろうと、政府を批判しているという理由だけで監視したり、その行動を制限したりするようなことは民主主義の世の中では絶対に許されんことや。

また、国民もそんな法律が制定されるのを許したらあかん。

ワシは、この「秘密保全法」と聞くだけで、かつて自民党政権下で幾度となく提出されては廃案になった、「国家機密法」や「共謀罪」のことが思い起こされて仕方がない。

「国家機密法」とは、「国家秘密に係るスパイ行為等の防止に関する法律案」のことで、1985年の第102通常国会で自民党所属議員により衆議院に議員立法として提出されたものや。

その趣旨として、


外交や防衛上の国家機密事項に対する公務員の守秘義務を定め、これを第三者に漏洩する行為の防止を目的とする。

また、禁止ないし罰則の対象とされる行為は既遂行為だけでなく未遂行為や機密事項の探知・収集と言った予備行為、過失(機密事項に関する書類等の紛失など)も含まれる。最高刑は死刑または無期懲役(第4条)。

憲法が保障する言論の自由、報道の自由に対する配慮から、第14条において「この法律の適用に当たっては、これを拡張して解釈して、国民の基本的人権を不当に侵害するようなことがあってはならない」と定められている。


と謳われていた。

この法律の問題点は多い。

「禁止ないし罰則の対象とされる行為は既遂行為だけでなく未遂行為や機密事項の探知・収集と言った予備行為、過失(機密事項に関する書類等の紛失など)も含まれる」ということやが、これやと何でもアリ、どんなことでもすべてを罪に問える可能性があるということになる。

「未遂行為や機密事項の探知・収集と言った予備行為」の認定を誰がどのようにするのかという問題がある。

おそらくは、警察とか公安委員会あたりが、それと認定するのやと思う。あるいは別の政府機関が、そう認定することも考えられる。

いずれにせよ捜査機関が、それと認めると、国家権力に逆らう組織、人間はすべてその罪で罰せられることになるということや。

しかも、その刑罰が「最高刑は死刑または無期懲役」というのでは、恐怖政治そのものと言うしかない。

また、「この法律の適用に当たっては、これを拡張して解釈して、国民の基本的人権を不当に侵害するようなことがあってはならない」と定められているというが、法案では、あくまでも政府の努力義務とされているにすぎんことやった。

この一文があったことで、法律の適用により一般国民の人権が侵害された際の救済措置が担保されていないという点が批判の的になったわけや。

また、報道の自由が束縛、侵害されることに対する懸念から、大多数のマスメディアが反対に回り、連日に渡りその報道がされた。

多くの識者と呼ばれる人たちもそれを支持した。

それに加え、当時の野党(日本社会党・公明党・民社党・日本共産党・社会民主連合他)が断固反対を主張して徹底抗戦したことにより、結局、法案は廃案となった。

それから約20年後の2005年、今度は「共謀罪」というのが、当時の与党、自民党から国会に法案として提出された。

これに関しては、旧メルマガ『第48回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■共謀罪について』、『第49回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■共謀罪についてPart2
』、『第55回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■共謀罪について Part3』(注2.巻末参考ページ参照)でシリーズ化して取り上げたことがある。

共謀罪の趣旨は、


日本の刑法では、未遂罪は「犯罪の実行に着手」することを構成要件としており(同法43条本文)、共同正犯(共謀共同正犯)も「犯罪を実行」することを構成要件としている。

そのため組織的かつ重大な犯罪が計画段階で発覚しても、内乱陰謀(同法78条)などの個別の構成要件に該当しない限り処罰することができず、したがって強制捜査をすることもできない。


ということで、それでは未然に犯罪を防ぐことができんから必要やというものや。

組織犯罪対策のために設けられるべきものやと。犯罪行為を未然に防ぐという目的があると。

それだけなら問題はない。危険な犯罪を未然に防ぐというのは悪いことやないさかいな。

例えば、それがテロ行為などの限定された犯罪だけに適用されると言うのならな。

しかし、法律の常として、一度、それが制定されると必ずその解釈が拡大されていくということになる。

共謀罪は、その名の通り、ある犯罪を計画、話し合ったというだけで処罰される法律や。その犯罪の実行の有無は関係ない。

ワシは、その危険について当時、


現行の刑法では、実行行為がないと処罰されん。未遂にしても、共同正犯にしても、犯罪の実行に着手するという要件が必要や。

例えば、誰かに暴力を加えたとする。

これは、暴行罪やし、場合によれば殺人未遂に問われることもある。仲間がおれば、共同正犯ということになる。

これが、飲み屋なんかで、気に入らん上司なんかの話で盛り上がり「あの課長、いっぺん、どついたろと思うてんねん」と酒の勢いに任せて誰かが言うたとする。

それに相づちを打って「そのとおりや。やったれ」と言うのは、それほど、珍しくもない光景や。

もちろん、言うてる方も大半が冗談やし、相づちを打つ者も、そんなことは本気にはしとらん。

しかし、それを聞いてる誰かが警察に言えば、暴力行為の「共謀罪」ということで言うた人間も相づちを打った者も、逮捕されることがあり得るということになる。

うかつに冗談の一つも言えんと言うのは、ワシらは困る。営業では、ほぼ毎日のように冗談を言うてるからな。

「新聞屋さん、申し訳ないね。うちは金がないんや。そのうち、銀行強盗でもして金が手に入ったら新聞を取るから」

という冗談を客が言うたとする。

「そうですか。その時は、教えて下さい。お手伝いしますよ」

と、冗談で答えたら、強盗の共謀罪が成立する。

「ゲンさん。お宅、元建築屋さんやったんやろ。この近所の人間、そこのマンション建設で皆、困ってるんやけど、何か、反対運動のええ方法ないかな」

これは、実際に良うある話や。

ワシは、そのマンション建設にも従事してたことがあるから、その内情には詳しい。業者の嫌がる反対運動はナンボでも知っとる。

ここで、その詳しいことは言えんけど、業者にダメージの与える手段をその客に教えたら『組織的威力業務妨害』の共謀罪が適用される可能性があるということや。

おそらく、世の中の実力行使を伴う反対運動のほとんどが、この法律に触れるものと思われる。

この法律で影響を受ける者は国民すべてやと言うてもええ。

それは、このインターネットの世界でも例外やない。掲示板なんかへの書き込みなんかがその対象になる。

「あのA団の○○という新聞拡張員は世の中のクズである。クズは殺してもかまわない」

「そうだ、そうだ。賛成、殺せ」

こういう類似の掲示板への書き込みは結構多い。

今までは、こういう書き込みは規制できんかったが、共謀罪が成立すると、これは殺人の「共謀罪」ということになって、重罪となる。

もちろん、これを書き込んどる人間も本気というのやなく、勢いや冗談半分やと思う。

しかし、これは証拠が残るから、言い逃れができんということになる。

当然やけど、これは、あらゆる方面へ拡大解釈される。警察にとっては有り難い法律やということになる。

特に、ネット上の発言に制約ができるというのは大きい。

今でも、殺人予告などをしとる者は逮捕されとるが、それは、よほどの危険性を孕(はら)んでいる場合に限られる。

しかし、この法律のもとやと、例え、それが冗談でも法律違反に問える。

つまり、警察の判断で、いつでもこの法律を持ち出して逮捕することが可能になるということや。

これで、警察権力、国家権力が大きくならん方がおかしい。警察国家の誕生ということになる。

さらに、この法案の怖いのは「実行の着手前に警察に届け出た場合は、刑を減免する」という一文が入っとるというところや。

理由は「犯罪を未然に防止するため」ということらしい。

しかし、これは、でっち上げに悪用されるケースが大やとこの法律を危惧しとる人たちは口を揃えて言うとる。

密告者に罪がなくなるということはスパイの暗躍につながると。

権力者側の組織、機関が、摘発しようとする市民団体の中にスパイを送り込み、犯罪に触れる事を焚きつけさせ、その相談の様子を録音して、内部通告者のように警察に届け出ることもあり得る話やと言う。

これが、どれだけ怖いことか。

共謀罪が成立した社会は、他人が信用できん人間不信の陰湿な相互監視社会、警察国家、密告社会になる可能性がある。

分かりやすく言えば、日本人の嫌うとる、北の国と同じような社会になるかも知れんということや。


と訴えた。

ワシらが最初にこの事実を取り上げた頃は、それほどマスコミなどでは深刻に捉えられておらず、報道もあまりされてなかったが、その後、数多くの識者や市民団体の方々が反対の狼煙を上げたことで、徐々に社会問題化していった。

ワシは、この法案を潰すには当時の自民党政府を打倒するしかないと考えていたが、第162通常国会が「解散」ということになり、審議中やった共謀罪法案は、審議未了のため事実上の廃案となった。

しかし、その当時は、それですべてが終ったわけやないとは考えたがな。

自民党政権が続けば、選挙後の国会でこの共謀罪、もしくは類似した名称の法案が再び出されるのは、ほぼ間違いないと。

それを阻止するには政権交代しかないと。

ワシらはメルマガ誌上においての公平という見地から言及を避けたが、その当時、その廃案に積極的やった民主党を密かに支持していたわけや。

2009年の総選挙でも、その延長線上で民主党を支持して票も入れた。

それやのに、今回、以前の自民党と同じように国家権力の増大を目的とする「秘密保全法」なるものを、その民主党が持ち出してきた。

ワシが、冒頭で「これでは、前自民党政権と大差ないやないか」と嘆いた意味が分かって頂けるものと思う。

「国家機密法」にしろ、「共謀罪」にしろ、表向きは国民のためにという大義名分を自民党は掲げていた。

また、今回のように、先走った愚行もしてなかった。

ところが、民主党の「秘密保全法」には、それがない。

その概要や。


秘密保全法制の意義について
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/jouhouhozen/housei_kaigi/dai1/siryou4.pdf#search=' より引用


外国情報機関等の情報収集活動により、情報が漏えいし、又はそのおそれが生じた事案が従来から発生。

加えて、IT技術やネットワーク社会の進展に伴い、政府の保有する情報がネットワーク上に流出し、極めて短期間に世界規模で広がる事案が発生。

秘密保全に関する我が国の現行法令は、秘密の漏えいを防止するための管理に関する規定が十分整備されていないほか、国家公務員法等の守秘義務規定に係る罰則の懲役刑が1年以下とされており、その抑止力が十分でないなどの問題。

秘密保全法制の意義

秘密保全法制の検討の方向性としては、秘匿の必要性が高い秘密の範囲を特定し、その漏えいを防止するための厳格な管理のルールを定め、漏えい行為に対する抑止力が十分な罰則を設けることなどが考えられる。

この秘密保全法制の実現により目指すものとして、以下のようなものが挙げられる。

我が国の国益を保護し、国及び国民の安全を確保するため、秘匿の必要性が高い秘密について、外国情報機関等の情報収集活動による漏えいやネットワーク上への流出を防止すること。

我が国の秘密保全に対する外国の信頼を高め、外国からの円滑な情報提供を促進すること。

秘密保全に関する行政機関相互の信頼を高め、政府部内における情報の共有を促進すること。


これは、ほぼ「国家機密法」のコピー、焼き増しみたいなものになっている。

当然、同じような問題がある。

例えば、「秘匿の必要性が高い秘密」については、誰がそう認定するのかという同じような問題が起きるということや。

時の政府や権力者が「秘匿の必要性が高い秘密」と認定すれば、どんなことでもそう解釈できてしまう。

しかも、これは冒頭の報道にもあるとおり、政府に批判的な人間、不利な情報を流した人間を抑圧するためのもので、国民のためという視点が何もない。

ワシが、「これやったら、以前の自民党政権と何ら変わりがないやないかと。いや、考えようによれば、もっと酷いと言えるかも知れん」と言う所以や。

それにしても権力を手にすると、あれだけ類似の法案に反対しとったのが、ここまで変わってしまうものかと思う。

一つだけ言わせて貰えば、民主党が、もしそんな法律を成立させたら、それはすぐ我が身に降りかかってくる可能性が高いということや。

どういうことかというと、このままでいけば民主党の人気が回復することなど、まず考えられん。

前回の政権交代が起きた衆議院選挙の時でさえ、民主党の人気が高まった故にそうなったというより、国民が自民党政権に嫌気が差した結果なわけや。

このままやと、同じことが次の衆議院選挙でも必ず起きる。

民主党が政権の座から転げ落ちるのは、ほぼ間違いない。

そうなったら、政権を取った側は、その法律で民主党を圧迫することになる。

つまり、敵を狙って撃った弾が自分に跳ね返ってくるということや。

正に、自分で自分の首を絞める結果になるだけやと。

その愚に気がつけば、こんな法律など作れるわけがないんやが、誰もそのことを教える人間がおらんのやろうかと不思議に思う。

今後どうなるか、今の時点では、まだ何とも言えん部分もあるが、政府が本気で「秘密保全法」とやらを成立させるというのなら、過去の「共謀罪」同様、シリーズ化して、このメルマガ誌上でその阻止を訴えていくつもりや。

悪法を潰すのは、それが成立する前に国民の機運を高めるしかないさかいな。

例え、それが小さな水滴のひとしずくであっても、落とせば、どんなに広い湖面といえども、その波紋は必ず拡がっていくものやと信じて。



参考ページ

注1.【自由が危ない!!】防衛省、部外行事に介入 谷垣氏に遅刻要請

注2.第48回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■共謀罪について

第49回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■共謀罪についてPart2

第55回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■共謀罪について Part3 


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