メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー
第145回 ゲンさんの新聞業界裏話
発行日 2011.3.18
■東北地方太平洋沖地震の悲劇の実態と今後の対策について
絶句。
テレビに次々と映し出される津波の悲劇的な猛威を目の当たりにして言うべき言葉が見つからんかった。
車が家が船が電車が単なる漂流物として、いとも簡単に流されていく。中身の詰まった鉄のコンテナでさえ津波の前では木の葉同然に見えた。
自然の猛威と言うてしまえばそれまでやけど、その力の前では人間は無力な生き物でしかないという事実を、今更ながらに思い知らされた。
阪神淡路大震災を経験しているハカセも、「こんなに凄まじい光景を見るのは初めてですよ」と言う。
その阪神淡路大震災と、今回の地震を比べることはできん。
その地震の性質がまるで違う。
阪神淡路大震災の場合は内陸の直下型地震で多くのビルや高速道路、橋などの建造物が倒壊したことによる被害が大きかった。
しかし、その多くの被害は神戸とその周辺、大阪の一部に限定されていた。
今回は、建造物の倒壊というよりも東北地方の太平洋沿岸一帯の市や町が津波に呑み込まれたことによる被害が主になる。
2011年3月11日午後2時46分頃。
東北地方太平洋沖で日本の観測史上最大かつ世界最大級(世界観測史上第4位)の未曾有宇とも言える大地震が発生した。
震源地は三陸沖の牡鹿半島の東南東130キロの地点。震源の深さは約10キロと比較的浅い。
地震の規模を示すマグニチュード(M)は9.0。阪神淡路大震災の約180倍の破壊力やという。
気象庁の震度速報によると、宮城県北部で震度7、福島、茨城、栃木県などで震度6強、岩手、群馬、埼玉、千葉県で震度6弱を記録したとある。
地震で北海道、東北、関東、東海、関西の太平洋沿岸のほぼ全域に大津波警報が発令された。
その直後、岩手、宮城、福島県などでは最大15メートルの津波が押し寄せ、道路が冠水、海岸の車や住宅が押し流され、火災が発生するなどの被害が発生した。
この火災の発生については、沿岸の石油コンビナートの貯蔵タンクの破損、また津波で押し流された船舶や車などからも大量のガソリンが漏れ出し、それが内陸部まで運ばれた。
津波が引く際、海面に浮かんで漂っていた油が瓦礫の漂流物に取り付き、それに何らかの原因で引火したものやと言われている。
専門家の話では発火の原因として、鉄と鉄とのぶつかり合う際にできる摩擦熱や火花、千切れた電線によるショート、エンジンをかけたままの車の存在など、さまざまなことが考えられると言うが、確定的なことは何も分かっていない。
その光景も、津波とはまた違う地獄絵図と言える。
ハカセは実際に震災の火災により犠牲になられた人たちの骸を数多く見てきたから、よけいその思いが強いのやという。
ハカセは、阪神淡路大震災のとき、行方不明になった、お父さんを捜すため火災の最も激しいと言われていた神戸市長田区長田天神にバイクで向かった。
幹線道路は、ほぼ封鎖されていて立ち往生している車が多かったが、バイクならその規制を避けるように裏道に入れると踏んで。
但し、狭い裏道は倒壊した家の瓦礫が散乱していて、とても道と言える状況やなかった。
そんな障害物を乗り越えながら、道なき道を延々と走り続けた。
途中、斜めに倒れかけたビルの横や将棋倒しになっている家々を見るにつけ、その凄まじい地震の破壊力に、ただただ驚くしかなかったという。
長田区天神町近くに辿り着いた。
その頃には火災はすでに下火になっていたが、辺りは焼け野原と化していた。
むせかえる煙と悪臭が辺り一面に漂っていた。念のためにと持ってきていた防寒用のマスクが結構、役に立った。
あちこちの公園に、災害救助の野営テントがあり、救急隊や自衛隊の制服を着た屈強な男たちが忙しく走り回っていた。
そのテントの一つに飛び込み、ヒロジの写真を見せて、その安否を尋ねる。
「父親なんですが、連絡が取れなくて」と。
「向こうのお寺の境内に行けば分かるのやないですか」と、そこの救急隊員が教えてくれた。
教えて貰った寺の境内でその係官らしき人物に同じことを聞く。
すると、面倒くさそうに「あっち」と指し示す。
言われた方向に行くと、そこら中一面にブルーシートで覆われた夥しい数の物体があった。
全部死体やという。
まだ、身元が判明しない死体が置かれていた。
その中から、捜せと言う。
さすがにハカセは躊躇したが、安否を確かめにきて、それはできませんとも言えなんだ。
合掌して、最初の死体と対面する。
半分焼けこげた中年の男性の死体やった。
ここでの詳しい描写は避けるが、その目は未練たっぷりに虚空に向けられていた。
地獄絵図という形容があるが、このとき、まさしくそれやとハカセは思うた。
初めの数体は恐る恐る覗く込むという感じやったが、不謹慎を覚悟で言えば、人間はどんな状況、現場に接しても慣れるもんやというのをこのときに知ったとハカセは話す。
慣れに従い、どんなにむごい死体であっても、ほぼ冷静に見られるようになっていた自分自身に驚いていたという。
おそらく、今後のハカセの人生において、これほどの無惨な死体群を見ることは二度とないやろうと思われるほど、それらを見て廻った。
その中には炎が目前に迫っていても、倒壊した家や家具の下敷きになって動くこともできんかった人が数多くおられたと後になって知った。
今回の地震後の火災と、そのときの記憶が重なったと。できれば思い出したくもない記憶やったと。
17日正午現在。
東北など12都道県警が検視などで確認した死者数は5178人に上った。
家族や知人から届け出があり、依然行方が分かっていないのは8913人で、死者と行方不明者は合わせて1万4091人。重軽傷者は17都道県で計2285人になっているという。
この犠牲者の数は、今後、救助活動が進むにつれて、まだまだ拡大していくものと思われる。
一方では、全国から派遣された広域緊急援助隊を含む警察は16日までに、孤立化した被災者ら3700人以上を救出したという明るいニュースもある。
その数もこれから増えるはずや。また増えてほしいと願わずにはいられない。
この震災が今後の日本にもたらす影響は図り知れんくらい大きいものと思う。
極端なことを言えば、日本人の価値観、生活が根底から変わる可能性すらあると。
ええ意味においても悪い意味においても。
「それで、誰か一人でも連絡がついたんか」と、ワシ。
「いえ、地震の翌日からメールしているのですが、まだ誰も……」と、ハカセ。
ハカセは、過去サイトに情報を送って頂いたり、協力してくれたりしていた被災場所と目される東北各地の新聞販売店関係者、拡張団関係者の方たちに安否確認のメールを送ったが、その返信はまだ誰からも届いてないという。
津波が襲ってきたと思われる午後3時〜4時頃となると新聞販売店では夕刊を配達し、拡張員はそのエリア内で活動しとる時間帯や。
このメルマガでも再三言うてきたが、新聞販売店の配達員はどんな災害時であろうと何が起ころうと、まず配達を最優先する。
途中で配達を止めて切り上げるという発想にはなかなかなりにくい。
拡張員は、その点まだ幾分かの臨機応変さはあるが、地方の港町を勧誘する場合は、たいてい車を利用してというのが多いと聞くから、いざ逃げると判断してもその車に頼るものと予想される。
その車が……。
心配するなと言われても、どうしても心配せずにはいられん。
単に、通信の不具合、難しさだけの問題であってほしい。どこかに避難していてほしいと願うばかりや。
どうか皆さん無事であってほしいと。
地震の直後は当然としても、現在に至っても尚、被災地との通信は困難やさかい、それに望みを託すしかない。
過去、大災害がある度にパソコンや携帯電話といった文明の利器が用をなさん事態に陥ることが多いと言い続けてきたが、今回もそうやった。
これだけ災害時に弱い通信手段を何とか改善することができんものかと思う。
この状態がいつまで続くのかも予想がつかんというのでは尚更や。
ただ、そのパソコンや携帯電話、及び固定電話が使えた場合に必要と思われる情報をサイトの『その12 東北地方太平洋沖地震被災者のための情報』(注1.巻末参考ページ参照)に掲載しとるので、このメルマガを確認できたら、それも一緒に見ておいてほしいと思う。
今回の震災は、その津波により、とんでもない災害事故を誘発した。
震災後一週間以上が経過した現在に至っても、まったく予断を許さない状態の福島第一原発の事故がそれや。
これにより大幅な電力不足を招いていると。
そのため、関東、東北一帯では計画停電を余儀なくされ、それが実行に移されとると。
福島第一原発のケースは、それだけでは済まず、最悪の場合、大量の放射能漏れの危険すらある。
そうなれば、震災の被害はさらに増すと予想される。健康被害と経済被害は図り知れんものになると。
政府や東京電力の発表では福島第一原発の建屋で爆発が起きても「大したことがない」かのような説明を繰り返すだけやが、実際は、それとはき大きく違うという。
【放射能漏れ】「放射線量、限界に近い」 4号機元作業員が証言「現場は相当の覚悟」
http://www.sankeibiz.jp/compliance/news/110317/cpd1103171305031-n1.htm
より引用
危機的状況が続く東京電力福島第1原発。使用済み燃料貯蔵プールの水温が上昇、2度にわたる火災を起こした4号機で、かつて定期検査の作業員として携わった元プラント工事会社社員の男性(66)は「きっと作業員たちが受けている放射線量は限界に近いだろう」と、危険な任務に就く後輩たちを思いやる。
第1原発では16日現在、約70人の作業員たちが1〜3号機への注水を管理。敷地内の放射線レベルは上昇しており、作業をより困難にしている。放射線量の高いエリアでの作業は、短時間で退避する。男性は「こんなことが起こるとは想像もできなかった」と話す。
作業員たちは防護服に身を包み、線量計を携帯。線量が許容限度に近づくと警告音が鳴る。男性もかつて鳴ったことがあるといい「恐怖心に包まれた」と振り返る。
国内では、平成11年に茨城県東海村で起きたJCOの臨界事故以来の大事故だが「JCOで最初に作業していた作業員は突然、放射線を浴びた。今回は浴びるのを覚悟して作業をしなければならない。相当覚悟のいる状況だ」と、沈痛な面持ちで語った。
政府や東京電力の偉いさんたち、専門家の多くが、遠く離れた東京で辻褄の合わん説明に終始しとる中、それこそ身体を張って懸命に作業されておられる方々には本当に頭が下がる。
今は、その人たちにすべてを託すしかない。事態は、そこまで逼迫しとる。
しかし、その緊迫感が政府や東京電力の偉いさんたちからは、ほとんど伝わってこない。
「安全ですよ」てなコメントを繰り返すより、最悪な状態になることを早めに想定して、現在の30キロとかという中途半端な危険区域の設定やなく、それより完全に安全とされる外側に住民を避難させるべきやないのかと思う。
もっと言えば、現在、全国の多くの自治体が公団などの空き部屋を1年間という期限付きながら無料で入居できるようにしとるというから、そこへ希望者を優先的に送り届けるように考えるべきやないのかと。
それを30キロ圏内と指定して、しかも屋内待避しろて何やねんと思う。
現在、それがために風評被害と相俟って、そのエリア内にはトラックの運転手も近寄るのを怖がり、肝心の救援物資も届かんという事態に陥っているという。
その圏内にいる人から、「まるで兵糧攻めに遭っているようだ」、「見殺しにされる」という悲痛な叫びが聞こえてくる。
いずれにしても、このままでは悲惨な結果になる可能性が高い。
そんな単純なことは誰でもすぐ分かりそうなもんやが、政府の人間には、それすら分からんというのやろうか。
それとも分かっていても分かろうとせんのやろうか。
ホンマ、理解に苦しむ。
例えぱの話、その避難区域を100キロ外でも200キロ外にしてもええやないかと思う。
本当に放射能漏れの危険が去れば、またその住民の人たちを呼び戻すなり、自主的に戻るなりすればええだけの話やさかいな。
それをせず、殊更、事を小さく収めようとしとるのがミエミエなのは、どう考えても頂けん。
まあ、政府や関係省庁、電力会社などは、今までどんな大きな地震があっても原子力発電所は絶対大丈夫と言い続けてきたという事実があるから、そうしたいという思いになるのかも知れんがな。
それにしても、本当にそれほど大きな心配がないのなら、総理が東京電力の作業者に向かって「あなたたちしかいない。覚悟を決めてください」と言うた言葉は一体何やったんやと思う。
純粋に作業者に頑張ってほしいという気持ちを伝えたかったのは分かる。それはそれでええ。
しかし、それだけとはとても思えんという気になったのは、ワシらだけではないはずや。
どうしても、その言葉の裏には「もうそれしか他に手はない」というのが透けて見えるさかいな。
運を天に任せたと。祈るような気持ちやと。
おそらく、今までの総理大臣なら、まずそんなことは言わんかったやろうと思う。
同じ言うにしても「現場では最善を尽くしています」という程度に止めていた、濁してたと思うが、ええ意味においても悪い意味においても現総理は正直な人やさかい、それができんかったのやろうな。
それがために、思っていることが、つい一言多いという形で口を衝いて出てしまうのやろうな。それでよく揚げ足を取られ窮地に陥るケースが多いように見受けられる。
ただ、正直であれ、一言多いのであれ、その言葉が事実を如実に物語っていることに変わりはないと思う。
加えて、被曝を防ぐためにはヨウ素を摂取するのが、最も有効とされとるが、このヨウ素を作っている某医薬品メーカーは、既に25万人分のヨウ素を被災地に向けて出荷しとるということや。
また、このメーカーだけで、後80万人分もの在庫があるにも関わらず、さらに緊急増産体制に入ったという発表もある。
もちろん、これには政府からの要望、指示があったものと考えられる。
現在、30キロ圏内に避難しているのは、10数万人程度のはずでヨウ素が必要なのは、その人たちやと思うが、なぜ、それほどまでに大量の予備が必要なのか。
さらに、決定的とも言えるのは、17日、欧米各国は日本政府が安全としている30キロ圏内など、まったく信用しないかのように、自国民を東京からの撤退、日本からの撤退勧告、強制待避させることに決定したという。
一番日本の政府寄りと目される米政府ですら16日、米国人に対し、福島第一原発から50マイル(約80キロ)圏外への退避を勧告した。
現在、退避用のチャーター機を派遣し、それを行っているという。
これらをどう見るかということになるが、世界からも日本政府が信用されてないのだけは確かな気がする。
それと、核汚染による意識の違いが、日本と諸外国とではあまりにも大きいと。
ワシらも、不安を煽るつもりはさらさらないが、こういう事実を知るにつけ、少なくとも最悪の事態まで考えて準備しておく必要があるという気になる。
結果オーライで事がこのまま収まったとしても、今回の福島第一原発での事故と対応の事実は今後、大きな問題になるものと思う。
これもワシが日頃から「隠し事からは何も生まれない」と口酸っぱく言うてることと符号する。また、「隠し事はいつかは必ず暴かれる」ということとも。
「バニックを引き起こしたくない」、「今後原子力発電を否定されたくない」、といった政治的、企業的な思惑も分からんでもないが、そのために住民の命や健康を犠牲、担保にするべきない。
はっきり言うが、原発の安全神話はすでに崩れた。そう認めた上でこの危機に対処するしかない。
総理は当初、「人命が最優先」と高らかに宣言していたが、政府のやっていることは、どう見てもそのようには見えない。
今から31年前、1979年3月28日。アメリカ合衆国東北部ペンシルベニア州のスリーマイル島原子力発電所で重大な原子力事故が発生した。
このとき、周辺住民が大規模避難ということになったが、給水回復措置が取られ、何とか事故は終息した。
異常事態が更に長引いていたら、チェルノブイリ原子力発電所事故と同様の規模になっていたと言われている。
チェルノブイリ原子力発電所事故とは、その7年後の1986年4月26日、当時のソビエト連邦(現、ウクライナ)で起きた原子力事故のことや。
その際、広島に投下された原子爆弾に換算して約500個分に相当する量の放射性物質が大気中に撒き散らされたという。
事故発生直後、203人が即座に入院し、その内31人が死亡、28人が急性放射線障害を発症した。
その多くは事故を収束させるために集まった消防と救急の労働者たちやったが、放射線被曝がどれくらい危険であるかはまったく知らされてなかったという。
結局、チェルノブイリ原子力発電所そのものを石棺と呼ばれる巨大なコンクリート壁で覆うことになった。
現在も、その石棺の中に数名の職員の遺体があるとみられているが、その遺体はおびただしい量の放射能を帯びているため、搬出できるまでには数世紀かかると言われている。
当然のことながら、その地域で人は住めない。また住めるまでにどのくらいの年数が必要かも定かでないという。
2000年4月26日の14周年追悼式典での発表によると、ロシアの事故処理従事者86万人中、5万5千人が既に死亡しているとのことや。
ウクライナ国内(人口5千万人)の国内被曝者総数342万7千人の内、作業員の86.9%が被爆による病気に罹っていると。
まさに、空前絶後の原子力事故災害やったわけや。
このままやと、日本もそうなる可能性がある。少なくとも現状は、アメリカのスリーマイル島で起きた原子力事故より深刻になる可能性が高いと言える。
もう一度だけアドバイスする。
現在、福島第一原発から30キロ圏内、及びその周辺に住まわれて住民の方々は、例え一時の間でもええから、現在、全国の多くの自治体が公団などの空き部屋を1年間という期限付きながら無料で入居(注2.巻末参考ページ参照)できる体制を整えとるというから、当面はそれを利用されることを勧める。
このまま残れば、被爆の危険と物資が届かないことによる物不足で二重の苦しみを味わうことが予想されるさかいな。
この震災がもたらすであろう危険は、この他にもまだまだ考えられる。
現在、もっとも深刻な問題は被災地により、救援物資の到着が違うということや。
電気は未だに停電のままで、ガソリン、灯油が底をついて満足な暖も取れず、眠れない日々による過度の過労、医薬品の不足などで、せっかく避難所に逃れながら、そこで亡くなられていく方たちが続出しとるという。
そういった命に関わる問題は最優先事項としてやっていく必要がある。
現場の自衛隊員、警察官、消防隊員、ボランティアの救援隊など、様々な方々の献身的な働き、ご苦労はよく分かるが、それでも敢えて、それをお願いしたいと思う。
震災から一週間経ったとはいえ、まだ被害状況の全貌すら掴めてない状況で、今後のことを言うのは早計かも知れんが、知識として知っておいてほしいことを今から話す。
実際に起きているもの、また阪神大震災の折に実際に起きたことなどを踏まえて、今後起こり得るであろうと推測される事案についてや。
震災後の注意と心構えについて
1.情報の出所をよく吟味し、迂闊に乗って風評被害を拡げない。
現在、チェーンメールとかで不確かな情報が錯綜しとるようやが、確かな情報源からのもの以外は信用せん方が無難やと言うとく。
一般的に、新聞やテレビ、ラジオから情報は信じるに値すると思う。
ちなみに、ワシらも最終的に情報をメルマガ誌上に載せるときは新聞やテレビなどのマスメディアのものと突き合わせた上で信憑性が高いと判断した場合のみ、そうするようにしとる。
なぜなら、それらマスメディアの多くは報道する前には必ず「チェック、アンド、チェック」と言われるくらい、数人の人間で確認を重ねて報道しとるからや。
そして、メディアとしての名誉と尊厳にかけて報道した内容に責任を持つという姿勢がある。
また、誰もが信じるであろうと思われる警察などの政府機関が、その主な情報源というのもある。
それに対して、個人のホームページやブログに載っているものは、どこから入手したデータかも分からず、他で載せていて面白そうやという理由だけで、そのままの文章をコピーペーストして貼り付けたものが、あまりにも多い。
ただ、そういうものであっても、中には信憑性の高い情報があるというのはワシら自身良う知っとるが、そうである確率は残念ながら、マスメディアの情報と比べると格段に落ちると言うしかない。
マスメディアには新聞を代表するように百数十年のそうした歴史があり、一方のネットは、高々十数年程度の歴史しかないというのもあるがな。
むろん、組織力の違いというのも大きい。
つまり、そうした個人のホームページに掲載された情報は、一旦立ち止まって「ホンマかいな」と疑ってみるくらいが、ちょうどええと思うということや。
少なくとも、目新しい情報に飛びついて迂闊にコピーペーストして拡げんことやな。
それが間違っていたがために恥をかく場合が多い。
特に、こういう深刻な震災のときやと、それが間違うてた場合は洒落で済まんことも十分考えられるさかいな。
どういう形であれ、自分のホームページやブログで公開するのなら、その内容の責任を負うというくらいの覚悟が必要やないかと思う。
そう考えれば、安易なコピーペーストなんかできんはずやし、自身で、その情報の真偽くらいは確かめる気にもなるはずや。
2.義援金は信用の置ける機関、組織に委ねる。
物資での支援というのも悪くはないが、それよりも金銭での義援金というのが、こういう場合、一番当事者には有り難いという。
そして、その義援金を寄附するのなら、ネットの場合、ヤフーやグーグルといった大手ポータルサイト、新聞社、銀行などの信用の置ける機関、組織がええ。
外出先でするのなら、今やと、ほとんどの自治体の窓口に義援金箱が設置されとるし、銀行や大手スーパー、コンビニにも同様のものがあるはずや。
同じするのなら、そういうところを選ぶことやな。
一部のニュースでは、早速、義援金詐欺が横行し始めとるという。
そういうのは、たいてい個人宛に電話やメールで募るというケースがあるから気をつけることや。
言うておくが、義援金を個人に直接に募るようなところは、そのほとんどが詐欺やと考えといて、まず間違いないと思う。
当たり前やが、義援金というのは自らの善意の気持ちでするもので、人に誘われてとか強要されてするもんやないさかいな。
3.買い占めをしない。
こういうときというのは、とかく風評が先行しがちになり、やれ米がなくなるだのカップ麺がなくなるだのといって、やたら買い占めに走る者が続出しやすい傾向にはある。
現に、関東、東海までその傾向が表れとるという。
ガソリンに関しては、震災前からの中東、北アフリカ地域の政情不安により石油の入荷そのものが不安定になっていて、救援のための移動用を最優先せなあかんという関係から、ある程度の品不足は一時の間は仕方ないと思う。
しかし、食料に関してはそういうことはまずないから、その心配をして買い溜めに走る必要はまったくない。
冷静に考えたら分かるが、食料というのは一時には限られた分しか消費されない。
しかも、日本は食料を生産するより輸入に頼っとる国やから、日本の国内事情で食糧不足になるというのは考え辛い。
もっとも、一部の東北地方の名産品の品不足というのは考えられるかも知れんが、あってもその程度や。
生活に困るほどの食料不足など起こり得るわけがない。
現在、震災地に救援物資として送られとるものは、そのために備蓄していた食料なわけや。そこらのスーパーやコンビニから掻き集めたものやない。
景気もそうやが、皆が買い控えると不況になり、皆が一気に買い溜めすると品不足になる。
まあ、これは心理的なものやから、すぐに止めろと言うても難しいかも知れんが、あまり風評に踊らせられんようにすることが、賢い人間のすることやと思うがな。
4.火事場泥棒、空き巣の横行に注意
アメリカ発のニュースに『悲劇の中、日本に集まる世界の称賛』というのがある。
その全文や。
悲劇の中、日本に集まる世界の称賛
http://www.afpbb.com/article/life-culture/life/2790613/6951747 より引用
大震災と巨大津波による二重の惨劇から立ち直るとき、日本の国際的な評価はいっそう高まるに違いない。日本という国の芯の強さに世界の称賛が向けられている。
世界中のテレビには、がれきとなった家屋や車をあたかもおもちゃのように津波が押し流し、変わり果てた荒地に放心状態でさまよう被災者の姿が映し出されている。
しかし、映像はもうひとつの側面も世界に伝えた。消息を絶った家族を探しながら、生活必需品が届くのを待ちながら、冷静さを失っていない日本人の姿だ。そこには略奪や暴動の素振りもない。
半分空になった店の前でさえもきちんと並ぶ住民の姿に、英語圏のインターネット・コミュニティは、日本人は「冷静だ」と目を見張り、欧米諸国で同規模の地震が起きた場合にこうできるものだろうかという驚きが書き込まれている。
米ハーバード大学(Harvard University)のジョセフ・ナイ(Joseph Nye)教授は、今回の地震が日本の「ソフトパワー」にとって良い方向に働くと語る。
「ソフトパワー」とはナイ氏が提唱した言葉で、人を魅了する力による国家の目標達成という概念だ。
ナイ氏はEメールによるAFPの取材に対し「悲劇は計り知れないが、日本が持つ非常に魅力的なある面を、この悲しい出来事が明らかにしている。それが日本の『ソフトパワー』を促進する」と述べた。
「そうした面が共感を生み出すことに加え、このような災害に対して冷静に秩序正しく反応し、近代国家としてなしうる構えのできた安定した、礼儀正しい社会であることを示している」
平和憲法を掲げる日本の外交政策は歴史的に、他国への援助を柱としてきた。しかし、今回の地震では巨額の復興費が見込まれるため、少なくとも部分的な支出の見直しを迫られるだろう。
日本は世界に冠たる富裕国のひとつだが、援助団体の試算によると、前週起きたマグニチュード(M)9.0の巨大地震以降、米国1国だけですでに2200万ドル(約18億円)を超える寄付が集まっている。
大きな悲劇を経験した時には、ほとんどすべての国から人としての共感が寄せられるが、そこから被災国の評価が高まるといったことはまれだ。
2010年、大洪水に見舞われたパキスタンは米国その他の国々から支援を受けた。しかし、外国の個人寄付の集まりは鈍かった。
その理由として援助団体らは、パキスタンのイメージの問題を挙げていた。2008年の中国、2010年のハイチの地震時にも両政府の対応に批判が集まった。
今回の大震災によって、近年は低成長・高齢化社会・回転ドア内閣といった言葉で語られていた日本に対する言説が変わるとみる専門家もいる。
米シンクタンク「戦略国際問題研究所(Center for Strategic and International Studies、CSIS)」のニコラス・セーチェーニ(Nicholas Szechenyi)副所長は「問題は、経済を革新し、復興を遂げるために必要とされることに、日本が対処できるかどうかだ。予測を立てるには時期尚早だが、遠くから眺めてこれまでのところ、日本人は危機の際の耐性の強さを示していると思う。この点が後日、日本という国をよく物語る点になると思う」
米紙ウォールストリート・ジャーナル(Wall Street Journal)は社説でこう書いた。「300年に1度の大震災による大混乱の中で、日本人は冷静さを保ち、膨大な救助・復旧活動をまとめ、そして広く世界の称賛を集めている」
といった具合に、世界のあちこちから日本人の姿は賞賛されている。
『消息を絶った家族を探しながら、生活必需品が届くのを待ちながら、冷静さを失っていない日本人の姿だ。そこには略奪や暴動の素振りもない』、『半分空になった店の前でさえもきちんと並ぶ住民の姿』といったことは、日本人なら当たり前なことやが、外国では、それが高潔に映り、賞賛の的になるという。
むしろ、『略奪や暴動』がある方が異常やとは思うのやが、外国の認識はそうではないらしい。
そうであるなら、ここは素直に、その賞賛を受け入れ日本の誇りとしたいと思う。
しかし、いつまでもそういう人たちばかりが目立つとは限らん。
過去、阪神淡路大震災のときがそうやったように、中には被災した家から火事場泥棒や空き巣行為をする輩も現れるようになるのやないかという気がする。
残念ながら、日本にもその手の犯罪者は多い。その連中が、この好機に大人しくしとると期待するべきやない。
いずれ動き出すのは目に見えとる。というか、もう動き始めていると考えた方が自然な気がする。
そう考えて、早急にそれなりの防衛手段が必要やと思う。
しかも、今回の場合は被災地だけがターゲットやなく、現在、計画停電で闇に包まれた地域もその対象になる可能性が高い。
そういうとき、関西では隣近所が集まって、即席の自警団のような組織を作って夜回りなどの警戒をしていたもんや。
現在、各地の警察も相当数被災地の応援に出とるさかい、あまりそれに頼り切るのも考えものや。
自分たちの身は自分たちで守る。その魔の手から逃れる方法は、隣近所で協力し合うしかないと知ってほしい。
もう、「隣は何をする人ぞ」といった無関心さでは生き辛くなると。
5.詐欺行為の横行。
過去、あらゆる地震で詐欺行為が猛威を振るっている。
先に挙げた義援金詐欺を始め被災した家族を名乗る「オレオレ詐欺」、住宅リフォーム詐欺など、あらゆる詐欺に気をつけなあかん。
基本的に、言い寄ってくる、勧誘してくるといったものはすべて疑ってかかった方がええと言うとく。
6.子供たちへの精神的なケアの急務。
こういう災害の爪痕は、破壊によるものと同時に精神的なショックによる影響で病気になるというケースが多い。
すでに、避難所では子供たちが特に健康被害が見えないのにも関わらず、食べた物を吐き出すという事態が起き、それが深刻化しつつあるという。
過去の大震災のすべてが、そうやったように、精神的なダメージというのはかなり後にまで残る。
メンタルケアのできる医師なり人材の早急な投入、あるいはボランティアの協力が急務になると思う。
まだ、この他にもあると思うが、気がつき次第、また掲載していくつもりや。
また、読者の方で何か意見があれば、是非、お願いしたい。
最後に、東北地方の業界関係者の方、読者の方、無事でしたら、落ち着いたときでよろしいので、当方までメールでお知らせして頂けたらと思う。
参考ページ
注1.その12 東北地方太平洋沖地震被災者のための情報
注2.各自治体被災者受け入れリスト
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