メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー

第149回 ゲンさんの新聞業界裏話


発行日  2011.4.15


■苦情や文句を言う前に考えておきたい事とは?


ゴローは気の弱い大人しい男やった。

もうすぐ30歳になろうとしとるが、今まで人と揉めたり喧嘩したりすることなど、ほとんどなかった。

そうなりそうなときは、例え自身が悪くなくとも平身低頭、謝るか、いち早くその場から逃げて難を逃れるようにして生きてきた。

タクシー乗り場で目の前に割り込みされても黙っている。

明らかに未成年とおぼしき若者がタバコを吸っている現場を見ても見て見ぬ振りに徹する。

電車内で周りに気を遣う素振りも見せず、携帯電話を使って大声で話しているマナーの悪い人間がいても気にしないようにしている。

自分の進む通路に人が屯(たむろ)していて通りにくいと判断すれば必ず遠回りをする。

そんな男やった。

そのゴローが一度だけキレて怒鳴ったことがあった。

その一週間前くらいから、夕方の3時頃になると必ず、ゴローの住んでいるアパートのすぐ外の路地を一台のバイクが、クラクションをけたたましく鳴らしながら走るようになった。

その都度、それに驚いたゴローが飛び起きる。

それは、新聞配達のバイクやった。

ゴローは、現在、夜勤専門の警備員をしていて、その時間は就寝中やった。普通の人にとっては深夜3時に相当する。

その最初のときは、「たまたまだろう」というくらいに考えていた。

しかし、それが一週間続いた。

さすがに、それだけ続くと、いかに温厚なゴローと言えど、怒りが込み上げてくる。

しかも、それが気になってなかなか寝つかれず、睡眠不足になって仕事にも支障をきたすようになっていたさかい、よけいや。

そして、ある日、ついに部屋の窓を開け、「いい加減にしてくれ!!」と思わず怒鳴ってしまった。

それを聞いた、その配達員が急ブレーキをかけてバイクを止めた。

「何や? 何か文句あるんか?」と言いながら、ゴローを睨みつけた。

その配達員は、いかにも柄の悪そうな同年代くらいの男で、ゴローとは正反対の性格に見えた。

ゴローは、「しまった」と後悔したが、もう遅い。

「く、クラクションがうるさくて迷惑なので、も、もう少し、静かにしてくれませんか。寝ていますんで……」とだけ、恐る恐るではあったが、勇気を振り絞ってそう言った。

「何? 寝てたからうるさいやと? こらっ!! こっちは仕事をしてんねんやで!! 昼間から寝とって仕事もしとらんようなプーターローに文句を言われる筋合いはないわい!!」と、逆に怒鳴り返された。

「す、すみませんでした……」

ゴローには、それ以上、言い返す度胸もなく、そう謝ると急いで窓を閉めた。

「ヘタレが!! えらそうに」と言いながら、その配達員が舌打ちしているのが聞こえた。

その配達員は、バイクのエンジンをわざと何度も空ぶかしした後、前にも増して、けたたましくクラクションを鳴らしながら走り去って行った。

その翌日から、その配達員は、その時間になると決まってゴローの部屋の外に止まり、毎日のようにバイクを大きく空ぶかしして、わざとクラクションを連打するようになった。

とてもやないが、眠れたもんやない。

ゴローは思い切って、その新聞販売店に電話した。

「……というわけなんで、そちらの配達の人に止めて貰えるよう言ってくれませんか?」と。

「この路地は人通りも少なく、クラクションを鳴らさないと走れないような危ない道ではありませんので」と。

当然、その販売店は謝罪の言葉を言うだろうと予想していたが、豈図(あにはか)らんや、逆に「それのどこが悪い?」と凄まれる始末やった。

それでもゴローは電話ということもあってか、珍しく「迷惑行為ですので、止めて貰えなければ警察に通報しますよ」と強気な姿勢を見せた。

すると、「どうぞ、お好きなように」という返事が返ってきた。「そんな話を警察に持ち込んでも無駄やで」と。

ゴローは、「このままでは済まさない」という気になり、新聞社へも電話をかけた。

「迷惑と言われましても狭い路地をクラクションを鳴らして走るというのは安全を確保するという意味合いもありますし、深夜でもありませんので……」と、歯切れの悪い、頼りなさげな返事しか返ってこなかった。

それでも、一応は「その販売店に伝えておきますので」とは言っていたが、電話するだけ無駄なような気がして後悔した。

ゴローはその苦情を新聞社に伝える際、住所と名前を告げていたから、悪くすると、あの柄の悪そうな配達員がその仕返しに怒鳴り込んでくるかも知れんと考え、不安になりその足で近所の派出所に相談に行った。

「というわけなんですけど、何とかして貰えませんか」と。

「先に、怒鳴ったのは、そちらなんですね?」と、その派出所の警官。

「ええ……」

ゴローとしては我慢に我慢を重ね、止む得ずにしたことやったが、警官の弁は、それが悪いと言わんばかりやった。

「それで、そちらに何か具体的な被害でも?」

「私は夜勤の仕事をしているので、そんな真似を毎日されると眠れなくて困るんです」

「いえ、そうではなくて、脅かされたとか脅迫された、あるいはそれにより暴力を振るわれたといったような具体的な被害のことですよ」

「それは特に何も……」

確かに、その配達員の行為は、その後エスカーレートはしたが、直接、脅すような言葉を吐いたわけやない。

その警察官は、あきらかに取り合うつもりがない。

そう感じたゴローは不安を覚えた。

「安眠妨害は迷惑行為にはならないんですか?」

「安眠妨害と言われましても、昼の3時ですからね。これが、深夜の3時ということなら、明らかな迷惑行為ということで注意はできるんですが」

結局、「何かあった場合、また来てください」と言われ、ゴローはその派出所を後にするしかなかった。

徒労感だけが残った。

そして、販売店の人間は、こうなることを予期していたと思われる。

ゴローが「警察に通報する」と伝えたとき、「どうぞ、お好きなように。そんな話を警察に持ち込んでも無駄やで」と言うてた意味が分かった。

おそらく、過去にもこの手の問題が幾つか起きているはずで、そのときにも同じようなことがあったのやと思う。

それ故の強気な態度やったと。

もう何も方法はないのか。

ゴローは、そう考え、ネットを検索していたところ、すぐに頼りになりそうなサイトにたどり着いたという。

それが、ワシらの『新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A』(注1.巻末参考ページ参照)やったと。

ゴローは、ワラにも縋(すが)りたい気持ちで、そこに相談した。


……というわけなんですが、こういう場合、どうしたら良かったのでしょうか?

販売店の方が立場が強いですか?

また、今後どうしたらいいのでしょうか?

アドバイスよろしくお願いします。

PS ただし、HP上で公開するのは少し待っていただけないでしょうか。勝手を言うようですが、よろしくお願いします。


それに対するワシの回答や。


回答者 ゲン


あんたと同じような問題を抱えられていた方は他にもおられた。

その方も結局、Q&Aへの非公開を希望されたので、その事例は公開しとらんさかい、それを引用するわけにはいかんが、そのときにした回答は、あんたにも役に立つと思うので、それを参考に答えさせて貰う。

つまり、こういった問題は、あんただけやないということや。

『夕方の3時頃になると必ず、住んでいるアパートのすぐ外の路地を一台のバイクが、クラクションをけたたましく鳴らしながら走る』というのが、警察に通報するような違反行為やったか、どうかについてやが、それだけでは残念ながら法に触れるとまでは言えんやろうと思う。

法に触れない限り、警察に苦情を言うても効果は期待できん。

道路交通法第54条に「警音器の使用等」というのがある。


車両等(自転車以外の軽車両を除く。以下この条において同じ)の運転者は、次の各号に掲げる場合においては、警音器を鳴らさなければならない。

一 左右の見とおしのきかない交差点、見とおしのきかない道路のまがりかど又は見とおしのきかない上り坂の頂上で道路標識等により指定された場所を通行しようとするとき。

二 山地部の道路その他曲折が多い道路について道路標識等により指定された区問における左右の見とおしのきかない交差点、見とおしのきかない道路のまがりかど又は見とおしのきかない上り坂の頂上を通行しようとするとき。

2 車両等の運転者は、法令の規定により警音器を鳴らさなければならないこととされている場合を除き、警音器を鳴らしてはならない。ただし、危険を防止するためやむを得ないときは、この限りでない。

罰則は、第一項、第二項については5万円以下の罰金、2については2万円以下の罰金又は科料となっている。


というものや。

これからすると、「2 車両等の運転者は、法令の規定により警音器を鳴らさなければならないこととされている場合を除き、警音器を鳴らしてはならない」というのに、その配達員が違反している可能性があると考えられるが、

「ただし、危険を防止するためやむを得ないときは、この限りでない」という理由を掲げられたら、その配達員の違反を立証するのは難しいやろうと思う。

『この路地は人通りも少なく、クラクションを鳴らさないと走れないような危ない道ではありません』というのは、その現場の状況にもよるが、多分にあんたの主観とされやすい。

一般的に、新聞配達というのは住宅街や商店などの人の住んでいる場所で行われるため、事故に遭遇する危険は常にあると言える。

例え人里離れた限界集落のような地域であったとしても、人とバイクが接する危険が皆無とは言えんさかいな。

その配達員が、路交通法第54条第一項にある『左右の見とおしのきかない交差点、見とおしのきかない道路のまがりかどがあって危険』と判断した場合、その判断が優先される可能性の方が高い。

これが深夜とか早朝などのように多くの人が寝静まっている時間帯というのなら、また別かも知れんが、午後の3時頃ということやから、それが果たして、その危険を無視しろと言えるほどの迷惑行為なのかという疑問もある。

特に、子供たちが冬休みや夏休みなどの長期の休みになっている時期になると、遊びに夢中になるあまり路地からの飛び出しが多くなり、バイクとの接触事故の危険が考えられるさかい、よけいや。

実際にも、新聞販売店においてその手の事故は多いしな。

『この路地は人通りも少ない』というのも、却って、『だからこそ危険が大きいからクラクションを鳴らす必要がある』とも言えるわけや。

危険をそれと察知させるためにクラクションを鳴らしたのやと。

あんたは、そのクレームを伝える際、正当な苦情やと信じてそうしたのやろうが、そうする前に少しでもええから相手の立場で考えてほしかったと思う。

少なくとも、その配達員は、あんたが夜勤で寝ているなどという事情を知らんわけやから、あんたを困らせるために悪意を持ってわざとクラクションを鳴らしたわけやないのだけは確かや。

まあ、我慢に我慢を重ねた末に爆発したという気持ちも分からんではないが、文句を言う前には、やはり良う考えてから、そうすべきやったと思う。

なぜ、その配達員は『クラクションをけたたましく鳴らしながら走る』のやろうかと。

どうして、そうする必要、理由があったのやろうかと。

普通、こんな事をしながら新聞を配達することの方が面倒やと思う。

それでも敢えて、そうするからには、その配達員なりの必然性と理由が何かあるはずや。

過去に、その地域、もしくはその周辺で、その配達員が歩行者と接触事故を起こしたことがある。

あるいは、その新聞販売店で過去にその場所で、飛び出しなどの事故歴があった。

または事故そのものが多発しているような地域やった場合、それを回避するために、その新聞販売店の指示、および配達員の独断で、そうするというのは十分に考えられる。

一週間前から、それが行われ始めたということやが、その一週間前に、そうした何らかの事故やトラブルがあったという可能性も否定できん。

そのために、あんたがその販売店にその苦情を言うた際、『何が悪い?』という返答になったと。

また、それがあるからこそ、あんたの『迷惑行為ですので、止めて貰えなければ警察に通報しますよ』という物言いに対して、『どうぞ、お好きなように』という対応になったという気がする。

その行為には何の問題もなく、むしろ、そうすることが止む得ない正当な行為やったと。

その販売店からすれば、あんたの苦情はタチの悪いクレームやと受け取ったとも考えられる。

それらの事を考え合わせると、よほどのケース以外では、この件で警察に苦情を言うても無駄なような気がする。

第三者の立場で見ても、その販売店、配達員に分がありそうな話やさかいな。

それに、あんたのケースは、今のところ争われたとしても民事にしかならんことやから、警察も積極的な介入は避けたいというのが本音やろうと思う。

極論すれば、「迷惑行為」と考えるか、「事故防止のためのやむを得ない危険回避行為」と判断するかということになる。

その電話に出た新聞社の人間も、それがあるからこそ、あんたのクレームにどう対処したらええのか判断できんかったのやないかな。

まあ、それでは新聞社の苦情係は務まらんわけやけどな。

『販売店の方が立場が強いですか?』ということやが、一般的には新聞社と新聞販売店を比べれば圧倒的に新聞社の方が立場は強い。

しかし、事、配達に関しては、その道のエキスパートである新聞販売店に任せるしかないのは確かや。

それに対して口出しするような新聞社などないはずや。というか、配達のノウハウなど持ち合わせていない新聞社には口出しのしようがないと思う。

よくて、配達に関して一般読者からのクレームがあれば、その事情をその販売店に問い合わせて聞くくらいや。

それで、その販売店から納得のいく答が返ってきたら「そうか」となるだけの話や。

ただ、その行為が、そのよほどのケースに該当するような場合は警察もほっとかん可能性はあるがな。

それは、その行為を楽しむ、あるいは迷惑と承知で、わざとそうしとるような場合や。

言えば、暴走族がけたたましい音を上げて暴走行為を繰り返しとるようなケースやな。

それやと、明らかな迷惑行為、危険行為ということになる。

数は極端に少ないとは思うが、そういうタチの悪い配達員も皆無やないさかいな。

そういう苦情の報告も時折、届く。

そういうケースやと、その道を走るにも制限速度なども無視して走っとるやろうから、危険運転行為の部類になり、道路交通法違反に問える可能性も大きいと思う。

その場合なら、実際にその行為をしている現場を隠し撮りすればええ。

ビデオカメラでも携帯の録画機能でも何でもええから、その証拠を録画して記録しとくことや。

いつも、その配達員が決まった時間にそうしとるということなら、その現場を隠し撮りするくらい造作もないはずやと思う。

それを警察に持ち込んで、判断を仰げばええ。

その場合は、なるべくなら近所の派出所よりも警察署の方がええ。

その際、いきなり交通課などの専門部署に相談するのではなく、多くの警察署には「市民安全課」という類の部署があるから、そこへまず相談することを勧める。

一般的に警察という所は、厄介事を避ける体質があると言われている。

できればなるべく事件にならんように持って行きたいと考えると。よけいな仕事は極力したくないということでな。

こんな言い方が適切かどうかは分からんが、どれだけ事件が増えようが、それを解決しようが、担当の警察官には大した実入りや実績にはならんということがある。

つまり、仕事を多く抱え込んでも、あまり益にはならんということやな。

その事件を解決して当たり前で、未解決にでもなったら、その責任を問われかねんということがある。

それなら、事件は最初から少ない方がええということになるわけや。

その考えが、日本の警察が世界最高ランクの検挙率を誇る要因になっとるとも言える。

ややこしい、面倒な事件を水際で少なくすれば、その分、未解決になるリスクも減るという理屈やな。

少し言い過ぎかも知れんが。

その点、「市民安全課」というのは、警察のアピールをするための部署として設置されとるので、その苦情や相談には、驚くほど親身になって聞いて貰えるということがある。

もちろん、警察やから、そこに違法性がなければ、いくら苦情を申し立てても、その相手をどうにかするということはできんがな。

ただ、少なくとも話くらいはちゃんと聞いてくれるから、精神的な面での支えにはなるはずやと思う。

『苦情を新聞社に伝える際、住所と名前を告げていたから、悪くすると、あの柄の悪そうな配達員がその仕返しに怒鳴り込んでくるかも知れないと考え、不安になりました』というのも、その警察の「市民安全課」に相談することで、その心配もいくらか和らぐのやないかと考える。

もし、『柄の悪そうな配達員がその仕返しに怒鳴り込んできた』場合、「このことは警察署の○○さん(担当官の名前)に伝えていますので、私に何かあれば、そちらの販売店さんが困りますよ」とでも言えば、よほどのアホでもない限り手を出すことはないやろうと思う。

その度合い、程度にもよるが、万が一、本当に直接的な危害、被害を加えられれば、それこそ警察の出番ということにもなるしな。

また、実際にそういうことがあれば、それを新聞社に通報するという手もある。

そうなれば、その新聞販売店の存続にも関わる重大事になる可能性が高い。

その意味でも、警察の「市民安全課」に相談することで、例え、その場は話を聞くだけに終わったとしても、その心配を払拭できるのやないかとは思う。

最後に一言。

苦情を言うのは構わんが、言うのなら、その言い方には気をつけといた方がええと言うとく。

たいていの場合、極悪非道な犯罪行為以外では、その立場の違いで、それぞれに正義というものが存在する。

あんたにとっての正義があるように、相手にも、それなりの言い分と正義があるということや。

それを考えに入れとれば、今回のように、何の前触れもなく、いきなり『いい加減にしてくれ!!』とか『迷惑行為ですので、止めて貰えなければ警察に通報しますよ』という物言いにはならんかったやろうと思う。

あんたの事情は、あんたの言い分を聞かされたワシには無理もないことやというのは分かるが、それを言われた配達員にすれば、何の事情も知らんわけやから、「喧嘩を売っとんのか」となるのが普通や。

人と人が喧嘩する、揉め事に発展するというのは、たいていの場合、その物言いが原因になることが多いさかいな。

一方的に悪いと決めつけられた物言いをされれば、誰でも反発、反抗したくなるもんや。

それを分かってほしい。

文句を言うて気が済むと言うのなら、それでもええが、相手に納得して貰い、こちらの希望を受け入れてほしいのなら、それなりの言い方を心掛けといた方がええということや。

最初の一声は、「何かあったんですか」と、その初期の頃に、そう言うておけば良かったのやないかと思う。

そうすれば、「過去にこのあたりで事故があって危ないから、こうするよう販売店から指示を受けている」、あるいは「以前、これと同じような路地で子供が飛び出して危険なことがあった」などという理由を、その配達員が話すことも考えられる。

もし、そうなら、悪気のある人間やないから、穏やかに話せば、あんたのことも理解してくれて、同じクラクションを鳴らすのでも、少し離れたところから軽く鳴らす程度に止めて貰えたかも知れん。

それを、今回のように我慢に我慢を重ね、極限に達してから言うたんでは、とてもそれは望めんということや。

すべてがぶち壊しになる。

あんた自身、気の弱い性質やと言うておられるのは分かるが、なるべくなら、気に入らん事、してほしくない事などがあれば、日頃から、穏やかな口調で「お願いしますから、止めて頂けませんか」と言う癖をつけておくよう勧める。

そうすれば、こんな揉め事までにはならんのやないかと考えるがな。

普段からそうしていれば、今回のような場合やと、「お仕事をされていて大変だというのはよく分かりますが、いきなりクラクションを鳴らし続けられると、一体何事があったのかと驚いてしまいますので、できれば、もう少し静かにお願いできませんか」と穏やかな口調でたしなめるくらいの配慮があったと思う。

このとき、「幼い子供が寝ていますので」、あるいは「病弱の親が驚き、心臓にもよくありませんので」と言って「お願いします」と低姿勢に言えば、また違った結果になったのやないかと。

何かの苦情を相手に伝える場合、一番考えなあかんことは、あんたにとってどうなればええかということや。

今回の場合、そのクラクションを激しく鳴らすことを止めて貰いたいというのが、それやったら、怒鳴るのはまずかったと思う。

落ち着いた今なら、あんたにはそれが良う分かるはずや。

まあ、これはワシのアドバイスにすぎんから、どうされるか、どう考えられるかは、あんたの判断に任せるしかないがな。


その回答を送って1ヶ月くらい経った頃、そのゴローからメールが届けられた。


ゲンさん、ハカセさん、返信が遅くなってすみません。

あれから、ゲンさんに教えてもらった通り警察署に相談に行きました。

すると、その翌日から、嘘のように例の配達員さんのクラクションの音が全然しなくなりました。

警察から販売店に注意がいったのでしょうか。もし、そうならその効果に驚きです。

それでも僕は心配性ですので安心することができなくて、暫く様子を見ていました。

それでお礼が遅くなったのですが、もう大丈夫でしょうか。

もし、大丈夫でしたら、その販売店さんと僕のことがわからないようにして公開してもらってかまいません。

いろいろありがとうございました。また何かありましたら相談させてください。


と。

常識的に1ヶ月間、それがないということは、もうないと考えてええやろうと思う。

『警察から販売店に注意がいったのでしょうか』というのは、その可能性が高いと見る。

回答では、『一般的に警察という所は、厄介事を避ける体質がある』とは言うたが、それはそれぞれの警察署、またその担当官次第でもかなり違う。

ワシの知る限り『厄介事を避ける体質』の警察署の方が多いように思うが、中にはそうでもない警察署もある。

市民の立場に立って相手に話す、注意することがある。特に警察署の『市民安全課』の担当官にその傾向が強い。

また、新聞販売店の方でも、ゴローのような比較的若い人間から言われるのと、警察から注意されるのとでは、その対応が全然違うということも珍しいことやない。

ゴローには強気に言えても、警察には、なるべく逆らわずにおこうと考えたと。

それが、今回のような結果になった可能性が高いと思われる。

他にも何か別の理由があるのかも知れんが、いずれにしても、1ヶ月間、何もなければ、今後も何もないはずやと思う。

したがって、『もし、大丈夫でしたら、その販売店さんと僕のことがわからないようにして公開してもらってかまいません』ということなので、このメルマガで公開させて頂くことにしたわけや。

苦情や文句を言うのを止める必要はないが、言うのなら、やはりそれなりに相手の立場を考えてからの方が、結果として効果も高く、丸く収まる可能性が高いと思う。

とはいえ、世の中には気に入らんことに対して後先など考えず、すぐにそういう文句を言う人の方が多いがな。

何を隠そう、ワシもその一人やし、気の短いハカセなども、ほぼ瞬間湯沸かし器と同じで怒鳴り散らす人間や。

それで手痛い失敗をした経験は、今までの人生には数知れずあったさかいな。

つまり、今回は、少し説教めいて聞こえたかも知れんが、多分にワシら自身、自戒の念を込めて話したことなわけや。

「短気は損気」という言葉どおりやと。後先考えずに文句を言うて得することなど何もないと。

お互い心したいもんやと思う。



参考ページ

注1.新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A


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