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第15回 ゲンさんの新聞業界裏話
発行日 2008.9.19
■拡張員は雨嫌い?
「雨の日には仕事にならん」という思い込みが、訪問営業の世界にはある。
特に拡張員の世界にそれが強い。
「拡張員殺すにゃ刃物はいらぬ。雨の三日も降りゃ十分や」という笑えんような業界の格言もあるくらいやさかいな。
実際、多くの拡張団では、その程度にもよるが、雨が降ると休日を振り替えるということがままある。
雨の日は全体的に契約の上がりが悪いという事実があるということでな。
この拡張というのは精神的な部分の影響が大きな仕事や。
そういう諸々の条件が重なることで「嫌やなぁ」と考えながら廻っていても、意欲が湧くはずがないから、どうしても契約が上がりにくくなる。
それで実際にも契約を上がらんとなれば、よけいに雨の日はあかんもんやと思い込むわけや。
住宅地の場合、門扉に鍵をかけている家も多く、晴れの日ならインターフォンを押せば、門扉のところまで出向いて話を聞いて貰えることがあるが、雨の日
やとそれは望みにくい。
たいていは、インターフォン越しに断られて終いや。これをインターフォン・キック、ドアフォン・キックという。
それが多い。
地域差や時間帯にもよるが、平日の在宅率というのは50%〜60%というのが一般的やと思う。
晴れの日の場合なら、洗濯物などから在宅の有無やその家の事情などもある程度読み取れるのやが、雨やとその洗濯物がないから、それが分かりにくく軒並み叩かざるを得んということになり効率が悪くなる。
また、客が庭や玄関口付近に出ているということも少ないから、気軽に声をかけるチャンスもない。
さらに、バイクや自転車を使う拡張員には雨の日は辛いということになる。
その場合は歩くしかないわけやが、それやと行動範囲が限られ、時間的なロスが大きいさかいな。
洗剤などのかさばる景品主体の販売店の場合は一度に持てる量も知れてるから、その意味でのハンディもある。
しかし、それら以上に大きな要素は、そういう思い込みによってマイナス思考に陥ることやと思う。
通称、トラと呼ばれとる男がそうやった。今年で45歳になる、経験10年のベテラン拡張員や。
トラは顔に一滴でも雨が降れば仕事をせんというほど、徹底した雨嫌いの男やった。
もちろん、そうなるにはそうなるだけの理由があったんやけどな。
話は、そのトラがまだ駆け出しの頃の10年前に遡(さかのぼ)る。
その日は、ちょうど今時分のように台風の接近による雨が朝から降り続いていた。
「今日は休みやな」
事務所内でトラの隣の席に座っている「引き継ぎ責任者」でもあるベテランのゴンドウが、そう呟く。
「引き継ぎ責任者」というのは派遣される販売店に班長以上の人間がいてない場合は、そのグループのリーダーになる人間のことや。
「でも、一昨日(おとつい)も雨で休みましたやろ。大丈夫なんでっか」
トラは、今日でまだ3日めやが、今日も休みやと2日仕事をしていないということになる。
唯一、仕事をした昨日も夕方の5時頃から雨で、団全体としてもほとんど仕事らしい仕事にはなっとらんという。
トラが配属されたチームでもそれは例外やなく、5人で2本しか契約が上がっていない。
もっとも、ほとんどの人間が、雨を理由に仕事をしていないのやから無理もないのやがな。
トラも坊主(契約ゼロ)やった。
休みでも日当が支払われるというのなら、それでもええが、拡張員は契約を上げな一銭にもならん仕組みになっている。
トラもご多分に漏れず、この世界に飛ぶ込む際には無一文に近い状態やった。
仕事をしてカードを上げれば日銭が稼げると聞いていたから何とかなると思うてたけど、このままずるずる休みばっかりやと、金にならず、メシも食えんようになる。
トラの「大丈夫でっか」の言葉の裏にはそれがあった。
「まあ、この仕事には、こういうこともあるわな」
トラのその思いを知ってか知らずか、ベテランのゴンドウは達観気味にそう言う。
朝礼が始まった。
朝礼と言うても、拡張団のそれは午前11時頃というのが一般的やから、世間の感覚からするとそう呼ぶには遅すぎるがな。
ただ、団でのその時間帯での挨拶は「おはようございます」と、自然に交わされとるから、それに異を唱える者は誰もおらん。
もっと言えば、その後、予定の新聞販売店に入店するのは、たいてい昼すぎになるのやが、そこでも普通に「おはようございます」とそこの店員とも言い合うとる。
そういう世界や。
「今日は朝から雨やが、どうする?」
団のナンバー2である議事進行役の部長が皆にそう聞く。
この団では、雨の日に休みにするかどうかは、団員の多数決で決めるということにしている。
もちろん、休みにするというても正規の休日と振り替えるだけのことやけどな。
どんなことがあろうと、団にとって月4日の休日に揺らぎはない。
雨の日は成績が悪いからという理由だけで、団が勝手に休みにしたら団員からは必ずクレームが出る。不満もくすぶる。
また、ノルマが達成されんかった場合は、団がそうしたからやと言い訳をする者が出るというのもある。
それもあり、表向きは団員に決めさせるという形にしとるわけや。
裏では、班長や引き継ぎ責任者らに事前に電話などで打診していて、ほぼ団主導で休みと決めとる場合が多いんやがな。
雨の日は極力、晴れの日と休日を振り替えさせるというのが、この団の基本的な姿勢でもあるから、よけいそうなる。
その引き継ぎ責任者のひとり、ゴンドウが「今日は休みやな」と言うたのは、裏でそう決まっていたからということになる。
もちろん、入団3日めのトラにそれが分かるはずもなかったから、えらく民主的なやり方をするもんやなと、このときはそう感心していた。
「この雨は台風の影響によるものやから、きつくなっても止むことはないから休みでいいと思います」と、ハヤシという班長が挙手して、まずそう発言する。
「異議なし」と別の班長連中が続く。
「ゴンドウさん、休みやと前借りなんかはできるんですか?」
トラは、小声でそう聞いた。
入団時、前借り制度があるというのは聞いていた。
基本的には、前日、上げた契約報酬の半分が「定期」という名の前借りができる限度額というシステムがある。
たいていの拡張員は、その前借りをしていた。
今日、仕事ができんと明日はその前借りができんわけやからトラにとってはメシも食えんということを意味する。
「ああ、一応、全員1000円の定期はできる」
「1000円だけですか……」
それが1日のメシ代ということになる。
冗談やないで!! トラは心の中でそう呟いた。
次々と他の人間も「異議なし」という意思表示の挙手をしていた。
「大体、休みが希望のようやな。ここらでケツ(決)を取るか」
「あのー……」
トラが恐る恐る手を上げた。
「何や?」
「僕は、まだ3日めなんですが、どうしても1日でも早く契約を上げたいんで、今日は仕事したいんですけど……」
「そうか、それはなかなかええ心がけの新人やな。他に希望者はおるか」
その部長の一言で、団内は静かになった。誰も答えない。
「そうか、他に誰もおらんのか。君は名前は?」
「ババ、トラノスケです」
「ババ君か。君のせっかくのやる気を無駄にするわけにはいかんから、仕事はして貰うてもええが、一応、今日は皆の意見で団としての休みにするさかい、君の休みの振り替えはできんが、それでもええか?」
「ええ……」
金のないトラに休み云々は関係ない。少しでも金になる可能性があるのなら仕事をする。それしか考えてなかった。
「そうか、分かった。ゴンドウ君、彼の入店先を手配してくれ」
「……分かりました」
そう答えたゴンドウは明らかに不満そうな返事やった。
そして、いらんことを言いやがってという風にトラを睨みつけていた。
今日は、暗黙の了解で休みと決まっていた。
それに誰も異を唱えることはないはずやった。少なくとも今まではそうやった。
それを、このトラは自分に何の相談もなしに勝手に発言して仕事するとぬかした。
自分だけで勝手に仕事するのは構わん。好きにすればええ。
しかし、そのために休みを返上させられ付き合わされるのは、ええ迷惑や。
ゴンドウはそう考えた。
この団では、入店先には班長か、もしくは引き継ぎ責任者が同行する決まりになっていた。
この拡張団というのは典型的なピンハネ業界でもある。
拡張員が貰える拡張報酬と、販売店が団に支払うそれとは違うのが当たり前の世界や。団は極力、平の団員にはその内容を隠したがる。
班長や引き継ぎ責任者を決めとるのはそれがある。
ちなみに、引き継ぎと呼ばれる契約の確定作業は、その販売店の責任者と一対一ですることになっていた。
平団員がその場に同席することは許されていない。
過去に同席した団員が、その拡張報酬料をバラしていたことがあったさかいな。
団はそれを嫌がる。せやから、平団員だけで入店させることはまずない。
トラは、ゴンドウと行動を共にしているから、その責任を押しつけられたわけや。お前が一緒に行けと。
ゴンドウにとっては、それが面白くない。
休みのアテが外れたさかいな。
本来の日程どおりなら、その入店先に困ることはないが、今日は雨で休みになるのは、ほぼ暗黙の了解事項やったから、その入店先の各店には「休み」というのは先刻通知済みなわけや。
それを急遽、また「行きまっせ」と言われても先方も困ることになるから、なかなか、その受け入れ先が見つけにくい。
ゴンドウは何度か電話を入れて、どうやら入店を引き受ける所と交渉ができたらしい。
「それでは昼一番に行くんで、よろしく」と言ってゴンドウが電話を切った。
そのとき、その口元がニヤリと笑っていたのを、トラは見ていた。
その頃のトラは、この業界のことをほとんど知らんかったから、単に入店先が見つかって喜んでいたという風にしか考えんかった。
それが、その後、トラに一滴の雨が降っても仕事なんかするものかとまで考えさせる要因になろうとは知る由もなかったわけや。
その販売店は、事務所から比較的近場の車で20分くらいの所にあった。
そこに着くと、そこの店長から、契約書(カード)の綴り一冊、拡材としてのビール券と洗剤、エリア地図などの俗に言う拡張七つ道具を受け取る。
ただ、晴れの日ならバイクや自転車を借りられるが、風雨が強いということでそれは無理ということになった。
ゴンドウも、ここに連れて来るのと、終了時に迎えに来る以外は帰ると言う。
したがって、トラは歩きでということになる。
終了時間は雨も降っているので、午後7時までということになった。
いつもは、午後8時までするのが普通や。
「ここから、適当に店に向かって歩け」とゴンドウが言う。
車から降ろされたのは何のへんてつもなさそうな普通の住宅街やった。
地図があるから、それを見たら分かるはずやという。トラも分かったと答える。
このやり方は一見、乱暴なようやが、それなりに道理に適った方法ではある。
新人の場合、初めて入店するということが多い。当然、その地域には慣れておらんから迷いやすい。
出発点を販売店にすると、どの方向に進んでいるのかが分からず、特にそうなるケースが多い。
しかし、逆に降りた時点から販売店に目指すように行けば迷うことは少ない。
そう説明されて、トラも納得した。
トラは、早速、仕事を始めた。とはいえ、台風が近づいているというだけあって、雨だけやなく風も強くなっていた。
必死に傘を押さえつつ、インターフォンを押すが、ほとんど反応がない。
10軒め、やっとインターフォンから「どちら様ですか」と声がしたのに喜び「Y新聞……」と言い始めた途端、「間に合ってます」と一蹴された。
それでもトラは、ここであきらめたらメシが食えんと必死で叩き続けるが、いかんせん反応が悪すぎる。
これが雨の日やからなのかと思うた。道理で皆、休みたがるはずやと。
しかし、例えそうであっても一本でも契約を上げたいという気持ちに変わりなく必死で頑張るのやが、その気持ちは空回りするだけで肝心の客と会えることすらなかった。
そうこうするうちに雨風がさらに強くなる。傘を持っているのがやっとの状態になった。
それでもと、一軒の家のインターフォンを押そうと片方の手を離した途端、傘が強風に煽られボロボロになって使い物にならんようになった。
着ている服は当然のように雨風に叩かれ、びしょ濡れになる。
とても仕事のできるような状況やなかった。
トラは、何とかコンビニを見つけ、そこの公衆電話からゴンドウに電話を入れた。
「ゴンドウさん、やはりこの雨風では無理ですわ。止めますんで迎えに来て貰えませんか」
「何を眠たいこと言うてんねん。まだ、1時間ほどやろ。一旦、やると言うた以上は時間までやれ。せやないと、その店にも団のメンツが立たんやないけ!!」と怒鳴られた。
「でも、傘が……」と、傘が壊れたことを訴える。
「ええこと、教えたる。雨の日は、マンションや団地を叩くんや。そこから、それらしい建物が見えるやろ」
「ええ、公営団地のようなものが何棟か見えます」
「そこは大きな団地で、1日中廻っても終わらんくらい広いさかい、そこへ行って叩いとけ」
「分かりました」
トラは、壊れた傘に頭を突っ込みながらも、何とかその団地まで辿り着いた。
悠に30棟以上はありそうなマンモス団地や。1000戸近くはありそうに思えた。
そこは、公団住宅にありがちな5階建ての二戸一タイプやった。
ここなら、風雨を気にせず叩けるというのも頷ける。
しかし、結果としてここでも空振りに終わった。
まず、その入居率がおそろしく悪いということがあった。一棟で30戸ほどあるのやが、その空き室が7、8戸もある。
午後2時すぎから始めたということもあったのか在宅率も極端に悪かった。
インターフォンを押しても8割が無反応や。
残り2割出てきた中の半数はブラジル系の日本語の分からんような外人やった。
この販売店では、日本語の会話や読み書きのできん外国人の契約を取るのは認められとらんかったから除外するしかない。
たまにしか出て来ん日本人からも相手にされず、まともに話すことすらできんかった。
中には「こんな台風の中で勧誘するのは非常識やないの」と怒り出す婦人までおる始末やった。
そういう状態やから廻るのも早い。
その早さが災いした。
二戸一の階段の上り下りというのは想像以上に疲れる。結局、10棟も行かんうちに音を上げた。
足が動かんようになったからや。
加えて、台風による風雨も激しさを増してくる。
「やはりだめです。これ以上は無理です」
トラは、そうゴンドウに電話で泣きを入れた。
まだ午後5時前やった。
「そうか。そこまで頑張ったんやったら仕方ないな。分かった。店にはオレの方から連絡を入れとくから心配するな」と、ゴンドウがそうやさしく言う。
トラは、てっきり、また怒鳴られると思うてたから、意外な返答に少しばかり驚いた。
但し、その後「電車で帰って来い」と続いたがな。
トラの方もバツが悪かったというのと、その場所が比較的、寮であるアパートに近く、電車代も安いうこともあり「分かりました」と、それには逆らわず従った。
しかし、ずぶ濡れの身体で電車に乗って足を引きずりながらの帰宅の途中、あまりの情けなさに「二度と雨の日には仕事はせん」と、トラは密かに誓った。
それから数ヶ月ほど経って、トラはゴンドウに嵌められたと知ったが、そのときにはそのゴンドウの立場も理解できるまでになっていたから、別段、恨みに思うことはなかった。
トラが急遽、入店することになった販売店は、団でも一、二と言われるくらいカード(契約)の上がらんことで有名な所やった。
その理由の多くが、その販売店自体に人気がないというのと、ある地方紙が圧倒的シェアを有している地域やからやというのもあった。
中でも、最初に降ろされた住宅街とあの公団は、その典型と言うてもええほどの最悪の場所とされていた。
どんなベテランでも敬遠するほどやという。団でその場所に拡張に行く者は皆無に近い。
しかも、風雨の強い日、在宅率の低い昼過ぎに廻っていたんでは条件が悪すぎる。
始めて3日めの駆け出しに、そんな状況のところで契約が上げられるわけがない。
雨の日の休日変更は、団としての実質的な決定事項や。表向きは民主的に決めとるという体裁を採っているにすぎん。
それに逆らい契約を上げられたんでは、次の雨の日には他の人間も仕事をしたがるようになるかも知れん。
それでは団の思惑が崩れるおそれがある。
それを阻止するためにも、トラにはつぶれて貰わなあかんかったわけや。
ゴンドウが、あのときトラを嵌めた背景にはそれがあった。
今のトラは、その引き継ぎ責任者をすることもあるから、そのときのゴンドウの立場が良く分かる。
もっとも、それはたまの雨の日の話で、梅雨時とか秋口などの長期間に渡って雨が続くようなときは、そうも言うてられんがな。
拡張員のような営業職は、基本的には成績を上げな金にはならんシステムになっとるのが普通やから休みになったからというて喜ぶ者は少ない。
また、それで喜ぶようでは救いはない。
拡張団の方でも契約が上げんことには団の存続にも関わるから、振り替え休日分を越える雨の日には、拡張員たちの尻を叩いて送り出すことも多い。
本当は、雨の日でもやり方次第では契約を上げる方法はいくらでもあるんやが、知っているようで意外に実行されていないことが多い。
たいていの拡張員は、経験的に雨の日は契約の上がりが悪いと思い込んどるから、よけいそうなる。
ここで、その雨の日の拡張の参考になりそうなことを言うとく。
雨の日の新聞営業法
1.集合住宅を狙う。
これは、ほとんどの拡張員が実戦しとることでもある。言えば雨の日の定番やな。
理由は、雨に濡れにくいという単純な点で、そういう集合住宅に人気が集中する。
同じ集合住宅でも外廊下で雨に濡れやすい所は敬遠される。
もっとも、もともと雨の日やなくてもアパート、マンションなどの集合住宅を専門に勧誘する拡張員は多いがな。
一般的に飛び込み営業は訪問件数に比例して契約数が上がる場合が多い。
そういう意味では、集合住宅やと短時間でその件数を稼ぎやすいから有利やと考える拡張員が多いわけや。
但し、この拡張員が集中する集合住宅というのは、訪問されることが多い分、拡張員ずれしとるケースが多く簡単な客は少ないがな。
それについて話すとキリがないから、ここではその言及は控える。
サイトに『ゲンさんの勧誘・拡張営業講座』(注1.巻末参考ページ参照)というのがあるから、それを参考にして貰えれば分かると思う。
2.データ拡張に徹する。
これも、雨の日には多い手法や。
その販売店で過去読者のデータを貰いそれを重点的に廻る。
または、その拡張団および拡張員個人が持っている情報を主体にするのでもええ。
日頃から懇意にしていて、そういう雨の日用にいつでも契約が貰えるという顧客を確保しとる拡張員もおる。
つまり、困ったときのアテを作っておくということやな。
3.商店を狙う。
商店と一口に言うても八百屋、肉屋、果物屋、酒屋、服屋、お菓子屋、電気屋、本屋、飲食店などいろいろある。
そのほとんどの商店で新聞は購読しとる所が多い。店によれば数社の新聞を購読しとることも珍しくない。
言えば、新聞販売店も同じく商店ということで、つきあい購読をするというケースが多いからや。
その商店街の中で店を構えとる販売店の場合は特にそれが言える。
せやから、すでに顧客というケースがあるので、すべての商店を狙うということはできんが、入店する販売店からその地域の商店などの情報を聞いて、狙えると判断したらアタックしてみるのも手や。
メリットは、やはり雨でも話ができるということにある。
というより、雨の日は普段より客足が悪いのが普通やから、晴れの日よりも落ち着いて話せることが多い。
中でも、喫茶店というのが拡張員の人気ナンバーワンや。
たいていの古株の拡張員なら、喫茶店の一軒や二軒は確保しとるはずや。
商店全般に言えることやけど、そういう所とつきあうコツは、ギブ・アンド・テイクに徹するということや。
相手の店主もこちらを客として値踏みする。
喫茶店に新聞は必要とされとるものやから、どうせ取るのなら、客として来る常連の勧誘員からというのが商売人の発想でもある。
せやから、自分の勧誘する新聞が入ってない喫茶店などがあれば、あしげく通うのもええ。
どうせ、雨の日でサボるのなら、そういう所にする方が気が利いとるわな。
こういう商店関係に向くタイプとしたら、やはり、以前、何かの商売をしてた経験のある人間の方が有利やろうと思う。
商売人は商売人を知るということがあるさかいにな。
むろん、その他の人間がトライしたらあかんということでもない。
営業の練習を兼ねてということなら、商売のプロと交渉するわけやから、それなりに得ることも多いと思うしな。
4.会社、企業を狙う。
会社関係も一口では説明できんほどいろいろある。
業種も多く、その規模も零細企業から大企業まで様々や。
たいていの会社では新聞を購読しとる所がほとんどやから、売り込む新聞を購読してなかったら勧誘のターゲットになる。
これらも、その販売店から購読の有無についての情報を得れば分かりやすいは
ずや。
ただ、会社関係は一般と同じようなやり方は通用せん場合が多いというのを知っておいた方がええ。
個人的な欲を刺激してもあまり意味がない。
もっとも、個人経営で小さな会社のオーナーと交渉するのなら、あるいは「サービスしまっせ」というトークも通用するかも知れんがな。
この会社関係も訪問する分には雨はあまり関係ないから、そういうときを狙ってというのは合理的ではある。
ただ、その新聞購読を決めることのできる決定権者がいつもいとるとは限らんし、その決定権者を見抜く技術も必要になる。
会社関係も商店と同じで、訪問は比較的簡単にできる。
話もそれほど嫌がらず聞く所の方が多い。成約出来るかどうかは別にしてな。
会社訪問のもう一つの利点は、新聞勧誘だけやなしに、チラシの勧誘からでも切り込めるという点や。
ただ、それには販売所との事前の打ち合わせが必要になる。
チラシ代を拡材代わりに使うか、チラシを受ける代わりに新聞をサービスするかやが、それは、相手の出方やその会社の規模によっても違うから臨機応変に対処せなあかん。
会社関係に取り入るのは、信用とコネが必要になる。
よほどの有力者の紹介以外はあしげく通うことが、結果的には早道になる。
ただ、そこが客になるかどうかの見極めができなあかんがな。
慣れてない者にとっては難しいかも知れんが、雨の日にチャレンジするのなら、そうする値打ちはあると思う。
5.その他の狙い目。
前述した以外でも、官公庁、学校、郵便局、銀行、病院、コンビニ、ホテル、旅館など特殊な組織、企業体というのもある。
これらは、どれを取っても、一部だけということは少ないないから成約できれば成果は大きい。
但し、その業種や地域により、いろいろで一概には言えんが、信用とコネがないと厳しいのは一般の会社以上やろうと思う。
ただ、これらも雨の日でも関係なく訪問できるという利点の大きい訪問先ではある。
これが、雨の日用の一般的な拡張のやり方や。
ただ、今回の話のトラに代表されるように、雨の日やからと嫌がるようでは、どれだけそのやり方を熟知していようと上手くいくことは少ないとは思うがな。
営業でもっとも重要なことは、その意欲のあるなしやさかいな。
物は考えようということがある。
雨の日を嫌がる拡張員は確かに多い。まともに仕事をせん者もいとる。
つまり、裏返せば、雨の日は競争相手が少なくチャンスやと捉えることもできるわけや。
何事も人がやらん間にする。
これが人より秀でるための最大の秘訣やと思うのがな。
参考ページ
注1.ゲンさんの勧誘・拡張営業講座
http://www3.ocn.ne.jp/~siratuka/newpage9.html
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