メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー

第153回 ゲンさんの新聞業界裏話

発行日 2011.5.13


■日本復興への提言 その2 原子力発電廃止の流れを止めるな


5月6日の夜。

意外なニュースが飛び込んできた。

その記事や。


浜岡原発、全面停止へ…首相が中部電力に要請
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110506-00000711-yom-pol より引用


 菅首相は6日夜、首相官邸で記者会見し、中部電力浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)のすべての原子炉の運転停止を、海江田経済産業相を通じて中部電力に要請したと発表した。

 理由として、静岡県を中心とする東海地震の発生確率が高いとされる中、防波壁の設置など津波対策強化の必要性を指摘した上で、「国民の安全と安心を考えた。

 重大な事故が発生した場合の日本社会全体の甚大な影響もあわせて考慮した」と説明した。中部電力も首相の要請を受け入れる方向だ。

 浜岡原発は、4、5号機が稼働中。点検のため運転を停止中の3号機は、東日本大震災の影響で運転再開を延期していた。1、2号機は運転を終了している。

 経済産業省原子力安全・保安院は6日、浜岡原発の防波壁など津波対策の実現には2〜3年かかるとの見通しを示した。

 首相は、浜岡原発が東海地震の震源域内にあることを指摘した上で、「文部科学省の地震調査研究推進本部の評価によれば、30年以内にマグニチュード8程度の想定東海地震が発生する可能性は87%と極めて切迫している。防潮堤の設置など、中長期の対策を確実に実施することが必要だ」と強調した。

 中部電力への停止要請については「指示、命令という形は現在の法律制度では決まっていない。中電に理解してもらえるよう説得していきたい」と述べた。


この要請が効いて、一時は結論を先送りにした中部電力も結局、5月9日、正式に浜岡原発を全面停止すると発表した。

過去、このメルマガ誌上では、現首相への批判めいた記事が多かったが、今回の要請については素直に、正しい英断やったと認めたい。

ワシらは、ええと思う行為は評価するが、そうでないと感じたものについては評価しない。

その人間に対する好き嫌いには関係なくな。

同じ人間のすることであっても、「ええ行いはええ」、「悪い行いは悪い」と言うてるつもりや。

今回の要請、および決定については賛否もいろいろあるというのは承知している。

ワシらとは違い、歓迎できんという意見もある。

その反対意見には「夏の電力不足をどうするのか」、「それにより経済活動が停滞する」といったものが多い。

その考えにも一理あるやろうが、浜岡原発を全面停止することで命の危険、地域住民のリスクが少しでも軽減されるのなら、それに勝るものはないと思う。

人にとって命以上に守るべき大切なものは何もないさかいな。

そこに命の危険があると分かっているものについては、それを回避することを、まず優先的に考えなあかん。

安全が確保、担保されてこその「電力」であり、「経済活動」やと思う。

少なくとも、現在進行中の福島第一原発事故の二の舞を踏むことはなくなるはずや。

原発停止による電力不足については、『第150回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■日本復興への提言 その1 原子力発電の廃止とその代替案について』(注1.巻末参考ページ参照)で言うたように、いくらでも実行可能な代替案がある。

まず「節電」。これについては、東日本では否応なしに取り組まざるを得ない状況にあり、すでに実行されつつある。

また、その他の地域でも、東日本に倣って日本全体がその節電の方向にあるさかい、それほど抵抗なく受け入れられるものと思う。

何より人は必要に迫られれば、必ずそのための工夫をしようとするもんやさかいな。

人類の歴史は、そうして作られてきたし、今後もそうなると信じる。

最近、節電グッズなるものが盛んに売り出されていて、そのどれもが人気を博しているのも、その一つやと思う。

代替電力についても、太陽光発電などの自然エネルギーが大きく注目されている。

大きな災害があれば停電はつきものや。当たり前やが、停電となれば誰でも困る。

しかし、個人で家に太陽光発電システムを取り付ければ、その停電が回避できる。

今はまだ、太陽光発電システムが工事費込みで200万円から300万円、蓄電池一基100万円以上もするさかい手軽に誰でも設置するというわけにはいかんが、それが一般に広まって需要が増えればもっと安くなるのは確実やと思う。

もっとも、今でもそれらには国の補助金制度があるさかい、無理をすれば買えんことはないと考え設置する人が急増しとるということやがな。

今回の震災で、実際に計画停電といった電力不足の生活を経験した、また見せつけられ、それに危機感を抱いた人たちが背に腹は変えられんということで、こぞって買い求めとるという。

それが結果的に日本の電力需要を引き下げることになり、技術進歩の原動力にもなると思う。

今までは、太陽光発電などへのクリーンエネルギーへの転換とは言うても、原子力発電があるがために遅々として、その技術が進むことがなかった。

それを考えれば、今回の首相の英断は大きな転機になると確信する。

しかも、その太陽光発電で作られた余剰電力を売電するすることもできるというから、経済的な負担の軽減プラス、他の人の役に立つという気分にもなれるさかい一石二鳥や。

もちろん、災害時に停電になっても困らないという安心感を持てることが一番大きいわけやがな。

太陽光発電は、天候による影響を受けやすいため、晴れた日の昼間に発電された電気を畜電池で蓄えておえば、夜間や雨、曇りの日でも電気を使うことができるということで、その家庭用蓄電池の販売と開発も急ピッチで進められとる。

近い将来、電力は個人で作り出すものという時代が必ずやってくると確信する。

社会全体が太陽光発電を主体とした自家発電システムに移行すると。

そうなれば、原子力発電はおろか火力発電ですら必要なくなり、環境に負荷のかかる施設や設備もなくなる可能性がある。

とは言え、それにはまだ時間がかかるやろうから、それまでの繋ぎとして原子力発電に替わる電力確保が急務ではあるがな。

それには、『第150回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■日本復興への提言 その1 原子力発電の廃止とその代替案について』(注1.巻末参考ページ参照)で地熱発電やマイクロ水力発電といった日本に無尽蔵にある地熱や河川の水を利用するといったものが最も有効やと説いた。

また、経済活動において企業も与えられた電力だけに頼るのではなく、必要な電力は自らが自家発電システムを構築して作り出す方法を考えることがベターやと。

実際、これを機に、浜岡原発の停止だけやなく、他の原発停止を叫ばれるようになり、点検などで休止した原発の再稼働も難しくなるのは、ほぼ確実な情勢にある。

せやから、製造業を中心とした多くの企業は好むと好まざるとに関わらず、その自家発電システムを構築するしか生き残る方法はなくなるやろうと思う。

実際、三菱化学では、新潟県の工場にある自家発電装置を再開させ、東北電力に15万世帯分の電力を供給することまで決定したということや。

他にも、鉄鋼大手の「新日鉄」や「JFEスチール」なども、自家発電の設備などから電力会社に電力を供給したいとして対応を急いでいるという。

これらの企業は自家発電により電力を賄うという以外に、それにより社会貢献をしようとしとるわけや。

日本には社会貢献、環境貢献を謳った企業が多いから、それらの企業にできて、その他の企業にできんということはないはずや。

また、それをせんと、社会貢献、環境貢献を謳う、アピールすることが憚(はばか)られるようになる。

事実、現在その動きは加速度的に進んでいるというさかいな。

日本から原発をなくす最も確実な方法は、その電力に依存しなくても済む発電システムを構築することやと思う。

そして、原子力発電システムを時代遅れの過去の遺物にしてしまうことやと。

ワシらを含め、そうする必要性に気づくのが福島第一原発の事故が起きた後やというのは情けない気もするが、仕方ない。

人は自らに痛みを感じない限り、それが危険なものやと認識することができんさかいな。

例え頭では危険があると分かっていても、何事もなければ、それに流されてしまう。それで得られる恩恵の方を優先すると。

ここで、改めて原子力発電の問題点について、少しばかり掘り下げてみたいと思う。


原子力発電の問題点について


1.重大事故が発生した際の被害、ダメージが大きすぎる。

これについては、目の前に福島第一原発の例があるさかい、その重大性、危険性は誰もが知るところやと思う。

現在、事故発生から二ヶ月になるが、未だに先の見えない状態が続いとる。

それには事故により高レベルの放射線や放射性物質が外部に漏洩することで、人間が接近して作業すること自体が困難になり、修復が著しく難しい状況に陥っとるからやと思う。

加えて、昨日、5月12日の夜になって初めて、東京電力福島第一原子力発電所1号機で、原子炉内の核燃料の大半が溶融し、高熱で圧力容器底部が損傷していたということを認めた。

俗に「メルトダウン」と呼ばれとる状態で、原発事故では最悪な状況になったことを意味する。

今回の一連の事故経過を見る限り、東電、政府の発表は昔の戦時下の軍部、大本営発表のように嘘で塗り固められていると言うしかない。

嘘というのが言いすぎなら、正しい状況を知らせていない、隠蔽していたと言い直してもええ。

いずれにしても、そんな最悪な状態になっとるようでは、本格的な収束までには、まだまだほど遠い。

今後も相当の時間を要し、その地域に住む人たちが、その場所にいつ戻れて、もとの生活ができるのかという問いには、誰にも答えられない、分からんというのが実情やと思う。

ヘタをするとチェルノブイリ原発事故のように、発生から25年経った今でも、その周辺30キロメートルの地域での居住が禁止されとるのと同じ状態になることも十分考えられる。

加えて、チェルノブイリでは原発から北東へ向かって約350キロメートルの範囲内、ホットスポットと呼ばれる局地的な高濃度の放射能汚染地域が約100箇所も点在し、そこでの農業や畜産業が全面的に禁止されとるということや。

その当時の広大な国土を有するソビエト連邦(現ロシア)やったから、それでもまだ何とか救われとるが、狭い日本でそうなれば救いがなくなる。

今回のようにメルトダウンを引き起こしているというのは、そうなる危惧さえあるわけや。

その事実を今までひた隠しに隠していた。

しかし、結局はその事実が知れたということで、このニュースは世界中に発信されるのは必至やろうから、またさらに世界の日本を見る目が厳しくなるものと思う。

現在の福島第一原発の事故レベルは、そのチェルノブイリ原発事故並のレベル7やと言うことでもあるさかい、それと同じことにならんという保障は今のところ何もない。

もっとも、チェルノブイリ原発事故と今回の福島第一原発の事故には、共通点が少ないさかい、一概にそうとばかりは言えんかも知れんが、今後の収束状況次第では、その懸念もあるということに変わりはないと考える。

周辺の環境被害と風評被害も深刻の一途を辿っとる。地域のイメージも地に落ちたと言うてもええ。

残念ながら、今のところそれを回復する手立てが何もないのが実情やと思う。

ワシは、このメルマガ誌上で事ある毎に、「人が介在するものには必ずミスや事故は起きるもので、それを避けることは不可能や」と口酸っぱく言い続けてきたが、それに一切の例外はないと信じとる。

というか、「絶対安全」やと言い続けてきた原発でこういった事故が起きたということは、図らずも人間の世界で「絶対安全」など存在しないと証明した形になったと言える。

事故は必ず起きるという前提、事実がある限り、収束困難な事故を引き起こす可能性のある原発は絶対に作ったらあかんということや。

今回のように事故が起きてから、いくらそれを悔やんでも遅すぎるがな。


2.放射性廃棄物処分の未解決問題。

「原発はトイレのない高級マンション」と揶揄(やゆ)されとるように、その原発から出る廃棄物の処理が、ほとんどできていないのが実情や。

また、今後、それのできる見通しも極端に低いと言わざるを得ん状況にある。

数億年から数十億年という気の遠くなるほどの長い半減期を持つ高濃度レベルの放射性廃棄物については、地下深くに埋める深地層処分しか方法がないとされとる。

もっとも、それにしたところで、そんな途方もない年月の内には、その地底、深地層が隆起して地表表面に出る、地下水などにその汚染物質が融け込むことも十分考えられるから、長期的に見れば何の解決にもならんわけやけどな。

単に後世にそのツケを回すだけのことにしかならん。

ホンマに罪作りとしか言いようがない。

しかし、その方法にしたところで、高濃度レベルの放射性物質の漏洩のリスクが伴うさかい、候補地に上がる地域住民の多くがその処分施設の建設に反対するのは必至で、今回の事故のこともあり、どんなにおいしい交付金を提示したとしても、おそらく今後日本国内にその候補地として名乗り出る自治体は、まずないやろうと思う。

現在、廃棄物処理をするのに近い、使用済み核燃料再処理工場が、青森県上北郡六ヶ所村弥栄平地区に建設されていて試運転中で、当初、2010年10月竣工予定やったが、相次ぐトラブルや事故により実に18回も延期され、現時点では2012年9月が竣工予定ということになっている。

もともと日本ではこの六ヶ所村での原発反対運動が最も激しいとされていた。実に1万人もの人が反対訴訟を起こしているという事実からも、それが伺われる。

今までは、国策で原発が推進されていたということもあり、訴訟自体はことごとく敗訴、控訴棄却というのが続いていた。

しかし、今回の東日本大震災の影響で、その六ヶ所村の使用済み核燃料再処理工場内でも外部電源が喪失して使用済み核燃料の貯蔵プールの水約600リットルが溢れていたことなどが報じられ、その設備の脆弱性が露呈したことで事態は一変すると見られている。

絶対とは言い切れんが、限りなく使用済み核燃料再処理工場の稼働が難しくなったと考えられている。

日本政府も、今後日本国内では「深地層処分」や「使用済み核燃料再処理」などもできんやろうと見越して外国にその場を求めようとしていたという事実も分かっている。

2007年にはタイとフィリピン両国と交渉中の自由貿易協定の中に、核および放射性廃棄物の輸出を促進する危険な条項が入っていると発覚したのが、そのええ例や。

その際、日本の担当者は、しきりに核廃棄物は安全に処理できる技術があるから心配ないと説いたが、「それなら、なぜ自分の国でそうしないんだ」とフィリピン側から切り返されたのは有名な話や。

最近では、アメリカと共同でモンゴルに核廃棄物を処理しようとしていたのが発覚して問題になりつつあるという。

アメリカのように広大な国土を持っていても核廃棄物を処理するのは容易やないということが、このことで証明された形になった。

「原発はトイレのない高級マンション」と揶揄されとるのは、そういうことやと思う。

ウンコの処理ができんようでは、早かれ遅かれ住むことすらできんようになるのは自明の理やわな。

この先、一体どうすんねんと思う。


3.原子力発電所の稼動中に放射線が発生する。

原子炉の運転に伴い中性子線やガンマ線が発生するため、発電施設で働く作業者が過度に被曝しないよう、遮蔽を考慮した設計にする、管理区域を設けるなど特別の対応をする必要があるとされとる。

実際、原子炉付近で作業する場合は一度に作業できる時間が決められている。

つまり、作業者は常に被爆する危険と隣り合わせにあるということや。

日本の施設で、普通に作業するのに、これほど危険な仕事は原子力発電所以外では考えられんと思う。

すべての作業は「安全第一」が当然やが、ここでは「どれくらい危険が避けられるのか」ということしか考えられてないわけや。

まずは、危険ありきが、そこにある。


4.日本の原子力発電所の大半は、地震、津波対策がほとんど考慮されていない。

原子力発電所の大半が廃熱を冷却する目的で海岸近くに設置されとるにも関わらず、まったくその地震、津波対策が取られていなかったということが、国民の多くに露呈した形になった。

今回、首相が停止要請をした浜岡原発が、その典型的な例で、しかもその設置場所が大地震が起きれば壊滅的な被害が予想される活断層の真上やったというお粗末さや。

今後30年間に東海沖で87パーセントもの高確率でマグニチュード8クラスの巨大地震が発生すると言われていることを考えれば、この決断は当然やと言える。

むしろ、今まで放置されてきたことの方が異常やったと。

例えて言えば、拳銃を頭に押し当てたロシアンルーレットのように、引き金を引き続けていて、たまたまそれに込められた弾が発射されずにいたという幸運が重なっていただけやと。

当たり前の決断が、英断と感じられるほどの事態になっていたのに気づいてなかったと。

そもそも日本の原子力発電所の設計自体、地震のさほどないアメリカの技術をそのまま導入しとるにすぎんものやったさかい、根本の部分で狂っていたわけや。

日本人なら、誰でも地震が多いということも津波があるということも知っとるはずやから、それを何も考えずに、そんな設備を設置したというのは愚の骨頂と言うしかない。

そのお粗末なことが現実に行われていたのが原発やと言える。

せやから、当然のように、他にも福島第一原発並の施設や浜岡原発に匹敵する危険な原発はいくらでもある。

しかも、それら中には老朽化しとるものが多いさかい、いつなんどき、地震以外の要因でも事故に発展しかねんという危惧を抱えとるわけや。


4.原発は発電量当りの単価が安いため、経済性が高いという嘘。

今まで、原発推進派は「原発の発電コストが一番安い」と言い続けてきて、それを根拠に原子力発電所を建設してきた。今後もその予定を組んでいる。

経済産業省のエネルギー白書2008年版のデータでは、発電単価は原発が1kWh当たりの発電費用4.8〜6.2円。水力が8.2〜13.3円。石油火力が10.0〜17.3円。太陽光が46円となっている。

これだけを見ると、圧倒的に原発が安上がりになると誰でも思う。

しかし、この試算データを疑問視する学者や知識人も多い。

この数値は、単に施設の建設費、燃料費といったものだけで計算されていて、今回のようなリスクは考慮されていないという。

福島第一原発事故の場合、30キロ圏内、および強制避難区域対象地域に住む人への保証金や賠償金、農業被害、漁業被害、その他の経済的な被害に対する支払い総額は、ある保険会社の試算によると3兆円を超えると言われている。

原発の開発費の数倍もの費用が掛かる計算や。

また今後事故が収束されるまでの出費、廃炉への過程などにかかる経費を考慮すると、さらに1兆円以上が必要になると予測されており、原発を新規に作る費用の5倍程度の経費が必要となるという。

また、通常であっても、50年後くらいに廃炉される場合の解体、廃炉に伴う多額の費用が必要になるが、それについてもこのコストには入っていないということや。

現在日本にある原発すべてを、直下型の大地震や大津波が襲っても事故が回避できるだけの施設に補強改造するためのコストは、現在の原発建設費の数倍かかると考えられている。

それについては、4月11日、関西電力の会長が記者会見で、「震度7強の直下型、30メートルを超える津波などに充分対応しうる改善を加えた場合、発電コストは、現在より数倍になる」と発表したことと符号する。

つまり、これらのコスト、諸経費をすべて計上すれば、原発の発電コストは、現在の十数倍程度に膨れ上がるということになる。

というか、もともとそれだけのリスクを計算せんことには成り立たん施設なわけやから、それが当然の発電コストになるわけや。

それを過小評価することにより、国民に原発は低コストやと偽ってきた。

さらに、その本来のコストの裏付けとなったデータも不確かなものやと言われている。

ある自民党の有力議員が、経済産業省に原発に関わる資料の提出を求めたところ、ほぼ黒塗りの書類しか出して来なかったという。

その理由が、「それは各電力会社の企業秘密」やから出せんという。

この事実だけでも、公表された数値自体が胡散臭く怪しいというのが、よく分かる。

本当に、原発が低コストやと言うのなら、そのデータくらいは堂々と公表できるはずやと思う。

それができん理由は一つ。それを知られるとその嘘がバレて具合が悪いからや。

それ以外には考えにくい。

つまり、国民を口先だけで、何のデータ、根拠も示さず「低コストだから、それを信じろ」と言い続けとるにすぎんわけや。

少なくともワシはそう思う。

ちなみに、太陽光の1kWh当たりの発電コストが46円になっているのは、発電そのものに掛かるランニングコストは圧倒的に安いが、問題は、施設費とその太陽光パネルなどの減価償却費が圧倒的に高いということで、コストが高めに設定されているという。

しかし、太陽光発電は、何も電力会社が一手に引き受けて発電せんでも、個人宅でも十分できる発電システムなわけや。

その個人宅に少々大目の助成金を出してでも設置を促進すれば、結果としてその設備を作るのを相当減らせることができ、その分コストも大幅に安く済むはずや。

しかも、現在のままやと、国民は電気代を半永久的に払い続けなあかんが、個人宅で太陽光発電をすれば、その心配もなくなる。

しかも売電によって、普通の一般家庭に取り付けられた太陽光発電でも、現在月1万円程度の利益が出とるという。

問題は、その初期費用が200〜300万円と高額なことやが、それさえクリアできれば、国にとっても個人にとっても万々歳の発電システムということになる。

ちょっと考えれば、誰にでもそのくらいのことは分かる。

もっとも、原発の利権に群がる輩や電力会社は、それでは困るというので、何としても太陽光発電は割高、コスト高になると印象づけたかった結果が、あのデータの公表になったのやないかと思うがな。


と、こんな具合やな。

本来なら、その悪いところだけやなく利点も挙げて説明するのが、ワシらのスタイルなんやが、コスト面がそうやったように、今まで利点とされていたものが、ことごとく欠点、もしくは思い違い、すり替えやったというのが分かったさかい、今回はそれは止めとく。

言えば、それらの欠点を暴いて批判に終始するだけにしかならんしな。

現在のように、世論が原発廃止に大きく傾いている状態で、そこまでする必要もないと思うしな。

それでも敢えて一つだけ言うとく。

原発は「発電時に地球温暖化の原因とされる二酸化炭素を排出しない」というのが、コスト安と並んで最大の売りということになっていたが、それは何も原発に限ったことやない。

単に火力発電と比べてマシやと言うにすぎんことや。

そもそも、「二酸化炭素を排出しない」という理由なら、何も原発やなくても、太陽光発電でも地熱発電でもマイクロ水力発電でもええわけや。

それらも二酸化炭素は一切出さんし、資源も無尽蔵にあり、枯渇の心配もまずない。

万が一の事故があっても、原発のように放射能で汚染される危険もない。

首相は、今のところ停止要請するのは浜岡原発だけに限ると言うとるが、これだけ原発廃止の機運が盛り上がってきた社会情勢では、他も止めざるを得んようになると考える。

少なくとも一旦停止した原子炉の再稼働はしにくくなるはずや。

もっとも、ここで原発を止めても、すでに作り出された処理不可能な大量の核廃棄物が残るさかい、問題解決とまではならんやろうが、これ以上の間違いを少なくすることはできる。

原発批判は簡単やが、ワシらも原発から作り出された電力の恩恵を少なからず受けた身である以上、その責任が皆無とは言えん。

批判すればするほど、その責任は我が身にも降りかかる。

それを承知で敢えて言う。

せめて、後世には、核廃棄物をなくすために今の人間が努力したという証しを少しでも残したいものやと。


追記 もっと情報公開をしてもらいたい

投稿者 H.Sさん 投稿日時 2011.5.16 AM 1:25


今回の原発事故について、もっと情報公開をしてもらいたいと思います。

例えば稼働中の原子炉の燃料棒の表明温度は、300度〜400度位です。

冷温停止にしても、数十度です。これが水から露出した場合、数分で2000度を超えます。

冷温停止状態にしても、原子炉を稼働させても、冷却システムが停止してしまえば、燃料棒周辺の水が蒸発してしまい、剥き出しになった燃料棒の、ジルコニウム合金製の被覆管の融点を超え、更に温度が上がり続ければ、燃料ペレット(二酸化ウランをセラミックのように固めた物)も溶解してしまいます。

私は何故この件に、マスコミの原発記事が触れないのか疑問に思います。

このような事実は隠しようがないはずなのに、原発反対のデモンストレーションでも、ECCS(エマージェンシー クーリング コア システム)について、あまり主張されていないのも気掛かりです。

専門家と原発推進派がもしかしたら、専門用語を用いて、素人をはぐらかす意図があるのではないかと気を揉んでしまいます。(原発政策の根幹を揺るがす情報の隠蔽や流布をなるべく国民に周知させい等)

原発施設を維持するなら、施設の補強の他に、可能な限り原発周辺の土地を取得し(ダムを造成する際の土地取得のように)僅かずつではあっても、減災に資する対応は、日本の国土で行われてもよいのではないかと思います。

もう出来てしまった原発のリスク低減には、色んな意味で対策しないといけません。

被害者を多数出して、コストも多大に掛かることを今回の福島原発で目の当たりにしているわけですから、是非この教訓を生かして、二度と今回のような地震の被災者でありながら、放射能汚染の被害者でもあるというような二重の苦しみを国民に被らないようにしてもらいたいと切に願うものであります。

私は津波の来ない或いは来にくい場所の用地を速やかに確保して、そこに貯蔵施設を確保して、管理制御するべきだと思います。

実は日本では、未だに放射性廃棄物の最終処分場が確保されておりません。今は六ヶ所村に一時保管しているに過ぎません。

いずれ最終処分場を作らなければならないのですから、今がそのタイミングではないかと思います。

なぜなら放射性廃棄物が、今後莫大な量が出ることが予想されますから。勿論最終処分場の選定は、相当な困難を極めることでしょう。

しかし、日本以外に最終処分場を求めれば、それではたして話が済むのでしょうか。

私はそうは思いません。少なくとも中途半端な用地確保ではなく、施設周囲半径30キロメートルの用地を金銭を惜しまず、確保する努力を政府はするべきなのではないでしょうか。

それが出来ないのであれば、せめて原発施設周辺や中間処理施設周辺の土地を取得し、被害者数を低減する努力をすべきだと思います。

そしてそのような手段で確保した土地に、メガソーラーなり、風力なりの発電施設を大規模に設ければ、少なくとも現状よりはマシな状況になるのではないでしょうか。


追伸
ゲンさんの代替エネルギー案ですが、メリットは良く理解出来たのですが、デメリットの面についてもお話を伺えれば有り難いと思います。


コメント ゲン


代替エネルギー案のデメリットということについての質問やが、『第150回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■日本復興への提言 その1 原子力発電の廃止とその代替案について』 の中で、それなりに言うてたつもりやが、言葉足らずで説明不足の部分もあったと思うので、改めて答えさせて頂く。


1.太陽光発電。

現在、各電力会社が保有している太陽光発電所は、原子力発電所と比べると規模も発電力も極端に少なく、同等程度にまで増設するには、かなりのコストと相当の期間が必要になるというのが最大のデメリットだと言われている。

また、他にも欠点として、

○発電量が天候や気温等により大きく変動する。特に雪や雨の多い地域、日照時間の少ない地域での発電量に問題がある。

○夜間は発電しない。

○設置面積当たりの発電量が既存の発電方式に比べて低い。

○太陽光発電に使われる太陽電池モジュールは日光の照射条件によっては温度が60〜80℃にも達することがあり、そのため出力が低下することがある。

○パネルが汚れると太陽光が遮られ出力が落ちる。

などが挙げられる。

ただ、太陽光発電は特定の発電所でなくとも、建築物の屋根や壁面にも設置できる。

そのため、企業や施設、各家庭などあらゆる場所で、その気になれば、すぐにでも実用可能や。

また「夜間は発電しない」というデメリットも大きいと考えたので、『蓄電池の併用が最も有効や』と言うてたわけや。昼間に発電したものを蓄電池で貯めて使う。

これについては、今まで業務用専用だった蓄電池が家庭用に転用され、それが現在、爆発的な売れ行きを見せている。

ただ、いずれもまだ個人宅で設置するにはコストがかかりすぎる。

太陽光発電システムは、工事費込みで200万円から300万円程度、蓄電池一基100万円以上もする。

しかし、過去の家電製品がそうであったように、その需要が高まれば、各メーカーがその研究開発に鎬を削るさかい、近い将来、欠点も改善され、安価で性能のええものが出回るのは間違いないと思う。


2.地熱発電。

これも、太陽光発電と同じく各電力会社の保有施設数が少なく、得られる電力も現時点で原子力発電の30分の1程度ということやから、その施設を建設するのに、相当のコストと時間がかかる。

ただ、それ以外にはデメリットらしきものは、この地熱発電にはない。

コストも原子力発電にかける費用をそのまま回せば、日本の発電量の50%程度は確実に確保できると言われている。ちなみに原子力発電では30%未満の発電量しか得られていない。

つまり、同じコストをかけた場合、原子力発電で得られる電力よりも多いということなる。

それには何より、火山大国の日本においては、ほぼ無尽蔵とも言える地熱エネルギーを得られるということが大きい。


3.マイクロ水力発電。

これも発電設備が少ないが、これについては、小さな地域での発電を目的にしているので、やる気になれば、比較的短期間にできる。

現在、マイクロ水力発電を導入することにおいて技術上、およびコストの面での問題は、ほとんど解決されている。

その気になれば、市町村レベル、個人レベルでもできる。実際、個人で設置している、また計画している人も増えている。

デメリットと呼べるかどうかは分からんが、問題は、その法的整備がほとんど手つかずとなっているのが難点と言えば、言える。

電気保安規制、水資源利用規制、主任技術者の選任義務などといった大型発電所と同等の規制がかかっているため、それが大きな負担となって、いざ設置しようにも、なかなかその許可が得られないということや。

国が、その気になってその法改正でもせんと、なかなか前には進みそうもない。

それ以外には、特にデメリットというのはないと思う。


以上やが、これらに共通して言えるのは、いずれも日本においては、ほぼ無尽蔵とも言えるエネルギーで稼働できる発電システムやということや。

二酸化炭素の排出もゼロやし、環境を損なうことも一切ない。地熱発電以外は、民間でも個人でも今すぐ取りかかって始められる。

それならなぜ、そんな便利なものを今まで使って来なかったのか。

それは、世界の経済構造が石油中心の時代が長く続いて、その利権を有した実力者が世界を牛耳っていたからやと思う。

その彼らにすれば、自然エネルギーなどあっては困るわけや。石油から得られる利権がなくなってしまうさかいな。

そのため政治力、経済力にものを言わせて、それらの自然エネルギーを封じ込めてきたという歴史がある。

ただ、環境問題が叫ばれるようになって、石油一辺倒では抗し切れないと判断した有力者、権力者たちが、二酸化炭素を排出しない原子力発電に目を向け、それを推進するようになった。

原子力発電なら、その計画から廃炉までの100年間は、その利権が保障されるということでな。

また、この原子力は兵器としての転用も可能やさかい、核保有国には都合のええものでもあった。相互転用がしやすいさかいな。

核保有国ではない日本が原子力発電所を持っている理由は一つ。

アメリカから押しつけられからや。押しつけという表現がまずければ、後押しという言い方に変えてもええ。

いずれにしても、その施設の設置には、アメリカの影響が大きかったのは間違いないということや。

それ以外には考えにくいと思う。

事実、今回の事故を起こした福島第一原発の設計は、アメリカの原子力発電所を、ほぼそのままコピーしただけという話でもあるしな。

地震のあまりないアメリカで設計されたものを日本に、そのまま持ち込んで作ったということや。

その結果が、これや。情けないと言うしかない。


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