メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー
第166回 ゲンさんの新聞業界裏話
発行日 2011.8.12
■ゲンさんのよろず相談あれこれ Part 2
このシリーズを始めるにあたって、『第159回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■ゲンさんのよろず相談あれこれ Part 1』(注1.巻末参考ページ参照)の中で、
以前から新聞関連以外の質問が寄せられることは、たまにあったんやが、それがここのところヤケに増えてきたなという印象がある。
中略。
そういうのが相当数溜まってきた。溜まってきたが、発表の場がない。
一部については、このメルマガ誌上で投稿者やそれに関わる人たちに迷惑のかからんように編集し直して発表することもあるが、それはワシらが特に面白い、読者にとって有意義と感じたものに限られるから、比率にすると少ない。
ただ、それらの埋もれた相談の中には、読者の方にとって有意義と思えるものも、そこそこあると気がついたので、折りをみて、今回のようにシリーズ化して少しずつではあるが知らせようということになったわけや。
と言うた。
反響次第で今後も続けるつもりやと言うたところ、早速、幾つかのその手の相談が寄せられてきた。
聞けば、あまりそういった相談に乗って貰えるサイトとかブログのようなものがないという。
それならということで、このメルマガ読者限定ということにはなるが、その回答をさせて頂くことにした。
言えば、「なんでもQ&A」ということになる。
但し、ワシらの能力を超えた質問の回答は難しいので、すべてに答えられるという保証はできんが、できる限り頑張ってみたいと思う。
それでは始める。
事例その1 下請け工事代理店の方が売りつける様な行為は詐欺?
相談内容
夕方6時前にNTTと名乗る下請け工事代理店の者が来ました。
「回線を繋がないですか。繋いで貰うと工事費半額でパソコンお持ち出なかったら中古パソコン7000円でお売りします」と言って来ました。
「考えます」と言いましたが、まだしつこく早口で話をしてきます。
売る話の時と工事費用の話の話の時は分かりやすくゆっくり喋るのですが、あまりしつこく言うので「貴方本当にNTTの方ですか? 名刺など名前提示などしてないので通報しますよ」と言うと「どうぞと」言うたのに電話しようとしたら、さっさと逃げました。
代理店の工事の方が売りつける様な行為は詐欺? ですかね?
回答
『夕方6時前にNTTと名乗る下請け工事代理店の者が来ました』ということやが、NTTには「下請け工事代理店」というのは存在せん。
工事に関してはすべて地域の通信専門工事会社が受け持ち「協力会社」と呼称しとる。
彼らは、NTTからの依頼でのみ工事をしていて、直接、一般客への営業をするようなことは、まずない。というかできんことになっとるはずや。
そういう営業に来る業者というのは、ほとんどNTTとは何の関係もない業者だと考えて間違いない。詐欺も含めて用心した方がええやろうな。
万が一、その業者が、一般客への営業が可能なNTT取次店や特約店契約をしている法人であったとしても、あんたに行ったような営業がNTTに知れると、その契約が解除される可能性が高いさかい、その線もまずないのではないかと思う。
『回線を繋がないですか。繋いで貰うと工事費半額でパソコンお持ち出なかったら中古パソコン7000円でお売りします』というのは、いかにもといった感じの胡散臭い話やな。
そんなサービスを本当にNTTがしているのなら、テレビCMやWEB上で大々的に宣伝しとるやろ。
『あまりしつこく言うので「貴方本当にNTTの方ですか? 名刺など名前提示などしてないので通報しますよ」と言うと「どうぞと」言うたのに電話しようとしたら、さっさと逃げました』
まあ、何とも間の抜けた話やが、尻尾を出したというところやな。あんたの対応はそれで良かったと思う。
『代理店の工事の方が売りつける様な行為は詐欺? ですかね?』
NTTに関しては、「一般客への営業可能なNTT取次店や特約店契約をしている法人」以外からの営業は、そう考えておいた方が無難やろうな。
ただ、詐欺罪が適用されるのは、実際に被害があった場合で、このケースは、せいぜい「詐欺未遂」といったところやな。まあ、今のところ、その程度では警察に通報しても本気では動かんのやないかな。
しかし、この手の行為は、必ずエスカレートして、実際に被害者が続出する可能性もあるから、そのうちニュースになるような気もするがな。
その他の業者の場合はケース・バイ・ケースで、いろいろ考えられるので、一概に『代理店の工事の方が売りつける様な行為』が詐欺とは言えない場合もある。
せやさかい、そのケース毎、事案毎の判断が必要になる。
いずれにしても、自社名、個人名を名乗らんという時点でNGと考えといた方がええわな。
今日び、新聞拡張員でも、それくらいはきちんと名乗るし、身分証も携帯して提示するのが常識やさかいな。
もっとも、新聞拡張員の場合は、売り物の新聞に瑕疵はないし、定価以上の販売もせんから、騙されて契約させられたというケースはあっても、契約者から金を巻き上げるような営業をする者は少ないから、詐欺罪に問われるようなことは、ほとんどないがな。
その意味では、そういう連中は、悪質な新聞拡張員よりもさらに数段、悪質やと言える。
業者名を名乗って「おいしすぎる話」をしてくる場合は、あんたのように『考えまておきます』と一旦保留にしておいて、ネットで検索するなり、誰かに相談されるなりして調べられてから対応された方がええ。
もっとも、ワシなんかが言うまでもなく、すでにそうされておられるやろうがな。
事例その2 「戦争中の体験談をお聞かせください」と言ってくる書籍掲載話
相談内容
「戦争中の体験談をお聞かせ願えませんか」と、突然、雑誌記者を名乗る男から電話がかかってきました。
あまりの熱心さに「話だけでいいのなら」と了解しました。
翌日、雑誌記者を名乗る男とカメラマンという若い男の二人が拙宅に来ました。
いろいろと話した後、「今の話を記事にして載せた本を作りますので、買いませんか」と急に本のサンプルを見せられ購入を勧めらましれた。
7万円と高額でしたが、話を長時間熱心に聞いてくれた相手に対して断るのは悪いと思い、また私の話がちゃんとした本になって残るという誘惑に負けて契約書にサインし、その場で代金を支払いました。
しかし、10日ほどして友人から私と同じようなことがあったと聞かされ、それがきっかけで以前出席したことのある行事の名簿を使って、他の出席者にも同じような勧誘をしていたことがわかりました。
不審な気持ちになって、その雑誌社に電話で「解約したい」と伝えましたが、「もう本は制作中なので無理です」と、断られました。
こういう場合、解約はできないのでしょうか。よろしくご指導賜れば幸甚に存知ます。
回答
あんたの話を聞く限り解約に持っていくのは難しいやろうなと言うしかない。
まず、『10日ほどして』と言われとるから、契約してから8日間以内なら無条件で契約解除できるとされているクーリング・オフは使えん。
その業者が本を出版せんかったら詐欺に問えるかも知れんが、実際にその本を出版すれば、それもできん。
そして、あんたから聞いた、その業者をハカセが調べたところ、やはり、その手の本を専門に発行している出版社やというのが分かった。
もともと、そういう出版社は書店に流通させるのが目的やなく、あんたのような客を探して、その掲載料金を集めるのを生業にしとる。
その集めた金で本を作り、その差額分を儲ける。つまり、一冊も本を売ることなく利益が得られる出版社ということになる。
敢えて、売り先になるのは、その人たちや。
自分の話の載った本は残して置きたいと普通は考えるし、身内や友人、知人に提供するために、そこそこの部数を注文する人たちも多いということや。
一般の人では、なかなか理解できんことかも知れんが、そういう出版業者というのは結構多い。
『以前出席したことのある行事の名簿を使って、他の出席者にも同じような勧誘をしていたことがわかりました』ということで、悪質さを感じられたかも知れんが、『今の話を記事にして載せた本を作りますので、買いませんか』と言うて、それにあんたも納得したわけやから、その契約は成立したと判断される。
話を聞く限りは、正当な商行為やと思う。
そして、他の出席者で、それに応じた人たちがいた場合にも同じことが言える。
この業者が、もし問題にされるとしたら、最初から、その勧誘話をしていなかったということになるが、先にあんたの体験話を聞きたいといって、実際、そうしとるわけやから、違法性を問うのは難しいやろうと思う。
それに対して、あんたは、電話時、訪問時と、どの段階でも断ることができたということもあるしな。
『戦争中の体験談をお聞かせ願えませんか』というのは、見ず知らずの人間がいきなりそう言うてくるというのも変な話やから、一度保留にして、その業者を確かめるなり、誰かに相談するなりすることもできたはずや。
『今の話を記事にして載せた本を作りますので、買いませんか』というのも、断ろうと思えば断れたのやないかな。
あんたの話の中には、その業者の強引さとか悪質さといったものは、あまり感じられん。もっとも、せやからと言うて良心的やとも言うつもりはないがな。
昔、ワシが大阪でまだ住宅リフォームの会社を経営していた頃、「報道○○」という、どこかにありそうな名前の雑誌を出版しているという業者が、同じように言うてきたことがある。
もっとも、ワシの場合は、ある有名な俳優を連れてきたということもあり、見開き2ページに掲載するだけで30万円ほどもしたがな。
もっとも、定価2000円というその本が100冊ついてくるということやったが。
そのときの名目は、「大阪の中小企業で活躍している経営者特集」というものやった。
ワシは、それが書店などに流通せん本やというのを承知で契約した。
その本がグラビア雑誌ばりに立派な本やったという事と、その有名俳優との対談形式でカラー写真入りで紹介するという触れ込みに惹かれたわけや。
実際、出来上がった本は、それなりに立派なものやった。但し、書店に流通してへん本やから、それだけでは、その本が人に知られることはない。
ワシの目的は、掲載された本を営業で使うことやった。
「有名俳優と対談するほどの業者」という触れ込みは、住宅リフォーム会社では大きな宣伝効果になると踏んださかいな。
営業経費としてなら、その費用対効果からして損はせんと考えた。実際にも、その思惑どおりになった。
住宅リフォーム工事の勧誘時、その本を名刺代わりに見せる、あるいは成約になりそうやと見たら、その本を渡すわけや。
すると、客もワシを実際以上に評価して信用もするようになる。そうなると仕事も取りやすくなるということや。
まあ、ワシの場合は、そういう計算のもとで敢えて、その相手の誘いに乗ったわけやが、あんたの場合は、その話が掲載されたからと言うて、ワシのようにそれを役立てることはできんやろうな。
言えば、昔の話の記念として残せる程度やな。今回は、それに納得して矛を収め、次からの教訓にされたらどうかと思う。
それに、支払いがまだなら、それを止めて交渉するということも可能やが、代金が支払い済みで、その程度の理由で、その代金の返還請求を法的に争うというのも難しいと考えるしな。
事例その3 シルバー人材センターを名乗った庭木の剪定(せんてい)について
相談内容
先日、庭掃除をしていたら、シルバー人材センターを名乗る男が、「木の剪定をするけど、どうですか」と勧誘してきました。
庭の垣根と数本の木を剪定して1万円と言うので、頼むことにしました。終わった後、その場でその1万円は支払いました。
「後でゴミを片付けに来る」と言って帰りましたが、それっきり来ないので、シルバー人材センターに問い合わせたところ、全く関係のない人間だと分かりました。
シルバー人材センターの人だというので信用してしまった私が悪いのですが、剪定の仕上がりもいい加減で満足のいくものではないし、領収書や契約書もないので相手も分からないのですが、こういう場合はどうしたらいいのでしょうか。
回答
こういう社会的に信用のある機関を名乗り、消費者を安心させた上で契約をさせる訪問販売の手口というのは多い。
『「後でゴミを片付けに来る」と言って帰りましたが、それっきり来ない』というのは、明らかな契約不履行になるから、その相手を見つけさえすれば、その1万円を取り戻せるかも知れん。
しかし、『領収書や契約書もないので相手も分からない』という状況やとそれを取り返すのは、ほぼ無理やろうな。
通常、シルバー人材センターでは電話でしか一般の依頼は受けつけんし、見積をしてそれで納得した上で契約を結ぶことになっとる。
この男のように飛び込みで直接勧誘することはない。そういうのがあれば、すべて騙しということになる。
しかも、その支払いも金融機関の口座への振込みということになっていて、作業員と直接現金のやり取りをすることは基本的に禁止されとる。
こういうケースやと、警察にその被害届けを出すくらいしか、あんたにできることはなさそうやな。
今回は警察に被害届けを出して、それで犯人が見つかれば儲けモノくらいに考えて、次からは『社会的に信用のある機関』を名乗るほど怪しいと用心することやな。
事例その4 震災に便乗した悪質な屋根修理業者への対処法
相談内容
地震で屋根瓦が落ちました。訪問してきた業者に「早く工事しないと大変なことになる」と言われ屋根のふき替え工事を勧められましたが、総額300万円と高額なので断りました。
しかし、1日に何度も訪問され、「判を押せ」と脅すような口調で言われ仕方なく契約してしまいました。
工事日も決まっていないのに「内金として100万円入れろ」と迫られています。
契約してまだ3日ほどなのでクーリング・オフしたいと思っているのですが、その業者がヤクザっぽい口調で、そうすると何かされるのではないかと考えると怖くてできません。
どうすれば、いいでしょうか。
回答
『契約してまだ3日ほどなのでクーリング・オフしたいと思っている』のやったら、そうすればええ。
『その業者がヤクザっぽい口調で、そうすると何かされるのではないかと考えると怖くてできません』ということやが、そういうのは新聞の拡張員にもありがちなことやが、心配することはない。
絶対とは言い切れんが、『何かされるのではないかと考える』必要はない。
クーリング・オフ後に何か文句を言うてきたり、考え直せと脅かしたりすれば、それだけで罪に問われる可能性もあり、警察に通報すれば逮捕されることすらある。
具体的には特定商取引法違反になる。この法律の第6条第3項に、
販売業者又は役務提供事業者は、訪問販売に係る売買契約若しくは役務提供契約を締結させ、又は訪問販売に係る売買契約若しくは役務提供契約の申込みの撤回若しくは解除を妨げるため、人を威迫して困惑させてはならない。
というのがある。
分かりやすく言うと、契約した客がクーリングオフを申し出ているのに、それを防ぐため脅したり威圧して困らせるような行為の禁止ということや。
つまり、その屋根工事会社の人間が、クーリング・オフをしたあんたを脅かして、その翻意をさせようとすれば、それだけでその罪が成立するということや。
これが適用されると罰則規定は2年以下の懲役・300万以下の罰金ということになる。軽い罪やない。
どうしても怖くて不安やと言うのなら、文書でクーリング・オフをした後、すぐに最寄りの警察署の市民安全課に相談に行けばええ。
「脅かされるようなことでもあれば知らせてください」と言うはずや。
そして、実際に、その業者が脅してくれば、「この件については○○警察の○○さんに相談済みで、あなたの行為は違法なものですから通報しますよ」と言えばええ。
そこまで言えば、たいていはあきらめるはずや。
それで暴力でも振るえば、その業者は、ほぼ間違いなく逮捕される。おそらくニュース沙汰にもなるやろうから、その会社も潰れることになるかも知れん。
それを覚悟で、そんなアホなことをする人間はおらんと思うさかいな。
ただ、何度も言うが絶対やない。世の中には常識では考えられん無茶をする人間がおるのも、また事実やしな。
これは、新聞の購読契約時のアドバイスでも、よく言うてることやが、どうしてもそれが怖ければ、その契約を受け入れて代金を支払い、そのまま工事を続行するという手もある。
どうするかは、あんた次第や。
と、今回はこのくらいにしとく。
最後の相談で気づかれた読者もおられるやろうが、普段ワシがサイトのQ&Aでアドバイスしていることは、そのまま、他の業種の事案にも当て嵌まることが多いさかい、そのつもりで見て貰うのも、ええのやないかと思う。
また、次回は折りを見てする。ただ、前回のときにも言うたが、これはあくまでもメルマガ読者向けの話やから、他ではあまり言わんといてな。
この手の相談ばかりが増えるというのも困るさかい。
相談とは違うが、最近、「押し紙のメルマガを頼みます」とか「ぜひ競馬の話もっと聞かせてください」というのも増えている。
それらについては、できるだけ希望に沿いたいと考えているので、今しばらく待って頂けたらと思う。
参考ページ
注1.第159回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■ゲンさんのよろず相談あれこれ Part 1
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