メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー

第178回 ゲンさんの新聞業界裏話


公開日 2011.11. 4


■ゲンさんのよろず相談あれこれ Part 4


ここ数ヶ月、一般読者からのサイトのQ&Aへの相談件数が以前と比べ極端に減り、このコーナーへの投稿が増えてきたように感じる。

一般読者からの新聞勧誘のトラブルに関する相談件数が減ったことについては、ある意味、喜ばしいことやと言えるかも知れんが、それ以外の相談を持ち込まれるというのは、どう判断すればええのやろうかと思う。

それも、ワシらが経験していて分かる範囲内のことならともかく、法律家でも迷うような相談というのもあるさかい、正直困る。

また、相談された時点では「時すでに遅し」というのも多い。

当初、このコーナーはメルマガ読者限定ということで始めさせて頂いたが、どうやら、それ以外の方が、ここに尋ねれば法律のことなら何でも回答して貰える法律サイトと勘違いされておられる方が多いように見受けられる。

相談の内容が一介の拡張員にやなく、弁護士などの法律家に対してという感じのものが圧倒的に多いさかいな。

特に、過去のメルマガなど一度も見られたこともない人たちに、そういうのが多いように感じる。

どこかで、誰かが、そう吹聴しているのやろうかと思う。

そのためかどうか、中には「相談にお金が必要なのですか」と言われる方がおられる。

「そんなものは必要ない」と、常に答えとるがな。

ワシらのような法律の素人が、金を取って法律行為をするのは下手をすると弁護士法に抵触する恐れがある。

そんな愚を犯すわけにはいかんわな。

そうでなくても、そもそも、ワシらはサイトやメルマガを営利目的でやっとるわけやないさかいな。

「書籍を売って儲けているやないか」と言われる人も、たまにおられるが、紙の書籍、電子書籍など、いずれの場合も売れる売れないに関わらず、それで利益が出ることはないと言うとく。

むしろ、売れれば売れるほど赤字になると。

その詳しい事情と説明は『第151回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■電子書籍化販売決定のお知らせ……出版に至るまでの流れについて』(注1.巻末参考ページ参照)で話しとるので、ここでは割愛させて頂くが、ワシらは儲けるために、その書籍の販売を続けているわけやない。

理由は二つ。

一つは、記録として形に残したかったということ。今一つは、それらの書籍を読まれることで少しでも読者の役に立ててほしかったということ。

それに尽きる。

それなら、このシリーズで受けるような相談事には何の意味もないのかというと、そうでもない。

その事実を読者に知って貰うことで、何らかの役には立てて貰えるはずやと確信しとるさかいな。

それで十分、このシリーズを続ける意味があると思う。

それでは、そろそろ始めさせて頂く。


相談事例1 犬に噛まれた場合の慰謝料請求について


初めまして! 都内に住む主婦です。

大型犬に噛まれ全治2ヶ月と診断され、つい最近、仕事復帰しております。

仕事を一ヶ月半休んでおり、その休業手当てと医者に掛かった代金等は頂いております。

あとは慰謝料の問題なんですが、妥当な額が解らないのでメール致しました!

加害者側は慰謝料も「お支払いする」と言っております。

で、今回の保険は『請求型保険』だそうです! 契約者から請求が無いと保険金が支払えないシステムらしいです!

わたくしが額を決めて加害者側に伝えて保険会社に通達する。そこで不服等有れば裁判に・・・・

それでその他に、わたくしは後遺障害も出ており、診断書も有ります!

あと、大型犬の綱が切れていきなり襲い掛かり数分間、噛まれっぱなしだったという恐怖感! 数日間は不眠症だったという事!

傷跡がかなり残るとのこと。そういう精神的な面でも慰謝料も頂きたいと思っておりますが、なんせ相場がはたと解りません。

どうか良きアドバイスと、額も解りましたら、お教え頂きたいです! お願い致します。


回答

おそらく、その大型犬の所有者はペット賠償責任特約付きのペット保険に加入しとるのやと思う。

それから『休業手当てと医者に掛かった代金等』が出ている、もしくは出る予定になっていると考えられる。

それには、その金額が確定しとるということがあるからや。

つまり、その保険はすでに機能しとるということになるから、慰謝料もほぼ間違いなく支払って貰える。

それにしても『請求型保険』というのがあるというのは初めて聞いたが、そういうのがあろうとなかろうと、たいていの人がそうされるように、あんたも、ご自身の望まれる慰謝料額を請求されたらええだけのことやないかと思うがな。

ただ、あんたが知りたいと言われる慰謝料の相場は、その状況次第で大きく違うさかい、何とも言えんというのが正直なところや。

その手の事案の得意な弁護士に、その状況を詳しく説明すれば、その目安くらいは教えて貰えるのやないかな。

相談をするだけなら30分5千円とか1時間1万円程度でできるから、そうされることを勧める。

『休業手当てと医者に掛かった代金等』はすでに貰っておられるようやから問題ないとして、後は『わたくしは後遺障害も出ており、診断書も有ります!』というのと、『大型犬の綱が切れていきなり襲い掛かり数分間、噛まれっぱなしだったという恐怖感! 数日間は不眠症だったという事!』についての慰謝料の請求ということになる。

このうち、『わたくしは後遺障害も出ており、診断書も有ります!』ということについては、それだけでは判断のしようがないと思う。

後遺障害の程度で大きく違うてくるさかいな。

専門の弁護士なら、そのあたりのところは良く心得とるから、何度も言うが、そういう人に相談されることや。

ただ、たいていの『ペット賠償責任特約』の上限は1千万円と決められとるから最高でもそこまでしか保険からは出んやろうがな。

『大型犬の綱が切れていきなり襲い掛かり数分間、噛まれっぱなしだったという恐怖感! 数日間は不眠症だったという事!』といった精神的な慰謝料というのは、日本の司法ではあまり考慮されんから、あんたが思っておられるより、かなり低額になるものと考えられる。

過去の判例からすると、数万円から、良くて数十万円程度までというのが大半を占めとる。

相場と言えば、それが相場になるのかも知れんが、請求するのは何もそれに拘る必要はない。請求すること自体は自由や。

あんたの望まれる額を請求すれば、その保険の担当者から何らかのアプローチ、たいていは減額の交渉をしてくるはずや。

あるいは、その保険の内容次第で、その保険の担当者が交渉できんというのであれば、その大型犬の所有者と直接、交渉すればええ。

そこで互いが納得し、保険会社がそれを了承すれば、それで話がつく。

ただ、後遺障害の慰謝料については迂闊な示談交渉は禁物やと言うとく。

それに関してだけは、やはり弁護士などの法律家に意見を聞いた方がええ。

それが高額になりそうなら、その弁護士に依頼して交渉をして貰った方が有利に事が運ぶと考えるさかい、損にはならんのやないかと思う。

ワシに言えることは、この程度や。後は、あんたがどうされるか、良う考えて
決められたらええ。


相談事例2 遺産相続の公正証書遺言書に疑問がある場合の対処は?

相談内容


今回、遺産相続があり公正証書遺言書が自宅に届きました。

その内容が1人の相続人に全ての財産を譲る内容でした。

状況的に見てありえない内容だったので色々調べていた所、どうやら1人の相続人と遺言執行人が組んで公正証書遺言をなりすましで作ったようでした。

なんとかなりすましの証拠を見つけようと思い動いていた所、遺言執行人の弁護士から公正証書遺言書の元の手書きの遺言書が送られてきました。

その遺言書は指紋の判が押されていて 、内容は公正証書遺言書に書かれいる内容と一緒でした。

遺言執行人が言うには、これは本人が書いた物だから、だから指紋の判もあるんだ。と言っていました。

その手書きの遺言書を調べて見た所どうやら指紋を押してある紙と手書きの部分と重ね合わせた可能性が高い事が分かりました。

遺言執行人に手書きの遺言書の原本を見せてくれと言っても応じません。

警察に私文書偽造で訴えようと思うのですが動いてくれますか?

動いて貰うにはどんな証拠が必要ですか?

もう一つ相談があるのですが、答えられる範囲でいいのでよろしくお願いします。

公正証書遺言の証人なんですが、遺言執行人が証人になっています。

使用人は証人になれないのですが、遺言執行人の弁護士が公正証書遺言を残す1カ月程前から親族間のトラブルで雇用関係にありました。

これは証人の欠格事項に当たると思いますか?ちなみに訴えようと動いていたのが遺言者と相続人2名です。

訴えられそうになっていたのが1人の相続人です。

弁護士は使用人にはあたらないのですか?


回答

『警察に私文書偽造で訴えようと思うのですが動いてくれますか? 』ということやが、『公正証書遺言書』の場合、その内容がおかしいというだけの理由で、その真偽を確かめるために警察がわざわざ捜査を開始するというのは考えにくいことやと思う。

警察という所は、事件が起きて初めてそれを捜査する組織、機関やから、事件になるか、ならんか確定せん事案について積極的に動くことなど、よほどの事情でもない限りあり得んさかいな。

公正証書遺言があるということは、遺言者が選んだ証人2人以上を立会人にして、遺言者自らが公証人の面前で口述したということを意味する。

公証人は遺言者が口頭で述べた遺言の内容を正確に文章化する。それを遺言者と証人が確認した後、遺言者、証人、公証人がそれぞれ署名・押印すれば公正証書遺言が完成する。

その正規の手順が踏まれている公正証書遺言なら、疑問を差し挟む余地などないということになる。

その公正証書遺言が正規のものか、どうかは、それに期されている公証人役場に行けば、控えがあるさかい、申請の手順を踏めば、その原本が確かめられる。

それと、送られてきた公正証書遺言が同じものであれば、それが正規のものということになる。

例え、あんたの『その手書きの遺言書を調べて見た所どうやら指紋を押してある紙と手書きの部分と重ね合わせた可能性が高い事が分かりました』と言われるとおりやったとしても、遺言者自身が、公証人の前で公正証書遺言どおりの口述をしたのなら、それが正規の遺言として法律的にも認められることになる。

当然やが、遺言とは遺言者の意志が反映されていることが必要になるから、それが確認されたという事実があればええわけや。

公証人役場の公証人は法務大臣から任命された法文書作成のプロで、その公証人が正しいと認めた限りは、その公正証書遺言の内容のをひっくり返すのは、まず無理やと考えといた方がええ。

但し、あんたの言う「なりすまし」というのが、本当の遺言者ではなく、別人が、その遺言者になりすまして公証人の前で口述したと言うのであれば、これは立派な犯罪になる。

『動いて貰うにはどんな証拠が必要ですか?』ということであれば、本当の遺言者ではなく、別人が遺言者になりすましていたという事実があって、その確たる証拠が提示できれば、事件化して警察が動く可能性は高いと思う。

それ以外では、あんたの主張を通すのは難しいとしか言いようがない。

ただ、『その内容が1人の相続人に全ての財産を譲る内容でした』というのは、例え遺言者の口述したことであっても、他の相続人(配偶者、子、孫およびその代襲者の第1順位の血族相続人、直系尊属の両親、祖父母などの第2順位の血族)がいる場合は、公正証書遺言がそのまま財産分与として確定するかどうかは、それらの相続人次第ということになる。

そのいずれかの相続人に該当する場合、遺留分といって相続人に保証されている権利があるさかい、それを行使することで、少なくとも『1人の相続人に全ての財産を譲る内容』というのは防げる。

そうしたい場合は、遺留分減殺請求権を行使することや。せやないと、例え相続人の遺留分を侵害する遺言であっても有効になるさかいな。

遺留分を取り返すための遺留分減殺請求権を行使するかどうかは相続人の自由であるとされとるから、何もアクションを起こさんかったら、公正証書遺言がそのまま確定することになる。

遺留分減殺請求権は、必ずしも訴訟する必要はなく相手方に対する意思表示をすればええ。

配達証明付内容証明郵便で、その主張をするというのが一般的とされとる。

相手方がそれに応じれば、その話し合いをすればええが、応じない場合には訴訟に踏み切るしかない。

その場合は、相続開始地を管轄する裁判所に訴え出ることになる。

ただ、『1人の相続人に全ての財産を譲る内容』の公正証書遺言書を送り付けてくるような相手なら、話し合いでの解決は難しく、おそらく裁判沙汰になるものと思う。

そうなった場合、あんたがその遺留分の権利を有する相続人に該当されるのなら、弁護士に依頼して遺留分減殺請求訴訟を起こすことを勧める。

相続問題というのは、それぞれの事情によってもかなり違うさかい、その詳細を担当弁護士に話して対処して貰う方がええと思う。

遺留分減殺請求訴訟をするにしても、あんたの取り分は、それぞれの財産内容や状況によっても変わってくるから、ワシからはこれ以上は何とも言えんしな。

その点、弁護士なら詳しく教えてくれるはずや。これはという弁護士を見つけて依頼されたらええ。

まずは、そうされておくことや。

そうしておいて、『本当の遺言者ではなく、別人が、その遺言者になりすましていた』という疑いがある場合、その事実と確かな証拠を掴むことができれば、それから犯罪、事件として警察に告発しても遅くはないさかいな。

『公正証書遺言の証人なんですが、遺言執行人が証人になっています』ということやが、遺言執行人が、相続人の配偶者及び直系の血族でないのなら証人になることには何の問題はない。

民法第974条に『証人・立会人の欠格事由』というのがある。

次に掲げる者は、遺言の証人又は立会人になることができない。
一 未成年者
二 推定相続人、受遺者及びその配偶者並びに直系血族
二 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び雇人

というものや。それに遺言執行人が証人になれないとは明記されていない。

法律には必ず禁止行為というのが明記されていて、それに該当しないものは法律違反にはならないとされている。

余談やが、法律の網の目をかいくぐろうとする輩は、そういう部分を必死に探すわけや。

法律の抜け穴というやつやな。その抜け穴を使って問題が起きれば、そうした行為が条文に追加され改正法で規制される。

そうして法律は、どんどん膨れあがり、ややこしくなっていくんやと思う。

『使用人は証人になれないのですが、遺言執行人の弁護士が公正証書遺言を残す1カ月程前から親族間のトラブルで雇用関係にありました』というのは、何か勘違いされておられるようやな。

弁護士は法的には代理人で、雇用関係者ではない。

雇用関係者とは、使用者である個人及び事業所との間で労働雇用契約が交わされた人のことを指す。

さらに言えば、証人、立会人の欠格事由にある「二 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び雇人」とは、公証人役場でその公正証書遺言を作成した公証人から見て、「書記及び雇人」ということや。

遺言者との、「書記及び雇人」という関係やない。

これは、公証人本人が、遺言者及び遺言内容と直接の利害関係になくても、遺言の秘密を知り得る立場にあるため、公証人の影響の及ぶ範囲内にあると考えられる「書記及び雇人」は証人として欠格者とされているわけや。

これなんかも、実際にその規定がなかった時代に、その抜け穴を使った者がいたということで、その追加の項目が増えたと聞く。

あんたの話を聞く限り、それには該当せんようやから、特に問題はないと思われる。

したがって、『これは証人の欠格事項に当たると思いますか?』という質問の答は、違うということになる。

『ちなみに訴えようと動いていたのが遺言者と相続人2名です。訴えられそうになっていたのが1人の相続人です』

「訴えようと動いていたのが遺言者」というのは、どういうことなのやろうか。

遺言者が、その遺言を否定していたのなら、新しい日付の遺言書を新に作成するか、改めて公正証書遺言を作り直せば済む話やと考えるがな。

遺言書は、最も新しい日付のものが最優先されるさかい、訴訟を起こすために動く必要などなかったはずや。

ただ、現在はその遺言者が亡くなられておられるようやから、新しい日付の遺言書がない限り、現在の公正証書遺言を否定することはできんやろうと思う。

あんたの力にはなれそうにない回答やったと思うが、あんたからの相談内容では、ワシとしてはそう言うしかないということや。分かって頂きたい。

何度も言うが、この回答に対して腑に落ちないところや細部に関しての詳しいことは法律家の先生に確認して頂きたいと思う。


相談事例3 強引に買い取られた貴金属を取り戻したい


相談内容


買い物から帰ってくると玄関に見知らぬ男性がいて「心臓のペースメーカーの材料に使う金とプラチナが不足しているので、貴金属を持っていたら買い取らせてもらうので、ぜひ協力ほしい」と声をかけられました。

断りましたが、なかなか帰ってもらえず、「人助けだと思ってお願いします」と、言葉こそ丁寧でしたが、かなり強引に迫って来られたので怖くなりました。

仕方ないので古い18金のネックレス二つと指輪を渡すと、買い取り料だと言って5千円を置いて帰りました。

買ったときは全部で10万円以上しましたので少し安すぎるとは思いましたが、病気の人の役に立つのならと承知しました。

そのことを娘に話すと、「お母さん、それは新手の詐欺よ」と言われ、騙されたと知りましたが、その男から名刺など何ももらっていなかったので素姓が分かりませでした。

そこで近くの交番に被害届けを出しに行ったのですが、そこにいた巡査さんに「それは、あなたが売ったことになるので犯罪にはなりませんよ」と言われました。

巡査さんの言う通り、こんな場合は泣き寝入りするしかないのでしょうか?

できれば強引に買い取られた貴金属を取り戻したいと考えていますが、何か方法はないのでしょうか。

よろしくお願いします。


回答

それは、昔からある「押し買い」というやつやな。「押し売り」の反対やから、そう呼ばれている。

「押し売り」なら、訪問販売法が適用されるからケースにより取り返すことは可能で、クーリング・オフなんかも使えるが、残念ながら「押し買い」には、それを規制する法律が今のところまだないのが実状や。

法律がなければ警察は動けない。

そのため、その警官は『それは、あなたが売ったことになるので犯罪にはなりませんよ』と言うたのやろうと思う。

形式的には個人間の売買が成立したということになり、民事扱いになると、その警官は判断したわけや。

そうなると警察は「民事不介入」の原則を持ち出して、そういう対応にならざるを得なくなるということでな。

あんたのような事例は、最近よく耳にする。新聞やテレビの報道にもそういうのが結構増えてきとるさかいな。

あんたの場合、『心臓のペースメーカーの材料に使う金とプラチナが不足している』という理由で貴金属を買い取ったということやが、それは、ほぼ間違いなく大ウソやったと言える。

心臓の病気についてはハカセが詳しいということもあり、ペースメーカーについても聞いたことがあるが、日本で使われている心臓ペースメーカーの大半は欧米からの輸入品で、国内では作られていないとのことや。

さらに、金やプラチナがペースメーカーの基盤に使われているのは事実やが主要な材料というわけやない。

またペースメーカーが不足しているという事実もないという。

それからいくと、その男が騙して売らせたというのは、ほぼ間違いないと言える。

これが、タダで持ち去ったというのなら詐欺と言えるが、僅かでも金を置いて、それをあんたが一度は納得したという事実がある限り、売買契約が成立したと見なされ、詐欺と断定するのは難しいやろうと思う。

もちろん、その男はそれを狙って、そうしとるわけやがな。

心情的には、けしからんことで許されんことやとは思うが、いかんせん現行の法律で裁くことができんというのでは、どうしようもないわな。

それを売る前なら、断固拒否することで、それを防げる。

強引な相手で怖いとか、困るというのであれば「帰ってくれ」と一言、そう言うだけでええ。

そう言うたにも関わらず、尚も居すわり、その行為を続ければ「刑法第130条の不退去罪」に該当するさかい法に触れる可能性が高い。

また、誰かを呼んで、その場に立ち会わせるというのでもええ。

それ以外の方法としては、訪問しての貴金属などの売買には「古物商許可証」および「行商従業者証」の携帯が義務づけられとるから、それを提示してくれと言えばええ。

それを持っている業者なら、それを提示するやろうから、その内容を控えるか、携帯電話などのカメラで撮って残しておくという手もある。

それのない業者は、そこまで言われると、まずいと思い引き下がるはずや。

また、それらの許可証が提示できないと言うのであれば、違反が濃厚ということで警察に通報することもできる。

もちろん、あんたの言うその男が「古物商許可証」および「行商従業者証」を所持していなくて、その行為をしたというのなら違法に問われるが、今となっては、その確認のしようがないわな。

後は、国民生活センターに通報するという手もあるが、そうしてもあんたにとっての具体的な解決にはならず、単にその事案例が増えるだけのことやと思う。

もちろん、その事例が増えれば国民生活センターでは、さらに喚起を促すから、結果として他の人の役には立つやろうがな。

それで、良ければ、そうされたらええ。

もっとも、多くの人に喚起を促すという点では、すでにここに相談された時点で成ったようなもんやけどな。

あんたのこの相談は、いずれメルマガに掲載するつまりやから、そうなればネット上においても上位で表示される確率が高いさかい、多くの人に知られ同じことになるとは思う。

また、その事例が多くなれば、看過できんという社会的風潮にもなり、それを規制する法律が新に作られることになるかも知れん。

その可能性は高い。

その意味では、あんたの相談は他の人の役に立つことにはなるが、『できれば強引に買い取られた貴金属を取り戻したいと考えています』という解決には、ならんやろうと考える。

気の毒やが、今となっては、あんたの貴金属を取り戻すことは限りなく難しいと言うしかない。

この「押し買い」に関しては、現状では、「売らない」、「拒否する」ということでしか対処法がないというのが実状やと思う。

悪いがワシには、それしか言えん。


今回は、ここまでにしとく。

当然と言えば当然やが、窓口を広げれば、それだけいろいろな相談が持ち込まれるもんやと今更ながらにそう思う。

ただ、これだけネットの情報が多い中から、ワシらのような法律の素人に、それこそワラをも縋る気持ちで相談される人の気持ちというのは、どうなんやろうな。

もっとも、そうとは知らず、相談されて来られる方もおられるようやけどな。

いずれにしても、今後も、読者のためになりそうな内容のものであれば公開を原則として相談を受け、このシリーズを続けていきたいと考えとる。



参考ページ

注1.第151回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■電子書籍化販売決定のお知らせ……出版に至るまでの流れについて


ゲンさんの新聞勧誘問題なんでもQ&A選集 電子書籍版パート 
2011.4.28
販売開始 販売価格350円
 

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