メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー
第184回 ゲンさんの新聞業界裏話
発行日 2011.12.16
■TPPの参加により新聞の再販制度は守られるのか?
読者で、ある新聞販売店に勤めておられるGさんという方から、
TPPに参加する事で今まで再販制度により守られてきた新聞はこれからどうなるのでしょうか?
また各メディアがTPPを推進してるように見えるのですがゲンさんどう思われますか?
私はデフレと雇用の面から見て大反対です。
という質問を頂いた。
これは、本来はサイトのQ&Aに寄せられた質問や。
しかし、掘り下げて調べてみるとかなり奥の深い問題やと感じたさかい、少し回答が遅れ気味になるが、ご本人の了解を得て、このメルマガ誌上でじっくりと話させて頂くことにしたわけや。
『TPPに参加する事で今まで再販制度により守られてきた新聞はこれからどうなるのでしょうか?』ということやが、日本がTPPに参加したとしても、すぐには新聞の再販制度が脅かされるとは考えにくい。
それには、TPPというのは貿易を対象にしたもので、新聞はそれには該当せんやろうということがあるからや。
日本の新聞を海外へ売り込むこともなければ、海外の新聞社が日本に参入してくるというのも考え辛い。
どこの国の新聞でも、その国の人間が読むために発行されとるものやさかいな。
もっとも、一部の識者やマニアらが英字新聞や外国紙を購読するというケースもなくはないが、そんなものは微々たる部数でしかない。
いくら外資が自由になると言うても、それでは新聞に参入しようという気にはならんやろうと思う。
TPPにより法律で守られている新聞の再販制度が撤廃されるといったことは、まずあり得ないということや。
『また各メディアがTPPを推進してるように見えるのですがゲンさんどう思われますか?』というのも、そう見えるのではなく、完全に推進の立場に立って報道しとると見て間違いないと考える。
日本がTPPに参加しても新聞の再販制度が脅かされるとは考えていないということが、それからも推し量ることができると思う。
いいか悪いかは、この際、別にして現在の日本のメディアの大半は新聞社に支配されていると言っても過言ではない状況にある。
最大のメディアであるテレビ局の大半は、その新聞社の傘下および協賛企業やさかいな。
新聞社の方針や意向に逆らえるわけがない。メディアがTPPを推進しているのは、間違いなく新聞社やさかいな。
過去、新聞社はメディアにとって不利に働くと考えられる事案には今まで断固反対してきたという歴史がある。
それからすれば、日本のTPPへの参加は不利と言うよりも、有利に働くと感じているからこそ、そういう報道になっているのやないかという気がする。
果たして、そうなのか。
ワシは、このTPPのことを知れば知るほど、その疑問が湧いてきて仕方がない。
新聞、テレビの報道ではTPPを黒船に喩えて、参加することを「開国」、参加しないと「鎖国」になるかのような論調を盛んに展開しとるが、明らかにそれは間違った認識やと言うとく。
それらのメディアにあるように例え、日本がTPPに参加せずとも「鎖国」にはならんし、「世界から孤立する」ということもあり得んと。
なぜなら、TPPに参加している国よりも参加していない国の方が圧倒的に多いからや。
アジア諸国の中でも、日本が主に貿易している国々にそういう傾向が強い。
そして、今後も日本以外での有力な国の参加は望めそうもない状況にあると言える。
韓国は当初参加に前向きやったが、TPPへの参加が自国に不利に働くとみるや早々と取り止めた。
中国も関心を示し情報収集などを行っていたようやが、結局参加しないことに決めとる。
日本と関係の深いタイは参加しておらずTPPへの警戒感を公然と表明している。
インドネシアも不参加の意向を明らかにしている。台湾やフィリピン、インド、パキスタンといった国々も参加の意思は今のところなさそうや。
交渉のテーブルについているベトナムも、本格的に加入するのかとなると疑問視する見方の方が強いという。
発起国の一つであるニュージーランド政府でさえ「TPPにそれほどメリットがあるとは考えていない」という公文書まで残っていて、それが公にされたとのことや。
アメリカを除けばTPPに参加している、また参加を表明している国々は、言うて悪いが、日本にとってそれほど重要な貿易相手国とは思えない。
こんな状況のTPPに参加しないことが、何で「鎖国」することになるのか、どこをどう理屈をつければ「世界から孤立する」という報道になるのか、まったくもって意味が分からん。
むしろ、日本が参加を表明しない場合、TPPそのものが意味のないものになるのは、ほぼ間違いないと言える。
加盟国・交渉国に日本を加えた10か国のGDP(国内総生産)を比較すると、その91%を日本とアメリカの2か国が占めることになる。
残念ながら、日本の新聞、テレビ報道には、上記に掲げたような事実についての説明が、ほとんどなされていない。
誰が調べても、すぐに分かる簡単なことでありながら、それでもTPPに参加することがバラ色の未来やと言わんばかりの論調に終始しとるわけや。
TPPへの参加のメリット、デメリットは、それぞれあるが、今のままやとデメリットの方が大きいと言うしかない。
それを今から説明する。
国の経済を考える上で、貿易の占めるウェートは重い。
資源の乏しい日本は、その貿易をしてきたからこそ、世界の先進国にまで上り詰めることができたわけや。
貿易を抜きにして日本の将来はあり得ない。
今後も貿易が日本にとって、必要不可欠なものであることには異論を挟む余地はないと思う。
その貿易のあり方が問題になる。
TPPとは、環太平洋戦略的経済連携協定(Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement)の略式名称で、環太平洋において、例外のない自由経済圏を築くことを目標としている貿易協定のことを言う。
2015年までにTPP加盟国間の貿易において、工業製品、農産物、繊維・衣料品、金融、電子取引、電気通信などのサービスの自由化、
技術の特許、商標などの知的財産権、投資のルール化、労働規制や環境規制の調和、公共事業や物品などの政府調達(地方自治体も含む)の自由化、
衛生・検疫および、医療サービスなどの自由化、貿易の技術的障害の解決、貿易紛争の解決、サービス貿易の自由化(供給・観光・留学・金融・弁護士医師等技術者に関わる統一化)など、
全品目の関税を10年以内に原則全面撤廃することにより、実質的に相互の関税自主権の放棄と他のあらゆる貿易障壁の撤廃、サービスの自由化を目標にすると謳っている。
このTPPは2006年5月にシンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの4ヵ国で「小国同士の戦略的提携によってマーケットにおけるプレゼンスを上げること」を目的に始められたものとされとる。
それが4年以上も経った2010年10月、つまり去年になって急遽、アメリカが参入してきた。
そして、参入と同時に主導的立場で発言するようになった。ちなみに、現在はアメリカのバラク・オバマ大統領が、そのTPPの議長を務めとる。
それと時を同じくした2010年10月、当時総理大臣になったばかりの菅直人氏が、所信表明演説の中で唐突に「TPP交渉への参加を検討する」と言い出したことで、その存在が初めて日本の国民に知れ渡った。
それまで、どのマスメディアでも話題にすら上らなかったものが一躍脚光を浴びて、その名前だけが広く一般に知られるようになったわけや。
ワシらも含めてTPPの内容を詳しく知っている者は、ほとんどおらんかったのやないかと思う。
昔から、アメリカの意向、することに追随するというのは日本政府の定番姿勢のようなところがあった。
アメリカがクシャミをすれば日本が風邪をひくと言われている所以でもある。
アメリカに異を唱えることもなく、半ば盲目的に従ってきたという日本の立場からすれば、アメリカの意向を受けて、急遽、TPP交渉への参加を打ち出したというのは、肯けない話ではないとは思う。
しかし、本来は政治のやることに対して監視する立場であると自認し、広言している新聞やテレビといったマスメディアが、それに追随するかのような報道一色に染まったというのは頂けない。
おそらく、そのマスコミ連中も正しくTPPを理解してなかったのやないかと思う。理解していたら、少なくともそんな報道にはならんかったはずや。
これに関しては、ワシらのようなド素人でさえ、ちょっと調べるだけで、日本を引き込むためにアメリカが、急遽、TPPに参加することにしたのやないかということくらいは、すぐに分かったさかいな。
ほぼ、それに間違いないと言える理由もある。
アメリカと日本は、1950年代から60年余りもの長い間、様々な形で貿易摩擦を繰り返してきたという歴史がある。
未だに解決できていない部分が多い。その大きな部分が日本の農産物の関税率の高さと輸入基準の厳しさやという。
しかし、日本をTPPに引き込むことができれば、その貿易摩擦は一気に解消できる。
何しろ、全品目の関税の全面撤廃、あらゆる貿易障壁の撤廃、サービスの自由化をすると謳っとるわけやさかい、それらが一気に解決できるわけや。
貿易摩擦の解消は、一見良さそうなことのように思える。
ただ、いくらアメリカに追随することの多い日本といえども譲れない部分というのも多い。
せやからこそ、60年余りもの長きに渡り、お互いが熾烈なせめぎ合いをしてきたわけや。
工業製品の関税撤廃は産業界には有利に働くかも知れん。その分、安く売れるさかいな。
しかし、それもアメリカは計算していて、そのために頑としてドル安、円高を是が非でも維持しようとしとるものと思われる。
そのTPPが締結されてしまえば、円安に移行するのは今よりもっと考えにくい状況になるのは、経済の素人であるワシらでも簡単に予測できる。
過去、日本が円高傾向になったのは、日本の経済力が急成長したためで、それは仕方ない。
ところが今は違う。
アメリカのドルにしろ、ヨーロッパのユーロにしろ、中国の人民元にしろ、自国の経済力とは違うところで、自国の通貨を安価にして円高を維持させようとやっきになっているようなフシが見受けられる。
単に輸出の競争力をつけたいという理由のみで。
TPPへ参加することによる問題点は多い。
ここで、TPP推進派の主張と反対派の主張を、その問題点毎に挙げて、比較してみるので、どちらの言い分に賛成できるか、それぞれで考えてみてほしいと思う。
ウィキペディア 環太平洋戦略的経済連携協定 より一部引用
1.農業について
推進派の主張
関税が撤廃されると海外の廉価な農産物との間に、競争激化が予想されるが、ヨーロッパ諸国のように農家への戸別補償の実施によって、ある程度までの農業の保護は可能である。
また日本の農業は価格・効率面で欠点はあるが、集約型で独自の発展を遂げた為、特に米に関して味覚的に決して劣るものではない。
社会面での対策・質面両方を掛け合わせれば、長期的には輸入農産物に対して対抗が可能である。
反対派の主張
米国・豪州・東南アジアから廉価な農作物が国内に無関税で流入すれば、日本の農作物はその価格差から対抗ができない。
放置すれば、NAFTA締結後のメキシコのように壊滅し、日本は食糧自給力を完全に喪失、以後、国民の食生活は投機の対象になるだろう。
また農家は戸別補償が不十分なら、収穫品の価格低下により収入を減らし失職、日本全体の失業率を上げ、社会不安の要因にもなる。
完全な戸別補償は可能だが、それは農業従事者(340万人)の数だけ公務員を増やすことと同義になり、国家にとって大きな負担になる。
2.食の安全について
推進派の主張
非関税障壁の定義がまだ曖昧である以上、TPP参加を即、遺伝子組み換えに始まる食品の安全表記義務の撤廃と結びつけるのはナンセンスである。
また仮に撤廃されたとしても、自然食品等に対するNon-GM表記は可能であり、選択に多少手間をかけることで、消費者には対策が可能である。
さらには遺伝子組み換え食品の危険性は、まだ立証されていない。
反対派の主張
TPP以前から、米国は日本にBSE疑惑のある食品や遺伝子組み換え食品、多数の食品添加物、食品農薬残留値に対する規制の緩和を要求しており、TPPの原則「非関税障壁の撤廃」と、日本の食品の安全基準がリンクされる可能性は極めて高い。
TPP参加後は従前の基準が「障壁」として、海外のメーカーに政府や自治体は提訴される恐れがあり、日本は高確率で規制の大幅な緩和を強いられる。
一部の米国産牛肉や遺伝子組み換え食品の安全性は未知数で、EU全国を始め世界各国が厳しく規制しているところを考えると、こうした選択は食の安全の軽視と言える。
3.関税について
推進派の主張
TPPの最大の目的は、多国間の貿易自由化であり、一義的には関税の撤廃である。
日本がTPPに参加をすれば、他の加盟国全てにおいて日本製品に対する関税は撤廃されることになり、日本製品の輸出能力は強化される。
それは日本の製造業を活性化させる機会になる。
反対派の主張
日本は既に米国を除くTPP参加国の殆どとFTA・EPAといった貿易協定を締結済みであり、関税面での実質的なメリットは、米国内における対日関税(2.5%等)の撤廃のみである。
ところで、日本は内需88%の内需依存国であり、かつ対外貿易における米国のシェアは14%に過ぎない。
よってTPPによって米国内での関税が撤廃されたところで、日本経済への波及効果は限定的である。
4.医療について
推進派の主張
TPPにおける非関税障壁の定義は曖昧であり、日本の国民健康保険がそれによってサービスの縮小を求められたり、混合診療の解禁に繋がるとは限らない。
また混合診療の解禁は、患者の選択の自由の向上に繋がり、難病患者はそれを克服する機会が増えるだろう。
反対派の主張
米政府は、日本にTPPの関心事として日本の医療を挙げており、TPPへの参加によって日本の医療・医療保険が自由化を迫られる可能性は極めて高い。
具体的には、病院の株式会社化(日本では違法、米では合法)、国民健康保険制度の縮小が挙げられる。
民間保険の圧迫(貿易障壁)として、混合診療の解禁などを招く可能性があり、前者は医療サービスの質の低下、後者二つは国民一人当たりの医療費の大幅な高騰を招くと予想される。
5.TPPのISD条項について
推進派の主張
ISD条項による利害得失は、日本も他国も同じ。日本企業も不都合があれば、他国政府・州政府を提訴可能。
反対派の主張
TPPのISD条項によって、外資系企業への内国民待遇が課せられ、公平性の毀損とみなされた国内法は非関税障壁として、(外資系企業により)提訴、莫大な賠償請求を受ける可能性がある。
その場合、環境面や福祉面など諸分野において、しばしば日本政府や自治体は高額の賠償支払いやそれを避ける為の条例・法律の改訂を余儀なくされ、あたかも外資系企業による内政干渉のごとき事態も招きかねない。
またその訴訟が日本国内の裁判所ではなく、米国内の世界銀行傘下のICSID(国際投資紛争解決センター)で、一審制、非公開で行われることも問題である。
6.経済・貿易について
推進派の主張
グローバル化が進む世界経済において、日本は周辺国と比べて出遅れている感が否めない。
今回、太平洋を挟む9ヶ国が連帯を結成したのは、その遅れを取り戻すチャンスである。
不参加は日本の孤立をいよいよ深め、まさに平成の鎖国と言えよう。
2011年11月のAPECで強い指導力を示す為にも、日本は一刻も早く、この近隣の連帯に参加し、経済交流・発展を図るべきである。
また、TPPの参加によって、内閣府の試算によれば、10年間で2.7兆円(1年あたりに直すと2700億円)のGDP波及効果が見込まれる。
ちなみに2010年度の日本の実質GDPは539兆円であり、TPP参加により日本のGDPは、年あたり0.05%増加する計算になる。
反対派の主張
TPP交渉参加国は、2011年11月現在9カ国に過ぎず、日本を含めても10カ国である。
それは決して全世界ではなく、そればかりかアジアの先進国である韓国・中国・台湾も欠いており、地理的にも経済的にも、ローカルで中規模な国際連帯に過ぎない。
また参加国の顔ぶれは、日米を除くと、残りは発展途上国か人口の限られる資源国・都市国家だけであり、これらの国々は内需が少なく外需依存(輸出依存)の構図を持っている。
よって、日本が参加しても市場があまりに狭い為、輸出先としては旨みがなく、むしろこうした国々の低賃金労働力によって生み出される安い産品・サービスによって、日本の市場も公共サービスも、食い物にされるだけである。
経済的に日本にとっては、百害あって一利無し。僅かGDP波及効果0.05%の為に、これほどまでに犠牲を払うのは愚行であろう。
7.大企業・経団連について
推進派の主張
自動車メーカーをはじめとする日本の複数の大企業は、世界各地に工場・下請け企業を持ち、人件費・素材費・法人税・インフラ状況など展開する先々の国の諸条件を勘案しながら、コスト面を重視した効率的な運営を望んでいる。
そうした諸企業において、TPPが掲げる9ヵ国共通ルールの整備・貿易障壁の撤廃は、企業内貿易(部品のやり取りなど)をやりやすくし、企業利益の向上に繋がる。
ただし、米側は日本の自動車市場を閉鎖的としその開放も求めており、これに対しては、日本の自動車業界は反発している。
反対派の主張
一部の大企業はTPPによって潤うかもしれないが、海外に十分に事業展開のできない国内の中小企業には旨みがなく比較劣位に立たされる。
そして国際障壁の撤廃によって、大企業の海外進出・日本空洞化の波は加速し、国内中小下請け業者への受注は減るであろう。
またこうした大企業の法人税はその展開する先々の国に納められるであろうから、彼らの利益が日本国の税収を増やすとも限らない。
つまるところ、大企業の利益が、日本・日本人の利益になるとは限らない。
8.地方経済について
推進派の主張
日本は地方自治体の政府調達を各国の企業に解放しないといけない反面、他のTPP参加国の州政府・自治体の政府調達も国際的に解放されるので、それがトータルで日本の不利を意味するとは限らない。
ただし、現在のところ、米国を除くと日本と他のTPP参加国では、金額的な市場規模の大きさは違いすぎるので、それがどれだけ日本側の旨みとなるかは未知数である。
反対派の主張
政府調達の公開入札基準額は大幅に引き下げられ、かつ地方自治体も外資に解放され、公共サービスの入札と競争は過激化する。
結果、外資の落札は相次ぐだろうが、彼らはその性質上、地元や国内の業者ほどには資金を現地に還流しないことから、地方経済の資金の循環は切れてしまう。
金額的には日本の市場規模は、米国を除く他のTPP参加諸国の市場の数倍な為、公共工事の受注を通して、日本からは資金が国外に流出する。
日本企業が獲得する海外受注分を、国内からの流出分が必然的に上回る。
9.ラチェット規定について
推進派の主張
自由化を促進することにTPPの意義はあるのだから、その後退にあらかじめ歯止めをかけるのは当然である。
そもそも、ラチェット規定は日本が過去にEPA交渉において他の国に要求したこともあるルールである。
反対派の主張
TPP参加後は、参加国諸国はラチェット規定により、自由化・規制緩和の後退を禁止される。
すなわち、一度決めた規制緩和は後で問題が発生しても元に戻せないのである。
また、TPPのルールの変更には、他の参加国全ての承認がいる。
よって日本は、一端この組織に加盟してしまえば、それが国益に合わないとわかっても、容易には改善ができなくなる。
また、TPPからの離脱宣言は可能であろうが、それには、TPP参加後に日本国内に進出したり事業を拡大した外資系メーカーからの、莫大な賠償請求訴訟の連発が予想され、極めて困難である。
10.労働者・移動の自由化
推進派の主張
ある程度の海外からの労働者の流入は起こるだろうが、それは日本の製造業に活力を与える。
それだけでなく、国内で低賃金労働力の雇用が可能になることにより、これまで日本で進んでいた工場・会社の海外移転、産業の空洞化は減速する。
反対派の主張
TPPへの参加により、参加国間の労働者の「移動の自由化」が促進されれば、TPP参加の東南アジアや南米諸国から低賃金労働者や技術者が多量に流入することになり、それは必然的に日本人の賃金の低下、失業率の増大を招く。
また国内には外国人街が形成され、かつてのヨーロッパ諸国で起きたような治安問題や文化間の摩擦は必ず発生する。
以上や。
最後の『10.労働者・移動の自由化』が、Gさんの『雇用の面から見て大反対です』と言われる理由やろうと思う。
実は、新聞販売店でも近年、外国人配達員、従業員が増えとる。さすがに、外国人の拡張員というのは聞かんがな。
現時点でも安い労働賃金の外国人労働者によって、日本人の雇用が減り、リストラが増えとるケースが多いという。
それによって、ホームレスにならざるを得ない人もいとると。
それがTPPの参加によって、さらに深刻な問題になるやろうなというのは、容易に想像できることや。
それ故、不安に思う気持ちは良く分かる。
デフレになるという心配も、安い農産物や工業製品が入ってくれば、その競争のため、そうなる可能性は否定できんやろうな。
しかし、これに関しては、過去、韓国や中国から、そうした安価な輸入品が大量に入ってきた経験があるから、ある程度の免疫はできとるものと考える。
それに対抗するには、今と同じように価格競争をするのやなく品質競争に持ち込めばええのやないかと思う。
日本には昔から、「安物買いの銭失い」ということわざもあることやし、何でもかんでも安ければええという国民性でもないと考えるがな。
ただ、何度も言うが、ワシらが調べた限りではTPPの参加によるメリットに比べるとデメリット方が大きすぎるのは間違いないと思う。
明るい展望というのが、あまりにも少ない。アメリカに嵌められるやろうというのは予測できるがな。大いなる陰謀が働いとるのないかと。
今、賛成か反対かと問われたら、ワシには反対やと答えるしかないわな。
このTPPへの参加については、ここのところ懸念する意見が、政府与党内からも噴出していて、どうなるかはまだ予測できんが、我関せずでは大変なことになりそうな気がするので、折りをみて、また話したいと思う。
他にも問題が山積みしとるようやしな。
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