メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー

第186回 ゲンさんの新聞業界裏話


発行日 2011.12.30


■2011年の出来事……歴史に残る東日本大震災と原発事故について


今年を振り返るとき、3月11日に起きた東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故を抜きには語れない。

このメルマガでも8回に渡って、その問題点を取り上げてきた。(注1.巻末参考ページ参照)

いずれも日本、いや人類の歴史上、消えることのない大災害であり、汚点となる大事故やったさかいな。

未来永劫、語り継がれることになるのは間違いない。

2011年3月11日14時46分18秒。東日本大震災が発生した。

震源地は三陸沖の牡鹿半島の東南東130キロの地点。震源の深さは約10キロと比較的浅い。

地震の規模を示すマグニチュード(M)は9.0。阪神淡路大震災の約180倍の破壊力やという。

気象庁の震度速報によると、宮城県北部で震度7、福島、茨城、栃木県などで震度6強、岩手、群馬、埼玉、千葉県で震度6弱を記録したとある。

震源域は岩手県沖から茨城県沖までの南北約500km、東西約200kmの広範囲に及んだ。

地震で北海道、東北、関東、東海、関西の太平洋沿岸のほぼ全域に大津波警報が発令された。

その直後、岩手県、宮城県、福島県などでは最大15メートル超の津波が押し寄せ、道路が冠水、海岸の車や住宅が押し流され、火災が発生するなどの被害が発生した。

この火災の発生により沿岸の石油コンビナートの貯蔵タンクの破損、また津波で押し流された船舶や車などからも大量のガソリンが漏れ出し、それが内陸部まで運ばれた。

津波が引く際、海面に浮かんで漂っていた油が瓦礫の漂流物に取り付き、それに何らかの原因で引火したものと言われている。

専門家の話では発火の原因として、鉄と鉄とのぶつかり合う際にできる摩擦熱や火花、千切れた電線によるショート、エンジンをかけたままの車の存在など、さまざまなことが複合的に考えられるという。

その光景も、津波とはまた違う地獄絵図やったと言える。

この大津波のため、地震による直接的な建物や家屋の倒壊、および被害者は未確認のままやという。

大半が津波に呑み込まれたために調べようがないと。

津波以外にも液状化現象、地盤沈下、ダムの決壊などによって、東北と関東の広大な範囲で被害が発生している。

2011年12月22日現在、死者は15,843人、重軽傷者は5,890人、警察に届出があった行方不明者は3,469人と発表されている。

建築物の全壊、半壊は合わせて35万戸以上。ピーク時の避難者は40万人以上。停電世帯は800万戸以上。断水世帯は180万戸以上に上ったとされているが、未だにその詳しい被害の実態が把握できていない。

また、高齢者を中心に避難所の不衛生や寒さなどによる死者は3月末までに280人を超えたという。

まさに未曾有の大震災やった。

それだけでも大変な災害やのに、それに輪をかける人災とも言える重大な事故が重なった。

東京電力福島第一原子力発電所事故が、それや。

地震と津波により電源が使えなくなったことで原子炉を冷却できなくなり、炉心溶融(メルトダウン)や水素爆発にまで至ったとされている。

結果、放射性物質が大量に外へ漏れ出し、現在も尚、出続けているという。

それまで最悪とされていたチェリノブイリ原発事故を超える大事故になった。

チェルノブイリ原発事故とは1986年4月26日、当時のソビエト連邦(現、ウクライナ)で起きたものや。

その事故の際、広島に投下された原子爆弾約500個分に相当する量の放射性物質が大気中に撒き散らされたという。

それよりも、今回の東京電力福島第一原子力発電所事故の方が大きいということになる。

大震災による津波被害だけのことなら、どんなに悲惨な状況であっても復興、修復は少しずつでも前進することはできる。

残念ながら失われた人命は戻っては来ないが、後に残された者は辛くても、その人たちの分も頑張って生きようと考えられる。

どんなに悲惨な状況であっても、その事が終われば、人は例え一からでも、マイナスからでも立ち上がって、やり直そうという気になれる。

日本が、戦後、驚異的な復興を為し遂げられたのも、そうや。

今回のように家々が瓦礫と化し、焼け野原になった状況が日本全体に点在していた。

そうであっても、それ以上は終戦ということで悪くなることがなかったさかい、人々は明日に希望を持って頑張ることができた。

その頑張りにより、世界に類を見ないほどの驚異的な復興を成し遂げ、世界のトップクラスの国にまで昇り詰めることができたわけや。

しかし、福島第一原発事故が、その復興に水を差した格好になっている。

事故そのものは、大震災と津波被害によるもので天災との見方もできるが、地震国日本で、その主張は許されない。

日本では「地震は必ず起きる」というのは常識や。すべての建造物は、それを前提として安全に建てる必要がある。

特に、原子力発電設備に関しては、その導入当時から賛否両論があり、万が一事故が起きた場合の危険性を指摘されていたにも関わらず、それを「絶対安全だから」と押し切って国策として作ったという経緯がある。

例え今回の地震の規模と津波の威力が「想定外」であったとしても、「絶対に安全だ」と主張し続けた限りは、その「想定外」を理由にするべきやない。

どんな事態がおきようと、すべてを「想定内」とし、「絶対に事故が起きてはならない」施設は、何があっても事故を起こしてはならんように配慮する必要があった。

そして、現実に、こういった事故が起きたということは、その見込みが甘かった、悪かったという何よりの証になる。

長年に渡り「絶対」という言葉を使って、「原発不要論」、「原発危険論」を封じ込めてまで、強引に原発を導入してきた限りは、それでは済まされん。

福島第一原発事故には、未だにその終わりが見えない。

12月16日に野田総理が「原子炉の冷温停止宣言」(注2.巻末参考ページ参照)を行った記者会見があるが、まったくの茶番としか言いようがない。

原発の第一人者でもある京都大学原子炉実験所助教授、小出裕章氏によると、

原子炉圧力容器の中に水がたまっている状態で炉心が水の中につかっていて、その水の温度が100℃を超えない状況にあるというのが冷温停止という概念とのことや。

それやのに、圧力容器はおろか格納容器すら破られているのに冷温停止という言葉を使うこと自体がおかしいという。

工学的な常識をはるかに逸脱したことを言っていると。

現在もコンクリートの床の上に2800℃を超えた溶解物質がコンクリートを溶かしながら、下にめり込んでいきつつある状態とのことや。

東京電力もそれは認めて、そう発表もしている。

その時に水を上からかけたとしても表面は冷やすことができるが、コンクリートの中にめり込んで溶けている塊までは、とても冷やせない。

それがもう突き抜けているかもしれない。誰もそれを確認することができない状態にあると。

冷温停止状態どころか、これからまだまだ危険な状態になっていくと考えられると小出裕章氏は言う。

小出氏の見解には説得力がある。まず、そのとおりに間違いないだろうとワシらも思う。

なぜ、いずれ分かってしまうような、でたらめを平気で言うのか。

答は一つしかない。

政府としては一日でも早く収束したという形にして、何とか原発の運転を再開したい、原発事業を推進していきたいということに尽きる。

原発事故の発生した当時から、事態は日を追う毎に悪化していっていると、以前のメルマガで言うたが、本当にそのとおりになっとる。

その過小評価の発表の裏には国民の原子力に対する無知につけ込んでのことやろうが、バカにするのもほどほどにしとけと言いたい。

誰も、この野田首相の冷温停止宣言なんか信用しとる者はおらんはずや。

これだけ、ええ加減な情報を垂れ流していたということが露呈している状態では信用しろと言われてもできるもんやないわな。

政府は必死になって原子力発電が否定されることを避けたいのやろうが、却って逆効果になっとる。

はっきり言うが、政府や役人、電力会社が考えとるほど、国民はバカやないで。

多くの国民が、日本に『原子力発電は必要ない』という答を出しているという事実をみても明らかやと確信しとる。

それを政府や役人、電力会社が認めたがらんだけの話でな。

まあ、本当のバカは、連中のように自分たち以外はバカやと考えとる人間やけどな。救いがない。

既得権益か何かは知らんが、多くの人たちの命と財産、生活を引き換えにしてまで得ようというのは大量殺人を犯した凶悪犯と何ら変わりがない。

一般人が放射性物質を空中に散布すれば確実に逮捕され刑務所行きは間違いない。

しかし、今回のように、その考えの甘さから大量の放射能洩れが起こっているのにも関わらず、誰もその責任を取ることすらない。

それで良しとしとるようなところがある。

そんなバカな話があってええのかと思うが、そのバカな話があるのが、今のこの日本の現状なわけや。

そんなことが許されてええはずはない。また、絶対に許したらあかん。

それに対して、ワシら国民は大いに怒る必要がある。

その怒りは、原発の即時前面停止、廃炉の選択をするよう仕向けることでしか表しようがない。

奴さんらは何より、そうなることが堪えるさかいにな。

それは、この事故が起きた結果論として言うてるだけやなく、実際にも、その原発が生み出す電力そのものにも、人類にとって取り返しのつかないリスクを負うてまで必要とする理由が何もないと断言できるからや。

原子力発電の推進者たちは、「原子力発電なしでは日本の電力は補えない」とよく言うが、それは明らかな間違いで詭弁やったということが、この数ヶ月で実証された。

12月現在、全原発54基中、7基稼働していて、原発稼働率は14%にまで落ち込んどると言うが、それでも電力不足でどうにもならんという話は聞かん。

それどころか、原発稼働率がゼロになっても十分やっていけるという数字すら出ている。

このまま原発が消えていってくれることを望むが、日本の原子力発電の推進者たちは一筋縄ではいきそうもない。

国会議員や役人、電力会社のトップといった一部の既得権益者には政治的な力を持つ者が多い。

その連中が、そのまま大人しくするとも考えられんし、日本の新聞、テレビ局などのマスメディアもそれに荷担する姿勢が垣間見えることにも用心が必要やと思う。

野田首相のわけの分からん冷温停止宣言を見ても明らかなように、原発を復活させようという意図がありありとしとるさかいな。

『第182回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■報道のあり方 その2 消された「原発国民投票」CMについて』(注1.巻末参考ページ参照)が、その最たる例や。

「原発国民投票」の雑誌特集CMをテレビ局が放映拒否したというものやった。

それについては散々批判したから、ここでの言及は省くが、そういうことをする連中には、ワシら国民も本気で立ち向かうことを考えなあかん時期にきとると思う。

はっきり言うて、もう民主党の現政府はあかん。自民党も原発を推進してきたから、同じ穴のムジナや。頼りにならん。

その2つの巨大政党が、そういう状況やから国民に選択権はなさそうに思えていたが、今は僅かながら希望が見えている。

橋下徹大阪市長率いる「大阪維新の会」というのが、それや。

中央の政界に打って出るために「維新塾」というのを開いて国会議員を送り出す準備をしとると言うが、もし、本気でそう考えておられるのなら、必ずや一大勢力になるのは間違いないと思う。

橋下徹氏には既存の政治家には、なし得ないバイタリティと行動力を感じる。

原発は不要という主張一つとっても共感できる。役人に対して厳しく接する態度もええ。既得権者に宣戦布告しとるのも小気味の良さを感じる。何より有権者以外のバックを持たんという姿勢が素晴らしい。

現時点では、まだ希望的観測にすぎんかも知れんが、橋下徹氏が本気で国のために立ち上がれば、本当に日本が変わるような気がする。

そう思わせるものがある。

少なくとも、ワシらが今選択するとしたら、橋下徹氏率いる勢力以外にはない。

民主党や自民党を選んでも、このままずるずると底なし沼に引きずり込まれるだけやしな。

座して死を待つに等しい。

もうそろそろ日本の政治は組織票重視の時代は卒業せなあかんと思う。

組織におもねる限りは絶対にまとな政治なんかできるわけがない時期にきたと知るべきや。

民主党も組織に依存しとるからこそ、あれだけ国民のためになると胸を張って、その支持を得ていた根源でもあるマニフェストを悉(ことごと)く破らなあかんことになっとるわけやさかいな。

財源不足やと言うが、その財源を今まで食い荒らして借金地獄に落とし入れたのは、その政治であり、国の役人、行政の責任以外の何ものでもないわけや。

行政を徹底的に切り詰めさせれば、その財源なんかすぐ出てくるし、そこまですれば国民も協力する。

それに切り込めんのでは話にならん。

民主党のように公務員の労働組合が支持母体と言うんでは、公務員改革や霞ヶ関改革など夢のまた夢やわな。

やれと言うてもできるわけがなかった。

それなしに増税だけすると言うのでは、本来責任を負うべき立場の役人たちを、さらに優遇する結果にしかならんことは火を見るよりも明らかやと思う。

それが引いては原発を推進させる原資にもなり得る。

民主党政治の唯一の成果は、国民にそのことを気付かせてくれたことかも知れんという気がする。

本来、政治家がおもねるのは国民一人一人であるべきやと。

国民のために何ができるかが政治で、組織や一部の既得権者を守る、優遇することやないと。

そして、組織に属する人たちも、単に上からの命令で組織票の一つに数えられるような愚はもう止めることやと言うとく。

ええ意味で自分というものを持って組織を裏切って欲しいと思う。

組織の前に、意志を持った一人の人間、個人であると。

ワシは、新聞拡張員ではあるが、その前に一人の日本国民であるという思いを常に持っとる。

せやからこそ、新聞社や業界関係者が、国民に背くような真似をしとると気がつけば、その行為に対して声を上げて反対、批判するようにしとるわけや。

これからもそうする。

組織の一員やからと言うて、どんな愚でも賛成するというつもりは、ワシらにはさらさらないさかいな。

はっきり言うが、いくら組織のために尽くそうが組織は簡単に個人を見捨てるで。

そうしても屁とも考えとらんし、何の痛痒も感じん。それが組織というもんや。

リストラが、そのええ例やと思う。組織は生き残るためには当然のように個人を切り捨てる。そういう人は腐るほど見てきた。悲惨なものや。

僅かな希望であっても、来年にはそれが現実になるかも知れんという気がする。

もっとも、橋下徹氏に限らず、原発を廃止し、税金の無駄遣いをなくすために本気で尽力する人物が台頭すれば、ワシらは及ばずながら応援したいと考えとるがな。

来年こそは、そんな明るい未来が待っていると信じたい。

今年1年、お付き合い頂き、まことに感謝している。

それでは、来年2012年こそは、それぞれに良いお年でありますように。



参考ページ

注1.第145回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■東北地方太平洋沖地震の悲劇の実態と今後の対策について

第146回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■情報を伝える人々の使命感と気概、そして新聞の存在意義について

第147回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■原発事故による風評被害と震災に関したデマ情報流布の対策について

第150回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■日本復興への提言 その1 原子力発電の廃止とその代替案について

第153回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■日本復興への提言 その2 原子力発電廃止の流れを止めるな

第158回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■日本復興への提言 その3 リーダーの選択を誤るな 

第161回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■日本復興への提言 その4 「どないなっとんねん」が多すぎる

第182回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■報道のあり方 その2 消された「原発国民投票」CMについて

注2.原子炉の冷温停止宣言


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