メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー

第187回 ゲンさんの新聞業界裏話


発行日 2012. 1. 6


■2012年の抱負について


一年の計は元旦にあり。

これは、今年一年の計画は元日に立てるべきやという意味で昔から言われとる、あまりにも有名な諺(ことわざ)や。

何事も最初に計画を立てて準備、実行することが大切やという教えでもある。

そこで、ワシらも今年一年の計について考えてみることにした。

まず、メルマガやが、基本的なスタイルの変更をするつもりはなく、このまま続けることで二人の意見は一致しとる。

サイトは開設してから8年になるので、そろそろリニューアルした方がええかなということになったが、問題が一つ浮上した。

ハカセはこの際、5年以上酷使した古いパソコンも買い換えようと考え、先日近くのある大手の家電量販店に行った。

現在、売っているパソコンのOSはウインドウズ7が主体や。

ハカセは過去にも、ウインドウズ95から98、98からウインドウズXPに切り替えた経験があるから、さほど問題はないやろうと考えウインドウズ7を購入しようとした。

ハカセが現在使っている同じメーカーで5万円程度の安いノートパソコンが売られていた。

どうやら正月特価ということらしい。

メモリは4GBありハードディスクの容量も1TBある。Microsoft Office2010のソフトもついとる。

ちなみに、ハカセがメインで使うとるノートバソコンは、メモリ1GBでハードディスクは60GB。Microsoft Office2003のソフトがついていた。それでも当時は12万円もした。

昔からパソコンは少し年月が経つと性能は格段に良くなり、価格も安くなるというのは知っていたが、まさかここまで違うとは考えてもなかったとハカセも言う。

これは買うしかない。そう決めてそのパソコンを眺めていたところ、さすがと言うべきか、素早く売り場の係員が声をかけてきた。

メーカーから出向しているという、その係員の説明を聞いて驚いた。と同時に、ハカセは購買意欲をなくしてしまった。

「すると、ウインドウズXPで使っていたホームページソフトはウインドウズ7では使えないということですか」と、ハカセ。

「ええ、特にお客様の使っていらっしゃるソフトはバージョンが相当古いのでウインドウズ7では無理だと思います」と、その係員。

「それなら、どうすれば?」

「新しくウインドウズ7に対応した最新バージョンのソフトを買って一から構築し直すしかありませんね」

「一から? そんなアホな」

サイトは足かけ8年、平均して2、3日に一度の更新をして、悠に2千ページ以上の文書量と途方もない数のリンクページが存在する。

そんなものを一から構築し直すなど物理的に無理やし、気力も湧かんとハカセはボヤく。

「何か方法はないんですか?」

「それぞれのソフトのメーカーに問い合わせて貰うしかありませんね。私ではそこまでは分かりませんので」と、冷たくそう言い放つ。

ウインドウズXPで使っていたソフトがウインドウズ7では使えないという苦情が多いため、最初にそう断っておくのやと。

その親切心は分かるが、それでは購買意欲が完全に削がれてしまう。

営業員なら、もう一歩踏み込んだ知識と説得力を持つようにした方がええと思う。

具体的には、どうすればウインドウズXPで使っていたソフトをウインドウズ7で活かすことができるのかといった方法の提案をすることや。

すべてのソフトは無理やとしても苦情が多いという凡庸ソフトくらいは調べておいてもええのやないかと思う。

探せば、何かその方法があるはずや。ないとおかしい。

もっとも、その係員の目的が、売り込むことよりもトラブル防止にあるなら、その対応でも構わんがな。

ただ、今年中にはウインドウズ8が発売されるということやから、その対応をしてもすぐに時代遅れになる可能性が高い。

さらに、その4年後には、また次のバージョンのOSが登場するのが決まっている。きりがない。

ここは、今使ってるウインドウズXPをとことん使う方が得策やとハカセは判断したという。以前ウインドウズ98を7年間使い続けたように。

いよいよあかんとなった場合に、その時代の最先端のOSにすればええことやと。

したがって、リニューアルしたとしても大きくは変えられないという結論に至ったということや。

「ゲンさんの今年の抱負は何かありますか」と、ハカセ。

「ワシは、特に何もないな」

今年還暦を迎えるような歳になるせいかも知れんが、何か新しい事を始めるというのを考えること自体が億劫になる。

今までどおり、営業に磨きをかけ新しい方法を模索することくらいしか考えつかん。

「ハカセはどうなんや? 今年は小説を書くんやと言うて張り切っとったようやが」

「ええ、今年1年は、いろんな文学賞に応募してみようかと考えていますので」

去年も二つの文学賞に応募して、それぞれ特別賞、第3次選考まで残ったことで、よけい気を良くしたのやという。

受賞まで、あと一歩やと。

もっとも、その後一歩がとてつもなく遠いというのは、ハカセ自身、30数年前に嫌というほど味わったということではあるがな。

人生に悔いを残さんという意味でもチャレンジするのは悪いことやないかと思う。

惰性で生きとるワシからすれば、その気概があるだけ羨ましい。

応募作品はメルマガの関西弁とは違い、普通の文体にしとるという。

それについては、文学賞の選考者には、あまり奇をてらったものは不利だという助言を、日ごろから個人的に懇意にして頂いている出版社の方から受けたので、素直にそれに従っただけということもある。

このメルマガでは、ワシの聞き語りにしているという手前、関西弁で書いとるが、本来の作風は違う。

もっとも、メルマガやサイトを8年近くも続けていると、ついその癖がところどころに出てしまうということやがな。

以前は、関西弁にすることで苦労していたが、今はそれを消すことに腐心しとるという。

本当なら、それらの作品をサイトにでも公開して読者からの厳しい批評を受けたいところやが、多くの場合、応募作は他では公開できん、したらあかんようになっとる。

今年1年が過ぎて、ことごとく落選した場合、新たなサイトでも立ち上げて、そこでそれらの作品を掲載して読者に批評して頂くのもええかなとは考えとるがな。

以前にも言うたが、サイトで公開するつもりはない。メルマガやサイトの基本はノンフィクションで創作とは違うさかいな。

応募作は、それらを膨らませて書くこともあるので、そうするのはよけいまずいわけや。

小説というのは本来、読者に面白く読んで貰えるように書くことが基本やが、文学賞の応募作に関しては若干、違う。

まず選考者の目に適うものやないとあかんということがある。それも第一次選考を突破せんことには話にならん。

第一次選考者は、その文学賞を主催する出版社の編集者であったり、まだ名の売れていないその文学賞を受賞したプロ作家だったりする。

つまり100パーセントの確率で、一番最初に応募作を読むことになるのは文章の専門家と呼ばれる人たちや。

そこで、はねられたら後がない。人知れずゴミ箱行きになって終わる。

たまに、メルマガやサイトに作家希望やという人たちから小説を書く上での助言を求められることがあるが、ハカセはやんわりとそれを断ってきた。

ハカセ自身が小説家の域に達してないという思いもあるが、それ以上に実績がないからというのが、その理由の大半やった。

今日は正月ということもあり、特別賞、第3次選考止まりの実績で良ければ、ハカセが日頃、心がけている文学賞の応募の心得を、特別に公開するという。

言うとくが、そのとおりにしたからと言うて、必ず受賞するとは限らんで。

ただ、何も考えずに応募するよりかは、いくらかマシやという風に捉えて頂ければと思う。

基本的な筆力さえ備わっていれば、一次選考を通過する可能性が高くなるのやないかという程度やな。


小説の文学賞、新人賞に応募するための心得


1.最初の数行、数枚に全勢力を傾ける。

本屋に行って本を手に取るとき、その本がどんなものか分からない場合、たいていの人は最初の出だしの文章を読んで判断する。

それで面白そうやと判断すれば読み続けるし、面白くないと思われれば、そこで読むのを止める。

それは選考者も同じや。プロの読み手ほど厳しくシビアやと言える。

このとき、間違っても無理して最後まで読んで貰えるなどとは考えんことや。

具体的には、意外性のある出だし、緊迫感のある出だしにすると人を惹きつけやすい。


2.ありがちな話、設定にしない。

小説には人情話、ミステリー、ファンタジー、SF、ホラーなどといった様々な分野があるが、そのいずれを選択して応募するにしても、その分野でありがちな話、設定は避けた方が賢明やと言われている。

選考者は既視感のある作品と見れば、オリジナルティなしと判断して、ほぼ100パーセントの確率で除外するという。

なぜなら、多くの場合、主催者側はその部門での新しい才能を発掘するというコンセンサス(総意)を持って選考にあたるよう選考者に指示しとるからやと。

プロの読み手は、当然のように相当数の小説や本を日頃から読んでいるのが普通や。

有名作家の作品はもちろんのこと、無名でも話題性のある作品は欠かさず読んでいるものと考えとくことや。それには現在、過去を問わない。

それらと酷似した話は落とされる可能性が高い。

また、そういう人たちは映画やテレビドラマも良く見るというから、そこからヒントを得るにしても既視感が伴わない工夫をすることが必要になる。


3.選考者を感心させ、唸らせる。

具体的には、選考者の知らない世界、ウンチクを書くことや。

これは一般の人に対しても言えることで、そこに書かれている内容で某かの知識が得られるから本を読むという人が多い。

また、それがあることで面白いと感じる。

一般に知られていない内容ほど価値が高い。それで選考者を感心させることができれば、かなりの高確率でそのランクの選考は通過する。

ただ、その専門家以外には分かりにくいものは却ってマイナスになるから気をつけた方がええ。

専門用語の多用も控えた方がええし、分かりやすく説明する必要もある。

もちろん、小説は物語主体の読み物で学術書などの専門書やないから、だらだらと長引く過度な説明もまずいがな。

専門的なことを分かりやすく物語の中に融け込ませれば完璧やが、それはプロの作家でもなかなかできることやないから、まずは「おっ、これは」と思わせられるウンチクを幾つか挿入するように心がけることや。


4.魅力的な登場人物を書く。

特に主人公のキャラクターは重要で、小説の成否はそれによって左右すると言うても過言やない。

もちろん、主要な登場人物も魅力的に書けるに越したことはない。

実はハカセが、毎回悪戦苦闘しとるのは、そのことやという。魅力的な人物が書けるようになれば、かなりの確率で賞に近づくはずやが、それが難しいと。

言えることは直接的な「格好いい二枚目」とか「もの静かでクールな男」、「ものすごい美人」といった形容で書き表さんことくらいやと。

そういうのは陳腐な表現として問答無用で落とされる。

性格とか心の内面、感情といったものも同じで、「悲しい」、「怒った」などという直接的な形容は避け、その行動、仕草、会話でそれと表現するように工夫することや。


5.選考者は大半が男やということを頭に入れとく必要がある。

これは、ほぼすべての文学賞、新人賞に言えることで、これを見落とす応募者が多いとのことや。

男の目で見て、魅力ある男性、魅力ある女性を書けば選考は通りやすいが、反対やとハテナマークがつく可能性が高い。

これは作者が男性の場合でも女性の場合でも留意しといて損はないと思う。


6.台詞回しを工夫する。

意外に思うかも知れんが、台詞回しの上手いプロ作家というのは少ない。

逆に言えば、その台詞回しが上手くできれば選考が通る可能性は高いと言える。

小説の場合、台詞を単なる会話と捉えたらあかん。進行上、必要かつ重要なファクターやと考えて意味を持たせる必要がある。

台詞回しの上手い作家は、会話だけで場面を進行させることができるさかいな。


7.風景描写の工夫をする。

これに関しては基本的な描写力さえ身につけていれば、それほど問題はないが、それで心理描写まで書き表そうとすると、それなりのテクニックと工夫が必要になる。


8.意外なストーリー展開とスリリングな場面の工夫をする。

意外なストーリー展開は既視感を与えないし、スリリングな場面は面白味を増すことができる。

具体的には、それらの場面では短めの文章の連続がスピード感と緊迫感を生むということで、ハカセはそう心がけとるという。


9.梗概(あらすじ)が必要とされる文学賞、新人賞は、それに本編以上の力を注ぐ。

なぜその梗概が必要かと言えば、それでその人間の構成力、発想力を見るためと、面白いかどうかの判断を素早く下すためや。

裏を返せば、その梗概を面白いものにすれば、即座に落とされることだけは避けられる。

ただ、面白いものにしようとするあまり予告編じみたものにするのはまずい。

ミステリー小説の場合、梗概で犯人が誰かを書いてしまったら面白くなくなって読んで貰えないのやないかと心配する人がおられるようやが、そんなことは考えんでもええ。

読み手はプロやから、その梗概自体をプロットとして読む。それで応募者の力量を判断する。

逆にボカした梗概にすると、作者にその力量がないと判断して即座に落とされる可能性が高くなるということや。


まだまだ他にいくらでもあると言うが、まずはこの程度の知識がなかったら話にならんということのようや。

何度も言うが、これはそうした方がええと言うだけの話で、それをきっちり守ったからと言うて賞が取れる保証はどこにもない。

文学賞、新人賞にもよるが、通常数百から千程度の作品の応募があるから、いくらできが良くても必ず残る、賞が取れるとは限らんわけや。

まさに狭き門やと思う。

さらに、応募した作品を誰が読むのか、担当するのかにもよって大きく違ってくるから、多分に運のあるなしが影響することもあるという。

それは今も昔も、おそらく同じやと。

「何や結局、最後は運頼みか」とは言わんといて。運を招き寄せることができるのは、その方法を熟知して努力した者だけやさかいな。

少なくともワシは、そう信じとる。

以上が、ワシらの2012年の抱負ということになる。

それでは、今年も頑張るので、よろしくお願いしたいと思う。


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