メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー

第188回 ゲンさんの新聞業界裏話

発行日 2012. 1.13


■ある勧誘トラブルから学ぶ契約解除法について


「何かしら?」

主婦のミユキはタンスの上に無造作に置かれていた黄色い紙に気がつき手に取った。

それには「○○新聞購読契約書」とある。

「新聞の契約書?」

しかも○○新聞。○○新聞とは今月の15日で契約が切れるから、それでもう終わりにしようと思っていた。

毎月やって来る集金人にも、「もう契約の延長はしません」と通告もしていた。

契約日の日付を見ると、今月の14日になっている。5日前だ。契約終了日ギリギリの日付である。

その契約書どおりだとすると、契約を更新したことになる。もちろん、止めようと思って、相手にもそう通告しているミユキが、そんな契約書にサインするはずはない。

「お義母さん、ちょっと来てください」と言って、ミユキは今年89歳になる義理の母、ヨシノを呼んだ。

その契約書にサインした人間がいるとしたら義理の母のヨシノしか考えられない。

「お義母さん、これにサインされました? ヨシオさんの名前を書きました?」

ヨシオというのはミユキの旦那で、その契約書の名義人やった。

「さあ、わたいは知らんがね」と、ヨシノ。

認知症を患っているというほどではないが、ヨシノは老人特有の物忘れがひどい。

5日前の記憶などないと言われれば、そのとおりやろうと思う。

前回もそうだったが、○○新聞の販売店の人間はミユキではなく、ヨシノから勝手に契約を取っていた。

それがミユキにとっては許せなかった。

ヨシノは高齢で物事の判断がしにくいから、契約するのなら私として欲しいと念を押していたのにも関わらず、そうした。

そのことを集金人に伝えると、「お宅にお伺いしたとき、奥さんがお留守だったもので」と言って、ごまかされてしまった。

それでミユキが怒って、その販売店と揉めたことがある。「私が留守なら、いるときに来なさいよ」と言って。

その時は、ヨシオに「まあ、ええやないか」と言われたので、嫌々ながら引き下がった。

但し、「次の更新は絶対にしませんからね」とヨシオに言って納得させていた。販売店の集金人にも、そう通告していた。

それがこれである。また、同じ事を繰り返した。

ヨシノには、○○新聞の人間が来て応対するようなことがあったら、ミユキを呼ぶよう強く言っていた。

それがあったから、「新聞屋さんが来たとき、なんで私を呼んでくれなかったの?」と、ヨシノを責めた。

すると、何かを思い出したように、「ああ、そう言うたら、あのときは確か、あんさん、買い物に出かけてはった。わたいじゃ何も分からんと新聞屋の兄さんに言うたら、帰って行きなさったがな」とヨシノが言った。

「これを置いて?」

「そういや、そういうものを置いていったかいね」

「お義母さん、これにサインしました?」

「わたいが字を書くのが苦手なことくらい、あんさんも良う知っとるやろ」

ヨシノの代筆はいつもミユキがしていた。字を書きたがらないのは確かだった。

その契約書を良く見るとヨシノの筆跡ではない。前回もそうだったが、販売店から来た人間が勝手に書いたものに違いない。

前回、揉めたのも、それがあったからだった。

こういうケースでのトラブルはありがちで、おそらく、その販売店の人間がやって来たとき、ミユキがたまたま留守だったというのやなく、買い物に出かける頃合いを見計らって留守を確認してから訪れたものと思われる。

留守番の高齢者だけなら、どうとでもなると考えて。

ミユキは怒って、その販売店に電話した。

「そちらとは、もう契約しないと伝えてたはずです。すぐにクーリング・オフをしますので」と。

「分かりました。そう伝えておきます」と電話に出た事務員らしき女性がそう言った。

それで、一応、ミユキは安心したが、それが間違いのもとだった。

クーリング・オフでの契約解除は文書でするものと法律で決められている。

内容証明郵便や配達証明付きハガキ、簡易書留ハガキというのが一般的や。

いずれも日本郵便(JP)の窓口に出向いて、その手続きを取るようになっとる。

その詳しい方法はサイトの『ゲンさんのお役立ち情報 その8 クーリング・オフについての情報』(注1.巻末参考ページ参照)にあるので参考にして頂けたらと思う。

電話で伝えたからといっても、法律上、クーリング・オフでの契約解除は成立しない。

例えそれで解約が成ったとしても、それは「合意解除」が成立しただけの話になる。

電話を受けた者が「伝えておきます」と言ったのを「解約を了承した」と受け取る人がおられるが、それは違うということや。

実際、その販売店には、そのミユキの意向は通じていなかった。知ってか知らずか通じてなかったことにされてしまった。

電話で販売店に伝えただけやと、そうされても仕方がない。

契約が終了した以降も新聞は投函され続けた。

また電話すると、「あなたからの電話や解約要請はノートに記載されていない」、「例え電話があったとしても書面がない場合はクーリング・オフにはならない」、「クーリング・オフの期間はとっくにすぎているので解約には応じられない」と言われた。

ミユキは「電話したときにクーリング・オフでの契約解除の手続きには書面が必要だということは聞いていません」と、尚も食い下がったが、「私どもに、そのことを説明する義務はありません」と一蹴された。

クーリング・オフというのは法律行為に属することで、その告知さえしていれば業者が、それについて詳しく説明する義務はない。

したがって、これについては、その販売店の言うとおりということになる。

クーリング・オフというのは俗称で、正しくは特定商取引に関する法の第9条、訪問販売における契約の申込みの撤回等という法律のことを指す。

法律は知らない者が悪いとされる。知らなかったからといって法律違反を犯しても罪が免除されることはない。きっちり、その法律で処罰される。

法律を知らないが故に犯してしまう犯罪というのも結構多い。

例えそうであってもミユキは腹の虫が収まらず、新聞社の苦情係に電話した。どうにかならないのかと。

すると、「契約事に関しましては、当該の販売店とお話ください」と冷たく突き放され相手にして貰えなかったという。

ミユキは、こんなバカげたことが許されるはずはない。何か手があるはずだと考え、必死になってネットを検索するうちに『新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A』(注2.巻末参考ページ参照)、つまりワシらのサイトを知ってメールしてきた。

以降は、ワシらのアドバイスを参考にして行動されておられることが多いので、そのつもりで話を続ける。

新聞社に苦情を言う場合は「契約で困っている」というような言い方をすると、まず取り合って貰えない。

個人の購読契約には新聞社は一切関係ない、タッチしていないというのが公の新聞社のスタンスということになっている。

個人との購読契約は新聞販売店の仕事だと。

もっとも、最近では電子新聞というのがあり、こちらは逆に新聞社のみとの契約で販売店はタッチできんということになっとるがな。

ただ、今回のような揉め事は電子新聞ではない。それは購読を続けるも止めるも購読者の自由意志ということになっとるからや。

そのための個人への直接の営業など一切ないから、勧誘員や販売店との揉め事も皆無ということもある。

反面、一般の購読契約にありがちな拡材サービスは、ほとんど何もないがな。

ただ、オチとして、現状ではその契約数は極端に少ないと思われるから、あまり一般には関係のない話と言えるかも知れんがな。

ワシがいつも口を酸っぱくして言うてる「新聞は売り込まな売れん」という真理が新聞社には分かっとらんから、こんなことをするのやろうと思う。

愚行とまでは言わんが、もっと良う考えた方がええのは確かや。こんなことを真剣に続けとるようでは新聞業界に先はないと考えるさかいな。

まあ、それについては別の機会にでもゆっくり話すつもりやから、ここでの言及は止めておく。

話を戻す。

このミユキの場合、新聞社に苦情を言うのなら、契約事で揉めているというのやなく、「不法行為、法律違反で困っている」と言うとくべきやったと思う。

具体的には、このケースやと「貴社の新聞勧誘員が契約名義人の私に無断で契約書を作成して非常に困っています。この行為は刑法第159条の私文書偽造等に該当しますので、そちらから当該の新聞勧誘員、および新聞販売店に注意してください」といった具合やな。

こう言えば無視される可能性は少ないと思う。

要するに契約事で揉めているというのやなく、法律違反によって迷惑している、被害にあっているということを前面に押し出すことがポイントになるということやな。

ミユキはこの後、ワシが内容証明郵便を出した方がええと言うた言葉を信じて、消費者センターとも相談したという。

すると、そこの相談員から「内容証明を送るのは大変なことになるので、手紙を販売店の代表者宛てに送り、目を通してもらってから話しなさい」、「その手紙には法的なことや刺激するようなことは書かない方がいい」、

「それでもクーリングオフで書面を出していないので良心的な販売店でない限り契約解除の丸呑みは難しく、一年契約を半年、あるいはもう少し少なくするという事になると思います」とアドバイスされたという。

そんなことを、本当にその消費者センターの人間が言うたのやろうかと思う。

耳を疑うというか、これほどアホなアドバイスは聞いたことがない。

『内容証明を送るのは大変なことになる』とは、一体どう意味なんや。

その真意を聞きたいもんやと思う。

『その手紙には法的なことや刺激するようなことは書かない方がいい』と言うに至っては、およそ消費者センターの人間らしくないアドバイスや。

消費者センターという所は国の行政機関で法律に則ったアドバイスをするものと義務づけられとる。

それからいくと、契約者に身に覚えがなく、また契約者の自筆でないどころか、販売店の人間が契約者に確認も取らず、勝手に書き込んだものが、どうして契約書として成立すると言うのやろうか。

その理由を聞きたい。

契約書の原則は、契約者が自筆で署名捺印するものと法律ではっきりと決められている。

しかも、この相談者の場合は、契約者が、その契約の存在を否定して抗議しているわけや。これほど分かりやすい契約未成立の事案はない。

本来の消費者センターの相談員なら、それは無効な契約やないかと、その相手方の販売店に、その場で電話を入れて注意しているはずや。

少なくとも、その事情くらいは問い質しとる。

そんなことは基本中の基本で、ほとんどの地域の消費者センターの相談員が心がけとるし、実行しとることや。

それを、この消費者センターの相談員は、初めから契約が成立したものとして、その相手を刺激するなと言うてる。

ぶざけるなと言うしかない。

『クーリングオフで書面を出していない』やと、バカも休み休み言えと言いたい。

契約が成立していないものに、クーリング・オフもへったくれもないで、ホンマ。

もっと、勉強し直せと声を大にして言わせて貰う。

これは大変な問題で、こういう人間が一人でも消費者センターにいとるというのは、その地域の人にとっては大きな不幸や。

まあ、消費者センターの相談員とは言うても、どことも人手が足りないとのことで、臨時の職員や経験の浅い人間も中にはいとると聞くから、たまたまそういう人間に当たっただけなのかも知れんがな。

もちろん、そうであっても消費者センターの相談員という肩書きで消費者と接する限りは間違ったアドバイスをしたらあかん。

ワシら拡張員と同じで、低級な人間と接すれば、接した人はそれがすべてと考えてしまうさかいな。

その信用は地に落ちる。

この相談員の場合は、平たく言えば泣き寝入りしろと言うてるわけやから、アドバイスにすらなっていない。

もっとも、相談者でもあるミユキが、最終的に、そんなアホなアドバイスに従わんかっただけ救われとるがな。

ワシのアドバイスは、この消費者センターの人間とは正反対で、この問題はとことん大きくして問題にするべきやと伝えた。

そうすることで、相談者の立場をはっきりと主張できるし、希望どおり契約を無効にできるはずやと。できないとおかしいと。

そして、そんなええ加減なことで契約を取れると思い込んでいる販売店にも、ええ勉強、教訓になるはずやと。

契約は契約者自身と交わさない限り、承諾を得ないと契約とは認められないという、至極当たり前なことがな。

結局、ミユキは内容証明郵便を出す決心をして、その草稿を送ってくれたが、正直、それはあまり感心できるものやなかった。

その部分を個人情報を省いて紹介する。

当然やが、内容証明郵便の差出人は契約者であるご主人名義なので、その立場での文面になっとる。


以前より私の妻から、「89才の母では分からないので 契約は私を通すように」と貴社に伝えていたにも関わらず、○月14日に母が一人の時に貴社から勧誘の人が来て勧められた。

母が契約したが筆跡は母ではなく販売員のもので契約者名も契約した覚えのない私の名前になっていた。 

また、契約を知った妻が○月19日に解約をしたいと販売店に電話した際「伝えておきます」と、言われ解約出来ていると思っていた。

その後、○月1日から新聞を投函され困っております。 

ところが、妻が○月○日(最終契約日)に、集金に来た方に「○月で契約が終わるので、これが最後の集金ですね」と、確認しましたところ「そうなんです。なので、更新をお願いしたいのですが」とのことでした。

貴社も一旦とった契約は解除にして白紙の状態との認識があったからこそ更新するよう頼まれたのだと思います。 

もちろん、妻は今後は取りません。と、はっきり伝えてあります。○月2日に支店長と名乗る方との電話では、解約があったかどうか、こちらのノートに記載がないので私の一存では決められないとの一点張りでした。 

今までの経緯から、私達は、納得出来ないので○月1日からの契約はなかったことにして下さい。   


というものやった。

ワシらは、この内容で内容証明郵便を出されるのは感心せんと伝えた。

あまりにもくどすぎると。

ご自身の立場を良く見せようとか、分かって貰おうとするあまり、ついその経緯を詳しく説明したくなる人がおられるが、それは止めておかれた方が無難や。

百害あって一利なしというのが、法律家の方々一致した意見でもあるさかいな。

それにヘタなことを書きすぎると逆に揚げ足を取られて不利になる恐れが出てくる。

例えば『母が契約したが筆跡は母ではなく販売員のもので』という書き方だと、読み方によれば、お母さんが契約する意志を持って、その販売店の販売員に頼んで代筆して貰った、あるいはお母さんの目の前で了解をとった上で代筆したと受け取られかねない表現になるさかいな。

おそらく、その販売店の主張は、「お宅のお母さんに頼まれたから代筆した」ということやろうからな。

それを助長するような紛らわしい文章は書かん方がええ。真意とはまったく違うわけやさかいな。

もっと言えば『母が契約したが』の一語だけを切り取って、契約者もその事実を知っていた、容認していたと切り返されかねん。

揚げ足を取られるというのは、そういうことや。

内容証明郵便で相手方に文書を出す場合は要点をまとめて書くということを心がけることが肝心になる。

参考までに例文を示す。

尚、縦書き用の書き方にしてあるので、そのつもりで見て欲しい。


契約無効の通知

 二0一一年○月十五日付けの貴○○新聞購読契約書について、私、○○はまったくその存在すら知らず、契約書には署名、捺印していません。第三者に契約の委託もしていません。また本契約について貴社より事後承認も受けておらず、二0一0年○月二日、本契約を認めない旨、私、○○が直接、貴社にお伝えしました。
 契約書の筆跡も私のものではありません。貴社の従業員の方が、契約名義人である私に断りもなく、勝手に書いたものと判明しています。
 したがって、二0一一年○月十四日付けの貴○○新聞購読契約書について民法上の契約は不成立であり、あきらかに無効ですので、その旨、通知します。
 尚、即刻、新聞の投函を止めて頂きます。また、聞き入れられず新聞の投函を続けられた場合、本契約は無効ですので、新聞代金のお支払いは一切しないことを明言しておきます。


と、こんな感じやな。このとおりでなくてもええさかい、参考にして貰えたらと投稿者には伝えた。

ポイントは、余計な経緯は省いて、言いたいことを的確に伝えることやと。

その後、ミユキはワシの回答を踏まえて、再度、○○新聞本社読者センター販売・配達係に電話したという。

その答えは、

「新聞の更新は今までとっていた契約者名のまま契約が出来るので法的にも無効とはならない。一度契約をしておきながら解約出来ていないという方が問題だが、それは集金に来た者と電話応対で解約を否定している販売店の支店長とお客さんと3人で会って話した方が良い」

ということやったという。

ミユキは、ワシらに「話し合った方がいいですか?」と相談してきた。

以下が、ワシのその相談に対する回答や。


『新聞の更新は契約者名のまま契約が出来るので法的にも無効とはならない』という○○新聞本社読者センター販売・配達係とやらの言い分は話にもならん。

それがあるから勝手に新聞販売店の人間が契約者の名前を書き込んで契約にしても構わないなどいう法律なんか絶対にないと断言する。

契約者の認めていない契約が成立することなどあるわけがない。あってたまるかと言いたい。

もし、そんなことが許されるのなら、そもそも新聞販売店で契約を取る行為自体が必要やなくなる。新聞勧誘員自体が不要になる。

一度契約してしまえば、自動的に契約の更新が新聞販売店の意志だけでできることになるわけやさかいな。

信じられん暴言やと言うしかない。

まあ、それは契約が成立したと思い込んでいるからこそ、そういう答えになったのやとは思うがな。

これも先に言うたように、くどくどと説明している段階で、そう受け取られた可能性があるわけや。

いくら正当性の高いことを言うてても、相手にそれが伝わるように説明できんと、何も伝わってないのと同じことになる。

そして、人は誰しも自分の都合のええように解釈したいという気持ちが働くから、その部分だけを取り上げて強調するということが往々にしてあるわけや。

いずれにしても、『それは集金に来た者と電話応対で解約を否定している支店長とお客さんと3人で会って話した方が良い』ということのようやから、今度は、その場で、はっきりと相手の違法性だけを突いて話合われるようにされたらええ。

内容証明郵便が届けば、その販売店から何か言うてくるやろうと思う。

無視するようなら、○○新聞本社読者センター販売・配達係とやらが、そうするように言うてたと言うて、その販売店の人間を話し合いの場に引っ張り出せばええ。

この件では、ご主人の意志が大きなウェートを占めるさかい、そのつもりで接して貰うようにしてや。

基本的には内容証明郵便の内容を押し通せばええと思う。

何度も言うが、くれぐれも、相手の違法性とあんた方の正当性だけを強調するようにな。

その要点を示しとくので参考にされたらええ。

1.新聞の購読契約は、新聞販売店と契約名義人との間でのみ有効なものである。間違っても、家と新聞販売店との間の契約ではない。

2.契約書に、契約者自身の署名、捺印がない場合は契約書としては認められない。

当たり前だが、本来新聞購読契約とは、新聞販売店が契約者本人と直接契約するものである。

3.契約書の契約者署名欄に、業者が勝手に名前を書くことは違法である。これは、刑法第159条の私文書偽造等の犯罪になり得る。

4.上記の契約内容を契約者の私は一切知らず、また販売店から事後承諾すらない。

5.私は、その契約については身に覚えのないものだから認められないと、はっきり伝えている。

6.更新契約も立派な契約であるから、その更新の都度、契約を交わす必要がある。事実、販売店はその更新毎に新しい契約書を作成している。

7.更新だからと言って、契約者の意志を確認しないというのは許されない。

8.契約名義人である私の妻以外の家族には契約の代理をする資格がないから、母から契約を貰ったという論法は成立しない。

また、例えそうであるなら私にその承諾を得るべきで、販売店はそれをしていない。

9.よって、即刻、新聞の投函を止めて頂く。また勝手に新聞を入れても支払いには一切応じられない。

どうしても新聞を投函し続けると言うのなら、民事裁判を起こして貰って結構。こちらは受けて立つ。

と、まあ、こんな感じかな。取り敢えず話し合いの場では強気に言うことや。

念のため、最後の9.での民事裁判のことやが、そう聞くと、普通の人は大層なことのように思いがちやが、民事で訴えられた側は、裁判所に出頭するために仕事を休むのと、そこに行くまでの交通費がかかるくらいで、それ以外の費用は一切かからんから、その心配はせんでええと言うとく。

民事裁判は、別に弁護士を雇う必要はないさかいな。

それに、こちらで複数の法律家に当たったところ、負ける要素はほとんどないとのことやった。

当たり前や。この事案で裁判に負けるようでは世も末やわな。

もっとも、こういった事案で過去に一度も裁判沙汰になったことがないさかい、今回もそこまではならんやろうと思うがな。

万が一、なった場合は、それに即したアドバイスをするさかい。

最後に、このときには、その内容を録音しとくことを勧める。隠し録りでも何でもええ。

こういう違法なことを押しつけようという輩は、必ずボロを出すもんやさかいな。それも後々有利になるものと思う。

それでは、何かあれば、また連絡してほしい。


しばらくして、ミユキから連絡があった。


進展がありました。

ゲンさんにアドバイスいただいた直後、知人の弁護士さんとも連絡がとれ、内容証明の最後に弁護士にも相談しておりと書き加え内容証明を送りました。

何かあった時にすぐ動いていただけるようにと考え、警察署にも相談に行きました。 

警察署の地域相談係りの方からは、「販売員が集金に来て、揉めたり、しつこく来られたりしたらすぐに通報しなさい」と言って頂きました。 

先ほど新聞販売店の人が「集金ではありません。話がしたくて来ました」とのことでしたので、主人と一緒に窓越しに話をしました。

内容証明郵便が届いたためか、「明日から新聞の投函を止めますが、今まで配達した15日間分払って下さい」と言ってきました。

そこで、私は「勝手に入れられた新聞代なんて払いませんし、新聞も残してあるので持って帰って下さい。警察署にも相談に行き集金で揉めたら通報しなさいと言われていますし、弁護士にも相談してあります」と伝えたところ、「上の者に伝えます」と言って帰って行きました。 

気持ちが悪いし恐いので、その後すぐ警察署に報告をして今日からパトロールをお願いしました。  

これもゲンさんのアドバイスがあったから勇気を持って出来たことでした。本当に有り難うございました。

法的なことが何も分からず不安で消費者センターも頼りなかった中、感謝しております。 


弁護士に相談したのは賢明やったと思う。

ワシらも、それが一番ええというのは分かっていたんやが、新聞の購読契約程度の事案で弁護士に依頼するようにというのは費用対効果のことを考えると、そういうアドバイスはなかなかできん。

警察署の地域相談係りに相談に行ったというのも、それでええと思う。

『気持ちが悪いし恐いので、その後すぐ警察署に報告をして今日からパトロールをお願いしました』というのは、少し考えすぎやないかという気はするがな。

その販売店の人間が何かの仕返しをするのではないかと考えておられるのなら、それはまずあり得ないことやと思う。

それをすると確実に事件になるさかい、ヘタをするとその販売店は潰れる。

たった1件のトラブルで店を潰すようなバカはおらん。そういうことに走ったという事例もない。少なくともワシは知らんさかいな。

その手の販売店が強気で押してくるのは、そうすることで契約者があきらめて購読を続けると考えるからや。

それを不退転の決意で頑としてはね除ければ、理は明らかに相談者側にあるわけやから、最後には必ず勝てる。

事実、過去のQ&Aでの相談の結果がすべてそうやったさかい、ワシらも、そうアドバイスしたわけや。

ワシらのおかげやと言って頂けるのは有り難いが、それは、相談者の意志、決意の強さがあったからこそやと思う。 

今回のような内容証明郵便を出した利点は、もう一つある。

それは、そうしたことが「不招請(ふしょうせい)勧誘の通知」にもなるということや。

不招請勧誘を分かりやすく言えば、「勧誘に来ることを拒否する」ということや。

つまり、今後の新聞勧誘を断るという明確な意思表示にもなっているため、その販売店から新聞の勧誘目的で訪れることが、二度とできなくなったということを意味する。

「不招請勧誘の通知」に関しては、2009年12月1日に施行された、『特定商取引に関する法律』の改正法の第3条ノ2第2項の「再勧誘の制限」というので規定されとる。(注3.巻末参考ページ参照)

その翌日から、新聞の投函はピタリと止まり、数ヶ月経った現在に至るまで何もないということで、この件は終結をみたと考えてええと思う。

それに伴い、当初、非掲載でアドバイスを続けていたが、相談者の許可を貰い、今回ここで話すことにしたわけや。

これは、一般読者、新聞販売店の双方にとって有益な教訓を伴う事例やったと考えたさかいな。



参考ページ

注1.ゲンさんのお役立ち情報 その8 クーリング・オフについての情報

注2.新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A

注3.第79回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■『特定商取引に関する法律』改正法は業界にとってのチャンスになる?


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