メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー

第195回 ゲンさんの新聞業界裏話


発行日 2012. 3. 2


■ゲンさんの勧誘実践営業講座 その1 一般的な新興住宅地の攻略ポイント


複数の読者の方から、勧誘の心構え、考え方以外にワシが実際に現場で心がけている点を教えて欲しいという要望があったので、それについてお答えしたいと思う。

ただ、ワシらの勧誘先は一戸建て住宅であったり、集合住宅であったり、商店や会社、官公庁であったりと多岐に渡るさかい、それらを画一的に論じるのは難しい。無理や。

それぞれ違うやり方があるさかいな。

最初に拡張員の多くが苦手やという一戸建て住宅に焦点を絞ろうと考えたが、それにしても新興住宅地、市街地、高級住宅地、農山村住宅地などがあり、さらに大都市、およびその周辺なのか、人口の比較的少ない地方なのかによっても大きく違うてくるという問題がある。

そこまで掘り下げると、それぞれの住宅地毎に居住者層などの事情も条件も違うわけやから、それこそ一つずつ特定の住宅地について話さなあかんということにもなりかねん。

それはとても無理なので、第1回目は一般的な新興住宅地という枠で取り上げてみたいと思う。

ただ、一般的な新興住宅地といっても、開発後どの程度の期間までが「新興」と呼ぶのかという明確な基準がない。

関東の例で言えば、 大正時代に田園調布や成城などが新興住宅地として開発されたという。

そんな昔まで範囲を拡げてしまうと、ワシにはどうにもならん。何せ生まれてもおらんのやさかいな。

そこで、ワシの知る限りの「一般的な新興住宅地」ということにさせて頂く。

一般の新興住宅街に新聞の勧誘員が少ない、寄りつかないと言われるケースが多いが、なぜか。

最も大きな理由は長期購読者が多いため、勧誘員自身が叩いても無駄と判断して敬遠するためやろうと思う。

勧誘員が少なければ、当然、新聞を切り替える機会も少なくなるから長期購読者になりやすい。

つまり、長期購読者とは、勧誘員が訪問しないことで作られているという側面もあるわけや。

長期購読者には総体的にサービスが少ない。長く同じ販売店と付き合っていると、不配や誤配、遅配といったトラブルは必ずある。

その他にも、販売店の従業員の態度が悪い、集金人が感じが悪いといった不満を抱いているケースも多い。

そのあたりことを上手く聞き出して攻めると、結構落としやすいと個人的には思う。

「当店では、これだけサービスできますよ」とか、「ウチの配達員や集金人は、そんなバカなことはしませんよ」といった具合やな。

不満を漏らす客なら、翻意させられる可能性が高い。

難しい客でも、長期購読者は総体的にサービスが少ないという事実を突く。

具体的には、「奥さん、現在購読されておられる○○新聞から毎年何かサービスしてくれますか?」と聞く。

ほとんどは「何もない」と答える。

長期購読者には何もやらんというのが新聞販売店の大原則、不文律のように考えとる販売店がある。わざわざ寝た子を起こすようなことはしたくないというわけや。

「奥さん、○○新聞がやってるサービスを知らないんですか?」と、重ねて聞く。「知らない」と答えれば、その情報を教える。

どの新聞にも勧誘員がいて拡材も同じようにあると説く。

「長く購読している人はお気の毒に他でサービスしていることなど何も教えらず、何もないままなんですよ。おかしいですよね。

本当は長期購読の方ほど大切にするべきなのに。だから、一度、脅かしのつもりで、ちょっとの間、3ヶ月間だけでもいいので私どもの新聞を取ってみられたらどうです。そうすると○○新聞さんも、驚いて、次からはちゃんとサービスしてくれますよ」と言う。

ワシの経験上、これで気持ちが大きく傾く人は多い。どんな人も、自分だけ損をしていると言われてええ気はせんさかいな。

誰でも、できれば得したいと考えるのが普通や。嘘を言うのはあかんが、事実なら、例えその販売店からクレームが来ても突っぱねることができる。

本来、商売とはそんなものやと。一般の商店でも他より安い、サービスがええとアピールするのは普通のことやないかと言うてな。

二番目の理由は、何の作戦もないのに闇雲に叩くために不発に終わるケースがあるからや。

闇雲に叩いていたんでは、上記のような客に出会える確率は少ないさかいな。

新興住宅地には、小さくても数百軒から大きな団地になると数千軒は悠にある。

当たり前やが、数千軒の家を片っ端から叩いていたら効率が悪いわな。

いくらまとまった地域やからと言うても、一人の勧誘員が叩けるのは、1日せいぜい200軒程度のもんや。

しかも、効率など何も考えずに叩けば、結果として上手く行かんということになる。

その積み重ねで、新興住宅地での勧誘はあかんと決めつけ、それが伝言ゲームのように勧誘員たちの間で広まっているのやろうと思う。

ということは、その効率を良くする方法を考えればええということになる。

その効率について具体的に話す。もちろん、ワシの経験上ということでな。

地域は関西。大都市周辺のニュータウン、ベットタウンと呼ばれとる一般的な新興住宅地で、バブル期の1980年代以降に造成されたという条件に絞る。

三重県N市にU団地という2千戸ほど有する新興住宅街が、それらの条件を満たすので、それを例に取り上げる。

ある大手の建設会社、ワシがまだ二十歳代の頃、営業員として勤めていた会社やが、その大手の建設会社が、大阪のベットタウンを作る目的で三重県N市の当該地域を宅地造成した。

三重県北部に位置するN市は地域的に微妙な所や。

三重県は東海地方の扱いになるのが普通やが、北部は東海色の薄い地域で、住民も関西に属してると思うてる人が多い。

新聞の拡張も、なぜかここは関西の管轄になっている場合が多い。

それには、N市の新興住宅地では、大阪や奈良などの関西方面の仕事をしているか何らかの関わり合いを持っていて、関西方面から移り住んだ人が多いということも影響しとると思われる。

せやから、N市U団地の住人には関西の人が多い。地元の人は少ない。

N市U団地が造成された初期の頃は、今とは想像もつかんほどの山奥やった。

しかし、そこにあっと言う間に多くの住宅が建った。

先見の明と言えば、大手の建設会社の経営者、上層部が偉いとなるが、実情を良う知っとるワシから見れば少し意見が違う。

多くの団地ができたと言うより、造った。住むことになった人たちも、喜んで家を買うたというより、買わされたと言うた方がええかも知れん。

それには、時代が味方したのは確かやが、かなり過激な営業があったことも事実や。

その頃は、高度成長期からさらにバブル経済に突入しようとしていた時期やった。

恐ろしい勢いで土地の値段が急騰し、大阪市内で家を持つというのは普通のサラーリーマンでは不可能になっとった。

必然的に周辺の郊外に住宅が建つようになった。

その頃、良う言われとったのが、同じ値段、条件の物件を買おうと思うたら、1年ごとに山を1つ越さんと買えんという話や。

せやから、郊外に家を建てたら飛ぶように売れた。それでも、大阪市内から車で1時間以内の地域に限定されていた。

三重県N市やと大阪市内から車で、平日で1時間半〜2時間程度はかかる。

しかし、この建築屋はいずれは売れるという目論見で、まだ土地の安かった地域を買って宅地造成して売り出すことにした。

当初は、やはりというか売れ行きが悪かった。そこで、徹底した営業をかけるため、現地視察ツアーというもので客を募った。

「格安で夢のような広いマイホームが買えますよ」という謳い文句に釣られて集まった客を乗せ、マイクロバスを仕立て現地に向かう。

このマイクロバスを仕立てるちゅうのが、巧妙な作戦やった。

現地視察は日曜日。時間は午前10時頃出発する。日曜日でその時間帯なら渋滞もなく早く着く。

加えて、運転手も腕のええ者を選ぶ。平日の朝のラッシュ時なら2時間かかるところを、1時間ちょっとで着く。

これにより、堂々とパンフレットに車で1時間の通勤圏内と謳う。実際、行けることもあるので嘘ではないとなる。

もっとも、土日に仕事をする人がどれだけいるのかという問題はあるがな。

まあ、たいていのパンフレットの触れ込みには、その程度の誇張はザラにある。

しかし、ごまかしはごまかしにしかすぎず、現地に着くとあまりの寂しさに二の足を踏む客が続出する。

その場での即決は少なかった。もちろん、そんなことは計算のうちや。

家は一軒売れたら儲けも大きい。建築屋も連れて行った人間すべてに買わすことまでは考えてないし、また売れん。

このツアーで連れてった人のうちから、甘い客、業界で言う「丸い客」をピックアップしといて、後日、営業で攻勢をかけて売り込むわけや。

「将来は、大型店舗も増えるし、特急も停まります。病院や学校の施設も充実するのは間違いありません。大阪市内で一戸建てを購入する金額で、倍の土地と大きな家が半額以下で買えるんですよ」と吹いて煽る。

営業マンは会社に指示されたとおりにトークする。その営業も、今からは考えられんくらい強引やった。

その内の一つだけ紹介する。

ふらふら営業というのがあった。文字どおり、客をふらふらにして思考力をなくさせて契約させる手法である。

具体的には、丸い客にアポイントを取り、クローザーと呼ばれる詰め専門の営業員が出向く。

総じて、丸い客と呼ばれる人たちは話を良う聞く。営業員を比較的簡単に家の中に呼び込む。

ここで、簡単に契約すれば問題はないが、いくら丸い客といっても大金が絡むから、そう簡単には決められない。

たいていの人にとっては一生に一度の買い物になるという思いが強いから慎重にもなるし、山奥ということで抵抗する者もおる。

普通、こういう客の所へは、その家の主人が仕事から帰って、食事やら入浴を済ませた夜8時から9時くらいの間に訪問の設定をするケースが多い。

あくまでも客側の都合に合わせるということを前面に出す。遅い時間であればあるほどええから、なるべくそう持っていく。

抵抗する客には、ありとあらゆるアプローチをかけ、基本的には長期戦の構えを採る。

なかなか帰らん。というより、そういうタイミングに持っていかんように、手練手管を駆使し、話術の限りを尽くす。

夜の12時程度は普通に粘るし、夜中の2時、3時ちゅうのも珍しいことやない。

その日、客が仕事であろうと気を使うようなことはしない。いかにも、話に熱中していて時間に気がつかなかったという風に装う。

そうなると、客も思考力がにぶり、その場が凌げればええと考え出す。あきらめが入るわけや。文字どおりふらふらになる。

その頃になると、「賃貸で家賃を払い続けるより絶対お得ですよ」、という営業トークが本当にそうやと思い込み納得してしまいやすくなる。

ほとんどはローンで買うから、その支払いは一見、払いやすそうなプランに思えるわけや。

もっとも、建築屋の営業マンにとっては、そんなマジックは普通に考えるがな。

それに、人間は思考力が衰えると相手の話に納得しやすくもなる。

それが、丸い客なら尚更や。丸い客というのは、正直で実直な一面がある。どんな状態であれ交わした約束、契約は破らない。

そのことを営業員は熟知しとるわけや。それで、丸い人間を集めまくり、売りまくった。

気が付けば、街になり、市になった。そうなれば、本当に大型店舗が建ち並び、学校や病院、飲食街ができた。

今や、三重県北部一の市にまでなっとる。

N市U団地の外周は約五キロメートル。住居数2千戸余り。この辺りの新興住宅街としては平均的な広さと規模や。

道幅もそこそこ広い。整地区分50坪ほどと、ほぼ均一に売られているだけあって碁盤の目のように整然と住宅が建ち並んでいる。

U団地内を一周すると分かるが、こういった所は訪問販売の住宅リフォーム業者も多いから、常にリフォーム工事中とか、工事後すぐの比較的綺麗な家が多い。

その典型的なのが外壁塗装工事中を示すテントで囲われた家が目立つことや。

なぜ、そんなことをするのか。

持ち家を綺麗にするため、あるいは長持ちをさせるために外壁塗装をするのが普通だからやろうか。見栄で外壁塗装しているだけやろうか。

それがないとは言わんが、やはり一番の大きな理由は、営業員が頻繁に勧誘に来るからやと思う。

見栄を張る人間は、他人のしていることが気にかかる。その心理を巧み突いて外壁塗装業者は営業をかけるわけや。

「お向かいのお家はリシン吹きでしたから、セラミック塗装にされると差がつきますよ」とか「周りの家にベージュ系統の塗装が多いですから、濃いめのグレーにすると映えますよ」といったトークを使って煽る。
 
外壁塗装工事中の家が多いということは、取りも直さず彼らの勧誘営業に落ちた者が多いということを意味する。

外壁塗装工事だけやなく、屋根工事でも車庫やベランダなどのエクステリア工事でも同じや。ほとんどがリフォーム業者の勧誘でそうしている家が多いさかいな。

つまり、もともとが丸い上に、勧誘営業そのものに乗りやすく弱い人たちやということになる。

ここまで言えば分かると思うが、そういうリフォーム工事をしている家を攻めれば勧誘に抵抗感がない分、新聞の勧誘に行っても話くらいは聞くケースが多いということや。

後は勧誘員の持って行き方次第、腕の見せ所ということになる。

ただ、テントで囲われた外壁塗装工事中の家を叩くのなら、夕方5時以降にした方がええと言うとく。

日中やと、外壁塗装工事中の家は吹き付けにコンプレッサーを使うから、発電機のエンジン音やコンプレッサーの音がうるさくてドアホンの音自体がお客に聞こえないケースがある。

また、気分的にも、そういう時期に来られても客が、その気になれないということもある。

その日叩くのなら工事が終わって職人たちが引き上げる午後5時以降の方がええということや。

新聞勧誘は当然やが、在宅しとる家に訪問せんと意味がない。

その点、N市U団地のような新興住宅地では在宅しているかどうかが比較的分かりやすい。

N市U団地はJRや私鉄の最寄り駅が遠い。そのためほとんどの家が車を持っている。というか、車を持っているからこそ、こういうベッドタウンの住宅地を購入する気になるわけや。

もともと、この地域を営業する際、大阪、奈良方面への車での通勤圏を謳い文句にしていたわけやさかいな。

ワシの知る限り、車の持っていない家は皆無に近い。ということは、車庫を見れば在宅状況が一目瞭然ということになる。

一台も停まっておらず、洗濯物を干していない家は、かなりの確率で夫婦共稼ぎが多い。

時間帯によって一台も車が停まっていなくても、洗濯物が干してあれば主婦が近所に買い物に出かけている場合がある。

自転車があれば、通学している子供が在宅している可能性もあるが、子供相手に営業をかけても無駄やから、車が停まっていない家は、やはり除外した方が賢い。

車が停まっていて在宅していても、その地域をバンクに持つ販売店の現読および約入り(契約済み)の家やと意味がないから、住宅詳細地図のコピーを貰って良う確認する。

たいていの販売店では、住宅詳細地図のコピーに現読は赤、約入り(契約済み)はオレンジのマーカーなどで着色しとるのが普通やから、比較的選別しやすい。

一般的に車が2台停まっていれば夫婦の両方が在宅している可能性が高い。

1台だけの場合は、どちらか一方はいる。主婦が在宅している場合は軽自動車が多く、旦那が在宅している場合は普通の乗用車が多い。

主婦に軽自動車が多いのは運転しやすいということもあるが、税金やガソリン代が安くて済むという経済的な理由が多い。

但し、土日や祝日などの一般的な会社が休日の場合、1台だけしか停まっていなければ、もう1台に乗って家族で外出しているケースもあるがな。

今までの話を総合すると、

1.リフォーム工事などをしていて比較的綺麗にしている家で、洗濯物が干してあり車が2台停まっていて、尚かつ、現読と約入り(契約済み)の家でない客が、一番の狙い目になる。

これを仮にAランクとする。

2.リフォーム工事などをしていて比較的綺麗にしている家で、車が1台だけ停まっている場合、洗濯物が干してあれば在宅している可能性が高く、軽自動車の場合は主婦。乗用車の場合は旦那のみの可能性がある。

どちらか一方の場合、他方がいないことを理由に断わられることもあるが、勧誘する値打ちはある。

これをBランク。

3.上記1.2.の条件がある場合、テントで囲われた外壁塗装工事中の家を叩くのなら、夕方5時以降にした方がええ。

これのランクを、ABいずれにするかは現場でそれぞれが判断するしかない。

4.季節によっても違うが暗くなって家に灯りが点いていて、車庫に車が停めてあれば在宅している。そうでなければ不在として除外する。これは、どこの地域で叩いていても同じやな。

5.リフォーム工事を一切していないという家もあるが、こういうのは勧誘されるのが嫌いか、見栄などに拘らない人が多い。すべてとは言えんが新聞の勧誘も拒否するケースが多い。

一見して古びた感じがするから、すぐ分かる。例え家人が在宅していたとしてもCランクとしていた方が無難や。

6.車が一台も停まっていない。洗濯物が干してないということなどで、明らかに留守と思える家はDランクにする。

という具合にランク別けができる。

上記の事柄を念頭においておけば、例え2千軒の住宅地であっても確率の高そうなA〜Dの順番に叩けばええということが分かるはずや。

むやみに「鉄砲」で無差別に叩くより、かなり効率が良くなると。

これに曜日毎の在宅者を調べれば、その確率はもっと上がり、勧誘トークなども在宅者に合わせてどういったものにすれば良いかが分かってくる。

土日の場合は、多くの会社が休みやから、特定の業種というのはない。

在宅しているAランクから順番に叩くだけでええ。まあ、たいていはAランクだけを当たっても、2千軒もある新興住宅やと1日では廻り切れんとは思うがな。

叩く前に、その家の外から情報を拾う。

庭の手入れ具合、盆栽のあるなし、ペットの有無、ゴルフ、野球、サッカー、釣りといった趣味が分かるものは見逃さない。

それらの情報をもとに、客の気持ちをほぐすために雑談のストーリーを考える。

新聞の勧誘で、いきなり「○○新聞をお願いします」と切り出す勧誘員がおると聞くが、これはあまり感心せん。

たいていの人は「勧誘員やな」と分かったら、それだけで身構えるさかいな。

最初から、よほど新聞を切り替えたいと考えているような人以外は、話をすることすら拒否するケースが多い。

その程度のことは常識として、心得ておいて欲しいと思う。

雑談、無駄話を交えて客の心、気持ちを掴んでから落とす。それが対面営業の本質、神髄やとワシは考えとる。

要は、僅かでもええから、ええ人間関係を作ってから、勧誘するということやな。

新聞勧誘のような対面営業には不可欠なことやと思う。

雑談の具体的なことについては、『第188回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■ゲンさんの話し方教室 その3 雑談の切り出し方について』(注1.巻末参考ページ参照)や『第127回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■2010年からの新聞営業講座……その8 雑談ネタの集め方』(注2.巻末参考ページ参照)あたりが参考になるのやないかと思う。

また、雑談とは少し違うが、『第107回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■2010年からの新聞営業講座……その6 お世辞トーク集』(注3.巻末参考ページ参照)の中に、『新聞営業における、お世辞トーク集』というのが、あるから、それを参考して貰えればええ。

その中から、今回の話に役立ちそうな部分だけ抜粋する。


新聞営業における、お世辞トーク集


1.主婦に受けやすいお世辞トーク

【ステキなお住まいですね】

新築、および比較的新しい一戸建ての住宅、または外壁塗装をしているような場合、こう言っておけば嫌がられることはまずない。

比較的古そうな家なら、【味わいのあるお宅ですね】と言うておけばええ。

他にも大きい家なら【立派なお宅ですね】。

庭が広ければ【お手入れが行き届いていますね】。

玄関を褒めるのなら【落ち着いた玄関ですね】、【綺麗な玄関ですね】。

花壇や植木があれば、【美しいお花ですね】、【立派な植木ですね】。

他にも気づくことがあれば、どんなことでもええから、それについても褒(ほ)めておく。

特に、外壁塗装して日が経っていない、カーポートを新設したばかり、屋根瓦を取り替えた、といったことが分かるような家の場合、それについて褒めるのは効果的やと知っといて欲しい。

そういう家の主は、ほとんどが住宅リフォームの営業員に勧誘されてとか、見栄っぱりな性格というのが多く、お世辞トークに弱いという傾向にあると。

あるいは、多少、周りとの調和が取れていない「奇抜な感じの家」の場合も、この【ステキなお住まいですね】というトークは結構活きる。

人から、そう言うてほしいがために、敢えて、その選択をしとるというケースが多いさかいな。

要は目立ちたがりなわけや。目立ちたがりな人間は「おだて」、「お世辞」に弱い。


【いい香りがしますね】

その家の玄関に入る、もしくは覗ける位置で応対して貰うたら、こう言うとく。もちろん、【いい匂いがしますね】でもええ。

たいていの家では、玄関口とトイレの臭いには気を使っている所が多いから、このトークは結構活きる。相手が主婦なら尚更や。

他にも下駄箱の上の花瓶やその中の花、置物、壁の絵などのように褒められる物はなんでも褒める。

玄関口は、その家の顔で気を使う場所や。そこにあるものを、さりげなく褒めるという癖をつけといて損はないと思う。

ワシの経験でも、何気なく褒めた花が、実はその家の人にとっては思い出深いもんやということがあった。

そんな場合、その人はその話をしたがってる場合が多いから、こちらは黙ってその客の話を聞くようにしたらええ。

話すばかりが営業やない。客の話を聞くのも立派な営業やさかいな。

その他にも、壁の絵がその家の家人の作品やったり、有名人から貰ったものやったり、高価なものだったりという場合も結構ある。

置物のような飾り物にしても同じことが言える。

そういう場合、それをさりげなく誉められたら誰でも悪い気はせんはずや。

というか、それに気づいてほしいという心理が込められとる場合が結構多い。


【かわいい、お子さんですね】

3歳くらいまでの小さな子供がいれば、こう言っておけば間違いはない。

人の親であれば、誰でも自分の子供を褒められて悪い気はせんさかいな。

他にも【お人形さんみたいですね】、【今が一番かわいいときですね】と言うのもええ。

これが幼稚園児くらいになると、例え小憎たらしい子供であっても【とても元気のいい活発なお子さんですね】と言うておけば間違いない。

大人しい、人見知りのする子供なら、【礼儀正しいお子さんですね】など、と言うておけば無難やと思う。

また、主婦だけやなく、その祖父母が出て来た場合には、【おじいさま(おばあさま)によく似ておられますね】と付け加えるのも効果的や。必ず喜ばれる。


【魅力的ですね】

こんな歯の浮いたような台詞(せりふ)でも喜ばれるケースが多い。

これが独身で容姿に自信を持っていれば、そう言い寄る男も多いやろうが、家庭に引きこもった主婦は、そう言われることが少ないから、インパクトとしても結構強いわけや。

十人並みに見える女性は、ほぼ間違いなく、過去、自分自身にそれなりの自信を持っていた人が多い。

そういう主婦は容姿をさりげなく褒められると弱い。

他にも【品がおありですね】、【笑顔がとてもステキですね】などが効果的な褒め言葉になる。

顔立ち、手足、スタイルなど褒めやすいところは、すかさず褒めとく。

その訪問先が二度め以上の場合で、その主婦の容姿を褒めるのなら必ず【いつも】というフレーズを付け加えておくのを忘れんことや。

【いつも魅力的な方ですね】、【いつも品がおありですね】、【いつもお若いですね】、【いつも笑顔がとてもステキですね】といった具合に。

これを【今日はとても魅力的ですね】と言うた場合、本人は褒めたつもりでも、「今日は例外的に魅力的なのか」という、ひねくれた受け取り方をする主婦もいとるさかい気をつけた方がええ。

褒め言葉と言えども、細心の注意が必要になるということや。


丸い人というのは、総じてお世辞や褒め言葉に弱い。せやからこそ、簡単に勧誘に乗るとも言えるわけや。

まあ、そうでなくても人を褒めて悪く思われることは少ないから、営業員たるもの常にその気持ちがなかったらあかんと思う。

月曜日の場合はどうか。

一般的に新興住宅地の場合、夫婦共同で家を購入しとるという関係で共稼ぎ世帯というのが比較的多い。

つまり留守がちな家が多いということや。これは車の有無を見れば、たいていそれと分かる。

車があれば、月曜日が休みの人ということになる。その場合は、どういう人がそうなのかということを知っておくだけで攻めやすい。

月曜日だけが休みというのは、昔は散髪屋、美容院というのが多かったけど、今はチェーン展開しとる店もあるから、それぞれで違うというケースが増えとるので一概には言えんようや。

自営業者もいるが、これには決まった職種はない。また警察官、消防署員というのも交代勤務で月曜日に休む場合がある。

有給休暇を取っている場合とか、年金暮らしで仕事を持っていないという人も月曜日には在宅しとる。

こうしてみると、月曜日限定で在宅しとるという人は少ないようや。

ただ、確率的に、月曜日は上記のいずれかに関係する人が多いということやな。

余談やが、昔から散髪屋が月曜日に休みやった理由についての雑学を一つ。

戦前から戦後にかけて今よりも電力不足が深刻な時代があって電気の供給が追いつかん状況があった。そのため電力会社は週一で休電日を設けて対応した。

それが毎週月曜日やったわけや。そのため理容組合が毎週月曜日を休日にした。その名残が今も残っているということや。

こういうのも、何かの雑談ネタに使えるかも知れんな。

火曜日は、月曜とほぼ一緒と見てええ。

水曜日は、さらに不動産関係、個人病院、デパート関係や水産商品を扱っている会社、レストランなどの飲食店が加わる。

平日で最も在宅率が高いのが水曜日やないかと思う。次が木曜日。個人病院で木曜休みというケースが結構あるさかいな。

金曜日は、月曜日、火曜日と大差ないと思われる。

後、サービス業や工場勤務などのシフト休日というのがある。

工場勤務などのシフトにより夜勤勤務をしている人も日中在宅しとるが、こういう寝ている人を起こすと揉めることにもなりかねんから気をつけなあかんと言うとく。

とはいえ、「夜勤で就寝中」という札でも出てない限り、それと分からず車が止まっているというだけで叩いてしまいかねんがな。

そういう場合は、謝って早々に退散しとくことや。

ただ、夜勤の人でも職種により夕方起き出すこともあり、その時刻に再訪する約束を取り付けるという手もあるがな。

こうしてみると、多くの勧誘員が敬遠しがちな一戸建ての新興住宅地であってもアプローチの仕方次第ではカード(契約)を上げることが可能やということに気付くのやないかと思う。

少なくとも留守宅を叩くような無駄は省ける。

それに、勧誘員の多くが敬遠しているということは競争相手も少ないし、勧誘で荒れていない可能性が高いから、変に勧誘慣れしている客もあまりいなくて、却ってやりやすいかも知れん。

ワシが、ここで言うてるのは、新興住宅地での攻略のポイントであって、こうすれば契約が必ず上がるという方法やない。

ワシの示しているのは、一つの情報で、それを活かすも殺すも、勧誘する本人次第やと考えといて欲しい。

それでは、これからも折りを見て、いろいろな攻略パターンを紹介していくつもりやさかい、乞うご期待ということで、今回は終わらせて頂く。
 


参考ページ

注1.第188回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■ゲンさんの話し方教室 その3 雑談の切り出し方について

注2.第127回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■2010年からの新聞営業講座……その8 雑談ネタの集め方

注3.第107回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■2010年からの新聞営業講座……その6 お世辞トーク集


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