メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー
第197回 ゲンさんの新聞業界裏話
発行日 2012. 3.16
■ゲンさんのよろず相談あれこれ Part 5
このシリーズを始めて1年足らずの間で、もう5回目になる。
シリーズを始める当初、
以前から新聞関連以外の質問が寄せられることは、たまにあったんやが、それがここのところヤケに増えてきたなという印象がある。
それも法律サイトと勘違いしてのことなのか、法律に関するアドバイスを求めてくるケースが多い。
その理由は良う分からんが、誰かがサイトやブログ、ツイッターなどで、ワシらに相談事をすれば何とか解決して貰える、的確なアドバイスが届くとでも吹聴しとるのやろうかと思う。
と疑問を呈したが、未だにその理由が分からないまま、新聞関連以外の質問がひっきりなしにサイトに届いてくる。
また、そういった相談者の多くが非公開を希望されるということがある。
よほどの切羽詰まった事情、ワシらが力になろうと思えるような相談でない限り、そういうのは丁重にお断りすることにした。
もっとも、メルマガ読者については、その限りでないがな。
もともと、このシリーズは、メルマガ読者のために始めたものなのになぜか、それ以外のメルマガをまったく読んでいないと思われる人たちからの相談が多い。
そういう人たちの中には、非公開を希望していながら、1時間以内に回答してくれとか、相談の回答内容次第では金を払うからと書かれているケースまである。
ふざけるなと思う。まあ、そういう連中に限ってロクでもない相談が多いから無視しやすいということはあるがな。
ここへの新聞関連以外の相談は原則として公開させて頂くことにした。よほどの事情でもない限り非公開の相談を受付けるつもりはない。
もちろん、公開する場合は相談者が特定されるような記述は避けた上での話やけどな。
誰かが、ここに相談することで、どんな相談でも回答して貰えると吹聴されておられるのなら、公開することが前提やというのも伝えておいて欲しいと思う。
それでは、そろそろ始めさせて頂く。
事例その1 主人に他人が私の借金の請求をしても構いませんか?
相談内容
突然で御免なさいね! 私は外国人で日本人の男と結婚した。彼は一切お金出さずに私が学生時代から借りたアパートに住んで生活している。
私は他の日本人の知人や親戚に借金しています。この場合は他の人が彼にお金を請求しても良いのですか?
回答者 ゲン
(注、この相談の回答は外国の方からなので外国語翻訳ソフトに認知されやすくするため関西弁での記述にはなっていません。 発行者 ハカセ)
あなたは生活のために借金をされた。その相手方である、あなたの知人や親戚の方が、あなたがされた借金に対してご主人に直接、返済請求できるのかという質問だと思う。
残念ながら日本の法律では、あなたが借りた借金の返済請求を知人や親戚の方が、ご主人に請求するのも返して貰うことも難しいと言うしかない。
借金というのは、借りた人が貸した人に返すもので、これは万国共通だと思う。
日本では借りた人が誰のために何に使おうが関係なく、借金をした人が責任を持って返す義務がある。
もっとも、ご主人があなたの代わりに返すと言えば別だが、そうでなければ、ご主人には、あなたの借金に対して責任を負う法律上の義務はない。
唯一の例外は、ご主人が、あなたの借金の連帯保証人になっている場合くらいなものである。
その借金の返済を無理に、ご主人から取ろうとすれば、やり方次第では、あなたの知人や親戚の方たちが犯罪に問われる可能性があるので、それはしない方がいい。
とはいえ、あなたはその知人や親戚の方たちに借金の返済を迫られて困っておられるのなら、ご主人と話し合って一緒に返済する方法を模索されるべきだと思う。
それに、ご主人が応じないと言うのであれば婚姻関係を続けていても仕方ないのではないかと個人的には思う。
ご主人が働いていて、生活費を入れないというのは立派な離婚原因になる。
また、あなたが見ず知らずの法律家でもない当方に、こういう相談をされて来られる事自体、婚姻関係は破綻しているのではないかと考えられる。
離婚となれば、結婚後に作られた財産は二等分することになっているから、ご主人にお金があれば、その半分は、あなたの権利として貰える。
それを借金返済に充てることはできるから、結果としてご主人に金を出させることは可能だと思われる。
あるいは、ご主人にもお金がない場合は、負の財産、つまり借金の半分に対して、あなたがご主人に請求できる。
もっとも、そういう事態になれば、おそらく裁判になっているだろうから、その額については裁判所の決定に従うしかないと思う。
いずれにしても、あなたの知人や親戚の方が、直接、ご主人に借金の返済を強要することはできないのは確かだ。
ただ、離婚するかしないかは、あなた次第、あなたの問題だから、どうされるかはよく考えてからされるれることだと言っておく。
事例その2 裁判まで日もなく困っています
相談内容
困っています
以前付き合っていた男性が奥さんとちゃんと離婚成立していなかった為、私に慰謝料が来ました。
調停が行われてましたが、お金は自分が払うからと男性に言われていました。
調停の場でなく、元奥さんと男性で額を決め、私がその男性からお金を預かり調停で渡しました。
しかし彼の暴言などにたえられず別れを切り出し別れた後、ストーカー行為に。
そして、結婚しないなら元嫁に支払うために貸した金を返せと裁判になっています。
自分が払うと言ってた事を証明して貰える証人もいますし、答弁書にもそう書いて出しました。
しかし 彼は私に身に覚えがない借用書を出したのです。私の名前まで書いてあり私文書偽造だし。
しかし、次の裁判まで日もなく私は弁護士も依頼してません。
どうしたらいいのか助けて下さい。
回答者 ゲン
『次の裁判まで日もなく』というのが、いつのことかは分からんが、弁護士に依頼される余裕があるのなら、そうされた方が無難やと思う。
弁護士なら裁判所との調整もお手のものやさかい、次の裁判の日に審議の先延ばしはいくらでもしてくれるはずやし、その後、あんたの依頼内容にあった方法でやってくれるはずや。
できれば、その手の専門の弁護士に相談する方がええやろうな。
弁護士に依頼する費用がないというのなら、あんたが単独で対応するしかない。
裁判所の呼び出し日さえ守って出向けば、なんとかなるかも知れん。裁判の日に行かん場合は欠席裁判で相手の主張がほぼ全面的に認められるがな。
『以前付き合っていた男性が奥さんとちゃんと離婚成立していなかった為、私に慰謝料が来ました』というのは妻子ある男性と付き合った以上、それ自体が不貞行為になる。
せやから、相手の奥さんから慰謝料の請求をされても仕方ない。
その男性が奥さんとの離婚が成立したと言うたのを、そのまま鵜呑みにして信じたのかも知れんが、それも、あんたに落ち度がある。
その程度のことは調べようと思えば、いくらでも調べられたはずやさかいな。
まあ、それでも嘘をついていたその男の方が悪質ではあるがな。ただ、そんな男と付き合ってしまったあんたにも責任がないとは言えんということや。
今回のポイントは『調停が行われてましたが、お金は自分が払うからと言われてました』という金がどういう種類の金やったかで違うてくる。
その男が言うように『結婚しないなら元嫁に支払うために貸した金を返せ』というのであれば、結婚するという条件付きの金銭貸借契約をしていたことになる。
そうではなく、あんたの言う『お金は自分が払うからと言われてました』というのが、その男が払うと断言したのなら、その男とあんたとの間には金銭貸借契約はないことになる。
『自分が払うと言ってた事を証明して貰える証人もいます』ということなら、その人の証言を文書にして署名捺印したものを裁判の当日に提出すればええ。
その上で相手の言い分を否定すれば証言の信憑性次第では、あんたの主張が認められる可能性は高いと思う。
『私の名前まで書いてあり私文書偽造だし』というのは最寄りの警察署の市民相談課あたりで、その借用書の写しを持って相談されることを勧める。
『私文書偽造』ということであれば、契約者の氏名はあんたの筆跡とは違うはずやし、状況的にはその男が書いた可能性が高い。
せやから、あんたの筆跡の分かる文書と、その男の筆跡が分かる手紙か書類を持って行けば、ある程度、分かるのやないかな。
場合によれば刑法第159条の私文書偽造等の罪で捜査を開始してくれるかも知れん。
これは罰金刑がなく3カ月以上5年以下の懲役に処するという規定があり、軽い罪やない。
ただ、警察署には裁量の範囲というものがあるから、その警察署がそうするかどうかは何とも言えんがな。
いずれにしても相談されとった方がええやろうなとは思う。
その際、『ストーカー行為』などの事実があるのなら、それも相談されたらええ。
ただ、これから民事裁判をするというのは言わん方がええ。
警察には「民事不介入の原則」というのがあるから、民事裁判をするためと分かれば、民事不介入を理由に動かんということも考えられるさかいな。
刑法と民事は、まったく別物やと考えとくべきや。
とことん争われるのなら、裁判の場では、その男の言い分を否定し続けることや。
その借用書があんたの筆跡でなければ、その男はあんたに金を貸したという証明をすることができんはずや。
逆にあんたの方には『自分が払うと言ってた事を証明して貰える証人もいます』ということやから、その裁判は有利に運ぶやろうと考えられる。
ただ、絶対に勝てるのかと言われても、それはワシには何とも言えん。
相手にそれなりの弁護士がついていれば、素人さんの場合、誘導尋問に簡単に引っかかってしまうということも考えられるしな。
その金額がいくらなのかは分からんが、高額な場合、その金額を相手の男に支払うことを思えば、今からでも弁護士に依頼された方がええような気がするがな。
それとは別に、その男の性格、性質がもう一つ分からんし、ストーカー行為の程度も分からんから何とも言えん部分もあるが、偏執的な男だとしたら、あんたがその裁判で勝った場合、恨みに思い、身に危険が及ぶことも考えられる。
そんな事件は腐るほどあるさかいな。
その危険があるような男なら、適当にその裁判に付き合って、調停でいくらかの金額を支払い、その男に勝ったと思わせるのも手やとは思う。
そんな男と付き合った不運を今後の糧にするのなら、その出費も将来的にはプラスになるような気がする。
それで身を守れるのなら安いものやと、あんたが考えられればな。
どうされるかは、あんたの判断次第や。
悪いが、ワシには、あんたから聞く限りの状況では、こう答えるしかない。
あんたのことも、その男のこともワシには、ほとんど何も分からんのやさかいな。
事例その3 期限のない焼却炉の協定書について
相談内容
初めてお便りいたします。
協定書についての質問ですが、焼却炉の協定書に期限が、明記されていません。
しかし、30年近く運転されており、精神的に周りの住民は違う場所に移ってもらいたいと考えています。
また、この施設は、環境基準に違反したことはなく、住民への被害はありません。
この場合、法的に違う場所に移ってもらうことは、出来るのでしょうか。最悪、裁判で勝てるでしょうか。
アドバイスを頂ければ、幸いです。
回答者 ゲン
『協定書についての質問ですが、焼却炉の協定書に期限が、明記されていません。
しかし、30年近く運転されており、精神的に周りの住民は違う場所に移ってもらいたいと考えています』
ということやが、どこの焼却炉なのか、協定書が策定された時期や経緯、またその建物の耐久年数も定かやないので一概には言えんが、
『精神的に周りの住民は違う場所に移ってもらいたいと考えています』という程度では、他へ移ってくれと要望するのは難しいやろうと思う。
『30年近く運転されており』ということが、その理由のようやが、『この施設は、環境基準に違反したことはなく、住民への被害はありません』と言われるのなら尚更、難しいものと思われる。
とはいえ、施設側、国側の環境基準検査結果というのは、先の福島第一原発事故の例にもあるとおり、そのまま信用できるのかという問題もあるがな。
数字だけ示されて、実際には違うということも考えられなくもない。
特に焼却施設から飛散する有毒物質であるダイオキシンは空気中だけではなく地中にも堆積しやすいので調べてみる価値はあるかも知れんな。
それが国の環境基準を超えているというのは十分考えられる。絶対とは言えんが。
『住民への被害はありません』というのは健康被害がないということだと思うが、被害というのは他にも考えられるので、一概にそう決めつけることはできんのやないかな。
例えば、その施設の危険度というのがある。
一般的に焼却施設などの耐久年数は30年ほどやから、老朽化による建物の疲弊や損傷、メンテナンスなどが不十分なために火災事故、爆発事故が起きやすくなっている場合などが考えられる。
その焼却炉と住民の住居地域との距離次第では、危険度が増しているケースがある。
事故が起きた場合はもちろんやが、その危険がある場合には、それらを改善要求することはできる。
それが聞き入れられなければ立ち退き要求も筋の通ったものになるわけや。
その危険度の判定は、専門の研究機関があると思うので、そちらで認定して貰うことを勧める。
それで判断されたらええのやないかな。
『この場合、法的に違う場所に移ってもらうことは出来るのでしょうか。最悪、裁判で勝てるでしょうか』というのは、そちらの話を聞く限りでは難しいと思う。
その焼却施設を違う場所に移ってもらうことが可能であるとすれば、上記に掲げた危険な施設であるということを立証するか、またはその焼却炉がなくなっても処理能力に支障をきたさないというデータが示せるのなら、あるいは要望が叶う可能性があるかも知れん。
ただ、裁判を起こされるつもりなら、「精神的苦痛」という程度の被害では日本の裁判で勝利するのは弱いから、はっきりとした被害を立証する必要がある。
言い方を変えれば、現在稼働している施設に対して気に入らないから他所へ行けというのは法律では通用しないということや。
それが住民にとっても必要な施設なら尚更で、新たな場所に施設を建設するとなると、その地域の住民の方との折衝、予算の問題もあり、実務的にも難しいと考えらるから行政も簡単には応じないやろうと思う。
この場合、最も有力な方法は、その施設の危険度を立証して世論に訴えかけて閉鎖に追い込むことくらいやないやろうかな。
事例その4 契約書の更新が改ざんされたことに端を発するトラブルについて
相談内容
契約書の更新の書類に署名・捺印して会社に提出しました。
後に控えが戻ってきましたが、勤務時間に訂正が入っていて、訂正印は職場の上司のものでした。
書き替えられた内容について、私は一切の説明を受けていません。
改ざんだと上司に伝えたところ、「申し訳ありませんでしたっ」と逆ギレされ、信用できないから仕事を辞めたいと申し出ると言い方が気に入らないと更にヒートアップし、翌日から出勤停止にされました。
改ざんされた内容の控えは私の手元にありますが、私はどうすればよいのでしょう。
回答者 ゲン
『私はどうすればよいのでしょう』というのは、あんたがどうしたいのかによって、ワシの答も違うてくる。
『契約書の更新』というのは、あんたの話の流れからすると『労働契約』の類のようやが、それが改ざんされたことを指摘して『「申し訳ありませんでしたっ」と逆ギレされ、信用できないから仕事を辞めたい』と言ったため、『翌日から出勤停止にされました』というのは何か問題でもあるのかな。
あんたが辞めたいと最初に言うて『出勤停止』になったというのは、あんたの辞めたいという希望とも合致するわけやから、そのまま辞めればええだけの話に思えるがな。
それとも、あんたは『仕事を辞めたい』と言うたのを後悔されていて、本当は辞めたくないということなのかな。
それやったら、例え、その契約内容が上司によって改ざんされたものであったとしても、もっと柔らかく言うべきやったと思う。
その上司が『「申し訳ありませんでしたっ」と逆ギレされ』たというのは、あんたがどういう言い方をしたのかは分からんが、あんたの言い方にも問題があったのやないかと考えられる。
せやないと、その上司が逆ギレする理由がないと思う。後に『言い方が気に入らないと更にヒートアップ』したということからも、それが窺われる。
それに対して、あんたも相当な応酬をしたものと予想されるさかいな。
世の中の揉め事の多くが、お互いの売り言葉に買い言葉のやり取りが原因というケースが多い。あんたの場合も、まさにそれやないかと考えられる。
人がよく陥りやすいことに、相手に落ち度があると分かると、まるで鬼の首でも取ったかのように責め立てる人がいとるが、それは賢い人間のすることやない。
言葉は荒げなくても理詰めで説けば分かる。むしろ穏やかに言うた方が効果的な場合が多い。逆ギレするきっかけも掴めんさかいな。
ただ、『信用できないから仕事を辞めたい』と言うてしもうたものは消えんさかい、あんたが辞めたくないのであれば、嫌でもその上司に、ご自身の言動を詫びるしかないやろうと思う。
その上で、改ざんされた内容について話し合って、双方にとってええように決めるしかないと考えるがな。
『改ざんされた内容の控えは私の手元にあります』というのは、あんたが仕事を辞めたいと言わず『翌日から出勤停止にされました』ということで、その先、解雇ということになるのなら不当解雇を主張する際の証拠にはなると思う。
しかし、あんたの場合は先に『辞めたい』と言うた以上、不当解雇を主張するのは難しいとしか言いようがない。
その場合、改ざんされた内容の書類を持っていても何の役にも立たんやろうな。
昔から、短気は損気とよく言われることやが、あんたのケースはその典型的な例やと思う。
結論として、あんたがその仕事を続けたいのなら、その上司に謝って許して貰うことやし、それが嫌なら、ご自身で言われたように辞めることやな。
あんたは、その上司に非が100%あると考えておられるのかも知れんが、第三者から見ると、どっちもどっちやと言うしかない。
ただの口喧嘩が発展したトラブルやと。
どうされるかは、あんた次第やが、以後、ご自身の言動には十分気をつけられることやと老婆心ながら忠告させて頂く。
有利なときほど穏やかに攻めた方が得策やと思う。
以上や。
「人のふり見て我がふり直せ」という有名な諺がある。
当事者本人は自分の方が正しいと思い込んでいても第三者から見た場合、そうでもないというケースは多々ある。
なぜそういうことになるのか。理由は一つ。たいていは自分の立場でしか物を考えんからや。
僅かでも相手の立場、反対からの見方をしてみれば分かることでも、利害を伴う当事者になると、人は哀しいかなそれができんようになる。
愚かしい行為とまでは言わんが、それでは相談者の望むような結果にはなりにくいのは確かや。
そういう他人の事例を見ることによって、その事に少しでも気付いて貰えば、こういった類の相談をここに掲載する事も意味のあるものになると思う。
相談者の方々も、ワシらがそれを指摘したことで理解を示され、反省されておられたというのは言い添えとく。
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