メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー
第200回 ゲンさんの新聞業界裏話
発行日 2012. 4. 6
■2012年、春の新聞週間について
毎年、本日4月6日から一週間に渡って「春の新聞週間」が始まるということを知っている新聞の一般購読者は少ないやろうと思う。
なぜ毎年、4月6日から「春の新聞週間」なのか。大した理由はない。
単に語呂合わせで初日の4月6日が「新聞を4(よ)6(む)日」だからというだけのことにすぎんという。
オヤジギャグ的発想の寒い駄洒落が、そこにある。
本当のところは、4月が年度変わりで新たな新聞読者を開拓しようという狙いがあってのことやと思うが、残念ながら、その意図が一般にまで伝わっているとは、とても言い難い。
勧誘員にしても、特にその話題をすることで契約が取れるとは考えないから、営業トークで使うケースも少なく喧伝する者もあまりいない。
以前なら、この時期に一大キャンペーンと称して過剰なサービスする販売店も多かったということもあって、この時期に集中して頑張る勧誘員も珍しくはなかったが、昨今はサービスが控えめ傾向にあるさかい、今ひとつ盛り上がりに欠けるという。
とはいえ、業界関係者が「春の新聞週間」について何も知らないと言うんでは格好がつかんから、今日はそのことについて話そうと思う。
その前に、この「春の新聞週間」に因んだ同じような情報を二人の読者の方から寄せて頂いたので、それを先に紹介する。
いつも楽しくメルマガの方読ましていただいております。
すでにご存知かと思いますが、新聞にまつわるニュースが掲載されていたので、もし取りこぼしなどがあるといけないと思い、リンクを張っておきます。
▼マックと新聞協会が共同キャンペーン 一部店舗で来店客に無料で朝刊
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/120330/biz12033014570036-n1.htm より引用
日本マクドナルドホールディングスは30日、日本新聞協会と共同キャンペーンを実施すると発表した。
4月6日から12日までの「春の新聞週間」にあわせ、特定店舗で来店客に新聞を無料配布する。
実施するのは各都道府県1店舗ずつ計47店舗。朝食時間帯(午前7−10時)の来店客先着100人に当日の朝刊1部を無料提供する。
渡す新聞は各店舗で異なり、全国紙や地方紙など複数の日刊新聞が組み合わされる。東京都の場合、S新聞、A新聞、Y新聞、M新聞、N経新聞、東京の6紙。
同協会が2010年に加盟社社員を対象に実施した新聞業界の将来に向けた提言コンクールの最優秀賞受賞作品をもとに企画、マクドナルドが快諾したことで実現した。
全国にチェーン展開するマクドナルドで実施することで、新年度を迎えた若者やビジネスマンが活字に接する機会を増やす。
どこの店舗がこの対象になるかまでは新聞記事では公開されておりませんが、面白い試みだと思いました。
ハカセさん、おはようございます。
▼朝マックで朝刊配布=新聞協会と共同企画―マクドナルド
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120330-00000095-jij-soci より引用
日本マクドナルドは30日、日本新聞協会と共同で春の新聞週間にあたる来月6〜12日に、47都道府県の各1店で朝食時間帯に朝刊を配布するキャンペーンを実施すると発表した。
活字離れの進む若者らに新聞の良さを知ってもらおうという狙いだ。
午前7〜10時に商品を購入した先着100人に1部を無料で提供する。新聞は全国紙や地方紙の中から店側が選ぶ。休刊日の地域が多い9日は実施しない。
私には、とりあえず試しにやってみたという印象を持ちましたが、なんとかして減りつつある購読者(特に若い層)を増やしたいという新聞各社の強い希望と意志が見えました。
ただ、組合的な同業者の連帯の中で決まる決議事項というのは、無難な取り組みになりがちなので、あまり反応が良くないと判断されれば1回やって終わってしまう可能性も高いのかなと思いました。
というものや。
ちなみに、新聞が貰える47都道府県の各1店というのは、
▼日本マクドナルド株式会社ニュースリリース 日本新聞協会との共同キャンペーン
http://www.mcd-holdings.co.jp/news/2012/promotion/promo0330.html
に掲載されとるので、そのお近くにお住まい方、また興味のある方はどうぞ、と言うとく。
取り敢えず、今日がその初日になるさかい、マクドに行けば新聞がタダで貰えるということや。
せやけど、この試みはどうなんやろうと思う。
過去にも、Y新聞がファミリーレストランで似たようなキャンペーンをしていたという話を聞いたことがある。
人知れず始めて人知れず終わったようで、その結果も公表されてないから成否は分からんがな。
ワシは、この手の試みがある都度、勧誘する際、客にそれとなく聞くことにしとるのやが、今回のニュースを無読の若い人に言うても、あまり反応は良うなかった。
「どうせやるのなら、ハンバーガーの一つでも余分にサービスしてくれるのやったら、新聞社もなかなかやるなと思うけど、新聞が貰えるというだけやとあまり嬉しいない。そんなもの貰うても読まんしな」という反応が大半やった。
もっともな意見やと思う。
物で釣るという発想の是非は別にして、キャンペーンと銘打つのに、活字離れが進むと言われている若者に新聞を与えれば効果が上がると考える神経を疑う。
そもそも新聞業界には「試読サービス」と言うて一週間はタダで新聞が読めるサービスがあるわけやから、その気さえあれば電話一本するか、勧誘に来た人間にそれを伝えれば喜んで配達するはずや。
ただ、その後は当然のように勧誘攻めに合うやろうがな。
そのうっとうしさを考えれば店舗で新聞1部を貰う方がええという人もおられるかも知れんが、普段からタダでサービスしとるような物をキャンペーンで使うのは、どうかとは思うがな。
貰う側にすれば、あまり有り難みがないのやないという気がする。
新聞社は、昔から新聞の価値を過大評価しすぎるようなところが見受けられる。
実状が分かっていない。
商品に誇りを持つのはええが、その商品の正しい評価を知らずに思い上がるのは滑稽以外何ものでもないということが。
まあ、新聞社は直接客に新聞を売ることがないから、それを分かれと言うのは無理なのかも知れんがな。
それ故の上から目線で、こういう発想をするのやろうと思う。
新聞がタダで読めるのやから得だろう、有り難いだろうという考えが如実に出ている。
新聞社は読者目線という言葉を使うことがあるが、ほんまにそれが分かっとんのかいなと言いたくなる。
普段から新聞を読まない人間に、新聞を読めと渡して本当にそれで事足りる、良しと考えとるのなら、新聞に未来はない。
そこには新聞を読まない人たちにどうすれば新聞を読んで貰えることができるのかという視点が何もないからや。
必要でない物はタダでもいらん。それでもやるというのは「ありがた迷惑」以外の何ものでもない。
それが普通の感覚やないかと思うがな。
根本のところで間違うとる限りは、何をやろうが新聞社による新聞の普及なんかとても無理な相談や。
それらの記事には書いてなかったが、それぞれのマクドの店では感想などを尋ねるアンケートはがきと新聞をPRする小冊子も同時に渡すとのことや。
そのアンケートが、どの程度集まるのかについては興味はある。
新聞に対して意見のある方は是非、そのアンケートを出して貰いたい。ちなみに、ハカセもその期間中に行ってみると言うてた。
そのアンケートを出して、どういう反応があるのか見てみたいと。それと、マクドの店員さんに、それとなく反応を聞いてみるとも。
ワシは遠慮しとく。行くまでもなく大体の予想はつくさかいな。
今回のターゲットは無読の若い人たちやと思うが、その人たちに新聞の必要性を説くのは並大抵のことやない。
若い人たちが新聞離れになった理由はいろいろある。
新聞記事は買わなくてもネットで見ることができる。購読料が高くて払えない、勿体ない。新聞の内容が信用できない。新聞を読んでいる姿がダサイ。
読むのが面倒、時間がない。読んでいて面白くない。読む必要性を感じない。勧誘員や販売店と揉めた、トラブルを起こしたなどなど、他にも挙げたらキリがないくらい多く、その根は深い。
結果を見なければ何とも言えんが、今回の試みが失敗する確率はかなり高いやろうと思われる。
『午前7〜10時に商品を購入した先着100人に1部を無料で提供する』とのことやが、強制的にでも渡さん限り受け取る人は少ないのやないかという気がする。
下手をすると、その期間だけ『午前7〜10時』の間に行くのはよそうと考える者まで現れるおそれすらあるのやないかとも。
実際、そういうことを言う若者もいてたさかいな。
救いがあるとすれば、『47都道府県の各1店』というのが、それぞれの都道府県で最も人が集まる店舗を選んでいることやな。
先着100人程度なら、新聞を渡すだけだと捌(は)かせられるのやないかとという気はする。断る人を差し引いたとしてもな。
結果として数字的には成功したと言える可能性が高い。
朝のマクドに行けば分かるが、来ているのは必ずしも若い無読者たちばかりとは限らん。
ハカセがちょっと調べたところによると、今回対象となっているマクドの店舗は駅周辺が多かったという。
そういう店舗では朝食を食い損ねた通勤途中の年輩サラリーマンも結構いとるやろうし、夜勤明けの工場勤務者も少なくないと考えられる。
駐車スペースのある店舗なら、建築現場に向かう職人や営業マンも結構多い。
余談やが、その営業マンの中には拡張員も含まれる。
拡張員には独身者が多いということもあるし、出社時間がたいていは午前10時〜11時の間やさかい、そういったファーストフード店に行く者も結構おる。
そんな拡張員に新聞を渡して、どないすんねんと思うが、そのキャンペーン中ならそうせんわけにはいかんやろうな。
とまあ、ケチをつけたらキリがないので、一応、若い者がターゲットになるとして話を進める。
ただ、その若い人たちが新聞1部を貰って喜ぶとは考えにくい。
それが、現在若者を中心にバカ売れしとるというAKBの新聞が貰えるというのなら長い行列ができるやろうがな。
AKBの新聞は、A新聞系列のスポーツ紙が発行元やさかい、それをサービスするというのもアリやと考えるがな。
絶対にウケるし、大きな話題になるのも間違いない。
まあ、それは無理やとしても、せめてもう一ひねりくらいの工夫は欲しい。
例えば、マクドで貰うたその新聞(店のスタンプ付き)を、それぞれの発行新聞の販売店に持って行くとハンバーガーの一つでも貰えるという具合にすれば、あるいは飛びつく人がいるかも知れん。
そして、それぞれの販売店で若い人の喜びそうなイベントでも催せば新聞をアピールするきっかけが掴める可能性もある。
先のAKBやないが、その手のアイドルを広告塔にして集客し、「新聞を読んでね」と言わせれば、コロリとその気になる者もいとるのやないかな。
まあ、新聞1部がサービス品になると考えとる新聞社には、そんな発想は浮かばんやろうがな。
その発想以前に、新聞1部よりハンバーガー1個の方が若い人にとっては、はるかに値打ちがあると考えられているとは、思いもせんやろうからな。
新聞販売業界に携わるワシらとしても辛いことやが、それが現実であり、実態なわけや。
若い人が150円持っていて、新聞とハンバーガーのどちらを買うかと選択になれば文句なくハンバーガーに軍配が上がるのは間違いない。
現実を直視しないことには始まらない。
まずは、若い人から見れば新聞とはその程度のものやという認識に立って、それをいかにすれば売り込めるのか、興味を持って買って貰えるのかということを考える必要がある。
ワシは、よく無読の人は相手にするなと言うことが多い。そういう人を勧誘するのは難しく時間の無駄になるケースが多いからと。
勧誘員としての立場なら、それはそれでもええと思う。というか現状ではやむを得ない。
勧誘員にとって、その契約がどんなに難しかろうと簡単だろうと、1本の契約カードは1本の値打ちしかないし、受け取る報奨金も変わることはない。
それなら、難しい客は避けて、簡単な客を探すのは仕方のない選択やと思う。
ワシもアドバイスするときには、そうした方がええと言う。
ただ、新聞業界全体とすれば、それでは先がないわな。
まだ、新聞を読むことが当たり前という時代で育ってきた中高年者や高齢者たちが存命のうちは、新聞が完全に廃れることはないやろうとは思う。
しかし、現在の無読者である若者が社会の中心を担うようになると、それも怪しくなる。
新聞を読むというのは習慣のようなところがある。その習慣がついていないと、社会に出て新聞が必要になると言われても、なかなか読めるもんやない。
新聞を読むことが当たり前という世代の者なら、新聞を読まなくても購読するというケースは珍しくはないが、新聞の価値を認めない若い世代は絶対と言うてええくらい、それはない。
そして、その無読の世代も結婚すれば当然のように子供が生まれる。親に新聞を購読する習慣がなければ、その子供も当然ないのが普通や。
新聞に対して否定的な親の子供も同じく新聞嫌いになるのは容易に想像できる。
その連鎖が続けば、新聞が廃れるのは火を見るよりも明らかなことやと誰にでも分かる。
現時点でも遅きに逸した感は免れんが、それでも何もせんよりマシや。
その意味で言えば、「春の新聞週間」、「秋の新聞週間」というのは、無読者に新聞を購読させるきっかけを作るには、もってこいのイベントになるとは思う。
しかし、如何せん、その知名度が低すぎる。それが日々勧誘に廻っているワシの実感や。
新聞週間そのものの歴史は古い。
新聞週間というのは、1930年代、カリフォルニア州、ペンシルバニア州などアメリカ各地で行われるようになり、1940年には全米に拡大されたと言われている。
日本では新聞の普及と教育の為に、戦後GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)がアメリカで一般的になっていた新聞週間を催すよう提唱し、1947年に地方紙のE新聞が最初に実施したという。
その翌年の1948年に日本新聞協会とアメリカ新聞協会が10月1日〜8日までの一週間、新聞週間の活動を行ったのが、その始まりとされとる。
その後、1968年から台風シーズンを避ける為に、現在の10月15日から21日までの一週間にしたということや。
これが、現在の「秋の新聞週間」ということになる。
これに対して、今回の「春の新聞週間」は、2003年の春から実施されているもので、比較的新しい。
正直言うて、ワシらですら、このメルマガを始めた2004年当時は「春の新聞週間」というのを知らんかった。
そのため、当時のメルマガ『第9回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■新聞世論調査について』(注1.巻末参考ページ参照)では、新聞週間は秋しかないと思い込んで話していたさかいな。
もっとも、ワシらが知らんと言うてるものが一般の人に周知されとるはずもないと思うけどな。
この「春の新聞週間」、「秋の新聞週間」にしても今や業界内だけでのイベント行事になっとるから、そうなるのも無理からぬ話ではあるがな。
新聞社は、昔からなぜか新聞をアピールする力が弱いように思えてならん。
新聞は売り込まないと売れないというのはワシら勧誘員や現場の新聞販売店だけが考えとることで、新聞社はその名前だけで売れるという妄想があるためやとは思うがな。
新聞社が大名商売を続けとるうちは、マシなアイデアも出ることはない。
出てもせいぜいが、今回程度のことやろうと思う。
何事も謙虚な姿勢になって実態を把握してから物事に対処せな、現状を打破することも先に進むこともできるはずがない。
慢心、傲慢さからは何も生まれない。
新聞社の人たちの優秀な頭脳で、それが分からんはずはないと考えるのやがな。
もっとも、分かってないのは新聞社でも、ほんの一部のトップ連中だけやとは思う。
その連中の頭脳構造を変えん限り、ほんまに新聞は危ういところに行ってしまうという気がする。
一言で言えば時代が読めてないということやが、新聞社のトップたちがそれでは救いはないわな。
そう言い切れる根拠ならいくらでもあるが、それはいずれ近いうちにじっくり話すことにする。
今回は、新聞週間とはどういうものかということを知って頂ければ、それええと思う。
参考ページ
注1.第9回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■新聞世論調査について
ゲンさんの新聞勧誘問題なんでもQ&A選集 電子書籍版パート1
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