メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー

第203回 ゲンさんの新聞業界裏話


発行日  2012.4.27


■新聞とは何か その1 報道の裏側に見え隠れするもの


新聞とは何か?

そもそも新聞とは何かということ根本的なことには、あまり触れて来なかったように思う。

それには、新聞について説明する必要などないと考えとったからや。

勧誘するときでさえ、ワシを含めて「新聞とは、こんなにいい商品ですよ」と説明する勧誘員などおらんと考えるさかいな。

新聞勧誘とは商品説明をまったく必要としない希有な営業や。

売り込むワシらでさえそうなんやから、新聞を毎日読む人や新聞を嫌って批判する無読の人たちにとっても、新聞についての根本的なことを何も知らなくても当然やと思う。

ただ、その本質を知っているか、どうかで新聞の見方が大きく違うてくるので、今回はそれについて話す。

新聞とは事件や事故、政治経済、スポーツ、国際情勢などの動向を報じるためのメディアの一種で、文章や写真、絵、漫画、表などが紙に印刷されたものと定義されている。

新聞には世界規模のニュースから国内外、地域内、さらには企業や学校、町内会、サークルといったコミュニティ内の情報伝達手段として様々な形態がある。

広義の意味で言えば、一般紙、専門紙 、経済紙、スポーツ紙、機関紙 、商業紙、業界紙、学生新聞、壁新聞、瓦版、回覧板、無料紙、点字新聞などのすべてが「新聞」という括りになる。

ワシらの言う新聞とは、俗に「一般紙」と呼ばれる全国紙、ブロック紙、地方紙のことで、新聞社という営利企業が発行する日刊の情報紙を指す。

一般の人も新聞と言えば、その認識がほとんどやと思う。

新聞は「公共性が高い」という理由で、本来なら独占禁止法に抵触する販売形態にも関わらず、例外的に再販制度が適用され国の法律で手厚く守られている。

そのため他国では類を見ないほどの戸別宅配制度が整備されていて、日本全国の津々浦々に至るまで、そこに人が住んでいる限り届けられている。

そのための新聞販売店、販売所が必ずある。そして、どんな条件下の配達であってもすべて同じ値段と決められている。

しかも、その日の朝には必ず配達される仕組みになっている。もしくは販売されすべての人に届くようになっている。

日本人にとっては、当たり前のことだが、他国の人にとってはとんでもなく凄いことなわけや。

その点については何か誇らしい気分になる。

それもあるのか、国別日刊紙の成人人口1,000人当たりの発行部数は、631.7部で世界5位にランクされている。

先進主要国の中で上位なのは3位のデンマークがあるだけやから、世界のトップクラスの新聞発行率を誇る新聞大国と言うてもええ。

もっとも、日本の国民すべてが新聞を読んでいるかとなると些(いささ)か疑問やが、新聞記事に書かれた内容に強い影響力があるのは確かやと思う。

日本の場合、新聞社は傘下にテレビ局を持っている、あるいは関わり合いのあるケースが目立つということで、テレビニュースにも新聞の影響力が強いさかいよけいや。

新聞社は、

「報道の原点は、自分たちの周りや社会で何が起きているか知りたいという市民の関心に応え、何があったかを伝えること」

「隠された問題点を明らかにして検証することで、権力を監視し正義の実現を目指す」

ことをモットーにしていると広言している。

それは概ね実行されているが、一部では、そうはなっていないケースもある。

その一部とは何か。

それは新聞社自身に関する報道や。

これらついては『第112回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■マスコミが新聞の勧誘問題を取り上げないのは何故?』(注1.巻末参考ページ参照)の中でも言うたが、その部分だけをもう一度引用する。


サイトに、『マスコミが拡張団の問題を取り上げないのは、何故ですか?』という短い質問があった。

短いが、これは簡単に説明できる問題ではない。

この質問者がそう聞く裏には、『拡張団の問題』イコール、「悪質な勧誘」がなぜ公にされないのかというという疑問があるものと思われる。

過去、このメルマガやサイトでは「勧誘」の問題については数多く言及してきたが、マスコミ、取り分け、新聞社の対応に触れることはあまりなかった。

ワシら業界の者も含めた多くの読者の方々にとっても、「一体、新聞社やマスコミは新聞の勧誘に対して、どう考えてんねん」という思いが強いやろうと思う。

新聞やマスコミは他者の不正には厳しく暴き立てるのに、なぜ拡張員の悪質な勧誘を問題にしないのかと。

自ら「襟を正す」べきやないのかと。

正論としてはそうやが、新聞社は自ら「公器」とは言うものの、所詮は営利企業の一つにすぎんという一面がある。

営利企業では利益を生むことが最優先される。

そのために、「悪声を公表せず」というのは十分考えられることや。

「当社では、新聞の勧誘時には、こんなえげつないことをしてますよ」と公表して新聞の売り上げが伸びるとは考えんやろうからな。

そんなことをすれば、新聞のイメージが下がり、新聞が売れんようになって困ると。

企業体である新聞社がそう考えるのは、ある意味、自然な事やとも言える。

残念ながら、「自ら襟を正す」、あるいは「すべてを白日のもとに晒(さら)す」ようなことを考える組織は、この日本、いや世界にも存在せんやろうと思う。

それは官公庁や警察、裁判所、病院などの絶対に不正があってはならんとされる組織おいても同じことが言える。

それらの組織に不正があったとしても自ら公表することなどなく、ほとんどが隠すことに徹する。そんなものや。


と。

これに加えて、押し紙問題についての新聞紙面上での報道も、ほとんどない。

新聞の勧誘問題と押し紙問題は、新聞社にとってはタブーになっとる。

ネットや週刊誌などで、その事について批判され叩かれていることに対して、堂々と新聞紙面で反論すればええやろうと思うが、それもない。

新聞社は自らのタブーについては新聞紙面には書かないということに徹してきた。

それを所詮、営利目的の一企業と見るか、「公共性が高い」から、新聞にとって不利なことについても書くべきだと考えるかによって違うてくるわけや。

残念やが、現在の新聞社の多くは自社の企業利益を優先しとるとしか思えん。

新聞社は自らのタブーを新聞紙面に書かんのは、そういうことやと思う。

企業としての新聞社の利益を守るのが第一で、社会正義はその後ということになる。

そう理解すれば分かることも多い。

よく「新聞社は大口スポンサーに気を遣う報道しかしない」と言われる。

これについても『第182回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■報道のあり方 その2 消された「原発国民投票」CMについて』(注2.巻末参考ページ参照)
で話したことがある。

マスコミ各社にはスポンサータブーというものがあり、それによって原発に反対するかのようなCMは流せんということで「原発国民投票」の雑誌特集CMをテレビ局が放映拒否したというものや。

そのテレビ局の上部組織に新聞社がある。当然、その意向が大きく左右されたものと思われる。

気づいておられる一般読者の方々も多いと思うが、多くの新聞の論調は福島第一原発事故当初、東京電力側に対して気遣った報道が大半を占めていた。

事故自体は大したことはない。すぐ収束すると連日のように楽観視した報道がされていたのは、そのためやと思う。

優秀な頭脳が集まった新聞記者が、そういった報道について疑問を感じていなかったというのは、今考えれば不思議なことやと言うしかない。

政府や電力会社、およびお抱え科学者たちだけで作られた大本営発表を信じて書き続けたというのなら、あまりにも無能すぎる。

大本営発表と知ってあえて、そういう記事にしたというのは、例え上からの指示があったにしても、新聞人としては情けなさすぎる。

いずれにしても、今とは格段の違いで電力会社に甘い報道やったのは間違いない。

現在はさすがに世論の反発もあり、あまりあからさまな擁護報道はされとらんさかいな。

それでも、「脱原発」とか「原発は不要」とまで論じて報道する新聞は、ほとんどない。

その先には電力会社という巨大スポンサーが絡んどるからやと。

新聞はその収益の半分近くを広告収入で賄っているという点と、営利企業やという点を考えれば、経営上、巨大スポンサーに配慮した報道をするのはやむを得ない選択なのかも知れん。

俗に「提灯(ちょうちん)記事」と呼ばれとるものが、そうや。

そのため、「隠された問題点を明らかにして検証することで、権力を監視し正義の実現を目指す」というスローガンとは大きくかけ離れてしまったと。

それでは正義とは言えんわな。正義を標榜して貫くつもりなら目先の利益に飛びついたらあかん。

正義の旗よりも生き残ることの方が大切やというのなら、所詮は営利目的でやっとる企業として、そうすればええが、それやと新聞は終わる。

新聞の使命を果たすどころの騒ぎではなくなる。

そんな新聞を読むことで判断を誤ることにもなりかねんから、読者も救われん。

実際、ワシらも知らず知らずのうちに判断を誤っていたこともあったさかいな。

小沢一郎氏の新聞報道の数々が、それやった。

おそらく、ワシらと同じく一般の人たちの多くも氏の実像を知らずに、新聞やテレビの報道から「小沢氏は悪辣な政治家」だという印象を刷り込まれていたのやないかと思う。

ワシが、そう思い始めたのは、2年前の2010年5月1日、サイトの『ゲンさんのちょっと聞いてんかNO.12 私がM新聞の講読を止めたくなった理由……頑張れ小沢一郎さん』(注3.巻末参考ページ参照)に、一人の主婦の方がメールを送って来られてからやった。

その部分を紹介する。


私は普通の一主婦です。現在、M新聞を講読しています。

この一年間、不信感を募らせるだけの新聞記事に嫌気を差しつつも、こんな見方もあるのかと、意見の違う物も見ていこうと自分自身に言い続けて新聞を読んできました。

しかし、それも限界で、昨今の偏った記事に憤りと怒りを覚え、新聞を見る事すら嫌になり、M新聞の講読を止めたいと考えました。

特に民主党の幹事長、小沢一郎さんについての偏向的な記事がひどすぎます。

小沢さんがまだ自民党にいた頃だったと思います。

小沢さんの発言に対し、M新聞の紙面ではその発言内容が間違っているのか正しいのかの検証や論評もなく、ただ、「この小沢発言にはこんな思惑があって・・」だとか、「この発言の裏には?」だとの誹謗中傷と思える記事ばかり目についていました。

私は、「この小沢一郎さんの発言内容は、一体どんな意味を持っているのか?」ということが、とても知りたくなり、多くの本を読みました。

難しい事は分かりませんが、小沢さんに対する否定的な本・小沢さん自身の本・小沢さんに若干好意的な本などを読んでいると、どんどん世の中が小沢さんの発言のように動いていて、この人は少なくとも多くの政治家の中で先見の明のある人だと確信しました。

そのため発言内容の正否について「?」すらない決めつけた記事が氾濫し、小沢さんを日常茶飯事のように叩いていても、どこか褪(さ)めた思いで新聞を読む事が出来ました。

中略。

確かに小沢さんは権力者ではありますが、家族もあり〈男の子3人いると書かれていましたが・・)その家族のことを思うと、たまらなく悲しい気持ちになりました。

子供達が学校でいじめられて来たのではないか? 奥様は、随分、心を痛めてきたのではないか?と。

それらを見ている多くの人たちは同じ日本人でありながら、テレビでも新聞でもラジオでも鬼の首を取ったかのように叩きまくっているこの状況に、どうして何とも思わないのか・・悲しくなりました。

推定無罪という言葉は一体何なのか?

多くのメディアでは菅谷さんの無実については、「何で冤罪を!」と、声高に責めながら、今ここにその冤罪を作っているかもしれない現実になぜ言及しないのか? 誰も気づかないのか?

開けても暮れても小沢=悪と垂れ流し・・・

小沢さんの罪が確定しているのなら、それは仕方ないかも知れません。しかし、どのような罪もまだ確定していないのです。

つまり、まだ罪にもなってない人を寄ってたかって攻撃しているわけです。これを誰も不自然なことだとは考えないのでしょうか?

そんな状況の中、こんな大人たちの世界で、本当に子供たちがまともに育って行くのだろうかと、疑問に思います。

これは、現在、子供たちの世界に蔓延している「いじめ」の構造そのものではないでしょうか?

子供は大人を見て育ちます。そんな大人たちの世界を見せつけられたら、一人の人間を意味もなく攻撃することが悪いとは子供たちも考えないでしょう。

むしろ、そうすることが正義のように考えるかも知れません。

今回、「M新聞を読みたくない!」と、決定的に思ったのは(もちろん毎週のコラムにある醜いほどの小沢さんへの批判も、正直いやでしたが、)確か長崎県知事選の朝刊の一面にあった川柳すべてが(記憶違いでなければ、20選近かったと思います)小沢さんの悪い印象を与える物でした。

これは明らかにM新聞側の意図だと思いました。あまりにも醜悪です。

それが選挙の日に・・しかも全部が・・・これは私にとって衝撃でした。

ここまでやらなくてはいけないのかと・・人を貶(おとし)める事を堂々と新聞を通して誰かが行っている! これが、現実の事かと本当に悲しくなりました。

新聞とは、国民に多くの情報を提供し、その中で個々の人達が自分の思った情報を選び、行動する大切な物ではないですか?

こんなに人を陥れようとしている新聞など、もう見たくもありません。


ワシらは、このメールの真偽を確かめるべく調べ始めた。

サイトに掲載する以上、いくら説得力のある文面でも鵜呑みにするわけにはいかんさかいな。

結果は、この主婦の方の言われるとおりやった。

それについては、『第101回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■報道のあり方……検察審査会の「起訴相当」決定の是非について』(注4.巻末参考ページ参照)で、その検証記事をこのメルマガ誌上に掲載した。

数々の論証を掲載した後に、


報道は、すべてこういった感じで、肝心の『平成16年と17年分の政治資金収支報告書への虚偽記載について出されたもの』の内容のどこが「虚偽記載」に当たる箇所で何が悪いのかは、どの新聞記事にも触れられていないし、説明もされていない。

その訴えを起こしたという市民団体とやらですら、その詳しい説明をしていない。

もっとも、そうしようにも、できないといった方が正しいのかも知れんがな。

それを法律の素人で構成されている「検察審査会」のメンバーが、審査補助員(弁護士)の助言があったにせよ、「起訴相当」と判断したということになる。

その経緯と根拠は一体何なのか。是非、それを教えてほしい、知りたいもんやと思う。

まあ、おそらくは正しい情報は何一つ知らされてなかったからなのやろうというのは想像つくがな。

知っていれば、少なくとも全員一致でそんな決定が下せるはずがない。

もちろん、ワシがここまで言うからには、それなりの根拠があってのことや。

この問題を調べれば調べるほど、何でこんな決定が全員一致になるのか、それを「国民の総意」でもあるかのように吹聴して報道できるのかが不思議でならん。

国民の多くは、新聞やテレビ報道からの情報のみで判断しとると思われるから無理はないが、それを糾弾する側は、その裏側まで調べて知り尽くしとるはずやのに、それらの事実を完全に無視する愚挙に出たとしかワシには思えん。

事、ここに至っては、「都合の悪い情報は伏せる」というレベルの話やないと考える。

早い話が、目的のためには手段を選ばず何でもするという戦略の一環としか、ワシには見えん。

その目的とは、「小沢一郎」という存在が邪魔で、何としてでも蹴落とし、その政治生命を絶ちたいということやろうと思う。

それが、匿名の市民団体であり、検察であり、それに踊らされた新聞社やないのかと。

加えて、小沢氏の反対勢力の暗躍も十分に考えられる。

おそらく、それを仕掛けとる人間にとっても、この事件程度で小沢一郎氏が罪に問われることなど露ほども考えとらんはずや。

ほぼ100%の確率で無罪放免になる。後日、えん罪やったと知れるのは間違いないと思うさかいな。


と結論づけた。

その後、『第118回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■民主党代表選挙報道のあり方について』(注5.巻末参考ページ参照)では、


ワシは、検察審査会制度自体は悪いとは思わん。

検察が絶対に間違いを犯さんとは断言できんし、市民の訴える権利を尊重する必要があるとも考えるさかいな。

しかし、何でも訴えればええ。そのすべてを認めろというのは行き過ぎやと思う。

特に、今回のように検察が不起訴にした事案について、それでも罪に問いたいのなら、法律に照らして限りなく有罪にできるという根拠と証拠を示す必要があると思う。

誰が聞いても納得できる内容ものをな。

単に、あいつが怪しい、疑わしいという程度で、法律知識の薄い素人が訴え、「起訴相当」などという決定を下すべきやないと。

日本の司法、法律理念には「疑わしきは罰せず」とあるわけやさかいな。

幸いと言うか、これは「裁判員裁判」の事案とは違うからまだええが、もし、その裁きまで法律の素人が介入することになったらと考えると、ぞっとする。

罪というのは、法律の定めによって罰せられなあかん。間違っても、市民感情で罪が問われ裁かれるべきやない。

それやと、ただのリンチにしかならんさかいな。

市民感情で裁く場は、選挙という手段があるわけや。裁くのならそこで裁けばええ。投票という意志表示で。

この事案は、1年以上も東京地検特捜部が、テレビ報道でも大々的に報じられたように小沢氏に関係するありとあらゆる所を強制捜査をして、膨大な証拠資料とやらを押収し、総力を挙げて血眼になって捜査したにも関わらず、結果として罪に問えるほどの理由が何もなかったために泣く泣く「不起訴」としたものや。

こんなことは検察当局にとっては大失態で、できればそんな不細工なことにはなりたくなかったはずやが、そのまま無理に裁判に突入しても、ほぼ100%の確率で負けると分かり切っとるさかい、あきらめるしかなかったわけや。

恥の上塗りを避けるために。

その体裁として「嫌疑不十分」という、いかにも何かあるかのような錯覚をさせる表現を用いたわけやが、どう見ても負け惜しみとしか、ワシには見えん。

徹底して調べて何も出てこんかったというのは、その事実がないものと判断するべきやないやろうかと思う。

本当に巨悪が潜んでいるのなら、過去のロッキード事件やリクルート事件のように、例え時の総理大臣ですら逮捕したという実績からすれば、その捜査時は野党の代表にすぎんかった小沢氏の罪を見逃すことなど絶対にあり得んと考えるがな。

それにも関わらず、何の証拠も根拠もなく、正当な起訴理由すら示せていない事案にも関わらず、単に「市民感情」というわけの分からん理由で無理矢理「起訴相当」とし、「裁判」しろと言うのは、中世の「魔女裁判」に匹敵する暴挙としか言いようがないと思う。

こんなことがこれからも通用するようやと、とてもやないが法治国家とは言えんのやないかと。

ワシが、「この国の司法制度は終わる」、「検察審査会制度の存在そのものが疑われ、危うくなる」と言う所以(ゆえん)や。

もっとも、裁判になれば、無罪放免になるのは目に見えとるさかい、それで法治国家としての面目と体裁は保たれるとは思うがな。

間違っても、この事案に関しては何らかの罪に問われるはずはないと信じとる。

そこまで裁判所は愚かやないはずやと。

中略。

しかも、その告発をしたのが多くの国民を擁する市民団体と言うのなら、民主主義の国に住む人間として、ある程度は認めんと仕方ないが、この事案は、それとは大きく違う。

検察による小沢氏への不起訴決定の不服申し立てをしたという市民団体は、その名前すら新聞紙面では明かされていない。単に「市民団体」と記されているだけや。

その団体の希望か、新聞社の意図的なものか何かは知らんが、いずれにしても、その名前すら明かせんような市民団体とやらは、ワシには胡散臭い集団としか映らん。

そんな名前も明かせんような市民団体があるのか、それが市民団体と言えるのやろうかと思う。

さらに、それについて調べると、市民団体とは明記してはいても、たった一人の思惑により異議申し立てをしたものやということが分かった。

しかも、そうした狙いは他にあったと、その本人が自身のブログで語っとるというのには驚く。

その中に、


小沢一郎という巨悪を眠らせてはいけないこともありますが、外国人参政権実現のために誰よりも積極的なこの民主党大物政治家の動きを止めなければならないからです。

一連の小沢ショックとも呼べる政局の中で、外国人参政権問題は一時期に比べてかなり下火になってきた感があります。

しかし、同問題の中心にいる政治家が不起訴になったことで、またぞろ外国人参政権法案の国会上程を目指した動きが加速する可能性があるのです。


とある。

つまり、その異議申し立てをした人物の狙いは『外国人参政権阻止』という狙いがあってのことのようで、肝心な『政治団体陸山会が2004年の政治資金収支報告書』のどこに問題があり、違法性があるから「検察の不起訴決定」は、おかしいといったことについては一切触れられていない。

この人物にとっては、罪のあるなしなど関係なく、その事で僅かでも小沢一郎氏の人気を下げられ、その力を一時でも削ぐことができるのなら、『外国人参政権阻止』につながるから、それでええと考えとるようなフシがある。

それに、マスコミ始め、東京第5検察審査会が踊らされ同調しとることになる。

『外国人参政権』の問題については、それぞれの意見があるやろうから、どういう考えでいようが批判するつもりはない。好きにすればええ。

しかし、それはそれで別の場所で堂々と議論を戦わせるか、あるいはそのための運動をすればええことや。

まったく関係のない事案で、その手法として検察審査会へ異議申し立てをするというのは、お門違いなやり方と言うしかない。

普通は、そういう事実を知れば誰でもおかしいと感じるのやないかと思うが、なぜか報道では一切それに触れようとすらしていない。


と言うた。

なぜ、訴え出た市民団体の詳細を新聞やテレビなどのマスコミが隠す必要があるのか。公表しようとしないのか。

それだけでも、小沢氏への一連の報道が恣意的なものやというのが見て取れると思う。

なぜ、そこまでして新聞が小沢氏を嫌うのかということを調べていくうちに、意外なところにその理由があったというのが分かった。

それは今から20年以上前の1991年までに遡る。

当時、自民党の幹事長だった小沢氏が、それまで政見記者会見には記者クラブに属している記者しか出席できないことに疑問を呈し、記者クラブに所属していない雑誌記者を含めたその他の記者たちをオープンに参加させたことに、端を発しているという。

それから以降、既得権を侵害されたと感じた新聞社やテレビメディアが一斉に小沢氏を攻撃するようになったと。

それが今日の小沢氏の虚像となって表れていると。

どうやら、それは事実のようや。それについての詳しいことは、もう少し調べた上で話したいと思う。

いずれにしても裁判の結果は、ワシらが2年前に予想したとおり昨日の4月26日に無罪判決が出た。


<虚偽記載事件>小沢一郎元代表に無罪判決…東京地裁
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120426-00000013-mai-pol より引用


 資金管理団体「陸山会」の土地購入を巡り、政治資金規正法違反(虚偽記載)で強制起訴された民主党元代表、小沢一郎被告(69)の判決で、東京地裁は26日、無罪(求刑・禁錮3年)を言い渡した。

 大善文男裁判長は、東京第5検察審査会の起訴議決を有効と判断し、元秘書たちが作成した陸山会の政治資金収支報告書が虚偽記載にあたると認定。

 元代表の一定の関与も認めたが「元代表は違法性の根拠となる具体的事情まで認識していなかった可能性を否定できず共謀を認めて刑事責任を問うことはできない」と結論づけた。

 政界実力者が検察審査会の議決で罪に問われた異例の公判。無罪となったことで政界に多大な影響を与えるとともに、検察審制度の在り方を巡る議論にも波及しそうだ。

 判決は、元代表が土地購入時に提供した4億円は陸山会への貸し付けにあたると判断。陸山会事務担当の元秘書で衆院議員、石川知裕被告(38)=1審有罪、控訴中=は借り入れを04年分報告書に記載せずに同額の銀行融資を記載し、土地購入についても05年分報告書にずらして記載したと認定した。

 その動機については「4億円提供が対外的に明らかになって(元代表が)マスコミなどから追及され政治的な不利益(になること)を避けるため」と指摘した。

 さらに判決は、土地購入の記載を先送りしたことや4億円を記載しないことについて、「元代表が石川議員から報告を受けるなどし、了承・承知していた」と関与を認定。

 こうした虚偽内容が含まれる収支報告書についても、元代表が石川議員のほか、後任事務担当だった元秘書の池田光智被告(34)=同=から「改めて報告を受けて認識し、了承していた」と指摘した。

 だが、共謀の成立に必要な要件である「(虚偽記載をしようという)故意」を欠くと結論づけた。

 公判では、東京第5検察審が議決の根拠の一つとした、石川議員の聴取状況をまとめた田代政弘検事(45)作成の捜査報告書に実際にはないやりとりが記載された問題も判明。

 弁護側は「検察は意図的に検察審に誤った判断をさせており、議決は無効」とも訴えたが、判決は「審査手続きの瑕疵(かし)とは別問題」だと指摘。議決を有効とした。


無罪判決は当然やが、その無罪判決が出ても尚、新聞やテレビの論調は小沢氏がグレーであるかのような報道に終始しとる。

まるで無罪になったのが心外でもあるかのように。

ワシらは何度も言うとるが、そもそも小沢氏の容疑は捏造で作られ、何者かの悪意に満ちた意志が働いて、東京第5検察審の起訴相当議決という、とんでもないことになったものなんや。

本来起きるはずのないことが起きた。

小学館発行の2010年10月22日号の「週間ポスト」誌の大見出しに、『検察審査会に申し立てた「真実を求める会」の驚くべき正体「たった1人」に殺された小沢一郎』とある。

その中の『「100万分の7」の奇跡』という小見出しに、興味を惹かれるものがあった。

その部分を抜粋して引用する。


今回の小沢起訴を議決した審査員は11人いるが、その平均年齢は30.9歳だったとされる。

有権者から「くじ」で選ばれることになっているが、有権者の平均年齢は約52歳。

この大きな差から、「本当にくじで選ばれている」のかという疑問が湧いている。

本誌はそのような偏りが生じる確率を求めた。

東京都の年齢層別の人口をもとに、多摩大学経済情報学部・統計分析グループの助力を得て、「くじで選んだ11人の平均年齢が、30.9歳以下になる確率」を計算したのである。

結果は、「0.005%」。70歳以上は審査員を断れる制度があるから、70歳未満の都民だけを母数にしても「0.075%」。

さらに驚くべきは、1回目の議決をした審査員の平均年齢も34.3歳(2回目とは全員が別人)。

平均年齢がこれ以下になる確率(母数70歳未満限定)は、「0.89%」で、両方が続けて起きる確率になると、「0.00067%」、つまり「100万回くじを実施すれば7回起きる」という“奇跡”だったことになる。

これは本当に偶然なのだろうか。


そんな偶然などないというのが一般常識で、ワシも偶然とは考えん。

そうやとしたら、有権者から「くじ」で選ばれることになっている審査員は、意図的に選ばれたとしか考えられんことになる。

それも小沢氏を嫌っている人間ばかりをえらんだと。それなら対して調べもせず議論をしなくても全員一致での議決というのはあり得る話や。

検察審の選出方法は裁判員制度の裁判員ほどオープンになっていない。人知れず行われている。

この数字は何か不正があったと思わせるに十分なものやと考える。そう考える方が天文学的な偶然の確率を信じるより説得力がある。自然やと。

その背景が背景ということもあるしな。

さすがに、それではまずいというので、すぐさま東京第5検察審査会の事務局は、


<検察審査会>小沢氏議決の委員年齢訂正 平均33.91歳

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101012-00000093-mai-soci より引用


 東京第5検察審査会の事務局は12日、政治資金規正法違反(虚偽記載)で小沢一郎・民主党元代表を強制起訴することを決めた「起訴議決」(4日公表)にかかわった審査員11人の平均年齢を「30.9歳」から「33.91歳」に訂正すると発表した。事務局の担当者の計算ミスが原因で、事務局は「誠に申し訳ない」と謝罪した。

 事務局によると、平均年齢を計算する際、担当職員が37歳の審査員の年齢を足し忘れ、10人の合計年齢を11で割るなどしていた。議決公表後に一般市民らから「平均年齢が若すぎて不自然ではないか」などと問い合わせがあり、再計算したところミスが判明した。


と狼狽えて理由にもならん理由を掲げて訂正したが、それをもとに計算し直したとしても、数字的には、それほど大差ないものになる。

この不自然な数字をどう見るか。偶然か、意図されたものか。

意図的なものというのは、最初から、その議決が出ると決まりきった者ばかりを選んだのやないか、誘導しやすい対象ばかりを恣意的に選んだのやないかという疑惑になる。

その疑惑には根拠がある。

先に話した10月22日号の「週間ポスト」誌の記事は、そのことにも言及している。


また、今回の審査は2000ページといわれる膨大な捜査資料を読み込む必要があったにもかかわらず、「8月時点で補助員弁護士が決まっていなかった」。

1ヶ月程度で、平均30歳余りの審査員が資料を読破し、あの独創的な結論をまとめたというのは無理がある。

補助員弁護士の正確な就任時期にも疑問がある。検審法は「2回目の議決には必ず補助員弁護士をつけること」と定めている。

ところが、今回の弁護士が就任した時期は明らかにされていない。

9月はじめに「就任情報」が流れ、メディアは確認に動いたが、検察事務局も裁判所も明らかにしなかった。

当人は、議決を終えていた9月20日になっても、記者に対し、「(自分が補助員になるという報道は)事実と違う」と就任を否定していた。

もし議決当初に正式に就任していなかったとすれば、議決そのものが法的に無効になる重大事だが、それすら国民も小沢氏側も確認する方法がないのである。

その一方で、弁護士も検察関係者も「1回目の議決は11人全員が起訴相当だった」とか、審査の様子などをリークしている。

これは、検審法が禁じる「情報漏洩」に当たるが、こちらは問題にもされていない。

しかも、小沢氏が総理大臣に決まるかも知れない民主党代表選の直前に議決したのである。

補助員弁護士や事務局に、「小沢をクロにする」というバイアスがなかったか検証が必要だ。


これらの事実は新聞やテレビでは一切報道されていない。正しく報道すれば小沢氏への同情票が増え、人気が上がりまずいからだという。

万が一、小沢氏が総理大臣にでもなったら反小沢の現民主党政府や官僚、財界は困ると。

しかし、ネット上では、ワシらのメルマガのような論調の方が多く、小沢氏への「えん罪説」というのが根強い。

まあ、普通に調べれば誰でも、そういう結論に辿り着くことではあるがな。

もっとも、無罪ということになったから、厳密には「えん罪」は成立してないわけやけどな。

小沢氏の復権が成るかどうかは、ご本人次第やが、反小沢の現民主党政府や官僚、財界の連中が、無罪になったことで困るやろうなというのは何となく分かる。

国民から見放され嫌われている現民主党政府と官僚の敵である小沢氏は、見方を変えると国民の味方と言えなくもない。

もっとも、その小沢氏は報道のせいで一般からの人気はあまりないがな。

多くの人が先頃話題になったマインドコントロールされているような状態で、いくら「小沢氏は潔白ですよ。作られたイメージですよ」と言うてみても、そう簡単には人気が回復することはないと思う。

ただ、今までは報道の中心は新聞やテレビやったかも知れんが、ネットもかなり成熟してきて、新聞の行状について監視できる時代になっとるというのを忘れんといて欲しいと思う。

もともとの新聞の素晴らしい理念と意義だけはなくして貰いたくないと。



参考ページ

注1.第112回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■マスコミが新聞の勧誘問題を取り上げないのは何故?

注2.第182回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■報道のあり方 その2 消された「原発国民投票」CMについて

注3.ゲンさんのちょっと聞いてんかNO.12 私がM新聞の講読を止めたくなった理由……頑張れ小沢一郎さん

注4.第101回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■報道のあり方……検察審査会の「起訴相当」決定の是非について

注5.第118回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■民主党代表選挙報道のあり方について


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