メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー

第207回 ゲンさんの新聞業界裏話


発行日 2012.5.25


■当電子書籍の再出版化と電子書籍の今後について


去年の2011年4月28日。

当サイトの電子書籍『ゲンさんの新聞勧誘問題なんでもQ&A選集 電子書籍版パート1』の発売を開始した。

これは、当サイトの紙の書籍、『新聞拡張員ゲンさんの新聞勧誘問題なんでもQ&A選集』を発行する際に、ご尽力頂いた「みずほ出版」の担当者T氏からのお誘いがあったので、それに甘えさせて頂いたからやった。


白塚様は、電子書籍にご興味はおありでしょうか?

近年印刷物のデジタル化が進み、書籍も例外ではなくなってきました。

弊社としても、その流れに乗り遅れないよう、電子書籍の制作を考えております。

そこで「新聞勧誘問題なんでもQ&A選集」を、テストケースとして電子書籍化させていただけないでしょうか?

もし制作させていただけた場合は、弊社の最初の電子書籍となりますので、当所の制作事例としていろいろなところで紹介することをご了承いただけますようお願いいたします。

「新聞勧誘問題なんでもQ&A選集」なら、文章も読みやすくて楽しいし、ほかのお客様に参考として見ていただくのに効果的ではないかと考えております。

弊社の都合でのお願いになりますので、制作費は全額弊社負担とさせていただきます。

また、電子書籍として販売した場合は、売上の収益は白塚様に帰属いたします。

恐れ入りますが、一度ご検討いただけますよう、お願いいたします。


というものやった。

ハカセもその前年の2010年11月5日発行の当メルマガ『第126回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■電子書籍化時代の本格的な到来について』(注1.巻末参考ページ参照)の中で、「電子書籍の出版を考えてみようか」と言うてたから、まさに渡りに船やった。

当初、T氏は出版社側の依頼だからということで、ハカセの所まで出向くと言うておられたが、さすがにハカセとしては、それは気が引けたという。

『制作費は全額弊社負担とさせていただきます』ということもあるが、それ以上に、当初予定していた紙の書籍の増刷と新規の自費出版本が頓挫しとるということがあったからや。

みずほ出版のT氏には伝えてなかったが、ハカセは書籍の増刷と新規の自費出版本の出版については、ほぼあきらめかけていた。

ワシらの自費出版本はネット販売が主やが、それでは売れれば売れるほど赤字になるからや。

当初から、儲けが出るとまでは考えてなかったが、まさか売れる毎に赤字になるとは予想してなかった。

それについての内情は、『第151回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■電子書籍化販売決定のお知らせ……出版に至るまでの流れについて』(注2.巻末参考ページ参照)の中で詳しく話しとるので、ここでの説明は割愛させて頂く。

要するに、「みずほ出版」のT氏には、これからも出版したいと言うてた手前、正直、申し訳ないという思いが強かったとハカセは言う。

「売れる毎に赤字になるというのは、私の見通しが甘かったせいで恥ずかしい限りです」と。

そのため、今残っている本がなくなったら、それで終わるつもりやったと。

ただ、個人的には本を出したのは無駄とは考えていないとハカセは言う。

その書籍を出版することで、少しでも読者の役に立てて頂けることができ、誰かの手元に書籍として残して貰えるという当初の目的は、ほぼ達成できたからや。

その話を正直にT氏、およびその場におられた出版社の方に言うと、意外にも嫌な顔一つ見せることもなく、その電子書籍本の出版についての話が進められた。

通された会議室には、担当者のT氏と電子書籍システム担当のネット事業部部長A氏、制作グループ担当のK氏の3名がいた。

軽い挨拶と名刺交換の後、ハカセが、「Tさんの話ですと、『新聞拡張員ゲンさんの新聞勧誘問題なんでもQ&A選集』をそのまま電子書籍化されたいと伺っていますが……」と、切り出した。

「ええ、うちの出した本の中では評判がいい方だとTから聞いていますので」と、A部長。

自費出版本としてはかなり反響が大きく、注文や問い合わせなど数多く出版社に寄せられているという。

出版社としては、初めての電子書籍化への試みということで、そこそこ売れる見込みのある自費出版本を選びたいという意向が働いたようや。

もっとも、「今回は、あくまでもテストケースなので採算は度外視しています」と、A部長が言うておられたがな。

とはいえ、いくら採算を度外視するというても、まったく反響のないものでは困るというのも事実やろうと思う。

自費出版本専門の出版社としても、これからは電子書籍の分野にも乗り出す必要がある。

そのためのノウハウや製作費用の価格設定などを決めるデータを得るには、実際に取り組むしかないと考えた。

まあ、当然と言えば当然ではあるがな。

しかし、それにハカセが異を唱えた。

「どうしても、その本でないとダメですか」と。

「と、申されますと?」

「ご存知のように『新聞拡張員ゲンさんの新聞勧誘問題なんでもQ&A選集』は、紙の本とはいえ、税込み定価1470円で売り出しているわけで、それと同じ内容のものを安価で売るというのは、私としては読者の手前、できかねますので……」

ちなみに、電子書籍化した場合の販売予定価格は、税込み350円やという。

もっとも、これは「みずほ出版」さんが制作費を負担するという、ご好意があったことで可能になった額なわけや。

とにかくどんな理由にせよ、書籍を安く販売できるのは結構なことやが、同じ内容の本をその価格で販売するというのには、やはり抵抗があった。

それでは今まで、紙の書籍『新聞拡張員ゲンさんの新聞勧誘問題なんでもQ&A選集』を買って頂いた読者に対して失礼やないかと。

そこでハカセは他の書籍を電子書籍化する案を出した。

しかし、「みずほ出版」さんの方では、すでにデータとして紙の書籍『新聞拡張員ゲンさんの新聞勧誘問題なんでもQ&A選集』があり、それをということで企画されたようやから、難色を示された。

今回の話は、電子書籍業界に参入するための試金石の一つとして、この作品ならと選んだもので、著者の意向で勝手に変更されては困るというのは当たり前の話や。

結局、双方が少しずつ折り合った末、紙の書籍『新聞拡張員ゲンさんの新聞勧誘問題なんでもQ&A選集』の続編という形にして、サイトのQ&Aの中から新に抜粋したものを選んで編集し直し、『ゲンさんの新聞勧誘問題なんでもQ&A選集電子書籍版パート1』と題して販売することになった。

これなら紙の書籍『新聞拡張員ゲンさんの新聞勧誘問題なんでもQ&A選集』の中身とはまったく違うが、傾向としては同じものやからということで「みずほ出版」さんも納得された。

早速、ハカセはその原稿の執筆に取りかかることにした。

出版社の計画を、ひっくり返したわけやから、急いで書き上げなあかんとハカセは考えた。そうせな、申し訳ないと。

その原稿を仕上げるのに1週間を要したという。

その後、ハカセと「みずほ出版」の編集担当T氏との間で、その原稿の手直しを3度ほど行って完成し、出版された。

電子書籍での出版というのは楽しみな反面、不安も大きい。

結果は……、正直、ワシらからすれば期待はずれに終わったという感が強い。

当初から試験的な意味合いがあったということもあり、1年間の予定で販売されることになっていた。

その1年が近づいた頃、「みずほ出版」のT氏から今後の継続の意志についてメールで問い合わせがあったので、ハカセは正直に、


私の印象としては電子書籍は売れないと感じています。もっとも私どもの宣伝不足があるのかも知れませんが。

同時期の紙の本1,470円と比較した場合、同じホームページ上だけの販売で350円と安いにも関わらず売り上げ数は5分の1以下程度しかありませんでした。(このメールのやり取りの時点で55冊の売り上げがあった)

正直、私は電子書籍化への幻想は捨てました。

貴社には多大なご厚意を受けていながらまことに申し訳ありませんが、私は継続しても無駄だと考えています。

逆に、今回のこの結果について、そちらではどのようにお考えなのでしょうか。その点をお聞かせ願えればと思います。


とメールした。

1年間で電子書籍が55冊しか売れなかったというと、買って頂いた方にとっては大変失礼な話になるかも知れないが、それが現実やった。

しかも、同じネット上だけで販売している紙の書籍が発売から4年以上が経過しているにも関わらず、その5倍以上もあったというのにである。

こんな状態で続けても意味はないだろうとハカセは考えた。

しかし、「みずほ出版」のT氏からの返信メールで、その考えが変わった。


今回の結果について、弊社では以下のように考えています。

●売上結果について
現在の電子書籍市場の規模や、iPadやiPhoneなどのiOS端末でしか買えない、という販売条件からすると、紙の本の20%程度(55冊)が売れたというのは、むしろ健闘している状態だと思います。

自費出版系の電子書籍は、もともとそんなに売れるものではありませんが、そんな中、1年近く経っても数は少ないとはいえまだ売れていますので、これはコンテンツ自体に魅力があったということの証左ではないかと思われます。

●プロモーションについて
電子書籍のプロモーションについては、弊社としてはこれといった取り組みをすることができませんでした。

弊社サイトでも少しはご紹介させていただきましたが、どちらかというと、白塚様のサイトでの告知が、ほぼ唯一のプロモーションでした。

そういう中で55冊というのは、健闘だと思いますが、この点についての弊社の取り組み・検証は不十分だったと思っています。

●今後について
在庫をかかえなくてよい電子書籍は、販売していればプラスになることはあってもマイナスになることはありません。

ただ、Appleストアで売ると、3ヶ月の売上げの5%が一定額に満たない場合、別途費用が発生するという「特殊」な条件が障害となります。

そういう条件のない書店(売れたら売れた分だけもらえる)に販売先を変更し
て、iOS端末だけでなく、Androidのスマホやタブレットでも購入をしてもらえるようにすれば、今より販路は広がる可能性があるのではないかと思います。

具体的にはhontoという電子書店(注3.巻末参考ページ参照)などがよさそうではないかと考えています。

理由としては、
1)今回作成したMCBookのアプリ形式を作る過程で生成されたファイルをそのまま流用できるので、新たに製作する必要がありません。

2)売れたら売れた分だけもらえるようになります。

3)ただし、著者様の取り分は現在の65%から45%に減ります。

もし、この形での販売を継続することを希望されるのであれば、対応することは可能だと思います。

結論的には、売れたら売れた分だけの収益がある形で、Android端末でも購入できるようにして販売を継続しても、ロイヤリティの比率は下がりますが、意味があるのではないかと、弊社では思っています。


『紙の本の20%程度(55冊)が売れたというのは、むしろ健闘している状態だと思います』とメールにあったことには正直、驚いた。

ハカセは出版社から見切られるものとばかり思っていたからだ。

期待はずれだったと思われても仕方ないと。ハカセ自身がそうなのだから。

それにも関わらず、次の販路を「みずほ出版」のT氏は提案してくれて、それに向けた準備もして頂いているという。

今回の件に関しては出版社側には、ほとんど利益と呼べるものが何もないはずや。

また過去1年間の実績を見る限り、今後、売り上げが伸びるといってもタカが知れているのではないかと思われる。

当然のことながら、それから得られる利益など期待できるはずもない。

いみじくも、初めの打ち合わせで『採算は度外視しています』と言うておられたが、それが本心だったのだと理解した。

出版の続行をするには新たな契約を結ぶ必要があるということで、再度、出版社に赴いた。

『取り分は現在の65%から45%に減ります』というのには何の異論もない。

紙の書籍の出版もそうだが、ハカセにはもともと出版で利益を出そうというつもりなどなく、また利益が出るとも考えてなかったからだ。

そうは言うても、紙の書籍のように売れれば売れるほど赤字になるというのでは拙いがな。

電子書籍は利益にさえ拘らなければ初期投資で負担する額が少ないから、少なくとも損をすることはない。

ただそれでは儲からない。

個人レベルではそれでもええが、出版社はそれでは困るやろうと考え、「電子書籍化で商売になるのですか」と会議の席上、ハカセはそう疑問を投げかけた。

「私どもはコンテンツを作るのが仕事で書籍を売って利益を上げることが目的ではありません」と、ネット事業部部長A氏。

近年は自費出版業界も冷え込んでいて、依頼自体が減っているようや。

自費出版となると、その出版規模、出版本の体裁などによっても値段がまちまちやが、少なくとも数十万円単位の費用が必要になる。

その負担の大きさで依頼が減少していると。

実際、読者の方から自費出版したいという打診が寄せられることがあるが、その初期費用の価格で二の足を踏まれる人が多い。

一般的に本を出せば売れて儲かるものと錯覚している人が多いようやが、そんな甘いものやない。

ほとんどの人は書くことは苦手でも本くらいは買って読むはずや。金を出して本を買う場合、そう簡単に買うやろうか。

売る立場ではなく、買う立場で見れば簡単にわかることや。

有名な作家、著者の本というのなら、それだけで大した宣伝をせずとも、書店に列んでいるだけでそこそこは売れるやろうが、自費出版をした無名の著者の本が売れることはまずないと言える。

それに自費出版本を一般書店に流通させようとすれば初期投資は膨大なものになる。個人が負担できる額ではない。

しかも、そこまでしても売れる見込みが薄いというのでは話にもならない。

ハカセは自費出版をしたいという人には、そういうリスクを伝えるようにしている。

出版して儲けたいのなら大手の出版社に企画として持ち込み採用されるくらいしか術がないと。

もしくは口コミで広がるくらいの名作を書くかだと。

自費出版する場合は自らの作品を残せればええ、出版したことで仕事に役立つと考えるのでなければ勧められないと。

それであきらめる人が多い。

ところが電子書籍なら初期費用の数万円程度ですべてが済むという。

もっとも、現時点では確定的な額は出せないということやから、ここではそういう表現に止めておくが、自費出版の紙の書籍に比べると10分の1程度に抑えられるのやないかという話や。

その額を弾き出すという意味でも、ワシらの電子書籍本でのテストが必要ということのようや。

いずれにしても、紙の自費出版本に比べてかなりの低価格で電子書籍の出版が可能になるものと思われる。

初期投資がその程度で済み、しかも後の販路に費用がかからないとなれば、興味をそそられる人も現れるはずや。

出版社の狙いは、そこにあるものと思われる。そのコンテンツ、制作費で利益を上げればええと。

そう考えておられるのなら今回のように無償で制作費を負担してまで取り組まれている意味というのが分かる。

ハカセ自身、その程度の額なら本気で、今まで書き溜めた原稿を電子書籍化してもええと考えたと話す。

それらの原稿の中には商業出版の話があるものも含まれとるので、例え電子書籍化したとしても紙の書籍が出版可能なようにしておく必要がある。

それもあり契約時には、その一文を入れて貰ったという。もっとも、他の電子書籍化については、まだ具体的に話が進んでいるわけやないがな。

ただ、自らの作品に自身のある人は先に電子書籍の自費出版をしておいて、そこそこの実績を上げた上で大手出版社に企画として持ち込む手もある。

単なる持ち込み原稿やと、よほどのことでもないと読んで貰えないが、今の時代、電子書籍化したと言えば出版社の編集者も興味を示す可能性がある。

それにしても『電子書籍での出版というのは楽しみな反面、不安も大きい』と考えていたことが、悪い面での不安が的中したということになる。

日本で電子書籍は売れないだろうというのは何となく分かっていたが、まさかこれほど売れ行きが悪いとは考えてなかった。

もっとも、それはワシらの電子書籍に限ったことかも知れないがな。

そこで、これを機に電子書籍の実情について調べてみることにした。

結論から先に言うと、やはり電子書籍は売れない。もっとも、それは今のところという注釈付きかも知れないが。

せっかくハカセが乗り気になっとるところを水を差すようで悪いが、正直、ワシ個人としては電子書籍を買ってまで本を読む気には今のところなれん。

多少、ワシの独断と偏見もあるが、勧誘しているときに一般の新聞読者の意見も雑談で聞いとるので、何かの参考になればと考え、現時点で電子書籍が売れない理由を挙げてみた。


電子書籍本が売れない理由


1.電子書籍のリーダー端末の種類が多い。

SONY Reader、GALAPAGOS・Android、iPad、Amazon Kindleなどが主な電子書籍用の専用端末ということになっているが、それぞれ一長一短があって将来的にどれが主流になるか分からないというのが正直なところやろうと思う。

これに加えて携帯各社の、アイ・フォンやアンドロイド・スマートフォンがある。

2.本を読むためだけの目的にするには電子書籍端末の価格が高すぎる。

SONY Reader1万円〜2万5千円。GALAPAGOS4万円〜5万5千円。iPad5万円〜6万円。Amazon Kindle1万2千円から1万6千円というのが、それぞれの端末の標準価格帯ということになっとる。

値段だけの比較で優劣をつけることができんので、このうちどれが生き残るか分からんというのが正直な印象や。

実際、このうちもうすでに脱落しそうな端末もあるさかいな。

携帯にしても先日、ハカセの次男、コウ君にとソフトバンクのアイ・フォンを買ったらしいが、1ヶ月最低1万円程度はかかるということや。アンドロイド・スマートフォンも似たようなものらしい。

3.電子書籍は専用端末やパソコンなどでダウンロードした端末以外では読めんようになっとるという。

互換性がないというのは頂けない。携帯電話やゲーム機もそうやが、どうしてパソコンのように互換性がないのかと思う。

そういったハードを買う度に操作法を覚え直さなあかんというのはワシらのような年寄りにはきつい。

しかも、それらは次から次と新機種が出て、さらに扱いがややこしくなっとる。

そのためもあるのか、徐々にそれに慣らされていない人がいきなり買っても簡単に扱える代物やなくなっとる。

それらの説明書は機械に弱いワシらのような者から見たら、おそろしく不親切で分かりにくいものになっとる。

新聞と同じで本を読む世代は中高年、高齢者が圧倒的に多いから、それで普及させようというのは無理があり過ぎるとワシは思う。

ちなみに新聞社の電子書籍版の売れ行きが悪いのもそれがあるのやないかと。

もっとも、ワシが普段よく言うとる「新聞は売り込まな売れん」ということが、新聞社にはどうしても理解できんようやから仕方ないがな。

ワシらにその電子版を売らせるのなら別やが、新聞は「そこで売ってますよ」と言うだけではそう簡単に売れるもんやないんやけどな。

4.電子書籍本は読みにくい。

紙の書籍は見開きで読むことを前提にレイアウトされとるので、1ページ毎というのは読みにくいという意見が多い。

視力の弱った年寄りには拡大して読むことができるという利点も確かにあるが、やってみと分かるが、そうして読むと結構疲れるし、何より読む気力が萎える。

やはり本は字を追いかけて読むというより全体が視覚に入っていた方が読みやすいと個人的には思う。

読みにくいという意見には若い人が多かった。

漫画本は2ページの見開きになっとるが、それが1ページずつ読んでめくるのは面倒で読みにくいと言うてボヤいとった。

5.電子書籍端末毎に電子書籍ストアが違う。

電子書籍は特定の電子書籍ストアで買って特定の電子書籍端末を使って読む必要がある。

これなんかもワシには、どうも理解し辛いことや。紙の本ならどこの書店でも売っとるし、どこで買ったものでも読むことができる。

これは大きなマイナス要因やと思う。せめて電子書籍端末と電子書籍ストアが共通の電子書籍を売ることを考えなあかんと思うがな。

実際、買って読むまでが面倒やから、あまり買う気がせんという意見が多かったな。

6.電子書籍では記憶に残らない。

これはハカセもそうらしいが、本好きな人間は本に囲まれていると安心するという心理が働くようや。

実際、ハカセの部屋などは本棚以外でも本が、そこら中に散乱しとる。そういう状況やないと落ち着かないのやと言う。

また、傍目からは片付いてないように見えても、どこにどの本があり、その本のどこにどんなことが書かれているか、大体のことは分かっているという。

ハカセの部屋の本は半端やないほど多い。正確に数えたわけやないが、おそらく数千冊はあるやろうと思われる。倉庫の分も含めるとその数倍はある。

それらのほとんどを的確やなくてもあるていどまでは記憶しとるらしい。

それが特別な能力というわけやなく、本好きの人間には至極当たり前なことやという。

それで気がついたことがあった。

それは、ワシらがやっているサイト自体、あまり覚えられんということや。

それだけの本の内容を覚えとるハカセがサイトのどこに何が書かれているかとなると、なかなか思い出せんというからな。

もちろん、ワシに至っては皆目分からん。第一、サイトを見ても本当にワシがそんなことを言うたんかいなと思えるものが山ほどあるさかいな。

無責任な話かも知れんが。

ただ、それは今回電子書籍について調べている段階で何となくその理由が分かったような気がした。

ネット上を含めた電子的な文字は人の記憶には、あまり残らんようやと。

もっとも、それはワシの個人的な感想で科学的に証明されとるわけやないがな。

6.電子書籍では所有欲を満たしてくれない。

趣味で本を列べている人も多い。また、本のコレクターというのも結構多い。

そういう人たちは部屋に本を列べているだけで満足するということがある。

そして、そういう人たちが最も本を購入しているというのが日本の実情でもある。

読まないけれど持っている。これは新聞の長期購読者と共通する思考やと思う。

そこに本があるだけ、新聞があるだけで安心するわけやな。

7.保存性に難がある。

紙の書籍なら10年後でも確実に読めるが、電子書籍やと10年後の所在が分からなくなっている可能性が高い。

また、その頃には電子書籍端末とデータ形式が大きく変わっていて、買った電子書籍が読めなくなっている可能性が高い。

パソコンのフロッピーディスクなどがええ例で、フロッピーの専用端末のついてるパソコン自体が今はほとんどないから昔のようにそれに記憶させていても見ることができにくくなっとる。

それは現在MOディスクまで、そうなりつつある。それからするとUSBメモリーなんかも近い将来他の物に取って代わられかも知れん。

電子世界では、そのサイクルが異様に早い。変化が激しすぎる。

8.電子書籍は媒体が限定される。

電子書籍は保存する書籍には難があるが、雑誌や漫画本など一度読んで捨てるような物には向いていると思う。

日本では今のところ売れている電子書籍の8割以上がコミックの漫画本というのも、それを裏付けとるのやないかと言える。

実際、現在最も売れている電子書籍が、その手の類のものやということのようやしな。

残す必要のない物、残すと邪魔になる物は捨てる手間が省ける分、ええかも知れん。

9.若者は紙の書籍であっても電子書籍であっても買って読むことが少ない。

これはワシがある本屋で聞いた話やが、本屋の客層は圧倒的に中高年以上の人間が多いとのことや。

若者はええとこ1割程度しか来ないという。それも彼らは一般書籍などほとんど買わんし、売れるのはコミック本ばかりやと。

10.電子書籍には偶然の出会いが期待できない。

書店に行く場合、どんな本を買うかを予め決めて買いに行っているという人は意外に少ない。

そこに本屋があるから立ち寄った。

何か良さそうな本が売り出されていないか確かめに行く。

偶然に本棚で背表紙を見て手に取って読んで面白そうだから買った。

本というのは、そういう偶然とも言える出会いで手にして読むケースというのが多いと思う。

その点、電子書籍はネットの検索と同じで最初から狙っていないと、なかなか探せるものやない。

偶然、その本と出会える可能性というのは、ほとんどないに等しいと言える。

これは本好きの人間にとっては辛いことやと考える。


と、こんなところかな。

電子書籍が売れん理由を挙げれば、まだまだ他にもいろいろあるとは思う。

アメリカでは電子書籍化に一直線に向かっているという印象があるが、意外にもそうではないらしい。

アメリカと日本の電子書籍市場規模は、ほぼ同等で900億円程度で頭打ちになっていると。

それも今年になって急に冷え込んできていると。

ただ何でもそうやが、事の始まりというのはそうしたもんやと思う。受け入れられるまでには時間がかかるもんや。

紙の書籍の歴史は数千年もあるわけで、それがいきなり電子化されたからと言うて、そう簡単に対応できるもんでもない。

しかし、年月が経ち、人に電子書籍が普通として受け止められるようになれば、また違うてくるとは思う。

要するに慣れやな。慣れれば、それなりに普及していくと思う。

現時点で電子書籍が爆発的に広まるとしたら、それは電子書籍でしか読めない作品、ヒット作が出た場合くらいなものや。

紙の書籍は手元に残って実物として存在するので保存も比較的長期間できるが値段は高い。

反対に電子書籍は安いが実物は存在しない。保存も端末次第という側面が強いので長期間の保存という点では疑問符がつく。

個人的な感覚による読みやすさ読みにくさというのもある。

いずれにも一長一短があるということやな。

どちらを買うかは読者の好み、判断に任せるしかないというのが結論ということになる。


■電子書籍の販売再開のお知らせ


先月の4月17日に休止していた『ゲンさんの新聞勧誘問題なんでもQ&A選集 電子書籍版パート1』の販売を再開しました。

honto電子書籍ストア
http://honto.jp/ebook.html

ゲンさんの新聞勧誘問題なんでもQ&A選集 電子書籍版パート1
http://honto.jp/ebook/pd_25182317.html

対応端末 
iPhone、iPad、Androidスマートフォン、Androidタブレット、Androidタブレット大

販売価格350円。

電子書籍がどんなものか確認する意味でも試しにご一読して頂ければと重います。

ちなみに通常の本にはないクリック機能も当電子書籍にはありますので。(メルマガ発行者ハカセ)



参考ページ

注1.第126回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■電子書籍化時代の本格的な到来について

注2.第151回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■電子書籍化販売決定のお知らせ……出版に至るまでの流れについて

注3.honto電子書籍ストア


ゲンさんの新聞勧誘問題なんでもQ&A選集 電子書籍版パート 
2011.4.28
販売開始 販売価格350円
 

書籍販売コーナー 『新聞拡張員ゲンさんの新聞勧誘問題なんでも選集』好評販売


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