メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー

第208回 ゲンさんの新聞業界裏話


発行日  2012.6. 1


■新聞勧誘方法のいろいろ 拡張員編 その2


このシリーズの第1回目の当メルマガ『第206回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞勧誘方法のいろいろ 拡張員編 その1』(注1.巻末参考ページ参照)の評判がそこそこ良かったので少し安心した。

この回から読まれる方のために言うと、過去8年間に渡ってメルマガやサイトに寄せられた業界関係者の方々からのメールの中から、「新聞勧誘方法のいろいろ」と題し、率直な考え方に基づく勧誘方法というのをピックアップして紹介しようと考えたことが、その発端やった。

現場の生の声を伝えるという趣旨になる。

その内容には賛否両論あるかも知れんと思いつつ、ここでは、それらをそのまま紹介することにした。

それらについて一つずつ解説するようなことはしない。褒めることもしなければ批判もしないと。

ご感想は、それぞれにお任せするとして。

良いものも悪いものも含めて、すべてが業界関係者の声ということで分かって欲しかった。

善し悪しに関わらず、他人のやり方や考え方を知るというのは、それなりに意義のあることやと思うさかいな。

良い考え、方法には学べばええし、悪いと思えるものは反面教師にして貰えればええ。活かし方は人それぞれや。

案の定というか、予想どおり同感やという意見もあれば批判的なものなど賛否両論いろいろなご意見が寄せられた。

それらのご意見についてはこのシリーズの中で取り上げるのは控えさせて頂く。

一方通行と言えば一方通行やが、このシリーズはそういうものやと理解して頂きたい。

それでは始める。


新聞勧誘方法のいろいろ 拡張員編 その2


【百人の客より一軒の販売店を拡張せよ】

百人のお客様を拡張するより一つのお店を拡張する方がおいしいって思ってます。

店に貢献して、その後店に(良いように)ヒイキにしてもらうことが現在の拡張員の最強スタイルやと思います。


【私の呼び出し法】

私の拡張の仕方は、まず自転車でパンフレットを各家庭に持って行き、インターホンを鳴らし「〇〇(本名)ですが後で来ますので見ててくださいね」と言ってポストに入れます。

ある程度の軒数を回ったら、最初にパンフレットを入れさせて頂いたお家から「先ほどの〇〇(本名)ですが見て頂けました?」と聞くとほとんどの方は見てないのですが、玄関口まで出て来てくれる方が多数います。


【すべては勉強】

悪を見て半面教師にするのも勉強ですよ。良いトークは盗み取るぐらいの気概がないと一日一日がもったいない。


【恨みは拡張で】

拡張初心者の頃は先輩にカードを取り上げられた事も数回ありますし、天ぷらカードに私の名前を書かれた事まであります。

私は、こういう腐った人間に負けてたまるかという気持ちで、奴らが喫茶店やパチンコ屋で遊んでいる間に叩きまくっています。


【拡張は情熱と集中力と自己管理】

ベテランになっても数多くの軒数を叩きます。仕事が終わった後は目は釣り上がりフラフラですよ。拡張は情熱と集中力と自己管理だと思います。


【拡張の本質】

先輩や同僚と表面上でもいいから付き合って行く世渡り上手な面と、カード(契約)を上げる力がないと潰れて行く世界です。

人の不正を正すより自分のカードを追いかけることです。


【その差は情熱とセンス】

営業において確かなことなどありません。同じマニュアルに沿った営業をしたとしても、人によりかなり成績の差がついてしまうものだと思います。


【拡張員は特殊人間】

拡張員は何て言うか特殊人間(人造人間じゃないですよ!)みたいな所があってですね−、大胆不適かつ繊細で、何事にも動じない鈍感な心、当たり障りのないギャグ、そういった少し特殊な感性を持ち合わした生き物なんですよね。


【個性は最大の武器】

しかし、まあ〜全国の拡張員のみなさん〜本来の個性をお忘れではありませんか、元気を出せなんて他人事の様な言葉は言いません。(僕も言われたくない)

個性を出そうよ〜、あるでしょ、あなたしかない不思議な魅力。

世間様は不況、不況ってうるさいけど…心の中までも不況にすることないもんね!

楽しんじゃいましょうよ! それが俺ら拡張員の武器でしょ!

個性はあきらかに武器ですよ、最大のね!


【相手に合わせるトーク】

同じ事を喋って「あがる」「あがらない」の差は何なのだろう?

ある日、団長に呼ばれて一緒に飲む機会がありました。そこで思い切って団長に質問をぶつけてみました。

返ってきた答です。

「確かにみんな契約をくれとお願いしてるのには変わりない。トークも人それぞれ特徴はあるけど、大体は同じ事を喋っとる。おまけにサービス内容も同じやしな」

「何が違うか言うたら、相手(客)が違うねん」

私はまだ理解できませんでした。

「おっちゃん! 新聞取ってぇ〜やぁ〜!! って言うて、しゃぁ〜ないなぁ〜、で書いてくれる客もおる」

「逆にそんな喋り方をしたら一生取ってくれへん客もおる」

「それほどサービスしてくれるんやったら取ってやるって客もおる」

「あんたは真面目そうやから取ってあげるわぁ〜って客もおる」

「相手がどんな客かという事を咄嗟に判断して、それなりに自分も変身できたら今よりはカードにつながると思うで」

私は相手がどんな客かという事はある程度判断できていたつもりでしたが、それに合わせて自分を変身させると言うことまではしていませんでした。

相手がどんな客であっても、自分のスタイルは固定していました。

それからは自分のスタイル、自分のトークというものをやめ、できる限り相手に喋らせて、相手のペースに合わせる(ここは私が重要と思う所で、相手のペースに乗るのではなく「合わせる」である)トークを展開して自然な感じで契約の話へ持って行くというスタイルに変えてみました。

これは成功で以前の自分では考えられない程の成果が上げられるようになりました。


【上げやすい場所】

街中の一軒家より田舎の集落とかの方が上がりやすくないですか? 街中の一軒家だとインターホン越しで顔も見ずに断られることが多いです。

その点、集落はお年よりもいれば、外で作業している人たちが多いので話しかけ、熱心に話に付き合うと上げやすいんですよ。


【落とせる自信】

「こんにちは〜。Y新聞ですけど。来月やる24時間TVのサポートもしているんで募金したつもりで半年だけ付き合って頂けないでしょうか? あなたが支払うことになる新聞代も回り回って人の役に必ず立ちますので。

半年取ってもらうと一ヶ月無料ですし、ビール券、洗剤などもつきますよ。半年だけでいいんです。それ以上は取って欲しいとは一切言いませんので! 本当に」

大概、ここまで言う前にインターホンを切られるんですけど、ここまで話を聞いてうーんと唸る人や質問してくる人は落とせる自信ありますね。


【強引なキャンペーントーク】

「こんにちは。ちょっと聞きたいんだけど、今M新聞入ってる?」

「いえ」
  
「あぁ良かった。新聞祭りのサービスで○○を配っているから使ってください。失礼します」と言いながら玄関に入りお客に渡す。
           
お客がびっくりして「どこの新聞屋さん?」と言ってくる。

「別に怪し者ではないから安心してください」

その時にお客の言うことは無視してさらに続ける。 

「実はM新聞が創刊○○周年記念キャンペーンしてまして、普段できないサービスですので1年間応援してください。よろしくお願いします」

サービスの現物をどっさり客の目の前に置く。すると大半が仕方なくでも話を聞く。


【断り文句を言われたときの対応】
   
「主人に聞かないと分からない」

「家を買うとか土地を買うとか言ったら怒られるけど、たかが新聞くらいで怒るような旦那さんなんかいませんよ。今回1回だけお願いします」

「そんな先の契約はできません」

「何を仰ってるんです。どこの新聞でも5年10年後の契約は当たり前ですよ。私はそこまでは言いませんから、今読んでおられる新聞が終わった後の1年間でいいのでよろしくお願いします」

「A新聞紙しか読まない」   
     
「そういうお客さんだから頼んでいるのです。私も男の子、清水の舞台から飛び降りたつもりで6ヶ月にまけちゃうから1回だけ応援して下さい」
  
最も肝心なのはトークではなく気迫です。


【いつか使いたい拡張トーク】

「ナベ○ネ、いなくなったからハンコ頂戴」


【納得のトーク】

拡張員、契約に困れば販売店の店主や店長が死んだと言うくらいは当たり前。

そんなことをトークにされる方が悪いと、妙に納得。


【おいしい仕事】

何時もつくづく思うのですが、最近の拡張員はなぜオシャレをしないのでしょう。

私が初めてスーツを着たのは拡張員になった昭和34年当時です。団長が保証人になり丸井で買いました。

「それで女の所に行けば一発だ」煽られて。

当然、狙いはアパートか下宿屋。カラフルな女性の下着が干してあったら飛んでいきます。

一生に一度結婚した奥さんも拡張しながら見つけました。

その日の仕事は女とデートの約束ができたら、何時もそこでお終い。

こんなにおいしい拡張員を何故辞めたか。

結婚したときに義父から「拡張員は世間体が悪いからやめろ」の一言のため。


【サイトを客に紹介しても良いですか】

「新聞拡張員ゲンさんの嘆き」をお客さんに「こういうサイトもあるよ」と教えてもいいでしょうか?

また自分で紹介チラシのようなものを作ってもいいでしょうか?

というのも私は新聞の営業を始めて二年になりますが、なぜ、こんなに新聞の営業は嫌われるんだろう、苦情もこんなに多いんだろうと思ったときこのサイトを紹介してはどうかなと考えたのです。


【危機一髪の機転トーク】

何度か経験したが、ハコ(小さな賃貸の一軒家)を叩いていると30代位の女性から「上がっていきな、新聞取ってあげるから」と。

当時二十歳になりたてのぼくは暇な団地妻、ホステスなどに声をかけられることが多かった。

ぼくは、まずは相手の話を聞くことに徹していた。ビールを出されることも多かったがアルコールは断った。

お茶でも飲みながらあまり自分の事は話さないようにした。向こうはこちらの話を聞くより、自分から話したい場合の方が多い。

もちろん誘われる事もあったが客と一線越えたことはない。

新聞くらいで自分を売る気もないし、下手(何が?)だからと断ったら女性からしつこくされることは少ない。

お茶を飲んでる時にダンナが帰ってきた事もある。

嫁はバツが悪そうに「あっ」としか言わない。ダンナはあくまでこちらの出方をみようとして「どちらさま?」と。

この時、脳みそをフル回転させた、ただ帰るだけではだめだ。新聞を取ってもらわんと。そう必死に考えた。

そして出てきたトークが、「(ネームプレート見せて)○○と申します。お邪魔しております、実はA紙の勧誘でして、お宅では現在どこも取ってないとの事でしたので、しつこいと思いながらも奥様に無理を言ってました。

奥様も旦那様じゃないと分からないとの事でしたがあまりに熱が入ってしまい話してたら喉が枯れて痛くなってしまってお茶一杯だけ頂けませんか? と言うと快く持ってきていただいたので飲んでいたところでした。ありがとうございます」という感じのものだった。

当時のぼくは茶髪にロン毛でよくいるちゃらんぽらんな風体だったが、見た目と違う丁寧な物言いにキョトンとしていたダンナに「6ヶ月だけお願いします」と頭を下げた。

実際はそのお宅には奥さんと対面して二、三分拡張せず雑談しているところで「上がって」と言われ、お言葉に甘えて茶を飲んでただけでこちらに非はないが、これで帰ったらその時間が無駄になる。

絶対あげたかった。奥さんは黙ってた。任せるという意味だろう。何度かそのダンナとやり取りをして、やましい相手ではないのを理解させた後は早かった。

6ヶ月カードになった。この間、二、三十分の出来事だった。

こういった事もあり、その後も客の誘いに乗ることはない、もっとも今では年を取ったから誘われることはないけど。


【役所の勧誘実態】

最初、役所というところは一般とは常識が違うというか、雰囲気がまるで違うような感じがしました。

はじめの頃は、コネなどを使って営業しているのかと思いましたら、そうでもありませんでした。

ターゲットは課長、課長補佐などの役職の偉い人です。給料の高い人です。

1年に1回は付き合いで新聞を取ってくれる。そういう人を探します。

私のN径新聞の営業は拡材がありません。ほとんど、サービスがありません。

そのため役所の中を廻り、人の良さそうな人を探し情に訴えるのです。

はじめは訪問するのが嫌で嫌でたまりませんでしたが、長くやっていると面白い所だというのと、おいしい市場でもあるということが分かってきました。

営業は訪問件数と比例するところがありますので、人が多い所は短時間で、かなりの人に合えるため枚数が上がるのです。

取ってくれた人は顧客管理をして記録に残しておきます。役所では3ヶ月しか取りません。3ヶ月経つと確実に止めます。するとまた勧誘できます。

営業時間は9時〜5時まで。こちらとしても夜の訪問をしなくいいので助かります。

ただ、亭主関白の人だけしか取れません。


【楽しきかな漫才拡張】

私のやり方は定義するならば、漫才拡張といったようなものです。

豚もおだてれば木に登るの例えのように、ほめ殺しを多く使うやり方です。

拡材に近所の畑で売っていた大根を使ったこともあります。

嘘も方便、様々な時事刻々の話題をちりばめ、私自身の欠点を武器にして笑いを取りながら勧誘しています。


【姓名辞典は拡張のアイテム】

日本の苗字の数は約30万と多く、中には難しい読み方もかなりありまして、そんな名前のお宅を見つけた場合がチャンスで、正しい名前で呼びかけると喜ばれます。

例えば「御手洗」という性があります。これは「みてらい」と読むのが正しく、そのままストレートに読んではいけません。

「みてらいさん」と呼びかけると、こういう人からは喜ばれます。「よくご存知ね」と。今まで嫌な思いをされていることが多ければ多いほど、そう言われます。

そんな時、「神主の養成所にいたことがあるので知っているのです」と答えます。

これだけで信用されます。

もちろん、そのために姓名辞典の類は常に持ち歩いているわけですが。


今回はここまでにしとく。

拡張員編はまだまだあって続けるつもりやが、次回のこのシリーズでは新聞販売店関係者の話をするつもりにしとる。

また違った味わいがあると思うので。

改めてこんなことが言いたい。こんな方法もあるというのがあれば歓迎するので是非、メールで寄せて頂ければと思う。



参考ページ

注1.第206回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞勧誘方法のいろいろ 拡張員編 その1


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