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第221回 ゲンさんの新聞業界裏話
発行日 2012. 8.31
■新聞営業専門書『セールスの生現場は新聞屋に学べ』について
「ゲンさん、この本、一度読んでみて貰えませんか」と、ハカセから一冊の本を手渡された。
いつものように書籍の感想を依頼されてのことかと思ったが、今回はどうやらそうではないらしい。
ハカセ自身が取り寄せて買った本やという。
題名は『こんなコト誰も教えない セールスの生現場は新聞屋に学べ』(注1.巻末参考ページ参照)。著者、す田・よし!。市田印刷出版発行。
発行日は2011年7月6日。1年前ということになる。
ハカセは資料になると判断した書籍は必ず読むという。
それが新聞営業の専門書となれば尚更や。ただ、その書籍の存在を知ったのは最近になってということやがな。
例によってハカセは感想は何も言わない。ただ読んでみて欲しいと言うだけや。
何の先入観もなく、正直な感想を聞きたいからと。
ワシにしても新聞営業の専門書が珍しいのと、普段、ワシ自身能書きを垂れている分野でもあるから、どんなことが書かれているのか興味が湧いたということもあった。
「これは、なかなかのものやな」と思った。
これを書いた筆者は相当なレベルにある勧誘営業の持ち主というのがよく分かる。
もっとも、世に出回っている営業本の殆どが第一線で活躍されてきた営業マンによって書かれたものから、レベルが高くて当然かも知れんがな。
それだけではなく、現場で叩き上げた人間にしか分からない機微が随所に書かれてある。
『セールスの生現場』と銘打つだけのことはあると思った。
普段ワシが言っているようなことも数多く含まれているが、それ以外に目を引くものも幾つかあった。
共感できるところもあれば、違うという部分もある。
ワシは役に立つやり方があれば迷わずパク(盗む)る。自分の営業に取り入れて自分なりのものにする。
反対に、これは違うというものがあれば捨てる。盲信はしない。
それにはワシの長年の経験から、『営業に絶対の方法はない』というのが信念のようになっとるからや。
こうやれば必ず契約が取れるという便利で万能な方法があれば世話はないが、そんなものは夢物語で、現実にはあり得ない。
それを謳い文句にしている営業本は多いがな。
ワシは営業のためのヒントがあると感じれば、どんなものにでもまず飛びつく。取捨選択はその後でする。
飛びついた結果、この本は読者の役に立つものやと確信した。
それ故、す田氏の書籍『こんなコト誰も教えない セールスの生現場は新聞屋に学べ』をメルマガの読者のために紹介しようという気になったわけや。
そうは言うても、その書籍のすべてを公開するというわけにはいかんから、その中から、ワシとハカセでメルマガの読者に役に立ちそうやと感じた部分だけを抜き出して引用することにした。
ちなみに、ハカセは著者である、す田氏にはその旨を伝え、快く引用の許可を貰っているということや。
「お役に立てるのでしたら、どうぞ」と。
書籍に書かれた順序とは前後するが、読者、中でも新聞販売、勧誘に携わっておられる方々が知りたいであろう優先順位の高そうな部分から紹介していく。
6章 こんなことやってる! セールスの生現場「訪問」
ドアを開けさせる。
訪問販売のセールスで、何が一番大事な事かと聞かれれば、迷うことなく、「まずドアを開けさせる事と答える」
セールスにおいて成約率を高めるのは、やはり直接の面談が一番である。
インターホンでセールストークを繰り返し、言葉だけで落とそうとするよりも、ドアを開けさせて対面して話す方が、当然こちらの思いも伝わる。
顔の表情、身なり、サービス品、聞くよりも見て感じさせる事だ。熱い思いを直接伝えることにより、人情も湧き、面と向かって断りづらいという心理も出てくる。
ドアを開けると断れなくなってしまうので、かえってドアを開けないで、「ケッコウデス!」とバッサリ断るという人も少なくない。
「秒殺」というやつだ。
逆にインターホンのトークだけで落とせるようになったらプロ中のプロと言えるかも知れない。
現代はいろいろなセールスや勧誘、詐欺まがいの寄付金募集など、胡散臭い連中がうごめいている。
「ピンポ〜ン」と、玄関チャイムを鳴らしても、簡単にドアを開け来るご時世ではない。
カメラ付きのドアホンも増えてきており、知らない人だと確認すると、居ても返事すらしない場合がけっこうある。
昔の日本では考えられなかった凶悪事件が頻発する時代、当然の反応かも知れない。
こんな社会背景の中、どうやってドアを開けさせれば良いのか。
相手の新聞名を言ったり、宅配便を装って「お届け物で〜す」と言う。いわゆる「引っ掛け」は時代遅れだ。尚且つ、セールス手法としては程度の低いもので、法的にも問題のあるやり方だ。
「○○新聞です。新聞の勧誘に参りました。お話し宜しいでしょうか」では、特定商取引法に則って優等生かもしれないが、現実ではすぐに、「また新聞屋が来やがった!」と、秒殺間違いない。
ここでは具体例を挙げながら説明しよう。
例1 押しボタンのチャイムだけの場合
「ピンポ〜ン」と押してすぐに軽くノックし、「◇◇店○○新聞のす田です!」と言う。
何だ、それじゃ当たり前じゃないかと思われるが、問題は言い方だ。
声の大きさとスピードがポイントだ。
最初の「◇◇店……」これは大きめに言う。
『店名、地名を先に言うことにより、地元、近所の、という安心感を与える』
次の「○○新聞……」は小さめの声で速く言う。名前は普通に言って、最後の「……です!」だけは、元気に大きな声で、はっきり言おう。
何を言っているのか全部はインターホンやドアの向こうでは、良く聞き取れないかも知れない。
新人と一緒に教えながら廻っていると、「す田班長、ホニャララです! って言ってません?」と、よく聞かれるが、決してそんな事は言っていません。きちんと法に則り名乗っています。
それから、チャイムを鳴らしたあと、すぐにドアをノックする事もやる。
お客を急いでドアを開けに向かわせるため、有効な手段になる。
お客がドアの近くに来るまで繰り返し、ドアの向こうに気配を感じたら、すかさずまたドアを叩き早口で、「あ、いつもすいませんね〜。この間お伺いしたんですけど、お留守だったんでこれ持って来たんですけど、○×△□*……」
「いつも」「この間お伺いした」と言うフレーズを入れる。
『始めて来た人ではない印象を与える』
何日かの間には留守もしていますし、新聞屋は、しょっちゅう誰かしら来ていますからね。
ピンポ〜ンと鳴らしてドアの近くに来たら「コンコン!」とドアをノックするだけでもけっこう開けてくる。
「コンコン!」とやって、反射的にドアを開けさせるようになればプロ技だ。
ドアスコープから見えない位置に潜んでいたり、指でこちらの姿が見えない様にふさいでしまうセールスもいると聞く。
しかし、そんなことをすれば、むしろ不審に思われるだけで、結局は大きなマイナス要素になる。最低のセールスマンがやる事だ。
『「よく起こる偶然の出来事」「たまたまの自然な状況」それを必然的に作り出す』
ここでのポイントは、何の屈託も無い明るい感じで、ドアを開けるまでしゃべり続けることだ。
言葉が途中で途切れ出すと必ず、「どちら様ですか?」「何の御用?」と聞かれるし、ましてや沈黙が長いとお客の警戒心は高まるばかりになる。
お客がドアの向こうで何か聞いて来ても、かまわずしゃべり続ける。
『お客がドアを開けたら、その拍子に、すかさず用意してきた割引チケットやゴミ袋などを手渡し、必ずお客に受け取らせてから、セールスを開始する』
例2 インターホン(ドアホン)の場合
基本的にはチャイムの時と同じだ。
ピンポ〜ンと鳴らして、「ハ〜イ」と出たら、少し略して言うが、「いつもすいません! ○×△□*です!」と早口で、尚且つ比較的大きめの声で、最後の「です!」を強調して言う。
何の屈託も無い声のはり、明るい雰囲気が大事だ。
それだけで開けてくるお客もけっこういる。
「どちら様ですか?」と聞き返して来たら、もうすでに「◇◇店の○○新聞」は言っているので、しつこい様に「す田ですけど! この間お伺いしたんですけど、お留守だったんで! コレすいませ〜ん!」と、早口で一気に言う。
急いでいる雰囲気が伝わればグッドだ。
それでもなかなかドアを開けて来なかったら、「遅くなってすみませ〜ん。ご近所は済んだんですけど、奥さんトコだけになっちゃったんで!」
とにかく、ドアを開けるまでアドリブでセリフを繋いで頑張る。
この時の注意点は、宅配便を装ったり、うそを言っては駄目だ。
お客が後で考えても、「何だ、そういうことだったのか!」と、自然に思う状況にする。
初めて行ったのに、「この間お留守だった」は、ウソじゃないのかと言うかも知れないが、新聞セールスとしては、沢山の人間が、ご近所を何回も廻って訪問したり留守宅もしょっちゅう叩いているではないか。
例3 カメラ付きドアホンの場合
最近はこれがだいぶ増えて来ている。お客は家の中から、こちらの容姿を確認しながら話している。
見ているだけに、話よりも見た感じで判断している。
帽子を被って、何か包みを持ってドアホンのボタンを押すと、ピンポ〜ンと鳴っただけで、こちらが何も言わないうちに「は〜い、どうぞ〜」と、気持ち良くドアが開く家がけっこう有る。
宅配便と勘違いしているのだ。
モニターで相手を確かめられる利点が、見ただけで勝手にイメージして判断してしまう。そんな盲点をも合わせ持っているのが、カメラ付きのドアホンだ。
顔だけ、どアップでモニターに映る状態ではなく、何か手に持って玄関方向に顔を向け、からだも傾けた形で話す。
よく宅配業者がやっているので参考にすると良い。
セールストークの構成は、カメラの無い普通のドアホンと同じでよい。
明るく安心感のある屈託の無い笑顔が決めてだ。
帽子にウエストポーチも有効だ。スーツにネクタイは構えられ、何か高いものを売りつけられるのではないかと、警戒される。
同じ新聞屋ならセールスマンに見られるより、店員に見られた方がお客は気を許す。セールスマンに成って話を進めるか、店員に成って話を進めるかは、気を許したその後でよい。
勘違いにせよ、どちらにせよ、ドアを開けたお客に、ニコニコしながら平然と割り引きチケットなり、捨て材を手渡そう。
この時の注意点は、過度なサービス品をいきなり出さない事だ。
受け取りやすい物、ポンと渡されると思わず手にとってしまう物が最善だ。
『足元に転がってくるボールは、だれでも思わず拾ってしまう。心理学で言う「ローボールの法則」だ』
この『ドアを開けさせる』ための相談や質問はサイトのQ&Aにもよく寄せられてくる。
実際、この仕事をしていると門前払いされるケースも多いさかい、新聞勧誘員にとっては尽きない切実な悩みということになる。
その相談がある毎に、いろいろな回答をしてきた。
その基本的な考えとして、『ポイントは二つ。一つは騙しかどうか分かり辛い手法であるということ。もう一つは意表をつくこと』と言うてきた。
す田氏の『帽子を被って、何か包みを持ってドアホンのボタンを押す』という方法も同じような意図があるものと思う。
客の勘違い、錯覚を誘いやすいという点で。
ワシが過去にアドバイスした方法は、それからすると、もっと騙しに近いものかも知れん。
8年前、まだサイトを開設した当初の『NO.6 最近、新聞拡張で伸び悩んでいます。色々ご指導ください』(注2.巻末参考ページ参照)に、それがある。
その部分や。
1.ドアはインターフォンがあってもノックする。
ノックする場所は、自分が叩き易い中央とか上の方はあかん。なるべく下の方を叩くんや。
時間帯にもよるけど、インターフォンも押さんと下の方を叩くいうのは、子供しかおらんと思う人間が多い。特に主婦はな。近所の子と勘違いして開けるんや。
客の勘違いは騙しとは言わん。ぎりぎりやけどな。
2.インターフォンを使う場合は「どちら様ですか」という声が聞こえたら、自信を持った声で「以前、お世話になりました○○です」とはっきり名前を言う。
客は多少、変やと思うてもあんたの自信のある声で開ける確率が高い。
開けてもらったら、
「以前、お世話になった○○新聞ですけど、またお願い出来ませんか」
「えっ、うちはお宅の新聞なんか取ったことはないですよ」
と言われたら「そんなはずは……」とおもむろにデータを取り出しながら「あれ」と明るくとぼける。
客にそそっかしい人やと思わせたら成功や。
3.ピンポーン。
「どちら様ですか」
「玄関に100円が落ちてましたけど」
古典的やけど、今でも通用するようや。これを良うやっとる拡張員を知っとる。結構、成功しとるようや。
しかし、中には「どうもすみません」ちゅうて100円だけ取ってドアを閉めるおばさんもおるらしいから、気ぃつけなあかんで。
4.ピンポーン。
「どちら様ですか」
「○○新聞の苦情係なんですけど、皆さんにアンケートのご協力をお願いしてるんです。よろしく、ご協力下さい」
これも、自信を持った態度で言うこと。
客が出て来たら、手帳を取り出し、苦情を十分に聞いて書き止める。一言ずつ相づちを打つのもええ。苦情を吐き出した後は攻め易いもんなんや。
これが成功するかどうかは、勧誘する者のキャラクター次第や。誰がやっても上手くいくとは限らん。
最低限度、明るく、ユーモアが感じられんとあかん。常に笑顔が営業の基本やと心得ることや。
これについても、す田氏の言われている『明るく安心感のある屈託の無い笑顔が決めてだ』というのと符号する。
ワシが共感を感じたという所以や。
そして、それに加えて新たな方法を知った。
もし、今後同じような相談があった場合、す田氏の『6章 こんなことやってる! セールスの生現場「訪問」 ドアを開けさせる』の部分を使わせて貰いたいと思う。
もちろん、す田氏の許可が得られればの話やが。
さらにこの後、こういうのも覚えておけば勉強になるというのがあるので、それも紹介する。
第2章 こんなことやってる! セールス生現場「応対」
断りに出てきたご主人を巻く
よくあることだが、奥さまと話をしていて、ようやく決まりかけた頃、家の奥からご主人が出てくる事がある。
もちろんその逆の、ご主人と話をしていたら、奥さまが断りに出てくる事もある。
場合によっては、中学生や高校生の子供が、親の応援に出てくる事もある。
当然、権限が無ければ、そこまでの詰めた話にはならないので、決定権は最初に話している本人にあるのは明白だ。
だが、家人に反対されれば、よほどの強い立場でないと面倒も手伝って、「また後で……」となってしまう。
玄関での会話が家の奥へ漏れ聞こえる状況で、ハッキリとした内容が分かって出てくるわけではない。
どうも新聞屋らしいが、話が長くなって、ややこしそうなので心配になって出てくる、というところだろう。
だからこそ、3分で決めるすばやさ(5章 「時間」−3分で決める−)が重要になってくる。
しかし、そううまく事が運ばない時があるのが現実というものだ。そんな時、どう対処したら良いか。答は、
「すかさずご主人も巻く(巻き込む)ことだ」
奥様に話した同じことでいい。
気をつけなければならないのは、奥さまからご主人に、こちらの言ったことを説明させては駄目だ。
内容も肝心な事も、そのまま伝えくれるかどうか、分からないからだ。
ここで一番重要なのは、出てきた瞬間、顔を見て相手が口を開けて喋りだす前に、こちらから声をかける事だ。
断りに出てきた人間に、断り文句を言わせない事だ。
一人でいる時と違って、複数の人間になると余計に意味合いが強くなってしまう。
一度断りの言葉を口に出し行動を取らせると、後に引けなくなり、それを聞いてしまった奥さまも、「主人がこう言っているので……」と断らざるを得なくなってしまうからだ。
ご主人にすかさずこちらから説明するのは、話を進めて先行していた奥さまへの助け舟でもある。
「あ、ご主人! いつもありがとうございます。奥さまにお話したんですけど、今こうこうで……」と、平然と春の小川のようにサラサと話しかけよう。
「あ、ヤバイな、親父が出てきた!」焦ってたじろぐようでは、まだまだ素人だ。
勢い込んで断りに出てきたご主人が、最後は拍子抜けして、「あ〜どうも、ご苦労さま……」と言って、後は奥方に任せたと安心して奥に引っ込むようになれば、プロのわざだ。
……………………………………………………………………………………………
これに近いことは、ワシも自然にやってきているが、サイトの回答で言うたことはない。
こういう風に説明すると納得させられやすい。これも戴きという感じやな。
最後にもう一つ。ワシが特に感心したものを紹介する。
4章 こんなことやってる! セールスの生現場「サービス」
いいお客に変えていく
「ビール二ケースと洗剤ダンボールに一ケース持ってくれば、三ヶ月とってやるよ!」
黙っていれば品のよさそうな奥さまが腕組みして、当然のように遠慮なくおっしゃいます。頭には角まで生やしている。
「ひでえお客だなあ!」セールスマン泣かせのサービス要求型のお客だ。
中には新聞代と同じか、それ以上と、平気できつい条件を突きつける猛者もいる。業界用語で「拡材読者」と呼んでいるお客だ。
セールス仲間同士では「ドロボウ」とまで呼んでいる。
「ヒャーあの奥さま、きれいな顔して大ドロボウだったよ!」と、こんな具合にお客を語り合う。
しかし、そんなお客に誰がした。
元はと言えばセールスが成績欲しさに景品規定を無視し、その場限りのブン投げ、おっつけ仕事をして来たからだ。
「いらない! 取らない!」と断るお客を黙らせるため、新聞代と等価交換のような景品をぶつける馬鹿げたことを平気でやって来たからだ。
だから、お客もよけい足元を見てふっかける。なんとも情けないセールス事情ではないか。こんなことが未だに蔓延(はびこ)っているのがこの世界の現実というものだ。
そんなにまでしてしまったお客へのサーピスの悪弊を変えられるのは、また変えなくてはならないのが、やはりこの業界のこれからのセールスに課せられた使命だ。
新聞のセールスマン自身が変えていかなければ、他にお客を変えてくれるものは誰もいないのだ。
この業界のシステムにも問題がある。いや、問題だらけかも知れない。
しかし、いちばんに重要なのは直接お客に接するセールス自身の心がけだ。
ただ、その場限りの契約を取るだけの仕事を、決してやってはならない。店の財産作りのお手伝いになるような願いを込めて、一枚の契約カードにハンコを貰うのだ。
「あら! これっきりサービスないの!」
「新聞て、良い時悪い時がハッキリしてますよね!」
「前は沢山サービスできたんですけど今チラシも減って店もキビシイんですよ!」
「今回はコレだけですけど、また頑張れる時は喜んでもらえる様にしますから、ごめんなさいね!」
素直な気持ちを全面に出し、限られたサービスを精一杯の気持ちを込めてお客に示そう。
ここで大事なのは、態度は控えめだが声は堂々と大きな声でハッキリ言うことだ。
申し訳なさそうに身体を小さくして、小さな声で言ったのでは駄目だ。
控えめで優しいお客だったらそれでいいが、ここで問題にしているのは短い契約期間でどうやってサービスを沢山貰おうかと、手ぐすね引いて待っている、いわば歴戦の勇士だ。
「これくらいで勘弁してくださいよ〜」などとへっぴり腰で対応していたのでは、どんどん突っ込まれる。
「じゃあいらないよ! もともと新聞読まないんだから!」
お客から遠慮ない言葉を浴びせられないよう控えめな態度の中にも動かし難い、しっかりとした芯のあるところを感じさせないとお客は好きな事を言ってくる。
お客のなすがままに言う事を聞いては、セールスとしては失格だ。
セールスは自分の売ろうとしている商品を、こちらの設定した価額、条件でお客から「買われる事」だ。お客にコントロールされてはいけない。
もう一つの方法として、お客が「大物」の頭角を現す前に、いや、頭角を現せないように封じ込めたまま巻き込む方法がある。
最初に飛行機だったらファーストクラス、新幹線だったらグランクラスに案内して乗せてしまう様なやり方である。
ハナから「上客」としての扱いをしてしまうのだ。
「いつもありがとうございます!」
チョットした景品やノベルティグッズ、割引チケットなど何でも良いが包装紙に包んで更にのしを付ければ尚良いが、丁寧な形にしてお礼として差し出す。
丁寧に扱えば扱うほどお客はズケズケと、はしたない要求をしづらくなる。
お客に対して礼儀正しさの中にもざっくばらんな物腰で接して、親しみやすさで巻き込む方法もあるが、過度な要求をする客ほど上客扱いで接する。
上客のラベルを先に張ってしまうのである。
「店長からも一番の古くからのお客様なので、くれぐれも失礼の無い様にと、言われています」
「上流階級のお客様なので、お前みたいな無骨なのが行ってだいじょうぶかなあって、心配してました」
上司の言葉として、たまには歯の浮くようなオーバーな事も平然とスラスラ言ってのけよう。
お客のワルサしたがる手も足も口も出さないように丸め込み、たたみ込んでしまうのだ。
このやり方で注意しければならないのは、常に「先手、先手」でワザを繰り出していく事だ。
どんな場合でも共通して言えることだが、この場合特に先に主導権を握ったままゴールまで持ち込んでしまうことだ。
『いいお客も、そうでないお客も、全て「セールスマンの作り出す産物」なのだと言う事を忘れてはならない』
ここで『業界用語で「拡材読者」と呼んでいるお客』というのは、ワシらの方では『乞食読者』と言うてる人のことやと思う。
確かに、す田氏の言われるとおり、そういう人たちを作り出したのは、ワシら勧誘員に違いない。
それが嵩じてサイトのQ&Aには「タダなら取ってやる」と言う客や、その上に景品まで要求してくるという相談事例がある。
ワシは、販売店関係者の方から、「乞食読者のような客はどうしたら良いのでしょうか」という相談があった場合、基本的には相手にせん方がええと言うてきた。
ワシも昔は、あと一枚のカードに困って、そういう乞食読者を相手にしたこともあるが、今はそうする事の愚に気がついたさかい、一切相手にはしていない。
そういう甘い汁を吸うことに慣れてしもうた客は、甘い汁でなければ満足はしないし、契約することもないさかいな。
「タダなら取ってやる」と言う客を作った時点で終わりやと。そういうのを相手にするのは最早、営業ですらないと。
それを、す田氏は『過度な要求をする客ほど上客扱いで接する』ことやと言われとる。
確かにその考えには一理ある。
乞食読者の全員が、その方法で翻意するとは思えんが、その一部でも変えることができれば御の字やさかいな。
ワシ自身、そういう考え方があると知っただけでも勉強になった。
これ以外にも数多くの勧誘方法が、『こんなコト誰も教えない セールスの生現場は新聞屋に学べ』に記されているので、勉強されたい方にとっては、ええ参考書になるのやないかと思う。
ただ、どんなにそれが素晴らしい内容のものであっても、それを活用できん限り、それは、ただ文字が羅列されただけの書物にしかならんがな。
どんな名言、人生訓があっても、「ええこと言うなあ」で終わってしもうたんでは、それまでや。そんなものは、すぐに忘れ去られてしまう。
その本を書いた人が偉いのは確かやが、それ以上に、それを評価、利用できる人の方が、もっと偉いとワシは考える。
要は読み方、活用の仕方なわけや。
営業を志す人には、そのことに十分留意して、何事も貪欲に取り組む姿勢で臨んで欲しいと思う。
そうすれば結果は必ず後からついてくるはずやから。
参考ページ
注1.こんなコト誰も教えない セールスの生現場は新聞屋に学べ
注2.NO.6 最近、新聞拡張で伸び悩んでいます。色々ご指導ください
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