メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー

第222回 ゲンさんの新聞業界裏話

発行日 2012. 9. 7


■AKB48東京ドームコンサートの裏側で暗躍した、ある新聞拡張団の話


Y新聞の100%出資子会社に、通称「ジョウカイ」と呼ばれている新聞勧誘専門会社がある。

一般的には新聞勧誘専門会社というのは新聞拡張団、セールスチームと言うのやが、「ジョウカイ」に関しては一般の新聞拡張団とは少し違う。

彼らの名刺にはY新聞本部PS(セールスプロモーション)社員と書かれていて、一見するだけやと新聞社の社員と錯覚する人も多い。

それもあるのか、彼らの振る舞いは新聞社の社員に近いという。

言うところの新聞拡張団所属の拡張員との意識は殆どない。おそらく、気持ちも新聞社の一員になりきっているものと思われる。

それには現在、新規採用者の多くを大学新卒者から採用しているということもあるのやないかと考えられる。

社会人の募集もあるとのことやが、それにも大卒で若い人間の方から優先的に選ばれるという。

採用基準も新聞社に準じているようや。当然のことながら採用試験もあると聞く。

その分、採用された人間も新聞社に所属しているというエリート意識が強い。口に出さずとも立ち振る舞いに、それが見え隠れしている。

少なくとも、自身が新聞拡張員をやっているという意識の人間は皆無やと。

内容的には午前10時に出社、朝礼があり、その後正午までに指定の販売店に入店し、午後8時まで勧誘をして終わる。

そして、そのまま直帰するということやから、一般的な新聞拡張団とやっていることは大差ないと言える。

ここまでのところ何か批判めいた論調になっていると感じられる人もおられるかも知れんが、そのつもりはないと言うとく。

むしろ評価しているくらいやと。

特に社員教育が徹底しているという点については買える。

一切の不正行為や違法行為は許されない。発覚すれば即、解雇されるという。

世間では当たり前のことなんやが、業界でそれを徹底すれば、それだけで優良企業と評価される。

また、新聞社の社員教育すら体裁で販売店に行って1日だけ勧誘営業をするとのことやが、ジョウカイでは数多くの研修に加えて、15日間の新聞配達も経験させられるという。

新聞販売店での仕事の大変さと理解を深めさせるために。

ええ意味で、今までの新聞拡張団とは一線を画した組織であることには違いない。それは認める。

一昔前までは、そういう新聞勧誘組織が誕生することなど考えもせんかった。

新聞拡張団と言えば、行くアテのない食いっぱぐれた人間が最後に集まる吹きだまりのような場所と相場が決まっていた。

ワシが拡張員になった18年ほど前は、拡張員の募集と言えば、新聞およびスポーツ紙などに掲載されている数行の求人広告くらいしかなかった。

『新聞営業社員募集。年齢経験不問。月収50万以上可能。日払い可。衣食住完備。○○新聞○○企画』

如何にも胡散臭そうなこの手の求人広告に釣られて面接に来るような者で、まともな人間は少ない。

たいていは切羽詰まって行くアテもなくやって来るという場合が多い。背に腹はかえられないという者ばかりやった。

ワシもそのうちの一人やったから偉そうに言えた義理やないがな。

当時は面接に行けば誰でも、その場から雇っていた。

それでも当時は、職が見つからんという程度では、この手の募集広告に普通の人間が飛びつくケースはまずなかった。

面接に行けば、そこがどんな職場かくらいの見当はつくさかいな。

当時の新聞拡張団の事務所と言えば、如何にもヤクザっぽい風体の男たちが大きな顔をして出入りしていた。

それが、2000年代に入って世の中が不景気になり、リストラが当たり前のようになり、就職率も悪化したことで、新聞拡張団にも変化が見られるようになった。

求人広告も普通の就職情報誌に掲載されていてネットでの募集も増えた。それに伴って新聞紙面やスポーツ紙などへの広告も減っていった。

10人募集をすれば4、50人の面接希望者が殺到したという話もザラにあった。

職探しが難しくなってきたということもあり、普通のサラリーマンからの転身組というのが目立つようになったからや。

以前までは、住む場所すらない者が大半を占めていたが、そういうサラリーマンからの転身組は、一般の会社に出社するように自宅から通う。

昔から、この世界にどっぷり浸かっとるワシらにしたら、ちょっと、考えられんことや。

昔は団の社宅住まいというのが圧倒的に多かったさかいな。正しくは「社宅」という名の「タコ部屋」やったが。

ただ、そういったサラリーマンからの転身組がこの仕事を続けていくのは、やはり難しいようや。すぐに辞める者が多い。

単なる営業会社の一つと考えていたが、まったく違ったと嘆いて。

団の雰囲気も、昔とは様変わりしている所が多い。

現在の新聞拡張団では、スーツにネクタイ姿の者が大半を占め、事務所も普通のオフィスビル内にあるというケースが増えとる。

昔は必要なかった住民票や保証人も今では当たり前のように提出を義務付けられている。

それだけでも隔世の感がある。

「ジョウカイ」については、新聞社からの100%出資子会社とはいっても外形的には協賛会社、協力会社という体裁になっている。

それには新聞社は表向き、個人契約者との個別の契約には一切タッチしない、できないという建前があるからや。

もっとも、その建前は最近のデジタル版の販売で怪しくはなっとるがな。

このデジタル版の新聞販売に関してだけは新聞社と個人との契約や。新聞販売店が関わることはない。

デジタル版の新聞については、いつか別個に詳しく話すつもりにしとるが、一言で言えば失敗やったと思う。

どこの新聞社も、デジタル版の売り上げ部数の公表すらしていない。恥ずかしくて公表できないくらい酷い状況やと聞く。

紙の発行部数の1、2%にも及ばない新聞社はザラにあると。最高でも4%止まりやと。話にならない。

ワシが常に言うてるように、「新聞は売り込まない限り絶対に売れない」という現実が良く表れている結果やと思う。

デジタル版の販売は完全に待ちの営業やさかいな。客からアクションを起こさない限り売れない。

ワシらに売らせたら多少は売れるかも知れんが、新聞社は建前上、それはせんやろうと思う。

まあ、売れていないデジタル版のことは、この際おいといて、紙の新聞について言えば、個人との契約は専属の新聞販売店の責任ですることになっている。

新聞拡張団は、その専属新聞販売店の依頼で勧誘営業をする。つまり、新聞拡張団は新聞販売店の外注業者になるということや。

ワシが、新聞業界では新聞拡張団は最下層の位置づけでしかないと言う所以が、そこにある。

ただ、それは表向きだけのことで、実際には新聞拡張団から派遣される拡張員の入店日程については、新聞社の販売部がその振り分けを決め、管轄エリア内の各新聞販売店に伝えている。

建前上、新聞販売店はその入店を拒否してもええとはなっているが、そうするケースは少ないという。

ほぼ押しつけ、命令と受け取っている販売店が多い。

そのため、新聞拡張団にすれば、その新聞販売店の依頼で勧誘営業をすることになっているとはいえ、実際は新聞社からの派遣やさかい、対等もしくは立場が上と考えているケースも多い。

新聞拡張団と新聞販売店の力関係は、必ずしも発注元とされる販売店が上位とは言えんわけや。

お互いの規模の大きさ、新聞社からの信頼度の篤さ、それぞれのトップの力量、性質、性格によって左右されることが多い。

その点、ジョウカイはすべての新聞販売店、新聞拡張団の上をいく存在やと認知されている。

そのええ例が、一般の新聞拡張団に所属する拡張員が取ってきた契約は必ず「監査」といって、その契約の真偽を客への電話聞き取り調査で確かめるということをするが、ジョウカイのセールスに関しては一切、それがないという点や。

すべて間違いのない契約として処理される。実際にも、殆ど間違いや不正はないという。

ジョウカイの特徴的な勧誘方法にハガキを使うというものがある。俗にハガキ作戦と呼ばれとるものや。

一説には仕事の半分は、それに関したものやという。

ただ、ジョウカイの作戦であるはずの実行部隊に、現場の新聞販売店従業員が駆り出されることが多いというがな。

これについては、以前のメルマガ『第191回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞販売店物語 その7 駅伝大作戦、その舞台裏とは』(注1.巻末参考ページ参照)の中で話したことがある。

その部分を抜粋する。


「何で、オレらが、こんな真似させられなあかんねん」

ケンジは、そう愚痴をこぼしながら、DM(ダイレクト・メール)を入れるのと同じ要領で、その封筒を各家々のポストに入れていた。

但し、現読の家は除いて。

ケンジの勤めている新聞販売店では、それをすることが毎年の恒例になっていた。

封筒の中には、『○○駅伝は今年で〇回目でしょう』といった、その地域の人間になら誰でも分かるような質問がクイズとして書かれたパンフレットが入っている。

それには切り取りのできるハガキが付いている。もちろん切手など貼らんでもええ無料のものや。

「正解した方にはA賞もしくはB賞が〇〇名様に当たります」てなことが書かれている。

空くじナシ。ハガキさえ出せば何かが必ず当たる仕組みになっている。

駅伝というのは、その地域では人気の高い競技として知られている。全国ネットや地域のローカル放送でテレビ放映されるケースも多い。

中学、高校、大学などの駅伝大会だと、その選手の親や親戚縁者はもちろん、地域の多くの人たちが沿道に出て応援する。

地域ぐるみ、町ぐるみのイベントとして昔から根付いている。

普通のDM(ダイレクト・メール)だと反応率が千枚に1件程度のものやが、この駅伝DMに関しては毎回、相当数の返信、応募があるという。

そのDM(ダイレクト・メール)に書いてある趣旨は「○○駅伝を応援しよう」というものや。

そのため、その商品には駅伝名の入ったベンチコートやスポーツタオルが当たる。

当たった者は、それを着て、あるいは振ってレースを応援できるということになる。

時折、テレビ中継などで、お揃いのベンチコートを着てタオルを振る人たちの姿が沿道に撮し出されている映像を見かけることがあるが、それは、この作戦があったからこそなわけや。

中略(ここから駅伝についてのウンチクを話しとるので興味のある人はその回のメルマガを見て頂けたらと思う。今回の件には関係がないので、ここでは省かせて貰うが)。

今は、馬の代わりに人間が走り、情報伝達のシンボルがタスキということになる。それをリレーしながら走る。

それにあやかって、こういうキャンペーンをしているのを批判しとるわけやない。

むしろ、どんなものでも営業に利用するという姿勢は、ある意味評価できることや。

実際、それぞれの地域の新聞販売店にとって、これにより多くの顧客を毎年獲得できとるというからな。

ただ、ケンジたち専業には、あまり見返りがない。それどころか、その指示を守らなければペナルティが加えられることもあるという。

専業には、それぞれ責任区域というのが振り分けられとるのが普通や。

たいていは自分の配達コースにプラス、配達アルバイトの幾つかの配達コースを分担して受け持つことになっとる。

その分担区域の現読以外の家に、そのDM(ダイレクト・メール)の封筒を入れる。

現読には、新聞の折り込みチラシの中に混ぜれば問題ないから、入れる必要はないという理屈や。

そのDM(ダイレクト・メール)の返信率は、すべてのDM中、最も高いと考えられている。

そのため、入れずに「入れた」というごまかしがしにくい。

例えば「1区はハガキが7枚帰ってきた」、「2区は9枚」といった具合になっているような場合、それが0だとしたら、サボっていたと見なされるからだ。

あり得ないことだとして。

実際、そういうケースでは配ってないことの方が多い。

これをするよう販売店に直接指示しているのは、新聞社の完全子会社の拡張団やと言う。

現在、新聞社は従来の評判の悪い拡張団は廃団に持っていくケースが増えている。

その代わり、こういった完全子会社の拡張団を新設する傾向にあるという。

実際、裏情報では、その完全子会社の拡張団のトップや幹部には新聞社販売部の担当者が派遣されとるという話やさかいな。

人はそれを左遷と言うとる。その真偽は定かではないが、その具体的な事実も報告されとる。

但し、表向きは別会社という体裁をとっているから、その新聞社は新聞勧誘には直接関知していないという姿勢は未だに崩してない。

役所の独立行政法人みたいな組織になっとるわけや。こちらの方は税金が使われてないだけ、まだマシやがな。

先の『販売店に直接指示している』という箇所で、本来、仕事を貰う立場の拡張団が、販売店に命令しているような表現になっているのを奇異に感じられた方がおられるかも知れんが、そのトップが新聞社の元担当員なら納得されるやろうと思う。


その回メルマガで言うてた『新聞社の完全子会社の拡張団』というのが、ジョウカイである。

8月24日〜26日までの3日間、東京ドームでAKB48のコンサートが行われた。

メンバーのセンターでトップアイドル、前田敦子が3月25日に卒業宣言をした事で最後のコンサートということもあって、空前の入場者が予想されていた。

その人気にY新聞が目をつけ動いた。それがジョウカイのハガキ作戦につながった。

メルマガの読者で、それに関わった新聞販売店の方からの報告で、それが分かった。

東京ドームでのコンサートは満員御礼が確実で、1日の入りが約5万人、3日間で15万人の入場が予想される。実際の結果もそれに近かったという。

Y新聞で15万人分のチケットのうち、5万枚を買い、それをジョウカイの作戦にすることにしたという。

具体的には、「新聞の購読契約をしてくれたらコンサートのチケット、正式には引換券あげますよ」という内容の返信ハガキ入りの封書を配布するのが、それや。

もちろん、それを配るのは例によって販売店の従業員たちやがな。

早い話が、AKB48のコンサートチケットを拡材にしようという発想やな。

その伏線として、YoutubeのAKB48公式チャンネルで東京ドームコンサート日程の動画が配信(注2.巻末参考ページ参照)され、その中でY新聞のトップとAKB48のリーダーとの対談が組まれた。

ワシの知る限り、Y新聞社のトップがアイドルと1対1で対談をしたことなど今までにはなかったはずや。異例のことやと思う。

それだけY新聞挙げて、その作戦にかけていたことになる。

ところが、ハガキを配布する段になって各新聞販売店に急遽ストップがかかった。

AKB48側からクレームが出たという。

まあ、普通に考えて15万枚のチケットの3分の1に当たる5万枚を買い占め、それを新聞の拡材に使おうというのやから、その事実を知ってクレームが出ん方がおかしいわな。

AKB48側にとってみれば、そんなことをせずともチケットが完売になるのは確実やと分かりきっとるさかいな。何のメリットもない。

メリットはY新聞側だけや。ただ、Y新聞社のトップの影響力は芸能界だけに止まらず政界、財界にも強い。

そこまで話が進んでいるものを無下に断るほどの力はAKB48側にもない。

両者で話し合った結果、数日後、改めて配っても構わないということになった。

その経緯について新聞販売店関係者は誰も知らないという。

箝口令が布かれたか、秘密厳守を条件に許可されたかのいずれかやと思うが。

あるいは、買い占め枚数を抑えられたため公表できないということも考えられる。

今回の東京ドームでAKB48のコンサートのチケットは応募が殺到することが考えられているため、AKB48のモバイル会員限定で応募者の中から抽選によってでしか、チケットが買える権利が得られないとなっていた。

そのことを考慮したためか、公式には、AKB48初の東京ドームコンサート(8月24〜26日)のチケットの予約券を、Yプレミアム会員限定で受け付けるということになった。(注3.巻末参考ページ参照)

こちらも抽選ということになっている。

表向きにはハガキの配布は、その広報的な意味合いがあるとした。

しかし、それで済ませてはジョウカイの仕事にはならない。ハガキの配布目的は、あくまでも、その後の勧誘にあるからや。

Yプレミアム会員とは、Y新聞の購読者を対象にしたサービスで月額157円を余分に支払えば入会できる特別会員のことや。

AKB48初の東京ドームコンサート(8月24〜26日)のチケットの予約券の欲しい人は、その場で新聞購読契約を交わし、即入会すれば応募ができる。

「その手続きは、私がしますので是非、Y新聞を購読してYプレミアム会員に入会してください」と、ハガキの配布に反応した人に対して、そのトークを使う。

AKB48の熱狂的ファンなら、確実に食いついてくる。何しろ、やっこさんたちは握手券を得るために同じCDを数十枚買うのも珍しくはないというしな。

金に糸目をつけないファンが多い。

ただ、無差別に投げ込むだけでは、そういう熱狂的なファンにそのハガキが届くとは限らない。

それを見て「Y新聞の購読契約をしただけではチケットは貰えないのか?」と言う客も中には当然のことながら現れる。

「ええ、抽選ですので」

「そんなアテにならん話ならいらん」

「チケットをくれるのなら契約しても良いが」

そんな場面は数多くあったやろうと思われる。

そう言われたジョウカイの勧誘員が、どうしたのか。

その確かな事までは知らんさかい何とも言えんが、「そこまでして俺はAKBの作戦には参加したくない」と言う人が、ジョウカイの社員の中にいるという話なら届けられているさかい、それで大凡の想像はつく。

どんなに厳しく教育されていても所詮は営業員に変わりはない。

競争社会にあっては無理をする人間は必ず現れる。営業で人より秀でようとすれば、より多くの契約を上げるしかない。それでしか認められない。

そう考え無理した結果は……。

何かのイベントを勧誘に利用するというのは悪いことではない。営業員なら利用できるものは迷わず利用すべきだとも思う。

ワシも過去、子供をダシに使う目的で、もとい「将を射んと欲すればまず馬を射よ」という故事に倣って、ポケモンのキャラクター引換券を拡材として使うたことがある。

新聞を取って貰ったら「ポケモンのキャラクター引換券を上げますよ」と、その子供の目の前で言うわけや。

子供は、それ欲しさに親に懇願する。駄々をこねる。それに困った親に狙いをつけ契約するように持っていく。

もちろん、そうすることへの批判的な見方をする人がおられるのは重々承知の上や。感心したやり方やないとも思う。

それでも敢えて言わせて貰えれば、許されたルールの範囲で利用できるものがあれば迷わず利用することのできる者だけが生き残れるのが新聞の勧誘営業やと考えとる。

甘い世界やないと。

しかし、若い社員の多いジョウカイの中には、当然のようにAKB48のファンもいて、そうすることに抵抗を示す者もいる。

AKB48のファンであれば、彼女たちが、今回の東京ドームコンサートにかける思いの深さは誰でも知っている。

今や「飛ぶ鳥を落とす勢い」とまで呼ばれているAKB48も初回公演での観客はたった7人しかいなかったという。

舞台上の彼女たちの方が圧倒的に多い。そんな低迷期が長く続いた。

それでも彼女たちは、いつの日にか東京ドームでコンサートができる日を夢見て7年間頑張り続けたという。

秋葉原から東京ドームまでの距離は僅か1830mしかない。その距離が彼女たちにとっては、とてつもなく遠く長かった。

結局、そこに辿り着くまでに7年もかかった。

彼女たちにとっては良く行われる単なるコンサートの一つではないわけや。

その彼女たちの思いに水を差すようなことはしたくないと、そのジョウカイの若い社員が語っていたという。

もっとも、その後、会社に対して反旗を翻したという話は届いてないから、嫌々ながらでも作戦には参加したのやろうと思う。

そのAKB48初の東京ドームコンサートに行かれたという、ある読者の方からメールがあった。

その中に目を引く記述があった。


ハカセさん、ゲンさん、こんにちは。

以前メールでお話していましたように、8月25日にAKB48の東京ドームコンサートに行って来ました。

ハカセさんから、行った時に様子を知らせてほしいと言われていたのでご報告します。

僕の印象ですが、いつものコンサートや握手会とは違った異様な雰囲気を感じました。

いい意味ではありません。

僕の近くに5、6人の黒い背広姿の人たちがいました。年の頃は40代くらいのおじさんたちです。

一瞬、SP(スペシャル・ポリス)か私設ガードマンの人かなとも思いましたが、僕のいた所は1累側寄りのアリーナ席というところで、VIP席ではないので有名人が見に来ているということでもありませんでしたので違うと思います。

それが、きっかけで辺りを良く見回すと、その日に限って変なおじさんたちが、あちこちにいて目立ちました。

最初は、東京は人も多いので、そういうファンもいるのだろうというくらいに考えていたのですが、その人たちはコンサートが始まっても盛り上がるでもなく、冷ややかな感じで見ているだけでした。

明らかにファンとは思えない人たちです。

僕は何度もAKB48のコンサートや握手会に行っていますが、そこにやって来ている年輩の人は数は少ないですが、僕らが引いてしまうくらい熱狂的な人ばかりです。

だからよけいに気になりました。

僕たちは、そんなおじさんたちのことは無視して楽しみましたが、一体あの人たちは何だったのでしょうね。


と。

その年輩の男たちが、ジョウカイの作戦とやらで勧誘されてYプレミアム会員になって来ていたと考えられなくもないが、その確かなことは分からんので何とも言えん。

あるいは新聞社から様子を窺いにやって来た連中ということも考えられる。

その新聞社というのはY新聞社とは限らない。

A新聞社の可能性もある。

現在、AKB48新聞というのがA新聞系のスポーツ紙から月一で発行されている。

A新聞としてはAKB48側とは太いパイプを持っていると考えていたところに、今回のY新聞のやり方には出し抜かれたという思いが強いのやないかと想像できる。

少なくとも快くは思っていないだろうと。その意味で現場を偵察していたと考えてもおかしくはない。

現在、Y新聞社とA新聞社の関係は冷え切っているというのが大方の業界関係者の見方でもあるしな。

それが黒い背広の軍団の正体やないかと。

盛り上がらない年輩者は、ジョウカイのハガキ作戦の成果やと。

普通なら、そんな妄想は一笑に付されて終いやが、この業界はそうとも言えん部分があるから怖い。

「そこまですることがあるのか」と問われたら、可能性としてなら、「ある」としか答えられんさかいな。

もっとも、その真偽が分かったからと言うて、どうということでもないがな。

一般の人にとって見れば、「へえー、そうなんや」で終わる程度のことにしかすぎん。

それで良ければ、この手の話は他にもあるから、機会を見てまたしようと思う。



参考ページ

注1.第191回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞販売店物語 その7 駅伝大作戦、その舞台裏とは

注2.YoutubeのAKB48公式チャンネルにて東京ドームコンサート日程の動画が配信されました!

注3.AKB48 in TOKYO DOME 〜1830mの夢〜


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