メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー

第229回 ゲンさんの新聞業界裏話


発行日 2012.10.22


■ゲンさんのよろず相談あれこれ Part 7


このシリーズを楽しみにして頂いている読者の方が多いというのは知っていたのやが、いろいろとあり、ほぼ4ヶ月ぶりになってしもうた。

遅くなって、まことに申し訳ない。

ここでは、サイトのQ&Aでは取り上げられないような相談、質問が多く何が飛び出してくるか分からんというのが、その人気の理由のようや。

実際、過去にもいろんな相談があった。(注1.巻末参考ページ参照)

『ゲンさんのよろず相談あれこれ Part1』では、「事例その1 出会い系サイトからの迷惑メールについて」、「事例その2 悪質なアダルトサイトの消えない画像を消去する方法が何かありますか」、「事例その3 どうすれば危険な交差点に信号機を設置してもらえますか」、「事例その4 身に覚えのないことで因縁をつけられた場合の対処について」。

『ゲンさんのよろず相談あれこれ Part2』では、「事例その1 下請け工事代理店の方が売りつける様な行為は詐欺?」、「事例その2 「戦争中の体験談をお聞かせください」と言ってくる書籍掲載話」、「事例その3 シルバー人材センターを名乗った庭木の剪定(せんてい)について」、「事例その4 震災に便乗した悪質な屋根修理業者への対処法」。

『ゲンさんのよろず相談あれこれ Part3』では、「事例その1 津波で流された乗用車のローンの返済について」、「事例その2 有名なお寺の永代供養について」、「事例その3 会社のミスで余分に振り込まれた通勤手当の返金について」。

『ゲンさんのよろず相談あれこれ Part4』では、「事例1 犬に噛まれた場合の慰謝料請求について」、「事例2 遺産相続の公正証書遺言書に疑問がある場合の対処は?」、「事例3 強引に買い取られた貴金属を取り戻したい」。

『ゲンさんのよろず相談あれこれ Part5』では、「事例その1 主人に他人が私の借金の請求をしても構いませんか?」、「事例その2 裁判まで日もなく困っています」、「事例その3 期限のない焼却炉の協定書について」、「事例その4 契約書の更新が改ざんされたことに端を発するトラブルについて」。

『ゲンさんのよろず相談あれこれ Part 6』では、「事例その1 毎日迷惑メールがたくさんきて困っています」、「事例その2 調停相手を引っ張り出す良い方法はありませんか」、「事例その3 AKBの握手券を売る良い方法を教えてください」。

これらを見ても分かるように法律に関した相談事がヤケに多い。まあ、ワシらの分かる法律の範囲であれば、それでもええが、言うても所詮は素人や。

メルマガでもサイトでもそれは言うとる。

その素人に、これほど多くの法律に関する相談が寄せられるというのもおかしな話やが、その理由は今以て良う分からん。

おそらく日本一、法律問題に関する相談の多い素人の個人サイトやないかと思う。

また、中にはどこに相談したら良いのか分からず、迷った末にワシらに相談してきたという方もおられるがな。

そういう方には事案にもよるが、警察の市民安全課や消費者センターなどに通報するようにアドバイスすることも多い。

実際、その方々からの通報をきっかけにして消費者センターのHPで公開した事案もあるとのことや。

それでは、そろそろ始めさせて頂く。


事例1 消費者センターに相談した方が良いのか迷っています


相談内容

大手カー用品販売店でカーナビを購入したが外国製の不良品だった為2回の交換になり3回目も不良品でした。

その苦情を伝えに再度、店に行ったら5千円増しで日本製の商品を奨められ交換は出来ないと追い返されました。

それなら不良品を売るなと言いたいのを我慢して帰って来ましたが、納得いきません。

消費者センターに相談した方が良いのか迷っています。


回答者 ゲン


『消費者センターに相談した方が良いのか迷っています』というのは、消費者センターに相談された方がええと思う。

消費者センターというのは、まさしくそのためにある機関やさかいな。

その事案なら、たいていの場合、その店舗に対して行政指導をするはずや。

同時にその大手カー用品販売店の本社に苦情を言うという手もある。

そうすることで、その店で対応をした人間の立場がまずくなるのは間違いないものと思われる。

一般的に、こういう対応をする店員は、客を甘く見ているから、そんなことを言うわけや。おそらくは、その店員、独自の判断やと思う。

その大手カー用品販売店の姿勢が、そうやとは考えにくい。そんなことが公になったら大変な問題に発展しかねんさかいな。

泣き寝入りされたくないのなら、そうされることを勧める。

裁判に訴えるという手もなくはないが、それよりも根気よく正当なクレームを言い続ける方が効果的な場合が多い。

不良品を良品と交換してくれというのは正当な要求やさかい、臆することはないしな。

もっとも、ワシなら、その代金を返還して貰うて他でカーナビを買うがな。

『交換は出来ない』と言うのなら、代金を返還するしかないやろうと言うてな。

まさか、使えもせん不良品を使用したから変換できんとも言えんやろうしな。


事例その2 無法なアダルトサイトへの対処法を教えてください


相談内容


中学生に息子にスマートフォンを買い与えました。息子は友達から勧められるままに、興味本位でアダルトサイトを検索したと言います。

見たい動画を選んだところ「18歳以上ですか」と聞かれ、「はい」のボタンを押すと、突然登録完了となり約10万円を請求する画面が出たそうです。

焦った息子は画面の下にあった「退会はこちら」を選択し、退会希望のメールを送ったと言います。

すぐに業者から「電話するように」というメールが届いたので連絡したところ「金を払え。学校に連絡して親にも伝えるぞ」と脅されたということです。

息子は小遣いで払おうとしましたが、怖くなって私に相談してきたのですが、どのような対応したらいいのか教えてください。


回答者 ゲン


そういうのは契約にも何にもなっていないから無視したらええ。金を払う必要は一切ない。

民法第5条(未成年者の法律行為)に、『未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない』とある。

つまり、満20歳未満であれば親であるあんたの同意がないと契約は成立せんということや。あんたの一存で無効にできる。

その業者にそう言えばええ。その際には、その会話を録音することを忘れずにな。その会話の中で脅すような言動でもあれば警察に通報することもできる。

とはいえ、そういうことをやっとる連中はヤクザ、もしくはそれに類似した組織に関わっとる場合が多いから、素人さんが相手にするのは、警察に通報するくらいまでにしといた方がええと思う。

ただ、息子さんが『すぐに業者から「電話するように」というメールが届いたので連絡した』ということで電話をかけたということなら、そのメールアドレスと電話番号を相手に知られとるから、何度も催促の電話、もしくはメールを息子さんにしてくる可能性が高い。

相手は人を脅すのが仕事みたいな連中やから、中学生の息子さんではひとたまりもないやろうと思う。あんたの目を盗んで金を支払おうとするかも知れん。

それを避けるには電話番号とメールアドレスを変えるくらいしか方法はないやろうな。少々、余分な出費になるかも知れんがやむを得んやろうと思う。

そういう事態になったら、そうするしかないと息子さんに分からせるのも、ある意味、勉強、教育になる。迂闊に怪しげなサイトをクリックするとロクな事にはならんと分からせるためにもな。

一つ気になるのは『学校に連絡して親にも伝えるぞ』という部分やが、まさか通っている学校とあんたの連絡先を、その業者が知っているというのやないわな。

もし、それらの連絡先をその業者が知っているのなら、適当に逃げるわけにはいかんやろうと思う。

そういう連中は食い物にできるとなれば、とことん食らいついてくると相場が決まっとる。それがヤクザのヤクザたる所以やさかいな。

その場合は徹底して戦うしかない。絶対に弱みを見せたらあかん。弱みを見せたら負けて食い物にされる。

無法な輩には毅然とした態度ではね除けるしかない。

電話番号とメールアドレスを変えるくらいで避けられるのなら問題ないが、それでも駄目でとことん戦うつもりなら、その状況を詳しく教えて貰えれば、それに即したアドバイスができると思う。

その時には、またワシらに相談してくれたらええ。


事例3 断ったのに置いていった配置薬はどうしたらいいのでしょうか
     

相談内容

突然訪問して来たN株式会社の販売員と名乗る男が、「薬屋です」と言って薬箱を持って来ました。

使わなくても良いので置かして欲しいということでしたが、使わないものを預かるのは迷惑なので「必要ありません」とはっきり断りました。

何度か押し問答を繰り返しているうちに、いきなりその販売員が「置いてもらえるだけで僕は助かるんです。どうか助けると思ってお願いします」と言って無理矢理薬箱を置いたまま走って逃げるように立ち去ってしまいました。

業者の名前と連絡先が薬箱に印刷されいたので連絡して、すぐに引き取るように申し入れましたが、「必要がなければ使わなくても良いので、置くだけでも結構ですから置かしてやってください」と言って結局引き取ってもらえませんでした。

本当に使わなければ問題は起きないのでしょうか?

もし、問題が起きるとしたら、どんなことが考えられますか?

どこに相談したら良いのかわからなかったのでご迷惑でしょうが、アドバイス願えたらと思いメールしました。

よろしくお願いします。


回答者 ゲン


『本当に使わなければ問題は起きないのでしょうか?』ということやが、そのN株式会社の置き薬なら関西では老舗として知られていて、ワシも昔使うてたことがあるので、それほど問題はないやろうと思う。

普通は2〜3ヶ月に1回程度やって来て、その時、使うた薬があればその代金を支払うだけでええ。値段も市販薬と大差なく、俗に言う「ぼったくり」というのやなかった。

薬の使用期限というのは、こまめに見て取り替えたり、薬の正しい使い方や商品の説明をしてくれたりして、結構親切やったと記憶しとる。

ただ、その販売員が『無理矢理薬箱を置いたまま走って逃げるように立ち去ってしまいました』というのでは信用しろと言うても無理な話やわな。

新聞の勧誘員にも、拡材(景品)だけを置いて契約書も交わさず、その場を立ち去るような者もおるが、そういうのは総じて営業が苦手で弱い人間が多い。

相手を説得することができんだけやなく、客になってもらえるかどうかの見極めもつかんのやろうと思う。後でトラブルになるかも知れんということにまで考えが及ばんという者もおる。

もちろん、そんなことでは販売員は失格なんやけどな。

ただ、最近は置き薬業界も厳しいようで、昔に比べて薬を置かしてくれる家庭が少なくなったと聞く。

今はどこにでもドラッグストアがあり、たいてい薬はそこで買え、安売りしとるさかい、それらの店と比べれば、やはり置き薬の方が高いしな。

競合できるのは一般の薬局くらいやと思うが、その薬局も近年減少傾向にあるというから、営業トークをするにもよけい厳しいのやろうと思う。

そのためかどうかは知らんが、そのN株式会社では昔はやってなかった在宅介護サービスをしとると言うし、驚くことに牛乳の宅配までしとるとのことや。

販売員も新聞勧誘員と同じで客を作らんことには稼げん。新聞勧誘員は契約を上げることで客を獲得したと認められるが、置き薬の販売員は契約を上げずとも薬箱を置かして貰っただけで成績として認められるようや。

ワシの想像やが、その販売員は薬箱を置いて逃げればトラブルになるくらいなことは承知しとるのやろうが、中には「仕方ないか。使わなければいいだろう」という客もいるので、それを期待してそんなことをしとるのかも知れんという気がする。

そのN株式会社の苦情受け付け係が『必要がなければ使わなくても良いので、置くだけでも結構ですので置かしてやってください』と言うとるところからすると、会社もそのことは織り込み済みやとも考えられる。

例えば苦情を言ってくる客が10人いたとして、そのうち一人か二人、それであきらめてくれれば御の字やと。

もし、会社全体がそういう姿勢になっているのやとしたら、かなり程度が落ちたと言うしかないな。

当たり前やが、そんなことを繰り返しとったら、どんどん評判を落としていくことになるさかいな。

ワシは個人的にその会社の経営者N氏を知っとるので、そんなことを容認するような人やないとは思うがな。

単に、その販売員の独断でやったことやと思う。会社の担当者もフォローする意味で例外的に言うたと。

もう一度、きつめに「すぐに引き取りに来い」と言えば来るはずや。もし、それでも来なければ消費者センターに言えばええ。その会社なら消費者センターを無視するようなことはないやろうから、それで片がつくものと思う。

N株式会社や名の通った置き薬メーカーなら、それで簡単に解決つくと思うが、新聞の勧誘と同じで中には悪質な販売業者がいとると聞く。

次回の確認に来た際、使うてもない薬がなくなっていると言ってその分を請求したり、高額なドリンクや健康食品を売りつけたりする業者もいるようや。

そういう場合も一応、消費者センターに通報すればええ。ただ、そういう悪質な業者はその消費者センターの指導を無視することもあるさかい、念のため第三者に、その箱の中身を確認して貰うといた方がええやろうな。

それもなるべく早いうちに。

具体的には、その箱の中には薬のリストくらいは入っているやろうから、そのリスト通りの品物があるかどうかの確認やな。

できれば、その地域の自治会長さんあたりの有力者がええな。そういう人がいない頼れないというのであれば、知人の方でもええ。揉めた時、証言して貰えるのならな。

また最寄りの警察署の市民相談課あたりに相談しとくのも手やと思う。

リストがないというケースもあるが、そういう場合は、どんな請求も「なかった」としてはねつけたらええ。それで通る。

損害があったと主張する方は、その実証をせなあかんと法律で決まっている。

しかし、リストがないのでは、それがなくなっていることを証明するのは無理やさかいな。そう言えばええ。

まあ、それは参考程度に知っておいてくれたらええ。今回はそこまでせずとも解決つくと思う。


事例4 ハカセさんの書かれた小説を読んでみたいのですが


相談内容

以前メルマガでハカセさんが小説を書いておられるということでしたので、出版されるのを楽しみにしていたのですが、その後どうなったのでしょうか。

一度ハカセさんの小説を読んでみたいと思っています。

実は私もある業界の内輪話を小説にしたいと考えていて書き始めるのですが、なかなか筆が進みません。

ハカセさんの小説を読ませて頂ければ、書くためのヒントが何か得られるのではなかろうかと思いまして大変不躾なお願いと承知の上でメールを差し上げた次第です。

宜しくお願いします。


回答者 ハカセ


『一度ハカセさんの小説を読んでみたいと思っています』というのは、とても有り難いのですが、メルマガやサイトで私の小説を公開するつもりはありませんので難しいですね。

小説はあくまでもフィクションです。しかし、メルマガやサイトの記述の内容は真実を基本としています。

そういったところでフィクションである小説を公開すれば、真実も真実とは受け取って貰えない可能性が生じます。

ですので、公開するのなら、まったく違う媒体でするしかありません。

そのことについては、『第187回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■2012年の抱負について』((注2.巻末参考ページ参照))の中で話しています。

おそらく、あなたはそれを読まれて『その後どうなった』とお尋ねなのではないでしょうか。

そのメルマガにもあったように今年、小説を書いて某有名新人賞に応募しましたが、見事に落選しました。

もちろん、それは当初から、予想していたことではありますが。

現在、出版業界も冷え切っていて、過去に新人賞を取った現役の作家さんたちもなかなか出版することができないため、受賞すれば確実に出版して貰える新人賞に応募が集中しているのが現状のようです。

多くの新人賞にはプロ・アマ問わずとありますので。そういったところでは、どうしてもプロの方が殺到します。

つまり、私の競争相手はプロの方々ということになるわけです。もちろん、それだから落選したというのは言い訳にしかなりませんが。

単に、その域になかったと認めるしかありません。力不足だったと。

ただ、落選はしましたが、ある出版社から書籍化を検討したいという話があり、そのために、「社の企画会議で俎上に乗せてみます」との連絡を頂きました。

それから数ヶ月が経ちますが、何も言ってこられませんので、おそらくは流れたものと思います。

催促するのも気が引けますので、問い合わせは何もしていませんが。

その折りに、その出版社の編集者の方は、「新聞業界の内幕が描かれていて大変面白いのですが、商業ベースに乗るかどうかが疑問なのです」と言われていました。

また、「以前でしたら、出版できるレベルだと思うのですが」とも仰ってくれていました。

確実に売れると見込まれる作品でないと出版されるのは難しいとは知っていました。

まず「話題性」、これはサイトの訪問客を見る限り約7割の人が一般の方ですし、ネットでもそれなりに知られた存在ですので内容次第ではアピールが可能になるかも知れません。

次に「知名度」、これはサイトやメルマガの読者以外で知っておられる方は少ないと思いますので、広範囲に見た場合はないに等しいと言えます。

つまり、私自身冷静に考えても売れるとは、とても言い難い状況です。もちろん、読者の方の中には買って読んでやろうという方もおられるとは思いますが。

あなたは、『実は私もある業界の内輪話を小説にしたいと考えていて書き始めるのですが、なかなか筆が進みません』ということですが、その小説をどういった形で発表されようと考えておられるのでしょうか。

どこかの新人賞への応募ということでしたら、『第187回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■2012年の抱負について』の中に、「小説の文学賞、新人賞に応募するための心得」というのがあります。

その部分の抜粋です。


小説の文学賞、新人賞に応募するための心得


1.最初の数行、数枚に全勢力を傾ける。

本屋に行って本を手に取るとき、その本がどんなものか分からない場合、たいていの人は最初の出だしの文章を読んで判断する。

それで面白そうやと判断すれば読み続けるし、面白くないと思われれば、そこで読むのを止める。

それは選考者も同じや。プロの読み手ほど厳しくシビアやと言える。

このとき、間違っても無理して最後まで読んで貰えるなどとは考えんことや。

具体的には、意外性のある出だし、緊迫感のある出だしにすると人を惹きつけやすい。


2.ありがちな話、設定にしない。

小説には人情話、ミステリー、ファンタジー、SF、ホラーなどといった様々な分野があるが、そのいずれを選択して応募するにしても、その分野でありがちな話、設定は避けた方が賢明やと言われている。

選考者は既視感のある作品と見れば、オリジナルティなしと判断して、ほぼ100パーセントの確率で除外するという。

なぜなら、多くの場合、主催者側はその部門での新しい才能を発掘するというコンセンサス(総意)を持って選考にあたるよう選考者に指示しとるからやと。

プロの読み手は、当然のように相当数の小説や本を日頃から読んでいるのが普通や。

有名作家の作品はもちろんのこと、無名でも話題性のある作品は欠かさず読んでいるものと考えとくことや。それには現在、過去を問わない。

それらと酷似した話は落とされる可能性が高い。

また、そういう人たちは映画やテレビドラマも良く見るというから、そこからヒントを得るにしても既視感が伴わない工夫をすることが必要になる。


3.選考者を感心させ、唸らせる。

具体的には、選考者の知らない世界、ウンチクを書くことや。

これは一般の人に対しても言えることで、そこに書かれている内容で某かの知識が得られるから本を読むという人が多い。

また、それがあることで面白いと感じる。

一般に知られていない内容ほど価値が高い。それで選考者を感心させることができれば、かなりの高確率でそのランクの選考は通過する。

ただ、その専門家以外には分かりにくいものは却ってマイナスになるから気をつけた方がええ。

専門用語の多用も控えた方がええし、分かりやすく説明する必要もある。

もちろん、小説は物語主体の読み物で学術書などの専門書やないから、だらだらと長引く過度な説明もまずいがな。

専門的なことを分かりやすく物語の中に融け込ませれば完璧やが、それはプロの作家でもなかなかできることやないから、まずは「おっ、これは」と思わせられるウンチクを幾つか挿入するように心がけることや。


4.魅力的な登場人物を書く。

特に主人公のキャラクターは重要で、小説の成否はそれによって左右すると言うても過言やない。

もちろん、主要な登場人物も魅力的に書けるに越したことはない。

実はハカセが、毎回悪戦苦闘しとるのは、そのことやという。魅力的な人物が書けるようになれば、かなりの確率で賞に近づくはずやが、それが難しいと。

言えることは直接的な「格好いい二枚目」とか「もの静かでクールな男」、「ものすごい美人」といった形容で書き表さんことくらいやと。

そういうのは陳腐な表現として問答無用で落とされる。

性格とか心の内面、感情といったものも同じで、「悲しい」、「怒った」などという直接的な形容は避け、その行動、仕草、会話でそれと表現するように工夫することや。


5.選考者は大半が男やということを頭に入れとく必要がある。

これは、ほぼすべての文学賞、新人賞に言えることで、これを見落とす応募者が多いとのことや。

男の目で見て、魅力ある男性、魅力ある女性を書けば選考は通りやすいが、反対やとハテナマークがつく可能性が高い。

これは作者が男性の場合でも女性の場合でも留意しといて損はないと思う。


6.台詞回しを工夫する。

意外に思うかも知れんが、台詞回しの上手いプロ作家というのは少ない。

逆に言えば、その台詞回しが上手くできれば選考が通る可能性は高いと言える。

小説の場合、台詞を単なる会話と捉えたらあかん。進行上、必要かつ重要なファクターやと考えて意味を持たせる必要がある。

台詞回しの上手い作家は、会話だけで場面を進行させることができるさかいな。


7.風景描写の工夫をする。

これに関しては基本的な描写力さえ身につけていれば、それほど問題はないが、それで心理描写まで書き表そうとすると、それなりのテクニックと工夫が必要になる。


8.意外なストーリー展開とスリリングな場面の工夫をする。

意外なストーリー展開は既視感を与えないし、スリリングな場面は面白味を増すことができる。

具体的には、それらの場面では短めの文章の連続がスピード感と緊迫感を生むということで、ハカセはそう心がけとるという。


9.梗概(あらすじ)の添付が必要とされる文学賞、新人賞は、それに本編以上の力を注ぐ。

なぜその梗概が必要かと言えば、それでその人間の構成力、発想力を見るためと、面白いかどうかの判断を素早く下すためや。

裏を返せば、その梗概を面白いものにすれば、即座に落とされることだけは避けられる。

ただ、面白いものにしようとするあまり予告編じみたものにするのはまずい。

ミステリー小説の場合、梗概で犯人が誰かを書いてしまったら面白くなくなって読んで貰えないのやないかと心配する人がおられるようやが、そんなことは考えんでもええ。

読み手はプロやから、その梗概自体をプロットとして読む。それで応募者の力量を判断する。

逆にボカした梗概にすると、作者にその力量がないと判断して即座に落とされる可能性が高くなるということや。


というものです。

たまに、あなたのようにメルマガやサイトに作家志望という人たちから小説を書く上での助言を求められることがあります。

私は今までそれは断ってきました。

私自身が小説家の域に達してないという思いもありますが、それ以上に実績がない、資格がないからというのが、その理由の大半です。

ただそのメルマガでは、昨年、ある文学賞の特別賞を貰ったという実績で良ければということで、私が心がけている文学賞の応募の心得を、特別に公開することにしたわけです。

その折り、何も言いませんでしたが、その作品で日本語検定協会という所から、日本語文章力1級の認定証を貰ったことで舞い上がってしまっていたということもありました。

その資格で、人に助言くらいしても良いのではないかと。

私自身、どんなに難関な新人賞であろうと一次選考程度は余裕で通るだろうと自惚れていました。

その昔は3次選考や最終選考にも残り、今をときめく超売れっ子作家と争ったこともありましたので。

結果は一次選考も通らず惨敗しました。今思えば当然の結果でした。

私は、そんな過去の実績や肩書きに拘っていた自分が恥ずかしくなりました。

そして、最も大事なことを忘れていたのです。

それは、その作品を面白いと見るか、つまらないと判断するかは、他の誰でもなく読者次第だということをです。

多くの読者が面白いと思って買って読まれるものが本当に良い作品だということに今更のように気づきました。

私自身、本を買って読む場合の理由、基準はそれですから。私の場合は、それにその本の資料価値というのも考慮に入れますが。

私たちのメルマガやサイトは新聞業界の裏話に満ちているので、一般の人からはそれなりに面白いと思って頂けるようです。

この手のものには業界関係者が多く集まりそうに思えますが、当メルマガ、サイトに関して言えば、業界関係者の方が訪問する確率は3割程度というデータが出ています。

業界話を面白いと感じるのは、読者にとって知らないことが多いからだと思います。

その点で言えば業界関係者にとっては日常的なことばかりですので、よほど奇抜な内容でないと面白いとはなかなか思って頂けないようです。

その反面、役に立つと言って頂いている業界関係者の方は多いですが。

それにはゲンさんをはじめ、サイトに協力的な業界関係者の方々から日々寄せられてくる膨大な情報のおかげだと感謝しています。

結果として、そこそこの人気も得るようになりました。私一人では当たり前ですが、こうはなってなかったはずです。

あなたの言われる『ある業界の内輪話』の内容次第では面白いと考える読者の方はおられると思います。

ただ、あなたは、まだその作品を書き始められた段階のところでつまづかれているようですので、まずは書き上げられてからでないと、先には進めないと思います。

そこで、一つだけアドバイスさせて頂くことがあるとしたら、その業界話をする際には、極力分かりやすさという点を心がけ、あなた自身が面白いと考えるのではなく、その業界のことは何も知らない読者の一人の立場として、その作品が面白いかどうかを見つめ直すことが大切だと申し上げておきます。

けっして、ひとりよがりな文章にはしないことです。

最後に、私の小説に関してはメルマガやサイトでの公開はしないつもりですが、当面は書籍以外での公開を模索中ですので、具体的に決まり次第、このメルマガ誌上で報告させて頂きます。

まことに申し訳ありませんが、それまで今しばらくお待ち頂ければと思います。


今回はここまで。

最後の相談の回答に関しては、ハカセも考えることも多いということやから、別の機会に話をさせて貰うことがあるやろうと思う。

近いうちに。と言いたいのやが、今その言葉を使うと何か嘘くさく思われそうで嫌やけど、そういうことやと考えて頂きたい。

また、今回掲載しなかった『よろず相談あれこれ』も、まだまだあるので、これも「近いうちに」掲載すると約束しとく。



参考ページ

注1.第159回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■ゲンさんのよろず相談あれこれ Part 1

第166回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■ゲンさんのよろず相談あれこれ Part 2

第174回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■ゲンさんのよろず相談あれこれ Part 3

第178回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■ゲンさんのよろず相談あれこれ Part 4

第197回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■ゲンさんのよろず相談あれこれ Part 5

第211回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■ゲンさんのよろず相談あれこれ Part 6

注2.第187回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■2012年の抱負について


ゲンさんの新聞勧誘問題なんでもQ&A選集 電子書籍版パート 
2011.4.28
販売開始 販売価格350円
 

書籍販売コーナー 『新聞拡張員ゲンさんの新聞勧誘問題なんでも選集』好評販売


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