メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー

第251回 ゲンさんの新聞業界裏話

発行日 2013. 3.29


■ゲンさんのよろず相談あれこれ Part 9


このシリーズも、すっかり定着してしまった観がある。

メルマガ読者の方の中には、このシリーズを楽しみにされておられる方も多く、その分、回答に責任を感じながらやっとる。

正直、畑違いの相談を本当にワシらが答えて、ええもんかどうかと悩むことも多い。

新聞に関するものなら、どんな相談でも、ほぼ答えられる自信はあるが、どんな相談が持ち込まれるか分からんさかい、その点での難しさに痛感しとるというのが本音や。

特に今回の相談にそれが言える。

何がどう難しかったのかは見て頂ければ分かると思うので、そろそろ始めさせて貰う。


事例1 意味不明なメールについて

相談内容

いつもHPやメルマガを楽しく拝見させてもらってます。

高校生の息子が、「保険証を出して欲しい」と言うので、何のために必要なのかと問いつめたところ、届いたメールに返信するのにいると言うのです。

要領を得ないので「そのメールを見せろ」と私が言うと、息子が渋々スマートフォンの画面を見せました。

それは、次のような内容のものでした。


突然ご連絡差し上げて申し訳ありません。

あなたがよくご存じの、ある方のご紹介で、ご連絡させて頂いております。

その方にご迷惑がかかるため、今はまだ名前をお伝え出来ないことをお許しください。

私は某芸能事務所にてマネージメント業務を行っております。

今担当してるのは国民的とも言える、多分皆さんご存知のタレントです。

ここ最近本人が雑誌やテレビでの取材、番宣目的での番組出演などで非常に疲れており、精神的に病んでしまっているようなのです。

今回突然ご連絡をさせて頂いたのは、タレント本人の希望でどうしてもあなたとお話したいとの事です。

当然本来こんなことはNGですし、押しつけがましいお願いになってしまうのは重々承知ではございますが、本人が少しでも元気になってくれるならばと思い、あなたにご相談に乗って頂ければ。とご連絡させて頂きました。

私が今連絡をとっている携帯ですが、事務所に厳重に管理されているため、この事がばれてしまうとマネージャーとして大問題になってしまいますので、私の携帯に直接ご連絡頂ければと思います。

お手数をお掛けして申し訳御座いませんが、お話だけでも聞いて頂けないでしょうか?

aya.h_c.509@ezweb.ne.jp


ご連絡、お待ち申し上げております。


私はメルマガの『ゲンさんのよろず相談あれこれ』が好きで毎回欠かさず見ているので、見た瞬間に「これはおかしい」と気づきました。

そこで、息子には「もう連絡するな。これは典型的な詐欺メールだ」と言って保険証の情報などは教えませんでしたが、息子は不満そうにしていました。

私も「これは典型的な詐欺メールだ」とは言いましたが、実のところ本当に詐欺メールなのかどうかわかりません。

また息子に説明するにも、どのように説明していいのかもわかりません。

この意味不明なメールについて教えていただけないでしょうか。

宜しくお願い致します。


回答者 ゲン


これは詐欺メールというより「トラップメール」に近いものやな。

詐欺メールは金銭の支払いを要求するものが一般的やが、これにはそれがない。

おそらくは『私の携帯に直接ご連絡頂ければと思います』というのに誘われて連絡してきた者に、何かと理由をつけて金銭を支払わせるのが目的やろうと思う。

詐欺メールであれ、トラップメールであれ、いずれにしても胡散臭いメールには違いない。

『息子に説明するにも、どのように説明していいのかもわかりません』ということやから、お子さんに説明できるように話す。

まず、メール本文についての矛盾点からや。

『あなたがよくご存じの、ある方のご紹介で、ご連絡させて頂いております』という文面は個人的に送られてきたメールでは考えられんことや。

普通、こういったメールでは『あなた』の部分に相手の名前を書き込む。それがないのは、このメールの差出人は出した相手が誰なのか分かっていないということを意味する。

『ある方のご紹介』というのも同じで、そう書くことで信用させたいのやろうが、それならその紹介者の名前くらい書いても良さそうなもんやと思う。隠す意味がない。

これから言えるのは、このメールの差出人は息子さんの名前を知らず、紹介者とやらも架空の人間やということや。

『私は某芸能事務所にてマネージメント業務を行っております』というのも個人的に送られてきたメールなら、芸能事務所の名前くらい明かしても問題ないように思う。

もし、その芸能事務所の名前すら明かせないというのであれば、このメール自体が胡散臭いと自ら言うてるようなもんやさかいな。

『今担当してるのは国民的とも言える、多分皆さんご存知のタレントです』というのも、息子さんを知っている人間が、このメールを出したのであれば、そんな書き方をせずストレートに名前を出せばええ話や。

息子さんに対して用心する必要があるのなら、そもそもこんなメールを送り付けてくる意味がないと考えるがな。

『今回突然ご連絡をさせて頂いたのは、タレント本人の希望でどうしてもあなたとお話したいとの事です』というのが本当なら、尚更やと思う。

タレントであれ、誰であれ、『本人の希望でどうしてもあなたとお話したい』というのなら、自分の名前を明かすのが常識や。

『当然本来こんなことはNGですし、押しつけがましいお願いになってしまうのは重々承知ではございますが、本人が少しでも元気になってくれるならばと思い、あなたにご相談に乗って頂ければ。とご連絡させて頂きました』というのも同様で、メールの差出人の名前すら知らない相手に、どうして、そんな複雑な相談をしようという気持ちになれるのか理解に苦しむ。

『私が今連絡をとっている携帯ですが、事務所に厳重に管理されているため、この事がばれてしまうとマネージャーとして大問題になってしまいます』というのもふざけた話や。

事務所に厳重に管理されているというのが本当なら、どんなバカな人間でも、そんな携帯で知られては困るような連絡などしない。

そういうのを防ぎたいのなら、個人的な携帯からすれば済むさかい、わざわざ、そう断る必要がない。

事ほどさように一から十まで不自然な話ばかりしとる。あんたが、おかしいと言われるのは、もっともや。

普通の大人なら、そう考える。しかし、このメールの相手は息子さんのような若年層、もしくは思慮の足らん人間をターゲットにしとるとしか思えん。

そのことを、お子さんに教えてあげたらどうやろうか。

「おまえは、そのメールの差出人にバカだと思われているんだぞ」と。

お子さんが『保険証を出して欲しい』と言ったのは、実際に連絡を取って、その相手がそう言うたからやろうが、そんな個人情報を聞き出すようなことは、どんなに親しい関係になってもあり得んことや。

そうする目的は一つ。その情報を知ることで相手は、お子さんを食い物にしようと考えているからに外ならん。そう教えてあげたらええ。

最後にもう一つ。

こういったメールがきた場合、その真偽を個人で調べる簡単な方法がある。

このようなメールは、ランダムに電話番号を入力して大量に送付されていると見て間違いないと思う。

つまり、お子さん以外でも受け取っている人が多いということや。

そうであるなら、ネットでも問題になっている可能性が高い。

このメールの冒頭部分『突然ご連絡差し上げて申し訳ありません』をYahoo!Japanなどのポータルサイトで検索してみる。

すると案の定、344万件もヒットした。その文面と同じような内容が書かれたページ(注1.巻末参考ページ参照)が存在していた。

もっとも、第1位のページを見てみると、その末尾には『kaori.0918.f@ezweb.ne.jpご連絡、お待ち申し上げております。香織』とあるが、お子さんのは『aya.h_c.509@ezweb.ne.jpご連絡、お待ち申し上げております。彩』になっているという違いはあるがな。

そのいずれのメールアドレスも現在は存在していないと言うとく。念のためハカセが送信してみたがサーバーが受信拒否しとるとのことやった。

こういう連中は次から次へとアドレスや送信名を作っては消すということを繰り返して、簡単には尻尾を出さんようや。

何をしたかったのかは良う分からんが、こういう胡散臭い真似は、すぐにそれと広まるさかい無駄に終わる可能性の方が高い。

実際、おかしいという苦情はあるが、今のところ具体的な被害情報はなさそうやしな。

今回のは、悪質な業者が絡んでいる可能性が大やが、最近の中高生の間では、似たようなメールを友人に送り付けて、相手がどんな反応をするか楽しんでいる「トラップメール」も流行っているというから気をつけることやと、お子さんに知らせてあげたらええ。

基本的に誰に送っているかも分からない、また自身の正体も明かさないようなメールは、すべて胡散臭いと判断して間違いないと。

正体を明かしたメールがあれば、一応検索サイトにかけてみて同様のものがないか調べることやと。

さすがに、ここまで説明すれば、お子さんも分かって貰えるものと思う。今後は同じようなメールには用心するはずや。


事例2.「生活保護通報」小野市条例案成立について

相談内容

本日(2月27日)、

▼<生活保護費>ギャンブル浪費を規制 兵庫・小野市が条例案
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130227-00000032-mai-pol

というのをヤフーのニュースで見てびっくりしました。

私は重度の糖尿病と診断され通院治療中で仕事につけないため生活に困り、数年前から生活保護を受けています。

私には、これといった趣味はなくパチンコが唯一の気晴らしになっています。

このニュースで生活保護受給者には、その気晴らしすら許されないのかと知り、愕然としています。

現在、私たち生活保護受給者に対する社会の目が厳しすぎると思います。

生活保護費が税金から出ていることは承知しています。私も健康な時、30年以上に渡って税金を払い続けていましたから無駄に使って欲しくないという気持ちはわかります。

しかし、私は働きたくても働けないのです。なにも好きこのんで、こうなったわけではありません。できることなら生活保護から抜け出したいと思っています。

生活保護は国民に残された最後のセーフティネットのはずです。これでは、最後の頼みとしてすがる者は生きてはいけません。

今は一地方都市の条例にすぎませんが、世の中全体に同じような法律ができてしまえば私たちのように病気で働きたくても働けない人間は切り捨てられるでしょう。

私は、こんな法律ができれば抗議のために死を選ぼうかと真剣に考えています。

どうせ私の命は、この先長くはありませんので、そうすることで社会に一石を投じることができ、私と同じ苦しみを味わっている生活保護者を少しでも救えるのなら、まんざら犬死にでもないと考えています。

それとも他に何かいい方法があれば教えてください。

こんな相談など、どこにすればいいのか皆目わからず途方にくれていたところネットで貴兄のページを知りました。

過去にもいろいろな相談に乗っておられ的確なアドバイスをされているのを見て最後の希望と考え相談することにしました。

ご迷惑な相談かも知れませんが宜しくお願い申し上げます。


回答者 ゲン


『こんな法律ができれば抗議のために死を選ぼうかと真剣に考えています』というのは、穏やかやないな。

『どうせ私の命は、この先長くはありませんので、そうすることで社会に一石を投じることができ、私と同じ苦しみを味わっている生活保護者を少しでも救えるのなら、まんざら犬死にでもないと考えています』と思い詰める気持ちは理解できんではないが、ここは冷静になって、もう一度考え直されることを勧める。

何も死を選ばずとも社会に一石を投じる方法は他にいくらでもあるさかいな。

また、あんたの抱えている苦境を和らげる具体的な方策も同様にいくらでもある。

その手段をこれから話す。

その前に、あんたから指摘のあったニュース記事を先に示しておく。


http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130227-00000032-mai-pol より引用

<生活保護費>ギャンブル浪費を規制 兵庫・小野市が条例案


 兵庫県小野市は27日、生活保護費や児童扶養手当をパチンコなどで浪費することを禁じ、そうした受給者の情報提供を市民に求める「福祉給付制度適正化条例案」を市議会に提案した。

 受給者のギャンブルについては明確な規定がなく、蓬莱(ほうらい)務市長は「自立の妨げになるギャンブルなどに費やすことは規制しなければならない」と話しているが、受給自粛を懸念する声も出ている。

 条例案は3月27日に可決される見通しで、市は4月1日からの施行を目指している。

 条例案は、不正受給の疑いやパチンコ、競輪、競馬、賭博などへの浪費で生活に常習的に支障が生じている受給者について通報することを「市民の責務」と規定。

 市民からの情報を基に元警察官の「適正化推進員」が調査し、状況に応じて市が指導する。市民には、ギャンブルだけでなく、受給から漏れて困窮状態にある要保護者の通報も求めている。

 同市は人口約5万人で、先月の受給世帯は生活保護費120世帯、児童扶養手当420世帯。市の担当者は「生活に支障が出る常習的な浪費は把握していない。浪費防止の条例案だ」と説明している。厚生労働省によると、生活保護受給者は車所有や預貯金など資産保有が制限されているが、「使途規制の条例化は聞いたことがない」としている。

 公的扶助に詳しい道中隆・関西国際大教授(社会保障論)は「誰が受給者なのか判別できず、通報の有効性は疑わしい。一方、多数の目による監視を促しているので困窮者の受給自粛も予想され、命に関わる重大な結果につながりかねない」と話している。


というものや。

当然のように、これについては賛否両論が渦巻いている。

その関連記事もある。


http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130225-00000003-jct-soci より引用

小野市の「生活保護でギャンブル禁止」条例 「なんて素晴らしい」「監視社会化が進む」の賛否両論


「なんて素晴らしい条例なんだ……小野市やるな!!! 」、「生活保護バッシングの再燃、監視社会化が進む危険が!」

 兵庫県の小さな町で生まれる条例案をめぐり、ネットの声は賛否両論、真っ二つに割れている。

 議論の的となっているのは、小野市が市議会に提出予定の「小野市生活給付制度適正化条例」だ。生活保護受給者がパチンコなどのギャンブルで浪費することを明文的に「禁止」する珍しい内容で、さらにそうした人を見つけた市民には市への「通報」も求める。

 ■パチンコ・競艇・競馬などでの浪費を「禁止」

 2012年4月のいわゆる「ナマポ河本問題」以来、生活保護受給者による「ムダ遣い」に対して、世間から厳しい目が注がれている。特に槍玉に挙げられやすいのがパチンコなどのギャンブルで、たびたびメディアを騒がせたほか、国会質問の俎上にまで上がった。

 一方で法律上、生活保護費の使途は限定されておらず、「法の趣旨上望ましくない」(厚生労働省)とされるものの、事実上「野放し」に近い状態だった。

 さて、そんな中で登場した小野市の条例案とはどんなものなのか。問題の第3条第1項にはこうある。

「受給者は、偽りその他不正な手段を用いて金銭給付を受けてはならないとともに、給付された金銭を、パチンコ、競輪、競馬その他の遊技、遊興、賭博等に費消し、その後の生活の維持、安定向上を図ることができなくなるような事態を招いてはならない(後略)」

 罰則があるわけではなく、「一度そういうことがあったからと言って、給付を止めるということは考えていない」(小野市)とはいえ、受給者のパチンコを始めとするギャンブルによる浪費を、「受給者の責務」として明確に禁じている。

 また小野市によればギャンブルのみならず、極端な飲酒や買い物などにも、この規定が適用される予定だという。

 そして、もうひとつも議論を呼んだ、「市民の責務」を定めた第5条第3項だ。

「市民及び地域社会の構成員は、受給者に係る偽りその他不正な手段による受給に関する疑い又は給付された金銭をパチンコ、競輪、競馬そのほかの遊技、遊興、賭博等に費消してしまい、その後の生活の維持、安定向上を図ることに支障が生じる状況を常習的に引き起こしていると認めるときは、速やかに市にその情報を提供するものとする」

 この条例案の内容が報じられると、反響は大きかった。生活保護自体に批判的な人が多い2ちゃんねるやツイッターなどでは、支給の厳格化を目指すものと受け止められ賞賛の声が強かったが、識者からは第5条第3項を問題視し、「監視社会を招く」と懸念する声も上がった。

■「これに代わるものがあるなら、具体的に出してほしい」

 しかしこれらの批判に、小野市の担当者は反論する。

 同市の場合、生活保護受給問題が相当深刻なのかと思われるが、実際の受給者数は人口5万人中149人(0.29%)と県内2位の少なさで、全国平均(1.38%)も大きく下回る。また不正受給の例もごく少数だという。ではなぜあえて条例案制定に踏み切ったかのか。

「社会保障費の負担が次の世代、さらに次の世代にまでのしかかる中、市としての姿勢を明らかにしたい、自らの襟を正したいという思いがあった。

 またこうした義務指針を公にすることで、『小野市の生活保護受給者は不正をするような人たちではない』と知らしめたかった」

「監視強化」の方策というよりは、小野市としての理念を示すという性格が強いようだ。

 現状でも、11年度には不正受給に関して2件の市民から通報があるなど、生活実態を知る「身内」からの声を不正把握に活用してきた実績があると担当者は胸を張る。それを監視社会だといわれるのには心外なようだ。

「学者の方々の論評はありがたいご指導とは考えておりますが、私どもは私どもとして、対策と理念を示したつもりです。これに代わるものがあるなら、具体的に出してほしい」

 生活保護をめぐる実態を誰より目の当たりにしているだけに、担当者の丁寧な口調にも力がこもった。

 さらにあまり報じられていないが、「通報」を求めているのは不正やパチンコだけではない。

 第5条第2項では、苦しんでいる「要保護者」に気づいたら、こちらも速やかに通報することを求めている。

「条例がもし可決されれば、むしろ受給者は増えると思います」と担当者は語り、いわゆる「受給の厳格化」とは考えを異にしている様子だった。

「一過性の議論ではなく、本当の支援とは何かを考えていきたいと思っております」


と。

ワシは、この兵庫県小野市の『生活保護費や児童扶養手当をパチンコなどで浪費することを禁じ、そうした受給者の情報提供を市民に求める「福祉給付制度適正化条例案」』の条例制定には無理があると思う。

『パチンコ、競輪、競馬、賭博など浪費』が悪いと決めつけるのなら、社会からそれらを一掃することの方が先決やないかと考えるがな。

一般の賭け事などの博打に関しては違法としているが、『競輪、競馬』などの公営ギャンブルは、むしろ国を挙げて奨励しとるくらいや。

『パチンコ』も厳密に言えば一般博打に分類され法律違反になるが、国も警察も見て見ぬフリに徹して容認しとる。

麻薬と同じで依存度が強く人間に害があると言うのなら、その大元を根絶せんことにはなくならんと思うのやが、さすがに、そこまでは言及できんようや。

なぜなら、パチンコ業界からは多額の税金が支払われているからや。それ以外に理由は考えられん。

『競輪、競馬』などの公営ギャンブルを国が奨励するのも、そのためや。

つまり、『パチンコ、競輪、競馬』などをするこということは国に税金を払っているのと同じことになるわけや。とすれば、これらのギャンブルをするのは責められるようなことやないと思うがな。

税金で生活していても、積極的に税金として返還していると評価されてもええくらいやから、パチンコや公営ギャンブルに関しては逆に褒められてしかるべきやという気がする。

もっと言えば、日々の生活必需品のすべてに消費税が課せられとるわけやから、生活保護受給者も立派な納税者の一人ということになる。

しかも生活保護受給者は、貰った分の大半は生活費として消費しているわけやから、ほぼ確実に社会に還元しとると言える。

それで経済が回っているという部分もあるわけやさかいな。

『給付された金銭をパチンコ、競輪、競馬そのほかの遊技、遊興、賭博等に費消してしまい、その後の生活の維持、安定向上を図ることに支障が生じる』という心配は大きなお世話以外の何ものでもないと思う。

実際に、それで困窮して生活ができんという状況になったとして、行政は「それなら不足分を補填しましょう」となるのかと言えば絶対にそんなことにはならんわな。

それでメシが食えん状態になっても冷たく門前払いするはずや。自業自得ということで。

そうである以上、『その後の生活の維持、安定向上を図ることに支障が生じる』といった一見、生活保護受給者を気遣っているかのような文言は、まったくの偽善だということになる。

それに、過去において生活保護受給者が、ギャンブルのしすぎで生活が困窮してメシが食えなくて餓死したという話は聞いたこともないしな。

人間、そこまで愚かやないと思う。

反対に生活保護受給を受けられず、あるいは無理矢理支給を止められたことが原因で餓死したという事件ならあったがな。

今回の条例は、それらを助長することになると危惧する。

この条例は、誰がどう見ても生活保護受給者という弱者をいたぶるための法律としか思えん。

世の中の仕組みすべてに共通しとるが、不合理なことは下にいくほど押しつけられる運命にあると言える。

税金で生活が養われているという点で言えば、この法律を制定したがっている市長や市議会議員なども同じや。

その市長や市議会議員は世界最高水準の報酬を貰うとるのは周知の事実や。

まともに仕事をしとる者は、それでもまだマシやが、大半は何もしていない給料泥棒に傍からは見える。

おそらく、これについては国民の大半が、そう考えているものと思う。

その高すぎる議員報酬についての議論は殆どなされていないにもかかわらず、同じ税金を原資とする生活保護受給者を一方的に責める条例を作ろうとしとる。

そこには立場の強い者が弱い者をいじめるという構図しかない。

同じ税金を受け取っていても市長や市会議員たちは強者故に誰からも責められず、あろうことかその連中が弱者の代表でもある生活保護受給者をいたぶっている象徴的な条例が、これやと思う。

それよりもまず先に、市長や市会議員の報酬を限界まで見直して大幅な減給をするべきやないかと思う。自らの身を正してから事に当たるのが筋やと。

もっとも連中には、そんな考えなど毛頭ないのやろうがな。

市の関係者が『社会保障費の負担が次の世代、さらに次の世代にまでのしかかる中、市としての姿勢を明らかにしたい、自らの襟を正したいという思いがあった』と言うに及んでは、何かを況やである。

何度も言うが『自らの襟を正したい』のなら、今や国民の平均所得を遙かに超えた自分たち公務員の給料の減給に手を付けるのが先決やないのかと思う。

同じ税金でメシを食っているすべての人間が等しく、その行動を制限されなあかんと考えるが、そのことに言及する者は誰もいない。

それをせず良うも、そんな条例を作るとほざけたもんやと思う。言うても無駄やと知りつつ、この事を話しているだけで何か胸くそ悪くなる。

ワシが、この条例の中で最も胸くそ悪いのは、『通報することを「市民の責務」と規定』しとる点や。

通報とは密告のことや。密告することを『責務に規定する』とは何事やねんと思う。

ワシは誰が何と言おうと、これについては断固として反対する。自由主義、民主主義国家で何人といえども自由が束縛されてはならない。

ワシらは過去、『第48回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■共謀罪について』(注2.巻末参考ページ参照)でシリーズ化して監視社会になるような法律を阻止するために発言し続けてきた。

今回の条例が制定され、他の自治体もそれに呼応するようになると本当に日本の社会が監視社会になりかねん。

どんなに、今はそんなことはないと言うてても法律というのは一旦作られてしまうと必ず拡大解釈が行われるものと相場が決まっとる。

罰則に関しても、今は設けられていなくても、そのうち人知れず勝手に付随されるようになる。過去の幾多の法律がそうやったように。

密告が義務化された社会では、周りの人間が誰も信じられなくなり、世の中に疑心暗鬼が渦巻くのは確実やと思う。

前置きの説明が長くなったが、あんたへのアドバイスとしては上記のことを知って貰った上でないと理解して頂けないかも知れんと考えたから、そうさせて貰うたわけや。

冒頭で『何も死を選ばずとも方法はいくらでもある』と言うたが、その方法をこれから伝える。

1.付き合う人間を限定する。

あんたは小野市の人やないから当面は関係ないやろうが、今後同じような条例が、そちらの地域でも作られんとも限らんさかい、あんたが生活保護受給者と知っている人との付き合いは、ほどほどにしといた方がええと言うとく。

そして、今後はなるべく誰にもそれと知られないように生活するよう心がけることやと。

どんなに不条理で納得できん条例、法律が制定されようと、決ってしまうものは仕方ない。そう考えて早めに手を打っておくことや。

『通報することを「市民の責務」と規定』したとしても、あんたが生活保護受給者やということを知られん限り、その心配はあまりせんでも大丈夫やと思う。

あんたが生活保護受給者ということは個人情報やから、普通は本人がそれとバラさん限り他人に知られるケースは少ない。

職務上、役所の生活保護課の職員にその情報を明かすことはできんとされとる。

もっとも、それは上辺のことやから、実際どうなのかというのは分からんが、それにしても役所の広報などで一般に生活保護受給者氏名の公開は許されとらんさかい大ぴらにそれと知られることはないと思う。

まあ、ここに通報が『市民の責務」と規定』することへの矛盾が生じるわけやがな。

いくら市民の職務と規定しても、肝心のその情報を公開できずに市民に生活保護受給者の存在が分からんのではどうしようもないさかいな。絵に描いた餅でしかない。

そう考えれば、それほど神経質になることもないやろうと思う。

また、あんたを生活保護受給者と知っている人の前では「こんな法律ができては仕方ないからパチンコを止める」とでも言うとくことや。

そして、それ以降の付き合いは極力なくすようにする。

大半の人は、こんな法律ができても、密告するような心の貧しい人間は少ないとは思うが、信用してええとも言えん。

数が少なくても密告好きな人間も世の中にはいとるさかいな。

密告社会になると予想される場合は、自身を守るためにも、なるべく知られて損な情報は表には出さんことや。そのためには人との付き合いも限定的にならざるを得ない。

そう心がけることが、自分の身を守る最善の方法やと思う。まったく嫌な世の中になりつつあると言うしかない。

2.『私には、これといった趣味はなくパチンコが唯一の気晴らしになっています』というのが、どの程度か分からんが、楽しむ程度なら、その条例が制定されても問題はなさそうや。

しかし、一々そのことを根掘り葉掘り聞かれたんでは、うっとうしくてやりきれんわな。

気の弱い人なら、それだけで精神を病みかねん。また好きなパチンコを強制的に止めさせられることへの精神的なストレスから病気にならんとも限らん。

そんなことになるくらいならなら、あんたの住んでおられる地域にもよるが、電車やバスで離れた場所にあるパチンコ屋にでも行かれて楽しまれるという方法もある。

どうされるかは、あんたの判断に任せるが。

3.周りに、あんたが生活保護受給者やと知っている人が多くて安心できんという場合は、思い切って同一地域内の別の場所に引っ越すという手もある。

もっとも、引っ越すには引っ越すだけの理由がないとあかんのかも知れんがな。

あんたは『重度の糖尿病』とのことやが、それならかなり大きな病院に通院されておられるのやないかと思う。

その病院は、あんたの住んでおられるすぐ近くにあるのやろうか。

もし、電車、バスで通院せなあかん場所にあるのなら、「通院するのが辛い」ということで、その病院の近くに住居を移せるのやないかと考えるがな。

現在と同等の条件の物件なら、生活保護課でもあかんとは言わんのやないかな。

新しい場所で一から生活を始め、そこでは生活保護受給者やということを隠し通せば、少なくとも今抱えている不安から逃れることはできそうや。

4.あんたの思いを訴える。

あんたは、ちゃんとした文面を書かれる人のようやから、その文章力を活かして、生活保護受給者の立場を訴えるブログでも立ち上げられたらどうやろうか。

あるいは、サイトの『ゲンさんのちょっと聞いてんか』(注3.巻末参考ページ参照)に投稿されるのでもええと思う。

ここには、いろんな人が自身の思いの丈を寄せられとる。その気があるのなら、いつでも歓迎する。

他にも考えれば、まだいろいろあるが、今回はこのくらいにしとく。上記の方法のいずれかを採用されて行き詰まるようなことでもあれば、また相談してくれたらええ。

最後に、一つ。どんなに最悪な状況が生まれようと、方法は必ずある。そう信じて生きることや。安易に死を選ぶべきやないと再度、念を押しとく。

どんなに美化しようと自ら死を選ぶというのは人生の負けを意味するものと知って欲しい。


今回は、以上や。

ワシが冒頭で難しい回答になると言うた意味が分かって貰えたのやないかと思う。

特に『事例2「生活保護通報」小野市条例案成立について』での回答は、あれで良かったのやろうかと思わんでもない。

相談者のために答えるという趣旨やったから、条例に批判的なことばかり並べたが、生活保護の不正受給の実態を他の読者からの情報で知っていたさかい、複雑な思いもある。

生活保護受給者、およびそれを利用する悪質な人間も存在するのも確かやから、今回のような条例は別にしても、生活保護費に群がる悪質な輩を何とかせなあかんと考えとる。

それらについては、後日話すこともあると言うとく。



参考ページ

注1.これって迷惑メールですか?

注2.第48回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■共謀罪につい

注3.ゲンさんのちょっと聞いてんか


読後感想 市民への通報義務化は、手段として間違いと考えます

投稿者 Sさん  投稿日時 2013. 3.29 AM 9:25


今回のメルマガは、特に小野市の条例について
まったくその通りと考えます。

市民への通報義務化は、手段として間違いと考えます。

さて、条例の目的はパチンコなどを避ける。これは反論があるかも。

ネットの世界では、怨嗟が強く、難しい問題です。


読後感想 小野市の条例について 

投稿者 Mさん 奈良市在住  投稿日時 2013. 4. 9 AM 3:51


ゲンさん、ハカセさん、今日は。

3/29のメルマガ、拝見しました。小野市の通報条例、撤廃すべきと思います。

それは密告を奨励しているからです。

生活保護費でパチンコをやるのがどうか、という疑問は、福祉分野に限らず、公的資金は用途限定であるべきか、受け取った側の裁量に任せるべきか、というもっと広い問題に至る話のように思います。

以前、京都府の「私のしごと館」に批判的な意見を送ったこともありましたが、それは用途限定の財布、すなわち失業者救済の目的で創設された「雇用保険」という予算枠で、箱物作りが倫理的に許されるのかどうか、疑問を感じた為であります。

しかし、用途限定vs自由裁量の問題は、例えは変ですが、阪神ファンと巨人ファンの対立に似て、所詮、到達点のない話です。であれば少なくとも、普通の市民に密告を義務化する発想は出ないはずです。

でありながら、一方が他方を、公的ルートで正義派の仮面を被って圧倒する、というのは、保守派の好きな表現を用いるならば、自由と放縦の混同です。

最近のことではありませんが、今時の若者が我慢とか忍耐とかの美徳を忘れた、
と批判されて久しくなります。しかし当時の若者も、社会的な意思決定の中枢に登りました。

その中、自分の好き嫌いを客観的な我慢・忍耐に優先し、社会を勝手に巻き込む、という偏狭な態度が、仕事熱心や高邁な正義感として好意的に解釈されているのではないでしょうか。公務の世界は知らないので、勝手な空想ですが。

以上です。


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