メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー

第252回 ゲンさんの新聞業界裏話


発行日 2013. 4. 5


■その時々の政府が悪法、秘密保全法案に拘る理由とは


ホンマにしつこい。またぞろ『秘密保全法案』が国会に提出されようとしとる。

これに関しては大半の新聞が批判的な記事を載せとる。取材規制につながり、国民の「知る権利」が疎外されるという理由で。

最近の新聞報道に対しては首を傾げることの多いワシらも、これに関しては同意見や。支持する。

今までは、かろうじて世論の反対で法案の成立を阻止することができたが、今回もそうなるとは限らん。

過去、手を変え品を変え、名前を変えてまで類似した『共謀罪』、『国家機密法』、『スパイ防止法』などの法案が提出されてきたが、今回の『秘密保全法案』に関しては、前民主党政権当時と同じく、その名称が使われ、法制化されようとしている。

なぜなのか。

理由はいろいろあるが、『国家権力による情報統制』をしたいというのが最大の狙いやと思う。それ以外には考えられん。

表向きは国家公務員の情報漏洩を防ぐという建前にしておけば、如何にも限定的な法律という印象を与えることができると踏んで。

とにかく、『秘密保全法』という名称の法律さえ成立させてしまえば、後で徐々に拡大解釈することができると考えとるわけや。

数多くの法律が、そうであったように。

それにより国民には何も知らせずとも済む『秘密主義国家』を作り上げるつもりやと思う。

民主主義国家で、そんなことが許されるはずはないが、その第一歩として、現在の『秘密保全法案』を何とかゴリ押してでも法制化しようと、やっきになっているわけや。

まるで、どこかの共産主義国家のように、日本を変えたい連中がいるのやろうな。

為政者にとっての夢の法律になると考えて。

その法律を作ろうとしているのは表向き、時の総理や政府与党の国会議員ということになっとるが、実際には各省庁の高級エリート官僚たちが、その法案を作成しとる。

その時々の総理や政府与党の国会議員たちを操って。

その証拠ならある。

先月の3月31日、次のような報道があった。 


http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130331-00000060-mai-pol より引用

<秘密保全法案>政府、秋の臨時国会に提出方針


 政府は31日、外交や公共の安全などに関する機密情報を漏えいした公務員を処罰する秘密保全法案を今秋の臨時国会に提出する方針を固めた。

 民主党政権は法案の国会提出を見送ったが、安倍政権は外交・安全保障政策の司令塔と位置づける国家安全保障会議(日本版NSC)の新設もにらみ厳格な情報保全措置が必要と判断した。

【安保法制懇】集団的自衛権、地ならし…公明慎重、出口見えず

 政府の有識者会議は、日本版NSCを外務、防衛両省などが収集した情報を分析し、政策立案する機関と位置付け、制度設計を進めている。

 3月29日の会合では政府に情報保全の徹底を求める意見があり、礒崎陽輔(いそざき・ようすけ)首相補佐官が「(日本版NSC設置法案とは別に)法律を制定する方向で検討している」と説明した。

 秘密保全法案をめぐっては沖縄県・尖閣諸島沖で2010年9月に起きた中国漁船衝突事件のビデオ映像が流出したのをきっかけに、民主党政権が議論を開始。

「国の安全」「外交」「公共の安全及び秩序の維持」の3分野から国が「特別秘密」にあたると判断した事項を指定し、漏えいした公務員らに最高で懲役10年の罰則を科すことを検討した。

 しかしメディアの取材規制につながり、国民の「知る権利」を侵害するとの批判が強く、法案化に至らなかった。

 政府は名称を「特定秘密保全法案」とし、民主党案の骨格を踏まえて検討する考えだが、どの範囲の情報を処罰対象とするかなど課題は多く、法案化には時間がかかる見通しだ。


この記事と、今から1年半前の2010年10月6日に報道された記事とを見比べると奇妙なくらいの類似点が見られる。


http://www.asahi.com/politics/jiji/JJT201110070001.html より引用

秘密保全法、通常国会提出へ=漏えいに最高懲役10年検討


 政府は6日、外交や治安などに関する国家機密を公務員が漏えいした場合の罰則強化を柱とする「秘密保全法案」(仮称)を来年1月召集の通常国会に提出する方針を固めた。

 7日に「情報保全に関する検討委員会」(委員長・藤村修官房長官)を開き、法制化を急ぐ方針を確認する。機密情報の管理徹底や米国など関係国との信頼確保が狙いだ。

 ただ、同法案は国民の知る権利や報道の自由、情報公開を制限しかねないだけに、与野党から異論が出る可能性もある。

 同法案は、(1)防衛など「国の安全」(2)外交(3)公共の安全・秩序の維持―の3分野を対象に、「国の存立に重要な情報」を新たに「特別秘密」と指定。

 特別秘密を取り扱う公務員が故意に漏えいした場合の罰則について、最高で懲役5年か10年とする方向だ。 


先の報道は、現自民党政権下で、後者は民主党政権下でのものや。

本来、反目しているはずのまったく主義主張の違う両政党が、なぜかこの法案に関してだけは、その細部に至るまで、あまりにも似通った内容のものになっている。

『秘密保全法案』という名前もそうやが、特に『特別秘密を取り扱う公務員が故意に漏えいした場合の罰則について、最高で懲役5年か10年とする方向』については、民主党政府時のものと同じで、殆ど手が加えられることもなく、そのままの法案が、現自民党政府から提出されようとしとるわけや。

『政府の有識者会議』で議論されたことが、そのベースになっているとしているが、実際には、例によって御用学者ばかりを集め官僚主導で結論づけられたものや。

「有識者の検討」とは名ばかりで、官僚に都合のええ結論を導き出して作成された報告書や。

その法案の起草も、それに携わった官僚が書いたものと見て、まず間違いないと思う。

極度に類似した内容、名称までまったく同じ法案が、異なる民主党政府、自民党政府の両方で作成されたというのは、どう見ても同じ官僚主導で行われているとしか考えられんさかいな。

法案では表向き、それぞれの事案を所管する大臣が個別に「特別秘密」を指定するということになっとるが、実際は違うはずや。

大臣というのは1、2年の間、その地位を保持できれば長い方で、たいていは数ヶ月程度の短期間で変わることの方が多い。

1年のうちに何度もころころと大臣が変わるというケースは日本では普通にあるさかいな。

また、所管の省庁やその仕事、役割について何の知識もない素人同然の大臣が就任することも、この国ではそれほど珍しくない。

言い方は悪いかも知れんが、単なる「お飾り大臣」にすぎんと思う。そんな状態で職務など遂行できるわけがない。

勢い、いつの時代にも不変であり続ける官僚任せにするしかなくなる。頼らざるを得ないわけや。

そのため官僚たちは政治家をいいように扱い、好き勝手に「特別秘密」の指定ができると踏んでいると見て間違いない。

ごく稀に、小沢一郎氏のように、好き勝手な官僚たちに待ったをかけようとする有力な政治家が現れると、ありとあらゆる手を使い、その力を削ぎ貶めようとする。

その典型的な事案が、検察と結託してでっち上げた「越山会虚偽記載事件」やと思う。

初めから小沢一郎氏が無罪になるのを承知していて、その時、その評判を貶めて要職から追放、政治生命を奪う目的のためだけに、官僚たちが総力を挙げて画策したわけや。

それについては、このメルマガ誌上で幾度となく話してきたから、ここでの言及は控えさせて貰う。

ただ、その後、驚くべき新たな情報を入手したことでもあり、精査した上で近いうちに話すこともあるやろうと思う。

如何に、悪辣で破廉恥な手段を用いてやっていたかを。

『秘密保全法案』の趣旨は、国の安全、外交、公共の秩序維持に関わる情報のうち、「国の存立にとって重要な情報」を新たに特別秘密に指定し、それを扱う公務員や民間人(業務委託先)の適性評価制度を導入するものやという。

業務委託先で働く民間人自身やその家族、その友人に至るまで身辺調査をし、情報を漏洩した人、および漏洩の共謀や扇動した人までを厳罰に処するという内容になっている。

ここでもう分かったと思うが『その友人に至るまで身辺調査』という時点で、すでに際限のない拡大解釈によって取り締まることができるように画策されとるわけや。

その範囲など、いくらでも膨らませることができるさかいな。友達の友達は、みな友達と見なしさえすれば、極端な話、誰でもその法律を適用することができるわけや。

さらに問題になるのは、「国の存立にとって重要な情報」の範囲が何なのかが、具体的に示されていない点や。

曖昧なまま、取り敢えず「公務員」を対象にするということにしておけば、今までのような反対はされず、比較的スムーズに法案が成立するやろうと考えとるフシがある。

民間人(業務委託先)の適性評価制度にまでは批判の対象にはならないやろうと。誰もそれがトラップ(罠)やとは気づかないやろうと。

法案に『新たに特別秘密に指定し、それを扱う公務員や民間人(業務委託先)の適性評価制度(本人・家族・友人などの身辺調査)を導入し、その情報を漏洩した人、および漏洩の共謀や扇動した人を厳罰に処する』というくだりがあるが、本当に『公務員』のみを対象にするのなら、『民間人(業務委託先)』を付け加える必要はないはずや。

一見、『公務員や民間人(業務委託先)』とすることで、同じ枠内の人間のみと限定させているかのように思わせているが、実際は違う。

正しくは『公務員や民間人(業務委託先)』とは、『国民すべて』にかかるものになるということや。真の狙いはそこにある。

そもそも、漏洩してはいけない情報なら、それを扱う公務員を厳しく教育して管理すれば済む話やと思う。

また漏洩したら困るような情報を、外部の民間に業務委託することの方が間違っていると考えるがな。

情報管理の基本は、秘密裏に情報を共有することにあるとされている。

故事にも『事は密なるを以て成る』というのがある。

秘密にしたい事があれば、信頼のおける者以外とは情報の共有をしないということに徹すればええだけの話やと思うがな。

賢い官僚たちやから、その程度のことは疾うに分かっとるはずや。

本当の目的は、そこにはないからこそ、『秘密保全法』の成立に拘っているというのが正しい見方やと思う。

どんな形であれ『秘密保全法』という名称の法律を作りたいのが本音やと。

その一心で、賢い官僚たちが長年に渡り、『共謀罪』、『国家機密法』、『スパイ防止法』などいった名称の変更を続けながら、一貫して同類の法案を作り続けとるわけやさかいな。

おそらく、いつものように『霞ヶ関文学』と呼ばれている官僚独特のどうとでも言い繕える条文にするはずや。

そして、それに気づいた時は、たいていの場合、その法律が通ってしもうた後というケースが多い。

まあ、日本の官僚にとって現在の政治家はアホの集まりとしか考えらんから、そうされても誰も指摘すらできんのやろうがな。

しかし、世の中は、それほど甘くはない。明らかな悪法は穴も大きく、それを見つけ警鐘を鳴らす人間も多い。

確かに官僚たちは賢い人間の集まりやが、世の中には、それ以上の人物、識者はいくらでもいる。

特にネット上で、それを発信する識者の数は官僚たちをはるかに凌ぐ。

今までは、そういった識者たちの警鐘で事なきを得てきた。ワシらも及ばずながら、その末席から叫んどるわけやけどな。

今一度、はっきり言う。日本に『秘密保全法』などというものは必要ないと。

そもそも『秘密保全法』がなくても、今回の目的とされとる公務員の秘密漏洩に関する法律と罰則はすでに現行法でも「守秘義務」として、きちんとした形で存在しとるわけや。

自衛隊法、刑事特別法、MDA秘密保護法、国家公務員法などのすべてに「守秘義務」があり、それらの法律で実刑判決も科せられとるさかい、今のままでも十分機能していると見てええ。

具体的には、その守秘義務について、国家公務員法の第100条に、『公職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする』という条文がある。

これに違反すると、『1年未満の懲役又は50万円以下の罰金に処せられる』とある。

地方公務員法でも、その第34条に、国家公務員法の第100条とまったく同じ内容の条文がある。

こちらの罰則は、『1年未満の懲役又は3万円以下の罰金に処せられる』とあり、国家公務員法より罰金面で軽めではあるが、懲役刑に関しては同じや。

独立行政法人通則法の第54条でも、上記の内容とほぼ同じ条文が記載されとる。

これの罰則は、国家公務員法の第100条と同じ『1年未満の懲役又は50万円以下の罰金に処せられる』ということになっとる。

この他にも国立大学法人法の第18条にも国家公務員法の第100条と同じ条文、同じ罰則規定がある。

上記は公務員、もしくはそれに準じる者への守秘義務やが、民間においても同じように厳格に決められている。

良く知られている医師や弁護士などの守秘義務については、刑法第134条1項で、『医師、歯科医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する』というのがある。

この刑法第134条の2項には『宗教、祈祷若しくは祭祀の職にある者又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときも、前項と同様とする』という規定がある。

これらの他にも守秘義務に関する法律には、弁護士法第23条、司法書士法 第24条、郵便法第8条、電気通信事業法第4条、電波法第59条、探偵業適正化法第10条、保健師助産師看護師法第42条、技術士法第45条などに、それぞれの規定がある。

つまり、「秘密保全法」に関しては、その法律が何もないから作るというのとは違うということや。

現在でも、それに対して機能する法律が立派にあるわけで、今更、取り立てて作る必要などないと思う。

罰則にしても軽いのならば、それぞれの法律で厳罰化すれば済む話や。

それやのに、なぜ敢えて反対される可能性の高い『秘密保全法』の成立に拘り続けるのか。

その狙いは一つしかない。

それは先にも言うたように、国家による情報統制を目論(もくろ)んどるからに外ならんということや。

それでは日本人が嫌う北の国、あるいは批判の対象になっている情報統制に徹した共産主義国家と何ら変わりがなくなる。

この法律の制定は、日本をそのレベルの国に引き下げようとしていると言うても過言やないと考える。危険極まりない悪法やと。

問題はまだある。

政府が特別秘密に指定した場合、それが適切かどうかについて、第三者機関による審査もされなければ、それにより被害を受けた国民が裁判所への訴えすら起こせんという点や。

それらの事実も当然のように情報統制されるわけやから、被害を受けた国民すら存在しないことにされかねん。

そのすべてを特別秘密指定とすることで隠蔽できてしまうわけやさかいな。

いや、隠蔽という言葉自体が、この法律の成立により死語と化すかも知れん。

その上、過失や教唆も厳罰に処することにより、権力による報道機関や市民運動の監視が行われるのは、ほぼ間違いないやろうと思われる。

必然的に、そこでどんなに悪辣なことが行われていようと内部告発など絶対にできん仕組みが構築される。

国家権力側の不祥事の隠蔽が、今よりさらに進むのは確実やと思う。

現在、不十分ながらも情報公開法というのがあるが、それすらも、この法律の成立により意味のないものになってしまいかねん。

特別秘密指定になっていると言い出しさえすれば、情報公開法による開示請求など一蹴できるわけやさかいな。

まあ、それもこの法律の狙いの一つとは思うがな。

事ほどさように悪法の極みでもある『秘密保全法』など絶対に成立させてはならんと考える。

情報統制された暗黒社会に住むなど、ごめん被りたいさかいな。

そのためにも今後も、この法律の動向に関して注意深く監視を続け、警告を発していくつもりや。

一人でも、その危険に気づいて貰うために。


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