メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー

第266回 ゲンさんの新聞業界裏話

発行日 2013. 7.12


■Q&A回答者としての心得について


先日、ある常連の読者の方から、


ゲンさん、ハカセさん、ご無沙汰しております。

といっても、いつもHPやメルマガを拝見していますので、あまり離れているという感覚はありません。

ところで、ゲンさんのQ&Aでの回答には、いつも「へぇー」、「なるほど」と感心して納得させられてばかりいるのですが、どうしてあそこまで自信を持って的確に相談者の質問に答えることができるのか、もしよろしければその点について教えていただけないでしょうか。

何か秘訣のようなものがあるのでしたら勉強したいです。

お二人の能力が、飛び抜けているのは重々承知しているのですが、それだけではないような気もしますので。

急ぎませんので、よろしくお願い致します。


というメールがハカセのもとに送られてきた。

「どう思われます?」と、ハカセ。

「どうと言われてもな……」

『どうしてあそこまで自信を持って的確に相談者の質問に答えることができるのか』というのは、ワシは知っている事、自信のある事しか話さんし、ワシの言うたことの裏はハカセがこまめに調べて瑕疵を少なくしとるさかい、そう感じられるのやろうな。

確かにワシらなりのルールや心がけている点があるにはあるが、それはQ&Aの回答者なら当たり前のことをやっているにすぎんと考えるがな。

普段、こういうことには、あまり触れることはないのやが、せっかくやから、今回はワシらなりのQ&A回答者としての心得について話そうと思う。

人から何らかの相談を受けた場合の参考にでもして貰えたらええ。


Q&A回答者としての心得について


1.回答できる範囲を限定する。

ワシらの場合なら、『新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A』と銘打っているのが、それや。

こうしておけば、新聞の勧誘問題が中心やなというのが分かるさかい、質問する方でも必然的に、それに沿った限定的なものになりやすい。

また、それ以外の良う分からん、答えにくい質問の場合であれば、「それは専門外やから」と言うて逃げを打てるしな。


2.知ったかぶりはしない。

『新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A』と銘打っていても、答えられんこともある。

そんなときは正直に「それについては良う知らん」と言う。質問に対しては、知っている事、自信のある事についてのみ答えるよう心がける。

無理に知ったかぶりをして回答すると墓穴を掘る場合が、ままあるさかいな。

知らんことは知らんと言う勇気も必要や。それが格好悪いとか、恥ずかしいと考える必要はない。

どんな専門分野の専門家であっても、そのすべてを知っているという人の方が圧倒的に少ないもんやさかいな。

例えば、医者がすべての病気のすべての治療法を知っていることもないやろうし、弁護士がすべての法律を知っているわけでもないと考えるしな。

知らんことは知らんと言う方が、知ったかぶりして、ええかげんな回答をする者より数段マシやと思う。


3.知らんことは知っている者に尋ねる。

Q&Aをしていると、答えなあかん、答えてあげたいという場面が必ずある。

知らんからと逃げれば良さそうなもんやが、相談者の窮状により、そうも言うてられん場合が往々にしてある。

そんなときは、そのことについて詳しく知っている人の助言を仰ぐ。

新聞の勧誘問題でも法律の関わる相談が多い。そんなときは、それの得意な法律家に訊くわけや。

ワシらの場合は、幸いにもサイトの開設当初から、今村英治氏という法律家の先生が、好意的に顧問として色々助言して頂いているので助かっとるがな。

これは、それを訊くことで相談者に答えられるだけやなく、サイトの信用を上げる意味において絶大な効果がある。

さらに、分からん事を訊くことで知識も増える。

おかげで、事新聞勧誘に関した法律であれば専門の法律家に負けんくらいの知識を有することができたと自信持てるまでになった。

まさに一石二鳥や。その知識で、さらに回答の幅も広がるしな。


4.事の是非を見極める。

相談者は「自身がいかに困っているか」、「いかに迷惑を被っているか」という点を強調しがちやが、必ずしもその言い分が正しいとは限らない。

相談者に落ち度や勘違いがあるケースも多々ある。それを見極めて苦言を呈すべきと判断すれば、そうする。

人は誰しも悪く思われたくないという意識から、つい迎合したくなるもんやが、間違っても、それをしたらあかん。

本当にその相談者のことを思い、役に立ちたいのやったら、例え嫌われようと苦言を呈するべきやと思う。

もっとも、それをして離れていく人もおるがな。それは仕方ない。


5.分かりやすく説明する。

これはQ&Aに限らず、サイト全体、メルマガ全般に心がけとることやとハカセは言う。

例えば業界用語などを使う場合でも、くどくならない範囲で相談者と読者に分かるように説明するのやと。

ハカセは書き上げるとワシはもちろんやが、奥さんにも見せるという。ハカセ曰く、奥さんはどちらかと言うと、普段あまり本を読むこともなく文才にも欠けるとのことや。

その奥さんに分からないような文章ではあかんということらしい。

まあ、ハカセのような人間から見ればそうかも知れんが、ワシはごく普通の常識のある一般女性やと思うがな。

もっとも、その普通の常識のある一般女性に分からんような文章、説明ではあかんわな。

サイトの回答文は相談者のためと、読者のため、さらには何かで困って検索でそのページに行き当たった人に、相談してみようかという気になって貰えるためのものにしたいとハカセは考えとるようや。


6.回答の一貫性を保つ。

似たような相談、質問に対しては、なるべく一貫した回答を心がける。

これは普段から、この質問に対してはこう答えるという姿勢を貫いていれば、それほど難しいことやないと思う。

これだけ長くQ&Aをやっていると、幾つかのパターンに分類されてくる。

必然的に回答も同じものでなかったら、あかんということや。


7.引用を多用する。

詳しい説明をその相談の都度していると、ただでさえ長文の回答が、さらに長くなる。それを簡略化して分かりやすくするために引用を多用するわけや。

例えば、クーリング・オフの説明に関してなら『ゲンさんのお役立ち情報 その8 クーリング・オフについての情報』(注1.巻末参考ページ参照)を引用するといった具合やな。

こうしておけば回答の都度、その説明を書き込まんでも引用するだけで済むし、その方が相談者にも分かりやすいと思う。

回答によれば、いくつもの引用が必要になるので、この方法は結構重宝しとる。


8.必ず解決方法はあると信じる。

ワシは、どんな問題でも必ず解決方法はあると信じている。そう信じていると、不思議にその方法を思いつくし、閃いてもくる。

もちろん、それは過去の経験や事例の積み重ねがあるからこそやがな。

相談者の大半は、その解決策が分からず頼ってきとるのやから、ワシらが分からんと突き放せば途方にくれることになる。それはなるべくならしたくない。

反対に、「いくらでも方法はある」と言ってあげることで信頼して貰えるし、相談者の方に希望と勇気を与えられると信じている。


9.難しい相談でも逃げないで答える。

どんな問題でも必ず解決方法があるとは言うても、解決が難しい事案というのは存在する。一朝一夕にいかんことも多い。

『NO.137 近所の販売店での騒音で困っています』(注2.巻末参考ページ参照)
などが、その典型やと思う。

新聞販売店にとって近隣住民との早朝の騒音問題は永遠のテーマでもある。

新聞販売店にすれば仕事やから仕方ないという思いが働き、近隣住民にとっては安眠妨害で大変な迷惑やとなる。

双方の思いがぶつかると、当事者の性質、性格次第では、かなり大きな揉め事になりやすい。

これに関しては販売店側が「静かにする」というのは当たり前なんやが、問題はどの程度が静かで、どの程度までが騒がしいのかという線引きの難しさにある。

この相談では、全国の新聞販売店にその問題のアンケートを取ることで解決の道を探って、その方法を伝えた。

また、その延長で『第92回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■ゲンさんのトラブル解決法 Part 3  騒音トラブル』(注3.巻末参考ページ参照)で、その提言ができるまでに至った。

その部分を抜粋して紹介する。


新聞販売店に対しての住民の騒音対策


1.迷惑やという意思表示をその販売店にする。しかし、これは、現場の作業員に直接言うのは拙い。作業員からの反発を受ける場合があるからな。

その意思表示をするのなら、そこのトップにすることや。たいていの販売店ならそれで済むことの方が多い。

従業員に対して近所の住民に迷惑をかけるなと言うのが、普通や。


2.新聞社に苦情を言う。これも、たいていは「注意します」と言うはずや。

これで、効果ないとなれば、普通は言うてもあかんと思い二度と言わんようになる場合が多い。

しかし、これは、効果はなくとも二度、三度言う方がええ。実際に、その注意が現場まで伝わってないというケースもあるからな。

あっては、ならんことやが、新聞社から注意を受けた人間が、それを握りつぶしてたということが、実際の相談にあったからな。

これは、二度目に同じ苦情を新聞社に言うたことで分かったという。その相談者の苦情を伝えた新聞社の担当者が不審に思い、直接、経営者に連絡したことでそれが分かった。

販売店の規模が大きければ大きいほど、そういう傾向があるようや。


3.よほどの場合は、役所や警察などの公共機関に相談や通報をする。その際、具体的な被害状況が示せるようにしとく。

被害者宅や周辺からのビデオ撮影というのも、その証拠になり得る場合もある。

但し、その際、役所には繰り返しの相談、通報は2.と同じで効果的な場合があるが、警察への通報は慎重にしといた方が無難やと思う。

新聞販売店のそれは、暴走族辺りが騒いどるのとはわけが違うから、よほど酷いと客観的に思える程度でないと、何度もというのは控えた方がええ。

場合によれば、逆効果になるおそれも考えられる。

警察は、あきらかな違法行為しか取り締まることができんというのが原則やと認識しとく必要がある。

深夜の新聞販売店の営業行為というのは、ある程度まで仕方ないという、暗黙の了解のようなものが世間一般にある。また、そう思われとる。

それを騒音と認定するのは、かなり厳しい条件、状況が必要になるということや。

1度目は、警察も出向いた手前、注意はするやろうが、それにしても「深夜やから、ちょっとは考えたって」という程度のもんや。それ以上、警察に要求するのは無理があるということになる。


4.近所で同じような苦情を持つ人間を募り、なるべく複数で苦情を言う。これは結構、効果的や。

同じように迷惑やと考える人間がいるとなると心強いもんや。販売店側も複数やと無視もできんやろうしな。

但し、こういう相談をされて来られる方は、日頃から近所との付き合いというのが、あまりされとらんというケースが多いようや。

近所と普段からそういう付き合いが密やと、すぐ団体で行動を起こすという発想をするやろうから、ワシらのところまで相談するというのは少ない。


5.地域の有力者に相談する。その販売店を管轄する町内会の会長なんかがええと思う。

そういうのに弱い販売店というのも多い。販売店も地域の有力者と揉めるのは拙いと考えるから、かなり効果がある。

販売店は、その地域のみで仕事をしとるわけやから、地域の人間と敵対するようなことは避けるのが普通や。

実際、この騒音問題に関して町内会の会長さんや役員さんが関わったケースはほとんどが解決しとるとのことや。

市会議員、町会議員さんというのも、人により積極的に動いてくれることもある。変わったところでは、地域の民生委員さんの尽力で解決されたとの報告もある。

いずれにしても、地域の有力者に動いて貰えれば解決は早いようや。


6.ただ、解決というても、そこで仕事をするなとは言えんから、どうしてもいくらか音はする。完全に無音というのは仕事の性質上、無理や。

どうしても、気になるのなら、寝室だけでも防音工事をしとくことやな。

住宅における防音対策や防音設備には、防音サッシや防音ドアに代表されるように開口部からの音を遮断するだけでもかなりの効果があるとされとる。

RC住宅(鉄筋コンクリート住宅)なら、それでほぼ完璧やが、在来工法の木造住宅やと、それだけでは不十分やから、防音壁、防音シートまで考えなあかんかも知れん。

費用は多少かかるかも知れんが、一考の余地はあると思う。


7.敢えて、客になるという方法もある。そこから、勧誘員が来れば、それとなく騒音について配慮して貰えれば購読を考えるという趣旨のことを言う。

それを考慮して貰えれば、新聞を取ってもええと言うわけや。勧誘員もそれが条件で確実に客になるということなら、積極的に店にかけ合うことも考えられる。

どんな店も、客が迷惑するとなれば、それを無視することもないやろうしな。但し、その場合、他の新聞に切り替えにくいということは覚悟しとかなあかんと思うがな。


というものや。

これを見ても分かるように、どんなに難しい問題でも、その対処法はいくらでも考え出せるええ見本やと思う。


10.是々非々を貫く。

揉め事の大半は、些細な言葉のやり取りから、ちょっとした行き違いが起こり、お互いのことが理解できずに始まることが多い。

「あの物言いが気に入らん」、「あの態度がけしからん」というのは、たいていが、そうや。

相談者に勘違いや誤解があると思えば、それを伝える。その販売店や勧誘員、または客が、そうした理由を推察して。

もちろん、相談者に非があれば、それをたしなめ、相手方に問題があると判断すれば、その対処法を教える。

基本的に相談を受けるワシらは常に中立の立場に身を置いて、是々非々で判断するようにしとる。

悪いことは悪い、良いことは良いと。


11.押しつけの回答はしない。

ワシらの回答は、あくまでも参考にして貰うためのもので、それを押しつけるつもりは、さらさらない。

押しつけることで招く結果に責任が持てんということもあるし、「言うとおりにしたけど、あかんかったやないか」と言われるのも辛いしな。

今までのところ、そういうケースは1件もないがな。


12.なるべく多くの選択肢を示す。

相談の回答には複数の方法があるのが普通や。それをできる限り示す。その上で、相談者に選択して貰う。

そのときは、ワシらの回答どおりにはしないという選択肢も良しとする。


13.相談文の内容のみで答える。

ワシらはメールで送られてくる相談内容に沿ってでしか回答しない。というよりできん。

時折、実はこうやったと後から小出しにされたり、前言を翻されたりすることがあるが、そういうのは困る。

回答を根本から変えなあかんさかいな。そういうケースも過去に幾つかあった。

まあ、初めて相談される人の中には、ワシらのサイトを胡散臭く思い、用心するさかい仕方ない面もあるがな。


14.相談者がどうしたいのかを確かめる。

回答は、相談者がどうしたいかによって大きく違うてくる。

相談文でどうしたいか、はっきり書かれてあれば問題ないが、それがない場合は相談者にメールで問い合わせる場合もある。

Q&Aは相談者の望む回答をすることがベストやが、そのためには、その意思が重要になるということや。


15.議論からは逃げない。

Q&Aには時折、ワシらが新聞社や業界を代表しているかのように錯覚して議論を挑んで来る方がおられる。

『NO.588 残念ながら、サイトにあきれています』(注4.巻末参考ページ参照)というのが、その典型的なものやった。

少々剥きになって反論したが、正直、そういうのは勘弁して欲しい。そんな反論が相手に響くことはないやろうし、そんなものを読まされる読者も面白くないわな。

まさに不毛な言い争いにしかならん。

ただ、論戦を挑まれて逃げるつもりはない。特に、その質問者のようにピンと外れな論調に屈するわけにはいかんさかいな。


と、まあこんなところかな。

その他にも、ハカセは表現に注意を払うて、読みやすさ、面白さに拘った文章作りをしとる。

こういうことを言い出すと、いかにもワシらが苦労してやっているという印象を与えるが、こういったサイトをするのなら、むしろそれくらいの心遣いは当然のことやと考えとる。

取り立てて自慢できることでも、誇れることでもないと。



参考ページ

注1.ゲンさんのお役立ち情報 その8 クーリング・オフについての情報

注2.NO.137 近所の販売店での騒音で困っています

注3.第92回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■ゲンさんのトラブル解決法 Part 3  騒音トラブル

注4.NO.588 残念ながら、サイトにあきれています


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