メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー

第269回 ゲンさんの新聞業界裏話


発行日 2013. 8. 2


■新聞購読へのススメ その2 新聞の無読者は人生の敗北者になる?


いきなり、「新聞を読まないと人生の敗北者、落伍者になりかねんよ」と言われたら、若い新聞の無読者は、どう反応するのやろうか。

新聞勧誘員から、こう言われた場合やと「何や、新手の勧誘トークかい」と思うかも知れん。胡散臭いことを言う奴やと。

年輩者にそう言われた場合は、「あんたらの世代は新聞しかなかったから、そう思うだけの話やろう」と反発するかも知れん。時代遅れの戯言やと。

しかし、それなりの研究機関が導き出した答で、世の中はそれを信じて紙の新聞や紙の書籍を読む方向に再シフトしつつあると知れば、どうやろうか。

携帯電話やネットにどっぷり浸かった世代で新聞を頭から否定している人、電子書籍で十分と考えている人たちからすれば、「そんなバカことなどあり得ない」と考えるのが普通やろうと思う。

しかし、その彼らより後の世代の人たちは携帯電話やネットに対して懐疑的になっていて、「危険」なものとまで位置づける可能性があると、その道の研究者は指摘しているという。

「危険」なものというのは、現在問題になっている携帯電話やネット上に潜む様々な犯罪行為やプライバシーの侵害、偽情報の氾濫のことだけやない。

ワシが言うのは、それよりもっと根本的なことや。

携帯電話やネットは、ディスプレイ(透過光)を介してしか見ることはできない。

その、ディスプレイ(透過光)が人間の脳にとって悪い影響を及ぼしかねないという研究結果を知った上で言うてるわけや。

ワシら拡張員が勧誘トークで「新聞を読まんとアホになりまっせ」てなことを言うても、誰も相手にすらせんやろううが、その道の権威が同じようなことを言うと、それなりの説得力を持ち不安になる人も多いのやないかと思う。

最近、電車に乗ると乗客の多くが、一斉に黙々とスマートフォンの画面をクルクル指でなで回している様をよく見かける。

客観的に見ても異様な光景や。少なくともワシらくらいの年代の人間には、そう見える。

テレビドラマの「世にも奇妙な物語」なんかで十分に使えそうなシチュエーションで、不気味さを演出するには最適な場面やと思う。

現在、そのスマートフォンの普及により、以前にも増して大学生の間で新聞離れが加速度的に進んでいるという報道があった。


http://news.goo.ne.jp/article/businessi/business/fbi20130726503.html より引用

大学生の「新聞離れ」事情 不便、かっこ悪い…スマホやSNSで十分


 大学生が「新聞」を読まなくなったといわれるようになって久しい。ニュースの閲覧や検索がより便利になったスマートフォンや情報を共有できる交流サイトの急速な普及で、大学生の「新聞離れ」は一段と加速しているようだ。

 関西大学総合情報学部・谷本奈穂ゼミの有志学生記者たちが、大学生の新聞離れをめぐる最新事情をアンケートに基づきリポートする。

 (2013(平成25)年)6月28日〜7月10日に、大学生を対象とした新聞に関するアンケートを行い、男子69人、女子74人の計143人から回答を得た。

「毎日読む人」は、26人(18%)だったのに対し、「読まない人」は、117人(82%)にも上った。8割以上の学生が新聞を読んでいないのである。

「新聞を読まない人」に、その理由を記述してもらった。最も多かったのは、「新聞をとっていない」。このうち下宿をしている学生は、ほぼ全員が新聞をとっていなかった。次に多かった理由が、「新聞を読む時間がない」だった。

 その他の理由では、「字が小さい」「字が多い」「内容が難しい」などが並び、新聞にあまり良いイメージを持っていない学生も多かった。さらに「新聞を読む習慣がない」「興味がない」と、そもそも新聞を読まなくてもよいと考えている学生も少なくなかった。

 少数意見だが、「新聞を持ち歩くのに抵抗を感じる」「電車の中で読むのはオッサン臭い」などと、新聞に“かっこ悪い”イメージを抱いている人がいることもわかった。

 新聞が読まれなくなった原因としてかねてインターネットの普及が挙げられてきたが、スマートフォンやSNSを通じた情報の収集により、若者を中心とした新聞離れがますます加速していると考えられる。

 アンケートでも、「インターネットやSNSのニュースで十分に自分の知りたい情報を収集できる」という声があった。さらに、「新聞だと自分の知りたい情報がすぐに見つからない」「携帯やスマートフォンだと時間や場所にかかわらず情報を簡単に得ることができる」という意見も多く聞かれた。

 新聞などの紙媒体に比べ、スマートフォンやタブレット端末の方が、使いやすいと考えているようだ。実際、電車の中で、新聞を読んでいる人の姿はめっきり見かけなくなり、スマートフォンを使っている人が圧倒的に多い。

 若者を中心に、新聞などの紙媒体から情報を得るよりも、インターネットを通じて情報を収集する人が着実に増えている。新聞を毎日読まない学生からは、「お金がかかるから」「わざわざ買うのがもったいない」という声も聞かれた。

 携帯やスマホは学生の必需品であり、家にパソコンがないという学生も珍しい。ニュースを見るためにわざわざ新聞を買う必要がないと考えている学生が多くいることが分かった。

 ただ、ネットでニュースを見るのが、無料なのかというと、決してそうではない。携帯やスマホの購入には契約料が必要だし、ネットに接続するにも、通信料がかかる。携帯やスマホには、さまざまな便利な機能が備わっている。ニュース閲覧も、その一つにすぎず、「ついでにニュースを見られるのだから新聞はいらない」と、今の学生は考えているのである。

 肌身離さず持ち歩いている端末で、場所や時間を選ばず、自分に必要なニュースや情報を探し出して入手できる。利便性、即応性、携帯性、スマートさ…。あらゆる面で新聞は携帯やスマホに比べ不利で、厳しい状況におかれていることが、調査から浮かび上がってきた。


というものや。

この報道が正しいとすれば、大学生に限らず、『スマートフォンや情報を共有できる交流サイト』を重要視する人たちのすべてに言える傾向やないのかという気がする。

今や「新聞を読む」という行為そのものが、「かっこ悪い」と思われていると。

このままでは新聞の将来がなさそうに見えるが、果たして、そうなのかと別の情報に接して疑問が湧いてきた。

新聞を読むことが、ダサくて格好悪いと考えている人たちこそ、実は非常に危険な状況に置かれているのやないかと感じたからや。

その報道や。


http://news.goo.ne.jp/article/mycom/life/mycom_833409.html より引用

紙の方がディスプレイよりも深い理解ができる -トッパン・フォームズが確認


トッパン・フォームズは7月23日、ダイレクトメール(DM)に関する脳科学実験を実施した結果、同じ情報であっても紙媒体(反射光)とディスプレイ(透過光)で、脳がまったく異なる反応を示すことを確認したと発表した。

同成果は、同社とニューロ・テクニカの共同研究として、国際医療福祉大学の中川雅文教授(医学博士)の監修のもと得られたもの。

詳細は、同社が7月24日〜25日に名古屋で開催するプライベートショー「IDEA PREVIEW 2013 「伝えること」「伝わること」トッパンフォームズの情報ソリューション」の中で、紹介されるほか、関連セミナーにて実験結果の一部が紹介される予定だという。

今回の実験は、ヒトがDMに接した時に、脳のどの部位が反応しているのかを、近赤外分光法(NIRS:near-infrared spectroscopy)が利用できる「近赤外光イメージング装置」を用いて測定する形で行われた。

同法は個体差がないシンプルな生理学的反応から、少ない被験者数(今回は6名)でも安定した結果を導き出すことが可能であり、今回の実験からは、DMのメディアとしての特性や他のメディアと比べた優位性など、これまで実証されなかったことが脳の生体反応レベルで判明したという。

特に、同じ情報であっても紙媒体(反射光)とディスプレイ(透過光)で、脳はまったく異なる反応を示すことが確認されたという。

具体的には、紙媒体の方が脳内の情報を理解しようとする箇所(前頭前皮質)の反応が強く、ディスプレイよりも紙媒体の方が情報を理解させるのに優れていること、ならびにDMは連続的に同じテーマで送った方が深く理解してもらえることなどが確認されたという。

なお同社では、今回の実験により判明したデータの分析をさらに進め、そこから得られた知見を今後のダイレクトマーケティング戦略策定に活用していく予定だとしている。


トッパン・フォームズというのは民間の印刷会社やさかい、どこまで信憑性が高いのかと訝る向きもあるようやが、紙媒体の方が、ディスプレイの媒体に比べて脳内で情報を理解するのに適しているというのは以前から言われていたことや。

この報道は、それを科学的に裏付け立証したということのようや。

3年前の2010年7月16日のメルマガ『第110回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞購読へのススメ その1 新聞を読むことで向上する学力について』(注1.巻末参考ページ参照)の中で、PISA(学習到達度調査)について触れたことがある。

PISA(学習到達度調査)というのは、OECD(経済開発協力機構)が、加盟国の15歳児について学習到達度調査を目的に行なっている国際学力テストのことをいう。

2000年から実施され、3年に1度行なわれている。調査は文章の読解力、数学的リテラシー(応用力)、科学的リテラシーの3分野からなる。

この中の文章の読解力に注目してみると、総合読解力では2000年、32ヵ国中、第8位。2003年、41ヵ国・地域で第14位。2006年、57ヵ国・地域、第15位という結果になっていた。

これを見る限り、年々下がる一方やと思うていたのが、2009年、65ヵ国・地域、第8位と2000年のレベルまで持ち直している。

参加国および参加地域は、2000年の32から2009年は65の倍になっとるから、実質的には向上していると考えてええと思う。

過去最低やった2006年、57ヵ国・地域、第15位からすれば、劇的な変化や。

2012年度の結果は、まだ出ていないが、さらに向上しているのは間違いないと予想されている。

その僅かの期間に一体、何があったのか。何かがなければ、こうは変わらない。

その答えに今回のテーマ『新聞の無読者は人生の敗北者になる?』の理由を紐解く鍵が隠されているのやないかと考えた。

2006年当時、15歳児やった世代は現在23歳で、大学生か大学卒業直後の人たちということになる。

まさに、「新聞を読む」という行為そのものが、「かっこ悪い」と思い、ニュースを知るには「スマホやSNSで十分」と考えている世代なわけや。

彼らには、物心がついた頃からテレビケームや携帯ゲームが存在していた。パソコンなどの操作も学校で普通に学習していた。

また携帯電話が爆発的に普及していった時代に育ったということもあり、それがあるのが当然という生活を送ってきた。

つまり、デジタル機器が身の回りにあるのが普通の環境やったわけや。自らの選択とは違うところで生き方そのものが決められていたと思う。

それと比例して、家庭でも新聞の購読率が減少し始めた。ネットで新聞に関することを調べてもロクな記述や情報はない。たいていは新聞を否定する論調で埋め尽くされている。

新聞を美化した記事はむろんのこと、中立の立場で書かれた記事を見つけるのさえ稀なわけやさかいな。

そんな状況の中で生きてきた現在の大学生にとって「新聞など不要」、「新聞を読むのは、かっこ悪い」と考えるのは、むしろ自然なことやないのかと思う。

新聞の本当の善し悪しなど知らず、単にネット上の論調に流されているだけやないのかと。単に新聞を「否定すること」、「読まないこと」が、かっこ良いと勘違いしているだけやないのかと。

せやからと言うて彼らに罪はない。それしか選択肢のない時代に生きていれば誰でもそうなるさかいな。

しかし、この期におよんで『同じ情報であっても紙媒体(反射光)とディスプレイ(透過光)で、脳はまったく異なる反応を示すことが確認された』、『具体的には、紙媒体の方が脳内の情報を理解しようとする箇所(前頭前皮質)の反応が強く、ディスプレイよりも紙媒体の方が情報を理解させるのに優れている』と言われ、スマホやPCなどのディスプレイが紙の媒体に比べて劣っていると知らされるというのは堪ったもんやないと思う。

つまり、ニュースや情報はスマホやPCで見るより新聞紙面で見た方が脳のためには良かったということになるわけやさかいな。

彼らにとっては、そんなことなど、とうてい理解できんという気になるやろうし、今更な話でしかないわな。

ただ、20年以上も前から日本新聞教育文化財団が、全国の小中学校を対象に推奨して推し進めている「新聞を教材にした授業」がある。NIE(Newspaper in Education)と呼ばれているのが、それや。

これは新聞業界が、新聞購読の裾野を拡げるために画策したものやとは思うが、結果的にPISA(学習到達度調査)でも功を奏しつつあるという見方が強くなっている。

2013年現在、NIEの実践校は571校。年々着実に増え続けているという。

それには、日本新聞販売協会の「すべての教室へ新聞を」運動推進本部の働きかけがあるからやと言われている。

業界では、この運動を俗称で「すべ教」と呼んでいる。それが功を奏して、2011年から施行されとる小中学校の新学習指導要領にも「新聞を教材にした授業」が推奨される一因になったということや。

つまり、好むと好まざるにかかわらず、新聞を読む勉強をしている生徒が着実に増えつつあるということやな。

PISA(学習到達度調査)で得られたデータにより、世界的に見ても新聞をよく読む子供ほど成績が上位という結果になっていることが分かっている。

ちなみに、『2003年、41ヵ国・地域で第14位。2006年、57ヵ国・地域、第15位』という最悪の結果になっていた時期は、図らずも新聞の購読率が急激に落ち込み始めた頃と同じやった。

新聞が衰退していくにつれ、国民の学力が落ち込んでしまうと考えられる。

そのため、文部科学省もNIEや「すべ教」に荷担しようという気になったのやろうと思う。

2009年のPISA(学習到達度調査)で、65ヵ国・地域中、第8位と持ち直したのも、その影響が表れている結果やと言われている。

そのPISA(学習到達度調査)で、さらに成績が伸びれば「すべ教」のスローガンが本当になる日も、そう遠くないという気がする。

しかも、紙の新聞を読むことで頭も良くなるという科学的な裏付けが得られたということが、その追い風になるのは、ほぼ間違いない。

今までは、新聞の記事はネットでも読めるという理屈で新聞を買う必要がないと考えていた若い人の中には、「頭が良くなるなら」、「成績が伸びるのなら」新聞を購読しようと考える人が増えるやろうと思う。

もちろん、今までどおり「スマホやネットで十分」と考える人もおるやろうが、それやと「新聞を読む若者」に頭脳の面で遅れを取る可能性がある。

この事実がどこまで知れ渡るかにもよるが、人は有利な選択をする傾向にあるさかい、若い世代に再び新聞を購読しようという動きが出る可能性は十分考えられる。

新聞を読むことが「かっこ悪い」から「スマホやネットに依存しとるとアホになる」という風に変わるかも知れん。

現在、単に勿体ないという理由から新聞の購読を止めている家庭も、子供の教育上、新聞を読むことが学力の向上に有利やと知れば、親御さんたちも再び新聞を購読しようかと考え直すのやないかと思う。

子供のためになるのなら、月4000円弱の新聞代の出費など安いもんやさかいな。特に教育熱心な家庭ほど、そう考えやすいはずや。

新聞の記事の中身については、いろいろと批判的な意見もあるとは思うが、事、文章力、伝達力、読解力に磨きをかけるという意味では、これほど優れた教材は他にないと断言できる。

新聞記事には、どんなに短い文章であっても文章作法の基本である「5W1H」、Who(誰が) What(何を) When(いつ) Where(どこで) Why(なぜ)How(どのように)といったことが書き込まれている。

これに加えて、Whom(誰に) How much(いくらで or どれだけ)の2つを付け加えて、「6W2H}で書かれている場合もある。

普段何気なく紙面を見ているだけで、そういう文章に馴染むさかい、相手に伝える文章を書く上でも役に立つものと思う。

それほど意識せずとも、新聞記事を毎日見ているだけで「5W1H」、あるいは「6W2H}で文章が書けるようになるさかいな。

ハカセが普段言うとることやが、新聞をよく読む人は文章を書くのも上手いというのは、そういうことやないかと思う。

現在、新聞の無読者が多いというても、日本人全体から見れば、まだまだ少数やと思う。せいぜいが若い世代で「スマホやネットで十分」と考えとる人たちや。

その彼らは時代の最先端を走っているつもりかも知れんが、後発のさらに若い人たちが新聞を読むことで頭脳明晰になり、しっかりした文章を書くようになれば、いつのまにか取り残されていたということも十分考えられる。

さらに言えば、現在の大学生は「ゆとり教育」の真っ直中で小中学校時代をすごし、学力も全体的に低下気味やということやさかい、よけいやと思う。

それが、冒頭の『新聞を読まないと人生の敗北者、落伍者になりかねんよ』という文言につながるわけや。

正直言うて、『紙媒体の方が脳内の情報を理解しようとする箇所(前頭前皮質)の反応が強く、ディスプレイよりも紙媒体の方が情報を理解させるのに優れている』という科学的な裏付けを知る以前は、このまま新聞は衰退の一途を辿るだけやと考えとったが、この事実一つで大逆転現象が起きるのやないかという気になった。

これからは、半ばあきらめかけていた新聞の無読者へも強力な勧誘トークが使えるさかいな。

「新聞を読まんとホンマにアホになりまっせ」、「時代に取り残されまっせ」と。

ただ、今すぐ、それで効果が表れ成約になるか、どうかまでは保証できんがな。

何か一つ、有利なことがあったくらいで簡単に契約できるほど、新聞勧誘は甘くないさかいな。

成約できるか、できんかは、あくまでも各自の工夫次第や。ワシらは、そのための情報を伝えとるだけやさかいな。



参考ページ

注1.第110回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞購読へのススメ その1 新聞を読むことで向上する学力について


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