メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー

第27回 ゲンさんの新聞業界裏話     

発行日 2008.12.12


■人の恨みを買う怖さを知るべし


現在、世界的な大不況とやらで世相は暗い。

特に企業の雇用事情は深刻で悲惨や。

労働弱者と呼ばれる派遣社員や期間従業員のリストラが連日、大々的に報じられているのが、その最たるもんやと思う。

その派遣社員や期間従業員の大半は、仕事と同時にその住居まで失うことになるという。

この12月の寒空に突然、否応なく追い出される羽目になるわけや。

行くアテのある人はそれでもまだ救われるが、そのアテがなければ後はホームレスになるしかないと嘆く人も多い。

それは、今後も増え続け、今月中にも数万人の規模になると予想されている。

このままでは、最悪の場合、自殺者まで出る可能性があると警告する人もおるくらいや。

まさに血も涙もない理不尽な所業と言うしかない。

もちろん、リストラする企業側の言い分もある。

そうせな、企業が潰れる可能性があるというのがそれや。

企業を守るためには止むを得ん仕儀やと。

しかし、それがなぜ真っ先に、まだ契約期間を残した派遣社員や期間従業員のリストラなのかという問いに対して明確に答えられる企業は少ない。

企業努力を散々やった挙げ句にそうするというのなら、まだ生き残りのためという大義名分もそれなりに理解できんでもない。

せやけど、この大不況やと呼ばれ始めたのは、ほんの1、2ヶ月前からやで。

とてもやないが、努力の結果、やむを得ずリストラしたとは思えん。

いみじくも、ある企業の経営者が「派遣社員や期間従業員はいつでも切れるから雇っているんで、解雇できんのやったら正社員と一緒やないか」と、堂々と言うてるのを耳にしたことがある。

それがすべてを物語っとるのやと思う。

派遣社員や期間従業員を使い捨てて何が悪いのやと言わんばかりの言い草であり考え方や。

それが、それらの企業の偽らざる姿勢やというのを如実に表している。

企業には経営難に陥ったとなればすぐリストラという安易な手法を選択するということが、何の抵抗もなく定着したような感さえある。

このままでは、労働者が長い年月かけて獲得した権利が確実に崩壊すると言うても過言やないと思う。

もうすでに崩壊しとるのかも知れん。

各企業は、正社員の比率を減らしてまで、ここ数年の間にいつでも解雇可能な派遣社員や期間従業員の数を積極的に増やしてきた。

このまま放置されれば、その流れは、これからも続くのは間違いないやろうと思う。

労働力が必要なときは雇い、いらなくなれば切り捨てる。そこには、人を雇っているという感覚は何もない。

機械と同じか、それ以下の扱いでしかないわけや。

要するに人を人と思うてないということになる。また、そう思われても仕方ない所業やと言える。

そして、最悪なのが、そうすることが経営やと勘違いしとるということや。

バカめと思う。

はっきり言うが、そんな企業に未来なんか絶対にないで。

あるわけがない。あってたまるかと思う。

そういう仕打ちを受けた人たちが、どう思い、どう考え、どう行動するかということを僅かでも考えれば、そんなことくらい簡単に分かるはずや。

そんな目に遭って「止むを得んことやな」と理解を示す人なんかほとんどおらんと断言する。

当たり前のように、恨みに思う人間が相当数出てくる。

世の中、人の恨みを買うことほど怖いものはない。

その恨みは、いろんな形で、それらの企業に跳ね返ってくる。

当然やが、その人たちの人生はそれで終わりやない。

これからも延々と続く。

そういう企業で働いて虫けらのように扱われ切られた人たちが、果たして今後、その企業の製品を買うやろうか、サービスを利用するやろうかということや。

普通に考えてするわけがないわな。

しかも、その家族がいれば、その恨みはそこにも伝播(でんぱ)して拡がる。

「あのとき、あの会社の理不尽な仕打ちのおかげで辛い年末を迎えることになった」と一生思い続けることになる。

その数が多い分、顧客も確実に減るわけや。

それだけで済めばええが、人の恨みはいろんな形で表れる。

現在は、良きにつけ悪しきにつけ、インターネットという誰でも気軽に発言できる場がある。

そこで、それらの企業への恨み節を並べ立てることもあるやろうし、その仕事で知り得た企業にとって不利益な情報を公開されるおそれもある。

余談やが、食品偽造などで世間を湧かせた事件の大半は、内部告発から発覚したことやった。

告発者は、表向き不正への憤りということになっとるようやが、その根は経営者や会社への何らかの恨みによるものなのは明白や。

恨みがそういう内部告発に走らせとると言うても過言やないと思う。

もちろん、そういう内部告発されるような不正を抱えとる企業が悪いのは確かやが、哀しいかな大なり小なり、あらゆる企業には某かの不正、不法行為の要素、あるいはネタがあるのもまた事実やないかと個人的には考える。

営利企業のやっとることで清廉潔白などワシは信じんし、あり得んと思うとる。そう見えることはあるやろうがな。

それでも、首を切る側の経営者が、青息吐息の状況に陥った、倒産の憂き目に遭いそうやというのなら、まだ分からんでもないが、今回リストラをしたような大半の大手企業はとてもそういう状況とは思えん。

自分たちで勝手に将来を憂いて、転ばぬ先の杖としての手段を講じたにすぎんさかいな。

その首切りを実行する大企業の経営者たちの多くが、庶民とはかけ離れた破格の高給を受け取り続け、ちょっと外出するにもジェットヘリで移動し、高級リムジンにふんぞり返り、豪邸に住んで、毎夜高給レストランで特上のステーキを食いながら、その冷徹な判断を下しとるわけや。

はっきり言うが、どういう事態であれ、経営の責任は、その経営者にある。

今日の状況を予想できんかったのは、その経営者の暗愚の表れやし無能さの象徴以外なにものでもないと思う。

もっとも、予想できていたからこそ、その雇用形態を首の切りやすいシフトに移行していったのかも知れんがな。

現在のような状況になれば、まさにうってつけということで迷わず、その愚に出たのやろうと思う。

素早い対処の背景にはそれがある。

自分たちのその腐った生活を守りたいがために、真っ先に安易なリストラに手をつけ、罪もない労働者の生活を脅かす決断を平気で即断するなど、血の通った人間のする所業やない。

労働者の生活を第一義に考えるのが真の経営者と違うのかと思う。

少なくとも、現在、日本を代表すると言われている大企業の礎を築いた伝説的な創業者たちのすべてが、人を大切にした経営に心血を注いできたという紛れもない事実がある。

彼らは、おしなべて企業は人なりという信念で経営してきた。

せやからこそ、一代で驚異的な成功を為しとげ世界に名を知らしめ伝説になったと言える。

その彼らが相次ぎその寿命を全うして舞台から退場した後に残ったのは、その贅沢な生活が当然と勘違いしとる苦労知らずの二代目、三代目のボンボンたちだけや。

それらの企業の創業者たちは、あの世からそれを見て今頃は嘆いとるで、ほんま。

そんなことをしてたら、人の恨みを一心に浴びて当然や。また、世間の批判が集中するのも仕方ないわな。

派遣社員や期間従業員の契約期間は長くても1年、短ければ3ヶ月、半年というのもある。

なぜ、それくらいの期間すら待てんのか。なぜ、日本人にとって一番大事な時やと考える年末の今にそうするのか。

まったく理解に苦しむ。

その契約終了以降なら、その後、雇うか雇わんかは企業次第やという側面は強いから、ここまで騒ぎ立てられることもなかったはずや。

また、恨みもそれほど生まれてなかったやろうとも思う。

それをする企業からすれば法律どおりしているだけやと言いたいのやろうが、そうすることで、その拠り所となる法律自体も変わってくる可能性が高い。

実際、すでにそういう動きも始まっとると聞くさかいな。

さらに言えば、まだ日本人は大人しいから事なきを得ているが、これが外国やったら暴動が起きてもおかしくない事態やと思うで。

結局、今回の仕打ちは人の恨みを買うだけで、その企業にとっても将来的にプラスになることは何もないと確信する。

単に汚名を晒して信用を落とすだけの結果にしかならんと。

合理化策で切り抜けるつもりが、長期的に見れば確実に衰退に向う道を選んだだけにしかワシには見えんさかいな。

それに気づいていない。

まさに愚策以外のなにものでもないとワシが言う所以(ゆえん)がそこにある。

今回は常になく、きつい言い方に終始したかも知れんが、それだけワシは今回の事に憤(いきどお)っとるということや。

かろうじて名指しの批判をしていないというところが、せめてものワシのギリギリの我慢ということになる。

それなら、お前らの新聞業界はどうなんやという声が聞こえてきそうや。

確かに、ワシらの業界の雇用事情も褒められたものやないというのは認める。

拡張団は典型的なピンハネビジネスやし、新聞販売店には、勧誘と集金は請負業務とする違法な勤務形態も存在する。

業界には、人は使い捨てという感覚の経営者がおるのも確かや。

暴利を貪っているという点では、大企業の経営者に匹敵する人間もおるやろ。その金額の多寡や程度は別にしてな。

そういう拡張団や新聞販売店の経営者も、その従業員から妬まれ恨まれることが多い。

さらに言えば、そういう経営者のもとで働いている従業員の心も荒みやすく、また、ろくでもない人間が集まるということにもなる。

そうなれば、その評判も自然に悪くなる。

評判の悪さはトラブルとして一般読者を巻き込む。

巻き込まれた一般読者は、当然のようにその販売店を嫌い、新聞銘柄から離れる。

そのトラブルの程度によれば恨みに思う人間も当然のように現れる。

サイトのQ&Aには、そんな事例は腐るほどあるしな。

恨みは評判の悪さに直結する。

当たり前やが、えらい目に遭わされた人間は必ずそのことを他で吹聴するさかいな。

黙って自分の胸にだけ仕舞い込むことの方が珍しい。

それが、えぐければえぐいほど噂話として尾ひれを伴い拡がっていく。

一つのトラブルによって拡がる悪評は百になると知ることや。

そして、それは即、新聞販売店や拡張団に部数減、契約減としてハネ返ってく
る。

それらの新聞販売店や拡張団は、結局、それがもとで廃業を余儀なくされていくというケースはいくらでも見てきた。

人の恨みを買う怖さをバカにできんと言うワシの思いもそこにある。

ただ、救われるのは、拡張団や新聞販売店の中にはそれとは正反対の経営者が数多く存在することや。

その従業員たちと運命共同体と考えている経営者たちや。

そういう経営者はおしなべて購読客も大切にするから、評判もええ。

評判が良ければ人に恨まれることもほとんどないし、少々のことがあっても経
営難に陥ることも少ない。

ただ、その恨みを買うことのない良心的な販売店へも、その愚策を弄した大企業のツケが廻ってくることがあるから、尚更、やりきれん思いがするんや。

新聞業界は、現在、誰もが知る冬の時代に突入しとる。

理由は明快や。部数が年々落ち込んできとるからに他ならん。

ちょっと前までは、その理由の大半は、インターネットがあるから新聞は必要ないという程度のものやった。

もっとも、それも大きな要素には違いないが、それくらいならまだ何とか闘え
た。

インターネットには利点ばかりあるわけやないさかいな。欠点もそれなりに多い。

インターネットはネットワークにつながっているということ自体で常に、個人情報の流失やウィルスへの感染などの危険に晒される。

ネット上の膨大な情報量の中に、一体どれだけ信頼に足る情報があるかという問題もある。

ヘタに信用したがために大恥をかいたという経験は誰にもあるはずや。

そういった観点で攻めれば、例え若い人でも「それもそうやな」と納得する人もおる。

新聞の方が情報は正確やなと。

それで、まだ活路が見出せた。

しかし、この大不況により、かなり怪しくはなってきたがな。

新聞が必要であるか必要でないかを論じる前に、昔から、家計を切り詰める際、真っ先に考えられるのが、新聞代の始末ということがあるからや。

まずはそこから手を付ける人が多い。

「金が払えんから購読できん」となるのが、ワシらにとって最も厳しい状況なわけや。

今回のケースで言えば、その派遣社員や期間従業員を多く抱えている企業の存在している地域の販売店がより深刻なダメージを受けるのやないかと思う。

実際に、その派遣社員や期間従業員の人たちと新聞の購読契約していても、今の状態やとそれが全うされることはないやろうし、それらの空き部屋には、しばらくの間、新たな入居者も期待できそうにない。

そういう販売店では、当然のことながら、大幅な部数減に陥ることになる。

もっとも、企業にとっては、そんなこと知ったこっちゃないということになるやろうが、事はそういうところまで波及するわけや。

それがもとで、販売店の廃業というケースが増えれば、その持って行き場のない怒りが、自然にその企業へも向かうことになる。

安易なリストラは止めろと警告したいが、おそらく連中にその声が届くことはないやろうと思う。

所詮、何を言うてもカエルの面にションベンという気がするしな。

先日、腰の重い政府としては珍しく、派遣社員や期間従業員たちのリストラにより住居を失うことをカバーする目的として、住宅確保策というのを発表した。

退去させずに無償で住宅を貸与する企業や派遣会社などに助成金を支給するというものや。

今すぐ、それを実行するのなら救われる人はおるかも知れん。

しかし、それは、年明けの通常国会に提出される二次補正予算案に盛り込む予定やというから、この年末までにはとても間に合いそうもない。

その法案とやらが、可決される頃には大半が寒空に放り出された後や。

その頃には、後はホームレスにしかなる道がないという人たちの所在など捜しようもないわな。

結果、その金は心ないリストラした企業に廻るだけで、肝心の派遣社員や期間従業員たちの手に届くことはないやろうと思う。

「吾(われ)、斗升(としょう)の水を得て然(すなわ)ち活きんのみ」という故事がある。

「今の私に必要なのは僅か数升の水だけなのです」と荘子(本名、荘周。中国戦国時代の思想家)に狭い轍(わだち)の水たまりの中から鮒(ふな)が必死にそう懇願して助けを乞う。

それに対して荘子は「今から呉越の王に会いに行くので、向こうに着いたら長江の水を引いてやろう」と答えたという。

アテにならんことを待つ愚かしさを語った逸話や。

当たり前やが、明日の命も知れん者に、いつ実現するか分からんおいしい話をいくらされても救われんわな。

それと同じで、今すぐ待ったなしで放り出された人たちを具体的にどう救おうと言うのやろうかと思う。

荘子はその場で、その愚に気がついたからまだええけど、大企業の経営者連中と同じ贅沢三昧をしているようにしか見えん今の政府のトップに、それが分かるのやろうかと思う。

もっとも、支持率20%程度の政府では何を約束したところで絵に描いた餅にしかすぎんやろうから、それこそアテにする方が悪いとなるのかも知れんがな。

今回は暗い話ばかりに終始したようやが、それでも落胆したり悲観したりする必要はないと言うとく。

人は、ある状況に置かれると、なぜかそれがこれから先も続くのやないかと考えることが多い。

ええときは、これからもええことが続くと思い、悪くなればこの先も真っ暗やと考え込む。

それで絶望する人がいとる。

気休めに聞こえるかも知れんが、世の中、同じ状況が長くは続くことは絶対に
ないと断言する。

どんなに最悪な状況でも、いつか必ず好転するときがくる。

どんな夜でも必ず日が昇り朝がくるもんやし、反対にどんなに華やかな祭りの後であっても静寂の夜は訪れるさかいな。

それと同じで、今は単に夜がきただけにすきんわけや。

夜になれば夜のすごし方をすればええだけやと。

世の中の流れとはそうしたもんやと考えれば、いくらか気も休まるのやないかと思う。

しかし、いくら世情が冷え込んで不景気になったとはいえ、受けた仕打ちは誰しも忘れんもんや。

今このときに嗤う者は、必ず後で泣きを見る。そう信じたい。

逆に言えば、こういうときやからこそ、思いやりを示すことで企業の値打ちが上がり、政治家は善政を敷くことで一気に人心を掌握することができるのやないかと思う。

今まさにこの瞬間こそ、風前の灯火とも言われとる政府にとって千載一遇の起死回生の大チャンスでもあるんやが、残念ながらそれに気づく兆しすら見えんようではどうしようもないわな。

ただ、この大不況により時代の大変革が世界レベルで起きるのだけは間違いないと感じとる。

少なくとも愚策しか用いることのできん一部のトップたちの思いどおりにはならんと。

それが吉と出るか凶と出るかは、神のみぞ知るやが、その変革のために、今このときがあるのは確かやと思う。

そう考えれば、ワシらは今、人類にとって最高に貴重な瞬間を生きとるとも言えるわけや。

願わくば、それは明るい未来を迎えるための試練であってほしいと思うのやけどな。


追記 今回の派遣切りに関しての問題点


投稿者 H.Sさん 新聞販売店専業員 東京在住 投稿日時 2008.12.14 AM 7:27


小生は、今回の派遣切りに関して、ゲン様の御見解以外にも、見逃してはならない問題があると思います。

それは労働派遣に関する規制緩和を決めた政府の責任と、実際派遣社員を直接雇用をしている派遣会社の責任を追及することです。

派遣労働の規制緩和が、労働市場に於いて労使双方に、規制緩和以前よりメリットがあったのかどうか?

行政による、事前監査から事後チェックに監督体制が変化する中で、日雇い派遣等はかなり国会でも問題になり、また対策も編み出されましたが、今回のような大量失業の可能性を軽視した責任は、行政の手で生活保護や生活支援の迅速及び、的確な対策を焦眉の急にて行わなければならないのと同時に、派遣労働に対する今後の対策を急いでしなければならないと思います。

また派遣会社から派遣社員を受け入れた企業はもとより、派遣会社そのものの、社員に対する処遇の酷さも、法人格を有する組織として、非常にていたらくなのではないかと思います。

小生は、派遣労働のそのような待遇に疑問を抱き、自らその職種は転職の際の選択肢に、最初から入れませんでした。

高いスキルをフリーランスになることにより、会社員より高報酬が期待出来るならまだしも、単純作業の使い捨て労働者にされては堪らないとの思いも、転職の際の選択肢に入れなかった理由の一つであります。

小生はこのような派遣労働が、労働市場の形成の一翼を担うことの一番の理由が、労使双方に需要があるからだと思います。

労働者側の視点からは、大分酷い条件にも関わらず、それを選ぶ人が後を絶たない今の社会を嘆きたくもなりますが、それを許さない社会や世論、また労働者側のあまりに不利な契約をせざるを得ない派遣労働就労の受け入れ拒否の姿勢も、今回の大量派遣切りを生み出さないことに資することだったのではないかと思います。

現在日本は格差社会等とも指摘されてますが、確かに統計的に、所得階層の上下の偏りが目立ち、そして年収が低くなる人達が増加スピードが、年収が高くなる人達と比べて早くなっております。

それは単身者世帯の増加や年金生活者の増加、そして低収入の労働に従事している人達の増加が、主要因との指摘もあります。

日本に於ける高度経済成長の背景には、原材料を輸入し優れた製品を低廉な価格にて輸出する、加工貿易にて、多くの利益を生み出し、日本国内にも経済的波及効果により、国民一人当たりの収入も、右肩上がりに上昇してきました。

それは日本国内なら大変喜ばしい話でありますが、輸出先の国では事情が違います。

価格競争に勝てずに倒産した企業が出てきたり、その従業員が失業したり、そして就労者の賃金も押さえ込まれたりもしました。

前振りが長くなってしまい恐縮ですが、高度経済成長期に於ける日本国内の事情が、現在の日本国内で起きていることと同一視出来ないことと、経済のグローバル化に伴い、日本が賃金上昇を容認して、その皺寄せを輸出先にお仕着せすることは、もはや不可能ではないかと思われます。

派遣労働だけじゃなく、終身雇用や年功序列の崩壊も、小生が前述した背景が、その主たる原因ではないかと、浅はかな思慮にて考えてしまいます。

現在の大企業の経営陣が、株主優先の視点で経営されていることと、創業者との考え方の違いを指摘しているゲン様の御意見は、小生が考える前述した時代背景の差も考慮された上でのことだったのかどうか。

小生のような浅慮者には、些か疑問に感じましたので、今回二分割したメールを併せお読み下さいまして、また御感想をお聞かせ頂ければ、有り難く思いますので、何卒よろしくお願い申し上げます。


回答者 ゲン


『派遣労働の規制緩和が、労働市場に於いて労使双方に、規制緩和以前よりメリットがあったのかどうか?』ということやが、使用者側には人件費を抑えられ、必要なときだけ雇えばええわけやさかい、労働コストという面では相当なメリットがあったと思う。

どの企業も現在、こぞって派遣社員を増やし、正規社員を減少させているということでもそれは明らかや。

また、この政策により、派遣会社の飛躍的な成長を遂げたことで、労働者は実質、二重搾取されとるわけやから、その賃金を含む労働条件は、その規制緩和以前と比べれば格段に悪くなっとるのは間違いなく、労働者にとっては悪法以外の何ものでもないと思う。

ただ、一方では仕事が確保されやすいという見方もあるが、この派遣会社がなくなれば、企業は直接、求人の募集を行うわけやから、実質的な雇用には変わりがないはずや。

また、そうなれば、今回ほど簡単にリストラということもできんかったやろうから、まだ労働者としての権利も守られるやろうと思う。

あんたの指摘にもあるとおり、『高いスキルをフリーランスになることにより、高報酬が期待できる』という特殊技能を必要とする職種のみを派遣とし、『単純作業労働』は、その派遣業務から除外すべきやと思う。

そうせな、今回のような悲惨な首切りがこれからも続けられるのは間違いないと思う。

国の政策は、多くの国民の生活を守るためを第一義に実行せなあかん。

一部の企業を潤すためにあってはならんというのは誰が考えても分かることやが、残念ながら今までの政府、というか大多数の与党の国会議員は、その企業をスポンサーにしとるわけやから、どうしてもそちらの方に有利なように動くわけや。

政治家の後援会の大多数が、そういった企業で占められとるのが、そのええ証拠やと思う。

労働者寄りの政党が政権を取らな、この構造は永久に変わることはないと考える。

族議員の抵抗が強い云々とか言うてるような今の政府では大きな変革など、とてもやないが無理ということや。

『現在の大企業の経営陣が、株主優先の視点で経営されていることと、創業者との考え方の違いを指摘しているゲン様の御意見は、小生が考える前述した時代背景の差も考慮された上でのことだったのかどうか』

というのは、正直そこまでは考えて言うてるわけやなかった。

メルマガでの発言は、あくまでも、今回の企業の所業に対する憤りからにすぎん。

何度も言うが、企業が、その雇用契約期間を守ってさえしていれば、例え派遣であろうが、期間従業員であろうが、それも雇用形態の一つとして容認していたと思う。

労働者も雇用契約期間終了後の再雇用を断られたというのでは致し方ない面もあるさかいな。

また、雇用形態に関して言及すれば、ワシらの業界も相当酷いもんやさかい、他所(よそ)の批判をするのも憚られることでもあるしな。

ここ2、3日でも、役員のボーナス全面カットするなどの動きも見られはじめたことでもあり、この問題は、予想以上の波紋を拡げそうな予感がするさかい、もう少し、今後の経緯を見守りたいと思う。


参考ページ

NO.658 今回のメルマガ、派遣社員のリストラについて


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