メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー

第282回 ゲンさんの新聞業界裏話


発行日  2013.11. 1


■新聞の実情 その8……愚かなる消費税増税対策について


先日、ある全国紙新聞販売店にお勤めの読者の方から、


消費税増税が物議を醸しておりますが、本当に新聞の軽減税率は適用されるのでしょうか。

新聞社全体では分かりませんが、こちらでは消費税アップの方向で教育が進められています。

ただし、社から告知があるまでは、お客さんにはまだ何も社から聞かされていないので、どうなるのか分からないと伝えること、と言われてます。

軽減税率が適用されてもされなくても、約25%ぐらいの読者が新聞を止めようと思っている、とのことで、嘘か本当かは分かりませんが、そう言うことによって危機感を煽り、店員の襟元をただそうという狙いがあるのだと思います。

25%は大袈裟だとしても、それ相当の読者が新聞から離れて行くのは間違いないので、しっかりした食い止めトークを身に付けておくようにと、先日本社が講師まで派遣し、地元の地区で講習会を開ました。

そのトークがどれだけ説得力があるか、少々疑わしくもありますが、でも本当に読者離れを防ぐ手立ては必要ですね。

いろいろと考えながら試して行きたいと思います。追い追いゲンさんの考えや体験も聞かせて頂ければ幸いです。宜しくお願いします。


というメールが寄せられてきた。

その方には、ハカセが、


新聞協会の働きかけからすると、新聞に軽減税率が適用される可能性は高そうですね。


と返信している。

その根拠は、日本新聞協会の本気度にあった。

それについては、当メルマガ『第243回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞の実像その7……日本新聞協会の軽減税率を求める声明の矛盾とは』(注1.巻末参考ページ参照)の中でも話したが、日本新聞協会は国会議員、政府関係者、および地方議員にまで「軽減税率を求める」訴えに力を注いでいることが、それを如実に物語っていると思う。

しかも、日本新聞協会と密接な関係にある日本新聞販売協会が、全国の新聞販売店主らにも、そうするよう檄を飛ばしている事実からも、その本気度が分かろうというもんや。

過去、日本新聞協会、および日本新聞販売協会は、『新聞特殊指定の見直し問題』や『特定商取引に関する法律の改正法問題』といった危機的な状況にあった時でさえ、ここまでの働きかけはなかったと記憶している。

もっとも、表向きなかったというだけのことかも知れんがな。

特に『新聞特殊指定の見直し問題』では裏工作が活発に行われていたというが、その事実を示す証拠がないこともあり、噂話の域に止まっている。

今回の問題のように、ここまで堂々と「なりふり構わず」の姿勢を見せているというのは、おそらく新聞業界でも異例のことやないかと思う。

7月30日。東京都千代田区にある『如水会館』で日本新聞販売協会の『第62回通常総会』というのが開かれた。その集会には全国の販売店店主約350人が参加したという。

その「総会スローガン」の一つに『文字・活字文化の中軸である新聞に消費税5%の軽減税率を!』というのを掲げている。

その折りの日本新聞販売協会の会長が訓辞で、新聞の消費税の軽減税率適用に向けた活動について、


いよいよ決戦の時が近づいている。日販協(日本新聞販売協会)は自民党・公明党の新聞販売懇話会と共に2年間に渡り活動を展開してきた。

8月早々、軽減税率を求める国会議員の署名が提出される。議員の力を得て、何としても5%の軽減税率実現に取り組む。


と述べ、各地の地方議員へも同様の働きかけをするよう求めた。

実際、軽減税率を求める署名に協力した自民党の国会議員8人が、その総会に参加している。

それらのことから、ハカセが『新聞協会の働きかけからすると、新聞に軽減税率が適用される可能性は高そうですね』と言うたわけや。

しかし、同時に軽減税率が適用されん場合も僅かながらあるのやないかという思いもする。

その少し前に、『NO.1250 他の新聞社さんはどのような増税対策をとっているのでしょうか?』(注2.巻末参考ページ参照)というのもあったさかい、よけいそんな気になった。

その相談文の一部を抜粋する。


いよいよ消費税が上がることになりました。

うちの新聞社も、増税対策という事で3本柱の取り組み「全戸面接訪問」「おすすめ記事」「著名人講演会」を展開しております。

読者を(A)他紙拡張員が営業に来たら連絡をくれる人、(B)担当が勤めている間は購読をやめない、(C)挨拶が出来た。

の3パターンにふるい分け、報告書をつくり《近所の新聞屋サン》的な関係を構築しようという作戦です。

店主も「新聞やめんとってよー」と廻っております。社長が「消費税が上がるけど辞めんとってー」ってどう思われます?

陣頭指揮を執っている方からは「読者は新聞全体の20パーセントしか読んでいない!記事のすばらしさをお伝えするんだ」と販売店ごとに専業主任・店主・店主の奥さんで話し合い、毎日おすすめ記事シートを作るよう指導が入ります。

日本新聞協会でも講演された著名人の公演では申し込み人数を下回り、ある会場ではそのうち半分が関係者でした。

新聞販売店のスタッフが、講演会に誘ってくれば「購読させられる」といった不信感で逆効果になると思うのですが、未読の招待何名…、現読の招待何名…と報告書が送られてきます。

こうなれば、専業さんの無理がきくサクラばかりの講演会になってしまいます。


これは、ある地方紙の販売店従業員の方からのものやが、こうして見ると、全国紙、地方紙に限らず、新聞に軽減税率が適用されなかった場合のことを想定して、いろいろ手を打っていると考えた方が良さそうや。

まあ、裏を返せば、軽減税率の適用が危ない、確実やないからこそ、国会議員、政府関係者、および地方議員にまで「軽減税率を求める」訴えを強化しているのやろうがな。

今から6年前の2007年6月1日発行の旧メルマガ『第147回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■新聞代の適正価格って、いくら? アンケート募集』(注3.巻末参考ページ参照)で、読者の方から新聞代金についてのアンケートを募集したことがあった。

その結果は、『ゲンさんのお役立ち情報 その7 新聞の適正価格アンケート情報』および『第150回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■新聞の適正価格アンケートで見えてきたもの』(注4.巻末参考ページ参照)で公開しているので、詳しくはそれらを見て頂ければ分かる。

ここでは、その概要だけ話す。

アンケートの応募総数51名。その内訳は、一般読者31名。販売店関係者12名。拡張団関係者8名やった。

現在の新聞代について「高い47.1%」、「安い13.7%」、「今のままで妥当39.2%」やった。

また、今後の新聞代の値上げについて「反対30.6%」、「賛成もしくは容認12.2%」、「値下げすべき20.4%」、「現状を維持すべき30.6%」、「その他6.1%」という結果やった。

これから言えることは、やはり新聞の値上げそのものには理解を示して貰えそうもないということや。

しかも、それは一般購読者だけやなく、販売店関係者、拡張団関係者の方からも、そういう意見が多かった。

むろん、日本新聞協会としても、新聞代の値上げは避けたいところやと思う。それ故に「軽減税率を求める」訴えを強化しているのやさかいな。

現在、押し紙や積み紙に代表される配達されない新聞を差し引いたとしても実質的な新聞購読率は最低でも75%強ある。

その根拠については、サイトのQ&A『NO.1251 細かいことは分かりませんが』(注5.巻末参考ページ参照)の中で、ハカセが解説しているので、その一部を抜粋して知らせる。


ネットだけを見ていると新聞離れが進み、新聞には未来がないと感じられるかも知れません。

インターネットの台頭により新聞離れが進んでいないとは言いません。しかし、それは一般の人が考えておられるより多くはありません。

インターネットの利用人口普及率は、総務省の統計によると、初期の頃の1997年が10%程度でしたが、2011年には79.1%まで伸びているというデータがあります。

それに対して新聞の発行部数は、1997年当時、約5365万部だったのが、2011年には約4835万部にまで減少しています。15年ほどで約530万部の減少、率にして約10%です。

これは新聞業界としては異常なペースの減少で、その意味ではインターネットの台頭が大きく影響しているのは間違いないと思われます。もっとも、それがすべての理由ではありませんが。

ただ、それでも新聞の普及率は、現在でも88%を維持していると新聞協会の発表にあります。1997年当時が93%でしたから、5%減ということになります。

もっとも、発行部数と実売部数は、予備紙、押し紙、積み紙などの残紙の関係で必ずしも一致しませんので、それ以下なのは確実ですが、最低でも約75%以上の純粋な普及率を確保しているのは間違いありません。

つまり、国民の4分の3以上は実際に新聞を購読しているということです。それが多いか少ないかは意見の別れるところではありますがね。

一般的には、業界に精通しているという業界関係者でも新聞社の発行部数と実売部数の比率など推定すらできないのですが、ひょんなことから、私にはそれが可能になりました。

先月の9月8日、東京国際フォーラムにて第1回「新聞拡張員ゲンさんの嘆き」オフサイト・セミナーというのを開催しました。

その日、出席を予定されていた新聞販売店関係者の方が数名、やむなく欠席されました。

それは、当日になって新聞各社が、早朝に決定した2020年の東京オリンピック招致の号外を配布することになったからでした。

通常の号外は駅前などで配布されるのですが、Y新聞に限って、全顧客宅へ号外を宅配することにしたのです。

そのため、本来ならその9月8日は新聞休刊日で新聞販売店の方は休みだったのですが、急遽、仕事をしなければいけないことになりセミナーを欠席されるしかなかったわけです。

その後の情報からY新聞では全国の新聞販売店を対象に、実に842万部もの号外を発行していたことが判明しました。

号外に、予備紙、押し紙、積み紙などの残紙などは殆ど必要ありませんから、それがY新聞の実売部数に近い数字ではないかと推測できます。

なぜなら、号外はすべて新聞社の負担ですので余分に刷ることは考えにくいからです。購読客から、その号外分のお金を貰うわけにはいきませんからね。

Y新聞の公表発行部数が約994万部ですので、そのうちの約842万部が実売部数ということであれば、Y新聞全体として予備紙、押し紙、積み紙などの残紙は約152万部ほどあるという計算になります。

Y新聞社で発行する新聞の約84.7%に該当する部数が実際に購読者に届けられているということです。

業界でもY新聞は残紙の多い方だと言われていますので、それを他の新聞社にも適用すると仮定します。

その場合、新聞協会発表の普及率88%に、約84.7%をかけた約74.5%が実質的、もしくは最低ラインの新聞の普及率だと考えられます。

しかし、今回の号外はY新聞社と協力関係の薄い合配店や複合店、あるいは僻地や離島などの交通の便の悪い地域には配布されていないということですので、その分を約842万部の実売部数に加えなければいけません。

ですので、実際には新聞普及率は、その数字より多くなるはずです。

ちなみに、合配店というのは、地方紙とすべての全国紙を取り扱っている新聞販売店のことで、立場的に新聞社よりも強いため新聞社の方針に従わないケースが多いとされています。

複合店というのは2紙以上の一般紙を配達している新聞販売店で、合配店ほど強い立場はありませんが、新聞社の意向を拒否する場合もあると聞きます。

余談ですが、合配店はすべての新聞を扱っている手前、勧誘する必要性がないということで勧誘員は存在しません。複合店は、その販売店の都合により勧誘員が存在するケースもあるようです。

Y新聞社は、意向に従いそうにないそれらの合配店、複合店には、最初から号外の配布を依頼するようなことはしませんので、その分の部数は刷らないものと思われます。

その合配店、複合店の実数の確かな数字は把握できませんが、私どもに寄せられる情報から察するに、少なくとも日本全国に200店舗、部数にして30万部程度はあるものと考えられます。

それを加えて計算しなければいけませんので、私が『最低でも約75%以上の純粋な普及率は確保している』と言った意味が、それで分かって貰えるものと思います。

インターネットの利用人口普及率が79.1%で、新聞の実質普及率が最低でも75%あるということは、大多数の人がインターネットもすれば、新聞も購読しているものと考えられます。

この結果から、現時点では新聞とインターネットは「共存共栄」に近い状態だということが言えます。少なくとも負の相関関係にはなっていないと。

インターネットの台頭で新聞が衰退しているという見方をする人は多いですがね。

実は、数年前までは、私もそうでした。今は多くのデータを知ることができるようになっていますので、必ずしもそうではないと言えます。


新聞の購読率は一番良い時で、1997年当時、約5365万部の発行部数だったのが、2011年には約4835万部にまで減少している。15年ほどで約530万部の減少や。率にして約10%。

つまり、インターネットの台頭による新聞離れ、少子高齢化による人口減、バブル崩壊後からの長引く不況の煽りを受けていても新聞が受けた影響は、その程度やったということや。

もちろん、約530万部、率にして約10%の減少というのは少ない数字やないが、悲観的に捉えるほどでもないと思う。

プラス部分に目を転じれば、15年前の90%は維持しているということやさかいな。

むしろ、これだけインターネットが発達した世の中で、今尚、それだけ新聞の愛読者が根強くおられるわけやさかいな。

実はワシらも、この数字を弾き出す前までは、相当ヤバイ状態になっているのやないかと考えていた。

ワシらのもとには、日々悲観的な情報が数多く伝えられてきていたから、よけいにそんな気になっていた。

新聞販売店の店主が廃業する場合、「店の引き継ぎ」というのをする。それが、ここ数年、かなりの勢いで増えているというデータがある。

実際、廃業した、あるいは廃業したいと言われる昔からの読者の方が毎月数名ほどおられ、後を絶たん状態になっとるさかいな。

特に関東方面で、それが顕著になっている。

ある新聞業界紙のデータでは、東京都内の某有力全国紙において、年間の「店の引き継ぎ」は通常120〜130件程度と言われているのが、ここ1年間は200件を超えているという話や。

その地域での平均経営年数は6年〜7年とのことやが、最近は1、2年、早ければ数ヶ月単位で辞めていく販売店店主もおられると聞く。

以前までは、その中に強制廃業を意味する「改廃」も含まれていたが、今はそれよりも自主廃業するケースの方が圧倒的に多いという。

「昔は4〜5千部の店を構えていたら10年もやれば1億円程度は余裕で貯まるくらいの美味しい仕事だった」と懐かしがる新聞販売店店主もおられる。

今は赤字が出なければ、それで良しという状況やと。たいていは赤字経営で、もがき苦しんでいると。

もちろん、今でもやり方次第で稼いでいる新聞販売店も存在するようやが、その絶対数が当時と比較にならんほど激減しとるという。

このままやっていても将来の展望が見えんということで早々に見切りをつける経営者が多いとのことや。

購読率にして約10%の減少で、それやから、この先、更に部数減が続くようやと、それこそ洒落にならん状態になる日も近いと思われる。

その背中を一気に押す可能性があるのが、消費税増税やと新聞業界では見ているわけや。

新聞に軽減税率が適用されんかった場合、どれくらいの「値上げ」になるのか計算して見た。

現在の購読料は、朝夕セット版で新聞本体価格3738円、消費税分187円で計3925円。

統合版の朝刊のみの場合は、新聞本体価格2864円、消費税分143円で3007円になっている。

これが消費税8%になると、朝夕セット版で新聞本体価格3738円、消費税分299円で、計4037円。

朝刊のみの場合は、新聞本体価格2864円、消費税分229円で、計3093円。

それぞれの増税分の差額は、朝夕セット版で112円。朝刊のみの場合は、86円になる。

これを値上げしたと捉えるかどうかという問題がある。

消費税増税は、ほぼすべての商品に適用されるわけやから、購読者も理解を示してくれるのやないかと思う。仕方ないと。

それにより、『約25%ぐらいの読者が新聞を止めようと思っている』というのは、やはり考え辛い。あり得ないことや。

ただ、中には「値上げ」という言葉に敏感に反応する人がおられるのは確かや。

ワシが、この拡張の世界に飛び込んで来たときにはすでに消費税3%というのがあって、1997年に5%に増税された。

その当時、若干やが、それに文句を言う客がいてた。

前年から75円程度の値上げなんやが、世の中はバブルが崩壊して不景気になりかけとったから、僅かな値上げでも過敏に反応してたんやな。

「こっちは、3850円で契約したんやで、何で新聞社の都合で勝手に値上げされなあかんねん」という具合や。

今やから言うけど、その当時は、ごねる客には、以前のままの価格で集金をしとった所が多かったと聞いた。納得して貰える客だけ、その値上げ分を頂戴していたということや。

おそらく、今回も初期の間は、その時と同じようにする販売店が多いのやないやろうかと思う。

それで契約が貰えるのなら、増税分くらいは泣こうと。

特に拡張員あたりは、そういう発想になるのやないかなという気がする。

「私と契約して頂ければ、消費税増税分は頂きませんので」てなことを言うてな。

少なくとも16年前はそうやった。

万が一、消費税増税が原因で本当に大幅な購読者の減少という事態を招けば新聞業界に救いはなくなる。

ワシは過去の経験から楽観的な見方をしとるが、今回はその2年後に更に10%の消費税増税が待ち構えとるさかい、同じようには考えられんやろうしな。

インターネットの普及により「新聞離れ」が進んだと信じている人が多いが、この「新聞離れ」という言葉自体は40年ほど前からあったと言われている。

その当時でさえ、どんなに勧誘されようと、頑として新聞を購読しない「無読」と呼ばれる人たちはインターネットのない時代にも存在してたというさかいな。

その頃は、「テレビでニュースが分かるから新聞は必要ない」やった。今の「インターネットでニュースを見るから新聞は必要ない」と言うのと、何ら変わりはなかった。

その結果は、どうか。

テレビの普及率と新聞の普及率は共に驚異的とも言える伸びを見せた。まさに共存共栄してきたわけや。

事情は若干違うが、ハカセの調べたように数字的にはインターネットと新聞は共に高普及率を維持しているさかい、共存共栄していると見ることもできる。

これから言えることは、将来的にどうなるかの判断は難しいところやが、現時点においては、それほどインターネットに対して脅威に感じる必要はないということや。

数字が、それを示している。

「新聞離れ」が顕在化したのは、バブルが崩壊して世の中に不景気感が蔓延しだした頃からで、2008年のリーマン・ショック以降、それがより顕著になっているのは間違いない。

実際、それ以降、新聞の購読部数は激減の一途を辿っていった。

ただ、それを多くの人はインターネットの台頭による影響でそうなったと勘違いしたわけや。

ワシらですら、そう考えたさかいな。根本的な部分を見逃していた。

一般家庭では生活が苦しくなり、家計の節約をしようと考えた場合、真っ先にその候補に挙がるのが新聞代なわけや。これは昔から変わらない。

新聞は、衣食住のように人間が生きていく上で絶対に必要というほどのものではない。あればええという程度のもんや。

つまり、新聞は生活に余裕のある時に買って読む物という認識が一般の人にはあるということやと思う。

金をかけずにニュースや事件を知るにはテレビもあるし、インターネットもある。そう考えれば、いの一番に始末の対象になるのも、ある意味仕方がないかも知れん。

新聞の部数減の最大の要因は、この不景気感の蔓延にあると思う。

その証拠に、高度成長期やバブル期のように経済的に何の不安もない時代に、「新聞代を始末しよう」、「新聞は必要ない」という発想など、まったくなかったさかいな。

今の若者が「新聞離れ」になっているのも、就職難で就職ができないことや仕事があっても低賃金に甘んじていることなどにより、経済的に苦しい立場に置かれているからやと思う。

「余裕がない」「金がない」という現実が、「新聞は必要ない」という結論にさせとるのやろうと。

新聞そのものが本当に嫌いで批判している者は、ホンの一部でしかないと考える。

もっとも、ネットでは、そういう人たちの言論が多いから、それだけを見ると、そんな意見ばかりがあるように思いがちやがな。

世の中が好景気になれば、ほぼ間違いなく新聞の立場は持ち直し、復活するものと思う。

新聞の敵はネットやなく、不景気や。

冷静に考えて、現在のネットメディアに新聞の代わりができるとは到底考えられんさかいな。そこまでの成熟度はネットメディアには、まだない。

また、今のままのネットのあり方では新聞には遠くおよばない。それについては、話すと長くなるので、いつか別途に話すつもりや。

ここでは、新聞の欠点より、ネットの欠点、危険度の方が、はるかに高いとだけ言うておく。危ういのは、むしろネットの方やと。

話を元に戻す。

日本新聞協会や日本新聞販売協会の「軽減税率」が聞き入れられたとして、それで上手くいくと考えているのなら甘いと言うしかない。

問題は消費税増税そのものにある。

自民党政府は景気に対して甘い見通しをしとるようやが、消費税増税が実施されれば一般消費者は物を買い控えるようになるのは目に見えとるさかい、もっと深刻な不景気が訪れるものと思う。

政府もアテにしていたほどの消費税増税分の税収など見込めないどころか、ほぼ確実に国の税収は減るはずや。

消費税により国の税収が増えるのは、経済活動が活発になってこそやさかいな。

しかし、日本政府は経済活動が悪化してバブルが弾けた1898年から消費税の導入を始めた。世の中が不景気になってから、そうしたのでは逆効果にしかならない。

それが今日の不景気を招いた最大の原因やろうと思う。

不景気になれば、一般購読者の中には新聞を読みたくても新聞代すら払えないという人が出てくるのも仕方がないわな。必然的に部数も減る。

しかも、生活する上での優先順位が低いとなれば尚更や。

つまり、新聞は、社会や生活に余裕のある時に買って読む物というのが正しい捉え方やと思う。

新聞にとって不景気が最大の敵やというくらいは新聞社も知っていたはずや。

しかし、日本新聞協会は、消費税が初めて導入された1989年(税率3%)時はおろか、増税されて税率が5%に引き上げられた1997年でさえ、今回のような主張はせず、他の商品と同じように新聞1部について、しっかりと税金分が付加されて販売されていた。

一貫して、最近の新聞社の論調は消費税増税容認傾向にあった。終始、「消費税増税実施」を前提とした報道ばかり繰り返していたさかいな。

どうも、それは表面的な「軽減税率」を得るという目的のためやったようや。

政府に阿(おもね)っていれば、「軽減税率」が得られ、万々歳やと。

もっとも、先に新聞各社は法人税の減免措置を受けとるということもあり、表立って消費税増税の反対が、し辛いのかも知れんがな。

いずれにしても、その背景を知れば知るほど、あまりのアホさ加減に涙が出てくる。

新聞が本当に今以上の部数減を避けたければ、最初から消費税増税に反対するべきやった。

それをしなかったことにより、日本の社会に不景気を招き、結果として新聞の大幅な部数減を誘発してしまった。

自らの立場だけを優先させた結果、まさに自爆した形になってしもうたわけや。自業自得と言うてもええ。

それを今頃になって新聞の「軽減税率」のみを求めても遅いと考えるがな。

新聞というのは本来、世情を把握し、情報を正しく伝える媒体のはずでありながら、そのことがまるで分かっていない。

現在、日本新聞協会が標榜する『民主主義社会の健全な発展と国民生活に寄与する新聞』と言えるほどの役割はないと思う。

それどころか、消費税増税に荷担することで、国民の生活をより苦しくしている。

それが結果としてブーメランのように我が身に返ってきとるわけやけどな。

新聞社は所詮、営利目的のために情報としての新聞を発行しているだけの単なる企業体の一つにすぎない。他の書籍、情報媒体と何ら変わらない。

一般企業であれば、商品が売れるか売れないかは、その企業の努力次第のはずやが、新聞はその努力をせず、売れ行きが怪しくなると常に法律の保護を求めようとする。

今回の件も、その一環ということになる。

法律の保護下にいようとするあまり、新聞の使命と称する公権力の監視をするどころか「記者クラブ」という公権力の恩恵、優遇を受けるための組織まで作っとる。

そうなると当然やが、その新聞の報道も公権力の意に沿ったものになりやすくなる。

新聞はそれらの事実を否定するやろうがな。

新聞の最大の矛盾は、営利目的の組織でありながら、「公共の利益」という名の下、まるで国民の代弁者であるかのごとくに振る舞い、法律も我が身に荷担せなあかんという思い上がりにあるのやないかと思う。

その尊大な思い上がりが、自ら裡に「新聞勧誘の実態」、「押し紙」、「記者クラブ問題」といったタブーを生んでも、その事実に蓋をすることしか考えんようになったと言える。

他者に向かっては声高に「自浄作用」を要求しながら、自らは何もなかったかのように装う愚を犯している。

それができた時代は過ぎ去ったと知るべきやと思う。

その考えを改めん限り、新聞に未来はないと断言する。実に哀しく嘆かわしいことやがな。

冒頭のメールにもあるように、新聞販売店にお勤めの多くの方が、真剣に如何にすれば部数を増やせるか、維持できるかということを考えているわけや。

檄を飛ばして現場の人間の尻を叩くだけやなく、自らも血を流す覚悟で取り組んで欲しいと思う。

具体的な提案としては、消費税増税が成った時を、一つのチャンスと捉えて、大幅な値下げをすることや。

その際、新聞販売店の利益保持のためにも値下げ分の代金は、仕入れ代金から差し引かなあかんで。

例えば、500円値引きするとして、現在、新聞社への納入代金が2000円の販売店の場合なら、それを1500円にするという具合や。

新聞社の社員の給料は未だに浮世離れしているほど高い。

作る者の方が売る者より偉いという考えなのかも知れんが、それは新聞業界だけが持っている妄想にすぎん。

あらゆる業界を見れば一目瞭然やが、世の中は製造する方より販売する側の方が圧倒的に利益を上げている。

商品は売ってナンボやさかい、それが自然なんやが、哀しいことに新聞業界は、それとは真逆になっている。

販売している現場の人間ほど、過酷な労働環境に晒されているのが実態なわけや。収入面でも精神面でも肉体的な部分でもそれが言える。

新聞社の人間もそれなりに苦労をしているというのは分かるが、その待遇面でのギャツプは計り知れんほど大きい。労働に見合うものやないということや。

その辺りを是正することから始めて欲しいと思う。

未だに新聞社からはワシらには何も言うて来んが、本気で新聞業界を立て直す気があるのなら、およばずながらワシらも協力するつもりがある。

そのためのアイデアなら、いくらでもあるさかいな。

しかし、ワシらは新聞社のためやなく、あくまでも現場の新聞販売店の方々、拡張員の方々のためにということを言うとく。

新聞社の利益のために動くつもりはないと。



参考ページ

注1.第243回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞の実像その7……日本新聞協会の軽減税率を求める声明の矛盾とは

注2.NO.1250 他の新聞社さんはどのような増税対策をとっているのでしょうか?

注3.第147回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■新聞代の適正価格って、いくら? アンケート募集

注4.ゲンさんのお役立ち情報 その7 新聞の適正価格アンケート情報

第150回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■新聞の適正価格アンケートで見えてきたもの

注5.NO.1251 細かいことは分かりませんが


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