メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー
第284回 ゲンさんの新聞業界裏話
発行日 2013.11.15
■『特定秘密保護法案』が21世紀最大の悪法と言われる理由について
今国会において『特定秘密保護法』と名前を変えて、昔と似たような法案が提出され審議されている。
「手を変え品を変え」というのは、まさにこのことやろうと思う。
8年前の2005年7月8日、最初に旧メルマガで『第48回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■共謀罪について』というのを取り上げて以降、政権は変われど、その時々の政府は『共謀罪』、『国家機密法』、『スパイ防止法』、『秘密保全法』などの類似した法案を次々と提出してきた。(注1.巻末参考ページ参照)
それらの法案は、ことごとく廃案になってきたが、権力を握る者たちにとって、あきらめるという言葉はないようや。
『特定秘密保護法』というのは、民主党前政府が3年以上前の2011年1月に提出した『秘密保全法』の焼き直し法案と言っても差し支えないと思う。
情報を漏洩した際の最高刑が懲役10年というのは『秘密保全法』と同じやさかいな。
名称は『保全法』から『保護法』へとソフトな印象を持たせようとしているようやが、その中身はより悪質化している。
当時、野党だった自民党の谷垣禎一総裁は、民主党政府の『秘密保全法』法案に真っ向から反対していた。廃案に追い込んだ人でもあった。
それには、氏は昔からその手の法案に対しては反対論者だったということが大きかったようや。
中曽根政権時代の1985年に自民党が提出した「国家秘密法案」に真っ向から反対していた人でもあったさかいな。
その谷垣禎一氏が法務大臣になった途端、まったく同じとも言える『特定秘密保護法』を推進しようとしとるのやから恐れ入る。
立場が違えば、考え方も違うてくるということなのやろうか。
ご本人にすれば、いろいろ事情と言い分がおありなのやろうとは思うが、悪いけどワシには信念の欠片もないようにしか見えん。
最近では、小泉元総理が福島第一原発事故以降、原発推進の立場から脱原発論者に変わったというケースがあるが、それは過去の過ちに気づかれたからで、同じ心変わりでも、えらい違いや。
一方は過ちに気づき正そうとしていて、一方は過ちと知りつつ過ちを犯そうとしとるのやからな。
『特定秘密保護法』は一言で言えば、国民に情報を隠すことが目的で、情報を洩らした者を厳罰に処するためのものということになる。
さらに言えば、政府にとって都合の悪い情報を守るために、国民の目と耳と口を塞ぐための法律でもあると思う。
この法律では、情報の漏洩を実行していなくても、それをしようとして共謀したという疑いだけで罪に問い、投獄することができるようになっている。
例え、その事実がなく証拠がなくても「疑い」があるというだけで逮捕も可能で家宅捜査もできるということや。
そんなことはないと政府は否定しているが、そんな便利な法律ができれば警察や公安がそれを利用せんわけがない。
警察や公安に逮捕されたという事実だけで、例えそれが後に無実と判明しても、その人は法を犯した人間というレッテルを貼られ、社会的な信用を落とすことになる。
つまり、その事実が何もなくても、権力側がその人物を社会的に抹殺したいと思えば、それが可能になるということや。
また、その捜査状況そのものを「秘密事項に関する事」と指定すれば一切公開する必要もないとされとるから、これほど権力側にとって有り難い法律はないわな。
しかも、何を秘密にするかは、それぞれの行政機関の長がするということになっているさかい、それこそやりたい放題のことがやれる。
この法律の作成に関して、内閣官房や外務、防衛両省以外に、警察庁と公安調査庁のメンバーが加わっていて、両庁が当初から主導的な役割を担っていたという事実が明るみになっている。
その警察庁と公安調査庁のトップが何を「秘密」にするかを決める権限があるとされとるわけや。
しかも、この法律には、警察庁と公安調査庁のやり方をチェックする機能がまるでない。
もっとも、チェック機能のついた法案では警察庁と公安調査庁にとって意味がないやろうがな。
現在のままの『特定秘密保護法』が成立してしまえば、特定秘密を盾に警察や公安の捜査が暴走し、歯止めが利かなくなるのは目に見えている。
特に監視活動が主体の公安捜査は現状でも行き過ぎる傾向にあり、国民の人権がないがしろにされる危険が極めて高いと言える。
現在の日本国憲法では、国民の人権とプライバシーは保障されているが、この『特定秘密保護法』は、それとは正反対のものやから、このまま成立しても必ず大きな軋轢生むはずや。
特定秘密を扱う立場の国家公務員およびその情報を扱うことになる業者は、特定秘密を扱うのにふさわしいかどうかを調べる「適性評価」を受けなければならないとされている。
本人はむろん、親戚縁者の犯罪歴、逮捕歴。本人および家族の国籍や住所。借金の有無。飲酒の節度。関係している宗教や団体。交友関係など、ありとあらゆる個人情報が徹底的に調べられるという。
調べる対象は日本に住む人、すべてと言うても過言やないと思う。
その「適性評価」で不合格と判断されると、仕事そのものができなくなり、左遷されたり解雇されたりする可能性もあると言われている。
それを裏付けるような報道記事がある。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131111-00000090-mai-pol より引用
<衆院特別委>「海自で思想調査や通話記録提出誓約の疑い」
防衛省が防衛にかかわる秘密を取り扱う海上自衛隊員を選別する際、思想・信条調査をしたり、携帯電話の通話記録の提出などを誓約させたりしている疑いがあることが分かった。
11日の衆院国家安全保障特別委員会で、赤嶺政賢氏(共産)が内部資料とみられる文書を示して指摘した。
小野寺五典(いつのり)防衛相は「承知していない」と否定したが、事実なら憲法が保障する思想・信条の自由に抵触する可能性がある。
赤嶺氏が示したのは海自の「適格性身上明細書記入要領」(2009年10月版)など。共産党本部に先週郵送されてきたといい、宗教や政治を含む所属団体のほか、友人や交際相手の氏名、住所、生年月日、職業、国籍−−などを本人の同意を取ることなく記入するよう求めている。
情報保全部署から求められた場合は携帯の通話記録を提出したり、事故発生時にはポリグラフ(うそ発見器)検査に協力したりする−−などとした誓約書を提出することも求めている。
防衛省は現在、全体の約27万人のうち、防衛秘密などを扱える職員や自衛官ら約6万人を「適格性確認制度」に基づいて選別しているが、法的根拠はない。
衆院で審議中の特定秘密保護法案が成立すれば、防衛分野の特定秘密を扱う自衛官らを対象にした法に基づく「適性評価」制度ができるが、思想・信条調査は許されていない。
これなどは、『特定秘密保護法』の成立を見越して先行してやったのやろうと思う。
『特定秘密保護法』の成立前でも、これやのに成立すると、どうなるか説明するまでもないわな。
いずれにしても、この法律は国民には何も知らせずとも済む『秘密優先国家』を作り上げるためのものには間違いないと考える。
共産主義国家、独裁主義国家がそうであったように。
いずれにしても成立すれば、為政者にとっては夢の法律ということになる。
民主主義国家で、そんなことが許されるはずはないと思いたいが、その許されるはずのないことを自民党政府はやろうしている。
今は「ねじれ国会」も解消され、以前のように反対されても最終的には数の力で押し切れると踏んでいるはずや。
現在の状況が『特定秘密保護法』を成立させる上で、おそらく戦後の日本政府史上、最大のチャンスやろうと思う。
その法律を作ろうとしているのは表向き、総理や政府与党の国会議員ということになっとるが、実際には各省庁の高級エリート官僚たちが、その法案を作成している。
この『特定秘密保護法』の成立こそが、一部の高級官僚たちの悲願やろうと考える。
今までは、国会に情報を提出しろと言われても黒塗りだらけの書類を提出してでも必死にごまかす必要があったが、これからは「それは秘密です」と言えば、すべてそれで済むさかい、そうすることもなくなる。
何の言い訳もせず好き放題のことがやれる。
国会など無視して、自分(官僚)たちが大手を振って堂々と勝手に国を動かせるわけや。政府ですら飾り物にできる。
それが、どれだけ恐ろしく、危険なことか、残念ながら多くの国民にはまだ分かっていない。
この『特定秘密保護法』が、日本にとって21世紀最大の悪法やということが。
「特別秘密」を取り扱うことになる所管の省庁やその仕事、役割について何の知識もない素人同然の大臣が就任することも、この国ではそれほど珍しくない。
しかも任期は長くても1年ほどや。早ければ数ヶ月で交代する。
そんな状態で職務など遂行できるわけがない。単なる「お飾り大臣」で終わる者の方が圧倒的に多い。
勢い、いつの時代にも不変であり続ける官僚たちに実務を任せるしかなくなる。頼らざるを得ない。
そのため一部の高級官僚たちは好き勝手に「特別秘密」の指定ができるようにと条文を考えたわけや。
ごく稀に、小沢一郎氏のように、好き勝手な官僚たちに待ったをかけようとする有力な政治家が現れると、ありとあらゆる手を使い、その力を削ごうとする。
その典型的な事案が、検察と結託してでっち上げた「越山会虚偽記載事件」やと思う。
初めから小沢一郎氏が無罪になるのを承知していて、その時点での評判を貶めて要職から追放、政治生命を奪う目的のためだけに、官僚たちが総力を挙げて画策したとワシは見ている。
起訴させるだけで小沢一郎氏の信用を失墜させられると踏んで。そして、それは大成功を収めた。今までのところは。
現在、高級官僚にとって怖い政治家など一人もいない。官僚天国日本、官僚国家日本と言うても過言やないと思う。
それについては、このメルマガ誌上で幾度となく話してきたから、ここでの言及は控えさせて貰う。
たいていの人は、『特定秘密保護法』が成立しても自分には関係ないと考えているようやが、実は大いに関係があるということに気付いて欲しい。
もしかしたら、その法律が成立した直後、何も身に覚えがないにもかかわらず『特定秘密保護法』によって投獄されるという事態が起きるかも知れへんのやさかいな。
3年前の民主党政府の『秘密保全法案』よりも悪質さが数段増しているさかい、そう危惧せずにはいられない。
それを裏付ける記事や。
http://mainichi.jp/select/news/20131110k0000e010124000c.html より引用
秘密保護法案:秘密の範囲、民主案より拡大
衆院で審議が始まった特定秘密保護法案は、民主党政権が提出を検討していた当時の案に比べ、秘密の範囲が拡大されていることが分かった。
法案を所管する内閣官房は「変更はない」と説明してきたが、実際には秘密の対象に「特定有害活動(スパイ活動など)の防止」が加わっていた。
警察当局などの情報収集活動が一層チェックしにくくなる内容になっている。
◇スパイ活動防止を追加
民主党政権が提出を検討していたのは「秘密保全法案」。対象は(1)防衛(2)外交(3)公共の安全及び秩序の維持??の3分野だった。
審議中の今回の法案は(1)と(2)は同じだが、(3)は無くなり、「テロリズムの防止」と「特定有害活動の防止」に変わった。
法案を所管する内閣官房はこの変更について「より具体的にした」と説明し、秘密の指定範囲には変更がないと説明してきた。
ところが、赤嶺政賢衆院議員(共産)が入手した民主党政権時代の政府資料で、説明は事実と異なることが判明した。
資料には(3)について「主として我が国におけるテロリズム防止等に関するものに限定」すると記載。特定有害活動が含まれていなかった。
「特定有害活動の防止」が加わったことで、日本の機密を探ろうとする外国のスパイや日本の協力者の情報のほか、海外からの不正アクセスを防ぐために日本が講じている措置なども対象に含められた。
「スパイ」や「協力者」の定義はあいまいで範囲は不明確。
さらに、さまざまな情報収集活動を含むため、警察当局などの活動の多くが「特定秘密」となり、知らないうちに市民の情報が集められ、その行為をチェックすることはより難しくなる。
昨年、民主党で法案検討のプロジェクトチーム座長を務めた大野元裕参院議員は「スパイ防止は入っておらず、スパイを取り締まる『防ちょう法』を作るつもりはなかった」と証言した。
一方、自民党で法案を取りまとめる際にプロジェクトチームの座長を務めた町村信孝元外相は9月「安全保障が問題になっている時に、日本は相変わらず『スパイ天国』と言われると(米国などから)必要な情報を受けるのが難しくなる」と、スパイ防止の必要性を強調した。
この記事にある『特定有害活動(スパイ活動など)の防止』というのは、それを扱う公安当局にとっては実に便利なもので、『「スパイ」や「協力者」の定義はあいまいで範囲は不明確』という点を利用すれば、どんな人にでも適用できるわけや。
狙いの人物が「スパイ」や「協力者」だという証拠がなくても、怪しいと判断するだけで、いくらでも取り調べのためと称して逮捕できるさかいな。
公安当局が『日本の機密を探ろうとする外国のスパイや日本の協力者』と認定した人物と、友人関係になったり、たまたま酒場で隣り合わせになって話したりしたというだけで「怪しい」とされ調べられる可能性がある。
あるいは「共謀した」と見なされて逮捕、拘留されることも十分考えられる。
そんなバカなことなどあるはずなどないと思いたいが、そのバカなことが現実のものになる危険が『秘密保護法』には高いわけや。
今まで、警察や公安の取り調べの可視化を拒否し続けてきたのは、それを制度化してしまうと、『秘密保護法』が成立した場合の足枷になると考えたからに外ならんと思う。
理論上、可視化にしたものを秘密にするわけにはいかんさかいな。逆に言えば、可視化さえしなければ、いくらでも秘密にできるということや。
法律は一部の権力者のためにではなく、国民のためになるものやなかったらあかん。その意味で言えば『秘密保護法』は、絶対に国民のためにはならん。
国家のために国民を監視して縛る法律やさかいな。
誰が、そんな法律を望むと言うのやろうか。権力に与する人間以外はおらんやろうと思う。多くの国民は絶対にそんな法律など望まないと確信している。
国民の望まない法律は作るべきではない。また作ってはいかん。当たり前のことや。
その当たり前のことが、今の自民党政府や自民党の議員には分かっていない。誰のための政治なのかということすら忘れてしまっているようにしか見えない。
一部の官僚たちに踊らされ操られて、それが自分たちの手柄になると信じ切っている。
消費税増税も結局、財務省の目論見どおり民主党、自民党の政治家を操って思いのままに実行に移せたし、日本国憲法ですら自分たちの都合のええように変えることができると信じているようや。
奴らの欲望は、最早、際限のない状態になっている。このままでは日本は、どうしようもない国になる。とても民主主義国家とは言えないに国に成り下がってしまう。
その危険を感じているからこそ、新聞やテレビメディア、ネットメディア、法曹界など数多くの組織と団体が反対を表明し、声を上げとるわけや。
もちろん、ワシらのような一般市民も反対の声を上げとる。
発案から30年近く経った今まで手を変え、品を変え法案が提出されながら、そのすべてで成立せんかったのは、そういう力が働いたからや。
政府はこの『特定秘密保護法案』について広く国民から意見を募るという形でパブリックコメントを求めている。
これについては、民主党政府の時代の2011年の10月のメルマガ『第176回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■秘密保全法制を進める民主党政府……その2 懲りない愚案再び』(注1.巻末参考ページ参照)の中で「秘密保全に関する法制の整備に係る意見募集について」で話したことがある。
そして、自民党政府も今年の9月に僅か15日間という期間やったが、特定秘密保護法案のパブリックコメントの募集をしている。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2013102602000133.html より引用
意見公募異例の9万件 8割の反対無視
政府が閣議決定した特定秘密保護法案。政府が行った法案の概要に対するパブリックコメント(意見公募)では約八割の国民が法案に反対したにもかかわらず、自らがその結果を無視し、閣議決定に踏み切った。
政府は九月に意見公募を実施。わずか十五日間の公募期間に九万四百八十件の意見が寄せられ、反対が77%にも上った。賛成はわずか13%だった。
反対の主な理由は「国民の知る権利が脅かされる」「特定秘密の範囲が不明確」という当然の指摘だった。
政府が法案などを閣議決定する前に行う意見公募で、約九万件の意見が寄せられたのは極めて異例の多さ。この法案に対する国民の不安が浮き彫りになった。菅義偉(すがよしひで)官房長官は記者会見で、反対意見が圧倒的多数を占めたことについて「しっかり受け止めるべきだ」と語っていたが、ほごにした。
自民党政府は、この法案を提出する前に国民から意見を聞いていて、その結果が『わずか十五日間の公募期間に九万四百八十件の意見が寄せられ、反対が77%にも上った。賛成はわずか13%だった』にもかかわらず、その声に耳を貸そうともしていない。
単に「意見を聞きました」というアリバイ作りで終わっている。これほど国民を愚弄した行為もないやろうと思う。
ちなみに、ハカセも2年前の『秘密保全法』の時と、今回の『特定秘密保護法』で募集されていたパブリックコメントを送っている。
その内容についての記載は、ここでは控えさせて貰う。それによってハカセの存在が当局に知れると、どんな不利益を被ることになるか分からんさかいな。
まあ、どんなことが書かれているかは想像できると思うがな。
『特定秘密保護法』の趣旨は、国の安全、外交、公共の秩序維持に関わる情報のうち、「国の存立にとって重要な情報」を新たに特別秘密に指定し、それを扱う公務員や民間人(業務委託先)の適性評価制度を導入するものやという。
業務委託先で働く民間人自身やその家族、その友人に至るまで身辺調査をし、情報を漏洩した人、および漏洩の共謀や扇動した人までを厳罰に処するという内容になっている。
もう分かったと思うが『その友人に至るまで身辺調査』という文言を入れた時点で、すでに際限のない拡大解釈によって取り締まることができるように仕組まれているわけや。
その範囲など、いくらでも膨らませることができるさかいな。友達の友達は、みな友達と見なしさえすれば、極端な話、誰でもその法律を適用することができるようになる。
さらに問題になるのは、『国の存立にとって重要な情報』の範囲が何なのかが、具体的に示されていない点や。
曖昧なまま、取り敢えず「公務員」を対象にするということにしておけば、今までのような反対はされず、比較的スムーズに法案が成立するやろうと考えとるフシがある。
民間人(業務委託先)の適性評価制度にまでは批判の対象にはならないやろうと。誰もそれがトラップ(罠)やとは気づかないやろうと。
法案に『新たに特別秘密に指定し、それを扱う公務員や民間人(業務委託先)の適性評価制度(本人・家族・友人などの身辺調査)を導入し、その情報を漏洩した人、および漏洩の共謀や扇動した人を厳罰に処する』というくだりがあるが、本当に『公務員』のみを対象にするのなら、『民間人(業務委託先)』を付け加える必要はないはずや。
一見、『公務員や民間人(業務委託先)』とすることで、同じ枠内の人間のみと限定させているかのように思わせているが、実際は違う。
正しくは『公務員や民間人(業務委託先)』とは、『国民すべて』にかかるものになるということや。真の狙いもそこにある。
そもそも、漏洩してはいけない情報なら、それを扱う公務員を厳しく教育して管理すれば済む話やと思う。
また漏洩したら困るような情報を、外部の民間に業務委託することの方が間違っていると考えるがな。
情報管理の基本は、秘密裏に情報を共有することにあるとされている。
故事にも『事は密なるを以て成る』というのがある。
秘密にしたい事があれば、信頼のおける者以外とは情報の共有をしないということに徹すればええだけの話やと思うがな。
賢い官僚たちやから、その程度のことは疾うに分かっとるはずや。
本当の目的は、そこにはないからこそ、『特定秘密保護法』の成立に拘っているというのが正しい見方やろうと思う。
どんな形であれ『特定秘密保護法』という名称の法律を作りたいのが本音やと。
その一心で、賢い官僚たちが長年に渡り、『共謀罪』、『国家機密法』、『スパイ防止法』、『秘密保全法』などといった名称の変更を続けながら、一貫して同類の法案を作り続けとるわけやさかいな。
しかし、世の中は、それほど甘くはない。明らかな悪法は穴も大きく、それを見つけ警鐘を鳴らす者も多い。
確かに官僚たちは賢い人間の集まりやが、世の中には、それ以上の人物、識者はいくらでもいる。
特にネット上で、それを発信する識者の数は官僚たちをはるかに凌ぐ。
今までは、そういった識者たちの警鐘で事なきを得てきた。ワシらも及ばずながら、その末席から叫んでいるわけやけどな。
今一度、はっきり言う。日本に『特定秘密保護法』などというものは必要ないと。
以前のメルマガ誌上でも言うたが、そもそも『特定秘密保護法』がなくても、今回の目的とされとる公務員の秘密漏洩に関する法律と罰則はすでに現行法でも「守秘義務」として、きちんとした形で存在している。
自衛隊法、刑事特別法、MDA秘密保護法、国家公務員法などのすべてに「守秘義務」があり、それらの法律で実刑判決も科せられるようになっているさかい、今のままでも十分機能している。
具体的には、その守秘義務について、国家公務員法の第100条に、『公職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする』という条文がある。
これに違反すると、『1年未満の懲役又は50万円以下の罰金に処せられる』とある。
地方公務員法でも、その第34条に、国家公務員法の第100条とまったく同じ内容の条文がある。
こちらの罰則は、『1年未満の懲役又は3万円以下の罰金に処せられる』とあり、国家公務員法より罰金面で軽めではあるが、懲役刑に関しては同じや。
独立行政法人通則法の第54条でも、上記の内容とほぼ同じ条文が記載されとる。
これの罰則は、国家公務員法の第100条と同じ『1年未満の懲役又は50万円以下の罰金に処せられる』ということになっとる。
この他にも国立大学法人法の第18条にも国家公務員法の第100条と同じ条文、同じ罰則規定がある。
上記は公務員、もしくはそれに準じる者への守秘義務やが、民間においても同じように厳格に決められている。
良く知られている医師や弁護士などの守秘義務については、刑法第134条1項で、『医師、歯科医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する』というのがある。
この刑法第134条の2項には『宗教、祈祷若しくは祭祀の職にある者又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときも、前項と同様とする』という規定がある。
これらの他にも守秘義務に関する法律には、弁護士法第23条、司法書士法 第24条、郵便法第8条、電気通信事業法第4条、電波法第59条、探偵業適正化法第10条、保健師助産師看護師法第42条、技術士法第45条などに、それぞれの規定がある。
つまり、「特定秘密保護法」に関しては、その法律が何もないから作るというのとは違うということや。
現在でも、それに対して機能する法律が立派にあるわけで、今更、取り立てて作る必要などないと思う。
罰則にしても軽いのならば、それぞれの法律で厳罰化すれば済む話や。
それやのに、なぜ敢えて反対される可能性の高い『特定秘密保護法』の成立に拘り続けるのか。
その狙いは一つしかない。
それは先にも言うたように、国家による情報統制を目論(もくろ)んどるからに外ならんということや。
それでは情報統制に徹した共産主義国家や独裁国家と何ら変わりがなくなる。
この法律の制定は、日本をそのレベルの国に引き下げようとしていると言うても過言やないと思う。危険極まりない悪法やと。
問題はまだある。
政府が特別秘密に指定した場合、それが適切かどうかについて、第三者機関による審査もされなければ、それにより被害を受けた国民が裁判所への訴えすら起こせんという点や。
それらの事実も当然のように情報統制されるわけやから、被害を受けた国民すら存在しないことにされかねん。
そのすべてを特別秘密指定とすることで隠蔽できてしまうわけやさかいな。
いや、隠蔽という言葉自体が、この法律の成立により死語と化すかも知れん。
その上、過失や教唆も厳罰に処することにより、権力による報道機関や市民運動の監視が行われるのは、ほぼ間違いないやろうと思われる。
国会の答弁では「報道の自由を保障する」とは言うてても、実際の条文では、未だにそれらは単なる「努力目標」ということにしかなっていない。
そんな不確かなものが信じられるわけがない。
どんなに悪辣なことが行われていようと内部告発など絶対にできん仕組みを構築するつもりなのは明白や。
国家権力側の不祥事の隠蔽が、今よりさらに進むのは確実やと思う。
現在、不十分ながらも情報公開法というのがあるが、それすらも、この法律の成立により意味のないものになってしまいかねん。
特別秘密指定になっていると言い出しさえすれば、情報公開法による開示請求など一蹴できるわけやさかいな。
まあ、それもこの法律の狙いの一つやろうがな。
事ほどさように悪法の極みでもある『特定秘密保護法』など絶対に成立させてはならんと考える。
情報統制された暗黒社会に住むなど、ごめん被りたいさかいな。
しかし、残念ながら今回は、どんなに反対側に理があろうと、この『特定秘密保護法』が成立してしまう可能性が極めて高いとしか思えんような状況や。
反対する野党は最後まで反対するやろうとは思う。しかし、如何せん議員の絶対数が少ない。
衆議院でも参議院でも与党が過半数を得ている。多数決の勝負に持ち込まれれば、それまでや。どうしようもない。
与党の議員の中には、以前の谷垣法務大臣がそうやったように、その手の法案に反対している者も多いとは思うが、小選挙区制で公認を得ようと思えば党に逆らってまで公然と反旗を翻すことができんという弱さがある。
最後には数の力で強引に決められてしまう可能性が高いということや。
これは誰のせいでもない。国民自身のせいや。特に、去年の総選挙と今年の参議院選挙に行かんかった者の責任が大きい。
ワシらは選挙で誰かに投票してくれと言って呼びかけたことはない。ただ選挙には行って欲しいと毎回呼びかけとるだけや。
選挙にさえ多くの国民が行って投票していれば、こんなことにはならんかったはずやと確信しとる。
去年の総選挙は自民党圧勝、民主党惨敗、日本維新の会、みんなの党の躍進、日本未来の党の惨敗、その他の党の伸び悩みという結果に終わった。
しかし、この結果は自民党が国民から圧倒的に支持されたからとは違う。
それどころか、前回、自民党が惨敗を喫して政権を追われた時より、小選挙区、比例区とも200万票以上も票が少ないのである。
これは自民党支持者ですら、多くの人たちが見限ったということを意味している。
本来なら同じように惨敗していてもおかしくはなかったのやが、なぜ圧勝することになったのかと言えば、理由は一つ。
投票率が低かったからや。それも60%にも届かないという戦後最低の最低率やったという。いずれの選挙ともにである。
あまりにも低すぎたことが、国民の総意に背く結果になったと言うても過言やないと思う。
自公の得た議席は325議席で3分の2を超えていて、これは法案が参議院で否決されても衆議院で再可決可能な議席や。
自公の獲得総数は有権者の約32%でありながら、圧倒的多数の議席を占め、残り68%の大多数の有権者は少数派に甘んじなあかんわけや。
何でこんないびつなことになるのかと言えば40%超の人が選挙に行かんかったからや。それに尽きる。
その流れは今年の参議院選挙でも続き、ついに参議院でも与党が過半数を占めるに至った。
それにしても『自民党支持者ですら、多くの人たちが見限った』という事実がありながら、自民党が圧勝してしまうというのは、どう考えても納得がいかんし、釈然としない。
まあ、選挙に行かないというのも国民の選択で、政府に好き勝手にしてくれという意思表示かも知れんが、そんな理屈ではとても納得することなどできんわな。
ワシらは、基本的には「悪法も悪法。法に従うべき」という考えやが、どう考えてもこの『特定秘密保護法』だけはあかん。
例えこの法律が成立しようと、こんな悪法を認めることなどできん。とことん戦う。
数の力で悪法を作ることができたのなら、数の力でその悪法を葬ることもできるはずや。
そう信じて、これからも訴え続けていくつもりや。そう決意している人も多いと思う。
今はまだ『特定秘密保護法』の怖さが分からん人もおられるかも知れんが、いずれ分かる時が必ず来る。
救いは、戦前のように、いくら情報や言論を統制しようとも、ここまでネットが拡大した世界で、そんなことは不可能やという点や。
どんなに隠そうとしても必ず情報は漏れてくる。
官僚と一口に言っても、すべてが権力側の人たちとは限らない。
元経済産業省で官僚の行為について警鐘を鳴らし続けている古賀茂明氏のような人も数多くおられる。
その人たちは未だに官僚として頑張っていて、いろいろな形で告発されている。
その人たちのことを、ここで明かすことはできんが、希望は常にあると考えている。
世の中は、それほど捨てたもんやないと。
それにまだ最後の砦が残っている。
それは、自民党政府が押し進めようとしている『自民党憲法改正案』の成立を阻止することや。
『自民党憲法改正案』が成立してしまうと、本当の意味で『特定秘密保護法』が21世紀の治安維持法に化けて猛威をふるうことになるやろうと思う。
そうなってから慌てても遅い。
今ならまだ日本国憲法の「基本的人権」や「言論の自由」で『特定秘密保護法』に対抗することは可能やさかいな。
幸いなことに『自民党憲法改正案』だけは、生半可な数の論理で押し通すことはできそうにないし、最後には国民投票という救いがある。
今はそれに賭けるしかない。
参考ページ
注1.第48回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■共謀罪について
第49回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■共謀罪についてPart2
第55回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■共謀罪について Part3
第138回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■秘密保全法制を進める民主党政府……共謀罪、国家機密法の悪夢再び
第176回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■秘密保全法制を進める民主党政府……その2 懲りない愚案再び
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