メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー

第286回 ゲンさんの新聞業界裏話


発行日 2013.11.29


■新聞購読契約ガイドライン決定……今後のQ&Aでの影響について


11月21日。日本新聞協会、および新聞公正取引協議会が「新聞購読契約ガイドライン」なるものを発表した。

これは、国民生活センターの『新聞の訪問販売トラブル年1万件 国民生活センターが改善要望』(注1.巻末参考ページ参照)というのに答えたという形になっている。

おそらく、ワシの知る限り、新聞購読契約についての初めてとも言える公式なガイドライン、指針やないかと思う。

今までは各新聞社毎で系列の販売店、拡張団に「常識」と「法律」に則った勧誘を心がけるようにと通達することで済ませていた。

「金券廃止」や「正常化の流れ」などで勧誘の制限は加えている新聞社もあるが、基本的には新聞販売店各自の責任で判断するようにという形で押しつけていた。

そのため新聞の購読契約に関するトラブルや苦情を持ち込まれる新聞社の苦情係は、「契約のことに関しては当該の新聞販売店とご相談ください」と逃げることができた。

しかし、日本新聞協会、および新聞公正取引協議会が公式にガイドラインを決めたことで、今までのように「契約事に関しては新聞社は知りません。タッチできません」という態度では対応できにくくなった。

これは大きな変化や。特にワシらにとってはサイトのQ&Aでの回答に大きく影響する画期的な出来事やと思う。

サイトのQ&Aでは、それまで、こういった業界のガイドラインがなかったから独自にアドバイスするしかなかった。

それこそ「常識」と「法律」、「善悪」に基づいてな。

これからは、このガイドラインをもとにアドバイスできるさかい、かなり回答が違うてくると思う。

日本新聞協会、および新聞公正取引協議会が公式に決めたことに関して異を唱える業界関係者はおらんやろうからな。

業界にとっては、ある意味、法律以上の効力を秘めている。

そのガイドラインの内容を知らせる。


http://www.pressnet.or.jp/news/headline/131121_3380.html より引用


購読契約ガイドライン発表 新聞協会・公取協、解約トラブル防ぐ


 新聞協会と新聞公正取引協議会は11月21日、読者から解約の申し出があった場合の対応の指針となる「新聞購読契約に関するガイドライン」を発表した。

 新聞公正競争規約のほか、特定商取引法、新聞訪問販売自主規制規約を順守し、解約に関してもガイドラインを設けることで、読者とのトラブルを防いで公正な販売活動を目指す。

 ガイドラインは、長期契約をめぐる高齢者からの苦情が目立つとして国民生活センターから改善要望が寄せられたことを踏まえ、策定した。

 解約に応じるべき場合と、丁寧に話し合って解決すべき場合に分け、具体的な事例を列挙している。

 長期や数か月先の契約を抑制するため、公正競争規約の上限を超える景品を提供していた場合は、解約に当たって景品の返還を求めてはならないと定めた。

 また、クーリングオフ期間中の書面による申し出や規約違反、相手の判断力不足、購読が困難になる病気・入院・転居、購読者の死亡、未成年者との契約などを、解約に応じるべき場合として挙げた。

 これらに該当しない読者から都合により解約したいとの申し出があった場合も、丁寧に話し合い、双方が納得できる解決を図らなければならないとしている。

 消費者へは、ウェブサイトを開設して広く周知するほか、各支部協が折り込みチラシを作成し、読者へ配布する。


というものや。

ここに、明記されていないものに「解決に応じるべき場合」では、


○威迫や不実の告知など、不適切な勧誘を行った時。

○相手方が本人や配偶者以外の名前で契約した時。

○契約期間が自治体が定める条例の基準を超過していた時。


があり、「丁寧に話し合って解決すべき場合」には、


○契約事項を振りかざして解約を一方的に断ってはならない。

○過大な解約条件(損害賠償や違約金の請求など)請求してはならない。

○購読期間の変更など、お互いが納得できる解決を図らなければならない。


とある。

このガイドラインをもとに、サイトのQ&Aでの回答の方向性について話しておこうと思う。

これは契約者、勧誘者の双方に気をつけなあかんことがあると言うとく。

契約者、勧誘者の双方が加害者になることもあれば被害者になることも十分あり得るさかいな。

いずれの立場であっても泣きを見ないように注意して欲しいと思う。


新聞購読契約ガイドラインを受けて「新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A」での回答について


解約に応じるべき場合

1.長期や数か月先の契約を抑制するため、公正競争規約の上限を超える景品を提供していた場合は、解約に当たって景品の返還を求めてはならない。

『公正競争規約の上限』とは新聞に適用される景品表示法『6・8ルール』のことで、『景品付与の上限を『取引価格の8%又は6ヶ月分の購読料金の8%のいずれか低い金額の範囲』と決められている』というものや。

6ヶ月以上の長期契約に適用されるのは『6ヶ月分の購読料金の8%』で、一般的な朝夕セット版の新聞購読料金を例にすると、6ヶ月以上の契約の場合に渡せる景品額の上限は、

3925円×6ヶ月×8%=1884円ということになる。

『長期や数か月先の契約』になると、必然的にその分、景品の量が増えるのは業界では常識や。

6ヶ月契約より1年契約の方が景品は多く、2年、3年と増える毎にさらに増えて行くことが当たり前とされていた。

これは新聞販売店、契約者の共通した認識でもある。

しかし、その共通の認識でいくと景品額が『6ヶ月分の購読料金の8%』の1884円を超えるのは、ほぼ間違いないものと思われる。

そうなると、『公正競争規約の上限を超える景品を提供していた場合』ということになり、解約時に今まで当たり前とされていた「渡した景品類の返還要求」をしてはならないということになるわけや。

今までは、例え『6・8ルール』に違反していたとしても民法545条の原状回復義務に照らせば、契約を全うすることを条件として貰った景品類は返還せなあかんと考えられてきたが、そのアドバイスは今後できんということになる。

事、新聞業界の場合、一般の法律よりも業界の決め事、公式な通達の方が重視されるさかいな。

法律上、「渡した景品類の返還要求」に問題がなくても日本新聞協会、および新聞公正取引協議会がNOと言えば、それに従うしかない。

業界にとっては法律を超えるくらい今回の決定は重いということや。

そうなると、自動的に『公正競争規約の上限を超える景品を提供していた場合』は業界の規約違反ということになり、「解決に応じるべき場合」に該当するものと考えられる。

契約者の中には、あこぎな人間も結構いとるさかい、それを逆手に取られる可能性を新聞販売店は考えておく必要があると言うとく。

どういうことかと言うと、契約時『上限を超える景品』と承知で受け取っておきながら、「それは業界の規約違反だから解約したい」と言えば、新聞販売店は、それに応じるしかなくなるということや。

そして、『解約に当たって景品の返還を求めてはならない』と決められているから、景品だけ取られ損ということになる。

契約者が意図的にそれを狙ってしたことやとしても制度的には新聞販売店が泣くことになるものと考えられる。

つまり、長期契約になればなるほど、そのリスクが高くなるさかい、それを避けるためには、なるべく短い契約で繋いでいくしかないということや。

日本新聞協会、および新聞公正取引協議会の思惑どおり、新聞販売店の『長期や数か月先の契約を抑制する』効果が期待できると。

僅かながら逃げ道があるとすれば、景品類の金額が1884円に収まっているから規約違反やないと言えるケースくらいなものや。

一般の人には、あまり知られていないが、新聞販売店が仕入れる景品類は市場価格より格安な商品が多い。また新聞販売店毎に極安品を仕入れているというケースもある。

規約違反やないと言い逃れる程度であれば、解約時にその景品分の返還請求はできる。

『公正競争規約の上限を超える景品を提供していた場合は、解約に当たって景品の返還を求めてはならないと定めた』ということは、裏を返せば『上限を超えない景品を提供していた場合は景品の返還を求めても構わない』と受け取れるさかいな。

ただ、その場合、その商品分の金額の変換要求は1884円以内にせなあかんやろうがな。

新聞販売店が安く仕入れられる商品を一般読者が同じ値段で買って返すわけにはいかんやろうから、金銭での返還というケースになれば、そうならざるを得ない。

これが商品券とかビール券で、『6・8ルール』をオーバーするようなら、どんな言い訳も通用しないから完全にアウトになるということや。

これが、一般的な法律なら施行日以前の契約案件については適用されんケースが多いが、事、新聞業界の場合は決定の通達があった時点で、過去の事案すべてに適用されるものと覚悟せなあかん。

新聞業界では決定事項が何よりも優先されるということからすればな。

そもそも過去の契約やから適用外やということを認めていたら、この決定事項そのものが意味のないものになる。

かなりの割合で『6・8ルール』をオーバーした景品を渡している新聞販売店が多いと思う。

それを例外としていたら現場も契約者も混乱するさかいな。

残念ながら、それに該当する販売店では契約者が解約したいと言えば、それに応じ、景品の返還もあきらめるしかないと覚悟するしかない。

ただ、『消費者へは、ウェブサイトを開設して広く周知するほか、各支部協が折り込みチラシを作成し、読者へ配布する』という中に、「過去の契約分には該当しない」という文言でも入っていたら別やがな。

まず、それはないやろうと思う。

ワシは「縛り」と称する長期契約には、契約者の死亡や引っ越しのリスクが常につきまとうから止めといた方がええと言い続けてきたが、それに加えて拡材の多寡で契約を取るという手法も、今回の決定で終焉を迎えたと言うしかない。

ワシは常日頃から、いつかは拡材一本の契約が行き詰まる時がくるやろうと言い続けてきたが、ついにこんな形でその日が来てしもうたということやな。

拡材だけの拡張に頼ってきた者にとっては厳しい状況になる。

過去のメルマガ『第84回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■2010年からの新聞営業講座……その2 拡材について』(注2.巻末参考ページ参照)の中に、「金をかけずに済む拡材サービス方法のあれこれ」というのがあるので参考にして頂ければと思う。

また『第94回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■2010年からの新聞営業講座……その2 拡材について』(注3.巻末参考ページ参照)の中の「工夫することで、拡材以上の効果的なサービスができる方法」にも、こういった事態になることを想定して役立つ方法を幾つか話しているので見て頂きたい。

拡材に重きを置いてない人、および新聞販売店には問題のない決定やがな。


2.クーリング・オフ期間中の書面による申し出による解約というのは今まで通りや。

このにクーリング・オフついては広く浸透してきているが、時折、サイトのQ&Aに勘違いされた相談が届くことがある。

その中で、最も多いのが新聞販売店、あるいは勧誘員に直接「クーリング・オフ」の申し出をしたというものや。

例え、それで解約になったとしても「クーリング・オフ」にはならんということが分かっていない。

その販売店との間で単なる「任意での合意契約解除」が成立したということにすぎないということが。

ここで、もう一度はっきり言うとく。

「クーリング・オフ」とは、「特定商取引に関する法律」の「第9条、訪問販売における契約の申込みの撤回等」という法律の俗称のことや。

一定の期間内やったら、理由の有無を問わず、またその理由を知らせることもなく消費者側から一方的に契約の解除ができるという法律や。

新聞契約の場合、契約書を受け取った日から8日間がその一定の期間内ということになる。

これは、文書での通知やないとその効力がないと法律で決められている。

具体的には内容証明郵便や配達証明付きハガキ、簡易書留ハガキというのが一般的や。中には、電子内容証明郵便で出すというケースもある。

いずれも日本郵便(JP)でその手続きを取るようになっとるものばかりや。

その詳しいことは『ゲンさんのお役立ち情報 その8 クーリング・オフについての情報』(注4.巻末参考ページ参照)を見て頂ければ分かると思うので、ここでの説明は、これくらいにしとく。

これからも分かるように直接、新聞販売店に言うても「クーリング・オフ」にはならんということや。

その違いは結構大きい。

文書での「クーリング・オフ」の通告の場合は翻意させるための再来訪、再勧誘が禁じられていて、場合によればそうした勧誘員が逮捕されることすらあるが、「任意での合意契約解除」には適用されない。

勧誘員に再来訪して欲しくない場合は迷わず文書で「クーリング・オフ」をすることやと言うとく。


3.従来からの規約違反行為を行った場合は、すべて解約に応じるべきと判定される可能性が高い。

これに関しては『○威迫や不実の告知など、不適切な勧誘を行った時』というのも含まれると思うが、その範囲は広すぎる。

また何を以て「規約違反行為」とするのかという細かい点が、今回のガイドラインには明記されていない。

単に「規約違反」という文言があるだけや。

まあ、後日『消費者へは、ウェブサイトを開設して広く周知するほか、各支部協が折り込みチラシを作成し、読者へ配布する』ということやから、それを見てからコメントするべきやろうが、ここではワシの予測に基づいて話すことにする。

予測とは言うても、ほぼそうなるものと思う。「中(あた)らずと謂(い)えども遠からず」やと。

まず考えられるのが「喝勧」。これは今でも明らかな証拠がある場合はアウト。発覚すれば即、解約事由になる。

言うた言わんの水掛け論になると、それぞれのケースで若干違うが、新聞公正取引協議会あたりの判断は契約者有利に働く傾向にあるようや。

ワシらが新聞公正取引協議会に苦情を持ち込んだ方がええとアドバイスした場合、その多くで新聞販売店側に不利な裁定になっとると聞くさかいな。

苦情を持ち込む契約者の主張を信じる新聞公正取引協議会の担当者の方が多いと。

もっとも、警察の取り調べでも脅迫を受けた被害者の主張に重きを置くケースが多いということやから、新聞公正取引協議会がそう判断してもおかしくはないがな。

「爆行為」と呼ばれる過剰な景品付与、勧誘員による新聞の代理弁済行為などが発覚すれば、無条件で解約事由になる。これは今でも、そうや。

ただ、新聞販売店によれば、「それは勧誘員が勝手にやったことだ」と逃げて解約に応じないケースがあるが、その場合、日本新聞協会、および新聞公正取引協議会がどのように判断するのかという問題がある。

これに関しても明確な指針が必要やろうと思う。

ワシの個人的な見解では、その新聞売店の名前で勧誘している以上、「勧誘員が勝手にやったから関係ない」では済まんやろうと考えるがな。

Q&Aでも販売店に使用者責任があると言うてることでもあるしな。

おそらく、ガイドラインでそれに言及することがあれば、勧誘員、新聞販売店共同罪として「解約に応じるべき場合」の範疇に入るはずや。

「勧誘員が勝手にやったから関係ない」という主張を認めていたら、すべてそれで言い逃れができるさかいな。

「ヒッカケ」のように身分を偽って勧誘するやり方は、すでに2009年12月1日に施行されている『特定商取引に関する法律の改正法』の第3条ノ2第1項「勧誘の意志の確認」により禁止行為に指定されとるから、これもそれと分かれば即、アウトのはずや。

解約の対象になるものと考えられる。

「いい加減な話」、「騙し行為」というのも多いが、これについては確かな証拠、および信憑性の高い状況証拠がないと、それと断定するのは難しいと思う。

ただ、これについてもガイドラインでは「解約に応じるべき場合」に該当する可能性が高いのやないかという気がする。

同じく契約者に有利な判断になるのやないかと。

それぞれのケースで判断することになるが、このガイドラインができたことで、従来の違反行為については勧誘員側に不利な結果になるのは間違いないやろうと思う。

ワシらが扱ったQ&Aでも大半は勧誘員に非のあるケースが多かったさかいな。

結論として、「喝勧」や「爆行為」、「ヒッカケ」、「いい加減な話」、「騙し行為」による勧誘の場合は「疑わしきは契約者の有利に」ということで統一されるはずや。

いずれも現時点でも完全に規約違反やが、それがより契約者の主張に沿った判定をされるようになるやろうと思う。


4.契約者の判断力不足につけ込んだ契約は無効、解除になる。

「契約者の判断力不足」の定義は「認知症」かどうかが判断の基準になるようや。

認知症患者と診断された人、通院歴のある人は問題なく「判断力不足」と判定されるやろうが、それ以外で、そうと決めつけるのは難しいのやないかと思う。

ありがちなのが高齢者であるというだけで「判断力不足」とされるケースやが、「認知症」でもないのに、そう判定するのは、高齢者は「バカや」と言うに等しいことや。

こんな失礼な話はないし、第三者がそう決めつけるのは人権侵害になるおそれがある。

高齢者イコール「判断力不足」の人とは言えんさかいな。

例えば、ワシの父親と同年代の俳優、高倉健氏は、現在82歳やが、誰も氏を「判断力不足」の高齢者やとは考えんやろうと思う。

どこからどう見ても凄い人、しっかりとした人としか見えん。そういう人は世の中には無数におられる。

これから日本は本格的な高齢者社会に突入する。拡張員にしても、すでにかなり前から高齢化が始まっている。

御年70歳代の拡張員もザラにいとる。変な言い方やが、高齢者が高齢者を勧誘する時代でもあるわけや。

年齢だけで言えば、どちらが弱者とも言えんような時代に、これから突入するわけや。

今回のガイドラインの策定において、『長期契約をめぐる高齢者からの苦情が目立つ』ということが大きな要因になっているさかい、その高齢者の扱いをどうするのかという点が問われるものと思う。

ガイドライン、指針というのは一定の条件での線引きということになりやすいから、年齢で区切る、あるいは判断するということにならざるを得んが、慎重に取り決めな、それこそ契約者の反感を買うことになる。

まあ、その辺りも詳しいガイドライン、指針が出んことには何とも言えんがな。

ただ、今のところは、『「契約者の判断力不足」の定義は「認知症」かどうかが判断の基準になる』ということで落ち着きそうや。

長年Q&Aをやっている経験から『高齢者からの苦情』よりも、そのお子さんたちからの相談の方が圧倒的に多いという傾向がある。

その回答時には必ず、そのお父さん(お母さん)の意見を尊重してあげて欲しいとは言うとるが、高齢者のお子さんたちから「うちの父(母)の判断力が弱っているから契約を解除して欲しい」と言われた場合、難しい判断を迫られるのやないかと思う。


5.購読が困難になる病気・入院の場合は解約を認める。

これはQ&Aでアドバイスしている立場から言わせて貰えれば、有り難い決定やと思う。

サイトのQ&A『NO.1248 入退院を繰り返す場合の解約、休止と先付け契約について』(注5.巻末参考ページ参照)の相談に、


H24年1月より、独居の84歳の母(敷地は隣ですが別世帯です)が末期ガン治療のため、1ヶ月の入院+退院後2週間の在宅を繰り返しています。

中略。

有期の継続的供給契約は正当事由がないと一方的な解約はできないことは承知していますが、入院のような場合は正当理由と扱われるのでしょうか。


というのがあった。

今回のようなガイドラインでの取り決めが当時、まだなかったために、


契約者側から一方的に契約解除ができるのは、「クーリング・オフでの解約」、「契約時の不法行為などによる契約解除」、「引っ越しにより当該の新聞販売店の営業外地域に移転する場合」、『契約者の死亡(但し、夫婦の一方が存命の場合は引き継がれる可能性が高い)』くらいしかないとされとる。

そちらの『H24年1月より、独居の84歳の母(敷地は隣ですが別世帯です)が末期ガン治療のため、1ヶ月の入院+退院後2週間の在宅を繰り返しています』というご事情はよく分かるが、『入院のような場合は正当理由と扱われるのでしょうか』となると、申し訳ないが、難しいと言わざるを得ない。

それは、いくら入院期間の方が長くても帰宅しているという事実から生活の基盤は現住所にあると思われるからや。

病院内に居住を移すということでもない限り、そちらのケースは、やはり現在行われている『休止扱い』が妥当な線やろうと思う。

中略。

今のまま解約しようと思えば、解約違約金の発生を覚悟する必要がある。揉めた場合、煩わしい交渉も覚悟せなあかんことになる。


と、心ならずも回答するしかなかった。

しかし、これからは「購読が困難になる病気・入院の場合は解約を認めると日本新聞協会、および新聞公正取引協議会のガイドラインに明記されとる」と言える。

普通に考えて、「購読が困難になる病気・入院の場合」には購読者が望まれるのなら、金銭的、あるいは精神的な負担を軽減する意味においても解約を認めることが正しい判断やと思う。

ただ、公の場で言及する場合、その根拠がないと「解約できる」とは言い切れんもどかしさがあったが、これからはそれが言える。


6.新聞販売店の営業エリア外へ転居した場合、解約ができる。

これについては、Q&Aを始めた当時から「解約できる」と回答し続けてきた。

根拠は、宅配制度によって新聞販売店の営業エリアが決められていて、その範囲内でしか営業も新聞の配達も認められていないからや。

新聞販売店の営業エリア外へ転居した場合は、新聞の配達ができんわけやから、「契約不履行」状態にならざるを得ない。

その新聞の継続購読を望まないのなら、配達のできん新聞の購読契約など続ける必要がないということでな。

ただ、その新聞の継続購読を望まれるのなら、今までどおり、転居地での引き継ぎ購読をするための転居通報サービスというのを新聞社はするはずやから、その点での心配はないはずや。

もっとも、それまでは『お引っ越し、新住所が決まりましたらお知らせください。当店から新住所の販売店に聯絡します』と、引っ越し先での購読が半ば決定しているかのような文言が書かれた契約書が多かったが、これからは、それが通用せんようになるやろうと思う。

まず、「お引っ越し先でのご購読は、どうされますか?」と購読者の意思を確認せなあかんと考えられるさかいな。


7.購読者が死亡した場合は契約解除できる。

今までは、独居契約者に限って契約解除をする新聞販売店が多かったが、これからはワシらが常々回答で言うてきたように、契約者本人の死亡で契約解除ができるということや。

新聞販売店の中には契約者が死亡しても、その家族がその住所に住んでいることを理由に契約の解除を拒んで新聞の配達を続け、集金していたというケースが数多くあった。

新聞は個人にではなく家に配達しているからと理由で、そう押し切っていた。

これからは、それは認められん。

そもそも新聞購読契約とは、新聞販売店と契約者個人との間に結ばれた契約なわけや。

それを一緒に住んでいるという理由だけで契約者がいなくなったにもかかわらず、一方的に、その新聞の購読を望まない家族に、その契約の継続を強制することの方が社会通念上、異常なことやったと言える。

例えて言えば、家族の誰かが金融機関から金を借りていて、死んでしまったから他の家族にその金を払えと言うてるのと同じやさかいな。

家族が連帯保証人にでもなっていない限り、法律的にも、そんなことは認められんし、またそんな請求をする正規の金融機関もないやろうと思う。

契約というのは契約の当事者の死を以て終了する。当たり前の決定や。

ただ、今までは民法761条に夫婦相互の(日常の家事に関する債務の連帯責任)というのがあって、夫婦の一方の名義で契約していた場合、他方はその契約に従う義務あるということで契約の解除を渋っていた新聞販売店があったが、それについてはどうなるのやろうかと思う。

ワシらも、その民法761条がある以上、夫婦の一方が残っている場合は購読する義務が生じると言うてたが、このガイドラインには、今のところ『購読者が死亡した場合は契約解除できる』としか言及されていない。

そうであるなら、新聞購読契約に関して言えば民法761条は意味のないものになる。

これも後に出てくる『消費者へは、ウェブサイトを開設して広く周知するほか、各支部協が折り込みチラシを作成し、読者へ配布する』という中に詳しく明記されるのやろうか。

もし、なければ一律に『購読者が死亡した場合は契約解除できる』ということやと理解するしかない。


8.未成年者との契約も解除できる。

これについては、民法第4条に、


未成年者と契約するには、原則として法定代理人(親権者)の同意が必要で、同意のない行為は、取り消すことができるというのがある。


とあるから、今まででも法定代理人(親権者)が望めば解約できた。

今回、これをガイドラインに敢えて加えたというのは、その確認をするため、もしくは未成年者との契約は慎重にしろというメッセージやないのかと思う。

未成年者と契約する場合は、初めからそのリスクを覚悟した上でしろと。


9.相手方が本人や配偶者以外の名前で契約した時も解約できる。

これは新しい解釈やと思う。契約者が偽った名前で書いた契約は無効やと言うてるわけや。

これは勧誘員にとっては辛いかも知れんな。これをなくすためには、契約時、常に相手に身分証明書を提示して貰って確認せなあかんということになる。

「契約時には身分証明書の提示をお願いしています」てなことを言えば、「そんなに信用できんのなら契約はせん」と言われかねんさかいな。

普通は、勧誘時にそこまでの確認はしない。

これは、おそらく留守番の高齢者の方が、家長である息子さんの名前で契約して、後でトラブルになったというところから考えられたガイドラインやないかと思う。

ただ、ガイドラインで、そう決められた以上は、それに従うしかない。

契約は契約する人の名前でサインして貰うという基本に立ち帰るしかないと。

まあ、ワシは昔からそうしとるがな。

例えば、その家の奥さんが旦那の名前で契約書にサインしようとしても「奥さんの名前で結構です」と言うてな。

ただ、新聞販売店の従業員のように継続契約を貰う場合は、その延長ということになるから、そうもいかんかも知れんがな。

その場合は契約者を信用するしかない。


10.契約期間が自治体が定める条例の基準を超過していた時に解約できる。

この判断は難しいと思う。単純に自治体と言うても都道府県庁、区役所、市役所、町役場、村役場などを入れると数千もの数に上るさかいな。

自治体が定める条例というても、いろいろあるさかい、そのすべてについて語るのは無理や。

まあ、これは長期契約を阻止する意味で加えたことやとは思うが、自治体の部署毎でしている新聞購読契約の期間は1年というのが圧倒的に多いとのことや。

これについても『消費者へは、ウェブサイトを開設して広く周知するほか、各支部協が折り込みチラシを作成し、読者へ配布する』という内容に明記されているものを確認せんと分からんな。

ただ、感触としては1年以内の契約が無難なところやろうと思う。『6・8ルール』の事もあるしな。


丁寧に話し合って解決すべき場合

1.契約事項を振りかざして解約を一方的に断ってはならない。

新聞販売店の中には、聞く耳を持たんという感じで、「解約には応じない」というケースが多々見受けられたが、これからは、それはできんようになったということや。

この決定もアドバイスする立場からすれば助かる。

今までは、頑なに「絶対解約しない」という相手には強硬手段も辞さない姿勢で望むことやと、少々荒っぽいアドバイスをすることがあったさかいな。

揉め事もその分、長期化するケースが多かった。

これからは、そういう販売店に対しては「解約の話し合いには応じない」とは言えなくなったと一蹴できるさかいな。

もっとも、そういったトラブルがあったからこそ、今回のガイドラインで、そう決めたのやとは思うがな。


2.過大な解約条件(損害賠償や違約金の請求など)請求してはならない。

これも当然と言えば当然やが、どこまでが『過大な解約条件』なのかを明記せんと、この決まり事は意味がないと思う。

損害賠償や違約金の請求を一切認めないのか、ある程度までは認めるのか。

この文言だけでは、どちらとも受け取れる内容になっているさかいな。

この文章はおそらく『過大な損害賠償や違約金の請求を解約条件にしてはならない』という意味なのやろうとは思うが、それについても『消費者へは、ウェブサイトを開設して広く周知するほか、各支部協が折り込みチラシを作成し、読者へ配布する』という内容を確認してからでないと、確かなことは言えん。

ただ、感触的には損害賠償や違約金の請求を一切認めない方向になるのやないかという気がする。


3.購読期間の変更など、お互いが納得できる解決を図らなければならない。

購読期間の変更、短縮というのは比較的応じる販売店が多いから、それほど問題はないと考える。

お互いが納得できる解決というのは、その事案毎で違うから何とも言えんが、新聞販売店には契約者としっかり話し合いをしろということやないかと思う。


今回出てきたガイドラインについて言えるのは、こんなところや。

新聞販売店にはかなり厳しい内容になっている。

もともと、日本新聞協会、および新聞公正取引協議会というところは、世間や監督官庁に良く思われたい、悪質な勧誘は監視、抑制しているとアピールしたいという考えが強いから、どうしてもそうなる。

彼らは、新聞が売れようが売れまいが、直接的な痛みを被ることはないさかいな。

新聞の販売、売り上げについては新聞社や新聞販売店が考えろという姿勢や。

それよりも監督官庁や国民生活センターに睨まれ、一般からの苦情を持ち込まれる方が迷惑なのは間違いない。

はっきり言うが、日本新聞協会、および新聞公正取引協議会というのは監視組織であって、新聞販売店や拡張団を守る組織ではないということや。

ただ、こういう事態になったのは、今まで悪質な勧誘員、および悪辣な新聞販売店を放置、見逃してきたからやと思う。



巻末参考ページ

注1.新聞の訪問販売トラブル年1万件 国民生活センターが改善要望

注2.第84回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■2010年からの新聞営業講座……その2 拡材について

注3.第94回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■2010年からの新聞営業講座……その2 拡材について

注4.ゲンさんのお役立ち情報 その8 クーリング・オフについての情報

注5.NO.1248 入退院を繰り返す場合の解約、休止と先付け契約について


白塚博士の有料メルマガ長編小説選集
月額 210円 登録当月無料 毎週土曜日発行 初回発行日 2012.12. 1

ゲンさんの新聞勧誘問題なんでもQ&A選集 電子書籍版パート 
2011.4.28 販売開始 販売価格350円
 

書籍販売コーナー 『新聞拡張員ゲンさんの新聞勧誘問題なんでも選集』好評販売中


ご感想・ご意見・質問・相談・知りたい事等はこちら から


ホームへ

メールマガジン『ゲンさんの新聞業界裏話』登録フォーム及びバックナンバー目次へ