メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー

第289回 ゲンさんの新聞業界裏話


発行日  2013.12.20


■クリスマスの夜、星に願いを


夜、星を見るという人が、どれだけおられるやろうか。

人類が文明を築くことができたのは、知能の発達と共に手を使うようになって火を利用したからやと言われとるが、それだけやない。

太陽や月、夜空の星を観察したからこそ、文明が生まれた大きな要素になっている。

太陽や月の変化で時間の概念を知り、星座の位置で方位を知り、季節を知ることができた。

そうすることで、それまで狩猟中心の生活から、季節に合わせて穀物などを栽培して定住するようになった。

人類が定住するようになると、太陽や月、夜空の星は、さらに重要な存在になった。

太陽や月、夜空の星は信仰の対象になり「神」が生まれ、文明が進化して行った。定住することで村が生まれ、国ができた。

それがなければ、人類は現在も数十万年の昔と変わらなかったばすだと。今もチンパンジーやゴリラなどの類人猿と大差なかったやろうと。

しかし、その文明が進んだ現在、太陽や月、夜空の星に関心を示す人が少なくなっているという矛盾が生まれている。

特に星については、その存在すら知らない人がいるという信じられない報告もあるくらいや。

1994年1月17日未明に発生したロサンゼルス大地震(ノースリッジ地震)の折り、ロサンゼルス市のほぼ全域で停電になった。

その時、多くの市民から市当局へ「あの夜空に見える不思議な光は一体何か」という問い合わせが殺到したという。

市当局者は最初、何のことか分からなかったが、多くの人の話を聞いていくうちに、それが星だったことが分かったという。

ロサンゼルスは不夜城、眠らない街と言われ、四六時中常にネオンが点灯していて、その明かりのために夜空の星に気付く人が少なかった。

それが、地震で停電になった途端、その星の光だけが異様に輝いて見えたために、そんな反応をする人がいてたわけや。

信じられんような話やが、事実である。

冒頭で『夜、星を見るという人が、どれだけおられるやろうか』と問いかけたのは、その意味からや。

このメルマガでは毎年、12月24日が近づく時期になると恒例のようにクリスマスに因んだ話をしている。

今年で10回めになる。(注1.巻末参考ページ参照)

そこで、今日は多くの人の関心が薄れた星の話をしようと思う。

クリスマスとは誰もがご存知のように、イエス・キリストの降誕(誕生)とされる12月24日の夕方から25日の朝までを祝うものや。

そのクリスマスが星と、どう関係するのか。

古代から星と神との結びつきが強かったように、クリスマスと星の関係も深い。

クリスマスの星と呼ばれているベツレヘムの星というのがある。

余談やが、クリスマスツリーの先端にある星は、そのベツレヘムの星を摸したものやと言われている。

ベツレヘムとは、イエス・キリストが生誕したと言われている地で、現在のパレスチナのヨルダン側西岸地区にある人口2万5千人ほどの市のことである。

ベツレヘムでキリストが誕生した時、東方の国では誰も目にしたことがない星が西の空に見えたと新約聖書の記述にある。

その奇跡の星が、ベツレヘムの星とされている。

そのベツレヘムの星については様々な説がある。超新星、惑星、彗星、惑星どうしの接近や会合など、いろいろや。

1614年、ドイツの天文学者ヨハネス・ケプラーは、紀元前7年に起きた、木星と土星が合体して見えるほどの接近を3回繰り返したのがベツレヘムの星の正体であると結論付けている。

しかし、実際には両星が接近した時の間隔は、かなり離れていたから、その説には無理があるという事が分かっている。

彗星であったという説もある。 紀元前12年にハレー彗星が現れたと中国の古文書にあるが、キリスト生誕の年としては早すぎるという否定的な見方が多い。

また紀元前5年にも何らかの天体が中国や朝鮮半島の観測者によって目撃されているという記録も残っている。

その天体は70日間観測されているが、彗星であったか超新星であったかは不明で、それがベツレヘムの星であったと断定する根拠はない。

天王星だったという説もあるが、天王星は肉眼では殆ど見ることができないため、その可能性はないと考えられている。

2005年には、アンドロメダ銀河の近くで爆発した超新星(カシオペア新星)がベツレヘムの星だったとする仮説が浮上した。

超新星とは、大質量の恒星が一生を終えるときに起こす大規模な爆発現象のことで、その時の光が夜空に明るい星が突然輝き、星が新しく誕生したように見えることで、そう呼ばれている。

しかし、銀河系外で発生した超新星の残骸を分析して正確な爆発時期を割り出すのは今のところ不可能やから、その説も憶測の域を出ない。

それらのことから、この話はフィクションだったのではないかと考える学者も少なくない。

ただ、いずれにしても、神の登場には星が欠かせないと古代の人たちが考えていたということだけは確かなようや。

よく流れ星に願い事をすると叶えられると言われているが、それも星に神が宿っていると考えられているからやと思う。

実際には流れ星とは、主に彗星から放出された無数の塵(小天体)だと言われている。

小惑星軌道から飛来した微少な隕石も燃え尽きる時に、流れ星のように見えることもある。

それで済むのならロマンがあってええが、稀に今年の2013年2月15日にロシア連邦ウラル連邦管区のチェリャビンスク州付近の落下したような隕石になると洒落にならん危険を伴う可能性があるから始末に悪い。

NASAの推定によれば、大気圏突入前の小惑星の大きさは直径17メートル、質量1万トンにもおよぶという。

この隕石の爆発的な分裂により発生したエネルギーは、TNT火薬(ダイナマイト)換算では約500キロトンと見積もられている。これは、広島型原爆の30倍以上に相当する。

ただし、爆発は上空数十キロと高かったため、高度約600メートルで爆発した広島型原爆に比べると、被害ははるかに小さくて済んだがな。

被害の大きかったチェリャビンスクとその周辺で合計4474棟の建物の窓ガラスが割れ、ドアが吹き飛ぶなどの被害が発生している。

また、衝撃波で割れたガラスの破片を浴びたり、衝撃波で転ぶなどして、1491人が怪我をしている。ただ不幸中の幸いで死者は一人も出ていない。

まあ、ここまでになると流れ星とは言わず火球という表現を使うがな。

大きな隕石の多くはアステロイドベルトと呼ばれる火星と木星の間にある小惑星帯からやって来る。

現在小惑星帯には何十万もの小惑星が発見されており、その総数は数百万程度あると推定される。

その数の多さにより、小惑星同士の衝突が頻繁に起こる。その衝突で弾かれた一部の小惑星が軌道を逸れて地球に向かう。

その小さな破片が隕石や。大半は小さなちり(宇宙塵)となって地上に降り注いでいる。

その数量は多くの人が思っているよりも多く、毎日40トン、数百万個にも上ると言われている。

その証拠が知りたければ、誰にでもできる方法がある。それは自宅の屋根を掃除するだけでええ。

ワシは昔、仕事で住宅リフォーム工事に携わっていたことがある。

その中にカラーベスト瓦の塗り替え工事というのがあるのやが、その工事をする前に水道の蛇口に延長ホースを繋いで屋根を水洗いする。屋根に溜まった汚れを取る程度やがな。

その時、どの家の屋根にも黒く焼けて変色した鉄の小さな塊が無数にあることに気付いた。

そこで雨樋の受け口にバケツを置いて、その中に磁石を入れておいてみると、かなりの数の鉄がくっついていた。

もう分かったと思うが、それが隕石の欠片なわけや。実際、学者や研究者なども、そうして隕石を収集することがあるという。

それくらい、当たり前のように日々、隕石が地球に、各自の家の屋根の上に降り注いでいるわけや。

昼間は太陽の光で見えないが、夜になると、それが流れ星となって見える隕石もある。

夜、星を見なくなった現代人にとっては見る機会が殆どないかも知れないが、その気になれば誰にでも見える光や。

理論的には、直径1ミリの隕石でも大気圏内で燃え尽きる時には、かなり光り輝くと言われている。

もっとも、その光の大半は高性能な望遠鏡でもなければ見えないということやがな。

隕石が流れ星となって落ちてくる分には何の危険もない。

「ああ、綺麗やな」で終わる。

しかし、稀に地上に落ちて多大な被害をおよぼす隕石もある。

年に数回、普通乗用車サイズの小惑星が地球に飛来する。

チェリャビンスクの隕石の3分の1程度の大きさやが、そのクラスの物は突入角度、質量によっても違うが大半は大気圏内で燃え尽き消滅するか、爆発して小さな破片になって地球に落下する。

100年に1回、直径数十メートルから100メートル級の隕石が落下している。

近いところでは1908年、ロシア帝国領のシベリア中央部、エニセイ川の支流ポドカメンナヤツングースカ川の上流部の上空で起こった大爆発は直径100メートル程度の彗星が落下し、大気中で爆発したものと考えられている。

その際、多くの樹木がなぎ倒され森林火災が起きたが、周囲に村落がなかったため、死傷者は出なくて良かったが、これが大都市上空で爆発していたら大惨事になっていたというのは容易に想像できる。

1億年に一度、直径数キロメートルにもおよぶ巨大隕石が地球に衝突している。

地球上では過去に数回、生物の大絶滅が起きているが、その原因はその隕石のせいだと言われている。

6500年前、メキシコ・ユカタン半島に落下した直径9〜10キロメートルにおよぶ大隕石、もうこうなると「小惑星」と呼ぶしかないが、その衝突により恐竜が絶滅したのは有名な話や。

地球は、宇宙から飛来する彗星や小惑星、隕石などの消失の危険に常にさらされている。

しかし、それは何も危険だけではなく地球に住む生き物にとって限りない恩恵も与えている。

例えば、地球上の水やが、これは彗星の衝突がもらたしたものなのである。

最近の科学で彗星の氷を調べた結果、地球上の水の成分とほぼ一致していることが分かった。

そして、過去に地球に衝突していた彗星の氷の質量と、地球上の水の質量を計算すると、ほぼ同じだということも科学的な観測データで証明されている。

地球が誕生してから数億年に渡って彗星の衝突が繰り返され、それによって運ばれた氷が水となり、地球を生命溢れる惑星にしたわけや。

その彗星はどこから来たのか。

その昔は、はるか遠くの宇宙を漂流して流れ着いたと考えられていたが、今では太陽系内から飛来したものと判明している。

エッジワース・カイパーベルト天体というのがある。海王星のさらに奥にある太陽系に属している天体のことや。

一般的な太陽系の認識は、太陽に近い順から水星、金星、地球、火星、小惑星帯、木星、土星、天王星、海王星くらいまでやと思う。

以前は冥王星も含まれていたが、現在では冥王星はエッジワース・カイパーベルト天体に含まれるとされている。

しかし、太陽系はそれで終わりではない。その先にオールトの雲というのがある。

オールトの雲は太陽から1万天文単位(AU)もしくは太陽の重力が他の恒星や銀河系の重力と同程度になる10万天文単位(1.58光年)という膨大な範囲の空間に球殻状に広がっているとされる。

彗星はそこから、さまざまな軌道で太陽を公転しながら地球に接近、あるいは衝突を繰り返してきたと言われている。

運良く近くをかすめて通り過ぎたとしても公転軌道上にいる限り、また必ずやって来る。そして、いつかは衝突する可能性があるわけや。

その広大とも思える太陽系ですら、夜空に拡がる天の川銀河の中では、ただの埃程度の存在でしかない。

当たり前やが宇宙は謎に包まれている。

古代の人たちが、星々に神を見たとしても何の不思議でもない。その星の存在によって人類の文明が進歩したのは間違いのない事実やさかいな。

ひょっとすると、神とは人の心の中にだけ存在するものやなく、本当にそう呼ばれてしかるべき存在がいるのかも知れない。

それを神と呼ぶか、宇宙人と呼ぶかは、それぞれやとは思うがな。

地球上でもそうやが、自然は恩恵も与えるが、同時に破壊ももたらす。それは宇宙全体の法則なのやろうと思う。

そして、宇宙そのものが奇跡の存在であり、ワシら人間を含むすべての生物が奇跡の証しやないかと考える。

すべてが気の遠くなる時間と偶然、そしてごく小さな確率の上に存在していると。

そう考えれば、奇跡は必ず起こるとも言える。もっとも、それが誰にとっての奇跡かという問題はあるがな。

ただ、一つ言えることは奇跡を願うことは誰にでもできるということや。

そして、それが叶う確率は、地球に落ちてくる流れ星と大差ないのやないかという気がする。

せめて、クリスマス・イブの夜くらいはクリスマス・ツリーのてっぺんにあるベツレヘムの星の正体に思いを馳せ、夜空の星や流れ星に願い事をするのも悪くはないのやないかと思う。

クリスマスそのものが奇跡を祝うものやさかいな。



参考ページ

注1.第20回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■サンタクロースは実在する?

第72回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■サンタクロースは何歳ですか?

第124回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■真っ赤なお鼻のトナカイさんの話

第176回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■天国からのクリスマスプレゼント

第28回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■クリスマスソングが歌いたい

第80回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■誰にでも訪れるクリスマス・イヴの小さな奇跡の話

第133回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■クリスマスに永遠の命の話を

第185回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■サンタさん、お母さんにあわせて

第237回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■恋人にクリスマス・プレゼントをする意味とは


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