メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー

第296回 ゲンさんの新聞業界裏話


発行日 2014. 2. 7


■新聞配達をすることで社会に貢献していると思いますか?


新聞配達をされておられる古くからのメルマガ読者の方から、


ゲンさん、いつも有意義な話有り難うございます。とても勉強になります。

僕は新聞配達を始めて10年以上になりますが、朝の配達中、毎日決まった時間になると「お兄ちゃん、いつも有り難うね」と言ってくれる奥さんや「毎日、ごくろうさん」と言ってもらえる年輩の旦那さんの言葉に、いつも励まされます。

そんなとき、いつも少しでも人のためになっているんだなと実感します。

僕の店では、以前メルマガでも取り上げられていた、高齢者見守りサービス(注1.巻末参考ページ参照)というのをしています。

具体的には一人暮らしをしている高齢読者のお宅で前日の新聞が残っていたりすると必ずその場で店に報告して、後から店の専業さんたちが安否確認に行くというものです。

幸い、高齢者見守りサービスを始めてから3年ほどになり、何度かそういうことがありましたが、大きな問題はありませんでした。

大半はどこかに出かけられていて留守にされていたために新聞を取り込んでおられなかったといったことばかりです。

それでも何もなくても高齢読者さんたちを見守っているんだなという実感はあります。

僕自身は、少し大袈裟かも知れませんが、新聞配達をすることで社会に貢献していると思います。

ゲンさんは、どう思われますか?

できましたら、このことについてメルマガで取り上げてもらえませんか?


というメールを頂いた。

これは本来ならサイトのQ&Aで回答すべき問題やが、この方が『できましたら、このことについてメルマガて取り上げてもらえませんか?』と言われておられるので、そうさせて頂く。

『新聞配達をすることで社会に貢献していると思います』というのは、そのとおりやとワシも思う。

よく「新聞配達員は学歴や難しい資格など必要なく、誰でもできる仕事」と言われるという話を聞くことがあるが、ワシはそうは考えん。

特に「誰でもできる仕事」というのには異議がある。何も知らない人には、そう見えるのかも知れんが、それほど簡単な仕事やない。

配達員は毎日深夜に起きなければならない。その販売店毎で配達の開始時間は違うが、午前1時〜3時くらいには起きて配達を開始するのが普通や。

暑い日も寒い日も関係なく、雨の日も普通に配達が行われ、台風や地震、洪水などの自然災害が起きてさえ休刊日以外の配達を休むことは許されないという暗黙の決まり事がある。

いかなる条件下であろうと新聞を配達することが要求される。そのため、毎年のように台風時に配達を強行して怪我をされる方や亡くなられる方が後を絶たたんのが現状や。

『第71回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■悪天候時の新聞配達の見直しについて』(注2.巻末参考ページ参照)に、その大変さを紹介したことがあるので、その一部を抜粋する。


10月8日の早朝。

暴風雨の中を新聞配達員のトオルは当然の事のように単車に跨(またが)って新聞の配達に出た。

トオルは、この道、7年の経験があるから、何度か台風の日に配達をしたこともある。

慣れとるというほどでもないが、何とかなるとは考えていた。

人は、経験則という曖昧な根拠で過去の出来事を判断し、過小評価することが往々にしてある。

今まで大丈夫やったから、次もたぶん大丈夫やろうと。

危険な目に遭うとか、事故に遭遇するのは、そういうときが多い。

どんな事でも二つと同じ状況というものはない。似た状況を同じと錯覚するだけなんやが、その錯覚が判断力を鈍らせる。

それにしても、今日の暴風雨は尋常やない。過去のものとは比べもんにならん強さや。

その程度の認識はあった。

それでも住宅街は障害物や飛来物が少なく、風雨の強さ以外は、まだマシやったが、配達区域内にある商店街に差しかかったとき、映画「インディー・ジョーンズ」ばりのノンストップ・アドベンチャーが始まった。

「うわっ、危ない!!」

いきなり、前方から突風と共に巨大な物体が回転しながら、もの凄い勢いで襲いかかってきた。

トオルは乗っていた単車を巧みに操りながら、かろうじてそれを躱(かわ)した。

その物体を目で追うと、かなり大きな消費者金融の看板やった。

「チェッ、払いが遅れとると看板にまで催促されるんか」と、そのときには、まだジョークを飛ばす余裕があった。

単車の行く手に無造作に転がっている物体が幾つかあった。プラスチック製の大型のゴミ箱群やった。

中身を吐き散らかしながら、その辺りで強風に打たれ、のたうち回っている。

それらの間を軽妙なハンドル捌きで縫うように走って躱す。

しかし、折からの暴風雨で吹き飛ばされてくるのは、それだけやなかった。

コンビニやスーパーの幟(のぼり)、ダンボールの空箱、原型を止めてない傘、果ては瓦まで地面に散乱している始末や。

それに、大小の看板群が混ざる。

それらがそこにあるということは、一つ間違えばその直撃を受けていた可能性もあったわけや。

つい、今しがた襲撃してきた大型看板のように。

さらに、放置自転車群が将棋倒しになってトオルの行く手を阻む。

「まるで、ゲームか映画の世界にいとるようやな」

トオルは漠然とそう考えた。

ただ、ゲームや映画なら、それらにぶつかってもプレーヤーや観客がケガをすることはないが、現実の世界では一つ間違えば命取りになりかねん危険を孕(はら)む。

今日、台風が直撃するというのは知っていた。

メーローと名付けられた、その台風18号は10月8日の午前5時、三重県鳥羽市付近にあり、時速45キロで北東へ進んでいるという。

中心気圧は955ヘクトパスカル、中心付近の最大風速は40メートル、最大瞬間風速は55メートル。

南東側200キロ以内と北西側170キロ以内は25メートル以上の暴風域やというのが、気象庁の発表やった。

一言で言えば、超大型の台風ということになる。それも、ここ10年で最大規模のものやという。

風が激しく啼(な)いている。それが恐ろしく不気味な怪物の咆吼(ほうこう)に聞こえる。

普通の人間の感覚なら、こんな日に単車を走らせることなど自殺行為やと思うはずや。

バカかと。

しかし、新聞配達人はそうは考えん。どんな悪天候であろうと配達を中止するという発想がない。

いかなる状況下であっても新聞を配達するのは当たり前という気持ちをほとんどの者が持つ。

途中で止めて帰ろうという人間は極端に少ない。というより皆無に近いのやないのかとさえ思える。

そこには仕事への義務感、使命感、プライドなど様々な思いがあるのやと考える。

「やってられんな。さっさと配り終えてしまおう」

それしかトオルの頭にはなかった。

国道に出て左折した瞬間やった。

十数メートル先の街路樹がスローモーションのようにゆっくりと倒れてきたのが見えた。

それは走行車線の半分以上をふさぐくらいの巨木やった。

さすがにトオルは慌てた。

躱す余裕とスペースがなかった。

思わず急ブレーキをかけた。

冷静に考えれば、こんな風雨の強い日に急ブレーキをかける愚を冒すことはないのやが、反射的にそうしてしもうた。

その弾みで横転した。

横転したまま横滑りに滑って、その街路樹に当たった。

かなり強い衝撃が全身を襲った。

「やってしもうた」

トオルは瞬間、そう考えた。

少し間をおいて、どこかケガしたのやないかと恐る恐る身体を動かしたが痛いところはない。

ゆっくり立ち上がっても大丈夫やった。幸いなことに横転事故にありがちな擦り傷すらなかった。

見ると走っていた車道には夥(おびただ)しい雨水が流れ込んでいた。

それがクッションの役目を果たし、トオルの身体を守ってくれた。

それで救われたと知った。

その雨水があったが故にスリップして滑り、その雨水があった故に助かった。

世の中、何が災いして幸いするか分からんとも思った。

「あかん!!」

トオルを助けたその水の流れが、今度は積み荷の新聞に襲いかかっていた。

トオルは急いで単車を起こした。

急いで確認したところ、どうやら新聞を包んでいる薄手のビニール袋に破れはなさそうやった。

たいていの新聞販売店では、雨の日用に新聞をビニール袋でラッピングするための梱包機が置いてある。

雨の日、または配達中に雨が降ると予想される場合、新聞配達人は新聞社の工場から届けられた新聞に折り込みチラシを差し込んだ後、それを梱包機に一部ずつかけてラッピングを施し水濡れを防ぐ処置を講じている。

それが破けてない限り、外は濡れていても中の新聞紙面が濡れることはない。

トオルは次に、止まっていた単車のエンジンをかけた。

かかった。

テールランプは割れていたが、方向指示器は点滅するし、その他にこれといった異常も見つからず、走るのには差し支えなさそうやった。

「助かった」

とにかく、このまま配達が続けられる。

トオルには、その安堵感があった。

その後も強風に煽られて何度か危ない目に遭いながら、何とか配達を終えることができた。

トオルは、その日の夕方、台風で道路に倒れた木にオートバイが衝突して乗っていた新聞配達中の男性(54歳)が死亡したというニュースを知った。

それを見て、トオルは今更ながら背筋に悪寒を感じたという。


というものや。

これまで過去のメルマガで折に触れ、台風や洪水、大雨などの災害の影響で新聞配達中に亡くなられたというケースを数多く知らせてきた。

その時々で単に、新聞配達人には、どんなに悪天候、悪条件であろうと、新聞の配達を中止する発想が湧かないと言うに止めていた。

見方によれば、これは崇高な使命感と捉えられんこともないが、世間の感覚からしたら異常な事と映るようや。

ワシは、この業界にどっぷり浸かっとるから、配達を全うすることに対して違和感もなく、心のどこかで、それが配達人の誇りとさえ考えていた。

しかし、その危険極まりない日に不配や遅配することで、一体、どれほどの迷惑なり汚点なりがあると言えるのやろうかと改めて考えた時、その思いが揺らぐ。

果たして、その1日分の新聞を遅滞なく届けることが命をかけるほどのものなのかと。

確かに新聞購読契約の原則として、新聞販売店は遅滞なく配達する義務があるとされとるが、命の危険を冒してまで全うするほどの義務があるとも思えんしな。

危険があると察知すれば、販売店独自の判断で配達を中止、もしくは大幅な遅配をしてもええのやないかと考える。

そうすれば、大きな災害の度毎に発生している新聞配達中の不幸な事故は確実になくなるわけやさかいな。

それに、そんな事情であれば購読者の方々も理解を示して頂けるはずやと思う。

大半の企業では「安全第一」が当たり前とされとるが、残念ながら新聞配達にその考えはあまりない。第一義は読者にいつもの時間に新聞を届けることや。

ただ、何でもそうやが、今まで当たり前とされていたことを急に変えるというのは難しい。

特に、末端の販売店毎にその判断を任せるというのであれば、おそらくそれが変わることはないやろうと思う。

やはり、そうするには電車や飛行機などのように、ある一定の決まり、例えば
気象庁からの警報の有無などで、そうしているように強制的に義務付けをする
以外、他に方法はないやろうという気がする。

それには、新聞社、および新聞協会が率先してそういう姿勢を打ち出して販売店に伝え指導するしかない。

その不幸な出来事の記事を毎回書くだけではあかん。新聞社も、その末端の痛みを自分の痛みとして考えて欲しいと思う。

日本の新聞は宅配によって購読者に届けることで成り立っている。

今のままやと、もし、配達人が途中でその危険を感じて配達を中止しても、すぐさま誰かがその代わりをし、配達を中止した者は疎外され、結局、クビか辞職に追い込まれて終わることになるだけやと思う。

今の業界では、それは責任放棄、職場放棄ということにしかならんさかいな。誰も仕方ないとは考えん。

それ故、配達人は仕事を失うことへの恐れもあり、命がけで配達を全うしようとする。

しかし、命をかけて無事配達できて当たり前で、不配や遅配が出たら評価を下げるだけというのでは、哀しさを通り越して悲劇になる。

その辺のところを新聞社の上層部に分かって欲しいと思う。

新聞社には配達人の安全を考え適切な指導をする責任と義務があると考えるがな。

具体的には、どうすればええか。

新聞協会全体として、今回のような大型で明らかに危険を伴う台風というものは事前に察知できるわけやから、その進路に当たる地域には、その日の配達休止、もしくは大幅な遅配があることを前日の新聞紙面で予告し、テレビ報道などのメディアを通じて広報することが必要になる。

少なくとも、一般にそれが浸透するまではな。

これは、総選挙の翌日の新聞配達が2時間程度の遅れになると報道していたように徹底すれば、そう大きな混乱もなくできるはずやさかいな。

休止にするか遅配にするかの線引きをどこで引くかについてやが、決まり事として制度化するのなら、やはり気象庁の警報、もしくは現在、JRや私鉄が採用している「運転を見合わせる風速の規制値25メートル」にするくらいやないかと思う。

電車が止まれば新聞も止まる、あるいは遅れるという事なら、分かりやすくてええやろうしな。

それがあれば、配達中の不幸な事故を回避できる可能性が高いはずや。

もっとも、そうする場合、新聞販売店によれば、朝の時間しか配達できんアルバイトの配達人ばかりしかおらんという所もあって、遅配になった場合、残りの従業員ではとても手が回らん事態も考えられるさかい、簡単な話やないとは思うがな。

また、災害が影響を及ぼすのは限定された地域になるから、その範囲をどう区切るか、その適用の程度で揉めるということも十分考えられる。

その地域は休止であっても、隣接する地域では配達しているというケースが当然のように起きる。

極端なことを言えば、道一本離れた家には他の新聞販売店から同じ新聞が配達しているのに、休止している地域の販売店のために新聞が配達されんという事態がな。

そうなると同じ購読料を払うとるのに不公平やと苦情を言う者も出てくるかも知れん。

何でもそうやが、すべての人に賛同を得るというのは難しいとは思う。

ただ、いろいろ問題はあったとしても安全を重視するという立場で考えれば、必ず道は見つかるはずや。

購読者の多くも、そうすることに理解を示すはずやから、是非考えて貰いたいと、ワシらは訴え続けているが、残念ながら業界では、その話題すら上っていないのが現状や。

自然災害がなくても、ただでさえ、早朝の新聞配達は、他業種と比べても事故に遭遇する確率の高い仕事やというのもある。

早朝は車の通行量が少ないこともあり暴走車が結構多い。スピードオーバーや信号無視をする車も珍しくはない。

新聞配達員と仕事の時間帯が被るのは運送業の車両が多い。

その理由として、日中の混んでいる時間帯を通行するより、深夜から早朝にかけての方がスムーズに走れて早いというのがあるからや。

その時間帯は金のかかる高速道路を走る必要もないということでな。

中央市場などの配送車も同じような時間帯に忙しく走り廻る。それに関連した加工会社のトラックも多い。

さらに、深夜すぎから製麺やパン、弁当などを作って、それをスーパーやコンビニに配送している食品業界のトラックもある。

当然やが、その中で一番弱いのが新聞配達のバイクであり自転車や。

張り合うても物理的に勝てるわけはないから、そういう暴走車が迫って来たら、逃げるしか手がない。

暴走車の方でも、そうするもんやと思い込んどるのか、新聞配達のバイクと接触しそうになってもスピードを緩めるというような心遣いを見せる運転手は極端に少ない。

酷(ひど)いのになると、まるで「どかんかい」とでも言いたげにクラクションを連打して煽ることすらある。

さすがに住宅街や裏通りではそういうことはないが、国道や幹線道路などの大通りを走る場合は、そういうのは日常茶飯事やから細心の用心と注意が必要になる。

例え青信号であっても左右を確認してからやないと渡るのは危険や。大型トラックや乗用車の進行方向が赤やから止まるやろうという甘い期待をしたらあかん。

それで事故に遭うた仲間の新聞配達員を知っている。即死やった。

死んでしもうたら、相手が悪い云々などと言うてみてもどうにもならん。それで、ジ・エンドやさかいな。

加害者の方は、どんなに最悪な状況になっても数年ほど刑務所に入ったらそれで済む。

世間も交通事故なら仕方がないという風潮があるから、それで刑期を終えて出所したとしてもよほど悪質でない限り罪人扱いされるケースは少ない。

あるいは死人に口なしで、加害者の言い分だけが通り、大したお咎めもなしということさえあると聞く。

そうなったら、まったくの死に損や。

ええ悪いに関係なく危険を感じたら、ただひたすら逃げるしか新聞配達員に手はない。

危険と隣り合わせ。それが新聞配達の仕事でもある。

さらに、不配や遅配といったミスも許されないのが普通や。1000軒に1軒のミスは新聞配達では多い方とされ、叱責、処罰の対象にされる場合もある。

それに関しては『新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A NO.208 配達人の罰金制度について』(注3.巻末参考ページ参照)というので、詳しく説明している。

新聞配達での不配や遅配といったミスに対して罰金などのペナルティを科す行為は基本的には法律で認められている。

過度な罰金や給料からの行き過ぎた天引きでない限り、不配や遅配を起こすことで顧客離れを引き起こす損害が憂慮されるため、損害賠償請求の範疇に入るものと考えられている。

新聞販売店のみならず罰金制度を設けている職種は他にも数多く存在する。

そのQ&Aでは全国の販売店にアンケート形式で答えて貰ったが、罰金だけではなく、何度も不配や遅配が続けば解雇するといったケースが多かった。

そのボーダーラインは、1日200部配達するとして月に5回以上やという。

1日200部×30日÷5回=1200という計算式が成立する。つまり、1200軒に1軒の割合で不配や遅配といった配達ミスがあれば解雇の対象になるということや。

ワシが『1000軒に1軒のミスは新聞配達では多い方』と言うたのは、そのためや。ある意味、厳しい仕事やと言える。

新聞配達は100%完璧にこなして普通やという風潮がある。ミスなしが評価されるのは、それが半年、1年と長期に渡って続いた時くらいなものやと思う。

加えて、配達員には順路帳や日々変更される顧客への配達指示書に対する理解力と配達を間違えないための記憶力や判断力が要求される。

また、他者からの抜き取り防止のためポストへの「落とし込み」や雨の日の水濡れ防止のビニールカバーするなどの心使いも必要になる。

それを怠れば、即、その配達員の責任、ミスということになる。

さらに、雨の日や雪の日、風の強い日などのバイクの運転テクニックもなくてはならん。その稚拙な者は大怪我や死に直結しかねんさかいな。

これほど、危険とミスによるリスクの高い仕事は他にはないやろうと思う。その割に、賃金が安いという問題もある。

また、残念ながら世間からは社会的地位が低い仕事やと見なされているというのもある。

確かに募集さえしていれば比較的簡単に新聞配達員にはなれる。

しかし、誰にでも続けられるというものではない。続けるには、それなりの技能と強い精神力がなかったらあかん。

一見、単純な仕事に見えるが、一流と呼ばれる新聞配達員になるのは、傍で考えるほど簡単なものやない。

もっとも、実際に新聞配達をやったことのある人にしか、それは分からんやろうがな。もちろん、ワシも過去に新聞配達をした経験があって言うてることや。

その過酷さに耐えられずに辞める者も多い。実際、新聞配達員ほど入れ替わりの激しい仕事もないしな。

長年新聞配達を続けておられるというだけでも凄いことやと思う。それだけで十分、評価に値する。

また、この投稿者のように『高齢者見守りサービス』をしているのも立派な社会貢献と言えるし、電気が止まり、インターネットやテレビ、ラジオなどの視聴ができなくり情報が途絶えた災害時に配達する新聞配達人も社会に貢献していると言えるやろうと思う。

それについては2004年12月31日発行の『第21回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■年の終わりに』(注4.巻末参考ページ参照)の中で、新潟中越地震の被災者救済にボランティアで参加された読者の方からのメールとして、


新潟中越地震の被災者のかたに炊き出しなどをおこなう機会を頂きました。たいしたものは出せませんでしたが、それでも温かいものが食べられることはそうとう喜ばれたようです。

震災にもかかわらず、新聞をつんだバイクが朝と夕の2回、避難所になってる体育館にきてました。

それが、無償なのか、避難所にきてる契約者のものなのか分かりませんが、何人ものプライバシーや電力の確保が難しい体育館の中では、TVやラジオ、パソコンなどよりも、新聞のほうが情報を得るのに利便性が高いということを思った次第です。


というのを紹介した戸とがある。

ちなみに、この時、その配達していた大半の販売店自身も壊滅状態やったと言う。

販売店が倒壊してガレージで生活していた新聞販売店の店主もおられたと聞いた。配達人の家も同じく例外やなかったはずや。

そうした販売店からも配達は続けられたわけや。こういう状況になれば、それは商売の域を超える。困っている人に情報を届けるという使命感というやつが働くからや。

ワシは、この時、新聞の重要性を再認識した。有事の時に最も役立つのは人が配達する新聞やと。

現在、情報の伝達としてネットや携帯電話、およびテレビ、ラジオが大きな役割を担っているが、それらには共通の弱点がある。

地震や台風、洪水などの自然災害時には停電はつきもので、有事の際に用を為さんケースが多いというのが、それや。

その場を逃げるのがやっとという状態の時に、テレビやパソコンなどのハードを持ち出すことは難しいし、携帯電話も電源がなかったら使える時間も限られる。

しかし、そういう有事にこそ、人は情報を欲するわけや。その点でも、新聞は人が配達しさえすれば手にすることができるし、その有事には必ず、被災者の元に届けようと新聞社や新聞販売店の人たちが頑張る。

困難な状況になればなるほど、使命感を持ってそうするわけや。それが、人の介する情報の利点であり、美点やと思う。

普段、それほど重要視されていない新聞配達であっても有事の際には必ず購読者の方に喜ばれる。新聞を取ってて本当に良かったと。

それと同じで朝の配達時に『お兄ちゃん、いつも有り難うね』と言って貰えること自体でも十分に社会貢献していると言える。

結論として、新聞配達をすることで社会に貢献していると考えて間違いないと断言する。

もっとも、それが仕事やないかと言われれば、そうかも知れんが、少なくとも有事の時には必ず人の役に立てる、喜んで貰える仕事をしているのやと考えることで誇りに思えるのやないかな。

新聞配達の仕事は、まんざら捨てたもんやないと。できれば、新聞業界以外の読者の方にも、そう思って頂ければ有り難いと思う。



注1.第65回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■ある新聞販売店の取り組み その1 哀しき孤独死をなくせ

第117回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞販売店による高齢者見守りサービスへの取り組みと、その問題点

注2.第71回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■悪天候時の新聞配達の見直しについて

注3.新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A NO.208 配達人の罰金制度について

注4.第21回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■年の終わりに


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