メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー

第307回 ゲンさんの新聞業界裏話


発行日 2014. 4.25


■報道のあり方 その5 新聞記事における真偽の見極めについて


ある読者から、こんな投稿が寄せられた。


ゲンさん、ハカセさん、お久しぶりです。

今日は、4月5日のY新聞の記事について、教えていただきたくてメールをしました。

○客の顔情報「万引き対策」115店が無断共有
http://www.yomiuri.co.jp/it/20140405-OYT1T50045.html

この記事についてはネットで相当騒がれていますので、知っておられるかも知れませんが、お二人はどう思われますか?

私には捏造記事のように思えるのですが‥‥‥

とくに急ぎませんので、よろしくお願いいたします。


と。

これについて話す前に、まずその記事の内容を知らせておく。


http://www.yomiuri.co.jp/it/20140405-OYT1T50045.html より引用


客の顔情報「万引き対策」115店が無断共有


 スーパーやコンビニなどの防犯カメラで自動的に撮影された客の顔が顔認証で解析され、客の知らないまま、顔データが首都圏などの115店舗で共有されていることが4日分かった。

 万引きの防犯対策のためだが、顔データを無断で第三者に提供することはプライバシー侵害につながりかねず、専門家や業界団体は「ルール作りが必要」と指摘している。

 顔データを共有しているのは、名古屋市内のソフト開発会社が昨年10月に発売した万引き防止システムの導入店舗。

 首都圏や中京圏のスーパーなど50事業者計115店舗で、個人のフランチャイズ経営の大手コンビニなども含まれる。

 各店舗は、防犯カメラで全ての客の顔を撮影。万引きされたり、理不尽なクレームを付けられたりした場合、該当するとみられる客の顔の画像を顔認証でデータ化した上で「万引き犯」「クレーマー」などと分類し、ソフト開発会社のサーバーに送信、記録される。他の店舗では顔の画像そのものは閲覧できない仕組みだ。

 いったん登録されると、再び来店した場合、店員に分かる形で警報が発せられる。登録されたのとは別の店舗を訪れても、サーバーに記録された顔データで照合され、警報が出る。

 システムを導入する店舗では、「顔認証監視カメラ設置」などのシールを店内に貼って撮影していることを周知しているが、他の店舗と顔データを共有していることまでは知らせていない。

 個人情報保護法では、防犯カメラで撮影した顔画像は個人情報に当たる。防犯目的であれば本人の同意がなくても撮影は認められているが、顔データを共有すると、第三者への無断提供を禁じた同法に抵触する恐れがある。

 提供された顔データが犯歴や購入履歴などと結びついて個人が特定されれば、プライバシー侵害につながりかねない。

 顔データの共有について、個人情報保護に詳しい板倉陽一郎弁護士は「店側が恣意(しい)的に不審者だと登録でき、客にとっては、行ったことのない店舗で不利益な扱いを受ける恐れがある。誤って登録されても反論する機会はない」と指摘する。

 一方、ソフト開発会社は「万引きを防ぎたいという店側のニーズに応えており、問題ない」と説明している。

 顔認証 顔の画像をコンピューターが分析し、本人確認や、年齢や性別などの属性識別を行う生体認証の一種。

 指紋認証や虹彩認証とは異なり、カメラの前を通過するだけでデータを集められる。正面から撮った顔の画像では、本人識別率は99.9%以上とされ、空港から入国するテロリストをチェックするなどの目的で使われている。


というものや。

この記事は読んだが、ネットで騒がれていることまでは知らなんだ。

ワシは、「顔認証監視カメラ設置」というのは海外の洋画やテレビドラマによく登場するから、日本でもついにスーパーやコンビニに導入されるようになったのかと感じた程度やった。

時代の流れやなと。

この投稿者からの依頼もあり、ネットで調べてみると確かに騒いでいた。

大まかには記事を書いた記者の取材不足と事実を正確に書いていないとする人たちの批判と、その批判に対する批判が交錯しているといったところやった。

ちなみに、この投稿者の方は『記事を書いた記者の取材不足、および事実を正確に書いていない』として『私には捏造記事のように思えるのですが』と言っておられるように感じた。

捏造記事というのは、ないことをあるかのように書くことやが、この記事の場合は「顔認証監視カメラ設置」を設置している店舗があるのは間違いないようやから捏造とまでは言えんやろうと思う。

ただ、取材内容を恣意的に湾曲し、記者、あるいは編集者の思い込みによる偏った記事になっている可能性は否定できんがな。

一言で言えば不用意な記事やったということになる。批判を受けても仕方がないと。

ハカセも言うてるが、新聞記事として載せるのなら、事実を正確に書く必要があるということやな。

多くの人に突っ込まれるような記事は、やはりまずい。

不確かな記事への批判が広がると新聞のイメージが損なわれるさかいな。

それにより、直接関係のない新聞販売店や勧誘員の仕事にまで影響をおよぼすことがある。

勧誘時の断り文句の一つとして、そういったものが出てくるケースも珍しくはない。

実際に、そういった記事が原因で新聞の購読を止めると言い出す人もおられる。

俗に誤報記事、捏造記事と呼ばれるものが、そうや。

もっとも、今回の場合は、そこまでのものやなく、言えば「間違い記事」程度やと思うがな。

ワシらの感想としては、批判される方も批判する方も、どっちもどっちという気がするが、それで済ませてたんでは話にならんさかい、これからこの記事のどこが問題で、どの部分の批判が的外れなのかを検証してみたいと思う。

もっとも、それにしてもワシらの独断と偏見に満ちた見解かも知れんが、そこは読者の要望に答えるためということで理解して欲しい。

いつもなら、その批判記事について掲載しているブログの記事などを引用するのやが、そのブログ記事に対して批判していると受け取られかねないので、今回は止めておく。

単に『ネット上の反論』、および『ネット上の意見』とさせて貰う。

それでは始める。


【新聞記事】

スーパーやコンビニなどの防犯カメラで自動的に撮影された客の顔が顔認証で解析され、客の知らないまま、顔データが首都圏などの115店舗で共有されていることが4日分かった。

【ネット上の反論】

客の知らないまま、顔データが共有されることはないと顔認証監視カメラ業者が自社のホームページ上で反論している。

その業者によると、顔データは万引き常習者から同意を得て登録したものを共有しているため無断ではないから、『客の知らないまま、顔データが共有されること』などないという。

また「首都圏などの115店舗で共有」とあるが、システムの開発は名古屋の業者によるもので、首都圏に当該システム導入店舗は存在しない。

共有される同意書取得済みのデータベースは本システム導入店のみで共有対象となる。


『顔データが首都圏などの115店舗で共有されていることが4日分かった』という点については、『システムの開発は名古屋の業者によるもので、首都圏に当該システム導入店舗は存在しない』ということが事実だとすれば『誤報』ということになる。

あるいは、首都圏で導入されていないはずがないという思い込みによる憶測記事の可能性もある。

それにしては『115店舗で共有されている』と、如何にもそれらしい数字を並べているのはタチが悪いがな。

この記事を一見するだけやと、「そうなのか」と納得しやすいさかいな。ワシらが、そうやったように。

こういった風に断定的に記事を掲載するのなら、ちゃんと調べてからするべきやったと思う。

また、その調べがついていないのなら、『顔データが首都圏などのシステム導入店舗で共有されている可能性がある』という程度の記事にしておけば、ぎりぎりセーフやったかも知れんがな。

その辺の描写が甘く、稚拙な記事やったと言うしかない。

それにしても不確かな情報をもとにした新聞記事を掲載するべきやないがな。

新聞社は、こういうケースでの誤報は認めんという体質があるが、間違いは、どこまでいっても間違いや。それに変わりはない。

ただ、この業者の言い分にもおかしな点がある。

『客の知らないまま』というのが、『共有される顔データは万引き常習者から同意を得て登録したもの』だから構わないというのはおかしいと思う。

まず何を以て『万引き常習者』とするかのという問題がある。

『万引き常習者』か否かを判断するのはシステムの設置店舗の管理責任者ということになるが、警察でもない一般の店舗責任者が客を『万引き常習者』で『犯罪者』と決めつけることを前提にしなければ、その論理は成立しない。

その是非について業者は何も語らず、当然の事として流している。

まあ、何度も同じ店で万引きを繰り返していた現場を直接押さえでもしているのなら、そう決めつけてもええかも知れんが、そういうケースが皆無とは言わんが、極端に少ないのやないのかと思う。

多くの場合、万引きは警察に通報され、窃盗罪で連行され、それなりの刑罰を受ける、もしくは始末書を書かされて終わる。

一度失敗した店舗で犯行を重ねるバカは殆どおらんやろうと考える。捕まるリスクが、それだけ高いわけやさかいな。しかも、二度目は罪が重いとなれば尚更や。

一般的に、万引きの常習者は不特定多数の店でするものと相場が決まっていると言うしな。

テレビ番組の「万引きGメン」といった類の放送を見ていると、万引きで捕まえた人は、その日、その店での犯行が初めてやったという場合が多い。

常連であれば、「また、あんたか」という会話が、その番組中に流れるはずやが、そういうのは殆どない。たいていは、どこの誰かということなど知らず、対象者に名前を訊いている。

捕まった人も「万引きしたのは今日が初めてなので許して欲しい」と言う場合が多い。

その真偽のほどは怪しいとしても、常習性が証明できなければ、その人を万引きの常習者と決めつけるわけにはいかんわな。

『万引き常習者』と決めつけられた者が、冤罪やったというケースがないとは言えんさかいな。

「実は、私の家内に、それに近いケースがありました」と、ハカセ。

ハカセの奥さん、チエさんがあるスーパーで買い物をしていた時、手押し車の上部に積んでいたカゴの中身の精算を済ませて店の外に出ようとした時、そのスーパーの責任者とやらに呼び止められて別室に連れていかれたという。

そこで「開口一番、これを精算したのか」と、いきなり詰るような強い口調で言ったという。

チエさんは、うっかりしていて、カゴの下に置いていた5ケース入りの箱テッシュ、値段にして350円程度のものを精算するのを忘れていたという。

あってはならんことやと言えば、そうかも知れんが、うっかり忘れていたというケースは誰しもありがちなことやと思う。

それに気がついたチエさんは「ごめんなさい、うっかり忘れてたみたい。箱テッシュの代金をお支払いします」と言った。

すると、そのスーパーの責任者は、さらに言葉を荒げ、「あんた、今回が初めてやないやろ。いつもこんな風に万引きしてんねやろう。ごめんなさいで済めば警察はいらんのや。そんな態度をするのなら、今から警察に連絡するから覚悟しとけ」と怒鳴ったという。

怖くなったチエさんは自宅にいるハカセに電話した。急いでハカセが、そのスーパーに行くと、すでに警察官が来ていたという。

「どういうことですか?」と、ハカセ。

「ご主人ですか、実は奥さんが万引きをしまして」と、スーパーの責任者。

電話でチエさんから事情を聞いていたハカセは、「うっかりレジに出し忘れただけですやろ」と言った。

「うっかりでも、代金を払わず外に出ようとすれば立派な万引きになるんですよ」と、ハカセに対しても、そのスーパーの責任者とやらは強気やったという。

そして、さらに「お宅も、そんな言い訳をする前に、謝罪するのが先やろ」と高飛車な態度で言ったらしい。

それを聞いたハカセが切れた。

「おい、こら、何をふざけたこと言うとんねん。払うてへんのは、その箱テッシュだけやろ。5千円以上の買い物をして金を払うて、350円程度の物を万引きするようなアホな人間がどこにおんねん。それに、こいつがレジを通る時、レジの係員もおったのと違うのか。別に隠して通過しとるわけやないのやから、そのレジ係が気がつかんかったという落ち度が、そっちにもあるやろ」と、捲し立てた。

「それは……」

「それはや、あるかい。そっちこそ、ちょっとしたうっかりで警察を呼んで人を犯罪者扱いして、それで済むと考えとんのか」

「……」

スーパーの責任者は反論の糸口が見つけられないのか、憮然とした表情のまま押し黙った。

「これについて警察はどう思われます?」

そう言って、ハカセは隣にいた警察官に話を振った。

「そうですね。状況的には殆どの品物の買い物代金を支払っているわけですから、奥さんの言われるように、うっかり忘れていたと考えた方が良そうですね。こちらとしましても、この状況で奥さんを連行するわけにはいきませんね」と、その警察官は、そう答えた。

チエさんのケースは、「うっかりミス」と考えるのが普通や。どう見ても、このスーパーの責任者とやらの勇み足ということになる。

結局、そのスーパーの責任者からの謝罪がなかったため、ハカセは、そのスーパーの上層部に苦情を申し立て、スーパー側が過ちを認めたことで矛を収めたという。

その後、そのスーパーの責任者をその店で見ることはなかったとのことや。

ハカセのようなケースではクレーマーとして扱うわれるケースがあると聞くが、そんなことは気にする必要はない。

やっていないことは徹底してやっていないと言って貫くことや。それが身を守る手段になる。

特に犯罪者として扱われた場合は、やっていないのであれば絶対に認めたらあかん。

その場を逃れるため、あるいは相手の剣幕に負けて、やってもいないことを認めてしまえば、犯罪者に仕立て上げられ、その人のその後の人生が大きく狂うさかいな。

チエさんのように、うっかり払い忘れたというだけで万引きの常習者と疑われることがあるのは事実や。

百歩譲って店舗側が、例え万引きで捕まえた人間であっても常習者と決めつけるのは限りなく難しいと言うとく。

警察でさえ、その罪を実証するためには数多くの証拠を積み上げなあかん。それを捜査のイロハも知らん一般人ができるわけがないわな。

まして一般の店舗が、警察からその情報を得ることなどできんのやから、尚更や。

また、万引きで捕まった者が、店舗側に顔データを取ることを承諾するとは、とても思えないということもある。

これは自分に置き換えて考えてみれば分かるはずや。犯罪者が警察に連行される時、多くの人間は顔を覆い隠す。

それが正直な人間の反応やと考えるがな。

それに関しては、ほぼ強制的に行われるはずや。もしくは、相手の引け目につけ込んで無理に承諾させるかのいずれかやと思う。

そうして得たデータを共有するというのは人権問題にもなりかねんことやと考えるがな。私刑(リンチ)そのものやと。

そして、法律は如何なる理由があれ、私刑(リンチ)は一切認めていない。

つまり、『万引き常習者から同意を得て登録』することなどできんということや。やれば、多くの場合、違法性の高い行為になるものと考えられる。

防犯のために、違法行為をしていたんでは本末転倒やわな。


【新聞記事】

 各店舗は、防犯カメラで全ての客の顔を撮影。万引きされたり、理不尽なクレームを付けられたりした場合、該当するとみられる客の顔の画像を顔認証でデータ化した上で「万引き犯」「クレーマー」などと分類し、ソフト開発会社のサーバーに送信、記録される。他の店舗では顔の画像そのものは閲覧できない仕組みだ。

 いったん登録されると、再び来店した場合、店員に分かる形で警報が発せられる。登録されたのとは別の店舗を訪れても、サーバーに記録された顔データで照合され、警報が出る。


【ネット上の反論】

日頃から万引き被害に苦しむ店舗の側からしてみれば、今回Y新聞が問題視しているようなシステムがあれば、これまで対策に割いていた余計な人件費や経費をもっと生産的な活動に回すことができ、メリットが大きい。

Y新聞の取材で、業者は万引き防止のための顔認証システムとして説明していて、クレーマーを登録する目的はないと断言している。

サーバのデータベースと照合する対象は顔特徴から抽出される数値のデータベースであるため、誰が見ても紐づけは不可能。

すべての登録データを共有するわけではなく、限定したもののみ。自店のみで顔認証検知されるデータベースが中心で9割以上は共有していない。


『理不尽なクレームを付けられたりした場合』という記事について『Y新聞の取材で、業者は万引き防止のための顔認証システムとして説明していて、クレーマーを登録する目的はないと断言している』ということであれば、誤記、あるいは恣意的に記載した可能性が高いと思われる。

もっとも、業者が『クレーマーを登録する目的はないと断言している』と言うても登録するかどうかを任されているのは現場の店舗管理者やから、その言葉をどこまで信用できるかということにはなるがな。

この記事を書いた記者は、『理不尽なクレームを付けられたりした場合』も顔認証システムに登録される可能性ありとして、そういう記事を書いたのかも知れんが、取材時に『クレーマーを登録する目的はない』と言われたのであれば、やはり書くべきやなかったと思う。

書けば、当然のように、こういった反論が出てくるわけやさかいな。

『これまで対策に割いていた余計な人件費や経費をもっと生産的な活動に回すことができ、メリットが大きい』という店側の思いは理解できる。

世の中に監視カメラが氾濫しているのは、犯罪抑止のためやろうしな。

それ自体は、今の世の中、仕方のない部分があるのは認めるが、その運用に当たって登録する者の善意に頼らなあかんというのは、どうなんやろ。

僅かでも悪用される可能性があれば、その危険性について言及するのは新聞として間違っているとは言えんのやないかと思う。

もちろん、正確に記述することが大前提にはなるがな。

これについては、疑問を投げかけたという点で新聞記事としては概ね良かったのやないかと考える。

『いったん登録されると、再び来店した場合、店員に分かる形で警報が発せられる。登録されたのとは別の店舗を訪れても、サーバーに記録された顔データで照合され、警報が出る』という記事について、

『サーバのデータベースと照合する対象は顔特徴から抽出される数値のデータベースであるため、誰が見ても紐づけは不可能』という業者の言い分は、正直、良う分からん。

そもそも『誰が見ても紐づけは不可能』であれば、顔認証データの共有など意味がないのと違うのやないやろうか。

訪れた人間が『万引き常習者』かどうかは、対象者とデータの顔写真とを見比べて初めて分かると考えるがな。

『万引き常習者』が入ってくれば警報で知らせるとのことやから、それでええのかも知れんが、そのシステムを扱う側からすると心許ないのやないかと思う。

しかも、『万引き常習者』の顔認証データを登録するのが、防犯の素人近い店舗責任者ではな。それに間違いがないという保証はどこにもないさかいな。

人のやることにミスは付きものや。それを前提にシステムを構築する必要がある。

間違ったことはせんやろう、せんはずやという考えでは必ず大きなトラブルを生むと思うがな。

『すべての登録データを共有するわけではなく、限定したもののみ』という説明では何も分からんし、『自店のみで顔認証検知されるデータベースが中心で9割以上は共有していない』というのであれば、そのシステム自体が成立せんのやないかな。

まあ、新しいシステムには、いろいろ不具合な点が生じるのが普通やさかい、一々突っ込むのもなんやが、新聞記事に対して反論するのなら、誰もが納得できる説明をした方がええわな。

この反論、言い分を聞く限り、よけいな疑惑が湧くだけやと思う。


【新聞記事】

 システムを導入する店舗では、「顔認証監視カメラ設置」などのシールを店内に貼って撮影していることを周知しているが、他の店舗と顔データを共有していることまでは知らせていない。

 個人情報保護法では、防犯カメラで撮影した顔画像は個人情報に当たる。防犯目的であれば本人の同意がなくても撮影は認められているが、顔データを共有すると、第三者への無断提供を禁じた同法に抵触する恐れがある。

 提供された顔データが犯歴や購入履歴などと結びついて個人が特定されれば、プライバシー侵害につながりかねない。

顔データの共有について、個人情報保護に詳しい板倉陽一郎弁護士は「店側が恣意(しい)的に不審者だと登録でき、客にとっては、行ったことのない店舗で不利益な扱いを受ける恐れがある。誤って登録されても反論する機会はない」と指摘する。

 一方、ソフト開発会社は「万引きを防ぎたいという店側のニーズに応えており、問題ない」と説明している。


【ネット上の反論】

対象者と同意書を交わしたデータベースのみが共有の対象となるため、無断共有ではない。また「第三者への提供」とあるが、共有される同意書取得済みのデータベースは本システム導入店のみで共有対象となる。

担当者によると、取材時にはきちんと「同意書を交わしたもの」と説明をしたにもかかわらず、記事では「無断」とされていたという。

客が知らないうちに誤って「万引き犯」と認定、あるいは店側が恣意的に不審者だと決めつければ登録でき、客にとっては、行ったことのない店舗で不利益な扱いを受ける恐れがある。

誤って登録されても反論する機会はない。客が異議を申し立てるなどで取り消す手段がないという批判があるが、削除要請を受ければ共有データ・自店内のデータベースから削除可能であり、利用店舗での削除も可能。

同意書を交わした上でデータを共有するため、登録者本人の同意がない限り登録対象とならない。よって誤認登録である可能性は低い。

ちなみにA社は、本システムの販売に当たり、事前に複数の弁護士などに法的に問題ないか確認を取った上でリリースをしている。

今回の新聞記事の法的解釈については、法律の専門家が、システム運営者と各店舗の関係は、委託関係(個人情報保護法22条)として処理すれば、個人情報保護法違反にはならないと言っている。

したがって、『店舗間の顔認証情報共有』を『個人情報保護法に違反するおそれがある』とするY新聞の記事は、間違いか、そうでなくても、問題の本質ではない。

警察関係者も「顔認証における顔データベースの共有は個人情報保護法には抵触しない」との考えを示した。


『システムを導入する店舗では、「顔認証監視カメラ設置」などのシールを店内に貼って撮影していることを周知しているが、他の店舗と顔データを共有していることまでは知らせていない』という記事は事実のようや。

実際、そのシステムを導入されていると思われる店に対して客がそう指摘しても、そんなことはないと一蹴されたという。

ちなみに、業者は、この記事に対して何も反論はしていないというのも、それが事実やからと考えてええやろうと思う。

新聞記事の『個人情報保護法では、防犯カメラで撮影した顔画像は個人情報に当たる。防犯目的であれば本人の同意がなくても撮影は認められているが、顔データを共有すると、第三者への無断提供を禁じた同法に抵触する恐れがある』に対して、

『今回の新聞記事の法的解釈については、法律の専門家が、システム運営者と各店舗の関係は、委託関係(個人情報保護法22条)として処理すれば、個人情報保護法違反にはならないと言っている』、

『したがって、『店舗間の顔認証情報共有』を『個人情報保護法に違反するおそれがある』とするY新聞の記事は、間違いか、そうでなくても、問題の本質ではない』、

『警察関係者も「顔認証における顔データベースの共有は個人情報保護法には抵触しない」との考えを示した』と、反論しているが、法律関係者の独自の論法を持ち込んでも簡単には解決せん問題やろうと思う。

法律関係者にも、いろいろおって、一つの事案に対して真っ向から違う見解を示すことなど普通にあるさかいな。

すべての法律家が同じ意見になれば問題はないやろうが、そうでなければ法律家の見解は、ただの参考意見にしかならんと考える。

それを信じるか、どうかは読者の判断に委ねられる。そういうレベルの話やと思う。

この問題の解決は、裁判になった場合くらいしかないやろうな。

つまり、現時点において『Y新聞の記事は、間違いか、そうでなくても、問題の本質ではない』と決めつけることなどできんということや。

『提供された顔データが犯歴や購入履歴などと結びついて個人が特定されれば、プライバシー侵害につながりかねない』、

『顔データの共有について、個人情報保護に詳しい板倉陽一郎弁護士は「店側が恣意(しい)的に不審者だと登録でき、客にとっては、行ったことのない店舗で不利益な扱いを受ける恐れがある。誤って登録されても反論する機会はない」と指摘する』という記事について、

業者側は、『対象者と同意書を交わしたデータベースのみが共有の対象となるため、無断共有ではない。また「第三者への提供」とあるが、共有される同意書取得済みのデータベースは本システム導入店のみで共有対象となる』、

『削除要請を受ければ共有データ・自店内のデータベースから削除可能であり、利用店舗での削除も可能』、

『同意書を交わした上でデータを共有するため、登録者本人の同意がない限り登録対象とならない。よって誤認登録である可能性は低い』と反論しているが、これはどう見ても業者側にとって分の悪い主張や。

『対象者と同意書を交わしたデータベース』を作成する難しさについては先に言うたとおりやが、それにもかかわらず『同意書を交わした上でデータを共有するため、登録者本人の同意がない限り登録対象とならない。よって誤認登録である可能性は低い』とするには無理がありすぎる。

そもそも『登録者本人の同意』など得られる可能性は皆無に近いさかい、それを前提としたシステムなど成立せんと考えるがな。

さらに言えば『削除要請を受ければ共有データ・自店内のデータベースから削除可能であり、利用店舗での削除も可能』と業者は言うが、実際には難しいというより、普通の人は共有データの存在すら知らず、削除依頼することすらできんやろうと思う。

また、そのシステムに対して、高い費用を支払った店舗側が、おいそれとそのシステムの存在を認めて削除依頼に応じるとも思えんしな。

それについては、下記のブログに興味深い話を見つけたので、その部分を引用させて頂く。


http://n-knuckles.com/street/trends/news001405.html より引用


万引きGメンの事件ファイル/伊東ゆう


 認証技術が進んだ現在、防犯対策に顔認証装置を設置する店舗は多数存在しており、大手ショッピングモールや大型アミューズメント施設、百貨店などを中心に増加傾向にある。

 いままでは防犯カメラから不審者の写真を取り出し、事務所に貼り出すなどして警戒するのが一般的であったが、いまや顔認証登録されている者が入店すると同時に発報し、不審者の顔写真が表示される時代なのだ。

 今回は、防犯システムの最先端といえる顔認証装置の運用実態と、そこに潜む問題点に迫る。

 つい先日、自宅近くのショッピングモールに行くたびに、万引きすると疑われて困っているという人物から相談を受けた。

 どうやら顔認証装置に不審者登録されているらしく、いつ行っても入店した直後から店員や保安員、警備員などの監視下に置かれ、車で行った場合には駐車場で張り込まれることまであるという。

 その店の名前を聞けば、確かに顔認証装置を導入している店なので、単なる被害妄想とは言い切れない。

 そこで、警戒されるようなことをした覚えはあるか聞いてみると、以前に捕捉された経験はなく、万引きしようと思ったことすらないと答えた。

 つまり、何も悪いことをした覚えはないのに不審者扱いされて、執拗な追跡を受けるほどに警戒されているというわけだ。

 無論、その店に行かなければ済む話ではあるが、自分にとって一番便利な場所にある店なので、それも悔しい。

 そこで、店の責任者に追尾を止めるよう苦情を申し入れ、顔認証に登録されているだろう情報の削除を求めてみた。

 しかし、応対した責任者は顔認証装置の設置はおろか、追尾していることすら認めなかった。

 こうした装置が設置できるような大規模商店ほど、防犯システムの設置や運用方法を明かさないので、自分が不審者として登録されているかどうかの確認すらできないのである。

 ここで気になるのは、その登録基準と情報管理の在り方だろう。顔認証装置に不審者登録される者は、少なくとも犯行現場が明確に映っている場合や、捕捉された既遂者に限られるべきだと考える。

 しかし、筆者の知る限りでいえば事業者側が登録判断をしており、その基準は極めて曖昧だ。

 現状においては、登録できる立場にある者が怪しく感じた人物や、どこか気に入らない人物を不審者として登録しているのである。

 それに、登録情報のクリーニングが行われることはなく、明確な削除基準を持たないことも大きな問題といえる。

 つまり、一度不審者のデータベースに登録されてしまえば、その情報に誤りがあったとしても削除される機会はないので、半永久的に不審者扱いされる破目に陥ってしまうのだ。

 誤った不審者登録は個人情報の侵害を生み、善良であるはずの市民や顧客の日常生活に支障を及ぼす。

 顔認証装置の販売業者や使用者などには、このような状況を放置することなく、早期に改善すべきだと忠告したい。


おそらく、これが実態やろうと思う。

業者は店舗側の性善説を前提にしてシステムを作っているが、人はそう動くとは限らん。

悪意を持ってシステムに携わる人間がいることも考えに入れておく必要がある。

業者側は『警察関係者も「顔認証における顔データベースの共有は個人情報保護法には抵触しない」との考えを示した』と反論しているが、それについても興味深い記事がある。


http://www.asahi.com/articles/ASG3C5HNCG3CPTIL015.html より引用


JR大阪駅の顔認証追跡実験を延期 研究機構、批判受け
2014年3月12日10時54分

 JR大阪駅の駅ビルで、顔認証技術を使って通行人を無差別にカメラで撮影し追跡する実験を4月から計画していた独立行政法人「情報通信研究機構」(東京)は11日、実験開始を延期すると発表した。

 プライバシーの侵害などを理由に市民から批判が寄せられたため、今後立ち上げる第三者委員会が問題点の検討を終えるまで、実験は始められないと判断した。

 機構は、市民からの懸念の声▽政府が検討中のパーソナルデータの利活用ルールの行方▽個人情報保護法などの制度的な課題▽撮影を拒む人への技術的対応の可否――などを理由に挙げ、慎重に検討を続けることにした。

 機構の能見正・ネットワーク研究本部統括は「6月にまとまる予定の個人情報保護法改正案の大綱も踏まえて判断する」と話し、実験開始は少なくとも数カ月は遅れる見通しを示した。


独立行政法人「情報通信研究機構」は、政府の許可を得て、その実験をしていたはずやが、『プライバシーの侵害などを理由に市民から批判が寄せられたため、今後立ち上げる第三者委員会が問題点の検討を終えるまで、実験は始められないと判断した』と発表している。

当然、このことを警察関係者が知らんはずがない。警察自体が、このシステムの導入を待ちこがれているわけやさかいな。

しかし、現実には頓挫している。

業者側の言う警察関係者とやらが誰のことなのかは分からんが、果たして今でも同じ事が言えるのやろうかと思う。

結論として、確かに新聞記事には、幾つかの誤記、憶測に基づく表記があるのは否めんが、総体的には、問題提起をしたという点では評価したいと考える。

このことが大きく騒がれたというだけで、それなりの成果があったと。

そして、この問題の是非は、これからの議論と動向で判断するしかないと。

その意味で、今後どうなっていくのかを見守りたいと思う。


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