メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー

第310回 ゲンさんの新聞業界裏話


発行日 2014. 5.16


■新聞の不思議 その1 新聞休刊日について


ある読者から、


ゲンさん、ハカセさん、いつも金曜日の8時過ぎに届くメルマガを楽しみにしています。

今日はつまらないことかも知れませんが、以前から疑問に思っていたことを質問させていただきたいと思います。

それは、なぜ新聞に休刊日があってどの新聞も一斉に休むのでしょうか? ということです。

新聞販売店の人たちに休みが必要だというのは、何となくわかるのですが、世の中にはコンビニやドラッグストア、スーパーマーケット、ファーストフード店、ファミリーレストランなど年中無休の店はいくらでもあります。

それらの店が年中無休にしている理由は他店との競争とか利益のためで、特にそうする理由はないように思います。

しかし、新聞は違うと思います。事件は毎日起きます。新聞は毎日起きる事件を掲載しなくてはならないのではないでしょうか。

新聞休刊日の翌日に前日の事件を知らせたのでは新聞とは呼べないと思います。

新聞販売店の従業員の人たちは交代で休んでいるとHPやメルマガで読んだ記憶があります。

そうだとすれば、新聞販売店の従業員の人たちのために月に1日だけ新聞休刊日を作ったというのは違うと思います。

労働基準法では週に1日、月4日程度の休みを与えないと違法になるはずです。

また新聞社が一斉に休刊日を作るというのは談合やカルテル行為に当たり、独占禁止法違反になるのではないでしょうか?

しかし、それだと大きな問題になっているでしょうから、何か特別な法律で許可されているのでしょうか?

もし、差し支えなかったらその辺の事情をメルマガで教えていただけないでしょうか? 

メルマガでしたら毎週読んでいますので助かります。それではよろしくお願いします。


というメールを頂いたので、今回はその新聞休刊日について話すことにしたいと思う。

新聞休刊日とは、新聞社が、新聞販売店の慰労・休暇を目的に新聞の発行を行わないとあらかじめ定めている日だとされている。

それらが同じ日に設定されているのは、新聞販売店の中には合配店といって、その地方紙1紙とすべての全国紙を扱っているケースがあり、休刊日を統一しないと、その合配店の従業員が休めないためというのが公の理由として挙げられている。

これだけを聞くと、いかにも新聞販売店の従業員のためを考えて設けられた制度のように思われがちやが、この読者の言われるように『新聞販売店の従業員の人たちは交代で休んでいる』という実態があるさかい、特に新聞休刊日を作る必要はないようにワシも思う。

また『労働基準法では週に1日、月4日程度の休みを与えないと違法になるはずです』というのも、労働基準法第三十五条で、


第三十五条  使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。

○2  前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。


と定められているから、週に1日、もしくは月に4日以上の休日を与えなければならないことになる。

つまり、『新聞販売店の慰労・休暇を目的』としているのなら、月に最低でも4日以上は新聞休刊日がなかったらあかん理屈になるわけや。

しかし、多くの新聞販売では従業員には交代で1週間に1日の休みを与えているのが実態やから、特に新聞販売の従業員の休暇を目的とした休刊日を設ける必要性はないと考えられる。

もっとも、一部の新聞販売店では新聞休刊日以外の休みが一切ないというケースもあるようやが、そんな例外を持ち出すとキリがないので、ここでは新聞休刊日以外でも従業員個々に労働基準法で決められた休日は与えられているものとしとく。

確かに新聞休刊日があることにより、従業員に休日を与える上で新聞販売店にとってはいくらか助けにはなっているやろうが、それだけで『新聞販売店の慰労・休暇を目的』として良しと言うには少し無理があるように思う。

狙いは他にもある。

新聞休刊日に新聞社の印刷工場では輪転機や製作システムのメンテナンス作業をするというのが、それや。

基本的には新聞社は自社の印刷工場で新聞を刷るが、中にはライバル他紙の印刷工場で刷って貰って発行している場合がある。

例えば、S新聞の岡山工場でY新聞の岡山、広島版を刷っているというのが、それや。他にも同様のケースが幾つかある。

それも合配店と同じ理屈で同じ日を休刊日にせんとその印刷工場を止めることができんし、輪転機や製作システムのメンテナンス作業も朝夕刊の印刷後の限られた時間内でするのも限度があるさかい、それが丸1日あれば助かるわな。

新聞社にとっては、こちらの理由の方が大きいやろうと考える。

この読者の方が『事件は毎日起きます』と言われるように、事件の起きない日はない。毎日、常に何らかの出来事が起きている。

それがあるために、日々新聞が刷られ配達されるという前提で月極めの新聞購読契約が成立していると言うても過言やないわけや。

それを「今日は印刷工場の都合で新聞を休みます」とは購読者には言いにくいと新聞社は考えたのやないかと思う。

それよりも、『新聞販売店の慰労・休暇を目的』に新聞の発行を行わないとする方が体裁がええし、購読者も納得すると考えたのやろうな。

そう言えば如何にも新聞販売店に配慮した処置のように一般読者は受け取るさかいな。

新聞社の印刷工場が1日止まれば材料の紙代、インク代、光熱費、薬品代および人件費などバカにならない額の経費が節約できる。

それに付随して運搬コストも押さえられる。新聞を印刷せんわけやから、その新聞を配達する必要がないということでな。

新聞の配送には『共輸便』というのがある。複数社の新聞が共同でトラックを仕立てた「乗合」形態で新聞を輸送するもので「共同輸送」とも言う。

合配店、複合店などへの配達はこれが便利とされている。

その配送を休むためには、共通の新聞休刊日やなかったらあかんという理屈になるわけや。

また、新聞社は取材活動や記事の作成編集について休刊日には体制を縮小するとのことやから、新聞社の大部分の人間が休めるというのもある。

ただ、新聞休刊日が現在の毎月第2日曜日(購読者サイドから見れば、朝刊の配達がない月曜日が新聞休刊日になる)にほぼ統一されるようになったのは1991年からと比較的歴史が浅い。

1956年までは年2回、1957年から1967年までは年3回、1968年から1972年まで年4回、1973年からは祝日以外の日曜日にも新設され、年6〜9回程度やった。

それにしても新聞各社の都合が優先し、なかなか足並みが揃わずそれぞれ別個に休刊日を設けていた。

それまでは新聞は印刷すれば売れていた時代やったから、特に申し合わせて統一する必要もなかった。

それがバブル崩壊後、世の中が不景気になり始め、新聞の売れ行きにかげりが見えたことで、経費を節約するためにも同じ日を休刊日にした方が合理的と考えるようになったわけや。

ただ、何事にも例外というのがあり、新聞休刊日に必ず新聞が発行されないということでもない。

突発的な出来事が起きたケースや国政選挙などの重大イベントが予定されているような場合は休刊日の変更、あるいはその月の休刊日の取り消しなどを新聞各社の判断でする場合もある。

『新聞社が一斉に休刊日を作るというのは談合やカルテル行為に当たり、独占禁止法違反になるのではないでしょうか?』という指摘についてやが、その可能性は少なそうや。

少なくとも公正取引委員会が違反行為として摘発に乗り出すことはないというのが大方の見方や。

独占禁止法(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律)の第2条6項に、


6 この法律において「不当な取引制限」とは、事業者が、契約、協定その他何らの名義をもつてするかを問わず、他の事業者と共同して対価を決定し、維持し、若しくは引き上げ、又は数量、技術、製品、設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し、又は遂行することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう。


というのがあり、談合やカルテル行為は明確に禁止されている。

その点で言えば、現在、日本新聞協会が休刊日を指定する行為は、それに該当するものと思われる。

もっとも、休刊日の指定が「不当な取引制限の禁止」に該当するかどうかは意見の別れるところではあるがな。

新聞休刊日の指定は、新聞社がその立場を利用して販売店に休日を自由に取得させていないということを意味する。

新聞社が販売店の休日設定の自由を奪っている何よりの証拠だという理屈になる。

そうなるると、販売店に休日を与える目的での休刊日指定は、独占禁止法上の正当な事由にはならず違反の可能性が高いと思われる。

しかし、その違反行為で販売店が被害を受けているとは思えない、またその声も上がっていないということもあり、公正取引委員会としては同法違反で摘発する意思はないものと考える。

その意思があれば、とっくに摘発なり、改善命令なりを出しているはずやからな。

それに、休刊日指定に従わなかった新聞社に対して、協会として何らかの制裁措置を行い、取引上の不利を与えた場合は独占禁止法上の違反行為に問われるやろうが、今のところそのような動きがないということもある。

つまり、法律的には違反の可能性はあるが、摘発するまでのことはないといったところやと思う。

『何か特別な法律で許可されているのでしょうか?』というより、法律を厳密に適用しないことで許されていると見た方がええやろうな。

ただ、世界的に見ると日本の新聞休刊日というのは不思議なことのようや。日本以外に、新聞業界全体でそんな特別な日を設けている国はないさかいな。

新聞業界全体で新聞休刊日を指定する行為は、世界的に見れば、やはりカルテル行為と見なされる。

世界のジャーナリズムからの「休刊日」批判について、新聞業界は公正取引における「新聞特殊指定」を盾に反論をしてきたという。

「記者の休みがなくなることを防ぐため」、「販売所を休ませるため」、「たまたま休刊日が重なっているだけ」と。

この休刊日指定に従わない新聞社がある。それは沖縄県の主力地方紙2紙である。

1972年5月15日まで米国領であった沖縄だけがこの「カルテル」に染まっていないわけや。

これをどう見るかは、それぞれで考えて欲しい。また、これについてご意見があれば寄せて頂きたい。

ワシは、世界からおかしなことのように思われようと、新聞休刊日があってもええとは思う。

ワシは新聞業界にどっぷり浸かっているから、そう思うだけかも知れんがな。

今後もワシらかにらすれば普通のことでも世間から見るとおかしいという新聞業界の仕組みについて、いろいろと話したいと思う。


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