メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー

第320回 ゲンさんの新聞業界裏話


発行日  2014. 7.25


■ゲンさんのよろず相談あれこれ Part12


このシリーズもすっかり定着した感がある。そして、このシリーズを始めたことで得られた効果はワシらの想像以上に大きかった。

サイトのQ&Aやメルマガの題材として取り上げにくい新聞関連とは関係のなさそうな話題であっても、『ゲンさんのよろず相談あれこれ』と銘打てば、どんな相談でも受けられるようになったさかいな。

もちろん、そういった相談がある場合に限られるが、話す内容の幅が格段に広がったのは事実や。

変な言い方になるが、それこそ何でもアリになった。

正直言って当初は、これほど長く続くとは思っていなかった。第1回目が2011年6月24日やから、ちょうど3年になる。

ネットには様々な相談サイトがあるとは思うのやが、ワシらのような者にまで畑違いの相談をして来られる方が後を絶たん現状がある。

それらの相談サイトが物足りないのか、自分の悩みをどこに相談して良いのか分からないのか、あるいは藁でも縋りたい一心なのか、そのいずれかやとは思うが、切実な悩みについては、ワシらのおよぶ範囲で答えてあげたいと思う。

ただ、相談内容が特殊なためか、やはり非公開を希望される方が多い。それについてはサイトのQ&Aでも似たような相談が多いから、別にどうということはないがな。

それよりも、最近メルマガで『■返信できないメールが続いていることについて』と題して警告しているように、相談の回答を返信しているのやが、それが相談者に届いていないケースが頻発していることの方が残念でならない。

常連の方のメールには殆どそんなことはないと思うが、初めて相談された方は返答がなければ失望してしまうやろうと思う。

また、常に掲載の確認も兼ねて返信しているので、その内容をそのまま掲載してええものかどうか躊躇するということもある。

今回の『事例1 身に覚えのないクレームで困っています』もその一つで、このメルマガで盛んに『■返信できないメールが続いていることについて』で、そのことを訴えてきた。

未だに、ご連絡がないのは残念やが、その相談者は早めにワシらの回答を知りたいはずやと思う。

また、この回答は似たような事例で悩まれる方にとっても有意義やと考える。

その相談者もこのメルマガを見て相談されたと思うので、ここに掲載すれば見て貰える、気がついて頂ける可能性があると考え、例によってなるべく相談者が特定されないように配慮した上で、その相談者にこの回答が届くことを願って載せることにした。

それでは始めさせて頂く。


事例1 身に覚えのないクレームで困っています 

相談内容


いつも拝見させていただいております。

私はスーパーでパートをしております。昨日の仕事の出来事ですが出勤して直ぐにレジに入りました。

1時間のレジで普通に仕事をしていたのですが夕方、店長に呼ばれて事務所に行ってみたらクレームがあったと言われました。

内容を聞くと私の対応が悪いと言われたということです。

クレームを言ってきたお客様は良く来店されている方でして…。

そのお客様は町内の役員か何かをされている様でして会合があると私の勤めているスーパーの話がちょくちょく話題になるとのことです。

その時、私の態度が良くないって皆様が言っていたと店長に言ったそうです。

買い物をして私のレジで打ってもらうと買ったお惣菜もまずくなるって言っていたそうです。

そのお客様は私をレジから外せとか辞めてもらうとかしたらいかがですか。とまで言っていたそうです。

ですが私自身レジもそんなに忙しい訳でもなかったので丁寧に対応していましたし、他の人に聞いてもお会計後もサッカー台まで運んであげていたし笑顔で対応していたと言ってくれました。

ただ 同じパートの一人の人と言った言わないで口を利かなくなったことがありました。

今回のクレームの件も腑に落ちないですし、その人が誰かに頼んでやらせたのではないかと疑っています。

秋に契約更新があるのですが店長から更新が出来るかどうか分からないと言われました。

息子も学生でお金がかかりますし、今転職するのは厳しいと考えています。

こんなクレーム自体おかしいと他の人に言われました。何をどう対処して良いのか分からず悩んでいます。


回答者 ゲン


クレーマーというのは、どこにでもいるもんやが、あんたの言われているケースはタチが悪そうやな。

『何をどう対処して良いのか分からず悩んでます』ということやが、争うつもりなら、その方法はいくらでもある。

そのクレームをつけた『町内の役員か何か』をしている人間は、『クレームを言ってきたお客様は良く来店されている方でして』ということにもかかわらず、その本人の直接的な苦情ではないようや。

会合の席で、『私の態度が良くないって皆様が言っていた』というのは、あくまでも『聞いた話』で、本当にそういった事実があったかどうかは、はなはだ疑わしいと言うしかない。

普通、クレームというのは不快な思いをした本人が、その不快な対応を受けた時、その相手に直接文句を言うもんや。

もしくは、その時に店の責任者である店長にその苦情を言い立てるのが、一般的なクレーマーの姿やと思う。

それを『あんたの態度が悪いらしい』という証拠に乏しい噂話をもとに言いがかりに近いクレームをつけるのは、誰が考えてもおかしいわな。

本当に、あんたの態度に問題があるのなら、そういったクレームが今までにもあったはずや。それがなく、いきなりこういう話が出たというのは解せん。

何の証拠もなく又聞きでクレームをつけるというのは元来恥ずべき行為とされている。それを平気でする者がいることに驚く。

また、その又聞きを鵜呑みにして、あんたに注意や警告をする店長も管理職として、その能力を疑われても仕方がない。配慮と思慮が足らんすぎる。

管理職にある者が部下に対して叱責や注意をするのであれば、その具体的な失策の証拠と事例を提示するか、またはその失策を犯した現場で反論の余地のない状態でするものや。

当たり前やが、そうせな意味がないし、言われた方も反発するさかいな。「私は、そんなことをしていません」と。

あんたもその思いがあるからこそ、『私自身レジもそんなに忙しい訳でもなかったので丁寧に対応していましたし、他の人に聞いてもお会計後もサッカー台まで運んであげていたし笑顔で対応していたと言ってくれました』と言うておられるのやと思う。

こういったクレームが店側にあった場合、店長などの管理責任者は一応そのクレーマーの言うことを聞くという形に留めて、あんたには「こういったクレームがきているのですが、本当なのですか」と弁解の余地を与え、確認するのが普通や。

今回の場合は、そのクレームは又聞きで何の証拠もないわけやから、あんたが「いえ、そんなことはありませんし、身に覚えのないことです」と反論すれば、それで引き下がるのが常識ある管理責任者やと思う。

その際、「そうですか。それでは、今後はそのようなことを言われるお客様もおられるということで、くれぐれも注意してくださいね」と言う程度までが、事実関係を把握していない管理職のできる限度や。

ところが、その店長とやらは、又聞きのクレームを頭から信用して、『更新が出来るか分からない』と契約更新拒否とも受け取れる宣告に近いことを言うとは、言語同断や。許されることやない。

あんたの雇用形態によって、若干違うが、そのスーパーでのパート契約が複数回に渡って更新している場合は、通常の社員契約と同等の解雇通告が必要になる。

パートタイム労働者は通常1年以内の期間を定めて雇用されるケースが多い。その契約期間が終了すれば労働契約の効力は失われ、期間満了による解雇は必然的に成立する。

しかし、その労働契約が反復して更新されている場合は事情が違ってくる。

つまり、パート契約が反復して更新されている場合は通常、期間の定めのない労働契約と同じとみなされ、期間満了による理由での解雇は無効とされる可能性が高くなるというものや。

判例上、反復更新後の一方的な契約解除、雇い止めについては、解雇権濫用法理というのが類推適用されることになっている。

解雇権濫用法理というのは、労働契約法第16条に『社会通念上、是認できる合理的理由がなければ、解雇権の濫用となり、 解雇が無効となる』と規定されているものや。

労働者を解雇するとなると、正当な解雇理由を提示せなあかんわけやが、又聞き程度の情報による伝聞証拠では、あんたの不貞行為を立証することはできんし、弱いさかい、正当な解雇理由にはなりにくい。

よしんば、その事情が解雇理由として認められるものであっても、反復して更新されているパート契約であれば一般の労働者に適用される労働基準法上の解雇手続が必要になる。

事業主が解雇しようとする場合は、少なくとも30日前にその労働者に解雇予告をするか、又は平均賃金の30日分以上を支払わなければならないことにないというものや。

但し、職場によりパートタイム労働者専用の就業規則を作っていて、雇い止めをするための契約解除の具体的な事由を定めていて、それに該当する場合は、残念ながら契約更新がされないケースもあるがな。

その場合は、事前にその就業規則を貰っているはずやから念のため確かめて置かれたらええ。ただ、それであっても解雇権の濫用は認められてはいないがな。

一見、こういったクレームは仕方のないように見えるかも知れんが、これは、見方を変えれば名誉毀損罪、および侮辱罪に該当する可能性がある。

名誉毀損罪というのは、刑法230条に規定されいるもので、公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した場合に成立する。

法定刑は3年以下の懲役、もしくは禁錮または50万円以下の罰金ということになっている。

この場合、『町内の役員か何か』をしている人間と店長の間で交わされた話ということで、『公然』には値しないと反論する向きがあるかも知れん。

しかし、会合という公の場で、あんたを貶める悪口、批判を言うてる者がいるとはっきり証言しているわけやから、少なくとも会合の場に出席した人間には、名誉毀損罪が該当する可能性がある。

町内の会合程度のことなら調べる気になればすぐに分かるさかい、そこからその出席者たちに会って本当の話を聞くこともできるはずや。

まあ、ワシの感触では、おそらく会合の場でそんな会話が交わされた事実はなく、その『町内の役員か何か』をしている人間の作り話の可能性が高いとは思うがな。

そんな事実が本当にあるのなら、もっと早い段階で、あんたに対する苦情が、そのスーパーに殺到していたと考えるのが普通やさかいな。

いずれにしても人の悪口や批判は、公の場、不特定多数の前でしたらあかんということや。

その悪口や批判が事実かどうかにかかわらず、結果として、その人の名誉や信用が傷つけられたら、その罪は免れんということを覚悟しておく必要がある。

ちなみに、それらの事をあんた個人で訴えても相手にされん場合もあるが、信頼できる法律家に相談して、しかるべき手順を踏んで訴えると、事態は違う結果を生むことがある。

そうすることで嫌がらせをしている同僚、『町内の役員か何か』をしている人間と店長らも事の重大性を認識して、あんたに謝罪して事が収束するということも十分考えられるさかいな。

その意味での対処法としては悪くはないと思う。

ただ、そこまで問題が拗れると、そのスーパーで勤めにくくなるということも考えに入れておく必要がある。

そのために結局は辞めざるを得ないことになる可能性が高いから、ワシの示した方法は知識として気持ちの片隅にしまっておいて『息子も学生で今転職は厳しい』ということであれば、今はその職場で継続して働けるよう頑張る道を模索した方が賢いと思う。

あんたは『同じパートの一人の人と言った言わないの事で口も利かなくなりました』という人が、クレームをつけた『町内の役員か何か』という人間と結託しているのではないかと考えておられるようや。

ワシも、あんたの話を聞く限り、その可能性は否定できんと思う。ただ、証拠がない。証拠のないことは迂闊に人前で言わん方がええ。

その証拠さえあれば相手次第では、「このことは私の胸のうちだけに納めておきますので、これからはこんなことはしないでくださいね」と言えば、一挙に問題が解決する場合も考えられるがな。

しかし、あんたの話を聞けば相当に厄介な相手のようやから、それは考えにくそうや。争えば争うほど深みに嵌る可能性が高い。

まともにやりあっても良くて共倒れが関の山で、あんたにとっては何の益もない結果にしかならんやろうと思う。

ここで、一つ冷静になって欲しいのやが、あんたが受けたクレームは本当に言いがかりやと言えるようなものなのやろうか。

根拠のあるクレームとして一度考えてみてはどうかと思う。

人が人に対して不快に思い、態度が良くないと感じることは実はありがちなことなんや。誰にでもある。

あんた自身が気がつかないような何気ない一言、所作が相手を傷つけ不快にすることなど世の中にはいくらでもあるさかいな。

相手が一度、そういうレッテルを貼ると、その人間はなかなかその意識から抜け出せないもんなんや。

あんたのやることなすこと、すべてが悪く見えてしまう。

あんたにしても同じで、反目する同僚のパートに対しては疑いの目でしか見られんようになっているし、『町内の役員か何か』という人間についても、ええようには考えられんようになっているはずや。

それを責めているわけやない。人には、誰でもそういう一面があるということや。ある意味、仕方のないことやと思う。

人には波長の合う人間と合わない人間がいる。俗にウマが合う、合わんというやつやな。

ウマが合わんと感じた人間は、何をしていても気に食わんと考えるのが普通や。

あんたは、おそらく、どんな人とも普通に接しているはずやと考えておられるのやろうが、相手次第では、そう思って貰えないこともあるということを、この機会に知っておかれた方がええ。

真面目にレジ打ちに専念して打ち込んでいる姿を好意的に見る人もいれば、無愛想な態度をしていると思う者もいるという具合にな。

また、例え『私自身レジもそんなに忙しい訳でもなかったので丁寧に対応していました』としても、クレームをつけることが目的の『町内の役員か何か』をしている人間にとっては、あんたのええ部分など、当然のように眼中になく、人に話すようなこともないわな。

ひよっとしたら、それすら『いらん、お世話や』と考えていたかも知れん。または当然の仕事と思っていた可能性もある。

つまり、相手に苦情を言い立てる人間には、あんたがどんなに尽くしたとしても好意的に受け取ることはないということや。

『町内の役員か何か』をしている人間が、『同じパートの一人の人と言った言わないの事で口も利かなくなりました』という、あんたと反目する人間の思惑で、そうしているのやとしたら、尚更やわな。

ワシがタチが悪いと言うたのは、そういうことや。あんたもそう感じておられるからこそ、『何をどう対処して良いのか分からず悩んでます』と途方に暮れておられるのやと思う。

正直言うて、この手の人間を相手にするのは難しい。

その相手に勝つ、ぎゃふんと言わせること自体は、先ほど説明したような方法を駆使すれば、それほど難しくはない。

相手の愚かな行為を逆手に取るだけでええさかいな。

しかし、あんたのことを恨んでいる人間は、そうすればそうするほど恨みが増幅していくということも考えておかれた方がええ。

あんたを陥れるためなら、どんなことでもする可能性がある。目的のためなら善悪の判断さえ超越してしまうわけや。

世の中で、とんでもない事件を起こす輩の思考は、たいていそれやさかいな。

『共倒れが関の山で、あんたにとっては何の益もない結果にしかならんと思う』と言うたのは、そういうことや。

一般的にクレームがあれば、そんなクレームは二度とないようにすればええ。理屈としてはそうや。難しいと言えば難しいが、その方法がないわけでもない。

そのヒントは、あんたが『笑顔で対応していた』ということにある。

ワシは拡張の営業で最も重要なことは笑顔を絶やさんことやと言い続けてきた。ワシは、その笑顔の重要性を身を持って味わってきたつもりや。

それについてはサイトの『新聞勧誘・拡張ショート・ショート・短編集 第3話 命の笑い』(注1.巻末参考ページ参照)というので話しているさかい、良ければ見て頂きたい。

新聞の拡張とスーパーのレジ打ちでは仕事の内容が違うと思われるかも知れんが、客を相手にするという点では同じやと思う。

人は笑顔で接する限り、相手に嫌な印象を与えることは、まずないと信じている。常に笑顔が営業の基本でもあると。

おそらく、あんたは「私はいつもそうしています」と言われるやろうが、その姿勢をもう一歩踏み込んで欲しいと思う。

人は残念ながら、笑顔で居続けようと思っていても、なかなかそれが持続できるものやない。誰しも体調の悪い時もあれば、気分の悪い時もあるさかいな。

ご自分で考えておられるほど笑顔になっておられないというケースも多いのやないかと思う。

発想の転換で、レジ打ちは笑顔でするものやと思い込まれたら、どうやろうか。それが当たり前のことやと。

ワシの経験上、これは訓練すれば比較的簡単に会得できることや考えている。ワシの場合は、多少恥ずかしい訓練やったがな。

クレームをなくすには、あんた自身の評判を上げることや。その一番の近道は、すべての人に笑顔で接することやと思う。

次に、あんた自身を守る一番の方法は、味方を増やすことや。味方は同僚でもええし、お客でもええ。できれば、その両方で多ければ多いほど、あんたを守ってくれる。

同僚の方には、「こんな讒言をされてクビになりそうなのよ」と悩みを相談すれば、その人も明日は我が身と考えるかも知れん。

同僚の仲間がいれば、あんたと敵対している者も迂闊なことはできんと考えるさかい、その点での効果もある。

また、同僚から評判のええパートは、店長にしても解雇しにくいしな。

お客の味方は、もっと心強い。あんたの評判の良さを店の店長にアピールしてくれれば、それ以上、心強いことはないと思う。

今のところ、あんたへのクレームは、その人間からだけのようやし、これから味方を増やしていけば今からでも逆転は可能やないかと考える。

最後は究極的な方法やが、その反目している人と仲直りすることやな。

あんたにとっては嫌なことかも知れんが、そうすることが、その職場で長く続けられる一番の秘訣やと思う。

ただ現在、その関係は相当拗れているようやから、仲直りするには、あんたの方から謝るしかないやろうな。それが一番の方法やと割り切ることや。

ただ、あんたが謝るのは、その人間に屈したからやなく、仕事のため、お子さんのためと考えれば、頭を下げる程度のことはできるのやないかなと思う。

もちろん、どうするかは、あんた次第や。ワシは単にアドバイス、方法論を示しているに過ぎんさかいな。


事例その2 自衛隊にいる息子を辞めさせるにはどうすればいいですか?

相談内容


ご意見をお聞かせください。

先頃、ニュースで集団的自衛権の行使が閣議決定によって容認され、自衛隊による海外での武力行使が可能になったと報道していました。

息子は2年前、自衛隊に入隊しました。息子が高2の時、東日本大震災で災害救助活動をしている自衛隊員の姿を見て「僕も自衛隊に入って困っている人を助けたい」と言って、入隊を希望しました。

その時には、まさか自衛隊が戦争するために海外へ出兵することになる可能性など考えもしなかったので、人の役に立ちたいという息子の情熱に負けて許しましたが、今となっては後悔しています。

戦争に行くということは自分の命が危なくなるだけでなく、相手を殺すことになるかも知れないのです。

あんなに優しい息子が殺人者になるなど想像したくもありませんし、絶対にそんなことはさせたくありません。

この報道があってから息子に「○○ちゃん、集団的自衛権行使のニュース見たでしょ。自衛隊は戦争に行かなくちゃいけなくなるかも知れないのよ。今の内に辞めて家に帰っていらっしゃい」と言いました。

実際問題として、派兵が決まってから辞めるというのは言い出しにくいと思うのです。

しかし、息子は「大丈夫だよお母さん。日本が戦争するようなことにはならないし、そんな現場に行くことはないよ」と言って取り合ってくれようとはしませんでした。

私は心配で仕方ありません。どうすれば、息子を自衛隊から辞めさせることができるでしょうか。

難しい問題だと思いますが、よろしくお願いします。


回答者 ゲン


確かに難しい問題やな。息子さんが辞めたがっているのなら何の問題もないが、そうでなければ無理矢理辞めさせることなど、誰にもできるもんやないさかいな。

そうは言うても、あんたの気持ちはよく分かる。もしワシの息子が自衛隊にいれば同じように心配して「さっさと辞めろ」と言うてると思うしな。

それでも親ができるのは、そこまでで本人が続けると言えばどうしようもない。

ただ、息子さんが自発的に自衛隊を辞めたいと考える可能性ならある。

今回、安倍晋三首相が強硬に集団的自衛権の行使容認の解釈変更を閣議決定したことについて、自衛隊内部では異論が続出していると聞く。

自衛隊の一部のトップを除いて大半は集団的自衛権の行使容認の解釈変更に反対していると。

自衛隊はもともと専守防衛を基本にしていて、他国に出向いての戦闘は想定していない。

そのため自衛隊では専守防衛以外での他国との戦闘はないものとして長年に渡り隊員たちにそう説明してきた。

それが、今回、安倍晋三首相が強硬に集団的自衛権の行使容認の解釈変更を閣議決定したことにより根本から崩れることになった。

国際社会の憲法と言われている国連憲章では、原則として武力(軍隊)を使うことは禁じられている。

しかし、例外的に自国が攻撃されたり、仲間の国が攻撃されたりした時は、武力による反撃することができるとある。

自国を守るのは「個別的自衛権」、「密接な関係」にある仲間の国を守ることを「集団的自衛権」と呼んでいる。

日本の場合、一緒に防衛するほどの「密接な関係」にある国というのはアメリカくらいしか考えられない。

せやから、アメリカが他国に攻撃された時、初めて「集団的自衛権」を行使すると言える。

しかし、現実にはアメリカが他国に攻撃されるというケースは皆無や。

歴史上もアメリカに攻撃を加えたのは第二次世界大戦中、日本がハワイの真珠湾を攻撃したことくらいしかない。 

アメリカは、自身で世界の警察国家を名乗っているということもあり、他国に干渉するケースが多く、それが結果的に戦争行為に発展している。

ベトナム戦争しかり、湾岸戦争しかり、アフガニスタン紛争しかりである。

そして、いずれの戦争にもアメリカは荷担しているが、戦果に乏しく実質的には負け戦という様相が強い。

その湾岸戦争時、日本は国際連合平和維持活動(PKO)として初めて自衛隊をイラクに派遣した。

この頃、自衛隊を辞めた人たちが多いと言われているが、その実数はどこにも掲載されていないから確かなことは分からない。

ただ、国際連合平和維持活動(PKO)でイラクに派遣された自衛隊員の自殺率が一般の15倍以上もいたことを考えれば、その時期、自衛隊員が大量に辞めたと言われれば説得力はある。

そして、自衛隊内部で、今回の安倍晋三首相が強硬に集団的自衛権の行使容認の解釈変更を閣議決定したことに意義を唱えている幹部が多いとなれば、その不満が噴出する可能性は大いにある。

そういう状況になれば自衛隊を辞めたいと考える自衛官も当然増えるものと考えられる。

息子さんも、それに影響されることもある。それであれば、しばらく待つことで、あんたの望むようになる可能性がある。

ただ、座してそれを待てないというのであれば、世論を盛り上げるための集団的自衛権の行使容認の解釈変更を否定する運動に参加されるのも、一つの方法やと思う。

それに関してはブログやツイッターで訴えるのでもええし、各地の反対運動に参加されるのでもええ。

現在、自民党政府や安倍晋三首相が、今回の集団的自衛権の行使容認の解釈変更や秘密保護法など無謀とも言える政策を強引に推し進めている背景には、そこそこの支持率があると信じているためや。

自民党の国会議員の中にも集団的自衛権の行使容認の解釈変更に反対、異議を唱える者も少ないとは聞くが、彼らは次の選挙のことが気になって、一部の人間以外、公然と声を上げることができないでいる。

ただ、こんな恐怖政治、強行政治が長く続くとは思えない。国民の多くが反対すれば、いかな自民党政府、安倍晋三首相といえど強引なことはできんはずや。

幸いと言うべきか、まだ救いがあると言うべきか、今回の件は、あくまでも閣議決定であって法制化されたものやないということがある。

自民党政府は、2015年4月以降に関連法案を提出して可決させる腹づもりやと広言している。

なぜ、2015年4月以降なのかと言えば、その前の4月に、全国統一地方選挙があるからや。

今集団的自衛権の行使容認の関連法案をごり押しして可決させれば、その選挙で自民党が惨敗するかも知れんという危惧がある。

つまり自民党政府自体、内心では集団的自衛権の行使容認の関連法案など国民から支持されないと承知しているものと思われる。

そのために関連法案をごり押しして可決させるようなことは今は控えておこうと。

理由はそれ以外には考えられない。

つまり、裏を返せば、その全国統一地方選挙で自民党の候補者が負ければ、自民党政府、安倍晋三首相への不信任にもつながり、当然支持率の低下を招く可能性があるということになる。

それぞれの自民党の候補者たちには気の毒な面もあるが、反対意見を表明しない限り、同じ穴のムジナと判断するしかない。

息子さんを守る上でも、その全国統一地方選挙で自民党の候補者たちが負けることが当面の救いになるものと思う。

あんたの質問の回答は以上やが、集団的自衛権の行使容認については近いうちに別途、このメルマガで取り上げるつもりなので、それも参考にされたらええ。


以上や。

それにしても安倍晋三首相になってから、政治が極端な方向に進んでいるようにしかワシらには見えんのやが、読者の方々は、どう思っておられるのやろうか。

意見のおありの方は、是非、お聞かせ戴ければと思う。



参考ページ

注1.新聞勧誘・拡張ショート・ショート・短編集 第3話 命の笑い


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