メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー

第321回 ゲンさんの新聞業界裏話


発行日 2014. 8. 1


■報道のあり方 その6 報道されない焼身自殺報道の裏側について


前回のメルマガ『第320回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■ゲンさんのよろず相談あれこれ Part12』(注1.巻末参考ページ)の中の『事例その2 自衛隊にいる息子を辞めさせるにはどうすればいいですか?』で、安倍内閣による「集団的自衛権容認の閣議決定」の是非について言及した後、最後に、


それにしても安倍晋三首相になってから、政治が極端な方向に進んでいるようにしかワシらには見えんのやが、読者の方々は、どう思っておられるのやろうか。

意見のおありの方は、是非、お聞かせ戴ければと思う。


と意見を求めたところ、早速複数の方々から意見が寄せられてきた。

今回は、その中から『新宿での焼身自殺未遂事件報道について』と題した意見があったので、それについて話したいと思う。

他の方々のご意見も近いうちに掲載したいと考えているが、メルマガ誌上で掲載できる文書量には限界があるので、それは分かって頂きたい。

いつものことではあるが、今回の話だけでも、かなりの長文になっているさかいな。

その前に、この場を借りてお願いしたいことがある。

いつもメールを送ってこられる常連のBPさんという方からのメールに返信できなかった可能性があるとプロバイダーからの報告があったので、もし、BPさんがこれを見ておられたら、連絡して頂ければと思う。

できれば過去に使われていたメールアドレスからお願いしたい。それであれば返信可能だと思われるので。

それでは始めさせて頂く。


新宿での焼身自殺未遂事件報道について


お久しぶりです。

早速ですが、私の意見を述べさせていただきます。

安倍内閣による『集団的自衛権の解釈変更容認の閣議決定』については断固反対します。

安倍内閣が、自衛隊を正式な軍隊にして戦争が可能にしたいのならば、現在の憲法を改正するしかないと思います。

日本政府(そのほとんどが自民党政府)は日本国憲法第9条により日本は集団的自衛権の行使はできないと50年以上に渡って解釈してきました。

それを今になって安倍総理の一存で解釈を変更するというのは到底納得できません。憲法は不変のものでなくてはなりません。

時の総理の一存で憲法の根幹に関わる部分の解釈が自由に変更できるのなら、憲法など必要ないのではないでしょうか。

今までの自民党政府は最後の一線を越えないことで平和国家を築いてきたのではないでしょうか。

最近のことですが、6月29日に東京新宿駅南口の歩道橋上で、50〜60代と見られるスーツ姿の男性が拡声器で約1時間にわたり「集団自衛権の行使容認に抗議する」といった内容の演説を行った後に、焼身自殺を図るという事件が起きました。

その場にいた消防の救急隊員らによって火は消し止められ一命を取り留めたというものでしたが、なぜかその事件の続報が新聞やテレビ報道にはありませんでした。

こうした事件ほど、世間は知りたいと思うのですが、どうしてなのでしょうか。

個人的には、この男性の主張を知りたいと思いますが、あまりに突然の出来事だったのか、その場を撮ったと思われる人たちによるYouTubeの映像を見てもよくわかりませんでした。

ネット上では賛否両論が渦巻いています。どちらかというと、男性の行為に対して否定的な論調が数多く見受けられます。

そんなとき、

▼伊勢谷友介、抗議の焼身自殺未遂者への批判に怒り……「卑下することは許せない」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140701-00000009-rbb-ent

という記事を見つけました。

私は俳優の伊勢谷友介さんの意見に賛同しますが、ゲンさんはどう思われますか。

ご意見を、どうかお聞かせください。


というものやった。

『安倍内閣が、自衛隊を正式な軍隊にして戦争が可能にしたいのならば、現在の憲法を改正するしかないと思います』というのは、ワシも同感や。

自民党政府も『自民党憲法改正案』なるものを作成して一時は本気で憲法改正を目論んでいた時期があった。

それについては当メルマガの『第254回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■自民党憲法改正案の是非 その1 憲法第96条、および第9条の改正について』、

『第255回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■自民党憲法改正案の是非 その2 基本的人権が危ない』(注2.巻末参考ページ)を見て貰えれば、よく分かると思うが、実に酷い内容の憲法改正案やった。

やはりというべきか、自民党政府もその改正案では国民に受け容れられんと判断して、その話はいつの間にか立ち消えになってしもうた。

そこで、安倍総理と取り巻き、および外務省の高級官僚たちによって、窮余の一策とも言える奇策に出た。

それが『集団的自衛権の解釈変更』やったわけや。

これなら、わざわざ憲法を改正するという面倒で実現不可能な手順を踏まなくても、解釈そのものを変えることで事足りると判断したのやろうが、これも結局は愚策に終わる可能性が高いと思う。

国民はバカやない。今までとは違う憲法の解釈で問題ないという主張に「はい、そうですか」と納得する者の方が少ないわな。

新聞やテレビなどのマスメディアでは、それほど大きくは取り上げられていないが、
各地で反対運動が活発に行われているし、ネット上にも賛否両論が渦巻いている。

政府与党とすれば、国民の多くが『集団的自衛権の解釈変更』とは何かということ知らないうちに押し切ろうと考えたのかも知れんが、実際には政治のことなど興味がないという若い世代にまで、このことは知れ渡ってしまっている。

むしろ、それにより近い将来、日本が戦争に荷担する可能性が高まったとして、我が身の事と捉えているようや。

中には、徴兵制度により無理矢理戦場に駆り出されるのではないかと危惧する若い人たちも多いというさかいな。

政府は徴兵制度などあり得ないと言うが、今まで誰も手をつけなかった憲法解釈の変更を平気でするようでは、その言葉を信用しろと言うても無理やわな。

『日本政府は日本国憲法第9条により日本は集団的自衛権の行使はできないと50年以上に渡って解釈してきました』と言われておられるように、その歴史は軽いものやない。

この問題に関して政府は、現在は日本を取り巻く環境、特に中国や北朝鮮の脅威をその理由にしている。

集団的自衛権の行使をしてアメリカに協力しないと、アメリカに守って貰えないという理屈で。そのためには、同盟国のアメリカと同じ歩調を取らないと相手にされなくなるからと。

その背景には日本人の多くが独力で国を守ることができないと考えているようなところがあるが、ワシは必ずしもそうは思わない。

自衛隊の予算は世界の軍事費だけの比較でも世界第7位で、戦闘機などの軍事的な装備の多くが現時点では中国をはるかに凌駕している。

自衛隊とは言うものの世界から見れば立派な軍隊や。それ以外の何ものでもないと考えられている。日本人だけが自衛隊は軍隊ではないと考えているだけでな。

そして、現状の憲法でも、当たり前やが個別自衛権は認めている。つまり、他国から攻撃された場合、反撃、迎撃することについては何の問題もないわけや。

万が一、アメリカの後ろ盾がなくなれば即、中国あたりに攻め込まれると言う人がいるが、そうなる可能性は限りなく少ないとワシは見ている。

日本人が思っているほど中国は日本という国が弱い、簡単に攻められる弱小国とは考えていないはずや。

こんなことは自慢にも何にもならんが、中国は元寇(1274年)以降、戦争で日本に対して単独で一度も勝っていないという事実がある。

形の上では第二次世界大戦で中国は戦勝国ということになっているが、それはアメリカを始めとする連合国が味方についたからや。

もっと言えば、日本は歴史上、他国に戦争で負けたのは、その第二次世界大戦だけやった。

当時、現在もやが、世界最強の国、アメリカに対して真っ向から戦いを挑み、開戦後、最初の2年は日本の方が優勢やった。

アメリカの国土、ハワイに攻め込んだ国も日本以外にはない。

何が言いたいのかと言えば、他国、取り分け中国は日本の力を潜在的に恐れているものと思われるということや。

中国が、日本と開戦覚悟で尖閣諸島に攻め込む可能性がゼロとは言わんが、日本を警戒しているという点だけでも、そんな愚行などしないと思う。

それにはアメリカが、日本が集団的自衛権の行使ができなくなったとしても、日本から手を引くことなど絶対に考えられないということもある。

アメリカは日本を守るためだけに同盟を結んでいるのやなく、アジアの大事な拠点として日本が必要やからや。大国の中国とロシアを牽制するためにも。

加えて、日本は従順でアメリカに反旗を翻す可能性のない数少ない国の一つでもある。

何より、日本に駐軍することで「思いやり予算」とかで、その費用の大半を負担して貰っているということがある。こんな国は日本以外にはない。

アメリカが本気で集団的自衛権の行使をしなければ日本を切るという考えになるのなら、とっくにそうしている。

戦後、日本政府は一貫して集団的自衛権の行使は容認できないという立場を貫いてきとるにもかかわらず、アメリカはただの一度も日本を見捨てるという素振りすらしたことがない。

というか、できないというのが本当のところやないかな。アメリカはアメリカの立場、国益を最優先して動いているだけの話やと思う。

せやから、日本がアメリカに敵対しない限り、アメリカから見放されると考える必要はないということや。

日本が考えている以上に、アメリカにとって日本は利用価値の高い国やさかいな。

それに世界情勢で考えても、現在は国家同士がいがみ合っていても経済関係や民間交流において、それぞれの国が複雑に絡み合っているために、迂闊な真似は、どこの国にもできないということがある。

世界を見渡して国同士の戦争がないということを考えても、それが分かる。あるのは、国の内紛や。

もっとも、その内紛に列強国が影で援助していていて代理戦争の様相を帯びているケースならあるようやがな。

それでも国同士の戦争ができるような情勢には世界はなっていないということや。無理に戦争を仕掛ければ、仕掛けた国が墓穴を掘ることになる。

例えば、中国が尖閣諸島に攻め入れば、その時点で中国の経済が崩壊し、政治的な地位も失うことになる可能性が高いということや。

中国も日本も政治的には敵対していても、お互いの存在がなければ経済が立ち行かんという関係になっている。

最早、お互い切っても切れない関係になっていると言うても過言やないと思う。

余談やが、現在話題になっている中国の期限切れ鶏肉を使用した問題でも、中国の食品加工会社との取引を簡単に中止するわけにはいかんという事情がある。

中国の工場で生産加工して日本に輸入するのは一般的で、食品業界の中国への依存度は大きく簡単に切ることなどできん。

切れば、日本のスーパーの大半で加工食品が消えるさかいな。それにより深刻な食料不足を招く恐れすらある。

『期限切れ鶏肉を使用した問題』どころの話ではなくなるわけや。

中国にとっても日本の市場がなくなれば即座に困る。お互い、それこそ死活問題になる。

常識的には、そんな相手と戦争はできんわな。共倒れ覚悟なら話は別やが、いくらなんでもそこまで中国は疎かやないと思う。

それに加えて同盟国のアメリカの存在がある。中国とアメリカとの経済関係は日本よりもさらに大きい。

また、日本を敵にすることで、その他の国との関係も拙くなる可能性も高い。

余談ついでに、ウクライナ情勢で、世界からやり玉に上げられているロシアに対しても欧米諸国は経済制裁とは言うものの本気で、そうはできないという事情がある。

ロシアに対して強硬な経済制裁をすれば我が身にも、それが跳ね返ってくるからや。相手と同じか、それ以上の痛みを覚悟しなければ経済制裁などできない。

そのため「経済制裁をしましたよ」と言える程度の茶を濁した制裁しかしていないわけや。

事ほどさように、現在世界は複雑に絡み合っているということや。昔のように簡単に戦争できるような時代ではなくなっているのやと。

冷戦時代は核戦争の恐怖から戦争ができんかったが、今は戦争による経済の悪化が怖くて戦争できずにいるといったところやと思う。

集団的自衛権の話に戻すが、現状の憲法解釈でも十分に集団的自衛権の行使に貢献することができる。というか、そうした実績がすでにある。

その端的な例がイラク戦争やったと思う。

当時、自衛隊が海外派兵した際、名目上は復興支援とすることしかできず、武器の使用が困難だったこともあり、結果として、自衛隊は交戦することはなかった。

そのためイラク兵を殺すこともなく、また自営隊員の死者も出さずに済んだ。

それにより現在、イラク国民をはじめとするイスラム社会からも日本は敵視されることもなく、友好的な関係を築くことができている。

イラク戦争以降、イスラム系の組織によるテロ行為を受けていないのも、それが理由として大きいと思う。

また、輸送などの後方支援をすることで、同盟国であるアメリカの顔を立てることもでき、それなりに評価されてもいる。

つまり、現状の憲法解釈でも十分に集団的自衛権の行使に貢献することができたわけや。

そうであるなら、何も憲法の解釈など変えずとも今のままでええと考えるがな。

もちろん、身を守るための戦いは必要や。相手に攻撃されて標的になって殺されろというアホなことは言わん。

だ、そんな場合でも日本独自の専守防衛の精神でええと思う。

先のイラクの例にもあるように、専守防衛に徹する限り攻撃されるケースは少ない。

他国に行っても戦わない軍隊を目指す方が日本のあり方としては正解なような気がするがな。そんな国が一つくらい世界にあってもええと思う。

『また時の総理の一存で憲法の根幹に関わる部分の解釈が自由に変更できるのなら、憲法など必要ないのではないでしょうか』というのは、そのとおりや。

憲法は、為政者、政治家の行動を抑制するためにあるもので、政治家自らが勝手に都合良く解釈を変更してええわけがない。

何度も言うが、そうしたければ、そうできるように憲法そのものを変えるしかない。

それには国民の意志が必要やさかい、それで決まった憲法なら納得できるし、従える。

まあ、それが難しいと判断したからこそ、現自民党政府、安倍政権は『集団的自衛権の行使容認の憲法解釈』に踏み切ったのやろうがな。

いずれにしても国民の支持を得られない政策は成就しない。結局は自らの首を絞めるだけのことにしかならんと考える。

『6月29日に東京新宿駅南口の歩道橋上で……焼身自殺を図るという事件が起きました』、『なぜかその事件の続報が新聞やテレビ報道にはありませんでした』ということについては、ネット上で興味深い記事があるので、それを紹介する。


http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140703-00000025-wordleaf-soci&p=1 より引用


新宿での焼身自殺未遂事件 報道が少なかったのはなぜ?


 多くの買い物客らでにぎわう東京・新宿で6月29日、1人の男性が衆人環視の中、自らの身体に火を放って自殺を試みる事件が起きた。

 この様子は、現場にいた人々が撮影してネットに投稿され、大きな話題となった。

 しかし、大手新聞社やテレビ局では、それほど大きく報じられなかった。

 この男性の行為は、安倍政権が進める集団的自衛権の行使容認に反対したものといわれるが、なぜ新聞やテレビではあまり報道されなかったのだろうか?

 今回の事件は、JR新宿駅南口近くの歩道橋で発生。報道によると、中年の男性が、拡声器で集団的自衛権や安倍首相に関する主張を1時間ほど述べた後、ガソリンのような液体をかぶり、火をつけたという。

 ネットでは現場の生々しい写真や映像が出回り、大きな反響を呼んだ。しかし、ネットでの衝撃とは裏腹に、翌日の月曜日の新聞では、読売、朝日、毎日、産経はいずれも社会面の小さなベタ記事扱い。

 写真もなく、よほど注意して見ないと記事に気づけない。テレビ民放各局も、1分弱の単発ニュースで淡々と報じただけ。NHKではニュースにもならなかった。

 一方で、アメリカのCNN、フランスのAFP通信、イギリスBBCなど外国メディアは、東京発のニュースとしてこぞってこのニュースを報じた。

 平和主義を掲げる日本の憲法9条と集団的自衛権の問題を説明するなどし、「焼身自殺による抗議は、日本では非常にまれ」と、驚きをもって伝えている。

 外国メディアが報じるほどなのに、国内メディアの報道が淡白なことに対して、ネットでは「言論統制か」「何かの圧力?」「おかしいじゃないか」といった声も上がっている。

 なぜ、今回の報道は抑制的だったのか? 自殺の報道を巡っては、「報道すれば、それが模倣の自殺を生む」という指摘が以前からあった。

 世界保健機関(WHO)は「自殺予防 メディア関係者のための手引き」を発行している。

 その中では、1774年にゲーテの小説「若きウェルテルの悩み」が出版されてから、主人公に影響を受けた自殺がヨーロッパ中で相次いだことなどを紹介。
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 そのほか、いくつもの研究で「メディアが自殺を伝えることで、真似た自殺を引き起こす」という結論が出たことを示す。

 逆に、ウィーンの地下鉄でのセンセーショナルな自殺報道を減らした結果、自殺率は75%減少できた、という。

 このため、手引きでは、「自殺をセンセーショナルに扱わない」「自殺の報道を目立つところに掲載したり、過剰に、そして繰り返し報道しない」「写真や映像を用いることにはかなりの慎重を期する」といった注意を、メディア関係者に求めている。

 では、国内メディアはあまり報じないのに、海外メディアは積極的に報じているように見えるのはなぜか?

 大手報道機関(時事通信社)出身のジャーナリスト・石井孝明さんは、「海外メディアは、このところ日本ものは派手なニュースでないと伝えません。

 また利害関係もない。奇妙さを軸にニュースを選んだのではないでしょうか。

 私は大手活字メディアにいましたが、自殺の扱いは慎重にすることと学びました。言論統制ではまったくないでしょう」と話す。

 確かに、海外で今回の自殺未遂を報じても、国内事情が違いすぎて、そのまま共感・模倣されるとは考えにくい。

 一方で、石井さんはネットメディアで軽々しくこの事件が拡散されたことを懸念する。

「人の命をネタにして、自分のツイッターやフェイスブックの閲覧数を増やしたいのだろうか。恥ずかしい行為。ただ、誰もが悪い人ではないだろうから気づいてほしい」と苦言を呈する。

 朝日新聞社は、事件報道の指針の冊子「事件の取材と報道 2012」(191ページ)を公表しており、この中で自殺報道にもページを割いている。

 1986年のアイドル歌手の岡田有希子さんの事例などをあげ、自殺を報道することによって「連鎖自殺」が引き起こされる危険性を指摘。

 このため、報道の注意点として(1)自殺の詳しい方法は報道しない (2)原因を決めつけず、背景を含めて報道する (3)自殺した人を美化しない、の3点を示す。

 そして、報道する対象としては、(1)政治家や芸能人などの著名人 (2)時代を色濃く反映するケース (3)手段や動機が特異な場合、などの3つをあげる。

 これを元に、個別のケースに応じてデスクらが判断することになる。

 今回のケースは、通常なら私人の自殺は報道対象ではないものの、(3)に該当するのは明らかで、なおかつ集団的自衛権に言及していたようなので(2)にも当てはまる可能性がある、と判断されたようだ。

 朝日に限らず、各社とも似たり寄ったりの判断基準だろう。また、今回の場合、政治的主張があり、報道することでその主張を広く伝えてしまえば、今後、同様の手口で自らの主張を行う模倣、もしくは同一人物による再発の可能性も考えられる。

 そういう意味でも、報道を抑え気味にした理由があったと言えるだろう。


この記事の中に、あんたの『こうした事件ほど、世間は知りたいと思うのですが、どうしてなのでしょうか』という質問の答がある。

早い話が、メディアにより自殺報道が自粛されているために報道が少なかったということやな。

『今回の場合、政治的主張があり、報道することでその主張を広く伝えてしまえば、今後、同様の手口で自らの主張を行う模倣、もしくは同一人物による再発の可能性も考えられる』ということを避けるために、メディア側が自主規制した結果やと。

それはそれで納得できる。

焼身自殺を図った人は、新聞やテレビで自殺報道が自主規制されているということを知らんかったのかも知れんな。

いくら命を賭けた訴えでも、これでは世間を騒がせただけということで終わってしまう。

そして、その事件を知った人たちの反応は、『どちらかというと、男性の行為に対して否定的な論調が数多く見受けられます』ということになるのはやむ得ないと思う。

ワシもニュースで事件を知った時には、正直「バカなことをしとんな」と思うたさかいな。

ただ、『安倍政権が進める集団的自衛権の行使容認に反対したもの』と分かった今では、やり方を間違えたなという風に変わったがな。

同じ訴えるのなら、他にもっと違う効果的な方法があったのやないかと。

最後に『私は俳優の伊勢谷友介さんの意見に賛同しますが、ゲンさんはどう思われますか』というこについてやが、その前に、その記事を先に紹介する。


http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140701-00000009-rbb-ent より引用


伊勢谷友介、抗議の焼身自殺未遂者への批判に怒り……「卑下することは許せない」


 俳優の伊勢谷友介が6月30日、新宿駅付近で起きた焼身自殺未遂事件に関する記事を自身のFacebookに投稿。自殺未遂者に対しネット上で非難の声があがったことについて「許せない」と怒りを示した。

 6月29日に新宿駅南口の歩道橋で、50〜60代と見られるスーツ姿の男性が拡声器で約1時間にわたる演説後に、ペットボトルに入っていた液体を自らの体にかけてライターで火を着け、焼身自殺を図った今回の事件。

 報道によれば、男性は集団自衛権の行使容認に抗議する演説を行っていたという。

 伊勢谷はこの事件後にネット掲示板「2ちゃんねる」に匿名で投稿されていた内容がひどいものだったとし、「『名無し』の人間が、焼身自殺と言う命をかけた行動を、頭ごなしに迷惑だとか、狂人扱いし、卑下することは許せない」と怒り心頭。

「命の使い方をどうするかは、意志のある人間が持てる大切な自由だ。それも社会の一大事に、命を賭して、その問題提起や変革のための切っ掛けを創るなら、なおのこと然りと言うべきだ」と持論を展開した。

 今回の事件をめぐっては、北海道道議会議員の小野寺まさる氏がTwitter上で「これは公衆の場での迷惑極まりない行為であり、明らかに犯罪だ。又、死にきれずに多大な方々に迷惑をかけた愚行だ」などと発言し、物議をかもしている。

 なお、伊勢谷は今回の自身の記事について、自殺未遂者のメッセージを称賛したり自殺を推奨するものではないとしている。


というものや。

俳優の伊勢谷友介氏の思いは理解できるが、『自殺未遂者に対しネット上で非難の声があがったことについて「許せない」と怒りを示した』というのは、どうやろ。

確かに『ネット掲示板「2ちゃんねる」に匿名で投稿されていた内容がひどい』というのは今回の件に限らず、ワシも見る度に感じることや。

そこまで言うか、言えるのかというのが、あまりにも多いさかいな。

しかし、例えそうであっても、ワシらなら、そんなものに関わらずに放っておく。

ワシらは、例え『頭ごなしに迷惑だとか、狂人扱いし、卑下する』といった表現があったとしても、「ああ、そういう意見なのか」と考えるようにしとるさかいな。

人の意見は千差万別、様々にあって自分とは違う、相容れないものがあるのが普通で、そんなものに一々反応してもキリがないと思う。

ただ、そういった口汚い言葉を吐く人間の程度は疑うがな。人を批判したり貶したりすることは、どんな愚か者にでもできることやと。

この自殺未遂者の本当の真意が分からんから何とも言えんが、命を賭けた行為には、それなりの理由があったはずや。

我が身に置き換えた時、ワシには到底命を賭けて訴えるというような真似はできんやろうと思う。

メディアの『自殺報道を抑制する』というのは理解できるが、今回の件に関してだけで言えば『自殺を報道することによって「連鎖自殺」が引き起こされる危険性』というのは、限りなく少ないような気がする。

絶対とまでは言い切れんが、その根拠ならある。

ワシがまだ学生やった1970年11月25日、作家の三島由紀夫氏が自衛隊市ヶ谷駐屯地(現在の防衛省本省)を訪れ東部方面総監を監禁して、部屋の前のバルコニークーデターを国民に促す演説をした後に、割腹自殺を遂げたという事件があった。

この事件は大々的にテレビ放映され世間に大きな衝撃を与えた。

当時、作家三島由紀夫氏のファンも多く、その小説から影響を強く受けた人も多かったはずやと思う。

ちなみに、ハカセも三島由紀夫氏の小説をよく読んでいて影響を受けた一人やったという。

しかし、その事件を模倣して割腹自殺した例は一件もないとのことや。

ただ、今回の新宿焼身自殺未遂事件は、その三島由紀夫氏の割腹自殺を模倣したものやないかという意見もあるようやがな。

もし、そうやったとしたら、56年も経った今になってということになる。普通は、そんなことは考えられんわな。

新宿焼身自殺未遂事件も、そうやが命を賭けてまで訴えるというのは、よほどの思いがなかったら無理や。誰にでもできることやない。

もっとも、他に自殺したくなる理由があって、衆目を浴びる目的でそうしたというのなら話は別やがな。

いずれにしても事を起こした本人にしか、その理由は分からんやろうと思う。

そして、その真相は本人が語り、それが周知されるメディアに流れない限り、永遠に封殺されるやろうな。

新聞やテレビのメディアは言うにおよばず、ネット上のメディアも新聞やテレビの報道を批判することしか眼中にないようでは、どうしようもない。

世の中で何が正解かということは言えんが、言いたいことや主義主張があるのなら、地道に訴え続けるしかないと思う。

ワシらのように。

あるいは、ワシらのサイトやメルマガに、その思いの丈を送るという手もある。そのすべてを掲載するとは約束できんが、少なくとも黙殺することはない。

ワシらは、サイトやメルマガに載せられんようなことでも、その本人には回答という形で返信しとるさかいな。

ワシらの判断は明確や。掲載することで読者のためになるか否かで決める。ただ、それだけや。



参考ページ

注1.第320回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■ゲンさんのよろず相談あれこれ Part12
http://www3.ocn.ne.jp/~siratuka/newpage19-320.html

注2.第254回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■自民党憲法改正案の是非 その1 憲法第96条、および第9条の改正について
http://www3.ocn.ne.jp/~siratuka/newpage19-254.html

第255回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■自民党憲法改正案の是非 その2 基本的人権が危ない
http://www3.ocn.ne.jp/~siratuka/newpage19-255.html


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