メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー

第330回 ゲンさんの新聞業界裏話

発行日  2014.10. 3


■新聞の実像……その10 新聞販売店の現状についてのアンケート結果


このメルマガ誌上で、久しぶりにアンケートの募集を行った。

それには、ある読者の方から、全国の新聞販売店の経営状況が知りたいという要望があったからや。

ワシらも、それを知ることでメルマガ誌上において新聞販売業界に対し、提言をさせて貰う際の参考になると考えた。

第一次募集が平成26年8月15日〜8月30日まで。二次募集が平成26年9月5日〜9月20日までの1ヶ月余りの期間やった。

その募集要項は、


新聞販売店の現状についてのアンケート結果

1.現在のお店の状況。

経営は好調・特に問題はない・例年と変わらない・厳しい・廃業を考えている

といった感じで結構です。

2.上記についての理由、およびエピソードや意見がありましたら教えてくだ
さい。

3.取り扱う新聞(全国紙、地方紙といった程度)とお住まいの地域(関東・
関西といった地域名)を教えてください。


というものや。

結果から先に言うと、過去にないほどアンケートの集まりが悪かった。また送られたアンケート回答の多くが非公開を希望されるケースが目立った。

それにはアンケートの回答が新聞販売店関係者限定だったという事と、答えにくい質問で下手にアンケートに協力すると身元がバレるおそれがあるといった心配をされた人が多かったからやないかと思う。

第一次に寄せられたのが5件ほどで、そのうち実に4件が非公開を希望されていた。

これではアンケート結果として公表するのは辛いので、さらに15日間の追加募集を行ったわけや。

今度は10件ほど寄せられた。そのうち3件が非公開希望やった。計15件の回答が寄せられたことになる。

それらの結果の内訳は、『1.現在のお店の状況』で『経営は好調・特に問題はない』が4件で約26.7%、『例年と変わらない』が1件で約7%、『厳しい・廃業を考えている』が10件で約66%やった。

そのうちから掲載できるものだけを紹介する。


関西地方 A新聞販売店経営者さん  

1.現在のお店の状況

厳しいです。


社長の謝罪報道があってから、新規営業の自粛を余儀なくされています。

トメオシはしています。今のところトメオシには、あまり影響はありません。

報道があってから1ヶ月の間に社長の謝罪報道の影響とみられる解約希望が5件ほど入りました。

これって多い方なんですかね。5、6年前だったかM新聞の時にくらべれば、まだマシなような気がします。

ほとぼりがさめて営業が開始できるのが、いつになるのかわからないので長引くと先行きが不安です。


『社長の謝罪報道』というのは、『第328回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■報道のあり方 その7 吉田証言、吉田調書に見る誤報報道の真実とは』(注1.巻末参考ページ参照)にあるので、まだの方は見て頂ければと思う。

事の是非も人それぞれやと思うので、それを見た上で判断して頂きたい。

一言で言えば、誤報に対する謝罪会見やった。

その事を大きく捉える他紙や週刊誌によって報道されたことでA新聞が苦境に立たされているというものや。

もっとも、それにはそれなりの理由があるわけやがな。

『5、6年前だったかM新聞の時』というのは、『第8回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■MDN醜聞の波紋』(注2.巻末参考ページ参照)のことを言うておられるのやと思う。

この時もネット上でのバッシングは凄かった。

これはM新聞社の英文サイト「Mデイリーニューズ(MDN)」上にあるコラム記事のことで、直接の新聞紙面とは違う。

もちろん、それやからと言うて許されることではないがな。この事件は誤報というより捏造に近い記事のオンパレードやった。

その記事の総数は実に2907本にも上るというさかいな。

そのコラム記事には、日本についておよそあり得んような醜聞記事が全世界に向けて、さも事実であるかのようにおもしろおかしく掲載され続けてきた。

まさに国辱ものと、ネット上でこき下ろされた事件やった。

この時はネットユーザーから抗議で、ネット上でのM新聞社関連の広告が一時的に削除されたり、新聞の不買運動が行われたりしたさかいな。

こういった不祥事があると、いつもその煽りを食らって泣きを見るのは現場で営業しているワシら末端の者たちと相場が決まっている。

ワシらには、どうしようもない手の届かんところで、やられていることに対して責任はないとは思うのやが、一般の人は当たるところがないのか、勧誘に行ったワシらに苦情や文句を言い立てる人が多い。

ボロクソに言われて挙げ句、「解約する」とか「おたくの新聞なんか読まない」と追い返される。

こんな理不尽なことはないと思うのやが、それを新聞社に言うても相手にされることは、まずない。

もっとも、新聞社の人間に面と向かって、そういう苦情を言う業界関係者も少ないがな。

ただ、M新聞社の件では新聞社は真摯に反省されていたことが救いやったと思う。

その謝罪文をネット上に1年近くも掲載し、組織、人心とも一新して出直された結果、その後、現在に至るまで問題は起きていないさかいな。

今回のA新聞の場合も、その教訓に習って立ち直って貰えるものと確信している。


中部地方 合配店従業員さん

1.現在のお店の状況

特に問題はない。

うちの店舗は取り扱っている新聞は全紙。合売店です。

地域に高齢者が多いためか新聞の部数は、それほど減りません。

それでも、お年寄りのお客が亡くなられると、その分は減るとは思うのですが、僕の配達地域では毎年配達部数は、ほぼ一定しています。

ですので、「例年と変わらない」にさせてもらいました。


新聞業界では、例えどんな新聞社の不祥事が起きようと、地方、とりわけ高齢者の多い地域では、あまりそのことが話題になることすらないようなところがある。

それには高齢者の多くがネットに関わらないということもあるが、他紙やテレビの報道でも一過性の報道しかしないということも影響している。

他の凶悪事件や社会事案のように、この事案で特集記事、特集報道を組んで長期間報道するということもなかったさかいな。

昔から、他紙や他紙系列のテレビ報道では、お互いが仲間、身内同士という思いが強いためか、あまり叩くということをしない傾向にある。

さらっと事実を通り一遍、形だけ報道して終わっている。

週刊誌などは、ここが売り時とばかり、これでもかというくらい関連記事を数多く掲載していたが、昨今の出版業界の低迷のためか、多くの人に読まれているとまでは言えないようや。

数十万部は売れたようやが、それにしても国民の1%にも満たない人にしか読まれていない計算になるしな。

それもたいていは関心のあるネットユーザー、新聞嫌いの人たちが買い漁るさかい、多くの一般の目に触れ、買い求めるまでには至ってないと思われる。

特に高齢者ほど、その傾向が強い。

それには、高齢者ほど週刊誌に対して「ええ加減な記事が多い」という先入観があるため、新聞やテレビなどで大々的に取り上げられなければ、そんな事実があったことすら知らない人の方が多いからやと思う。

都会では当たり前に書店やコンビニ、駅の店頭に並ぶ週刊誌も人里離れた地方では目にすることさえ稀やさかいな。

それには週刊各誌が年々売れ行きが減少しているため、売れる地域にしか出荷しないためもあると思う。

それが都会の若い世代と地方の高齢者のとのギャップを生んでいる。埋まることのない温度差が、そこにあるわけや。


関東 A新聞販売店元専業員さん


1.現在のお店の状況

廃業は時間の問題。


最近まで都内の専売所で専業として働いていました。例の問題以降、仕事をしていてもおもしろくないので辞めることにしました。

所長は「もうダメだ」と言っていました。ハンパでないくらい断りの電話が毎日ありました。

もうつぶれるのは時間の問題のような気がします。今新聞業界とは別の仕事を探しています。


非公開を希望されていた人の中には、他にも同じような意見が見受けられた。

今回の件で、新聞業界にとって最も怖いのは読者の新聞離れよりも、こういった販売店従業員の方たちの将来に対する不安により辞めていくことやないかと思う。

失った購読者は時が経てば、また戻ってくることも考えられるが、一度、そんな思いで離れた職場には誰も復帰したいとは考えんさかいな。

当たり前やが、従事する人が減れば、その仕事は確実に衰退する。

新聞社が不祥事を起こした際、読者に謝罪するのは当然やが、それと同じくらい現場で仕事する人たちのケアに勤める気持ちを持つべきやと思う。

しかし、残念ながら、今のところ新聞社が現場の人間のことを考えて対策を嵩じたという話は殆ど聞こえて来ない。ほったらかしや。


関西 Y新聞販売店経営者さん

1.現在のお店の状況

まずまず順調です。


ここのところ他紙の失点によって漁夫の利を得て営業が好調なこともありますが、数年前と比べて店舗の規模が大きくなっていますので、まずまず順調だと思っています。

何年か前、困っていた時にゲンさんやハカセさんに励まされたおかげだと感謝しています。


ワシらのおかげやと言うてくれることに対しては素直に嬉しいと思う。

ただ、それが『他紙の失点によって漁夫の利を得て営業が好調』やというのは複雑な気分やがな。

もっとも、この業界は昔から、そういう面が強かったさかい、仕方ないことではあるがな。

拡張をする者にとって有利と思えるネタは何でも使うことは、当たり前のように行われてきたさかいな。「敵の失敗は味方の得」と。

差し詰め、サッカーで言えば「オウン・ゴール」、野球の場合やと「タイムリー・エラー」といったところやな。

相手の失点で勝ちを得る。ええ悪いに関係なく、勝負事では常に起こることやと考えてなあかん。


中国地方 地方紙新聞販売店従業員さん

1.現在のお店の状況

経営は好調だと思います。


うちの社長は2、3年で高級車を買い替えています。豪邸に住んでいます。

新聞屋は儲かる仕事だと僕は思っています。うちには「押し紙」のようなものもありませんし、部数もほぼ一定しています。

でも給料は10年働いていて手取りで22、3万ほどしかありません。他の店では、もっと高給を貰っていると聞き及びます。

従業員の給料を抑えているから儲けることができるのでしょうか?

僕も昔は、いつか新聞販売店の経営者になりたいと思っていましたが、HPやメルマガを読んでいろいろな話を目にして難しいなと感じています。


『従業員の給料を抑えているから儲けることができるのでしょうか?』というのは、これだけの情報では何とも言えん。

従業員から搾取した結果やと見ることもできるし、その経営者の手腕が優れているからやと推察することもできる。

また、地方紙特有の高いシェアにより常に高水準の売れ行きを保っているというもあるやろうし、地方の新聞経営者は概ね資産家の人が多いということもあり経営母体がしっかりしているということも考えられる。

『うちの社長は、2、3年で高級車を買い替えています』というのも、これだけやと個人の趣味でそうしとるのか、単なる見栄を張っているだけということもある。

労働者の常として、経営者の羽振りがええのは、自分たちから搾取しとるからやと思いがちや。

そして、それには少なからず嫉妬心のようなものも加わっている。

ただ、『でも給料は10年働いていて手取りで22、3万ほどしかありません』というのは、業界全体で見れば水準に近いもので取り立てて少ない方でもないと思う。

『他の店では、もっと高給を貰っていると聞き及びます』というのは確かやが、給料が高いというだけで、その職場が優れているとは一概には言えん。

そこには、どんな問題が潜んでいるのか分からんさかいな。

とかく他人の水は甘く見えるもんや。飲んでから、しょっぱい、まずいと思うことは普通にある。


九州A新聞販売店従業員さん

1.現在のお店の状況

厳しい。

最近、賃金カットがありました。夏のボーナスも当然のように出ませんでした。

お店の経営はかなり苦しそうです。

このままではジリ貧ですので転職を考えています。


正直、これにはコメントし辛いな。

こういう人に対して、もうちょっと頑張れといった無責任なことは言えん。

ワシらが、『頑張れ』とアドバイスするのは、その人が「この苦境をどう切り抜けたら良いでしょうか」と、相談して来られた時くらいのものや。

その具体的な方法を提示して、頑張る気持ちがあるのなら頑張れと言うことはある。

もっとも、いつものことやが、最終的な判断は相談者自身に任せるしかないがな。


関東 M新聞販売店専属拡張員さん

1.現在のお店の状況

好調。


古から言われて来た諺ですが、禍福はあざなえる縄の如し、残念ながら人の不幸は蜜の味と言う諺が実感しているのが私の仕事をしている昨今の実情です。

今まで散々悔しい思いをしてきたライバルの紙を扱って来た私がこんな事があって良いのか? と思うほど講読者がいとも容易く新聞のチェンジをしてくれます。

何ヶ月後からと言うのでなく来月からと言って岩盤のような固定読者が乗り替えてくれます。

拡張人生が長くなってどうしても取り替えてくれなかったお客さんがですから本当にこんな事があって良いのかと多幸感を味わっています。

ネットなどでは契約を止めたお客さんはもう新聞を止めてネットに移行しているかの如く書いてありますが、私の扱っている紙の方は増えてばかりいます。


『ネットなどでは契約を止めたお客さんはもう新聞を止めてネットに移行しているかの如く書いてあります』というのは、ある一面だけを捉えて、そのように喧伝している人たちがいるのはワシも感じていた。

ネットでは新聞嫌い、ネット至上主義の人たちの集まりが多い。

周りに自分と同じ考えの人が多いと、世の中はそういう人たちで覆い尽くされているかのように錯覚する人がいる。

実際は新聞を購読しない、俗に無読と呼ばれる人たちは日本国民全体で言えば多く見積もっても3割程度しかいない。

これは新聞各紙の抱える「押し紙」を含む「余剰紙」を計算した上でのもので、新聞を購読している世帯は今以て7割強もあって多数派を占めているというのが、紛れもない事実なわけや。

ただ、そういった多数派にいる人たちもネットのそうした世界に入っていくと、新聞肯定派が少数なのかと考えやすい。

新聞の好きな人は世の中には多いはずやが、その人たちは「サイレント・マジョリティ(物言わぬ多数派)」に徹しているためか、ネットで発言することが少ない。

ネットで新聞肯定派が少数と感じるのは、そのためやと思う。

平成23年のインターネット利用者数は9,610万人で普及率は79.1%。
対して新聞の普及率は、落ち込んでいるとはいえ2013年現在、ABC(日本ABC協会)調べでは86%になっている。

これは新聞販売店の申告が主な調べやから、これから「余剰紙」を差し引いた実質的な購読部数が7割強やと言うてるわけや。

単純な数字だけやと、新聞を購読して尚かつネットもしているという人が圧倒的多数を占めることになる。


関西 Y新聞販売店従業員さん

1.現在のお店の状況

好調。


密かに我々販売会社などのグループ店会議での資料に各店の本社定数と実配定数の記載を控えるよう、指示があったそうです。

まぁ、いわゆる大人の事情というやつですが、折り込みチラシのスポンサーに知られるとまずいのでしょう。

実際の入れ止め差は大阪本社管内でもマイナス1000に近い数字だったそうです。

無論それも店からの定数報告書上の数字で自己申告な部分もありますのでなんとも言えませんが…。

幸い、当店ではガチのプラスを達成出来たので良かったですが。

ほんのごく一部の上の人間の自己満足の為に多くの店が犠牲を強いられる事が美徳されるこの業界ならでは出来事と言えるのでもはや諦観の境地です。


以上や。

これらを読まれて、意見を述べたい、また所属の新聞販売店の現状を知らせたい、という方がおられたら、今からでも遅くはないので、是非、教えて頂ければ有り難い。

今回、非公開を希望されている『厳しい・廃業を考えている』という人たちの意見を掲載できんのは残念やが、その人たちの話を聞く限り、相当に深刻な状況にあるというのが、よく分かる。

対して好調やと言われる人たちも、そこそこおられた。

データが少ないので、これだけでは何とも言えんが、都市部にある新聞販売店ほど厳しく、高齢世帯の多い地方の新聞販売店になるほど比較的好調、安定しているということなのやろうと思う。

そうだとすると、都市部の新聞販売店を立て直す対策が急務ということになる。

これはワシの感じとることやが、今までのように、ただ競争の原理だけで他紙販売店との客の取り合いに明け暮れとったら、新聞業界全体があかん時代に突入するのやないかと思う。

このままでは無読でネット至上主義、および新聞嫌いの人たちから、新聞の悪い面ばかりを強調されることよって新聞の購読部数が減り続けていくのは目に見えている。

現在、新聞がジリ貧状態に陥っている要因の一つに、それがある。

今まで新聞社はネットの論調に対して黙殺してきたが、いずれはネット至上主義世代が世の中の大勢を占めるようになるさかい、その頃になって巻き返そうと考えても手遅れや。

巻き返すのなら、まだ有利な情勢にあるうちや。劣勢になってから慌てても遅い。

それには各新聞社、各新聞販売店一丸となるしかない。オール新聞業界として、まずは新聞の良さを積極的にアピールすることや。

今までは無読でネット至上主義者、および新聞嫌いの人たちによって新聞のイメージがネット上で大きく損なわれてきたが、それに終止符を打つ必要がある。

このまま手を拱いていれば、いずれはネットによって新聞が潰される日が来ることになるのは確実やさかいな。

それを防ぐためにも、これからも読者の声を真摯に聞いて、業界に対して提言し続けていきたいと思う。



参考ページ

注1.第328回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■報道のあり方 その7 吉田証言、吉田調書に見る誤報報道の真実とは
http://melma.com/backnumber_174785_6092654/

注2.第8回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■MDN醜聞の波紋
http://www3.ocn.ne.jp/~siratuka/newpage19-8.html


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