メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー

第334回 ゲンさんの新聞業界裏話

発行日 2014.10.31


■ネット上に拡がるA新聞の無料配布問題について


サイトのQ&Aに『NO.1302 A新聞の無料配布について』(注1.巻末参考ページ参照)という相談があったことで、A新聞の販売店が無差別に新聞の無料配布サービスをしているという事実を知った。

もっとも、これはA新聞の販売店側から見た無料配布サービスであって、それを送り付けられた方は、そうとは受け取っていない方もおられるがな。

この相談をされた一般読者の方のように。

ここで、そのサイトのページをまだ見ていない人もおられると思うので、念のため『NO.1302 A新聞の無料配布について』(注1.巻末参考ページ参照)の全文をここで紹介しとく。

もちろん、このページをすでに見て知っておられる人は読み飛ばして頂いて結構や。


NO.1302 A新聞の無料配布について

投稿者 decon さん  投稿日時 2014.10.23 AM 2:29 


ご無沙汰しております。いつもホームページを楽しく拝見させていただいてます。

今回久しぶりにメールを送りましたのは、最近私の住んでいる所で起きている新聞の無料配布についての問題の御相談です。

今、私の住んでいる地域では、サービスの形で住人の要請もないのに勝手に無料でA新聞が配達されております。

そのことも問題なのですが、それより新聞と一緒に何かわけがわからない文書が入っているのが気になるのです。

文書の中に試読を中止するにはフリーダイヤルに電話するようにかいてあるのですが、お隣の奥様が試読中止の連絡をした所、それから毎日セールスマンの訪問や新聞勧誘の電話がかかってくるようになったそうです。

たぶん着信履歴から個人情報を記録しているのだと思いますが、電話連絡をしないと新聞の無料配布が止まらないみたいです。

勝手に配達しておいて配達を中止するには電話連絡しなければならないなんてなんか理不尽です。

私の家では今日で無料配布5日目なのですが、このままほっといてもいいのでしょうか?

それとも連絡する必要があるのでしょうか?


回答者 ゲン


本当に久しぶりやな。前回の相談から5年ぶりくらいかな。『いつもホームページを楽しく拝見させていただいてます』とのこと長く見て頂いてほんまに有り難い限りや。

『今、私の住んでいる地域では、サービスの形で住人の要請もないのに勝手に無料でA新聞が配達されております』というのは、あんたの地域に限ったことやないようや。

どの新聞でも1週間の試読サービスというのはある。しかし、それは事前に勧誘員が了解を得た人だけと限られている。

それを『住人の要請もないのに勝手』に配布するというのは、やったらあかんことやと思う。

過去にもある販売店が独自の判断で、特定の個人に対して『要請もないのに勝手』に新聞を配達したという例はあるが、今回の場合は、いろいろな地域で不特定多数の人たちに行われているようや。

普通、ここまで広範囲で大がかりなことを販売店の独断でするはずがない。独断ですれば、当然やが、その費用は販売店持ちやさかいな。

これは、A新聞社の意図が働いていると見るべきやろうと思う。

あんたが『そのことも問題なのですが、それより新聞と一緒に何かわけがわからない文書が入っているのが気になるのです』と言っておられるのは、

『突然にA新聞の配達をして、申し訳ありません。誠に勝手ではありますが、朝刊を無料でおとどけさせていただきます』と始まる文書のことやと思う。

今までA新聞社が、ここまですることはなかった。

これについてハカセも違和感を感じたので直接、A新聞社の窓口に確認した。すると、返って来た答えは「それにつきましては各新聞販売店の判断でしていることでして」ということらしい。

公には、A新聞社は関知していないという態度やった。

『文書の中に試読を中止するにはフリーダイヤルに電話するようにかいてあるのですが、お隣の奥様が試読中止の連絡をした所、それから毎日セールスマンの訪問や新聞勧誘の電話がかかってくるようになったそうです』というのは論外な話やわな。

ただ、『勝手に配達しておいて配達を中止するには電話連絡しなければならないなんてなんか理不尽です』と言われておられるとおり、配達を止めさせるには電話をするしかないやろうと思う。

しかし、その後の『それから毎日セールスマンの訪問や新聞勧誘の電話がかかってくる』ことを防ぐ手立てならある。

配達の中止を申し入れる時、「うちにセールスマンは寄越さないでください」と一言言えば、それで済む。

それでセールスマンが来れば、2009年12月1日から施行された■『特定商取引に関する法律』改正法の第3条ノ2第2項の「再勧誘の制限」というのに違反するさかいな。


販売事業者又は役務提供事業者は、訪問販売に係る売買契約又は役務提供契約を締結しない旨の意志を表示した者に対し、当該売買契約又は当該役務提供契約の締結について勧誘をしてはならない。


というものや。

この『特定商取引に関する法律』違反で過去に逮捕、摘発されている新聞販売店関係者もいるので、この一言でセールスに来ることはできんようになる。

念のため、その電話をする時、その会話の録音をしておけば尚ええ。それがあれば、「再勧誘の禁止通知は知らなかった」とは言えんさかいな。

『私の家では今日で無料配布5日目なのですが、このままほっといてもいいのでしょうか?』ということやが、ハカセが確認したところ、やはり試読サービスは一週間までとのことやから後2、3日すれば自然に止まるのやないかな。

もし、これからも続くようなら、先ほど言うたように電話で断る際、再勧誘の禁止通知をしておくことや。

それさえしておけば、この先、あんたからの希望がない限り、二度とその販売店からセールスおよび、電話がかかって来ることはないやろうと思う。

もし、そんなことがあれば『特定商取引に関する法律』違反で警察に訴えることもできるしな。

『お隣の奥様が試読中止の連絡をした所、それから毎日セールスマンの訪問や新聞勧誘の電話がかかってくる』ようになって困ると言われているお隣の奥さんに、そのことを知らせてあげたらどうかな。

「今からでも再勧誘の禁止通知をするのは遅くはありませんよ」と。

今回のことは、おそらく先頃のA新聞の不祥事により、部数が激減したため苦肉の策として行われたことやとは思うが、どんな理由があれ断りもなく勝手に新聞を配達したらあかんわな。

勝手にそんなことをされたら誰でも気持ち悪くなる。A新聞の販売店にとってはサービスのつもりなのかも知れんが、それでは却って逆効果にしかならんわな。愚策と言うしかない。

『それとも連絡する必要があるのでしょうか?』というのは一週間が過ぎてからでええのと違うかな。普通に考えて、それ以上無料で新聞を配達し続けることはないと思うさかいな。

また、まがりなりにも文書で『誠に勝手ではありますが、朝刊を無料でおとどけさせていただきます』とある以上、誰かが、あんたの名前を勝手に騙って契約をでっち上げたという訳でもなさそうやしな。

また何かあれば、いつでも結構やから気楽に相談してくれたらええさかい。


と回答したところ、続けて『NO.1303 再勧誘の禁止通知は関係ない?』(注2.巻末参考ページ参照)という質問が、同じ方から寄せられた。


NO.1303 再勧誘の禁止通知は関係ない?

投稿者 decon さん  投稿日時 2014.10.25 PM 9:55


ご回答ありがとうございます。

アドバイスされたとうり電話でお断りした所、無料配達は止まりました。

ただ気になることがあるのです。それは私の名前と電話番号、住所を相手側に控えられたことです。

「個人情報なので慎重に扱ってください」とお願いして、ゲンさんのアドバイスどうり新聞販売店に再勧誘の禁止通知するようにお話ししたのですが、「セールスは一般の商行為なのでそちらの一方的な事情でやめさせる事は出来ない」と言われたことです。

言われてみればそうかな? と思うし、セールス訪問や電話勧誘されても断ればいいだけですから考え過ぎかもしれませんが、なんか腑に落ちないもやもやした気持ちです。

お隣の奥様にもゲンさんのアドバイスを伝えたところ、大変喜ばれて感謝されました。

ついでにホームページの宣伝もしておきました!

これからもお体に気をつけてお元気で! 


回答者 ゲン


『ただ気になることがあるのです。それは私の名前と電話番号、住所を相手側に控えられたことです』というのは、あまり気にされる必要はないと思う。

まず、あんたの名前と住所が分からんと新聞の配布をストップすることができんし、電話番号については、あんたがその販売店に電話した時点で着信表示されとるはずやから、教えても教えなくても相手には分かるわけやさかいな。

『個人情報なので慎重に扱ってください』というのも普通の新聞販売店であれば個人情報を外に洩らすことは殆どないから、それほど心配される必要はないと言うとく。

それには業者としてのモラルという面もあるが、それ以上に顧客情報が他紙他店に洩れることを嫌がる体質が業界に根強くあるからや。

販売店の個人情報が他紙他店に洩れた場合、その洩れた相手に客を奪われかねんということを意味するさかいな。多くの新聞販売店には、その懸念が強い。

せやさかい、客のためやなくても結果として客の個人情報は守られるということになるわけや。

その証拠と言うては何やが、新聞販売店経由で顧客の個人情報が他に洩れたという事件や報道は今のところ皆無やさかいな。ネットの掲示板やブログ、ツイッターにすら、そんな話はない。

『ゲンさんのアドバイスどうり新聞販売店に再勧誘の禁止通知するようにお話ししたのですが、「セールスは一般の商行為なのでそちらの一方的な事情でやめさせる事は出来ない」と言われた』というのは、その応対に出た販売店の人間が単に無知なだけのことやから気にされる必要はない。

前回でも言うたが、『特定商取引に関する法律』改正法の第3条ノ2第2項の「再勧誘の制限」というのは業界にとっては今や常識になっていることで、大きな足枷ともなっているものや。

それについての詳しいことは当メルマガ『第79回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■『特定商取引に関する法律』改正法は業界にとってのチャンスになる?』(注3.巻末参考ページ参照) にあるので、それを読まれたら分かると思う。

『再勧誘の禁止通知』を無視して、その販売店から勧誘員が、あんたの家に来た場合、『セールスは一般の商行為なのでそちらの一方的な事情でやめさせる事は出来ない』という法律を無視したような、ふざけた理屈は通用せん。通用するはずがない。

「再勧誘の制限」に違反すると、業者である新聞販売店には業務停止命令などの厳しい行政処分が下されることになっているしな。

そんなことがあれば新聞社の苦情係か、「新聞公正取引評議会」にでも通報すれば、その新聞販売店は、きつく叱責されるはずや。当然のことながら、それで、あんたへの勧誘は完全に止まるものと考える。

まあ、そうなったらそうなったで、その時にでも相談してくれれば詳しい対処法をアドバイスさせて貰うがな。

『セールス訪問や電話勧誘されても断ればいいだけですから』というのは、そのとおりで基本的には、必要でないものは毅然とした態度で断るという意思を強く持っていれば、新聞勧誘に限らず、あらゆる勧誘に対処できると思う。


というものや。

この回答をした直後、A新聞の販売店関係者と思われる方から、


NO.1302とNO.1303の回答を見ました。

ゲンさんは、いったい誰の味方なんですか?

ゲンさんは僕ら販売店の味方だと思っていたのでがっかりしました。

こんな回答がネットに出回ったら販売店は終わりです。いますぐ削除してください。

僕らは必死にがんばっているんです。無料配布のどこが悪いというんですか?

赤字覚悟でお客様にサービスすることがいけないことなのですか?

この苦境を乗り切る方法がほかにあるのなら教えてください。お願いします。


というメールが寄せられた。

本来なら、この質問はサイトに掲載して回答すべき類のものやとは思うが、敢えて、このメルマガ誌上で取り上げることにした。

その理由は、この方の質問に答えながら話すことで分かって頂けるものと思う。

まず『ゲンさんは、いったい誰の味方なんですか?』ということやが、確かにワシは現在、ある新聞販売店グループに所属しとるから、その立場で回答したり発言したりすることが多い。

しかし、せやからといって何があっても新聞販売店の味方をせなあかんとは考えていない。

このメルマガ誌上やサイトで再三に渡り言うてきたことやが、ワシらは業界の味方でも一般読者の味方でもない。ましてや中立でもない。

困っている人、すべての味方や。少しでも困っている人の役に立ちたいと考えとる。

そして、正しいことは正しい。間違っていることは間違っていると言いたいだけのことや。

それ以外に他意はない。

新聞社や新聞販売店の行いが悪いと思えば、そう言うし、一般読者の悪質な行為についても厳しく言及しとるつもりや。

それがワシらの、ここでの立ち位置ということになる。それ以上でも、それ以下でもない。

業界への苦言は、その立場で仕事をされている方にとっては耳が痛い、面白くないことかも知れんが、大きな目で見れば必ず業界のためになると信じて話しているつもりや。

ネットでありがちな批判だけを言うてるのとは、わけが違う。どうすればええのかといった建設的な意見も同時に言うてるつもりや。

『こんな回答がネットに出回ったら販売店は終わりです』というのは、必ずしもそうとは思わんがな。

むしろ逆や。

今回のような一般読者に何の断りもなく新聞を配布するような行為について言えば、その愚に気づいて止めさえすれば問題はないと思う。

そして、この回答をサイトに掲載したことで、それがなぜ悪いことか、あかんことなのかを考えるキッカケになれば、個人にとっても業界にとってもマイナスにはならんと考えるがな。

それに、A新聞の無料配布自体は、ワシらが回答をサイトにアップする以前に、すでに大きな問題としてネットで騒がれ始めていることでもあるしな。

Yahoo!Japanで『新聞の無料配布』のキーワードで検索するとA新聞の無料配布に関連するページが100万件ヒットしていることからも、それが分かるはずや。

ワシらに、どうこう言う段階やないと思うがな。

『いますぐ削除してください』というのは、悪いが投稿者以外の人の要望に応えるわけにはいかん。

特にQ&Aは相談者個人に向けて回答したもので、第三者の誰かにとってその回答が気に入らんというケースはいくらでもあるやろうと思う。

そういう人たちの意見を重視して、その都度回答を削除していたら、そもそもQ&Aをやる意味がなくなる。

例え、そういった回答を削除しないでいてサイトへの訪問者が激減し、閑古鳥が啼くような事態になったとしても、それはそれで仕方ないと考えている。

これは国家権力や新聞社、暴力団組織など、ありとあらゆる圧力がかかろうと一緒や。

如何なる圧力があっても正しいと信じてしたことを曲げるつもりはない。

ワシらは、そうして生きてたきたし、これからもそうして生きていくつもりや。

『僕らは必死にがんばっているんです。無料配布のどこが悪いというんですか?』というのは、その回答でも言うてるとおり、


どの新聞でも1週間の試読サービスというのはある。しかし、それは事前に勧誘員が了解を得た人だけと限られている。

それを『住人の要請もないのに勝手』に配布するというのは、やったらあかんことやと思う。


ということに尽きる。

『無料配布のどこが悪い』という発想は新聞販売店からの視点しかないから、そう考えるのやと思う。

ただで貰える物に何の文句があるのかと。

『赤字覚悟でお客様にサービスすることがいけないことなのですか?』というのも同じや。

そこには、それを受け取ることになる一般の人の視点がない。

ちょっと想像すればわかることやが、頼みもしない物を送り付けられた人の多くは得をしたと考える人より、気持ちが悪いと思う方が普通の反応やろうと考える。

新聞販売店が、『赤字覚悟でお客様にサービスする』目的は、それにより勧誘して契約に結びつけたい思いがあるからや。

そういうのをサービスとは言わない。ただの餌巻き以外の何ものでもないと思う。

一般の人から、その下心が透けて見えてしまうようでは終いや。

今回のケースでも『文書の中に試読を中止するにはフリーダイヤルに電話するようにかいてあるのですが、お隣の奥様が試読中止の連絡をした所、それから毎日セールスマンの訪問や新聞勧誘の電話がかかってくるようになった』ということのようやから、あからさまや。

結局、『無料配布サーピス』とは言いながら、勧誘目的の手段の一つとしてやっているにすぎんことやと思う。

『赤字覚悟』というのも、その勧誘が成功せんかったらの話で、成功すればプラスになるわけやから関係のない話になる。

悪いが、どう考えても『住人の要請もないのに勝手に無料でA新聞の配達』がされている正当性など、どこにもないと言うしかない。

一刻も早く、こんな愚行は止めることや。それがベターというか、この件を収めるには、それしかないと断言する。

『この苦境を乗り切る方法がほかにあるのなら教えてください』という相談なら、いくらでも乗る。

そして、その方法、および提案ならいくつかある。


A新聞の新聞販売店がこの苦境を乗り切るための方法および提案


1.新聞の無料配布サービスは承諾を得た人だけの限定的にする。

今回の問題点は『住人の要請もないのに勝手に無料でA新聞の配達』がされたということに尽きる。

新聞の無料配布サービスをするのなら、やはり承諾を得た人に限定することや。

それなら業界のルールとして1週間の無料配布サービスというのがあるから何の問題にもならんかったやろうと思う。


2.1週間の試読サービス専用の報酬を出す。

今回のように試読サービスに重きをおくのであれば、1週間の試読サービスの承諾を得る毎に、勧誘員に某かの手当てなり報酬なりを与えてもええのやないかと思う。

現状だと、客からいくら1週間の試読サービスを得たところで勧誘員の収入ににはならんさかい、そんなことに手を出したくないと考えるのが自然や。

しかし、例えその報酬が少なくてもゼロよりかはマシと考える勧誘員もいとるさかい、実際にそうすれば、1週間の試読サービスの承諾はいくらか得られるのやないかと思う。

1週間の試読サービスを勧めているうちに本契約が取れるということも考えられるし、例え本契約を断られた相手でも試読なら応じるケースもあるさかい、少なくとも今回のような問題に発展することはなかったはずや。


3.1週間の試読サービスを営業のアイテムとして使う。

業界で「1週間の試読サービス」というのは決められているが、それは一人の客に一度だけと限定されているわけやない。

勧誘員が、この客は将来的に契約して貰えるなと踏んだ場合、ある一定の期間を空けて「1週間の試読サービス」を繰り返すという方法もある。 

特に、過去、新聞代を払うのが勿体ないといった理由で無読になったような人は、新聞自体が嫌で止めたというケースとは違うから、営業次第では「1週間の試読サービス」なら構わないかと考える人もいるのやないかと思う。

そういう人に狙いをつけるわけや。根気よく付き合えば分かって貰える可能性もある。


4.販売店として新聞社に苦情を言える組織を作る。

今回のA新聞の苦境は、当メルマガ『第328回 ゲンさんの新聞業界裏話
■報道のあり方 その7 吉田証言、吉田調書に見る誤報報道の真実とは』(注4.巻末参考ページ参照)で話したA新聞社の誤報に端を発した不祥事に起因したものや。

そのためA新聞社の社長が謝罪会見までしている。非がA新聞社にあるのは明らかやが、系列の新聞販売店には何の責任もないことや。

新聞販売店が新聞紙面を作る権限やチェックする責任があると言うのなら別やが、そんなことが許されるはずもなく、ただ売れと言われた新聞を売って、配れと言われた新聞を配達しているだけやさかいな。

しかし、その何の責任もない新聞販売店が、今回のことで読者が激減したことにより一番の苦境に立たされているわけや。

経営が行き詰まり、廃業にまで追い込まれている販売店経営者の方もおられる。

その焦りのあまり、今回のような『住人の要請もないのに勝手に無料でA新聞の配達』をするという愚行に走った販売店が表れたのやと思う。

愚行とはいえ、その気持ちは分からんわけやない。賛成や支持はできんがな。

こういう場合は、販売店として新聞社に苦情を言うのも一つの方法や。そのための組織を作らなあかんやろうがな。

こういった新聞社の不祥事は昔から繰り返されてきた。そして、これからも続く可能性が高い。

その度に末端の何の罪もない販売店が泣きを見るというのは、あまりにもワリが合わんし、理不尽や。

それで廃業を余儀なくされる、廃業を考えているという人が実際におられるわけやさかいな。

それについては『第330回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞の実像……その10 新聞販売店の現状についてのアンケート結果』(注5.巻末参考ページ参照)を見て頂ければ、その切実さがよく分かって貰えるはずや。

新聞社の不祥事をなくすには、新聞社の自浄能力に期待するだけではあかんと思う。

新聞業界で新聞社以上の規模を有しているのは新聞販売店全体や。

新聞社と新聞販売店1店舗の関係やと、主と従で文句の一つも言えないが、全部の新聞販売店が結束すれば従が主を動かすこともできる。

新聞販売店が反旗を翻せば新聞社は成り立たんさかいな。

一人の人間が国家に刃向かっても、ただの灯籠の斧にしかならんが、国民すべてが国家に対抗したら国家も折れるしかない。

それと同じ理屈や。

新聞社にとって新聞販売店が強力な目付けということになったら、不祥事も減るのやないかと思うのやがな。

それが結果として新聞販売店を救うことにつながるはずやと思う。


5.苦情聞き取り法を取り入れる。


ワシは拡張を始めた初期の頃から、「苦情聞き取り法」というのを取り入れた営業をしてきた。

これは当時、ワシが仕事をしていた地域での拡張営業の評判が最悪やったことから考え出したものや。

この「苦情聞き取り法」というのは、結構、効果的やった。なんせ周りが悪どいことをする者ばかりやったさかいな。

当然のことながら、拡張員に対して苦情を持っている人は多かった。

そんな人には、新聞社から派遣されて苦情を聞いていると言えば面白いように客から話が聞け、情報が集まった。

ワシ自身は喝勧や騙しの勧誘をしたことはないが、その方法で数多くの手口を知ることができた。

真摯な姿勢で、その客から苦情を聞くことで落ち着き満足する人が多く、結果として、ワシの勧誘に応じるケースも珍しくなかった。

今回の場合やと、A新聞社の不祥事で勧誘しにくくなって困っているわけやから、それで怒っている人に対して、

「当新聞販売店としましては、お客様からの苦情をお聞きして新聞社にお伝えしますので、是非、ご意見をお聞かせください」と言う。

そして、その苦情をとことん聞く。それで気分の晴れる人も中にはおられるはずや。

さらに、「私らも新聞社の不祥事のおかげで大変な目に遭っています」と言えば同情を引くこともできる。

後は持って行き方次第で成約になる、もしくは解約を阻止できるかも知れんということや。


6.新聞社の不祥事程度で左右されないような新聞販売店としての独自のカラーを出す。

例えば、前回のメルマガ『第333回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■読者からの提案 その1 新聞屋さんのサービスについて』(注6.巻末参考ページ参照)の中で話した『新聞販売店による独居老人の見守り対策サービス』といったようなものやな。

その販売店にしかできない地域に根差したサービスをすることで、新聞記事の内容以上の付加価値をアピールして購読客をつなぎ止めるわけや。

そうしていることで、今回の不祥事でも、さほどのダメージを受けていない新聞販売店が実際にあるしな。


7.ネットを見ない高齢者層を大事にする。

現在、A新聞社の不祥事に関して書き立てているのは、週刊誌を除けばネットくらいなものや。

週刊誌はその時さえ売れれば良いという性格のものやから、同じ内容の記事を延々と続けることはない。一過性のものや。

また、その信用度は低く、その週刊誌を買って実際に読んでいる人も限られる。

余談だが、週刊誌の発行部数ほどアテにならんものはない。数十万部を発行していると謳っていても、たいていは私称にすぎない。

週刊誌には、新聞のように部数を調べる機関がなく、それぞれが勝手に部数を申告しているだけや。

新聞にも発行部数の水増しがあるから、実数はその8割程度やと思うが、それでも、週刊誌に比べれば、その信用の度合いに格段の差がある。

週刊誌も新聞と同じく企業からの紙面広告費で成り立っている部分が大きい。

それが私称であれば言い方は悪いが、言いたい放題の部数になりやすいということや。その広告費を少しでも多く得たいために。

ちなみに、今回のA新聞社の不祥事を書き立てている週刊誌すべてを集めた私称部数は100万部程度で、実際に売れているのは、せいぜいその半分の50万部そこそこやとワシは見ている。

日本の人口比率にして0.4%程度や。

たからといって影響がないかと言えば、そうでもない。問題発覚の導火線としての役割は結構大きいさかいな。

多くの疑惑が事件化するキッカケは、その週刊誌に報道されたケースが多いというのが、それを証明している。

今回のA新聞社の不祥事の問題が大きくなったのもキッカケは週刊誌で報道されたからや。

ただ、何度も言うが持続性がない。それも当たり前で同じネタばかり書いていたのでは売れんさかいな。

週刊誌は常に新しいネタを追いかける。今やと自民党の女性閣僚二人が同時に辞めた「W辞任」とやらに関係した記事が、そうや。

それに端を発して「政治とカネ」の問題で話が、どんとん拡がりつつある。

新しいネタを追いかける週刊誌のおかげで、A新聞社の不祥事問題も、ここのところ影を潜めてきたと言える。

週刊誌で暴かれ、週刊誌に助けられているといったところかな。

しかし、ネットはそうはいかない。HPやブログの記事は、そう簡単に消えんさかいな。見る人にとっては、いつまでも存在する。

裏を返せばネットを見ない人たちには、さぼど影響はないわけや。その最たる人たちが60歳以上の高齢者の方やと思う。

60歳以上の高齢者の方でネットを利用している人は、まだまだ少ない。

そして、その60歳以上の高齢者の9割以上が新聞を購読していて、新聞の購読客の実に7割以上をその60歳以上の高齢者が占めているというデータもある。

その高齢者層を大事にすることで、こういった危機を乗り切れるのやないかと思う。

実際、今回の件で大きな影響がなかったと言われる新聞販売店の多くが、そうやったと聞くさかいな。


8.何もしない無策という策もある。

いつの時代でもそうやが、不祥事といったものは時が経てば忘れられ、風化するものと相場が決まっている。

特に現代社会では、常に新しい大きな問題が日々生まれているのが実情なわけや。

問題の大きな時に、それを打ち消そうと必死になって動いても多くの場合、逆効果にしかならん。

今回の『A新聞の無料配達サービス』が、そのええ例やと思う。

暴風の時は、じっと物陰に潜んで、その風が止むのを待つというのも立派な策や。

『無策の策』に徹することで、いつか事態が好転すると信じて。

ただ、この方法は、その考え方の外に、じっと我慢できるだけの体力、経済力も必要になると思うさかい、簡単な策ではないがな。


他にも考えれば、まだまだ方法はいくらでもあるとは思うが、今回はこれくらいにしとく。

結論として、何をするにしても相手の気持ちを無視した行いには、ええ結果がついてこんということやな。

却って墓穴を掘ることになる。

そして、何かを計画するのなら、そうした結果がどうなるかを想像してみることや。

それができなければ、第三者に相談するのでもええ。

それがワシらでも構わない。相談されれば、ない知恵を振り絞ってそれなりの方法とアドバイスはさせて貰うさかいな。

もっとも、それを生かすか殺すかは、それぞれに任せるしかないが。



参考ページ

注1.NO.1302 A新聞の無料配布について
http://www3.ocn.ne.jp/~siratuka/newpage10-1302.html

注2.NO.1303 再勧誘の禁止通知は関係ない?
http://www3.ocn.ne.jp/~siratuka/newpage10-1303.html

注3.第79回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■『特定商取引に関する法律』改正法は業界にとってのチャンスになる?
http://www3.ocn.ne.jp/~siratuka/newpage19-79.html

注4.第328回 ゲンさんの新聞業界裏話
■報道のあり方 その7 吉田証言、吉田調書に見る誤報報道の真実とは
http://www3.ocn.ne.jp/~siratuka/newpage19-328.html

注5.第330回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞の実像……その10 新聞販売店の現状についてのアンケート結果
http://www3.ocn.ne.jp/~siratuka/newpage19-330.html

注6.第333回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■読者からの提案 その1 新聞屋さんのサービスについ
http://melma.com/backnumber_174785_6112580/


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