メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー

第342回 ゲンさんの新聞業界裏話


発行日 2014.12.26


■2014年を振り返って思うこと


今年も残すところ後5日。これが今年最後のメルマガになる。

そこで、いつものように主な出来事、およびメルマガ誌上で取り上げた話を中心に今年1年を振り返ることにする。


2月5日。作曲家の佐村河内守氏のゴーストライター問題が大きな騒ぎになる。

これに関してあるメルマガ読者の方から、『ハカセさんのご意見はいかがでしょうか?』という質問メールを頂いたので、

『第298回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■ゲンさんとハカセの時事放談……その1 ゴーストライター問題について』(注1.巻末参考ページ参照)の中でハカセの回答を載せた。

詳しくは、その回のメルマガを見て貰えれば分かると思うので、ここでは要点だけ抜粋する。


回答者 ハカセ


ゴーストライターとしての私の意見を知りたいということのようですので、お答えします。

中略。

私たちは、ある特定の人物を寄ってたかって叩く、攻撃するというのはあまり好きではありません。

もっとも、過去のメルマガやサイトにおいて、殺人事件などの凶悪で極悪非道と思われ、その犯行に疑いの余地のない行為については痛烈に批判するケースはありましたが、その場合でも名指しをするようなことは避けてきました。

それらに比べると、今回の問題は誰かに危害を加えたという話ではなく、単に佐村河内氏の名前で利益を得ようとしていた音楽関係者、出版関係者たちのアテが外れて損害が生じたという程度のことだと考えます。

また佐村河内氏を信じてCDなどを買って裏切られたと感じた人たちが被害を被ったくらいなものだと。

もちろん、それだから良いとは言いませんが、金銭的な損害程度のことで、さも極悪人でもあるかのように扱って叩く気にはなれないということです。

まして、佐村河内守氏は自身の非を認め、謝罪の意思を示しておられるのですから尚更です。

私は佐村河内守氏を擁護するつもりはありませんし、庇う理由も根拠も持ち合わせていませんが、この程度のことであれば謝罪して済む問題だろうと思います。

中略。

『私は、音楽のことは分かりませんが、「誰が書こうが、自分がいいと思えるものを何度も味わう」という姿勢であり、「本人の作品じゃないから返金しろ」というのは消費者の我がままです』と言われるのは、私もそのとおりだと思います。

『コマーシャルやドラマも、一般消費者(視聴者)がいて成り立つものですが、どうも最近は、一部の身勝手な消費者の意見に振り回され過ぎです』というのは、

当メルマガ『第295回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■考えさせられる話……その3 TVドラマ「明日、ママがいない」について』(注2.巻末参考ページ参照)で私たちが話した事とも一致します。

身勝手な主張をして業者や関係者を追い込むような真似をするのは恥ずかしいという風潮にでもならない限り、こういった人たちが後を絶つことはないのかも知れませんね。

そうする人たちは、自身では正義の行いをしていると思っておられるのですから。

中略。

この件に関して私が問題にしたいのは、N氏が佐村河内氏のゴーストライターをしていたという事実を曝露した点です。

もっとも、N氏は本当の意味でのゴーストライターだったのか、どうかというのは疑わしいですけどね。

単に、佐村河内氏の名前で作曲していただけだという思いが強かったのでしょう。ゴーストライターとしてあるべき姿など知らずに。

N氏はゴーストライターとしての経験が、佐村河内氏からの依頼だけだったということのようですから、ゴーストライターとしてのルールについてまでは考えてなかった、知らなかったと思われます。

私は一時期、ゴーストライターで生計を立てていました。人に自慢できる仕事ではありませんが、それなりに誇りと矜持を持ってやっていました。

ゴーストライターには絶対に守り通さなければならないルールがあります。

それは、誰のゴーストライターをしていたかという事実は何があっても絶対に曝露してはいけないということです。

ゴーストライターは、その名のとおり「幽霊の書き手」であって現世に現れることは許されません。

某かの対価と引き換えに、その事実を墓場まで持っていくというのが多くのゴーストライターたちの矜持だと思っています。もちろん私もその一人です。

世の中には、私に限らず数多くのゴーストライターが存在します。今回の曝露は、その人たちの生活をも危うくします。

今回の場合、その曝露をしたN氏に対してマスコミや世間は寛大というか、賞賛する声さえ聞こえてきます。

そうなると、どういうことになるでしょう。

必然的にゴーストライターに依頼する人たちが激減することが予想されます。

後になって「実は私が誰それのゴーストライターでした」と曝露されたのでは堪らないと考えますからね。依頼者にとっては致命的なことになりかねません。

また、ゴーストライターの中には、それで表の世界に出られるのではないかと勘違いする者が現れないとも限りません。

そうなると、ゴーストライターの仕事自体が消滅しかねません。誰も依頼しなくなりますからね。

確かに、その本人になり代わって作品を書くという行為は褒められたことではないでしょう。読者を欺く行為と言われれば反論できませんからね。

しかし、世間に発表できる内容を持ちながら、それを表現できない人が数多くおられるのも事実なのです。

書きたいことは山ほどあるのに、その第一歩が踏み出せない、人に読んで貰える文章が書けないという人は世の中にはいくらでもいます。

私たちゴーストライターは、そういった人たちの助けをしていると考えています。

求められているのは単に文章を書く能力だけです。作品は、あくまでも依頼者の心の中にあります。

私たちゴーストライターは、その思いを汲んで文章にして書いているわけです。

それに満足して頂ければ仕事は、そこで終わりますし、満足して頂けなければ、満足して頂くまで書き続けます。

ですので、多くのゴーストライターは書き上げた作品が自分のものだとはけっして考えません。それを自分の作品だとして曝露するなど以ての外です。

例え、その作品が売れたとしても、それは依頼主の名前があったからだと考えます。

音楽の世界のことは私には分かりませんが、似たような構図ではなかったかと思います。

ただ、書籍や文章の代筆にありがちな厳然としたゴーストライター契約があったのか、どうかは不明ですが。

佐村河内氏である依頼者がN氏というゴーストライターに曲の制作を依頼する際、図表や言葉での指示が問題視されているようですが、私はそれもアリだと考えています。

ゴーストライターに依頼する人は、それを楽曲として書き表せないのですから、そうすることに不自然さはないと私は思います。

N氏はその対価として720万円貰っていたと言っています。つまり、ゴーストライター契約が成立していたということになります。

そうであるなら、如何なる事情があったにせよゴーストライターだったという事実は絶対に曝露してはいけなかったと考えます。


と、ハカセにしては珍しく辛辣な論調やった。

最近、そのN氏をテレビで見る機会が増えているが、それについて、どう考えるか、どう思うかは、それぞれの判断に委ねたいと思う。

今更、ワシらが言うことは何もない。


4月1日。消費税が5%から8%に増税された。

それにより、新聞代金が1994年以降、20年ぶりの値上げになった。この事の影響は世間と同じく新聞販売業界にとっても大きかった。

それについては『第314回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■逆もまた真なり……消費税増税から2ヶ月が過ぎた現場の実情』(注3.巻末参考ページ参照)の中で話したが、新聞業界のあがきはその後も続いていた。


消費税増税による大幅な部数の落ち込みが予想されるということで、日本新聞協会は総力を結集して「新聞の軽減税率」の適用を画策してきたが、結果は不調に終わった。

もっとも、未だに、日本新聞協会はさらなる消費税増税率が10%になった時、元の税率5%に戻す軽減税率を獲得すると広言しとるがな。

それについては、望み薄やと思う。そんな例は過去にない。


と言うたが、実際にもそうなった。

年末の総選挙の結果、与党が大勝したことで消費税増税は1年半先送りとなったが、軽減税率は考えていないと政府が公式に発表したさかいな。

今まで何を根拠に日本新聞協会は「新聞の軽減税率」を求めていたのか分からんが、ワシらに言わせれば甘い見通しやったと言うしかない。

見通しが甘いと言えば、この消費税増税によって大幅な部数減が生じると日本新聞協会は考えていたようやが、実際にはそれほどでもなかったということもある。

それについては、


消費税増税後、2ヶ月経った現在の状況はどうか。

サイトに寄せられてくる情報には、思ったほど悲観的なものは今のところ少ない。

「消費税が8%になると相当な部数が減ると店では覚悟していましたが、今のところ目に見えた減り方はありません」

「契約が取れにくいだろうと考えていましたが、4月、5月とあまり成績は変わっていません」

「消費税増税分の値上げなら仕方ないと言ってくれるお客さまが大半です」

といった販売店関係者からのメールが多い。

地域的な事情や販売店毎で客からの反応も違うやろうが、新聞業界が考えていたほどの影響はないのやないかという気がする。

もちろん、せやからと言うて、今後部数が落ち込まないという保証はできんがな。

ただ、すでに落ち込むべき部数がそれほどないということも一方ではある。

どういうことか。

ここ15年ほどの間、読者の新聞離れは加速度的に進んでいる。ABC協会発表では最も良かった1998年頃に比べて、実に500万部以上もの発行部数が減少したとのことや。

2013年度の発表だけでも、前年の2012年に比べて、朝刊で約54万部、夕刊で約48万部もの大幅な部数減に陥っているという。

1998年当時というのは、インターネットが驚異的に普及し始めた頃で、その年にインターネット人口が3,000万人に達し、2年後には4,700万人、7年後には8500万人を突破している。

2012年末では実に9,600万人を超えている。

インターネット人口の増加と時を同じくして新聞の部数が減り続けた。

ただ、ここ15年ほどで500万部の発行部数が減少したと言っても、新聞の総発行部数の1割程度でしかない。

この1割を多いと見るか少ないと受け取るかは、それぞれやとは思うが、ワシはその程度かというのが正直な気持ちや。

逆も真なりで、9割もの発行部数を維持できているのは新聞が、それだけ多くの国民に支持されていることを意味しとるからやないかと思う。

もっとも、この発行部数には配達されない新聞、押し紙や積み紙といった残紙が含まれているから、実際の購読者数はもっと少ないやろうが、それでも7、8割の人が確実に新聞を購読しとるのは間違いない。

新聞の売れ行きが悪いと言われて久しいが、どんなヒット商品であっても60年近くもの間、1日数千万部も売れ続けている商品など皆無やと思う。

今後も新聞以外で、そんな商品が世の中に出回ることは、まずないやろう。


と言うた。

結論として、消費税増税分の値上げ程度では大きな部数の落ち込みは今のところないということになる。

現在の新聞業界を支えているのは高齢者の読者の方で、その方たちが存命の間は少々のことで部数が減少することはないはずや。

ただ、当然やが高齢者の方から順番に亡くなられるさかい、いつかは新聞業界にとって壊滅的な時を迎える日が来るかも知れんが、それはずっと先のことやと思う。

この時までは、そう考えていたが、その後、新聞業界にとっては、もっと大きな出来事に見舞われ、そんな悠長なことが言えんような事態になった。

それについては、もう少し後で話す。


4月11日。STAP細胞騒動が加熱を帯びてきた。

それもあり、『第305回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■ゲンさんとハカセの時事放談……その2 STAP細胞騒動について』(注4.巻末参考ページ参照)でその話をした。

それには、ある読者から、


今新聞やテレビの報道でSTAP細胞について騒がれていますが、私には何が問題なのかよくわかりません。

素人の私の目には理研という大組織が、一個人の科学者、小保方晴子氏にすべての責任を負わせて抹殺しようとしているとしか見えません。

どこかの報道にあったように、トカゲの尻尾切りだと思います。

本当のところ、STAP細胞というのはあるのでしょうか。それともないのでしょうか。

それがはっきりすれば、この問題は終わると思うのですが・・・・・・

この問題についてゲンさんとハカセさんの見解を聞かせてください。


という質問を貰ったからというのもある。

ただ、ワシらの回答について話すと長くなるので、まだの方はその回のメルマガを見て頂けたらと思う。

ここでは、その問題の経緯を簡単に説明するに止めとく。

STAP細胞とは、刺激惹起(じゃっき)性多能性獲得(Stimulus-Triggered Acquisition of Pluripotency)細胞の略称で、万能細胞と言う場合もある。

科学雑誌の世界的な権威とされるNature(2014年1月30日号)に論文が掲載されたことで日本でも大きく報じられ、一躍その名が有名になった。

論文は、小保方晴子氏 (理化学研究所発生・再生科学総合研究センター細胞リプログラミング研究ユニットリーダー)が筆頭著者で他13人の共同著者によって発表されたものということになっている。

内容は、哺乳類(ほにゅうるい)の体細胞に外部から刺激を与えるだけで、未分化で多能性を有するSTAP細胞に変化するというもので、ES細胞(胚性幹細胞)やiPS細胞(人工多能性幹細胞)といった多能性細胞と比較しても画期的な発見だともてはやされた。

ES細胞(胚性幹細胞)やiPS細胞(人工多能性幹細胞)と比べて作製法が容易で、それらの細胞にはない胎盤への分化能力を有するとのことで、今後、再生医療に役立つ研究だと期待されていた。

今回の問題は、その論文の記載に多くの不備があることが指摘され、ユニットリーダーの小保方晴子氏一人に責任を取らせ幕引きをしようという理研側の意図が強く感じられる。

その後、紆余曲折の末、検証実験が行われ「STAP細胞の作成が確認できない」として、小保方晴子氏の辞職願いが提出されたことで予定どおり、この問題を収束させようとしている。

ただ、収束のさせ方が性急かつ片手落ちだという批判が多いということもあり、今後も何か問題が表面化してくる可能性もあると思うので、動きがあれば知らせたいと考えとる。


7月1日。安倍内閣による集団的自衛権の行使容認閣議決定が報じられた。

これについては『第322回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■安倍内閣の「集団的自衛権の行使容認閣議決定」についての読者意見』(注5.巻末参考ページ参照)で詳しく話をしているので、そちらを見て欲しい。

数多くの読者の意見を掲載しているので。

賛否両論が噴出していると言いたいが、このメルマガに寄せられてくる意見は集団的自衛権の行使に対して否定的なものが多い。

それにはワシらが、メルマガ誌上で「集団的自衛権の行使容認の閣議決定」に対して否定的なコメントをしているせいかも知れんが、容認論を封殺するつもりはない。

反対意見であっても、なるほどと納得できるものであれば素直に聞き、こちらが間違っていると気づけば訂正するくらいの度量は持っているつもりや。

今のところ、ワシらが納得できそうな意見、論調には出会っていないがな。集団的自衛権の行使容認がもたらす悪影響なら山ほど聞こえてくるけどな。

いずれにしても、日本の国民全体が真剣に考えなあかん問題やと思う。


7月3日。HP『新聞拡張員ゲンさんの嘆き』を開設して丸10年になった。

正直言うて、10年前の開設当初は、ここまで続けられるとは考えてもなかった。

それにはワシやハカセだけやなく、このメルマガやサイトのために様々な情報を寄せて頂いた読者の方々の支えがあったからこそやと感謝しとる。

この場を借りて、すべての読者の方々にお礼を言いたい。「ありがうございました」と。「おかげで10年間も長く続けることができました」と。

それを記念してというわけやないが、その10年間で起きたサイト、メルマガについて数回に別けて、このメルマガ誌上で特集(注6.巻末参考ページ参照)を組ませて貰った。

過去があるからこそ、今があり未来がある。そんな当たり前のことが10年の足跡を振り返ることで実感できた。

特にワシらのように年を食って物忘れが激しくなってくると、過去のその時々の状況を思い出すのは一苦労や。

ただ、サイトやメルマガは記録が残っている分だけ有り難い。それを読めば、ああそうやったなと思い出せることも多いさかいな。

その過去の記録を振り返ることで、これからもできる限り続けていきたいという気持ちになった。それこそ、死ぬまで。


9月11日。A新聞の社長が謝罪会見を行ったことで大きな騒ぎになった。

それについても『第328回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■報道のあり方 その7 吉田証言、吉田調書に見る誤報報道の真実とは』、および『第330回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞の実像……その10 新聞販売店の現状についてのアンケート結果』(注7.巻末参考ページ参照)で詳しく話しているので、そちらで確認して頂きたい。

当初、ワシらは、新聞社にありがちな不祥事程度の事やと考えていた。時が経てば、また元に戻るやろうと。

それには、そのメルマガの中で、


確かに、今回の件ではA新聞は、いくつかの間違い、失策を犯した。それは事実や。だからこそ、A新聞の社長が謝罪し、時が来れば退陣すると表明しとるわけや。

けっして、今回の一連の出来事が小さいとは言わんが、それでも社長が職を辞す覚悟で謝罪しても許されんほどのことやとは思わん。

ネット上の過激な発言の中には、A新聞を廃刊にしろというものまである。

今更言うまでもないが、創刊135年におよぶA新聞の功績は歴史上から見ても大きなものやったと思う。

時の政府を監視する左傾の最も重要な地位を占めるA新聞を失うのは、日本にとって大きな損失になる。

右傾も左傾もいてこそ健全な世界やと考える。もちろん、ワシらのように、そのいずれとも与しない考えの者も必要やがな。

ワシはA新聞だから良い悪いという考え方はせん。好き嫌いで判断することもない。

例え好きな対象であっても悪いと感じれば苦言を呈するし、嫌いな対象であっても良いと思える行いは支持する。

要は、その時々の行動、結果で判断するということやな。

どちらか一方だけの論調がまかり通る社会ほど、いびつで怖いものはない。主義主張はなるべく多い方がええ。自由にものが言える環境がベストやさかいな。

言論が封殺され偏った世界にせんためにもA新聞には、今回のことを教訓にして頑張って欲しい。体制を一新して反省し、出直して欲しいと思う。


と、ワシ自身が言うてたさかいな。

しかし、その後、この問題はそんな生易しいものやないということが、多くの業界関係者から寄せられる話で分かってきた。尋常な状況ではないと。

今後の対応を誤ると、A新聞だけやなく新聞業界そのものの崩壊につながりかねん。それほど事は重大や。

それについては、来年以降もメルマガ誌上で触れる機会もあるやろうと思う。


11月18日。安倍首相が衆議院を解散して総選挙を行うと宣言した。

その是非については『第337回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■大義なき解散総選挙……舐められた有権者』(注8.巻末参考ページ参照)で話したので、ここでは何も言わんが、残念なことが一つある。

その中で、


ワシが望むのは一つ、年末でどれだけ忙しくても選挙にだけは必ず行って欲しいということや。

高投票率になれば必ず政治も変わる。もちろん、ええ方にや。

今のままの低投票率やと、組織票を持っている政党に有利に働くことにしかならん。そうなればある特定の団体に有利な政策しか生まれることはないわな。

みんなが選挙に行って今の結果になるのなら、それはそれで構わんと思う。

高得票率になり国民の意志が反映された結果であれば仕方ない。

しかし、前回の総選挙のように60%にも満たないという戦後最低の最低投票率に終わった選挙結果に従わなあかんというのだけは堪忍して欲しい。


と必死に訴えたが、12月14日の投票結果は、戦後最低だった前回2012年の総選挙の投票率59.32%を大きく下回る52.66%を記録した。

それにより与党が、また圧倒的多数の議席を確保したからというわけやないが、正直、日本という国、国民に失望した。

この国にこれほど愚かな人間が数多くいとるとは思いもせんかった。

60%を切った時でさえ「何ちゅうこっちゃねん」と思うたが、今回は、それを遙かに超す約半分の人しか選挙に行っとらんかったわけや。

これでは日本の政治が、日本の社会が良くなるはずがない。現在に満足している人が圧倒的に多いのなら話は別やが、聞こえてくるのは不満の声ばかりや。

国民が、その不満の声をぶつけられる機会が、その選挙なわけや。その機会を自ら放棄して、どないすんねんと思う。

高投票率での結果ならワシらも文句は言わん。日本の国民である以上、民主主義の国に生きている以上、どんなに気に入らん結果が出ようと、それに従う。

しかし、国民の半分近くが選挙にすら行かんような選挙結果では納得なんかできるわけがない。

選挙は国民に与えられた権利や。その権利を放棄しとるようでは文句を言う資格はない。ほんまに、残念と言うしかない。

新聞業界の低迷に限らず、多くの業界で不況を囲っている大元は国民が選挙に行かんという一点に絞られると言うても過言やないと思う。

この結果により、これから数年の間、ワシら一般庶民の暮らしが楽になることは、ほぼ期待できんやろうと断言する。


12月10日。秘密保護法が施行された。

これについては『第284回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■『特定秘密保護法案』が21世紀最大の悪法と言われる理由について』、『第287回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■ついにその正体を見せた『特定秘密保護法』の実態と真の狙いについて』、

『第306回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞の良心……その1 特定秘密保護法廃止を訴える地方議会報道について』(注9.巻末参考ページ参照)などで散々言うてきたが、絶対に成立させてはならん法律やった。

これほどの悪法は前代未聞や。何でそんなことが言えるのか、改めて簡単に説明する。

『特定秘密保護法』とは一言で言えば、国民に情報を隠すことが目的で、情報を洩らした者を厳罰に処するためのものということになる。

さらに言えば、政府にとって都合の悪い情報を守るために、国民の目と耳と口を塞ぐための法律でもあると思う。

この法律では、情報の漏洩を実行していなくても、それをしようとして共謀したという疑いだけで罪に問い、投獄することができるようになっている。

例え、その事実がなく証拠がなくても「疑い」があるというだけで逮捕も可能で家宅捜査もできるということや。

そんなことはないと政府は否定しているが、そんな便利な法律ができれば警察や公安がそれを利用せんわけがない。

警察や公安に逮捕されたという事実だけで、例えそれが後に無実と判明しても、その人は法を犯した人間というレッテルを貼られ、社会的な信用を落とすことになる。

つまり、その事実が何もなくても、権力側がその人物を社会的に抹殺したいと思えば、それが可能になるということや。

また、その捜査状況そのものを「秘密事項に関する事」と指定すれば一切公開する必要もないとされとるから、これほど権力側にとって有り難い法律はないわな。

しかも、何を秘密にするかは、それぞれの行政機関の長がするということになっているさかい、それこそやりたい放題のことがやれる。

この法律の作成に関して、内閣官房や外務、防衛両省以外に、警察庁と公安調査庁のメンバーが加わっていて、両庁が当初から主導的な役割を担っていたという事実が明るみになっている。

その警察庁と公安調査庁のトップが何を「秘密」にするかを決める権限があるとされとるわけや。

しかも、この法律には、警察庁と公安調査庁のやり方をチェックする機能がまるでない。

もっとも、チェック機能のついた法案では警察庁と公安調査庁にとって意味がないやろうがな。

まず最初に狙われるのが新聞やテレビ、週刊誌、書籍といったマスコミ関係の言論や。

もっとも、それを危惧しているマスコミ関係者が多いからこそ、ほぼすべてのメディアで『特定秘密保護法』に対して批判的な論調を展開しとるわけやけどな。

多くの国民は、この法律は自分には関係ないと思うとるようやが、そんなことはない。

ワシらのHPやメルマガもそうやが、今やネットでブログやツイッター、ライン、ユーチューブ、各種SNS、掲示板サイトで気軽に自分の意見を発信している人は数千万単位でおられる。

そんな中で言いたい放題言うて書いているというのも問題はあるが、それでも、何を言うても書いても「誰かに危害を加える」といった直接的な表現以外は、法律的には、ほぼお咎めなしやった。

ひんしゅくを買うようなことを書いたブログやツイッターが炎上するという話は聞くが、それについても法的な罰則を受けるケースは少ない。

しかし、これからは、そうはいかん可能性がある。例えば冗談のつもりで「テロでもするか」と書こうものなら即座にマークされ摘発される可能性が生まれるさかいな。

しかも、それを書いた人間が当局にマークされている、もしくはマークされている人間と僅かでも何らかの接触があったとしたら、何の関係もない人でも引っ張る口実くらいには使えるわけや。

そうなれば、ネットでブログやツイッター、ライン、ユーチューブ、各種SNS、掲示板サイトで気軽に自分の意見を発信している人すべてが、その標的になり得るということや。

ネット上で書いたものは絶対に消えない。どこかに必ず、その記録が残る。それを証拠に逮捕、または拘束して取り調べられる。

今や犯罪捜査は個人間のメールを含めネット上で証拠を集めるケースが多い。

今までは、言論の自由が保証されていたということもあり、言論そのものを取り締まるための法律が整備されていなかった。

しかし、これからは『特定秘密保護法』という、取り締まる側にとっては万能とも言える法律ができたさかい、それこそ、どんなものでも口実をつけて摘発することが可能になったと理解しといた方がええ。

平和に慣れきった日本人の多くは、その事を認識できんのかも知れんがな。考えているより、ずっと恐ろしい事やと。

こんな法律に賛成する、また理解を示すような人には未だかつて出会ったことがない。

それにもかかわらず、この法律は作られた。それもこれも、元を質せば総選挙での低投票率に原因があると言うしかない。

過去にも、その時々の政府が『共謀罪』、『国家機密法』、『スパイ防止法』、『秘密保全法』などの類似した法案を次々と提出してきたが、その頃は、まだ国政選挙の投票率が70%前後あったさかい、それらの法律はことごとく廃案になってきたという経緯がある。

しかし、前回、今回と史上最低の投票率の連続により、全国民の有権者の20%超の人間が与党に投票しただけで国会議員が3分の2を超える圧倒的多数を占め、どんな無法な法律でも、いとも簡単に決められてしまうようになった。

その結果の象徴が『特定秘密保護法』やと思う。

たいていの法律であれば、できたものは仕方ないと言うところやが、こればっかりはそうはいかん。

ワシらの目の黒いうちは、この法律の悪質性、無法生を訴え続けるし、消滅させるための運動を今後も続けていくつもりや。容認することは絶対にない。

そのためにも何とかして、多くの国民に選挙に行くことの大切さを知らしめなあかん。その思いが前よりも強くなった。

たった一握りの人間のためだけの社会にしては絶対にいけない。その先にあるのは独裁国家でしかないさかいな。

独裁国家の先に待つのは戦争と破滅しかない。かつての日本がそうやったように、歴史がすでにその愚を証明しとる。

多くの国民が選挙に関心を持つようになれば、必ず世の中は良い方に変わる。そう信じてワシらは、ワシらのできることをやっていくつもりや。

今年は、新聞業界にとって最悪とも言える年やったが、悪い事はそう長く続くもんやないさかい、来年は今年よりも良い年であって欲しいと思う。

それでは、ここらで読者の方、それぞれにとって来年こそは良いお年でありますようにとの思いを込めて、今年最後のメルマガを終わらせて頂く。



参考ページ

注1.第298回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■ゲンさんとハカセの時事放談……その1 ゴーストライター問題について
http://www3.ocn.ne.jp/~siratuka/newpage19-298.html

注2.第295回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■考えさせられる話……その3 TVドラマ「明日、ママがいない」について
http://www3.ocn.ne.jp/~siratuka/newpage19-295.html

注3.第314回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■逆もまた真なり……消費税増税から2ヶ月が過ぎた現場の実情
http://www3.ocn.ne.jp/~siratuka/newpage19-314.html

注4.第305回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■ゲンさんとハカセの時事放談……その2 STAP細胞騒動について
http://www3.ocn.ne.jp/~siratuka/newpage19-305.html

注5.第322回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■安倍内閣の「集団的自衛権の行使容認閣議決定」についての読者意見
http://www3.ocn.ne.jp/~siratuka/newpage19-322.html

注6.第317回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■HP『新聞拡張員ゲンさんの嘆き』、10年の足跡 Part1
http://www3.ocn.ne.jp/~siratuka/newpage19-317.html

第318回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■HP『新聞拡張員ゲンさんの嘆き』、10年の足跡 Part2
http://www3.ocn.ne.jp/~siratuka/newpage19-318.html

第319回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■HP『新聞拡張員ゲンさんの嘆き』、10年の足跡 Part3
http://www3.ocn.ne.jp/~siratuka/newpage19-319.html

第324回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■メルマガ10年の足跡 その1 新聞拡張員ゲンさんの裏話編
http://www3.ocn.ne.jp/~siratuka/newpage19-324.html

第325回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■メルマガ10年の足跡 その2 ゲンさんの新聞業界裏話編 前編
http://www3.ocn.ne.jp/~siratuka/newpage19-325.html

第326回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■メルマガ10年の足跡 その2 ゲンさんの新聞業界裏話編 後編
http://www3.ocn.ne.jp/~siratuka/newpage19-326.html

注7.第328回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■報道のあり方 その7 吉田証言、吉田調書に見る誤報報道の真実とは
http://www3.ocn.ne.jp/~siratuka/newpage19-328.html

第330回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞の実像……その10 新聞販売店の現状についてのアンケート結果
http://www3.ocn.ne.jp/~siratuka/newpage19-330.html

注8.第337回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■大義なき解散総選挙……舐められた有権者
http://www3.ocn.ne.jp/~siratuka/newpage19-337.html

注9.第284回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■『特定秘密保護法案』が21世紀最大の悪法と言われる理由について
http://www3.ocn.ne.jp/~siratuka/newpage19-284.html


白塚博士の有料メルマガ長編小説選集
月額 210円 登録当月無料 毎週土曜日発行 初回発行日 2012.12. 1

ゲンさんの新聞勧誘問題なんでもQ&A選集 電子書籍版パート 
2011.4.28 販売開始 販売価格350円
 

書籍販売コーナー 『新聞拡張員ゲンさんの新聞勧誘問題なんでも選集』好評販売中


ご感想・ご意見・質問・相談・知りたい事等はこちら から


ホームへ

メールマガジン『ゲンさんの新聞業界裏話』登録フォーム及びバックナンバー目次へ