メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー
第397回 ゲンさんの新聞業界裏話
発行日 2016. 1.15
■ネットの危険 その5 書くことの怖さを知らない人たちの危うさ
文章を書くのは難しい、苦手だと言われる人でもメールやブログ、SNSなどで比較的気楽に文章を書いているもんや。
それ自体は悪くないし、問題もない。問題は、それを不特定多数の大勢が読む可能性が高いことを知らない、配慮していないという点や。
それにより他人に迷惑をかけたり、自身に災いを及ぼしたりする。それに気づかないのか、気づこうとしないのかは分からんが、結果的に自滅する人が後を絶たん。
その典型的な事例として最近では、新婚の有名芸能人夫妻が、自身が勤める不動産仲介会社に訪れた様子を、そのままツイッターに書き込み大きな騒動に発展したケースやと思う。
ネットの情報集中力、暴露能力は半端やない。何千、何万といった人たちが、そのツイッターに書き込みに反応した。大半というか、ほぼすべての人を敵に回してしもうた。
この不動産仲介会社の従業員が「○○万の物件紹介した」とツイートしただけで、新婚の有名芸能人夫妻に紹介したという賃貸マンションが、あっという間に特定されてしまった。
当然のように、この従業員のツイッターは大炎上した。
「何漏らしてんだよ」、「プライバシーの侵害だ」、「こんな事されたら有名人はどこにも住めなくなる」といった具合や。
このツイッターはすぐに削除されたが、それだけでは済まんかった。
ツイッターなどのSNSでは自身の個人情報を平気で掲載しているということもあり、不動産仲介会社の従業員の場合、顔写真はもちろんのこと、親兄弟に至るまで、その個人情報がネット上で晒されてしまった。
これは不動産仲介会社の従業員の友人、知人といった、普段は仲間やと信じていた人たちから暴露された情報が大半を占めていたという。
ワシらは友人、知人は守るものという気持ちが強いが、ネットの世界では、どうもそういう概念は希薄なようや。叩ける者は親でも叩けということらしい。
何か事があれば、一瞬で仲間だったと思っていた人たちから攻撃され、すべてを晒されてしまうのが、今の世の中なんやろうな。
それにより、その後の人生を狂わされ奈落の底に突き落とされた人も多い。
確かに、この不動産仲介会社の従業員のしたことは、やったらあかんかったと思う。軽率やった。
しかし、それ以上に醜悪なのは、それを理由に寄って集って、やった者を晒し者にしたことやと考える。
せめて「何漏らしてんだよ」、「プライバシーの侵害だ」、「こんな事されたら有名人はどこにも住めなくなる」といった批判程度やったら、本人も「ああ、こんなことをしたら、みんなから責められるんやな」と気づくから、まだマシやった。
次からは「止めとこ」で済むさかいな。教訓になる。
しかし、詳細な個人情報が暴露され、犯罪者の如く扱われたら、その人間には救いがなくなる。それが分かっていない人たちが無数にいることが怖い。
本人たちは正義の行いしていると考えとるのかも知れんが、そんなものは正義でも何でもない。ただの「いじめ」や。
しかも、その「いじめ」は恐ろしくタチが悪い。集団で公開処刑をしとるようなもんやさかいな。
この不動産仲介会社は、この件について「今回の件についてどんな対応を取るかは上層部が検討している最中で、謝罪という流れになるのではないかと思われます」とコメントしているが、おそらくは、この従業員に対しては解雇、または自主的な辞職を促すということになるのやろうと思う。
実際、この従業員は、その不動産仲介会社のどの営業所で働いている誰それで顔写真まで一般に出回っているわけやから仕事をしたくてもできにくいわな。
それこそ、毎日晒し者として仕事せなあかんわけやからな。普通の人間に堪えられることやない。
自業自得と言うには、あまりにも大きすぎる代償やと思う。
この従業員の片を持つわけやないが、新婚の有名芸能人夫妻に「○○万の物件紹介した」とツイートした程度では法律上、罰せられない可能性の方が高いと言われている。
やっても構わないということやなく、それに該当する罪状が今の法律には見あたらないからやと。
もっとも、このケースは店舗関係者が顧客の来店を公表することなど想定外という判断で「プライバシーの侵害」あたりの罪に問われるかも知れんがな。
ただ、それでもそうなる可能性は低そうや。断言はできんが。
それに対して、この従業員の個人情報を暴露した者たちは、民法709条によりプライバシーの侵害という明確な不法行為を犯した犯罪者ということになる。
この従業員が個人情報を暴露した該当者を特定できれば、そのことで受けた損害の賠償請求をすることも可能や。
つまり、責められる側の人間やなく、責める側の人間が犯罪を犯している可能性が高いということになるわけや。
もっとも、現実には何千、何万もの人間を特定して損害賠償請求をしたといった事例はないがな。ただ、その気になってやれば不可能やない。
そして、こういった事例は多い。これからも続出するやろうと思う。
普通の不始末、失敗やったら「次は気をつけよう」で済むが、この場合は、それでは済まん。
その個人の信用が地に落ちるだけやなく、周りにも多大な迷惑をかけることになるさかいな。
そして何より怖いのは、それをやった事実が半永久的にネット上に残るという点や。そうなると、取り返しがつかん事態になる。
あまり知られていないが、現在、多くの企業で人を雇う場合、まず面接希望者の名前で検索することが常識になっているという。それで引っ掛かれば就職の道が閉ざされる可能性が高くなると。
ネット上では匿名でも発信できるとは言うものの、実際は、ほぼすべての発信者の特定ができるようになっている。
特にSNSの世界では、その匿名性すら自ら放棄しているような人たちが多いから、簡単に発信者が特定できる。
警察の犯罪捜査でも、まず最初にするのは捜査対象者である容疑者がしているツイッターやフェイスブック、ライン、ミクシーといったSNSから調べるとのことや。
文章、言葉を書くというのは、証拠を残しながら生活をしていることを意味する。言えば自動的に自白調書を自ら書いているようなもんやな。
当然、それらはすべて有力な証拠として扱われる。冗談で書いた、つぶやいたつもりでも形として文章、言葉で残っていれば、そうはならない可能性が高い。
冗談のつもりで「○○を殺します」とネット上に書き込みをしたために警察に逮捕されたアホは枚挙に暇がないほど多いさかいな。
もちろん、当人には、そんな気持ちも意志もない場合が殆どや。たいていは遊び半分、いや遊び100パーセントかな。特に、若い人たちに、そういうケースが多い。
スマホで普通に友だちとラインでメールのやり取りをしている。感覚的には愚にもつかんバカ話をしているだけやろうと思う。
昔、ワシらが学生の時にも友人同士、冗談で「あの先公、最低や。気にいらんから、どついたろか」とか「そのとおりや。いっぺん殺したれ」と言い合うことなど普通にあった。
しかし、その程度では誰にも咎められることはなかった。もちろん問題になることもない。
実際に、そんなことはせんと、皆が知っていたし、口で言うたことは「冗談や」で済んださかいな。今でも、それであれば笑って済まされてたことやと思う。
今回の件でも、不動産仲介会社の従業員が友人、知人に口頭で同じことを言うてただけなら、当然やが、こんな大きな問題にはならんかったはずや。
尾鰭がついたとしても噂話の一つとして終わっていた。
しかし、今の時代はSNSがある。有効に使えば、これほど便利なものはないが、安易に扱うと取り返しのつかんことになる。
それこそ一瞬で奈落の底に叩き落とされるわけや。
そうなる原因は、幾つか考えられるが、一言で言えば「認識が甘い」ということになる。「危険が分からん幼児」と一緒やとも言える。
そういう人たち、すべてに警告することなどワシらにはできんが、せめて、このメルマガを見ておられる方々には、これから話すことくらいは知って頂きたいと思う。
その前に各自の名前を検索サイトで、一度検索して貰いたい。自分でも驚くくらいの個人情報がすでにネット上に漏れ出している人もおられるはずや。それと気づいておられないだけでな。
何もない人は、それほど心配せんでもええかも知れんが、個人情報がすでにネット上に晒されている人は、ワシらの話を真剣に訊いて頂きたいと思う。
SNSで迂闊な書き込みをすると、あっという間に、事例の不動産仲介会社の従業員のような憂き目に遭うさかいな。
それでは、どうしたら良かったのか?
その究極の答えは、SNSには自分も含めて、すべての身内や友人、知人、および掲載する対象者の個人情報を一切載せんことや。
そうすれば万が一の場合でも被害、影響は最小限に抑えられるはずや。
ハカセなどは20年以上前からインターネットをしとるが、その頃から名前や個人情報をネットに晒す危険に気づいていたという。
いつか、こういう時が必ずくると。
それもあり、このメルマガやサイトでは個人情報の扱いには神経を使ってきたわけや。
とはいえSNSの中には、個人情報を開示してからでないと参加できんものもあるようやから、そういう人たちのために少しでも役立てる情報を紹介しようと思う。
SNSの利用と書き込みで注意すべき事
1.SNSには常に危険が潜んでいると自覚すること。
SNSは、自分の周りに限られた特定の人たちとコミュニケーションを取っているだけと思っている人が多いようやが、基本的には全世界に向けて発信されているツールなわけや。
理論的には、発信者の情報や言動には誰でもアクセスすることができる。
自分たちだけの内緒話を他の人間に聞かれる可能性がある。内容次第では、見ず知らずの人間から反感を買い、攻撃を受けるかも知れん。
SNSには、そうなる危険性があると自覚して利用すべきやと思う。語り合っている内容は、常に不特定多数の第三者も同時に聞いていると。
そういった意識があれば話す内容にも自ずと注意を払うはずやと考える。
2.SNSは他人を巻き込む可能性が大だと知ること。
SNSで話したこと、写真や動画を載せたことが原因でトラブルが起こった場合、発信者だけの問題では済まないことがある。
例えば「今日は◯◯さんとデート」といった軽い乗りのツイートをよく見かけるが、それを書くことで発信者だけやなく、◯◯さんにも大きな影響を及ぼすということが分かっているのやろうかと思う。
仮に◯◯さんに恋人がいた場合、そのツイートを見て浮気したと考えるかも知れん。それが原因で別れた場合、発信者が、どう責任を取るのかという問題が起きる。
その後、発信者が◯◯さんと良い付き合いができれば、まだマシやが、そうでない場合は悲惨なことになる。
◯◯さんと、その恋人に恨まれるやろうし、それを見た友人、知人たちから発信者は「最低の人間」というレッテルを貼られることになるかも知れん。
そうなると、それに関わった人たちとの人間関係が一瞬で壊れることも考えられると言うことや。
3.SNSでは疑わしきは非難されると知ること。
当然やが、発信者には、それをした経緯や背景、思い、考えというのがあるのが普通や。その結果として、その情報をアップしていると。
しかし、受け手には、そんなことは分からない。
以前、外食関係の店舗内でアルバイトが面白半分に冷蔵庫の中に入っている姿を写真に撮って発信したことが大きな問題になった。記憶しておられる方も多いやろうと思う。
例えば勤め先で、本人は仕事先の様子を友人たちに紹介するつもりで、冷蔵庫の奥の方にしまっている商品を取り出そうとしている日常の一場面を写真に撮って発信したとする。
これが、今やと遊び半分で同じことをやったと誤解されかねない。
発信者が、いくらそれとは違うと言い訳をしても、従業員がまた冷蔵庫の中に入って面白がっているという場面だけが勝手に一人歩きしてしまうわけや。
もちろん、これは法律上、何の問題もない。単に仕事中の様子を紹介しただけで済む。
例え、怪しいと思われても法律では『疑わしきは罰せず』の原則があるさかい、その言い訳で、まず罪に問われることはないやろうと思う。
しかし、SNSでは違う。人の興味や好奇心の向かう先は、疑わしきは非難、中傷に向かうさかいな。誰かが「悪質ないたずら」やと決めつけたら、その方向に多くの人たちが流れやすい。
昔のことわざに『李下に冠を正さず』というのがある。李(すもも畑)で冠を直す仕草は、頭上のすももを盗もうとしていると誤解されるから、そんな紛らわしい行いをしたらあかんという戒めや。
SNSでは僅かな誤解が命取りになると考えといた方が、ええやろうと思う。しかも、それは否定すればするほどドツボに嵌ると。
4.有名人についての書き込みには細心の注意を払うこと。
一般の人が有名人に会うと興奮するというのは、よく分かる。
しかし、有名人について語る場合は、より人目を引くということを注意せなあかん。当人が考えているより検索サイトで引っ掛かる確率が格段に高いからアクセスが多い。
もっとも発信者も自慢したい、誇らしいという気持ちで、そうするのやろうが、その考えが甘い。
その有名人には熱烈なファンというのが絶対にいとる。そのファンの中には、発信者の行為自体が妬ましいと感じることがある。
そういう目で見るさかい、僅かな言動の中に「非難できる」ところを見つけると、それを騒ぎ立てたくなるわけや。
それからすると自分の勤める職場にプライベートで現れた有名人の様子を、どんな形であれアップすること自体が「非難できる」理由になると承知してなあかんと思う。
そういう目があることに注意していれば、不動産仲介会社の従業員のしたことは軽率やったと分かるはずや。
まあ、一番無難なのは有名人についてはストレートに公開せんことやな。下手に、そうすると我が身の不幸、不運として返ってくる。
人はそれを自業自得と言って笑うだけやしな。百害あって一利なしやと考えといた方がええ。
5.ネットの世界の悪意の存在を自覚すること。
当たり前やが、世界にはいろんな人間がいる。善人もいれば悪人もいる。それはネットの世界でも一緒や。
善人は何もしないが、悪人は常に誰かを狙っている。腹を空かせた肉食獣と一緒や。彼らの最高の獲物は、間違いなく個人情報を開示しとる人間や。
ストーカーや詐欺師、個人情報を悪用する者、なりすまし、クレジットカードや銀行カードの情報搾取など数え上げたらキリがないくらいの連中が、そういう人たちを日夜狙っている。
言い方は悪いかも知れんが、ネットの世界には悪人が巣くっていると考えといて、ちょうどええと思う。
6.ネット上では、どんなことでも攻撃の対象になり得ると知るべき。
プライベートな内容を話しているだけでも、それを読んでいるまったく関係のない人間の気に障って怒りや恨みを買ってしまう場合がある。嫉妬もあるやろう。
例えば、家族団欒、恋人同士との甘い会話など一見幸せそうな様子を見て羨む人間は多い。それだけならええが、中には頭のおかしな奴がいて、それが許せんと考える人間も希にいとる。
変質者の類か精神を病んでいる者やが、その手の人間がネットの中には潜んでいると知っておくべきや。
そんな場合、どうすれば防げるのか。
簡単や。そんなものはネットに公開せんことや。もともと家族団欒、恋人同士との甘い会話などといったものは当事者だけが幸せやったら、それでええわけや。
それを、これ見よがしに公開する必要はないと思う。どうしても、それが語りたかったら、当事者同士で直接話すか、電話で話せばええ。
形として残すにしても誰の目にも触れないようにすることや。それが自身や家族、恋人、友人知人を守ることにつながる。
以上や。
まだ他にもあるかも知れんが、気がついた方、また自分はこうしていると言われる方は、その方法を知らせて頂けると有り難い。
それでは十分に注意された上でSNSを楽しんで頂きたいと思う。
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