メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー

第4回 ゲンさんの新聞業界裏話     

発行日 2008.7. 4


■消えゆく夕刊……その知られざる裏事情


「ゲンさん、夕刊の廃止記事がありましたね」

「まあ、これも時代の流れやから仕方ないわな。これから、こういうのが増えていくと思うで」

M新聞が6月13日付朝刊の社告で、北海道内で発行している夕刊を8月末で廃止することを明らかにした。


M新聞が北海道の夕刊廃止へ 
2008.5.13 09:40

http://sankei.jp.msn.com/entertainments/media/080513/med0805130944000-n1.htm  より引用

 
 M新聞社は、北海道内での夕刊発行を8月末で廃止することを明らかにした。道内以外での地域では引き続き、夕刊の発行を続けていく。

 M新聞北海道支社によると、「読者からの要望やライフスタイルの変化に合わせて、今後は新しいタイプの朝刊を発行する」と話している。9月1日からの新価格は月3007円。道内を管轄する同社の今年3月の発行部数(日本A
BC協会調べ)は朝刊6万8000部、夕刊1万4000部で、昨年同月に比べ1年間で約4000部減少している。


というものや。

ちなみに、Y紙、A紙、M紙の俗にいう全国紙「三大紙」での本支社レベルの夕刊廃止は初めてのことやという。

もっとも、全国紙の一つであるS紙では、すでに2002年4月1日から朝刊単独紙に移行済みやけどな。

早くから、その夕刊に見切りをつけていたということになる。

ただ、S紙でも例外的に、大阪本社版の京阪神限定で、今もって朝夕刊セット版の継続はしとるけどな。

S紙としてはそんな例外は作りたくはなかったようやが、これには大阪の販売店組織が頑強に反対したということがあったからやと聞く。

1対1としての新聞社と販売店の関係なら圧倒的に新聞社が上位やが、組織として結束すれば、また別やということなんやろうな。

そのS紙以外のY紙、A紙、M紙、N紙の全国紙4紙では、地域により朝夕刊セット版と朝刊のみの統合版、あるいは全日版と呼ばれる2タイプある。

その割合は新聞各社によってもそれぞれ違うが、朝刊のみの統合版が増える傾向にあるのは確かやという気がする。

この夕刊廃止による統合版への流れには、その部数減が大きな理由に挙げられる。

しかも、その需要はさらに下降線を辿っていくのは明らかやった。その部数の伸びる要素が何もない。

また、それには北海道特有の事情というのもある。

6月15日付けのA紙に興味深い記事があったので、その部分を抜粋する。


道内各社とも長期低落傾向


 元々、北海道は地元紙と全国紙を合わせた主要紙の普及率(世帯数占める朝刊発行部数)が約66%(07年)と首都圏より10ポイント以上低い。

 道内勤務が長い記者は「農作業や移動中にラジオなどで情報を得る傾向が本州より強い」。とくにこの10年間の落ち込みが激しく、A新聞北海道支社の販売担当者は「道内経済の冷え込みで、購読自体をやめて節約する家庭が増えている」と分析する。


このため、北海道では夕刊の部数が各社とも長期低落傾向にあるという。

加えて、折からの原油高の影響で原料となる新聞紙代の28年ぶりの値上げや工場の燃料代、輸送費の高騰などもバカにならん負担になっとるはずや。

実際、それで経営が悪化している新聞社もある。

地方紙のY形新聞などがそのええ例で、ここはもともと朝刊のみしかないということで夕刊の廃止という手は使えんから、やむなく7月1日、つまり今月から月3007円の購読料を3300円に値上げした。

1994年4月1日以降、実に14年半ぶりの値上げということになる。

ちなみに、そのときは、ほぼすべての新聞が同時に値上げに踏み切っていた。

今回は、今のところ、その地方紙のY形新聞1社だけの値上げやが、他紙が追随する可能性もある。

ただ、これは後でも触れるがシェアの問題もあって簡単なことやない。

このY形新聞の値上げが可能な背景には、その地域でダントツのシェアを獲得しとるからというのがあると思う。

その程度の値上げなら、このご時世、購読者も理解してくれると踏んだということになる。

それなりに成算と自信があってのことやと。

もっとも、それが吉と出るか凶とでるかは後日にならな何とも言えんがな。

今のところ他紙が様子見に徹しているのは、そういうことやと思う。

しかし、M紙などがその値上げをその北海道ですれば、さらなる部数の落ち込みは必至やから、その道の選択は論外ということになる。

じり貧状態の新聞社サイドからすれば、それらも夕刊廃止のきっかけになったのやないかと思う。

ただ、販売店側も、その配達員などの配達コストを削減できるから夕刊がない方がええやろと考える一般の人がおられるかも知れんが、事はそれほど単純やない。

そのすべての販売店というわけでもないが、ワシの聞く限りは、その夕刊の廃止を歓迎する所は少なかった。

むしろ、夕刊廃止による打撃には相当なものがあると予想される。

どういうことか説明する。

その北海道を例にとると、夕刊の1万4000部の読者のみが朝夕刊セット版の購読料3925円を支払っていることになる。

夕刊のみの購読者というのを販売店が受けることはまずないやろうからな。

つまり、朝刊6万8000部から夕刊1万4000部を差し引いた5万4000部が朝刊のみの購読者ということになる。およそ8割。

その購読者が現在支払っている朝刊のみの代金と、9月1日からの新価格、月3007円と同じやったら問題はない。

しかし、そのケースはほとんどないという。

すべての販売店で、朝刊のみの購読者に対して一律の価格設定になってないのが現状や。

これは、何もM紙の北海道だけに限らず、朝夕刊セット版のある他紙においても全国的な傾向と言える。

その朝刊のみの価格は、販売店毎でも違うし、同じ販売店であっても客毎に違うということも、それほど珍しいことやない。

この朝刊のみの価格差に疑問を持たれた方がサイトのQ&Aに質問されるケースもある。(注1.巻末参考ページ参照)

朝夕セット版地域での朝刊のみの購読料は、ワシの聞く話、サイトに寄せられる情報を総合すると、月3100円〜3700円の間というのが大半を占める。

これを月3007円にしたらどうなるか。

この業界の平均的な販売店の取り扱い部数は3000部とされとるから、それで計算してみる。

朝刊代を月3100円に設定している販売店の場合、

3100円−3007円=93円。

93円×3000部=279000円が1ヶ月の減収ということになる。

同じく月3700円の販売店やと、3700円−3007円=693円。

693円×3000部=2079000円が1ヶ月の減収ということになる。

つまり平均的な販売店の場合、その9月1日以降は単純な計算やが、1ヶ月約28万円〜208万円ほども減収になるわけや。

資力や経営に余裕のある販売店はまだマシかも知れんが、全体的に厳しい業界の現状ではヘタすると命取りとなって廃業に追い込まれる所も出ると考えられる。

特に朝刊のみの価格を高く設定しとる販売店ほどそうなりやすい。

この朝夕セット地域での朝刊のみの場合、販売店の裁量でその価格が設定されとるのが現状や。

新聞社は、基本的にそれにはタッチしてないという立場を取っとる。今は朝夕セット価格だけ堅持してくれたらええという姿勢や。

以前は違った。

朝夕セット地域では、やはりその朝夕刊主体に契約を取るように新聞社は販売店に要請していた。

表向きは要請であっても、圧倒的に弱い立場で業務取引契約を結んでいる販売店からすれば、それは新聞社の命令と受け取る。

そして、その新聞社の意向に逆らうということは、そのまま廃業をも意味することにつながると考える。

実際、新聞社の意向に逆らって業務取引契約を解除され廃業に追い込まれた販売店は数知れず存在するさかいな。

しかし、夕刊などを読まないという顧客にとって、そんな販売店の事情など関係ないから「いらない」と言う。

そこで苦肉の策として販売店が考えたのが、夕刊がいらないという客への値引き価格を押さえるというやり方やった。

朝刊のみの新聞代で最も高い月3700円というのは、それがために考え出された究極の価格設定やないかと思う。

朝夕セット価格が3925円やから、その差額の225円が1ヶ月の夕刊代ということになる。

実に1部、7.5円にしかならん計算や。

もちろん、その値段で夕刊を印刷して配達できるわけがない。配達員の配達代すら出んわな。

つまり、その本来あり得ないような価格を設定することで、「どうせなら朝夕セットで購読する方が得ですよ」とアピールしたかったわけや。

朝刊のみの購読を阻止するために。

一般の事情の分からん人からすると、単に販売店が欲にかられて、その高値に設定しとると思うかも知れんがな。

確かに、朝刊のみをその価格で売れるのなら、単に利益率がええだけやなく配達コストも下げられ、その配達の時間帯を勧誘営業などの他の業務に振り向けられるから得にはなるやろうと思う。

しかし、販売店は新聞社のご機嫌を損ねることの方を何より恐れるから、その高値に設定した価格で朝刊が売れるより、やはり朝夕セットでの販売部数が伸びる方が有り難いと考える。

当然、勧誘員へもそれを求める。

新聞社は新聞社で、せっかく朝夕セット地域と朝刊のみの統合版を区分けしとるのに、その朝刊のみの購読を認め、それが増えすぎたら意味がないと考えるわけや。

新聞社も、販売店が朝刊のみの顧客に、その高値の新聞代を設定しとるのを知らんわけがないから、本来なら統合版価格の3007円か、それに近い価格設定にするよう指示、勧告せなあかん。

しかし、そうしてしまうと、朝夕セット地域で朝刊のみの購読を容認することにつながるということで、販売店の裁量に任せるしかなかったのやと思う。

結果、その思惑が大きく外れた。

夕刊を読まないという客にとって、やはり必要でないものは必要ないとなる。

今回の舞台となった北海道が、それを如実に示しとる。

すべてを調べたわけやないから絶対とまでは言えんが、やはり、そのM紙の販売店では朝刊のみ月3700円の高値に設定しとるという販売店が幾つか存在してた。

それらの販売店では、他も大差ない価格設定やと言う。

それにも関わらず、全体の8割にも及ぶ5万4000部の購読者が朝刊のみを選択しとるわけや。

それが、9月から一斉に3007円になるのやから、先に言うたとおりの大きな減収になるのは避けられん情勢にある。

しかも、新聞社は、販売店がそういう朝刊のみの価格設定をしとるのは表向きは知らんという立場やから、それに対しての救済などすることはまず考えられん。

また、そういう苦情が持ち上がってきても、お門違いやと言うて一蹴できる。

世の中、すべての仕組みについて言えることやが、ワリを食うのはいつも弱い立場の者やと相場が決まっとる。

それまで販売店は、「その価格設定で儲けていたのやから仕方ないやないか」という意見も聞こえてきそうやが、事はそれほど簡単やない。

例えば、ある会社で月30万円の給料を貰っていた社員がいてたとする。

それがある日突然、月20万円の給料が妥当やから、3ヶ月後からそうすると通告されたらどうやろか?

それに対して意義を申し立てても、「それが本来の正しい給料やから、それまでは貰いすぎて得をしたと考えろ」と言われたらどう思うかということや。

その例えがええかどうかは分からんが、今回の事は、それに似ていると思う。

当たり前やが、月30万円の給料を貰うてた人間は、それでその生活設計をする。

それを、僅かな猶予期間しかなく、いきなり月20万円の生活に切り替えろと言われても困る。

住宅ローンなどの借金の多い家庭では、たちまち生活苦になるのは分かり切った話やさかいな。

その人間には限られた選択肢しかない。

その生活苦に喘ぎながらでも、その仕事にしがみつき頑張れるだけ頑張ろうとする者。

その仕事をあきらめて、他に収入のええ仕事を探す者。

あるいは持ち家などの財産を処分して、その借金の負担を少しでも軽くすることで乗り切ろうとする者。

大きく別けて、その急場を凌ぐには、それくらいしかなさそうや。

ただ、それらのいずれを選択するにしても明るい未来というのからは、ほど遠いと思う。

もっとも、これもワシが良く言うてることやが、「ピンチはチャンス」「マイナスはプラス」やと捉えることはできる。

今回の北海道でのM紙の販売店についても、それは言える。

今回の決定はM紙だけやから、他の全国紙は当面そのままということになる。

そうなれば、その地域では、定価3925円の新聞と定価3007円の新聞が同時に存在することになる。

もちろん、それには朝夕セット版と朝刊のみの統合版という違いがあるわけやけど、値段を気にする消費者は必ず興味を示すはずや。

加えて、他紙でも朝刊のみの場合、月3700円の高値に設定されとる所もあるから、それだけを取っても営業する上ではかなり有利になる。

ものは何でも考えようで、営業戦略の一つとして、その差額分だけ値引きして売るのやと捉えれば、それなりのやりようがありそうに思える。

さらに、統合版になるというのは、本来、前日の夕刊に載せるべき記事も朝刊として一緒に掲載されるということで、実際にはいくらかページ数も増えると考えられる。

それに活路を見い出そうとする販売店関係者もいると聞く。

実際、その部数さえ伸ばすことができれば減収分などすぐ取り戻せるし、希望も持てるさかいな。

しかし、それは営業に意欲があればということになる。

言うて悪いが、M紙の北海道でのシェアは3%にも満たんほど低迷しとる。

営業にその責任のすべてがあるとまでは言わんが、数字を見る限り少なくともその努力に欠けていたと思われても仕方ないわな。

もっとも、北海道においては、ブロック紙のH紙というシェア70%強を誇る圧倒的な存在感を示す新聞があるというのも、大きく影響しとるとは思うがな。

そのH紙に食い込めればええが、それは難しいと言うしかない。

ワシが以前、拡張しとった東海でも同じような構図があった。

そこも同じくC紙というブロック紙が圧倒的なシェアを有している地域やった。

東海全域でそのシェア80%前後というから半端やない。

そこでは、日本一の部数を誇るY紙ですら、そのシェアは5%程度しかなく、その地域では三流新聞として扱われているのが実態や。

そのY紙は東海では統合版しかない。

M紙、S紙も同じで、A紙のみ一部に朝夕セット版があるくらいで、全国紙の多くは統合版の朝刊のみの地域で占められとる。

つまり、その地域の全国紙の販売店の多くが、C紙の朝刊セット版の月3925円に対して、月3007円ということやから割安感がありそうに思えるけど、それでもそれだけのシェアの差が歴然とあるわけや。

もっとも、そのC紙も名目上は朝刊のみ月3000円と公示しとるから、あながち割高とは言えんのかも知れんのやけどな。

但し、C紙の勧誘員は朝刊セット版の契約を取ることが多いということもあり、一般にその事実が知れ渡ってはおらんがな。

少なくとも、C紙の販売店や勧誘員が積極的にそれをアピールしていないのだけは確かや。

もちろん、統合版の全国紙の勧誘員も、そんなことを一般の購読者に知らせるのはヤブヘビになるさかい、わざわざ広めるようなこともせん。

「C紙は高うおまっせ」と言うて勧誘する方がええさかいな。

余談やが、それらの統合版の全国紙では月3007円を実質的に月3000円として集金しているケースが多いのは、そのC紙の朝刊のみ月3000円という公示が影響しとるのやと考える。

もっとも、集金人が端数の釣り銭を出すのが面倒やからという見方もあるがな。

いずれにしても、その地域の一般読者の認識として、C紙は朝刊セット版の月3925円だけやと思われとるということや。

景品サービスなんかも他の全国紙の方が、全体的にそのC紙よりもええ販売店の方が多いけど、それでも影響されることはほとんどなく、シェア80%を維持しとるわけや。

その圧倒的なシェアに食い込むのは至難の業やと言うしかない。

そのええ例が、今から33年ほど昔の1975年にある。

その年、Y紙はC紙の牙城を切り崩すために、その東海地域だけ特別に朝刊のみで購読料月500円にするという思い切った戦法に打って出たことがあった。

当時は、Y紙を含む全国紙の朝夕刊セット価格が1700円やったから、実に通常より1200円も安かったことになる。

ただ、その朝刊のみの紙面が16ページとかなり少ないということもあったのやが、とにかくY紙としては価格競争に持ち込みたかったわけや。

価格競争になれば資金力という点で有利やとY紙は考えた。

しかし、これは当時の公正取引委員会から不当廉売ということで排除命令が出され失敗に終わっとる。

C紙もそれに対して相当の抵抗を試みたという話やが、結果的にはその価格競争に踏み込まんかったことが幸いした。

それに加えて、その土地の住民の地域びいきというのもあったと思う。

実際、価格で転ぶ人間が多ければ、それが世論ということになりかねんし、行政の介入も簡単やなかったやろうと考えるしな。

結局、この事により、長年に渡りそのシェアを確保してきた強みというのは、そう簡単に切り崩せるものやないということを証明したことになる。

ブロック紙のH紙、C紙に限らず、他の地方紙にも同じような構図の所が大半を占める。

先に話した地方紙のY形新聞のケースもそれや。

一般的に新聞というと、全国紙中心に語られることが多いが、関東、関西方面以外では、むしろブロック紙、地方紙の方がシェア的には、その地域の中心というケースが圧倒的に多いわけや。

ワシが良く、新聞事情はその地域次第で大きく違うと言うてるのは、そういうことがあるからや。

今更言うまでもないことやが、ワシら拡張員も全国紙ばかりやなく、地方紙にもかなりな数、存在する。

当然のように、その勧誘のやり方には千差万別、いろいろある。

良くインターネットの世界では、Y紙やA紙の拡張員の悪行を論(あげつら)って、それでそのすべてを知ったかのように吹聴する人間がおるが、それでは拡張員のすべてを語ったことにはならんわけや。

単にそれは一つのケース、事例にすぎんことやさかいな。

ちょっと話が飛んだが、元に戻す。

それならピンチをチャンスには変えるのは、やはり無理かとなると、必ずしもそうとばかりは言えんから、つくづく世の中は面白いと思う。

C紙がシェア80%を誇るという東海のある地域にあって、そのC紙と互角の部数を獲得しとるY紙の販売店も実際に存在するさかいな。

確かに、そういうケースは例外的なことやが、少なくともその可能性を信じることはできる。

ただ、それにはよほどの頑張りと工夫がない限り難しいがな。

それらの影響もあって、今回の夕刊の廃止を契機として実際に廃業する販売店も出てくるのやないかと危惧する。

また、新聞社もそれを見込んどるのやないかと考えられる動きも見受けられる。

サイトにある読者からの投書があった。


北海道エリアで夕刊が無くなろうとしているM紙ですが、今日、たまたま次のサイトを発見しました。

引き継ぎ経営者募集のページです。(注2.巻末参考ページ参照)

リクルートで募集しているということは、広範囲な媒体を使っていることが言えますので、ハカセさんやゲンさんも既にご存じかもしれませんね。

ともかく、このように、大々的に販売店経営者を募集する裏には、やはり、それだけ既存の店の改廃が頻繁に行われている事情があるのではないかと推察されます。


これは、ここ数年の間により顕著になったのは確かや。

ただ、『それだけ既存の店の改廃が頻繁に行われている』という新聞社サイドの事情というより、経営者側の見切りによる廃業のためという方が、現在はかなりのウェートを占めとると思われる。

実際、ここ1、2年で1000店舗以上の新聞販売店が減少しとるという数字がある。

その理由の大半は新聞の部数減による経営の圧迫やと思う。

その経営者の減少に伴って、新聞社は当然のようにその募集をしとるということや。

サイトのQ&Aにも、たまにその手の相談がある。(注3.巻末参考ページ参
照)

その手の広告がそこいらにあるということは、現在、この業界に逼迫(ひっぱく)した経営者不足があるということの証になる。

数年前までは、その手の募集は、その新聞社の関連サイトか関連企業のサイトくらいしかなかったさかいな。

ただ、それでも実際に新聞が配達されんようになったという地域は、まだ聞くことがないから、それで何とか維持はできとるということになる。

もっとも、店舗数の減少は、より力のある販売店がそれらを吸収合併して勢力を伸ばした結果ということも理由の一つとしてあるがな。

また、ある地方紙などでは、子会社としての販売会社を作り、その販売網を根底から変えようという動きの所もある。

そういう所では、当然のように既存の販売店の減少が進んどる。

その販売店の減少一つを取ってみても、いろいろな要因があるということや。

今のところ、夕刊廃止の発表は、その北海道のM紙だけやが、遅かれ早かれ、全国紙、引いてはブロック紙、地方紙にまで、その波は確実に拡がっていくやろうと思う。

それに伴って、同じような朝刊の価格差という問題も起こってくると考えられる。

明日は我が身。

そう考えておられる新聞販売店の方も多いのやないやろうか。

そもそも夕刊がなぜ必要なのかというと、そのニュースの即効性、伝達にあったわけやが、それも今となってはあまり意味のないものになったと言えるさかいな。

確かに、巷間言われるようにインターネットの台頭により、ニュースや情報などの即効性に遅れをとっていることが大きな要因なのは間違いない。

インターネットの爆発的な普及がなければ、ここまで新聞が追い込まれることもなかったやろうしな。

しかし、結果として、現在のような状況を招いたのは、新聞社自身の責任も大きいのやないかという気がする。

それには、WEBサイト上で新聞各社がまるで競争でもするかのように、ニュース情報を垂れ流しとるのが大きな原因やろうと思う。

それが現在の新聞の部数減となって表れとるのは明白やさかいな。

当たり前やが、大半の新聞記事の内容がタダで見られるのなら、それを欲するだけの人にとっては、わざわざ金を出してまで新聞を買う必要もないわけや。

実際、業界で「無読」と呼んどる新聞を購読してない人の断る理由の大半が、それやさかいな。

もう2年半以上前になるが、2005年11月11日に発表した旧メルマガ『第66回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■新聞の利点』(注4.巻末参考ページ参照)の中で、


確かにWEBサイトに公開されとるニュースには、新聞紙面に掲載されとる主なものはある。

しかし、宅配される新聞紙面と同じ内容がすべて載っとるわけやない。

普通、新聞の情報量は、朝刊の場合、単純計算で400字詰め原稿用紙に換算して約500枚程度になる。B6版の書籍にして300ページ分ほどもある。ちょっとした単行本1冊分や。

その内容が、新聞紙面と同等と錯覚するわけや。単に情報量の比較は、WEBサイトのそれと比べても格段の違いがある。

「インターネットで新聞社のWEBサイトを見ているから、新聞は必要ない」という人間は、おそらく、それしか知らんやろから、そう言うわけや。

パソコンに馴染んどる人間には、有料ソフトの無料体験版がWEBサイトに該当すると言えば分かりやすいと思う。

無料の体験版でも、そのソフトの内容は分かる。それを分からせて本ソフトを売るのが目的やから当然と言えば当然や。但し、機能や情報は、本ソフトに比べて少ないし、制限もある。

WEBサイトで満足しとる人間は、その無料体験版で納得しとるようなもんやと思うわけや。

もちろん、それが悪いということやない。それで、十分な人間にとっては、何も問題はないわけやからな。

ただ「そんな情報をなぜ金を出してまで買う必要があるのか」と言うのは、認識不足やと思うだけのことや。


と、言うてた。

WEBサイトの情報は有料ソフトの無料体験版みたいなもんやというのは、そのときには我ながら、なかなか気の利いた形容やと思うてた。

確かに、その当時までの新聞各社のWEBサイトは、そんな感じやった。

しかし、それがいつの間にか、どんどん掲載する情報量が増えていった。

今、そのときと同じ言葉を吐く自信がワシにはない。

正直、新聞社は何を考えてんねんと思う。

ワシらには新聞を売れとケツを叩いておきながら、一方ではタダ読みできるようにしとるわけや。

ホンマに新聞を売る気があるんかと疑いたくもなるで。

まあ、厳密に言えば、掲載しとる内容が新聞紙面のすべてやないのはワシには分かるが、無読者からすれば、それで十分やと思わせる内容のものになっとるということだけは確かや。

それが、インターネット上で常識になりつつあり、その無読の輪が止まることなく拡がっとるわけや。

時代の波に押されたという側面は確かにあるやろうが、ある意味、自爆したというのも否定できんのやないやろか。

ちょっときつい言い方かも知れんが。

いずれにしても、新聞紙面の記事とそっくりそのままの内容がWEBサイトにあるのでは話にならんわな。

同じニュース情報を掲載するにしても、新聞紙面に100の内容が書かれとるのなら、WEBサイトへのそれはせめて30くらいにして貰いたいと思う。

そうすれば新聞紙面では、この記事はどう書かれとるのやろうという興味も湧いてくるはずや。

買うて読もうかとならんでもない。

売る方のワシらとしても、そういう方向に持っていく営業もできる。

言うとくが、無読という人たちは新聞記事を読まんからそう呼ばれとるのやないで。

ひょっとすると、一般の購読者よりか新聞の報道記事を良く見ているのやないかという気すらする。

ただ、それが新聞社のWEBサイトやポータルサイトの新聞記事やったりするわけや。

そこに望む内容のものが豊富にあれば、新聞など買う必要はないという理屈は正論やと言うしかない。

ナンボ、ワシでもそういう人を説得して新聞を売り込むのは無理や。もっとも、そうするつもりもないがな。

本来、新聞社のWEBサイトでの目的は新聞紙面を売ることにあったはずや。

それが、お互い妙な競争意識を出した結果なのかも知れんが、あまりにも充実させすぎた結果が今やと言える。

事ここに至っても、まだそのことに気づかんようでは、今回の夕刊廃止は、こから本格的に始まる新聞終焉のプロローグの一つにしかならんのやないかと思うのやがな。


参考ページ

注1.新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A
『NO.91 新聞の値段について』
http://www3.ocn.ne.jp/~siratuka/newpage10-91.html

『NO.344 新聞代について教えてください』
http://www3.ocn.ne.jp/~siratuka/newpage10-344.html

注2.アントレnet
http://entre.yahoo.co.jp:80/dokuritsu/SCH20000?g=06&p=1&r=21221011&s=
0194292023-00

注3.新聞勧誘・拡張問題なんでもQ&A
『NO.34  新聞販売所について教えてください』
http://www3.ocn.ne.jp/~siratuka/newpage10-34.html

注4.旧メルマガ『第66回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■新聞の利点』
http://www3.ocn.ne.jp/~siratuka/newpage13-66.html


追記 朝刊のみの代金が人によって違うのは、あまり気持ちのいいものではありません


投稿者 O.Sさん  投稿日時 2008.7. 4  AM 10:45


いつも楽しく読ませてもらっています。今日配信されたのメルマガとは少し関連はあるのですが、ちょっと気になることがあったので報告いたします。

大阪の市内に住んでいる者で、現在Y新聞を朝刊のみで、3750円で契約しています。

昨日、たまたま早く家に帰ったので、途中販売店に寄って新聞代を払ってきました。そしたら、担当の人がいなくて、請求書もその担当が持っているということでした。

かわりに事務の人がパソコンで調べてくれて、3000円の領収書を書いてくれました。

3750円で契約していたはずで、(契約する時、値引きやサービスは禁じられているので、今はどこの販売店もやっていない、特にこの地区でそれをやることはどこの販売店だろうが絶対にありえないと断言されていましたから)、多分値段が間違っていると思いますよと言ったら、3000円でいいですと言われたのでそれだけ払って帰ってきました。

このような間違いが起きるということは、他の販売店どころか同じ販売店内で、3000円だったり3750円だったりと、同一新聞を客によって値段を変えて売っていたわけです。

後で担当の人が家にやってきて、来月までの契約は3750円になっているので、それ以降は3000円でいいからそれまでは3750円でお願いしますということで、結局差額の750円を払わされました。

その担当の人の話だと客次第で値段は決まっていないということでした。正直言ってあまり気持ちのいいものではありません。とりあえずは来月までで、それ以降ははしばらく新聞を止めるつもりです。

今日のメルマガでは夕刊がなくるという話でしたが、個人的にはN経新聞社の夕刊記事の中の、金融情報、特に企業情報や株式投資の指南は大好きで(最近は株を止めているので読んでいませんが)、N経の朝刊よりも面白いと思っていたくらいです。


コメント ゲン


早速のコメント、および情報を寄せて頂き、まことに有り難いと思う。

それにしても、朝刊のみ新聞代は3700円が上限やろうと思うてたのやが、3750円のところがあったか。

何でもそうやが、上には上があるもんやな。

今回の話の中でも、『すべての販売店で、朝刊のみの購読者に対して一律の価格設定になってないのが現状や』と言うてるが、それにしても差をつけすぎやな。

あんたが『とりあえずは来月までで、それ以降ははしばらく新聞を止めるつもりです』という気持ちは良く分かるから、思い直してくれとはワシも言えんわな。

『契約する時、値引きやサービスは禁じられているので、今はどこの販売店もやっていない、特にこの地区でそれをやることはどこの販売店だろうが絶対にありえないと断言されていましたから』というのは、少し眉唾ものやと思う。

確かに『値引き』行為は、新聞社から禁じられとるが、今回の話の中でも『新聞社は、基本的にそれにはタッチしてないという立場を取っとる』と言うてるとおり、これに関して口を出すことはまずない。

ただ、昨今の流れやワシらの知り得た情報を総合すると、朝刊のみ月3000円というのが、ひよっとしたら新聞社の指導やないのかという気がするがな。

達しが出るとしたら、朝刊のみの統合版に合わせた月3007円というのが妥当やし、筋やさかいな。

『サービスは禁じられているので』というのは、これは限りなく嘘やと思う。

業界には、6・8ルールという公の法律(景品表示法)があって、6ヶ月契約で新聞代金の8%、つまり1844円分までの景品付与は認められとるから、どこの販売店でもその範囲でしとることや。

ちなみに、その法律を運用するのは、公正取引委員会やが、そこでは一般業種の景品付与は、その取引価格は20%に緩和されとるから、その違反行為で摘発されることは最近ではほとんどない。

したがって、その大阪に限らず全国的にも多少オーバー気味のサービスは普通にやっているという報告の方が圧倒的に多い。

もし、それが禁じられとるとしたら、その販売店独自の決まりやと思うが、あんたの話を聞く限り、それもなさそうや。

そやなかったら、朝刊のみ月3000円の人間が存在するという説明がつかんわな。

もっとも、あんたのように、その価格に疑問を抱いた客だけに、その月3000円の提示をしとるのかも知れんがな。

いずれにしても、あんたがその販売店で優遇されてなかったのだけは確かやと思う。

人間、不信感を抱いたところで新聞を購読したいという気持ちは分かるが、もし、継続するのなら、それなりのサービスを要求すれば『サービスは禁じられているので』ちゅうなことは言うてないかのように、すると思うで。

まあ、それは、気分的なこともあるから、あんたの判断次第でええことやけどな。

『今日のメルマガでは夕刊がなくるという話でしたが、個人的にはN経新聞社の夕刊記事の中の、金融情報、特に企業情報や株式投資の指南は大好きで(最近は株を止めているので読んでいませんが)、N経の朝刊よりも面白いと思っていたくらいです』ということやが、何も今すぐという話やない。

新聞の衰退というのが、急速に早まったとしてもN経新聞だけは、まず安泰やと思う。ここは、根強い人気に支えられとるし、それこそ何のサービスがなくても購読する人が多いさかいな。

一般紙の中では唯一、他社と違う経済情報を売りにしとるという強みもあるしな。N経新聞単独の夕刊の廃止というのも考えにくい。

しかし、そのN経新聞にも弱点がある。

それは、自前の配達網を確保していないという点や。あんたもそのN経新聞は、そのY新聞の販売店から配達させとるのやろうしな。

本当は、そのN経新聞にも専属の販売店があり、専属の拡張員もおるのやが、その数が全国紙を名乗るにしては極端に少なすぎるということや。

したがって、Y新聞をはじめとする他紙が夕刊を廃止するとなったら、そのN経新聞も廃止せざるを得んわな。

あるいは、地方の有力紙にも同じように配達業務を依頼しとるから、そこが夕刊廃止になっても、そうなる可能性があるやろうな。

ただ、大阪に限っては、S紙の例もあるとおり、夕刊廃止になるのは最後の最後、よほどのケースやろうと思う。

絶対にないとは言わんが、ここしばらくは大丈夫なはずや。


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