メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー

第424回 ゲンさんの新聞業界裏話


発行日  2016. 7.22


■週刊文春に掲載された鳥越都知事候補に対する醜聞記事の信憑性とは?


7月20日、古くからの読者の方から、


ゲンさん、ハカセさん、大変、ご無沙汰しています。

いつもメルマガを楽しく読ませてもらっています。

本日、メールを差し上げたのは前々回のメルマガ、

▼第422回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■新聞各紙より「週刊文春」の方がスクープを連発している理由とは?
http://melma.com/backnumber_174785_6390602/

のなかでゲンさんが、《今や、「週刊文春」と言えば、スクープ(特ダネ)記事の代名詞という感すらあるさかいな》と、週刊文春について一定の評価をされていたのを思い出したからです。

先ほどネットニュースで、

▼<鳥越俊太郎氏>週刊文春記事に抗議文
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160720-00000116-mai-soci

という記事を見つけ少なからずショックを受けました。

確かに、ここのところ週刊文春によるスクープ記事が目立ちます。

前舛添東京都知事が週刊文春で、週末になると湯河原町にある自分の別荘へ「公用車で通っていたこと」をスクープされてから、次々と疑惑が報じられ、最後は辞任に追い込まれました。

前舛添東京都知事の場合は、ほぼすべてが事実だったわけですが、今回の鳥越氏の場合は、どうなのでしょうか?

もし、この記事が事実だったとしたら残念です。私は今回の都知事選挙には鳥越氏に投票しようと決めていましたので。

この記事に関して、ゲンさん、ハカセさんの見解をお聞かせください。参考にさせていただきたいと思いますので。


というメールが寄せられた。

『この記事に関して、ゲンさん、ハカセさんの見解をお聞かせください』と言われても、ワシらには、この記事だけで事の真偽など分からるわけがないさかい、コメントするのは難しい。

ただ、鳥越氏サイドが素早く週刊文春に対して告訴の準備に入ったという対応に出たことで、ひょっとすると、選挙時にありがちな「怪文書」、「怪情報」の類やないかなとは考えた。

もっとも、せやからというて鳥越氏の潔白を信じたわけでもないがな。

断っておくが、ワシらは、鳥越氏の支援者でも何でもない。関西人やから、都知事選には大した関心はない。

敢えて言えば、真実に興味がある第三者といったところかな。

ただ、この読者の要望に応えて見解を述べるにしても、もっと、多くの情報を得てからでないと何とも言いようがないというのが正直な気持ちや。

まあ、その情報は、これから時間を追う毎に、おいおいと出てくるやろうとは思うがな。

取りあえず、ここで鳥越氏サイドの週刊文春への抗議文を掲載しておく。


http://shuntorigoe.com/archives/22 より引用

週刊文春への抗議について

明日発売予定の週刊文春の記事について、本日、鳥越俊太郎氏の弁護団より以下の抗議文書を週刊文春に送付し、東京地検への選挙妨害および名誉棄損罪での刑事告訴の準備に入ったとの連絡がありました。

本件に対する問い合わせなどの一切について、弁護団が一元的に対応いたします。


抗議文

週刊文春編集部 御中


 東京都知事候補である鳥越俊太郎について、明日発売の週刊文春が、『疑惑』と見出しを打った記事を掲載することがわかった。

 記事にある『疑惑』と称する案件については、事前にFAXによる取材があり、本人に確認の上、弁護団から事実無根であると文書で明確に否定する回答をするとともに、無責任に記事化すれば選挙妨害になると強く警告した。

 しかしながら、記事は、一方的な証言だけに基づき、『疑惑』がいかにも真実であるかのごとき印象を与えるものとなっている。

 記事は、『疑惑』が事実であるとは断定せず、一方的な証言と思わせぶりな記述だけで、あたかも『疑惑』が真実であるかのような印象を与えるものとなっている。

 こうした手法で有権者に事実と異なる印象を与えようとする行為は、明確な選挙妨害であり、公職選挙法148条1項但書によって禁止される「虚偽の事項を記載し又は事実を歪曲して記載する等表現の自由を濫用して選挙の公正を害」する行為に他ならず、同法235条の2に規定する罰則の対象にもなりうる行為である。また、刑法230条1項の名誉棄損罪を構成する。

 弁護団は、週刊文春に対し、強く抗議する。また、明日にも東京地検に刑事告訴すべく準備を進めていることを申し添える。

 なお、本件に対する問い合わせなどの一切は、弁護団が対応する。

 くれぐれも、鳥越本人の選挙運動に対し、これ以上の妨害とならないよう、求める。


2016年7月20日
弁護士 弘中 惇一郎

弁護士 藤田 謹 也


抗議文としては、至極まともなものや。この抗議文の内容からすると、週刊文春は、よほどの情報と証拠を有していないと、本当に選挙妨害に問われかねんやろうと思う。

これは公職選挙法に、


第二百三十五条の二(新聞紙、雑誌が選挙の公正を害する罪)

次の各号の一に該当する者は、二年以下の禁錮又は三十万円以下の罰金に処する。

一  第百四十八条第一項ただし書(第二百一条の十五第一項において準用する場合を含む。)の規定に違反して新聞紙又は雑誌が選挙の公正を害したときは、その新聞紙若しくは雑誌の編集を実際に担当した者又はその新聞紙若しくは雑誌の経営を担当した者

二  第百四十八条第三項に規定する新聞紙及び雑誌並びに第二百一条の十五に規定する機関新聞紙及び機関雑誌以外の新聞紙及び雑誌(当該機関新聞紙及び機関雑誌の号外、臨時号、増刊号その他の臨時に発行するものを含む。)が選挙運動の期間中及び選挙の当日当該選挙に関し報道又は評論を掲載したときは、これらの新聞紙若しくは雑誌の編集を実際に担当した者又はその新聞紙若しくは雑誌の経営を担当した者

三  第百四十八条の二第三項の規定に違反して選挙に関する報道又は評論を掲載し又は掲載させた者


という規定があるからや。

翌7月21日の報道記事に、


http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160721-00000505-san-soci より引用

鳥越俊太郎候補「淫行」文春報道 14年前のスキャンダルを文春が掲載…「無罪請負人」弁護で刑事告訴へ


 東京都知事選に野党統一候補として立候補しているジャーナリスト、鳥越俊太郎氏(76)=民進、共産、社民、生活推薦=が、平成14年に当時大学2年だった女子学生に強引にキスをし、ラブホテルに誘ったなどとする記事が、21日発売の「週刊文春」(7月28日号)に掲載された。

 タイトルは「『女子大生淫行』疑惑 被害女性の夫が怒りの告白!」。鳥越氏側は週刊文春編集部に抗議文を送付し、公選法違反罪(選挙妨害)などで、21日にも東京地検に刑事告訴する。

 記事によると、鳥越氏は平成14年夏、当時20歳の大学2年生の女子学生を自身の別荘に誘い出し、「二十歳にもなって、そんなに性のことを知らないのか」と強引に迫った。また、翌日、東京に戻る車中で「ラブホテルに行こう」と誘ったという。

 同誌の取材に鳥越氏側は「事実無根」と回答、女子学生の夫は「あの男が都知事選に出るときいて、この十年あまり我慢してきたことが、抑えられなくなりました。絶対に許すことはできません」などとコメントしている。

 一方、抗議文は、弘中惇一郎弁護士と藤田謹也弁護士名で出された。抗議文によると、文春からは事前にファクスによる取材があり、弁護団が「事実無根だ」と否定したが、掲載されたという。

 弁護団は「『疑惑』がいかにも真実であるかのごとき印象を与えるものとなっている」と主張。公選法違反や名誉毀損罪に当たるとし、21日にも刑事告訴をするという。

 弘中弁護士は、ロス疑惑などの著名事件を手がけ、「無罪請負人」の異名を取ることで知られる。

 鳥越氏は20日午後、世田谷区内の保育施設を視察した際、報道陣から「週刊誌で報道が出るようだが、事実関係はどうか」と質問されたが、問いかけには答えなかった。


というのがあった。

また、その記事の詳細が掲載されているという7月21日に発売された『7月28日号週刊文春』には『被害女性の夫が怒りの告白! 鳥越俊太郎都知事候補「女子大生淫行」疑惑』というタイトルがつけられていた。

この記事を読んだ感想は、一言で言うと「期待はずれ」以外の何ものでもなかったというのが、ワシらの率直な印象やった。

今をときめく週刊文春が、この佳境とも言える都知事選挙戦の最中に有力候補者の鳥越氏を糾弾する記事を載せるからには、それ相当の有力な情報を持っているものと考えて期待していたんやが、見事に肩透かしをくらった格好になった。

この記事の内容では、全面否定している鳥越氏サイドと法的に争った場合、かなりの高確率で週刊文春側が負けるやろうと思う。

ここで、週刊文春の記事の全文を記載して、事細かに反論すれば、ワシの言うてる意味がよく分かって貰えるのやが、著作権の関係で、それはできんさかい、疑問のありそうな個所のみを抜粋して検証してみることにした。

すると、当初、考えてた以上に多くの疑問点やおかしな個所が目立つことに驚いた。一言で言うて、かなり杜撰な記事や。

まず、腑に落ちないのは情報提供者が、被害者とされる女子大生ではなく、この女性の旦那で有名私立大学関係者、永井一晃と名乗る(仮名・30代後半)男の話だけを鵜呑みにして記事を書き、肝心の被害女性(記事ではA子)とやらの取材を週刊文春側は一切していないという点や。

つまり、又聞き取材を情報源にしているわけやな。それも伝聞だけで具体的な証拠は何も示していない。記事を読む限り、確かな裏取りが行われているようには見えない。

そのため、随所に矛盾した個所が目立っている。

例えば永井氏の話として記事では「ある日、鳥越さんは、とりわけ気に入った女子学生を別荘に連れ込んで、強引にみだらな行為を行っていたんです」とあるが、A子自身は、キスを強要されただけやと言っている。

それにも関わらず、どうしてA子は、鳥越氏が『とりわけ気に入った女子学生を別荘に連れ込んで、強引にみだらな行為を行っていた』と断定できたのやろうか。

考えられるのはA子が、そのことを知っていた場合か、永井氏がその手の噂をくらいや。

本当に、鳥越氏が『強引にみだらな行為を行っていた』ような人間なら、二人きりになった時点で、キスをしただけでA子を解放したとは、とても思えんがな。

また、鳥越氏に、そういった悪い噂があると知っていたと言うのなら、どうして二人だけで、A子は鳥越氏の別荘に行ったのか。また、それをどのようにして証明できるのか。

それについては永井氏の証言だけで具体的な裏付けや証拠は一切示されていない。

記事には、その日はA子の誕生日やったとある。それを口実に鳥越氏がA子を別荘に誘ったのだと。

この時、A子はバージンで恋人の永井氏がいたことになっている。それ故、その事件を知って永井氏が激怒したと記事にはある。

そんな状況下で、恋人のいるA子が、果たして、いくら相手が有名人やと言うても女癖が悪いと承知の上で、のこのこと鳥越氏の別荘にたった一人でついて行くやろうか。

大きな疑問が残る。

記事では、鳥越氏が「何もしないから」と言ったというが、普通の感覚ではA子のような行動を取ることなど考えにくいわな。

しかも、結果として未遂に終わった事が14年経った今でもトラウマとなって心に大きな疵を作っていると言っている。

その鳥越氏が今回の都知事選に出て来たことが許せないと。

もし、この永井氏とA子が本気で、そんなことを考えて14年も前のキスをしただけの事件を暴露したのやとしたら、彼らの精神状態を疑いたくなる。

その程度のことで、そこまで深い恨みを抱く人間というのは異常者やないかと。

まだある。この事件の後、永井氏とA子、鳥越氏の3人は話し合いの場を持ち、鳥越氏が詫びて、「今後一切、テレビの出演を降りる」と言ったという。

ここで示談が成立したと永井氏が言っているわけや。

これは、想像やが、「テレビを降りなければ、この事をバラすぞ」と永井氏とA子側が鳥越氏を脅したと考えられる。

もちろん、これは脅迫罪に該当する。それを永井氏自らが喋っている。

しかし、現実には鳥越氏は、その後もテレビ出演を続けている。

本当に、永井氏の言うとおりだとしたら、鳥越氏は常にテレビに出続けていたわけやから、その時に「約束を破った」として、この事を暴露してなあかんかったのやないかと考えるが、永井氏は、そんな行動を起こしていない。

さらに永井氏が関わっていたあるイベントの仕事に偶然、鳥越氏が出演すると決まった時、「出演をキャンセルしてほしい」というメールを鳥越氏に送り、実際に出演がキャンセルしたという。

これも事実なら、永井氏は、ここでも脅迫罪、強要罪に該当する犯罪を犯していることになる。もっとも、そのメールが本当に存在していたという証拠は何も示していないさかい実際には罪に問えないやろうがな。

さらに、鳥越氏の仕事の妨害をする行為は、業務妨害罪に該当する。

今回の知事選の場合は、名誉毀損罪プラス、先にも言うたように公職選挙法上の選挙妨害罪に当たるものと考えられる。

もっとも、鳥越氏の行為が実証できれば、多少はその罪が軽減、あるいは免除になるかも知れんが、鳥越氏が一切を否定している状況では、それはないやろうと思う。

客観的に記事を読めば、永井氏やA子の言うてることの方がおかしいし、矛盾だらけに見える。

また、週刊文春もタイトルに『女子大生淫行』という文言をなぜ使ったのかが、良う分からん。

「淫行」というのは、18歳未満の青少年が性行為の対象となった場合に使われる言葉や。それが発覚すれば地方自治体の淫行条例に触れ、逮捕され処罰される。

しかし、A子は、この時、20歳の大学2年生やった。本来「淫行」などという言葉を使うべきやないと思うがな。立派な大人として扱わなあかん。

もっとも、それ以前にキスしただけやと『性行為の対象』にすらならんから、それだけでも「淫行」にはならんわな。

その程度のことは、週刊文春の記者は知っているはずや。それでも「淫行」という言葉を使い、あたかも犯罪性があるかのように見せている。

この記事の問題点は、まさにそこやないかと思う。是が非でも、鳥越氏に汚名を着せ、都知事選挙で不利に導くために仕掛けられた陰謀やないかと。

この記事が出る前から、対抗陣営(これについては詳しい記述は避けるが)は、「鳥越氏が女子学生をレイプした」という記事が出るものとばかり思っていたようで、実際に「鳥越は強姦魔」というプラカードを用意し、選挙戦で使う予定にしていたという情報が、ネット上にある。

実際に、ワシらは、その「鳥越は強姦魔」というプラカードを見たわけやないが、拡散するSNS上にあるとのことやから探せば、すぐ見つかるものと思う。

なぜ、そんなことができたのか。考えられることは一つ。組織ぐるみの罠、トラップが仕掛けられていたからや。そうでなければ、「鳥越は強姦魔」というプラカードなど事前に用意できるはずなどないさかいな。

ところが、実際は「キスをしただけ」という報道で終わっている。これでは、さすがに「鳥越は強姦魔」プラカードは使えんわな。彼らの気落ちした姿が目に浮かぶようや。

今回の週刊文春の記事には、がっかりしたが、ぎりぎりのところで踏み止まったとも言える。

それには、やはり永井氏の証言だけに頼り、大した裏取りをしていないことに後ろめたい思いがあったからやないかと考える。最後に「疑惑」という文言をタイトルに付け足したのも、そのためやという気がする。

とはいえ、鳥越氏側の告訴に対抗するためには、永井氏の証言が真実やと証明できん限り十中八九、週刊文春側の負けは濃厚やと思う。

そして、現時点で、永井氏の証言の信憑性を証明するのは限りなく難しいと言う外はない。

あまりにも時が経ち過ぎているさかいな。そもそも、こんな時を狙って、14年も前の不確かな出来事を持ち出すこと自体に無理があったわけやけどな。

しかし、現在、週刊文春に記事が載ったというだけで鳥越氏側にとっては、大きなマイナス要因になる。

殆どの人間は、ワシらのように記事の内容を一言一句検証することなどせんさかいな。週刊文春に記事が載ったというだけで、それが真実であるかのように一人歩きしてしまう。

例え、鳥越氏が言うように「事実無根」であったとしても、この都知事選において大打撃を被るのは避けられんやろうな。

しかし、やり方次第では、ピンチはチャンスに転嫁できる。

報道を見ていると、鳥越氏は弁護士に任せているためか、この件について口を閉ざしているようやが、それは逆効果になる。

報道陣の質問に黙っているというだけで疑われる。逆に、その報道陣に、一つ一つ丁寧に応えることでピンチがチャンスになるかも知れん。

ましてや、鳥越氏は、過去女性問題の醜聞をスクープし、時の総理大臣を辞職にまで追い込んだジャーナリストなわけやから、報道陣から逃げたらあかんというのは誰よりも知っているはずや。

ワシが、鳥越氏の選挙スタッフなら、緊急記者会見と称して報道陣を集め、週刊文春の記事の信憑性を突っ込むがな。

そうすることで少なくとも、どこに投票すべきか迷っている浮動票と言われる人たちの心を掴むことができるのやないかと思う。

今でこそ、週刊文春はスクープのオンパレードのような感があるが、過去には他の週刊誌同様、結構、誤報記事の多い雑誌やった。ネットで検索すれば、その手の記事がゴロゴロ出てくるはずや。

週刊文春を含め、多くの週刊誌では訴訟沙汰で敗訴するという程度のことは先刻織り込み済みで報道しているケースが多いと聞く。

昔から週刊誌の報道は話半分程度の信頼性がないと言われていたさかいな。

もっとも、せやからと言うて、今回の記事が100パーセント誤報やと言うつもりはない。ワシ個人として信憑性が薄いと感じているだけや。

もちろん、これからの報道次第、真実次第では、その考えが揺らぐこともあるがな。あくまでもワシらの見解は、現時点ではというものや。

せやさかいワシら言を信用するか、週刊文春の記事を信用するかは、読者の判断に委ねるしかないと考えとる。


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