メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー

第425回 ゲンさんの新聞業界裏話

発行日 2016. 7.22


■読者の訴え……その1 近所の怖い新聞販売所に脅されて困っています


1年ほど前、表題の相談が寄せられた。解決するまで非公開にして欲しいということやったさかい、相談者の意を汲んでそうしていたが、最近になって公開して貰っても構わないと言って来られた。

何度か相談と回答を繰り返しているので、まずは時系列に経緯を説明したいと思う。

最初の相談は、ワシらにとっては、ごく普通のありがちなものやった。


相談1 近所の怖い新聞販売所に脅されて困っています

相談者 匿名希望さん  投稿日時 2015. 7. 3 PM 9:08


今晩は。初めまして匿名希望の主婦です。こんなことは、どこに相談したら良いのかわからず検索していたら、ここが見つかりました。

1年前、ある新聞とはじめて契約をしました。私は、あと少しで契約期間が切れるのを知っていましたが、購読の延長をする気がなかったので、そのままにしていました。

延長のための勧誘など受けておらず、集金のときも何も聞いていませんでした。なので、契約の終了と同時に新聞も止まると思っていました。

ところが、契約期日が過ぎても新聞が入ったので、おかしいなと思いつつ販売所に電話をすると「○○さんは、今月から1年の契約延長になっているね」と言われました。

「そんことは聞いていませんよ」と私が言うと、「うちでは購読者から契約の解除を言って来ない場合は自動的に契約が延長になるんや」と男の人に怒ったような強い口調で言われました。

私は怖くなって、すぐに電話を切りましたが、こんな場合どうしたら良いんでしょうか? 

私は止めたいと思っているのですが、止めることはできないのでしょうか?

私が期日前までに契約の延長を断らなかったのが悪いとは思うのですが、何か良い方法はないでしょうか? 教えてください。

念のためなのですが、その販売所は近所にあるので公開されて私だと知られると嫌なので、上手くいくまで公開するのを待ってもらえますか?

それでは、お返事をお待ちしています。


というものやった。

これに対して、


回答者 ゲン


この業界では便宜的に『自動延長契約』として新聞を投函し続けるケースも、たまにあるが、それでも『うちでは購読者から契約の解除を言って来ない場合は自動的に契約が延長になるんや』と言う販売店など聞いたことがない。

確かに、業界では昔から契約書を交わさずとも『自動的に契約の延長』をするケースはあった。

しかし、それは、お互いの長い付き合いの中から暗黙の了解のもとに自然発生的に生まれたものや。

『1年前、ある新聞とはじめて契約をしました』といった程度の顧客に、『自動延長契約』などと言うてごり押しで契約を続行させようとする販売店など聞いたことがないし、驚いている。

当然やが、そんなことを言えば揉めるのは確実やさかいな。しかも、このケースで揉めた場合、新聞販売店に益は、まったくないから、よけいや。

『自動延長契約』というのは、法律上、契約者の一方が『自動延長契約』は「認めない」と言えば、その瞬間から一方的に契約が解除されることになっている。

『期間の定めた契約は双方の合意がなければ解除できない』と法律で定められている。裏を返せば、期間の決められていない契約は、いつでも解除できるということや。

『自動延長契約』には契約書などないから、当然のことに『期間の定めた契約』には、なり得ない。

つまり、『うちでは購読者から契約の解除を言って来ない場合は自動的に契約が延長になるんや』という主張も法律的には認められないということや。

そんなことを許してしまえば、たった一度契約するだけで、その後、延々とその契約に縛られ続けなあかんことになってしまうさかいな。そんなアホなことは、あり得んわな。

したがって『私が期日前までに契約の延長を断らなかったのが悪い』などと考える必要はないと言うとく。

その新聞の投函は、あんたの意志次第で、いつでも止めさせられることができる。正式な延長契約を結ばなかった販売店が悪いということで終わるだけの話や。

せやさかい、あんたは「契約期間の定めのない自動延長契約は、こちらの意志でいつでも契約解除できるので、そうします」と、その販売店に通告するだけでええ。

そう言えば、よほどタチの悪い販売店でもない限り、あきらめるはずや。

万が一、それでも、あきらめず『自動延長契約』に拘って新聞の投函を続けるようなら、また相談して来られたらええ。


と、ありがちな回答をした。

すると、翌日、その相談者から、


相談2 こんな状態でも何か良い方法があるのでしょうか?

相談者 匿名希望さん  投稿日時 2015. 7. 4 PM 10:11


返事がもらえて感激しました。ありがとうございました。

早速、今日の午前中に販売所の人(今日は優しい感じの女の人でした)に、教えて頂いたように「契約期間の定めのない自動延長契約は、いつでも契約解除ができるはずですので、そうさせていただきます」と伝えました。

女の人(事務員?)は「わかりました。そのように上に伝えておきます」と言っていました。

それから以降、その販売所からは何の連絡もなかったので、それで終わったと思っていたのですが、夜の7時頃、突然その販売所の責任者だと名乗る男の人が我が家に訪れ、「契約は破棄できない」と言って来ました。

私は、「そんなはずはありません。新聞契約のことに詳しい方から、自動延長契約は、こちらの都合で一方的に解除できると聞いています」と言いました。

「誰が、そんなアホなことを言うとんねん」と物凄い剣幕だったので怖くなって、思わず、いただいた回答文を見せてしまいました。いけなかったでしょうか?

「何じゃ、これは! こんな、ど素人の言うことを真に受けとったら、えらい目に遭うで。ここのホームページの人間は業界でも、ええ加減なことを言うので有名な奴や。まあ、ええ。どうしても契約を破棄するつもりなら、違約金を払うてもらう」と凄まれました。

「違約金?」

「そうや。契約を解除するには解約違約金が必要なんや。そんなことは当たり前やで」

「いくらくらいですか?」

「あんたの場合、こっちも気分を害したから1年分の購読料を払うてもらわなあかんな。ざっと5万円くらいかな」

「そんな無茶な」

「何が無茶やねん。話し合いもせず一方的に契約を解除しようとする、そっちの方が、よっぽど無茶なんと違うんかい!」と、怒鳴りつけられました。

私は怖くなって、「今日のところは帰ってください。主人ともよく相談しますので」と言って帰ってもらいました。

「そうか。ほな、明日また来る。それまで考えといてくれ」と言って帰って行きましたが、この先、どうなるのか怖くて心配でたまりません。

こんな状態でも何か良い方法があるのでしょうか?

これ以上揉めて怖い思いをするくらいなら、お金を払って契約を解除しようかとも考えています。どうすれば良いのか教えてください。


というメールがあった。

翌日、


回答者 ゲン


前回の回答で『よほどタチの悪い販売店でもない限り、あきらめるはずや』と言うたが、その販売店の人間は、ワシの想像をはるかに超えた悪質な人間のようやな。

あるいは、単に無知なだけで、本気で『自動延長契約を解除するには解約違約金が必要』と思い込んでいるのかも知れんがな。そうやとすれば、物を知らんにも、ほどがあるとしか言いようがない。

もっとも、新聞販売店の人間の中には新聞関係の法律と言えば「クーリング・オフ」くらいしか知らん者もいとるさかい、その手の人間なら、そういうことがあるかも知れんがな。

心配せんでも『契約期間の定めのない自動延長契約は、いつでも契約解除ができる』ことに間違いはない。いつでも契約が解除でき、違約金も発生しない。

したがって『1年分の購読料を払うてもらわなあかんな。ざっと5万円くらい』というバカな要求に応じる必要はないと断言しとく。

そして、『ここのホームページの人間は業界でも、ええ加減なことを言うので有名な奴や』という戯言は信用しないで貰いたい。

ワシらのHPは開設して11年が過ぎている。この手のHPとしては日本で最も古い。

開設当初からヤフージャパンで優良登録サイトとして紹介され、新聞関連の事件があった場合、ヤフーニュースで引用されたくらいの信用度も得ている。

ワシ個人で言えば、22年の新聞拡張経験をもとに11年間、あんたのように困った人たちの相談に対して回答やアドバイスを送り続けている。そのため、支持してくれるファンも多い。

もっとも、ワシらの回答やアドバイスにより仕事がやりにくいと感じている、ごく一部の業界関係者からの評判は、すこぶる悪いようやがな。

また、この文章を書いているハカセは『新聞勧誘問題研究家』として複数の雑誌に記事を寄稿していて、その道の専門家としても多くの人に認められている。

さらに、このサイトは数多くの法律関係者の方々、新聞販売店関係者、新聞拡張団関係者、新聞社関係者の方々のご協力を得て成り立っているということもある。

それだけでも『ええ加減なことを言う』はずなどないことは分かって頂けるものと思う。

もっとも、その販売店の言うことを信じるか、ワシらの言葉を信用するかの判断は、あんたに任せるしかないがな。

ワシらを信じてくれるのなら、そんなことを言う販売店など相手にしないで貰いたい。

はっきり言うて、過去の経験から、その販売店と何を話し合っても無駄やと思う。進展は期待できん。

『こんな状態でも何か良い方法があるのでしょうか?』ということやが、もちろんある。

『明日また来る。それまで考えといてくれ』とのことやが、それまで待つ必要はない。というか、先に手を打っておいた方がええ。

その新聞の本社、具体的には新聞社のHPに記載されている「苦情相談係」に電話して、これまでの経緯を説明し、「契約が終了しているのに、自動契約になっているから契約を解除するのなら違約金を払えと言われて困っています」と通告すればええ。

そうすれば、新聞社から、その販売店に対して何らかのアプローチなり指導があるはずや。新聞社としても、あんたのようなケースが事実なら容認するわけにはいかんさかいな。

あるいは、消費者センターに通報するという手もある。すべての消費者センターが、そうするとは言い切れんが、たいていの担当者なら、その販売店に対して事実確認をし、事実と分かれば行政機関として強く注意をするはずや。

殆どの場合、そこまですれば、どんなに悪質やと言われる販売店でもあきらめるやろうと思う。

ただ、『これ以上揉めて怖い思いをするくらいなら、お金を払って契約を解除しようかとも考えています』と言われるなら、止めるつもりはない。

それも穏便に解決するための方法の一つやさかいな。

いずれにせよ、どうされるかを決めるのは、あんたや。その結果で、また何か問題があれば、いつでも相談して来られたらええ。方法は、いくらでもあるさかい。


という回答を送った。これも、いつものありがちなものやった。

すると、翌日、


相談2 安心できる方法が何かあるでしょうか?

相談者 匿名希望さん  投稿日時 2015. 7. 5 PM 9:23


ゲンさん、さっそくご返事をいただき感謝しています。

主人とも話し合い、アドバイスどおり消費者センターに相談しました。

消費者センターの方は、とても親身になって話を聞いてくれ、ゲンさんが仰ってたように、その販売店に直接注意をしてくれたようでした。

その後、しばらくして、昨日、うちに来た販売店の人から電話がかかってきて、「解約に応じるし、違約金もいらない。もう新聞も配達しない」と怒ったような口調で言ってきました。

それは良いのですが、最後に「ふざけた真似をしやがって、ええ気になるなよ」と言われた言葉に恐怖を感じてしまいました。

その販売所とは家が近く、道で会ったりしたら何かされないか、子供に危害が及ばないか、嫌がらせを受けないかといったことを考えると夜も安心して眠れません。

主人は、何かあったら警察に電話しろと言いますが、何かあってからでは遅いと思うのです。

心配性なのは重々承知していますが、安心できる方法が何かあるでしょうか? あれば、ぜひ教えてください。

ご回答、よろしくお願いします。


というメールがあった。

それに対して、


回答者 ゲン


『心配性なのは重々承知していますが、安心できる方法が何かあるでしょうか? あれば、ぜひ教えてください』と言われていることやが、具体的な危害や脅し、脅迫行為に対しての対処法なら、いくらでも考えられるが、精神的な部分での恐怖心をなくす方法となるとワシらでは難しいと言う外はない。

特に、あんたが感じておられる『その販売所と家が近く、道で会ったりしたら何かされないか、子供に危害が及ばないか、嫌がらせを受けないかといったことを考えると夜も安心して眠れません』という恐怖心、思いを払拭させるのはな。

人の感じる恐怖心には際限がない。他人から、いくら大丈夫ですよと言われても、一旦、その思いに取り憑かれたら、そう簡単に消えるもんでもないしな。

実際には、何も被害を受けていないにも関わらず、相手を見るだけで不安になることがある。それが勝手に悪い方へ悪い方へと想像を膨らませていくケースがままある。

被害妄想と呼ばれているものの多くが、そうや。

ワシは精神科医でもセラピストでもないから、他人の心の領域に踏み込むことはできんし、そのつもりもないが、せめて、いらん心配くらいは払拭させてあげたいと思う。

人が何かの行動を起こす場合は、必ずと言うてええほど、そこに何らかの利害があるからや。どんな人間も、意味のないことや得にならんことはせんもんやさかいな。

『その販売所と家が近く、道で会ったりしたら何かされないか、子供に危害が及ばないか、嫌がらせを受けないかといったことを考えると夜も安心して眠れません』と言われる気持ちは分からんでもないが、

殆どの場合、というよりワシらの知る限り、その程度の理由で販売店の人間が元契約者に何らかの危害を加えたという事案は皆無やさかい、それほど心配される必要はないと言うておく。

万が一、あんたやお子さんに危害を加える、もしくは脅迫罪に該当するようなを真似をすれば、かなりの高確率で、その販売店の責任者とやらが従業員の場合は解雇されるやろうし、経営者なら新聞本社から厳しく叱責されると思う。

下手をすると改廃と言うて、その販売店の経営権すら失いかねん。その程度のことは、この業界で飯を食うてる者なら誰でも分かっていることや。

たった一軒の契約と言えば語弊があるかも知れんが、あんたの契約を失うくらいで、改廃や解雇を覚悟で危害を加える、または脅すといったようなことをする者など、まずいないと考える。

あんたの場合、『自動延長契約』を主張することで、新聞の購読を続けさせるという狙いがあったわけやが、それが公に否定された。

そんな状況で、今更、あんたに何をしたところで、それが覆らんくらいのことは分かっているはずや。何をしても無駄やと。

それどころか、あんたに何かを仕掛けること自体、その人間にとって命取り、デメリットになりかねん。

普通に損得勘定の分かる人間なら、そんな間尺に合わんことをしよう考えるはずなどないわな。

ワシらは、あんたと同様の心配をされている相談者の方には、そうアドバイスしてきた。そして、過去そのすべてでワシらの言うとおりになっている。

ただ、世の中には、とんでもない思考をする者がいとるのも事実で、そういう事件も時々見かけるさかい、絶対に安全とまでは言い切れんがな。

過去には、あんたのようなケースで実際に危害を加えたり、脅したりといったような真似をした販売店の人間がいないというだけしか言えん。

『最後に「ふざけた真似をしやがって、ええ気になるなよ」と言われた言葉に恐怖を感じてしまいました』というのは、何もできないからこそ、悔し紛れの捨て台詞として思わず口走ったと受け取れば、それなりに納得されるのやないかな。

以上やが、何かあれば、また相談して来られたらええ。


そう回答してから数ヶ月間、何の音沙汰もなかった。

こういった相談の回答をした後、何もないのは上手くいっているケースが大半やさかい特段、心配はしていなかった。

それが、先日になって、


相談3 以前のことですけど公開してもらっても構いません

相談者 匿名希望さん  投稿日時 2016. 7.15 PM 8:14


ゲンさん、お久しぶりです。

以前、「近所の怖い新聞販売所に脅されて困っています」という相談に乗っていただいた主婦ですけど覚えておいででしょうか。

あの後、ゲンさんの仰る通り、販売所からは何も言ってきませんでした。時々、例の販売店の人を見かけることはありましたが、とくに問題はありませんでした。

最近になって、その人の姿が見えなくなり、それとなく近所の人に尋ねると、その販売所の経営者が代わったとのことでした。

そのとき、私は、はじめて例の人が販売所の経営者だったと知りました。

そして、ゲンさんと約束していたことを思い出してメールを差し上げた次第です。

大変遅くなりましたが、もう何の心配もなくなりましたので、以前相談した内容を公開していただいても構いません。

本当にありがとうございました。


というメールが届けられた。

正直、ワシらは、この人のことは忘れていた。非公開扱いのまま保留になって結果的にお蔵入りというのが結構多いさかいな。

ただ、連絡があれば公開せんわけにもいかんので、ここで話させて貰ったわけや。

相談の内容と回答自体は、ありがちなものやった。もっとも、相談される方にとっては特異なケースということになるんやけどな。


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