メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー

第431回 ゲンさんの新聞業界裏話

発行日 2016. 9. 9


■報道の危機……その9 記者クラブの存在が日本の新聞をダメにした?


現在、新聞が凋落の一途を辿っているのは、『第429回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■報道の危機……その8 失われつつある報道の自由は取り戻せるのか?』(注1.巻末参考ページ参照)で話したとおり、間違いのない事実や。

業界関係者は、そこから目を背けたらあかん。事実は事実として捉え、それにどう対処していくかが重要になる。

しかし、哀しいかな多くの新聞社、新聞関係者に、それが分かっていなかった。いや、分かろうとしなかったと言うた方がええのかも知れん。

新聞が凋落した要因の最たるものがインターネットの急激な台頭やと言われているが、それだけではない。

その芽は、インターネットが登場する遙か昔からあった。それは「記者クラブ」の存在や。

「記者クラブ」とは何か。言葉は聞いたことがあっても、業界関係者以外で、その実態を知る人は少ないやろうと思う。

「記者クラブ」とは、公的機関や業界団体などの各組織から継続的に取材することを目的に大手新聞、テレビメディアを中心に、法人としての登記が為されていない私的な組織ということになっている。

日本には約800もの記者クラブがあるという。

公的機関の主なものでは国会記者会館内に、衆議院記者クラブ、参議院記者クラブがあり、総理大臣官邸の敷地内には内閣記者会クラブがある。これは「永田クラブ」、「官邸クラブ」などとも言われている。

他にも内閣府記者クラブ、経済関連記者クラブ、「霞クラブ」と呼ばれる財務省記者クラブ、法務省の記者クラブ、人事院の記者クラブ、外務省記者クラブ、国土交通省記者クラブ、文部科学省記者クラブ、農林水産省の記者クラブ、総務省記者クラブ、宮内庁記者クラブといった官公庁専属の記者クラブがある。

日本銀行内には「日銀クラブ」というのがあり、常駐記者は日銀だけでなく、銀行、保険など民間金融機関も取材している。

一般によく知られているものでは警視庁記者クラブというのがある。

これには新聞、通信6社が加盟する「七社会」、NHK、産経、時事、ニッポン放送、文化放送、MXテレビが加盟する「警視庁記者倶楽部」、日本テレビ、TBS、フジテレビ、テレビ朝日、テレビ東京の民放5社が加盟している「ニュース記者会」がある。

ちなみに警察関係では各県警に記者クラブがある。

通常はその県警の広報から全社一斉に広報文がFAXされるが、大きな事件や事故になると県警記者クラブの当番幹事社に県警広報から電話連絡があり、幹事社がクラブ加盟の他社に電話で伝える、あるいは、クラブ加盟各社の県警キャップ(リーダーの記者)の携帯に連絡をするケースもあるという。

また「警戒電話」といって各県警に所属している支局の新聞記者から地元のすべての警察署に電話をして何か事件が起こっていないか訊くこともあるらしい。

それにより、『詳細は不明だけど、たった今、重大と考えられる事件が起きて出動したばかり』などと教えてくれる場合もあるという。

政党関係では、「平河クラブ」と呼ばれている自民党本部内と衆議院内にある記者クラブというのがあり、ここでは主に自民党、公明党の取材を担当している。

それに対して民進党や共産党などの野党を取材する「野党クラブ」というのがあり、こちらは国会議事堂、および衆議院内にある記者クラブで、自民党のように党本部内に設置されているわけではない。

国会議事堂の衆議院内にある、在京テレビ局6社(NHK・日本テレビ・TBS・フジテレビ・テレビ朝日・テレビ東京)ニュース映画社5社(中日映画社・毎日映画社・テレビ朝日映像・読売映像・産経映画社)が加盟している「放映クラブ」というのもある。

「国会放送記者会」という衆議院内にはラジオニュース専門の記者クラブもある。

さらに、各企業、業界団体、地方自治体の役場など数多くに記者クラブが存在する。

記者のほとんどはクラブに常駐し、加盟報道機関が複数当番制で「幹事」社となってクラブの運営にあたる事が多いという。

情報は情報源の広報担当から幹事社に伝えられ調整され、幹事が件名や発表日時などその報道に関する約束事を記者室の「ボード」(黒板)に書くのが一般的だとされている。

黒板に書かれた約束事は「黒板協定」「クラブ協定」「しばり(縛り)」などと呼ばれ、加盟社が順守するべき約束事とみなされている。

記者会見は、ほとんどがクラブ主催となっており参加者も加盟社に限られ、仮に加盟社でない記者が参加できても質問は出来ないケースが大半で批判を受けていたが、最近は開放に向かう動きが進んでいると言われている。

もっとも、それは形だけ、体裁だけで十分ではないという意見も多いがな。実態は旧態依然のままやと。

省庁などの側は記者懇談会やぶら下がり取材、および国会記者証(入館許可証)の交付などの対象を、記者クラブのメンバーに限って認めることが多いという。

加盟社以外に記者会見を開放しないなど独占的な活動によって、記者クラブ以外のジャーナリストによる取材活動が差別、制限されてきたという実態がある。

しかも、公的機関では記者クラブに対してのみ記者室を提供して光熱費なども負担している。総額で年間110億円、全国紙1社あたり数億円の利益供与になるという批判が挙がっている。

それらの金の出所は当然、税金からということになる。そのため「便宜供与に当たるのではないか」といった批判がある。

取材対象である公的機関、政治家側から同じ情報提供を受けているということもあるのか、加盟している新聞各社の記事の文面が、ほぼ同じ内容になっている。

それには「メモ合わせ」というものがあり、クラブに加盟している記者たちは別会社の記者同士であるにも関わらず取材メモを見せ合っているからやと言われている。

これは新聞記者としては恥じとせなあかんことやないかと思う。お互いカンニングをし合って記事を作成しとるようなもんやさかいな。

極端なことを言えば、他紙の新聞記者が書いた記事をそのまま自社のデスクに送り、それがその新聞の記事として掲載されるケースもあるということや。

新聞各社の記事の文面が、ほぼ同じ内容になっている所以でもある。

記者会見は、ほとんどが記者クラブ主催となっていて、参加者は加盟社に限られ、仮に加盟社でない記者が参加できても質問はできないという制限がある。

加盟新聞社以外の報道機関、ジャーナリストたちの記者クラブへの入会は難しい。

実際、入会審査するのは各記者クラブやが、審査過程は不透明で、加盟社が1社でも反対したら入会は認められないことになっとるということや。

その排他性から「情報カルテル」、「談合」、「護送船団方式」と表現されることも多い。

公的機関では記者クラブ以外には便宜を図らないケースが多く、加盟社でないと十分な取材が行えないと言われている。

これではいくら新聞各社が「公的情報の迅速・的確な報道」、「公権力の監視と情報公開の促進」というスローガンを掲げても、そのとおりに実行できるわけがないわな。

情報を独り占めにできる新聞社は、その情報の取捨選択は自由やから、得た情報を報道するかどうかは胸先三寸で決まるということになる。

そんな状況に「メモ合わせ」が加われば偏った報道になる可能性が高くなるのは必然や。

そのことを問題視したOECD(経済協力開発機構)やEU議会などから記者クラブへの改善勧告が出されているが、大手メディアはその事実を隠して報道していない。

そのため、国民には記者クラブの持つ閉鎖性が知られる機会が、ほとんどないと言うてもええ状態なわけや。

ただ、問題だらけの記者クラブでも、「誘拐報道協定など人命・人権にかかわる取材・報道上の調整」という点において報道を制限する上では役立っていると言い添えておく。

記者クラブの統率が取れているからこそ、そういった報道規制、報道協定が簡単にできるわけやさかいな。

これが自由奔放に取材できた場合、どこかの新聞社、報道機関が抜け駆けをして報道協定が破られ、それによって人命に危険がおよぶということも考えられるさかいな。

記者クラブのすべてが悪いというわけやないが、その良い点を差し引いたとしても問題が多いのは確かやと思う。

その歴史は古い。

日本の記者クラブの歴史は明治時代まで遡る。

1890年(明治23年)、第1回帝国議会が開催され、議会側が示した新聞記者取材禁止の方針に対して、『時事新報』の記者が在京各社の議会担当に呼びかけ「議会出入記者団」を結成し、取材用傍聴席の確保や議事筆記の作成で協力を図ったことが、その始まりとされている。

この年の10月にはこれに全国の新聞社が合流し、名称を「共同新聞記者倶楽部」と改めた。しかし、実態は数人の記者のたまり場にすぎず、中級官僚に面会できる程度であった。

大正時代に入ると本格的な記者クラブが作られ、昭和初期までに、取材の自由を勝ち取っていった。この時期の記者クラブのほとんどは記者が個人個人で直接加入するものだった。

その後、太平洋戦争が始まると記者クラブは変質することになる。

まず、日米開戦前の1941年5月に新聞統制機関「日本新聞連盟」が発足。

11月28日、「新聞の戦時体制化」が決定され、日米開戦後に新聞連盟の設けた「記者会規約」により加盟は記者個人から会社単位となり、役所の発表を取材して右から左へ発表報道をおこなう翼賛クラブが1官公庁1クラブだけ認められた。

取材組織として公認され、国家体制に組み込まれた記者クラブ制度が始まった。

結果、戦時中の記者クラブは政府発表を政府の意向通りに報じる「御用クラブ」と化してしまい、俗に言う「大本営発表」という大嘘にまみれた報道を繰り返すことになる。

戦後、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)は報道の自由や取材の自由を踏みにじる組織であるとして記者クラブの解体を執拗に迫った。

これを受けて1949年10月26日、 日本新聞協会は『記者クラブに関する方針』を作成した。

記者クラブを「親睦社交を目的として組織するものとし取材上の問題には一切関与せぬこと」と規定した。

ジャパン・ロビー(アメリカ対日協議会(ACJ)の設立委員会)の圧力を受けてGHQは態度を軟化させ、公共機関に対しては記者室などの便宜供与をおこなうべきとする方針を取り、記者クラブは超法規的な措置として受け入れられ、1958年(昭和33年)には、記者室の使用を許可する大蔵省管財局長の通達が出るまでになった。

記者クラブは親睦団体の建前のもと、戦争中と同じように取材組織としての活動を続けていたが、報道協定を巡って建前と実態の乖離が表面化するようになった。

役所は報道協定などによって報道制限や取材制限を求めた。対して親睦団体は報道の自由や取材の自由を旨とした。

1960年代までは報道協定違反が発覚すると除名処分をおこなっていたが、こういった対立の末1970年以降、記者クラブの権利を公然と認めるようになった。

平成に入ると記者クラブは見直しを迫られるようになった。

1990年代、バブル景気により日本経済の国際的影響力が増大し、外国人記者の活動が活発化してくると日本国内でも記者クラブに対する疑問の声が強まった。

この頃から、記者クラブの特権廃止と開放の動きが顕在化するようになった。

1991年、当時の自民党の幹事長だった小沢一郎氏が、それまで政見記者会見には記者クラブに属している記者しか出席できないことに疑問を呈し、記者クラブに所属していない雑誌記者を含めたその他の記者たちをオープンに参加させた。

それが原因で、その後、既得権を侵害されたと感じた新聞社やテレビメディアが一斉に小沢氏を攻撃するようになった。それは実に30年近くにも渡って延々と続けられた。

2010年、ありもしない小沢一郎氏への『政治資金規正法違反(虚偽記載)容疑』での一連の異常とも思える報道があったのが、まさにそのええ例やと思う。

新聞やテレビで報道されたことにより感化されたと思われる市民団体(実際は一人)とやらが、検察による小沢氏への不起訴決定に対する不服の申し立てを検察審査会に提起し、東京第5検察審査会がそれに同調して、実に2年以上にも渡る長い裁判が行われた。

結果、小沢一郎氏には無罪判決が下されている。そもそも、その嫌疑自体が無理矢理こじつけられた冤罪事件やったさかい、当然と言えば当然ではあるがな。

その経緯については、『第429回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■報道の危機……その8 失われつつある報道の自由は取り戻せるのか?』(注1.巻末参考ページ参照)で詳しく話したので、ここでは省くが、今にして思えば、これが新聞凋落に向かう最大の要因やったのやないかと考えている。

ちなみに、この1991年頃が新聞にとっての最盛期で、その後、徐々に衰退への道を辿っているさかいな。この一件で離れた新聞読者も少なからず、いたはずや。

その後も記者クラブに対する見直しの動きは続いた。

1992年、外務省の「霞クラブ」が外国人記者を正式会員として受け入れ、1993年に日本新聞協会は、外国報道機関の記者について「原則として正会員の資格でクラブへの加入を認めるべきである」との見解を発表した。

1996年、鎌倉市は記者クラブに属さない報道機関にも記者室と記者会見を開放した。

2001年、長野県が脱・記者クラブ宣言を行い特権廃止の動きは県レベルまで拡大した。

2004年にはEUからの外圧によって、外国人記者の「記者証」制度が実質的に認められた。しかし、各記者クラブは抵抗を続けた。

それでも記者会見のオープン化は徐々に行われるようになった。

そして、自民党から民主党への政権交代が起きた2009年以降に、それがより顕著になる。

自民党自体も時代の流れを読み、2009年10月14日、谷垣自由民主党総裁による定例記者会見を、自民党の記者クラブである平河クラブ以外の日本国内外のあらゆるメディアやフリーランスの記者やカメラマンにも開放するようになった。

ただし、最初の質問権は平河クラブのみで、平河クラブの質問が一通りした後に、平河クラブ加盟社以外のフリーランスの記者も含めて質問出来る様になっている。

2010年3月26日、内閣総理大臣の鳩山由紀夫は、記者クラブに属さない記者を記者会見に参加させた。

これに関して諸外国での評価は高く、国際NGO「国境なき記者団」(本部・パリ)が毎年発表している「報道の自由度ランキング」で、日本は2010年には11位になっている。

しかし、2012年12月の総選挙で自民党が圧勝し、第2次安倍内閣が発足してから急速に事態が変わった。

自民党の復権と同時に「記者クラブ」が息を吹き返したのである。現在は、また以前のようになりつつあるという。

その結果、年々「報道の自由度ランキング」の順位を下げ、2014年59位、2015年は61位、そして、今年の2016年には、ついに72位まで低下している。

「記者クラブ」という制度を守るために民主党を叩き、小沢一郎氏を攻撃し、人気を下げることには成功したが、その反面、新聞やテレビの衰退は、より深刻さを増したという事実に多くのマスメディア関係者たちは、まだ気がついていない。

「報道の自由度ランキング」の下降に合わせるかのように、新聞の発行部数も、急激に減っているのが、その何よりの証拠であるにも関わらず。

ここまで「記者クラブ」について否定的な意見ばかり言うてきたが、百害あって一利なしなのかと言えば、そうとばかりも言えない。

「記者クラブ」にも利点と呼べるものがある。

それには、

1.情報発表、開示に消極的な公的機関に記者クラブが記者会見を求めて実現させてきたという歴史がある。「記者クラブ」がなければ、国家機関は今よりも閉鎖的だったと思われる。

2.公権力や政治家の取材拒否に対して個人ではなく団体として当たれ、情報公開の推進に寄与している。事実、政治家などが不祥事を起こした際、「記者クラブ」で会見されることが多いというのが、それや。

3.公的機関に密着取材することが容易く、場合によれば情報源である国家機関からのレクチャーや資料配布の窓口となり、ニュース・メディアにとっては効率的な情報システムになっている。

4.記者クラブ主催の記者会見は、クラブのペースで進められるため無駄な競争が省け、取材活動がスムーズにできる。

5.公的組織と国民をつなぐ「コミュニケーションの回路」「情報ネットワーク」「国家の情報をプールするダム」としての役割を担っており、膨大な情報を蓄積、整理、報道している。

記者クラブを廃止すれば、日本の情報システムが麻痺するだろうと言われている。

6.記者クラブが廃止された場合、情報を出し渋る権力側を牽制する存在が失われ、国民の知る権利が損なわれる恐れがある。

その良い例が、記者クラブがない労働基準監督署では情報発信がほとんどないことやという。

但し、これについては労働基準監督署側が記者クラブの設置を拒んでいるのではなく、メディア側が設置しようとしないからやということやがな。

7.誘拐などの報道規制が容易にでき、抜け駆け報道を少なくすることができる。事実、日本においての誘拐事件の報道規制は厳重に守られている。

といったことなどが挙げられる。

もっとも、これらは記者クラブ側の主張で、情報の受け手である国民にとっての利点となり得るのかというのは、また別の問題やと思うがな。

弊害については、

1.加盟報道機関が非加盟の組織やジャーナリストを排除している。

2.記者クラブは閉鎖性と排他性が強く、加盟報道機関にとっての利点は、そのまま、加盟したくてもできないメディアやジャーナリストには不当な差別と受け止められている。

3.常駐、常時取材が前提となっており、これが可能な報道機関は限られる。

4.記者クラブに頼るうちに、独自取材能力が低下、阻害してしまっている。

5.政治家や国家機関などの取材対象と癒着して、「番記者」「ご注進」などといった連中が取材対象側にとって有利になるような動き、報道をするケースもあるという。

6.情報源に近すぎるために、公的機関の動向監視というニュース・メディアの機能が失われる可能性が指摘されている。

7.メディアが政府の政策を代弁し、政府の広報になっている。

8.警察および検察が自らの捜査に有利な方向に情報操作を記者クラブを通じてリークし、メディア側も調査報道に消極的なため、冤罪を生みやすくなっていると言われている。 

松本サリン事件、志布志事件、香川・坂出3人殺害事件、足利事件などの冤罪事件が、そのええ例やと思う。さらに言えば、小沢一郎氏への『政治資金規正法違反(虚偽記載)容疑』報道も、その範疇に入る。

9.役人の論理が知らず知らずのうちに入り込み『統治される側からの発想』がしにくくなる。勢い、国家権力側に立った報道になりやすい。

10.検察側は自己に不都合と考えられる報道をおこなった加盟報道機関に対しては検察関連施設への「出入り禁止」措置を取ることがある。

西松建設事件が、そのええ例で、一部の加盟報道機関が西松建設から献金を受け取った政治家の1人である二階俊博氏についての記事を掲載したことに対し、取材拒否および東京地方検察庁へ3週間の出入り禁止措置を取っているのが、それや。

ちなみに、この一件以後、加盟報道機関は検察および自民党に有利な報道を行うようになったと言われている。また、検察は記者クラブに加盟していない報道機関による取材を拒否している。

11.記者クラブは官僚機構と一体となり、その意向を無批判に伝え、国民をコントロールする役割を担ってきた。

それにより記者クラブと権力との馴れ合いが生まれ、その最大の被害者は日本の民主主義と日本国民であると、多数の外国メディアから指摘されている。

12.記者クラブに加盟している記者は、別会社の記者同士であるにもかかわらず、取材メモを見せ合う「メモ合わせ」を行っている。これにより、加盟新聞各紙には、ほぼ同一の記事が掲載されている。

13.政権側に都合の悪い事案は意図的に黙殺して報道しない体質がある。

その端的な例として、2011年から2012年にかけて首都圏で多発した原子力発電所反対デモのうちいくつかは国会議事堂前、首相官邸前で行われ、参加者が数万人に達したこともあったが、議事堂や官邸に常駐していた記者クラブの記者たちは横並びに黙殺して報道しなかった。

その後、インターネット上での批判や週刊誌報道などで騒ぎが大きくなったために体裁程度には報道しているがな。

14.政権側に都合の悪い事案に対しては、それを擁護、補佐する体質すらある。

2000年6月25日、首相官邸敷地内にある記者クラブ「内閣記者会」で『明日の記者会見についての私見』と題するメモが落ちているのが見つかったことがあった。

このメモは2000年5月26日に行われた当時の森喜朗首相による「神の国発言」の釈明会見で、記者側の追及をかわす方策を記した首相宛ての「指南書と見られたものや。

この問題をめぐっては主要週刊誌が、その指南書を書いたメディア(NHK)を実名で取り上げたにも関わらず内閣記者会側は、この問題の真相究明には消極的だったため、新聞やテレビでは体裁程度の報道しかされなかった。

そのため多くの国民は、未だにこの事実を知らない。

15.記者クラブ制度には憲法問題も絡んでいる。

記者クラブ制度は憲法で保障されているとされる「国民の知る権利」を確保するために必要だとする意見がある。

一方、政府や公共機関が記者クラブという特定の組織のみに情報を提供する事こそが「国民の知る権利」を侵害するもの(憲法に違反した行為)だとする意見がある。

そのためこの問題は単に記者クラブ制度の良し悪しに止まらず、憲法に関わる問題でもあるとされている。

記者クラブに加盟していないために取材が出来ない個人や組織が、権利侵害だとして国や公共機関を憲法違反で訴える可能性もあると。

などなど、ここに書き連ねていない項目以外にも多くの問題点が取り沙汰されている。

利点と弊害を比べた場合、どう贔屓目に見ても弊害の方が多いように見受けられる。

しかも、それは記者クラブ制度を守ろうとしているメディア側にとって致命的とも言えるものやないかという気がする。

記者クラブ制度が存在しているために新聞は読者からの信頼を失って部数減に喘ぎ、テレビ各局は視聴率、スポンサー確保に汲々としているのが実情やと思う。

記者クラブ制度という権益を守ろうとするあまり、肝心の読者、視聴者を欺く結果になっていることにメディア側が気づかないようでは救いはない。

このままでは記者クラブに所属している新聞、テレビの衰退は止めようがない。

当たり前のことやが、新聞、テレビを必要としている人たちのことが眼中にないのやさかいな。

ただ、それだけで済むのなら、まだマシやが、現時点でも戦時中の「大本営発表」もどきの報道だと揶揄されているのに、外国には武力で対抗するのもやむなしという論調を掲げている新聞もある。

太平洋戦争以前の状況を知る人からすれば、それは戦争前夜の日本を見ているようやと言う。まったく同じ道を歩いていると。

まだ、今なら間に合う。

新聞各社は記者クラブのようなものに依存して、国家権力に都合の良い記事ばかりを掲載するのやなく、正しい裏のない情報を国民に知らせて、本来あるべき新聞の使命に目覚めて欲しいと思う。

それが真の意味で新聞復活に繋がると考えるさかいな。



参考ページ

注1.第429回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■報道の危機……その8 失われつつある報道の自由は取り戻せるのか?
http://melma.com/backnumber_174785_6411434/


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