メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー

第441回 ゲンさんの新聞業界裏話


発行日 2016.11.18


■新聞販売店がブラック企業として世間で騒がれない理由とは?


ある新聞販売店に勤めておられる読者の方から、


ゲンさん、ハカセさん、いつも楽しくメルマガを読ませてもらっています。

以前から何度も相談に乗ってもらっていましたが、本日、専業の仕事を辞めようと決心しました。

今世間では、いろいろなブラック企業が話題になっていますが、僕は新聞販売店が一番のブラック企業だと思っています。

でもなぜか世間では、まったくといって良いほど騒がれることはありません。

なぜなのでしょうか?

新聞やテレビで報じられないのは新聞社の圧力があるから仕方ないとして、ネットでも、ほとんど話題に上るようなこともありません。

それが、僕には理解できません。世間の人たちが実情を知らないからでしょうか?

僕は辞めるから良いのですが、このままでは業界に残った人たちが気の毒でなりません。

そこで、ゲンさん、ハカセさんにお願いなのですが、新聞販売店で働く僕ら専業の実態を世間に公表してくれませんか?

よろしくお願いします。


というメールが寄せられた。

今までにも過酷な専業の仕事に耐え切れず辞めたいと言われた方は多い。実際、多くの人たちが辞めておられる。

専業の人たちほど過酷な環境の中で仕事をしているケースは、全職種を見渡しても少ないやろうと思う。

しかも、それは数十年間に渡り、全国2万店近くにおよぶ、ほぼすべての新聞販売店で延々と受け継がれてきた構造的な問題でもある。

そもそもブラック企業とは何か。

職場環境が酷い企業、法令に違反している企業という漠然とした定義は誰でも知っているが、どこまでをブラック企業と呼ぶのかという点については曖昧で、はっきりとはしていない。

一般的には、「従業員の意に反した長時間労働が強いられている」、「大量採用、大量離職が繰り返されている」、「従業員を使い捨てにする」、

「休日が極端に少ない」、「残業代が支給されない」、「給料が少なく昇給しない、したとしても僅か」、「パワハラやセクハラが常態化している」、「同族経営で風通しが悪い」といった項目が当て嵌まる職場だとされている。

残念ながら、上記の項目に新聞販売店の殆どが該当する。


1.長時間労働が強いられている。

新聞業界には「専業は二度寝る」というのがある。

これは、1934年に出版されたジェームズ・M・ケインの小説に「郵便配達は二度ベルを鳴らす」というのがあり、映画や演劇で何度も上映、上演されて有名になった作品の題名を捩(もじ)った言い回しやが、如何に専業が長時間労働を強いられているかを端的に表すフレーズになっている。

大半の人は、一日に一度だけ睡眠を取って身体のバランスを取っている。それを仕方なく二度に渡り睡眠を取らざるを得ない状況というのは異常なことで、そんな職種はワシの知る限り、新聞業界の他にはない。

ここで平均的な専業の一日の仕事ぶりについて話す。

専業は、夜中の1時〜2時頃には起きて、「紙受け」という新聞社の印刷工場から運ばれる新聞を受け取る。

中には、専業が待ち受けていないことを理由に店の前に下ろしたまま走り去るトラックもあるが、たいていの専業は配達される少し前には待機していて、新聞を直接受け取る。また販売店経営者も、そのようにしろと強制することが多い。

その後、当日に必要な部数、および予備分の新聞の結束を解き、残りは倉庫などにしまう。これは「押し紙」を含む余剰紙で、なるべく人目に触れさせないための必要な処置だと言われている。

それから配達された真新しい新聞の中へ、前日パートの主婦たちが折込広告丁合機でセットした折り込みチラシを挟み込む作業を行う。

これは自身の配達分は当然として、アルバイトの配達員の分まで用意するというのが一般的や。この作業に大体、小一時間ほどかかる。

その準備が終われば自身の受け持ち区域の配達に出発する。

つい最近、5、6年ほど前くらいまでは専業一人当たりの受け持ち配達部数は300部前後と言われ2時間程度で終わっていた。

しかし、現在はアルバイト配達員の減少、および人件費削減のためもあり、受け持ち配達部数は、その頃の倍近くになっている販売店が多いと聞く。部数にして4、500部は普通になっていると。

それにかかる時間が約3時間〜4時間で、午前6時頃までに終わらせなければならない。ここまでで、約5時間くらいは悠にかかる。

朝刊の配達が終わって朝食を摂った後、一度目の睡眠が取れる。

多くて4、5時間、少ないと3時間程度しか眠れないというのもザラにあると聞く。一週間に一度の早朝電話当番の日になると、2時間程度仮眠できたら御の字やという。

その後、店内外の掃除やバイクのガソリン有無の確認、修理点検、順路帳の変更や書き直し、住宅詳細地図のコピーと色分け作業、新規移転者を確認するための空き家チェックなど様々な雑務仕事に追われる。

当然のように店長や社長といった上司の使い走りも、その中に含まれる。

その間、夕刊の配達のある販売店では、その配達をする。夕刊の配達部数は販売店毎、専業個人でも違うが、朝刊時のようにはアルバイトの配達人がいないため、概ね朝刊時の倍近い部数を配り、3時間程度で済ませるのが一般的やと言われている。

それが済むと、「止め押し」と呼ばれている契約切れ間近の人に継続依頼に回ったり、「新勧」と呼ばれる新規の購読契約を確保するために夜の8時くらいまで勧誘活動をするよう強制されるケースが多い。

ここまでで、大体、13時間労働ということになり、新聞販売店としては普通の部類になる。

これに、一週間に一度程度の割合で「当番」と呼ばれる早朝の電話番に3時間程度余分にかかる。

あるいは、「止め押し」や「新勧」などの勧誘をする際、帰宅の遅い顧客がいることも珍しくなく、その帰宅時間に合わせる必要性から、もっと遅くなることもある。

また、毎月、25日から集金業務が始まり、翌月の5日くらいまで約10日間ほど続く。その間、睡眠時間は極端に少なくなり、休みさえ、まともに取れないのが普通や。

集金を毎月25日から始めるというのは多くの会社の給料日やからや。それから10日後までの、なるべく金のあるうちに集金しようということや。

今日び手集金をしている業種は新聞販売店くらいなもので、たいていの支払いは銀行引き落としやクレジットカード払い、コンビニ払いになっている。

もちろん新聞代金の支払いも、それらでの支払いも可能やが、殆どの販売店は未だに手集金に固執するあまり、顧客にその選択肢すら示していないのが普通や。

それには集金することで顧客と顔を会わせ繋がることができ「止め押し」などの継続依頼契約が、やりやすくなると考えとるからや。

それ以外に理由はない。

この手集金というのが結構難しく、手間暇がかかる。

集金時間は、通常、夕刊配達後の午後4時から夜の9時頃までというのが多いが、その時、いつ行っても在宅してて快く支払ってくれる客もおれば、なかなか会えない客や、何かと理由をつけて支払いを渋る客などいろいろおる。

毎月のことやから、そういった客でも、いつ頃、どのタイミングで行けばええのか自然に分かる場合が多い。

たいていは、午後10時から12時までの深夜に集金のための訪問を約束することが多い。

通常、午後10時から午前2時頃までは2度目の就寝時間なのやが、この時期、それはあきらめるしかない。

さらに言えば、新聞の集金というのは、それほど大事やと考えとる人は少ないから、なかなか約束の時間に在宅しとらんし、会えんということも多い。

ましてや、その期間に土日が絡むとよけい難しくなる。給料日の後の土日ともなると尚更や。

特に独身者は、金があると遊びたくなるから、自宅で新聞の集金のために専業員を待つというようなことは殆どないさかいな。

この集金期間中の1日の睡眠時間は、平均して4、5時間くらいしかないという。

長時間労働が強いられる典型的な職種と言うて差し支えない。


2.大量採用、大量離職が繰り返されている。

『配達さんの求人を出しても応募すら無い状態です』という話は最近、特によく耳にするようになった。

もともと、新聞配達員のなり手はあっても長続きするケースが少なく、業界として慢性的な人手不足ではあった。

今までは、新聞紙面の求人広告や就職情報雑誌、ネットの求人サイト、各販売店毎の折り込みチラシでの求人広告を入れていることで、何とか配達員の確保ができていた。

それが現在は、多くの新聞販売店が過去に類を見ないほどの求人難に喘いでいるという。

現在、業界全体で年々配達員が減少している状態が続いていて、ここ10年ほどの間に9万6千人余りも減っているという日本新聞協会販売委員会の調査データがある。

理由は、新聞業界は少子高齢化による人口の減少、長引く不景気、若者の新聞離れ傾向などによって新聞の部数が急激に落ち込んだため配達員そのものの求人が減ってきたことと、アルバイトの多様性が考えられる。

特にアルバイトは以前から主流やったコンビニや外食産業、引っ越し業、服飾産業、家電量販店に加え、現在は東京オリンピック特需などによる人手不足気味の建設工事の求人募集が大幅に急増していることが大きい。

働き口が多ければ、その分働き手は分散される。加えて、新聞そのものが若者から嫌われているというのも大きな要素やと思う。ネット上における新聞のイメージは恐ろしく悪いさかいな。

ワシらの若い頃、アルバイトと言えば新聞配達か牛乳配達が定番やったが、今の若者には選択肢の一つですらないようや。あっても最下位に近い。

求人の応募があれば、ほぼ無条件に採用するが、あまりの過酷さに、すぐ辞める者が多い。まさに、大量採用、大量離職が繰り返されている典型的な職種ということになる。


3.従業員を使い捨てにする。

すべての新聞販売店で、そうやとは断言できん。その販売店の経営者の考え方次第で大きく違うさかいな。

ここで『従業員を使い捨てにする』典型的な新聞販売店について話す。


『背負(しょ)い紙のある販売店』

新聞社から販売店に押し紙があるように、販売店から従業員に「背負い紙」を強要するケースがある。

専業には勧誘のノルマがある。そのノルマが過酷な販売店も多い。それに加えて「止め押し」という担当地域の継続客の契約更新を100%要求される。

そのノルマがクリアーできたら問題はないが、なかなかそれが難しく、できん者の方が多い。

きつい販売店やと、そのノルマが果たされへんかったら、かなり厳しく叱責されるという。

その叱責を逃れる目的で「背負い紙」というのをする。また、それを強要する販売店もあるという。

つまり、「背負い紙」とはノルマの不足分の新聞を身銭切って買い取ることを意味する言葉なわけや。

販売店の多くは「押し紙」により、新聞本社から半強制的に部数を押しつけられ買わされることがあるが、販売店は販売店で専業に、「背負い紙」という形で新聞を買わすような所もある。

もちろん、表面的には専業員の希望ということになっているケースが大半を占めている。あるいは、別名義での購読というのもある。

当然やが、こんなことをしていたら儲かるどころの騒ぎやなくなる。毎月、赤字で謝金に喘ぎ苦しむことになる。

さすがに今の時代に、こんなことをする販売店は少なくなってはいるが、皆無というわけやない。

「背負い紙」のある販売店は従業員を使い捨てにするブラック企業と考えて間違いない。


『切り取り行為のある販売店』

切り取り行為とは、殆どの新聞販売店では講読料の集金期日が決まっていて、それまでに回収出来なかった分を専業員である区域担当者が給料の中から強制的に天引きにより、立て替え払いをするシステムのことを指す。

集金に使う証券は2枚綴りになっていて、一枚が店に提出する控え、もう一枚が顧客に渡す領収証になる。

本来、店に提出する控えと顧客に渡す領収証は顧客の目の前で購読料を支払って貰った時に切り離すことになっとるのやが、それをせず、顧客への領収証だけ切り離したものを集金担当者が貰うことを文字どおり「切り離し」と言う。

給料の精算時に、その分の額を予め給料から天引きという形で差し引いている場合が「切り取り行為」ということになる。

これは販売店側が、集金できないのは集金担当者の責任だという勝手な論理のもとに一方的に行われていることや。

また、どう転んでも販売店のマイナスにはしたくないという経営者が、集金担当者に負担を強いるために、そういったシステムを導入しているからでもある。

それに対して、「切り取り行為」が日常化している販売店の従業員たちは、この業界は、こんなものかと思って異を唱えないケースが殆どやという。

ちなみに「切り取り行為」の後で、集金できなかった顧客から集金することができた場合、その集金担当者のものになる。

それだから良いだろうというのが、そういった「切り取り行為」をしている販売店経営者の理屈や。

しかし、顧客の急な移転や支払い拒否をされた場合、貰えなければ集金担当者が泣くことになる。集金担当者にとってはリスクだけしかない過酷なシステムなわけや。

昔は、「切り取り行為」をやっている販売店は多かったが、今は少ない。もっとも、あんたの相談にもあるとおり、皆無になったというわけやないがな。

早い話が、「切り取り行為」とは強制的な顧客の新聞代の立て替え払いということになる。

立て替えは、集金人が販売店に対する債権の譲渡代金の支払いを意味する。これは労働の対価として支払う賃金とは無関係なものや。

したがって、賃金とは関係のないものを給料から強制的に差し引くのは、『労働基準法第24条第1項「賃金全額払いの原則」』に抵触し明らかに違法な行為ということになる。

これについては、例え従業員の承諾を得ていたとしても違法行為が成立する。もっとも、法律以前に、こんなことが平然とできる販売店が、まともとは思えんがな。


『保険の入っていない販売店』

殆どの販売店では、そういうことはまずないと思うが、中には、雇用保険や労災保険、自賠責保険などに加入してない店も存在するという。

また、それらの保険に加入していても、それを使うことを極端に嫌う販売店経営者がいとると。

この上記に該当するような新聞販売店は、従業員を食い物にしているか、使い捨てとしか考えてないと考えて、まず間違いない。

間違うても、こんな販売店では仕事をせん方がええ。単なるトラブルに巻き込まれるくらいでは済まんかも知れんさかいな。

こういう所は、面接時にすばりそれと聞けば、たいてい露骨に嫌な顔をするからすぐ分かる。こういうことをしてない販売店やと「保険があるのは当たり前のことですよ」と言うはずやしな。


4.休日が極端に少ない。

労働基準法では、使用者は、少なくとも毎週1日の休日、もしくは4週間を通じて4日以上の休日を労働者に与えなあかんことになっとる。

ただ、慢性的な人手不足により、そうしたくてもできない新聞販売店があるのも事実や。

新聞販売店の最大の使命は、新聞を毎日、顧客に滞りなく配達することにあり、人手不足を理由に、「今日は新聞を配達できません」とは言えんという不文律のようなものがあるさかい、休日を与えたくても与えられんケースが起きてくる。

実際、大地震や大洪水、大雨、大雪といった自然災害が発生した時でさえ、多くの新聞販売店は「新聞の配達をあきらめる」というような決定や判断をすることなど殆どないしな。

文字通り、配達に命を賭けているわけや。そんな状況下で『毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日』を必ず与えてくれとは言いにくいわな。

勢い、休日が極端に少ないという状況に陥っている販売店も少なくない。

もっとも、人員に余裕があり、交代で配達することにより、『毎週1日の休日』が与えられているという新聞販売店の方が業界では多いがな。

ただ、その場合でも怪しい部分がある。

新聞販売店の休みとは、朝刊配達後、翌日の出勤時間までのことを指す。しかし、これやと厳密には、まるまる1日24時間の休日を与えたとは言い難い。微妙な線や。

午前6時に終わった場合、翌日の出勤時間とされる午前2時までの時間は、正確には20時間しかない。

ただ、これについては、丸1日の休みではないが、休みを与えていると評価される可能性が高い。

労働基準法には変形労働時間制というのがある。

変形労働時間制とは、労使協定または就業規則等において定めることにより、一定期間を平均し、1週間当たりの労働時間が法定の労働時間を超えない範囲内において、特定の日又は週に法定労働時間を超えて労働させることができるというものや。

つまり、この考え方でいけば、ある時は時間外が多くても全体として労働時間が少なければ考慮しようというものや。1週間全体の労働時間で考えようと。

また、現在ではフレックスタイム制というのが一般の企業でも定着しつつあるが、不定時間労働の多い新聞販売店では、昔からフレックスタイム制で仕事をしている業種とも言える。

このフレックスタイム制についても労働基準法の規定がある。

就業規則等により制度を導入することを定めた上で、労使協定により、一定期間(1ヶ月以内)を平均し1週間当たりの労働時間が法定の労働時間を超えない範囲内において、その期間における総労働時間を定めた場合に、その範囲内で始業・終業時刻・労働者がそれぞれ自主的に決定することができるとされている。

結論として、交代で例え実質20時間程度の休みであっても、法律上は休日を与えられていると判断される可能性が高いということや。

ただ、その内容次第では休日とは認められないケースも当然のことながらあるさかい、『微妙な線や』と言うたわけや。

この『休日が極端に少ない』に関しては、販売店では、どうにもならんケースもあるから、一概に、これを以てブラック企業の要因にするのもどうかとは思うがな。

もっとも、販売店の経営者が、それを良いことに改善しよとしない、あるいは休みのないのが当たり前という風潮を利用して専業を酷使しているような場合は、やはりブラック企業と言われても反論はできんやろうがな。


5.残業代が支給されない。

これは、最早、新聞販売店の特質と言うてええやろうと思う。専業員で販売店から残業代を支払って貰っているという話は殆ど聞かんさかいな。

新聞販売店では、請負業務と正規の労働が混在している。

新聞配達とそれに伴う付属業務は正規の労働とされ、集金や勧誘に対する報酬は請負業務とされてきた。

そのため、集金や勧誘に、いくら時間がかかろうと、時間外手当などは支払われず、規定の報酬以外は一切手にすることができない仕組みが当然のように出来上がっている。

しかし、これは明らかな法律違反やと考えられる。そもそも正規の仕事と請負仕事が混在する職業などあり得ない。

正規の仕事に従事する者は労働者やし、請負仕事は個人事業者のするものや。当然のように法律も両者を厳格に分けている。

労災保険などが、その良い例で、正規の仕事に従事する労働者のすべてが加入を義務付けられとるが、請負仕事の個人事業者には、加入そのものに制限が加えられ容易には入れないことになっている。

つまり、正規の仕事に従事する労働者である専業員が、請負仕事とされている集金時や勧誘時に事故に遭って怪我をした場合、問題なく労災認定が下りる。

集金や勧誘が請負業務であれば断る自由かせなかったらあかんが、それを認める販売店は、まずない。

その点からしても集金時や勧誘時は、れっきとした正規の仕事と位置づけられとるわけや。

労働基準監督官では、これを労働とみなすのは、ほぼ間違いないものと思う。

そうであれば、集金時や勧誘時にかかった時間は時間外労働ということになり、その分の残業代が支払われなあかんはずやが、現実は、そうはなっていない。

販売店側にとって労働でも請負でもないグレーゾーンにすることで、双方の良いとこ取りをしているわけやが、それは法律的には通用しない。

単に、昔からの風習で、そうなっているにすぎない。

もっとも、そうなると、実際には集金にも行かず、勧誘もしていないのに「集金に行ったが顧客と会えなかった」、「勧誘はしたけどダメでした」と言うだけで残業代が得られるということになる。

それでは、物理的に集金や勧誘で得られる利益より、残業代の方が高くなる可能性が高いため販売店が持たなくなるという理屈も分かるさかい、それが正しいのか、どうかの判断は難しいところやがな。

ただ、そのために勧誘の場合は、新聞拡張団がいて、集金には専門の請負人がいるわけや。その人間に任せれば、専業にそんな負担を強いる必要はなくなる。

しかし、昨今の厳しい経営状況からすると、拡張員に頼ったり、専門の集金請負人に任せたりするより、専業にやらせた方が安上がりになるということで、すべてをやらせている販売店が多いのやろうな。

世間一般で『残業代が支給されない』というのは、完全にブラック企業ということになるのやろうが、事、新聞販売店業界の場合は、昔から延々と続いている慣習ということで済まされるケースが多い。

もちろん、それがええか悪いかと問われると、悪いとしか答えようがないがな。

ただ、その一時を以て、ブラック企業と言うてしまえば、ほぼすべての新聞販売店が、そうなる。難しいところやな。


6.給料が少なく昇給しない、したとしても僅かしかない。

給料の善し悪しの感覚には個人差があると思う。昇給の度合いについても同じことが言える。現在の給料や昇給具合に満足している者もいれば不満に思っている者もいるといった具合にな。

新聞販売店業界で専業が手にする月収は、同年齢で比較した場合、月20万円から月35万円ほどと、かなり幅が広い。

もちろんそれには、新聞販売店経営者の姿勢、個人の能力、経験、地域での相場といった様々なファクターが加味されてのことやがな。

ワシ個人としては、仕事の過酷さからいって、貰える給料は全職種のうちでも低い方やないかと思う。

もっとも、それやからブラック企業とまで言えるのかとなると疑問ではあるがな。


7.パワハラやセクハラが常態化している。

これについても、それぞれの販売店経営者の姿勢やそこで働く人間の性質、それと受け取る個人差によって違うと思う。

パワハラやセクハラが常態化していると感じる人もいれば、そうでないという人もいるといった具合に。

そして、『パワハラやセクハラ』をするのは人で、個人の資質や性格に負うところが多い。そういうことをする人間は、どんな職業に就いていてもするやろうと思う。

ただ、『パワハラやセクハラ』をしていること、および、そんな人間を見逃し、放置している販売店がブラック企業やと言われれば、反論はできんがな。


8.同族経営で風通しが悪い。

一般的に新聞販売店は零細企業、中小企業が多いということもあり、夫婦、親子といった同族経営の店が多いのは確かや。

そんな販売店に勤める、赤の他人である従業員からすれば、『風通しが悪い』が悪いと感じることが多いかも知れんな。

実際、同族経営の販売店では身内の人間を重用する傾向が強いさかいな。

ただ、これについても、その経営者一族の性質によって大きく違うから、それだけを以て、ブラック企業と呼ぶのは早計やないかとは思う。

もちろん、人への信頼度という点では、やはり家族、同族の方が高いやろうから、待遇面での有利、不利というのは少なからず起き、家族、同族以外の従業員たちからの不満が生じることは十分考えられる。

ブラック企業になる可能性はあるが、必ずしも絶対にそうなるとまでは言えんのやないかな。


以上のようなことから新聞販売店にはブラック企業、または、そうなる要素がある点について否定はせんが、それでもすべてが、そうやとは考えていない。

従業員に優しい販売店はいくらでもあるさかいな。

ブラック企業か、どうかの判断は、あくまでもケース・バイ・ケースやと思う。

『今世間では、いろいろなブラック企業が話題になっていますが、僕は新聞販売店が一番のブラック企業だと思っています』というのは、その人自身の主観で、その人がそう感じておられるのなら、それはそれで仕方ない。

『でもなぜか世間では、まったくといって良いほど騒がれることはありません』
という点については、メールを寄せて来られた読者の方が『新聞やテレビで報じられないのは新聞社の圧力があるから』と言っておられたが、それはある意味、正しい。当たっている。

どの新聞紙面を見て読んでも、さまざまな業界に蔓延るブラック企業の実態は結構鋭い論調で指摘して暴いているが、事、身内である新聞業界に関する類似の記事は、まったくと言うてええほどない。

当然やが、新聞社は系列の新聞販売店の実態くらいは知っている。それにも関わらず意図的に、そうしているということになる。

まあ昔から、「悪質な勧誘実態」、「押し紙問題」、「記者クラブ問題」といった新聞業界3大タブーについて新聞紙面に掲載されることなど殆どなかったさかい、今更「新聞販売店の雇用問題」の実態が新聞紙面で報じられていないと言われても「ああ、さよか」としか言いようがないがな。

新聞業界は、いつまで経っても身内の汚点を晒すつもりにはなれんということなのやろうと思う。できれば何もないことにしてしまいたいと。

他者の不祥事を徹底的に暴いておきながら、それでは、とても公平な報道をしているとは言えんわな。新聞の正当性が疑われても仕方がない。

現在、新聞業界全体が一般読者から信用を失い、著しい部数減に陥っている要因の一つに、それがあるものと考えられる。

実際にも、そう批判するコメントがネット上に多い。

他者に対して厳しく責めるのなら、身内に対しても、同じように厳しくあるべきというのが正論のはずやが、残念ながら、そうなっていない。

ワシらは、サイトを開設した時、およびメルマガを始めた時から12年以上に渡って、このことをずっと訴え続けてきたが、未だに、新聞社の姿勢は変わっていない。また変わる素振りすら見せない。

その結果、どういった結末が待っているかは自明の理やと言うのにな。現在は、その結末に向かって、ひた走っている状況や。最早、止めようがない。

『ネットでも、ほとんど話題に上るようなこともありません』というのは、新聞社と新聞販売店は一体と考えている一般の人が多いために、そうなのやろうと思う。

正しくは、新聞社は新聞の卸元、問屋のようなもので、新聞販売店は、その商品である新聞を売って配達しているだけの小売店にすぎないんやけどな。

ただ、それと知られていないため、「坊主憎くけりゃ、袈裟まで憎い」ということわざがあるように、新聞に対して反感を持っている人の多いネット上では、新聞販売店も同じような見方しかされていないのやと思う。

そのため、新聞販売店を擁護しようという人が極端に少ない。それが『ネットでも、ほとんど話題に上るようなこともありません』ということになっているのやと。

まさに『世間の人たちが実情を知らないからでしょうか?』の答えが、そこにあるわけや。

いずれにせよ、新聞紙面やテレビで報じない、ネットでも話題にならないということであれば、専業の方にとっては酷なようやが、世間で騒がれないブラック企業もあると認識するしかないやろうな。


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