メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー

第442回 ゲンさんの新聞業界裏話


発行日 2016.11.25


■新聞販売店の副業 その1 基本的な考え方と心得について


新聞社と新聞販売店が交わしている「業務委託契約」には「副業禁止」の条項が含まれている場合が多い。

そして、過去それは厳格に守られてきた。

新聞社に発覚すれば「改廃(強制廃業)」もあり得る。

実際、10年ほど前に新聞販売店経営者の自宅で「パソコン教室」をしていることを理由に「業務委託契約」の打ち切りを通告し、廃業に追い込んだ新聞社もあったと聞くさかいな。

そういうこともあって、殆どの新聞販売店経営者は副業には手を出さず、考えたとしても二の足を踏むケースが多かった。

しかし、ここにきて、購読者の減少や折り込みチラシの激減などにより、多くの新聞販売店の経営状況が厳しくなったことで、副業を容認する姿勢を示す新聞社が増えて始めている。

中には新聞社自身が積極的に副業を主導するケースさえある。

例えば、A新聞では今年の春先、新聞販売店の戸別配達網を活用した2つの新規ビジネスが発表されている。

一つは4月8日に発表された、東京都内9区、160の企業へ新鮮野菜を配達する健康支援サービス「OFFICE DE YASAI」との業務提携。

もう一つは4月26日に発表された、マンション管理業務を行う、アクシスモーション株式会社との資本業務提携である。

いずれもベンチャー企業との提携で、新聞購読料、折り込みチラシに次ぐ第3の収入源を模索する取り組みとして期待されているという。

またY新聞社でも物流事業や小売、介護や老人サービスなどへ食い込むことを推奨、支援し、実際にいくつかの企業と業務提携している系列の販売店もあると聞く。

現在、新聞販売店の主な副業としては、上記の他にも、食料品の産地直販取り次ぎサービス、保険代理店業務、宅配便およびメール便配達業務、ウォーターサーバー販売、介護サービス、飲食店、宅食、代理買い出しサービス、エステサロン、クリーニング取り次ぎ業務、コインランドリー、古紙回収業などがあると言われている。

また、先に改廃理由として挙げた「パソコン教室」なども今は容認している新聞社もあり、それに類似した「そろばん教室」、「ダンス教室」、「カラオケ教室」というのもアリやと思う。

その他にも、探せばいろいろありそうやが、その成否の状況、今後の展望などについてはシリーズ化して個別に取り上げたいと考えている。

ある新聞社のトップが「生き残るのは販売店の収入源を多角化した新聞社である」と言うてたが、今や新聞を売るだけではやっていけないくらい逼迫した状態にあるということを新聞社自身が自覚した上での発言なのやろうと思う。

ただ、副業したからといって稼げる保証は、どこにもない。闇雲に手を出せば手痛いしっぺ返しを喰らう可能性が高い。甘くはない。

何事も、やるからには周到な準備をし、ある程度の成算が見込める確信を持って始めな成功なんか、おぼつかんわな。

ただ、止めろとまでは言えん。このままではジリ貧やと考え、少しでも希望を持ちたいという思いは痛いほど分かるさかいな。

そこで今回は、その第1回として、そんな新聞販売店経営者のために、副業をする際に注意すべき基本的な考えと心得についてと題して話すことにしたわけや。

「溺れる者は藁をも掴む」ということわざがあるが、人は誰でも窮すれば何にでも縋(すが)りつきたくなるもんや。

その結果、足下を掬(すく)われ、更なる不幸を招くこともある。そうならんための一助として役立てて頂ければと思う。

それでは始めさせて頂く。


新聞販売店が副業をする際に注意すべき基本的な考えと心得について


1.顧客ファーストで考える。

新聞販売店が副業に手を出すのは、「満足な収入が得られていない」、「経営が厳しい」からや。それ以外に理由はない。

ただ、本業にしろ、副業にしろ絶対に外したらあかんことがある。

それは、顧客を第一に考えるということや。流行の言葉で言えば「顧客ファースト」というところかな。

商売は、当然やが顧客がいるからこそ成り立つもんや。

それが分かっていれば、お客に「喜んで貰える」、「気に入って貰える」、「納得して貰える」物でなければ売れないというくらいは常識として知ってなあかん。

しかし、人は自己中心的な生き物やさかい、どうしても自身の置かれた状況、立場を中心に考えがちになりやすい。

しかも新聞販売店の場合は長年、一つの地域には同一新聞社系統の新聞販売店が1店舗だけしかない状況に慣れ切っていたせいか、「お客のために」という視点に欠けるきらいがあった。

新聞の購読率が9割を超えていた時代は、それでも良かった。新聞を購読することが当たりやったさかい、少々強気の商売をしていても売れていたしな。

今は違う。新聞販売だけでは経営が苦しくなりつつある店が増えている。せやからこそ、副業をせなあかんという話になっとるわけやけどな。

それを、しっかりと認識して今まで以上に顧客を大事にする必要がある。

それさえ心得とけば、自ずと「お客のために」何をすれば良いのかが分かってくるはずや。


2.自店の利点と欠点をしっかりと把握しておく。

新聞販売店の利点とは何か。

それは、「地域の顧客データを持っている」、「地域の家々や道をよく知りつくしている」、「顔見知りが多い」、「地域の催し事を熟知している」、「競争相手が限られる」といったところが一般的な利点やと思う。

これに加えて、それぞれの販売店の強み、例えば「従業員の数が多い」、「顧客エリアが広く人口が多い」といったことがあれば、その分、有利やわな。

その有利な点を生かした副業を考えることや。

新聞販売店の欠点とは何か。

「新聞勧誘が嫌われ評判が悪い」、「早朝時の騒音で近所に迷惑をかけている」、「顧客とトラブルになる頻度が他業種に比べて多い」、「事故や災害による危険度が高い」、「従業員が固定しない」といった点などが挙げられるが、意外にも、これらの事を弁(わきま)えている新聞販売店経営者は少ない。

そういったことは新聞販売店の仕事をする以上、ある程度は仕方ないと考えているようや。そう考えている限りは欠点とは思わんわな。

それらについて自店では、どうなのかということを自問自答、あるいは客観的な目、公平な目で判断することが必要になる。

そうすることで、どんな副業をすれば良いのか、向いているのかが見えてくると思う。


3.資金力が不足している状態では始めないこと。

当たり前やが、必ず儲かるという仕事はない。新しい仕事には必ずと言うてええほど失敗やトラブルがついて回る。

最低限度、それらの失敗やトラブルをカバーできるくらいの資金力がないと、すぐにポシャる可能性の方が高い。

収入がないから副業を始めるのやないかと反論される方がおられるかも知れんが、ギリギリの予算とか、何とかなるだろうといった安易な計画や予測に基づいて始めるべきやないと思う。

副業の失敗は、即、倒産に直結するさかいな。


4.従業員の協力が得られることが不可欠。

新しい事業、副業をする場合、それを担当することになる従業員の理解と納得を得た上で積極的な協力が不可欠になる。

経営者が「やれ」と命令すれば、殆どの従業員は仕方なくでもやるやろうが、それでは弱い。働く者が積極的になれる理由がない仕事は長続きせんし、上手くいかん。

具体的には、副業というのは普段の仕事に加えて、よけいに働かなあかんことになるわけやから、その分に対する対価、報酬を与えるということや。

経営者にとっては、副業をしなければ店の経営が危ういということで、そうするわけやから、従業員もそのつもりで頑張るのが当たり前という考えになりがちやが、それでは人は動かない。

はっきり言うが、働いている者は、それに対する対価、つまり給料、収入が貰えるから仕事をしているわけで、ただ働きと知っていて懸命に取り組んでくれるなどと間違っても期待してはいけない。

副業をする場合は、それなりの手当、もしくは利益が上がれば相応の報酬を従業員に約束してモチベーションを高める必要がある。

当然、その分の経費も計算した上で始めなあかんわな。


5.副業についての正しい知識とスキルを身につけている人材がいること。

経営者、または従業員の中に、その副業に対する専門知識とスキル、ノウハウを身につけている人間が、最低一人くらいは必要や。

幸い、新聞販売店の従業員の中には、過去様々な仕事に従事していた経験のある者がいるはずで、それを活かせることのできる副業が、ええやろうと思う。

もちろん、その仕事についての習熟度と知識が確かならという注釈はつくがな。


6.業者の話だけを鵜呑みにしてはいけない。

近年言われている新聞販売店の副業の多くはベンチャー企業や物流会社との提携や代理店業務といったものが主流で、それらは当然のことながら、それぞれの専門業者が主導、指導することになるが、その話を鵜呑みにしてはいけない。

当然やが、それらの企業や会社は自社の利益を中心に考えた結果、新聞販売店が使えると判断するからこそ、業務提携を持ちかけ、委託してくるわけや。

その辺は、コンビニなどでありがちなフランチャイズ契約と同じようなものやな。

そんな業者は、業務提携先は単なる客でしかないから、上手くいく話、美味しい話しかしないと相場が決まっている。

新聞販売店の人間は、勧誘で客に美味しい話をすることには慣れていても、客として聞く側の立場になると途端に怪しくなるというのはよくある話やさかいな。

どの世界でも、そうやが営業員の口の巧さは相当なものやと心しとくことや。

詐欺師ですら畑違いの詐欺にかかれば騙されることもあるのやから。

新聞本社が絡んでいるものは、いくらかマシやろうが、それでも100%鵜呑みにはせん方がええと言うとく。

どんな仕事にも必ずリスクはある。それを忘れたらあかんということや。


7.他での成功体験が必ずしも自店に当て嵌まるとは限らない。

どんなことにでも言えるが、他の誰かが成功した方法と同じやり方でしたとしても、それで上手くいくという保証は、どこにもない。

新聞販売店一つを取っても、それぞれの店によって、それに関わる人材、人員、取り組む姿勢など様々な点で違いが出るのが普通やさかい、それで同じ結果を望むのは難しいわな。

成功店とまったく同じ条件など、まずないと考えとくべきや。

失敗を極力少なくするためには、成功店と自店との相違を比較検討した上で判断する必要があるということやな。


8.新聞販売店としての本分を忘れないこと。

副業は、どこまでいっても副業でしかないということを、しっかり肝に銘じることや。

本業が疎かになっては、新聞販売店としての信用がなくなってしまい、元も子もなくなるさかいな。

むしろ、新聞販売店やからこそできる、その店やからこそできる副業を考えることやと思う。


9.成功事例は、とことん研究して盗め。

人と同じ事をしても成功しないとは、よく言われることやが、成功事例を、そっくりそのまま自分のものにする、パクるというのも、ある意味、有意義な方法ではある。

成功事例には、必ず成功する秘訣、ポイントがあるもんや。それを、とことん研究、勉強することを勧める。

パクるというと聞こえはよくないが、何事もできる者から学ぶという姿勢は必要や。

良い仕事をしたければ、良い仕事を見て学べ。それが成功につながる最大の秘訣やさかいな。


大体、こんなところやな。

新しいことに挑戦するのは賛成や。ええことやと思う。

ただ、未知の他業界に参入して、どれだけの人、店が成功するのかという難しさがあるさかい、簡単に勧めることはできんがな。

実際、未知の副業に手を出して失敗したという方もおられるしな。

ワシらは、そのための情報を提示することについては惜しむつもりはないが、どうされるかの最終的な判断、決断は、それぞれに任せるしかない。

ワシとしては、まず新聞そのものを売ることを極めて欲しいという気持ちの方が強いが、残念ながら時代は、それだけではあかんようになっているのも確かやと思う。

そこで、次からは個別の副業について掘り下げて言及したいと考えている。


白塚博士の有料メルマガ長編小説選集
月額 216円 登録当月無料 毎週土曜日発行 初回発行日 2012.12. 1

ゲンさんの新聞勧誘問題なんでもQ&A選集 電子書籍版パート 
2011.4.28 販売開始 販売価格350円
 

書籍販売コーナー 『新聞拡張員ゲンさんの新聞勧誘問題なんでも選集』好評販売中


ご感想・ご意見・質問・相談・知りたい事等はこちら から


ホームへ

メールマガジン『ゲンさんの新聞業界裏話』登録フォーム及びバックナンバー目次へ