メールマガジン・ゲンさんの新聞業界裏話・バックナンバー

第79回 ゲンさんの新聞業界裏話

発行日  2009.12.11


■『特定商取引に関する法律』改正法は業界にとってのチャンスになる?


2009年12月1日。

ついに、『特定商取引に関する法律』の改正法の施行が開始された。

これについては、2008年1月18日発行の旧メルマガ『第180回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■『特定商取引に関する法律』の改正への動きについて』(注1.巻末参考ページ参照)で話したのを皮切りに、

その改正法案が、2008年6月11日参議院本会議において原案通り全会一致で可決、成立したのを受けて、2008年6月27日発行の『第3回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■『特定商取引に関する法律』の改正案成立について』(注2.巻末参考ページ参照)でも取り上げた。

また、『NO.635 正攻法と、ひっかけについて』(注3.巻末参考ページ参照)で代表されるようにサイトのQ&Aでも、相談者である業界関係者の人たちに繰り返し説明してきたという経緯もある。

この改正法の第3条ノ2第1項「勧誘の意志の確認」で、


販売事業者又は役務提供事業者は、訪問販売をしようとするときは、その相手側に対し、勧誘を受ける意志があることを確認するよう努めなければならない。


と規定された。

これにより、これからは、「新聞の勧誘をさせて頂きますけど、よろしいでしょうか」と確認してからでないと勧誘したらあかんということになったわけや。

この「勧誘の意志の確認」の中には明らかにしてということも含まれるから、それに外れたことをする者にとっては、ただでさえ厳しい拡張がさらに辛くなると考えられる。

それまでは「ヒッカケ」のような身元を偽る営業手法そのものを直接規制する法律がなかったから、「感心せんやり方やな」で済んでいた部分もかなりあった。

新聞社や販売店が公然とそれを取り締まることもなければ、ペナルティを加えるということもなかったさかいな。

半ば容認されていたようなところがあった。

そのため、それを一つの営業手法やと誤解している勧誘員も多いのやないかと思う。

それなりに効果のあるやり方やから、その程度のことは、別にやっても構わんやないかと。

ここで、ちょっと「ヒッカケ」について説明しとく。

「ヒッカケ」とは、その相手(客)を意図して騙す、あるいは勘違いさせる営業手法を意味する業界用語や。

それにはいろいろある。

最も悪質な手口とされとるのが、例えばA新聞の読者に、A新聞の販売店の人間やと騙(かた)って安心させ、止め押し(継続契約)を装い、実際にはY新聞の契約書を差し出してサインさせるという類のものや。

その場で、それと気づかん客を文字どおり「ヒッカケ」て騙すわけやな。

また、コンビで行うというケースもある。

この場合、Y新聞の読者にはY新聞の販売店の従業員、または勧誘員を装い、ワザと気分を害する言動をしてその心証を悪くさせ、その直後に、気のええA新聞の勧誘員として訪れた者が、そのY新聞を騙った勧誘員を撃退して、それに喜んだ客から契約を取るというものや。

何や吉本新喜劇にありそうな陳腐な掛け合いのストーリーやが、嵌ればそれなりに効果的なのやという。

このコンビ技には、他にもいろいろバリューエーションがあるが、話すと長くなるので、ここでの詳しい言及は控える。

要するに、あるストーリーに基づいて客を騙す手法のことやと理解してくれたらええ。

そこまでのものやなく、単に客を玄関口に出すための口実、テクニックというのも、その範疇(はんちゅう)に含まれる。

「宅急便です」「近所の引っ越しの挨拶に来ました」「古紙回収の者です」、あるいは「町内会の者です」と騙って客を引っ張り出し勧誘するというのが、それや。

いずれにしても、この「ヒッカケ」というのは騙しには違いないさかい、客とトラブルになることも多い。

サイトのQ&Aにもその手の相談が多く、その対処法もいろいろとアドバイスしとるがな。

今回の法改正で、それが本格的に禁じられ違法になったわけや。

今後は、そのQ&Aでも「止めといた方がええ」というような婉曲(わんきょく)な言い回しやなく、はっきりと「違法やから止めとくべきや」と言わなあかんと思う。

この法律の改正で新聞の勧誘に大きく関係すると思われるものが、もう一つある。

第3条ノ2第2項の「再勧誘の制限」というのが、それで、


販売事業者又は役務提供事業者は、訪問販売に係る売買契約又は役務提供契約を締結しない旨の意志を表示した者に対し、当該売買契約又は当該役務提供契約の締結について勧誘をしてはならない。


というものや。

分かりやすく言えば、一度断った客には次から勧誘したらあかんということや。

それまでの『特定商取引に関する法律』の第17条で、すでに電話勧誘販売について導入されているものを、他のすべての訪問販売業者にも摘要したということになる。

これは基本的には口頭で伝えてもええということや。

これは辛いと感じる勧誘員は多いと思う。

新聞の勧誘というのは断わられるというのが当たり前で、断られてから、どれだけ粘れて押せるかが勝負という部分がある。

最初から「新聞の勧誘です」「そうですか、お話を聞きましょう」という奇特な客は皆無やないにしても、ほとんどおらんさかいな。

これでは、「サービスしますから契約してください」という拡材頼みの営業だけしかできん、またやらんというような勧誘員では厳しいやろうと思う。

その考えを払拭、あるいは切り替えることができれば手はいくらでもあるがな。

それについては、もう少し後で話す。

この「再勧誘の制限」に違反すると、業者は業務停止命令などの厳しい行政処分が下されるという。

新聞業界の場合、新聞販売店がその対象とされる。

拡張員は勧誘時に、その販売店の社員証を所持しとるのが普通やから、実質的には新聞拡張団という他企業の人間であっても、法律上はその販売店の人間、勧誘員として扱われるわけや。

せやからと言うて、拡張団および拡張員に、その法律が直接関係ないとタカを括(くく)らん方がええ。

それに違反すれば法律の縛り以上の報いが返ってくるというのは、容易に想像できることやさかいな。

拡張団の販売店への入店日程は、実質的には新聞社の担当と呼ばれる販売部の人間が決め、各販売店は、今までそれを拒否し辛い状況にあった。

それが、この法律の改正で新聞販売店の責任と罰則がより強くなったことで、その違反行為をする拡張員、拡張団の入店を拒否しやすくなると考えられる。

そうせな、新聞販売店が責任を問われるおそれがあると言えば、新聞社も認めざるを得んさかいな。

ヒッカケのような真似もせず真面目で節度ある勧誘に終始しとる拡張団、拡張員にはあまり関係のない話やとは思うが、それを改めるつもりのない者にとっては、相当きつくなるということや。

もっとも、そうなって当然なのやがな。

ただ、それだけでは済まん問題もある。

それは、その消費者が出会(でくわ)す勧誘員が一人とは限らんということがあるからや。

消費者は、ある新聞販売店の勧誘員の1人に対して、「契約の拒絶」をしたから、次からはその通告が、その新聞販売店に対して有効と考えやすくなる。

しかし、その同じ販売店から次にその客の下にやって来る別の勧誘員は、そのことを知らんという場合が多い。

新聞の勧誘というのは、断られるということの方が圧倒的に多い仕事なわけや。

普通は、断られると「そうですか」と言うて、次の客を求めて他へ行く。

それらの客をすべて覚えていて逐一販売店に、「そう言われて断られた」と報告するというのはまずない。

その場で忘れて終いや。

その消費者にとって、その意志を伝えた勧誘員は限られた存在でも、勧誘員にとってそういう断りを入れる消費者は、大勢いとる中の一人なわけや。

一般的な新聞の拡張員は日に100人から200人程度の人に訪れて勧誘するのが普通で、そのうち9割以上の確率で断られる。

そういう仕事や。

おそらく、その勧誘員は断った消費者の名前はおろか顔さえ覚えとらんと思う。

それを一々書き控えるようなことをするわけもない。法律も、そこまで見越してそれを義務づけるようなこともしてないしな。

言われた言葉も、そんなんやから、心に残るはずもない。

したがって、その消費者が、「契約の拒絶」の意志でそう言うたつもりであっても、その販売店にはおろか他の誰にも伝わらんことの方が圧倒的に多いやろうと思う。

すると、当然のように、その断った勧誘員以外の他の勧誘員が、それと知らず勧誘に訪れるということは十分にあり得る話や。

今回の法改正で言うと、それは違反行為になると考えられるが、果たして、どこまでそれで販売店の責任を問え、行政処分を下せるのかとなると、はなはだ疑問で難しいのやないかなと考えるがな。

例えば、先に来た勧誘員に、その客が「もう来るな」と「契約の拒絶」を明確に示したその後に、それと知らん他の勧誘員がその客を訪れた場合、その法律に触れたから、販売店がその責を負わなあかんのかということになるわけや。

法律上は、そうなる。

しかし、そんなもの、その販売店に防ぐ手立てはないと思うがな。また、その報告をしてない拡張員を責めるのも酷な気がする。

少なくとも、これに関しては勧誘員側に違反を犯している認識がゼロで悪意はまったくないわけやさかいな。

それを責めてどうなるものでもないと思う。

しかし、法律はそれを咎めろと言うてるわけや。

回避のしようのないことで罰せられるというのは何か釈然とせんという気になるのは、ワシが業界の人間やからやろうか。

今回の改正法では、法律を作る側の人間に、そこまでの想像力が働かんかったのかも知れんが、いずれにしてもそのあたりの配慮がないまま決められたとしか言いようがない。

その運用に関して『同一会社の他の勧誘員が勧誘を行うことも当然に禁止される』という一文が何の注釈もなく附則されとるのを見る限りはな。

つまり、不可抗力であろうがなかろうが、おしなべて違反やと押し切るつもりなのやろうと思う。

個々の事情を考慮するより、一定の線引きをする方を優先したと。

実際の勧誘の現場を知らん素人が机上の空論だけで考えて勝手に決めるのやから無理もないが、そんなものに従わなあかん販売店や勧誘員はええ迷惑やで、ほんま。

まあ、法律の決め方というのは、たいていそんなものやから、決まって施行されたものを今更どうこう言うても仕方ないけどな。

いずれにしても、多くの法律に共通して言えることやが、施行当初においては、ある程度の混乱は必至で避けられんやろうと思う。

ただ、この法改正は、今のところ一般には、まだそれほど浸透してないようやから、今後、この法律がどれほど影響してくるかというのは未知数やけどな。

試しに、その12月1日、ワシ自身が勧誘する際、訪問先の客にそれとなく、

「今日、『特定商取引に関する法律』の改正法が施行されましたが、それについて、ご存知ですか」と、10数軒ほど聞いて回ったが、皆、異口同音に、

「何ですの、それ?」という、訝(いぶか)しげな返事しか返って来んかった。

今のところは相当認知度が低いというのが、ワシの印象やった。

一応、当日の新聞各紙には大きく載っとるから、その報道がなかったというわけでもない。

ただ、テレビやインターネットではあまり目立った報道はなかったという印象が強いがな。

まあ、クーリング・オフ同様、そのうち徐々に広まっていくとは思う。

その法律の決まりがあることで、サイトのQ&Aでも、これからは「ヒッカケのような騙しによる契約は解除できる可能性がありますよ」と言うしかないわけやさかい、その方面からの拡がりもあるやろうしな。

但し、この改正案では口頭で「契約の拒絶」の意志を伝えるだけでもええとはなっとるが、どう考えてもそれでは問題が拗(こじ)れやすく、スムーズな決着は難しいやろうと思う。

これについては、『第3回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■『特定商取引に関する法律』の改正案成立について』の中で、


消費者が確実にその販売店に「契約の拒絶」を伝えるためには、クーリング・オフと同じく内容証明郵便などの文書での通達をするか、もしくは販売店に直接電話なりして、その意志を明確に伝えるくらいしかなさそうに思える。

それがあれば、販売店としては勧誘員にその客の所へ行かせんような処置を嵩じるしかなくなるわけや。

具体的には拡禁(拡張禁止)リストへ掲載するというのが、それになる。

新聞販売店の多くは、拡張員に対して勧誘してほしくないリスト、俗に言う拡禁リストというのを毎回、その入店時に渡す。

拡張員は、そのリストに載っている客から契約を上げても一銭にもならんから勧誘に行くことはない。


と提案してたように、サイトQ&Aでも相談者の方には、そう勧めたいと思う。

そうすることが一番丸く収まりそうやさかいな。

新聞業界だけやなく訪問販売業界全体にとっても、この法律によりかなり混乱を招くのは必至やと思う。

もともと、この法改正が行われることになったのは、判断力に乏しい独り暮らしの高齢者を狙った高額な商品を大量に売りつける悪質な訪問販売業者による被害をなくすという大義名分があったからや。

確かにそれらは報道で見る限りでも、えげつないものが多いから絶対になくすべきやと思う。

それに異論はない。

ただ、そうやからと言うて、すべての訪問販売業者を対象にするのはどうかという気はするがな。

特にワシらの新聞勧誘は、それほど高額な商品ということでもなければ、定価以上で売りつける勧誘員も皆無で、一人の購読者に同種の新聞を大量に売りつけるというのもあり得ん話や。

商品の新聞自体も、ネットの一部に批判する者がいとるにせよ、社会的にも大半の人からその価値を認知され、まがい物など一切介在する余地のないものや。

まあ、悪質な勧誘員が存在せんとは言わんが、それにしても「過量販売」や「次々販売」を行う悪徳業者と同一視される謂(い)われはないと思う。

しかし、法律的にはそれらの業者と同一視され、同じ法律で縛られ罰せられるわけや。

この改正法の施行は新聞業界にとって大きな痛手となることが予想される。

ピンチには違いない。

しかし、ピンチは考えよう、活かしようによってはチャンスになると、ワシは事ある毎にいつも言うてる。

マイナスはプラスになり得ると。そうすべきやと。

そして、今回のこの改正法についてもそれは言えると思う。

前置きが長くなったが、ここからが標題の「『特定商取引に関する法律』改正法は業界にとってのチャンスになる?」についての説明になる。

一言で言えば、その改正法での決まり事、そのものを勧誘の営業に活かす。つまり、トークとして利用するわけや。

しかも、そうすることにより多くの人の助けにもなって喜ばれ、ひいては契約につながる可能性が高まる営業法ということになる。

「そんな上手い話があるのか?」

ある。

しかし、これは逆説的ではあるが、売り込むことしか考えん者には不向きな方法やと言うとく。

というか、そんな人間にこれから話す方法をやられたんでは迷惑や。止めといてほしい。

その人間自身も不発に終わる可能性が高いし、真面目に取り組もうとする者のの足をも引っ張りかねんさかいな。

ワシとしては、勧誘員個人というより、新聞販売店全体の方針として取り入れて貰いたい方法やと考えとる。

この法律が改正された最も大きな理由には、先にも言うたように、近年冨に目立ってきた『悪質な訪問販売業者による判断力に乏しい独り暮らしの高齢者を狙った高額な商品を大量に売りつける「過量販売」や「次々販売」の被害をなくすため』という背景があったのは間違いないと思う。

今回の法改正を機に、それを販売店のエリア内の一般に、そのことをアピールしようというのが、その方法の狙いなわけや。

それには、まだこの法改正が一般に普及してないと思われる今がチャンスやと思う。

訪問販売の中にあって、新聞販売業界は地元に根ざしているまれな業界や。

ワシら拡張員を含む新聞勧誘員は、その地元の新聞販売店の人間として営業に廻る。

その優位性を活かさん手はない。

具体的には「当新聞販売店は、地域の方々を悪質な訪問販売業者から守るための取り組みをしてます」というトークを使うわけや。

まずは、それを訪問の目的にする。

今回の法改正によって、勧誘員も相当の縛りを受けることになったわけやが、多少は悪質な新聞勧誘員のせいもあるにせよ、大半はそんな悪徳業者のえげつない手口のおかげなのは間違いないところや。

それを暴いて廻る。または、実際に困っている人に助言する。それに徹することや。

ここで問題になるのは、第3条ノ2第1項の「勧誘の意志の確認」やが、それに違反せんためにも、当初の目的は、あくまでも「悪質な訪問販売業者の撃退法をお知らせに来ました」、「悪質な訪問販売業者で困っていませんか」という姿勢に徹することや。

「今回は勧誘が目的ではありません」と。

それを口実にしてすぐに勧誘を始めると、その法律に違反する。それでは意味がないし、それ自体がウソになってしまい信用を失いかねん。

最初に「販売目的ではありません」と断っておいて、そのとおりにすれば、当然やが、その法律に触れるようなことは少ない。

あるいは、初めに「○○販売店から新聞の勧誘に来ました」と伝え、「うちは結構です」と断られてから、「それでは契約してくれとは言いませんので、悪質な訪問販売業者に注意してくださいね」と言うて、そのトークを使うのでもええと思う。

その場合は、本気で勧誘から離れる。純粋に地域の人のためにと考えるわけや。

ワシが『売り込むことしか考えん者には不向きな方法やと言うとく。というか、そんな人間にこれから話す方法をやられたんでは迷惑や。止めといてほしい』と言うたのは、そのためや。

心配せんでも、その話を聞いて分かってくれる人は、そんな親切な新聞販売店からやったら「新聞を購読してみようか」という気になる可能性は高い。

少なくとも、その地域での販売店の評判は良くなるはずや。

そう思うて貰えれば、客の方から、契約したいと言い出す可能性もあるし、慎重な人でも悪い印象は持たんはずやから、当面はそれで良しとする。

例えその場は、そういう契約の話が何もなくても次回の来訪を嫌がるケースは少ないと思う。

慌てず気長に付き合っているうちにこちらの誠意を分かって貰えればええと考え、時折訪れるようにする。

慎重な人に対して本格的に勧誘するのは、それが続いて気心が知れてからでも遅くはないと思う。

昔から「急いては事をし損じる」、「走れば躓(つまず)く」という諺(ことわざ)があるように、物事は、慌てれば慌てるほど失敗しやすいから急ぐときこそ慎重に事に当たれというのを心しとくことや。

そうすることで、ワシが普段良う言うてる、人間関係を構築できるはずやさかいな。

要は気に入って貰うということを重視するわけや。

それを目指すのが、現状のこの法律のもとではベストやと思う。

ワシがサイトやメルマガで一貫して推奨しとる「人間関係を作って気に入られる」という営業法は、いかなる法律を持ってしても絶対に制限を加えられたり、否定されたりすることのない普遍的なものやと信じとるさかいな。

それを分かって貰えたものとして、今回の法改正による「悪質な訪問販売業者への対処法」について、そのトークに使えそうな主なものを説明したいと思う。


『特定商取引に関する法律』の改正法による悪質な訪問販売業者への対処法


1.勧誘の意志の確認。

すべての訪問販売業者は勧誘する際は、その目的を開口一番に告げなければないと決められた。

具体的には、

「本日は、弊社の健康布団をお勧めにまいりました」

「水道管の無料点検にまいりました。損傷等があった場合には、有料になりますが、修理工事をお勧めしております」

などが、その模範例とされている。

悪例としては、

「近くで工事をやっているので、ついでに御宅の屋根を点検してあげましょう」

「排水管の点検に来ました」

「以前施工をした業者からメンテナンスを引き継いだので、ご挨拶に伺いました」

などとウソの理由を告げて、それらの点検を行った後に住宅リフォームを勧誘するようなケースはすべて違反ということになる。

その場合は、最初に住宅リフォームの勧誘も同時に告げとく必要があるということや。

また、業者の正式名称が「梶~×商事」であるにも関わらず、「○○公団住宅センター」や「○○アカデミー」などの架空の名称や通称のみを告げることも禁じられている。

それらに違反した勧誘により契約した場合は契約解除理由の対象になる。


2.再勧誘の禁止、制限について


訪問販売業者の勧誘に対し、「いりません」「関心がありません」「お断りします」「結構です」などが「契約を締結しない」という明確な意志ということになる。

今までやと、消費者が断りの意思表示として「結構です」と答えているにも関わらず、業者側から消費者が承諾したという意味の「結構です」と勝手に解釈して一方的に契約が成立していると主張するケースが多く、それによるトラブルが多発していたという実態があった。

しかし、この改正法の中で、

『「結構です」と答えることは、否定の意思表示として十分に一般的であり、その消費者は契約締結の意思がないことを明示的に表示していると解される』

と明記されたことにより、今後、このような主張自体が一切認められないということになった。

ただ、「今は忙しいので後日にして欲しい」、「まだ考えていない」、「時期が来たときに考える」などの、その場、その時点での拒絶は、「契約を締結しない旨の意思」の表明には当たらんとされたがな。

これなんかは言うた方が、いくら「勧誘の拒絶」の気持ちがあったと主張しても、認められんということや。

それでは相手にそれと伝わらないと客観的に考えられるということでな。

また、家の玄関などに「訪問販売お断り」と記載された張り紙、プレートなどを貼っとるのも、意思表示の対象や内容が不明瞭であるため、「契約を締結しない旨の意思」の表示には該当しないとされた。

それ以外の「契約を締結しない旨の意思を表示した者」に対して、この改正法では、その後、再び勧誘を行うことを禁止している。

同一会社の他の勧誘員が勧誘を行うことも当然に禁止される。もっとも、これについては新聞の場合のように問題もあるけどな。

勧誘が禁止されるのは、同一商品についての勧誘であり、別の商品などの契約についての勧誘は禁止されていない。

また、同じ商品の契約であっても、例えば、数ヶ月から1年単位での契約が通常である商品については、その期間が経過すれば別の商品の契約と考えられる。

あるいは、季節毎の商品の入れ替えや毎年の新機種の市場投入がある商品については、商品の旧型化による価格低下等が生じるおよそ数ヶ月や1年が経過すれば、別の商品等の契約と考えられるなど、その商品の性質などにより、相当な期間が経過した場合は、実質的に別の商品等の契約であると考えられる場合もあるということや。


3.すべての訪問販売による契約がクーリング・オフの対象になった。



改正前までは、新聞をはじめとする制令で指定された58商品、21サービスに限定されていたが、それが原則すべてでクーリング・オフができることになった。

原則というのは例外もあるということで、取引総額が3千円未満の場合はクーリング・オフができないとしているが、その場合には、その旨を記載する義務が課されたから、それがなければクーリング・オフの対象になるということや。

これについての悪質業者の違反トーク例。

クーリング・オフの期間がその契約書面の受領日から8日間認められているにも関わらず、「クーリング・オフは4日間です」と告げるもの。

クーリング・オフを申し出た顧客に対して、「個人的な都合によるクーリング・オフは認められません」と言うケース。

「違約金を支払ってもらう。これは法律で決まっている」

「工事を既に始めたので解除できない」

「申し込んだ以上、既に資材の手配をしているので撤回はできない」

「ミシンの梱包を開いているので解除できない」

「名前をコンピューターに登録してしまったので解除できない」

なども、すべて似たようなことが言える。

どのような言われ方をしようと、原則8日間のクーリング・オフができんということはないと考えといて間違いないということや。


4.業者は契約した商品を特定しなければならない。



訪問販売業者には「商品名及び商品の商標又は製造者名」、「商品名及び商品の商標又は製造者名」、「商品に型式があるときは、当該型式」などの特定が義務づけられた。

消費者にとってその内容の理解が困難なものはできるだけ詳細に記載する必要があるとされたわけや。

例えば住宅リフォームに関する書面の場合、工事内容を詳細に記載せず、「床下工事一式」、「床下耐震工事一式」とのみ記載するのは違反になるということや。

客観的に見て内容の分からない商品の売買契約は無効もしくは解除できる可能性が高くなったと理解すればええ。


5.「不実の告知」の禁止



虚偽や事実と異なる説明をすることで、告げている内容が客観的に事実と異なっていればすべて違反となる。

商品の品質が類似のものと比較して劣る、効能がないにもかかわらず優良と告げることや、根拠もなく商品の品質等について公的機関から認定を受けているかのごとき錯覚させる説明はすべて違反になる。

事実に反する工事の仕様を告げるのもそれに該当する。

この違反例が最も多いと考えられている。

以下がそのトーク例や。

「近いうちにこの絵は必ず高騰して儲かります」

「使用する耐震補強金具は高性能なものです」

「食事制限をしなくても、当社の健康食品を1ヶ月服用し続ければ数キロ痩せます」

「水道水が汚れているから、この浄水器を取り付けないで飲み続けると癌になりますよ」

「今だけ特別キャンペーン価格で、よそでは高くつくが、うちなら低価格でできます」

「給湯器の不具合が発生していて、このまま使用し続けると発火して火事になりますよ」

「消化器は法律上、1年おきに詰め替えの義務があります」

「アルミ鍋は有害だから、ステンレス鍋を買ってください」

「ガス漏れ警報器は経済産業省が設置するように決められています」

などと事実に反することを告げて勧誘する行為はすべて「不実の告知」に該当することになる。


6.過量販売、次々販売(過量販売規制)の禁止



原則として日常生活で必要以上の分量などを売りつけられたら、その分に対しての契約が1年間に渡って解除できるようになった。

今回の改正法では具体的な基準は定められていないが、日本訪問販売協会が、「過量に当たらないと考えられる目安」のガイドラインを作成しとるから、それが判断材料になると考えられている。

その主なものは、

「健康食品は1人1年間につき10ヶ月分」

「着物は1人につき1セット」

「ネックレス、指輪などの高級アクセサリーは1人につき1個」

「布団寝具は1人につき1組」

「浄水器は1世帯につき1台」

「化粧品類は1人1年間につき10個」

「学習教材は1人1年間につき1学年分」

「屋根や外壁などの住宅リフォームは築年数10年以上の住宅1戸につき1工事」

などとなっている。

ただ、これについては業者側からは、「お客様に現在持っている商品を確認させてくださいとは言いにくい」、「販売員らが法に触れるのを恐れて営業が萎縮する」、「過量かどうかは結局、消費者の満足、主観次第で違う」と、懐疑的な意見が多いがな。

ワシも、今回の改正で最もトラブルのが、これについてやないかと思うとる。


7.クレジット契約で規制強化された。


これまでは、販売業者の勧誘に問題があってもクレジット契約が成立して分割払いで支払った分を取り返すのは難しかったが、今回の改正法ではその違反が認められた場合、クレジット会社にその代金の返還が義務づけられた。

同時施行された「改正割販法」では、クレジット会社に年収や預貯金、借金の支払い状況など、消費者に支払い能力があるかどうかを調べる義務を負わせた。

これにより、年金収入だけで暮らす高齢者に高額なローンを組ませるのは違法と判断される可能性が高くなったわけや。


これ以外にもまだまだあるが、このメルマガですべてを説明するのはとても無理やから、主なものということで、この辺で止めとく。

それに、大体この程度のことが分かっていれば、「悪質な訪問販売業者」からエリア内の購読者を守ることができるのやないかと思うしな。

後は、これをトークとしてどう使いこなすかやが、それは各自で考えてほしい。

まあ、これらを一度に覚えるのは難しいやろうから、最初は一つ、ないし二つ程度覚えて始められたらどうかと思う。

これをする目的は、何度も言うが客と人間関係を作るということやさかい、それをくれぐれも忘れんといてほしい。

ただ、分からん事、質問したい事があれば、遠慮なくサイトのQ&Aに相談してくれたらええ。

あるいは、消費者センターや日本訪問販売協会に問い合わせて尋ねられたらええと思う。

これからの新聞拡張は、『第65回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■ある新聞販売店の取り組み その1 哀しき孤独死をなくせ』(注4.巻末参考ページ参照)
で話したように、地域に貢献する姿勢を示すことが、最も有効な営業法になると確信する。

確かに時代はネットやデジタル化されて便利にはなってきとるが、人が信頼できるのは、やはり人しかないと思う。

人を助けられるのは人しかおらんさかいな。

どんなに時代が変貌しようと、進化しようと、その絆は大切や。

この方法は難しいとは言うたが、根本にその心があれば、それほど難しいことやないと個人的には思う。



参考ページ

注1.第180回 新聞拡張員ゲンさんの裏話 ■『特定商取引に関する法律』の改正への動きについて

注2.第3回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■『特定商取引に関する法律』の改正案成立について

注3.NO.635 正攻法と、ひっかけについて

注4.第65回 ゲンさんの新聞業界裏話 ■ある新聞販売店の取り組み その1 哀しき孤独死をなくせ


追記 メルマガの感想です

投稿者 Jさん  投稿日時 2009.12.12 PM 7:26


> 実際の勧誘の現場を知らん素人が机上の空論だけで考えて勝手に決めるのやか
> ら無理もないが、そんなものに従わなあかん販売店や勧誘員はええ迷惑やで、
> ほんま。
> まあ、法律の決め方というのは、たいていそんなものやから、決まって施行さ
> れたものを今更どうこう言うても仕方ないけどな。

経産省は、法律の作成にあたって、パブリックコメントを広く世間に募集するのが普通です。

次のページからの判断にすぎませんが、一応、今回もそれがなされたようです。
http://www.shodanren.gr.jp/database/173.htm

だからといって、全ての国民にその事前連絡が行き渡っているとは言い難いので、興味のある人は、常にアンテナを張っていないといけないようです。

ひっそりと場所を限定して告知される官報でも、同じようなことが言えますね。



> 消費者が確実にその販売店に「契約の拒絶」を伝えるためには、
>クーリング・オフと同じく内容証明郵便などの文書での通達をするか、
>もしくは販売店に直接電話なりして、その意志を明確に伝えるくらいしかなさそうに思える。

もしかすると、めざとい行政書士が、これを商売のメニューの一つに加えて、ネットなどで宣伝しそうな気がします。


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