拡張の手口
手口その2 人間すべて客と思え
新聞は誰でも読むもんやからすべての人間が客になる。そのことを良う分かってへん拡張員もおる。拡張は何も一軒一軒訪問せんでもええちゅうことや。
極端に言うたら、そこらへんを歩いとるおっさんを勧誘してもかまわんのや。実際にしとる奴はあまりおらんがな。
この心構えが分かっとるのと分からんのとでは大きな違いになる。分かっとる者は普段から人との接し方が違う。相手とのコミュニケーションを大事にしとる。
営業の基本中の基本は、人間関係の構築や。相手との人間関係が出来上がれば、その営業は9割成功したも同然なんや。
「商品を売るより自分を売れ」は営業全般の合い言葉みたいなもんやからな。
特に新聞のように営業しにくい商品の場合は、人と人の交わりによる影響が大きなウェートを占める。
ワシの場合は有り難いことに、あんたが気に入ったから購読すると言うてくれる客が多い。
もちろん、そんな客ばかりやない。人には相性というもんがあるからな。人によって好き嫌いは千差万別、いろいろや。
ただ、間違いが少ないと思うのは、こちらが気に入った人間は相手も好意を持ってくれるということや。
もっとも、男と女はそうもいかん場合があるようやけどな。好きやと言われて嫌な気はせんやろうけど、しつこいと嫌われるわな。一方的な好意の押しつけは度を過ぎるとストーカーになる。
営業もこの辺の機微が分からんとあかん。特に拡張員は、その存在自体がストーカーと同一視されとるようなもんやからな。
相手をよく観察して自分の性質を客観的に見極めた上で、つき合って親交を深める。これは何も親密な関係にならんでもええ。共通の話題で盛り上がれば十分や。
その気になれば、そんな機会はどこにでもある。例えば、パチンコ屋で隣に座った兄ちゃんが、自分と相性が合うなと感じたらちょっと話かけてみる。うまが合えば、話が盛り上がる。野球ファンなんかやと最高や。
新聞各紙により球団色のようなものがある。Y新聞は巨○、S新聞は○神、C新聞は中○という具合や。ここで、相手と気の合うことが分かったら、自分の好みの球団は隠す。相手になるべく合わすんや。
拡張員は、野球のチケットは簡単に手に入る。ワシは現在Y新聞の拡張をしとるから、巨○中心やが、それでも○神戦や中○戦があるから、相手の欲しそうなチケットを用意出来る。その他の球団戦の物でも同じや。
野球ファンやったら、これで九分九厘決まりや。この時、注意せんとあかんのは、最初から勧誘目当ての接近やと思われんことや。あくまで、友人づきあいの延長というふうに持っていければベストや。
この手口の応用範囲はかなり拡がると思う。因みに拡張以外の営業でも使えるで。